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  • 特開-ガスメータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142754
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ガスメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20230928BHJP
   G01P 15/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
G01F3/22 B
G01P15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049812
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内村 一哉
(72)【発明者】
【氏名】横畑 光男
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA03
2F030CB10
2F030CC13
2F030CE05
2F030CE09
2F030CE17
2F030CF11
(57)【要約】
【課題】消費電力を従来よりも抑制することが可能なガスメータを提供する。
【解決手段】ガスメータは、複数の需要家宅の各々に設置されるガスメータであって、加速度を検出する加速度センサと、制御装置と、を備え、制御装置は、加速度センサにより検出された加速度が閾値以上になる場合に通常モードからガスメータにおける消費電力が通常モードよりも大きい演算モードに移行し、所定情報に応じて閾値を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家宅の各々に設置されるガスメータであって、
加速度を検出する加速度センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサにより検出された加速度が閾値以上になる場合に、通常モードから前記ガスメータにおける消費電力が前記通常モードよりも大きい演算モードに移行し、
所定情報に応じて前記閾値を変更する、ガスメータ。
【請求項2】
前記演算モードは前記制御装置により前記加速度に基づき地震指標値が演算される動作モードである、請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記通常モードから前記演算モードに移行した移行回数の所定時間ごとの履歴を前記所定情報として取得する、請求項1又は2に記載のガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、省電力モードおよび当該省電力モードよりも消費電力の大きい演算モードで動作する感震センサが知られている(特許文献1)。この感震センサにおいては、加速度測定部により測定された加速度に基づき地震が発生したと判定される場合に、省電力モードから上記加速度に基づき地震指標値を演算する演算モードに移行する。一方、地震が発生していないと判定される場合には省電力モードに維持される。これにより、動作モードが常に演算モードになることを避けることができ、消費電力の低減に寄与するとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6666023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガスメータは屋外に設置されるものであるがゆえ、例えば自動車や列車等の通過による振動、暴風雨による振動、更にはガス流路内をガスが通流する際の共振振動などに起因する多くのノイズの影響を受ける。そのため、これらの予期せぬ振動に基づく加速度の変化をきっかけにして、省電力モードから演算モードへの移行を繰り返すことがある。その結果、消費電力が大きくなってしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は消費電力を従来よりも抑制することが可能なガスメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスメータは、複数の需要家宅の各々に設置されるガスメータであって、加速度を検出する加速度センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記加速度センサにより検出された加速度が閾値以上になる場合に、通常モードから前記ガスメータにおける消費電力が前記通常モードよりも大きい演算モードに移行し、所定情報に応じて前記閾値を変更するものである。
【0007】
本発明に従えば、通常モードから演算モードに移行する際に基準となる上記閾値が所定情報に応じて変化される。この場合、制御装置は、上記所定情報が例えば移行回数(通常モードから演算モードに移行する回数)である場合に、当該移行回数に応じて閾値を変更する。この場合、移行回数が多くなれば閾値を引き上げる。これにより、通常モードから演算モードに移行する回数を低減することができる。このことによって、例えば自動車や列車の通過による振動等に起因する多くのノイズを受けることを契機として予期せず通常モードから演算モードに移行してしまうことを抑えることができる。これにより、消費電力を従来よりも抑制することが可能となる。
【0008】
上記発明において、前記演算モードは前記制御装置により前記加速度に基づき地震指標値が演算される動作モードであってもよい。
【0009】
上記構成に従えば、加速度に基づき地震指標値が演算されることに起因して消費電力が通常モードよりも大きくなる演算モードに移行し難くなる。
【0010】
上記発明において、前記制御装置は、前記通常モードから前記演算モードに移行した移行回数の所定時間ごとの履歴を前記所定情報として取得してもよい。
【0011】
上記構成に従えば、移行回数の所定時間ごとの履歴に応じて適切に閾値を変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消費電力を従来よりも抑制することが可能なガスメータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るガスメータを含むガス管理システムを示すブロック図である。
図2図1のガス管理システムにおけるガスメータの構成要素を示すブロック図である。
図3】通常モードから演算モードへの移行回数の例を1日の時間帯ごとに示す図である。
図4図3の移行回数に応じて変更された加速度の閾値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るガス管理システムについて図面を参照しながら説明する。以下に説明するガス管理システムは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係るガスメータ13を含むガス管理システム100を示すブロック図である。図2図1のガス管理システム100におけるガスメータ13の構成要素を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、ガス管理システム100はセンターサーバ10および複数の需要家宅20を含む。なお、図1では4つの需要家宅20を例示しているが、地震保安システム100において需要家宅20は複数であればよく、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。
【0017】
各需要家宅20には、一例として、2つのガス容器11と、切替器12と、ガスメータ13と、2つのガス機器14とが設けられる。需要家宅20の例としては、病院、学校、自治体施設、介護施設、一般家庭および商業施設等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ガスを使用し得る建物であれば需要家宅20に包含される。
【0018】
ガス容器11はガスボンベとも呼ばれ、当該ガス容器11内にはLPガス(液化石油ガス)等のガスが充填されている。以下の説明では、LPガスを単にガスと記載する。なお、ここでのガス供給は、ガス容器11からガス機器14へガスを供給する態様を例示しているが、地下に埋設された導管を通じて各需要家宅20へガスを供給する態様としてもよい。切替器12は2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内のガスが需要家宅20に供給されるようにガス供給路の切り替えを行う。これにより、2つのガス容器11のうち一方のガス容器11内でガス切れが生じても、他方のガス容器11内のガスがガス機器14に供給され得る。
【0019】
ガスメータ13は需要家宅20におけるガス容器11からガス機器14に供給されるガスの流量を計測する。一例として、ガスメータ13は計測部としてガスが流れる管路内での超音波の伝搬速度から流量を計測する超音波式流量計を有してもよい。また、ガスメータ13は何らかの異常を検知したときにガス供給路を遮断する遮断弁等を有してもよい。
【0020】
ガスメータ13は通信部13aを有する。通信部13aはセンターサーバ10に対して無線により通信を行う機能を有する。通信部13aとセンターサーバ10との無線通信方式としては、例えばインターネットやLAN、又はLPWA(Low Power Wide Area)等の通信ネットワークを用いることができる。通信部13aは、需要家宅20におけるガスの使用量の情報を、使用された日付情報、当該需要家宅20を特定するIDおよび当該需要家宅20の所在地域情報と併せてセンターサーバ10に定期的に送信する。なお、通信部13aは、ガスメータ13に内蔵せず、外付けの子機として構成し、ガスメータ13と通信するようにしてもよい。
【0021】
ガス機器14は、例えばガスコンロ、ガス給湯器、又はガスファンヒーター等であるが、これらに限定されるものではなく、ガスを消費する機器であればガス機器14に包含される。
【0022】
センターサーバ10は、制御装置1と、記憶部4と、通信部5とを有する。制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを記憶したメモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))とを含むマイクロコントローラ、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成される。記憶部4としては各種メモリ又はハードディスク等を用いることができる。
【0023】
図2に示すように、ガスメータ13は上述の通信部13aの他に、人工知能13eを有する制御装置13b、加速度センサ13c、各種情報を記憶する記憶部13d、および筐体である本体部15を備える。
【0024】
加速度センサ13cは例えば圧電素子等を用いた公知のセンサである。加速度センサ13cは本体部15内に設けられる。具体的には、加速度センサ13cは例えば本体部15内に設けられたプリント配線基板である制御基板に設けられる。加速度センサ13cは、振動が生じた際に、例えば相互に直交する3軸の各加速度軸における加速度をそれぞれ検出する。
【0025】
記憶部13dは加速度センサ13cにより検出される加速度についての閾値As(図4で後述)を記憶する。また、記憶部13dは後述の通常モードから演算モードに移行した所定時間ごとの移行回数の履歴を記憶する。
【0026】
制御装置13bは加速度センサ13cにより検出された加速度を受信する。制御装置13bは加速度センサ13cにより検出された加速度が、記憶部13dに記憶された加速度についての閾値As以上になる場合に通常モードから演算モードに移行する。つまり、通常モードは加速度センサ13cにより検出された加速度が閾値As未満であるときの制御装置13bの動作モードである。このような通常モードにおける消費電力は演算モードにおける消費電力よりも小さい。
【0027】
一方、演算モードは加速度センサ13cにより検出された加速度が閾値As以上であるときの制御装置13bの動作モードであって、制御装置13bにより加速度に基づく地震指標値を演算する処理を含む動作モードである。制御装置13bは加速度が閾値As以上であれば、演算モードにおいて当該加速度に基づき地震指標値を演算する。このような演算モードにおける消費電力は通常モードにおける消費電力よりも大きい。制御装置13bは、地震指標値として例えば建物に対してどの程度の被害が生じるかを数値化したものとして一般に用いられるSI(Spectral Intensity)値、震度、マグニチュード、振幅又は変位等、地震の規模を比較可能な各種値を算出することができる。
【0028】
制御装置13bは以下のようにして閾値Asを変更する。まず、制御装置13bは通常モードから演算モードに移行した移行回数を所定時間ごと(例えば1時間ごと)にカウントする。制御装置13bはカウントした移行回数の履歴を所定情報として記憶部13dに記憶させる。この場合、移行回数は、過去の所定期間(例えば1週間又は1ヶ月等)における所定時間ごとの移行回数の平均値であってもよいし、過去の所定期間における同じ曜日における所定時間ごとの移行回数の平均値であってもよい。
【0029】
制御装置13bは、移行回数の履歴を所定情報として閾値Asを変更する。この場合、制御装置13bは移行回数をインプットとして人工知能13eにより閾値Asを変更することができる。人工知能13eによる閾値Asの変更は機械学習又はディープラーニングに基づくものである。なお、閾値Asを人工知能13eにより変更することとしたが、これに限定されない。
【0030】
閾値Asの変更について詳しく説明する。図3は通常モードから演算モードへの移行回数の例を1日の時間帯ごとに示す図である。図4図3の移行回数に応じて変更された加速度の閾値Asを示す図である。
【0031】
図3には通常モードから演算モードへの移行回数の例が1日の時間帯ごとに示されている。図3において、6時から10時頃までの時間帯および17時から20時頃までの時間帯は例えば自動車や列車等による通勤の時間帯と重なり得る。従来では、上記通勤手段による振動等の影響を受けて加速度センサ13cにより検出される加速度が閾値以上に達する回数が多くなる。従来、閾値としては、ガスの遮断に至らない比較的小さな地震の情報も収集すべく例えば震度4の地震を検出可能な加速度の値が設定される。しかしながら、震度4の地震を検出可能な加速度値は、加速度値としては比較的小さな値となる。そのため、地震以外の振動でも演算モードに移行し易い。
【0032】
これに対して、本実施形態において制御装置13bは移行回数に応じて閾値Asを変更する。移行回数が異なれば、閾値Asが異なるように変更される。具体的には、図4に示すように、移行回数が比較的多ければ、閾値Asは比較的大きくなるように設定される。一方、移行回数が比較的少なければ、閾値Asは比較的小さくなるように設定される。移行回数が比較的多い6時から10時頃までの時間帯および17時から20時頃までの時間帯における閾値Asは比較的大きい。一方、移行回数が比較的少ない深夜時間帯などにおける閾値Asは比較的小さい。
【0033】
このように閾値Asを一律に設定するのではなく、移行回数に応じて閾値Asが異なるように設定される。このため、加速度センサ13cにより検出される加速度が大きくなる時間帯であっても、通常モードから演算モードに移行し難くなる。なお、図4におけるAs1は閾値の下限値であり、As2は閾値の上限値である。すなわち、閾値Asの変更はAs1以上As2以下の範囲で行われる。なお、閾値の上限値As2は、ガスメータ13がガス流路を遮断すべき震度の地震を検出できる閾値を上限値としたものである。これは、ガスメータ13の保安機能上、大きな地震が発生した場合は遮断する必要があるが、閾値を際限なく上げてしまうと、大きな地震を検出できなくなるという観点に基づいて定めたものである。
【0034】
以上述べたように、本実施形態のガスメータ13によれば、通常モードから演算モードに移行する際に基準となる加速度についての閾値Asが移行回数に応じて変化される。この場合、制御装置13bは移行回数が多くなれば閾値Asを引き上げる。これにより、通常モードから演算モードに移行し難くなる。このことによって、例えば自動車や列車の通過による振動等に起因する多くのノイズを受けることを契機として予期せず通常モードから演算モードに移行してしまうことを抑えることができる。これにより、消費電力を従来よりも抑制することが可能となる。また、ガスメータ13がガス流路を遮断すべき震度の地震を検出できるようにしながらも、振動が少ない時間帯においては比較的小さな地震をも検出することが可能となる。
【0035】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0036】
上記実施形態において、電池駆動を例えば10年間保証するという観点から、所定期間(1か月等)において許容できる移行回数の上限値を定めてもよい。また、過去の所定時間ごとの移行回数とそのときの閾値から、閾値変更後の所定期間の移行回数を予測し、予測した移行回数を上記の上限値以下にするよう変更後の閾値を決定してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、所定情報として通常モードから演算モードに移行する移行回数を用いたが、これに限定されるものではない。所定情報は、例えば道路工事や線路工事の工事時間の情報等であってもよい。この場合、工事が行われる時間帯に対応する閾値Asを引き上げることによって、通常モードから演算モードへの移行回数を低減できる。
【0038】
また、上記実施形態では、演算モードを、制御装置13bにより加速度に基づく地震指標値が演算される動作モードとしたが、これに限定されるものではない。演算モードは、消費電力が通常モードよりも大きい動作モードであればよく、例えば加速度センサ13cにより検出される加速度を制御装置13bが取得する回数が通常モードよりも多い動作モードとしてもよい。この場合、制御装置13bが加速度を取得する回数が多くなればこれに伴い消費電力が大きくなり得るので、閾値Asを引き上げることでこのような演算モードに移行し難くすることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、2つのガス容器11および2つのガス機器14を例示したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11は1つ又は3つ以上でもよく、ガス機器14は1つ又は3つ以上でもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、ガス容器11にガスの一例としてのLPガス(液化石油ガス)を充填したが、これに限定されるものではなく、ガス容器11に酸素等の他のガスを充填してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 センターサーバ
13 ガスメータ
13a 通信部
13b 制御装置
13c 加速度センサ
13d 記憶部
13e 人工知能
20 需要家宅
100 ガス管理システム
As 閾値
図1
図2
図3
図4