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特開2023-142757脱臭材及びその製造方法、並びに脱臭剤層用塗液の製造方法
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  • 特開-脱臭材及びその製造方法、並びに脱臭剤層用塗液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142757
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】脱臭材及びその製造方法、並びに脱臭剤層用塗液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20230928BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61L9/014
A61L9/01 K
B01J20/22 A
B01J20/30
B01J20/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049817
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高濱 良司
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB04
4C180BB05
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB09
4C180BB11
4C180CC04
4C180CC13
4C180CC15
4C180CC17
4C180DD09
4C180EA14X
4C180EA24Y
4C180EA26X
4C180EA26Y
4C180EA27Y
4C180EA28Y
4C180EA29X
4C180EA29Y
4C180EB15X
4C180EB22Y
4C180EB24Y
4C180EB36Y
4C180EB38Y
4C180EC01
4G066AA05A
4G066AA05B
4G066AA22A
4G066AA22B
4G066AA22C
4G066AA61A
4G066AA61B
4G066AA61C
4G066AB10A
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AC02D
4G066AC14D
4G066AC17D
4G066BA07
4G066BA36
4G066CA02
4G066CA52
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA12
4G066FA21
4G066FA28
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる脱臭材とその製造方法並びに脱臭剤層用塗液の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体10と、支持体10に固着した脱臭剤層20を備え、脱臭剤層20は、活性炭と、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールと、バインダーとを含有することを特徴とする、脱臭材1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に固着した脱臭剤層を備え、
前記脱臭剤層は、活性炭と、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールと、バインダーとを含有することを特徴とする、脱臭材。
【請求項2】
前記アミノトリアゾールが、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール及び4-アミノ-1,2,4-トリアゾールの一方又は両方である、請求項1に記載の脱臭材。
【請求項3】
前記支持体を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料が無機繊維である、請求項1又は2に記載の脱臭材。
【請求項4】
水に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールとを分散させた後、活性炭を添加し、さらに、バインダーを混合する、脱臭剤層用塗液の製造方法。
【請求項5】
前記活性炭を添加する際、さらに増粘剤を添加する、請求項4に記載の脱臭剤層用塗液の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の脱臭剤層用塗液の製造方法により、脱臭剤層用塗液を製造する工程、
得られた脱臭剤層用塗液を支持体に塗布・含浸する工程、
前記脱臭剤層用塗液が塗布・含浸された支持体を乾燥する乾燥工程、
を備えることを特徴とする、脱臭材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭材及びその製造方法、並びに脱臭剤層用塗液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化や健康志向の高まり等により、住居、オフィス、工場、自動車等さまざまな生活空間において、エアコン、空気清浄機、加湿機、除湿機等の空調機器が広く使われている。これらの空調機器では、浄化された空気を得るために種々のエアーフィルターが用いられている。
【0003】
エアーフィルターには、住居、オフィス、工場、自動車等の生活空間で存在する悪臭ガスを除去する機能が求められる。悪臭ガスの成分としては、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドをはじめとする低級アルデヒド類、アンモニア、トリメチルアミンをはじめとするアミン類、酢酸やイソ吉草酸をはじめとする低級脂肪酸類、メチルメルカプタンをはじめとするメルカプタン類、SO、NO、トルエンやキシレンをはじめとする芳香族炭化水素類などがある。
中でもアセトアルデヒドは、悪臭防止法で指定されている22種類の特定悪臭物質と厚生労働省が濃度指針値を定める13種類の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)の両方に該当する。
【0004】
一般的に脱臭用薬剤として使用されている活性炭は多くの臭気ガス成分に効果があるが、アルデヒド類の吸着は困難である(特許文献1)。
アルデヒド類の除去には、酸ヒドラジドが有効であることが知られている(特許文献2)。しかし、酸ヒドラジドはアルデヒド類以外の臭気ガスには効果が殆どない。
【0005】
そこで、活性炭と酸ヒドラジドとを併用することが考えられるが、併用した場合、活性炭が触媒となって酸ヒドラジドの官能基(アミン基)が酸化されてしまいアルデヒド類に対する性能が低下してしまうことが知られている(非特許文献1)。
脱臭材は、支持体に脱臭用薬剤を含有するスラリーを塗布して乾燥することにより得られる。脱臭用薬剤としての活性炭は、内部の水が充分除去されるように乾燥することが必要であるところ、製造効率を考慮して高温で乾燥すると、共存する酸ヒドラジドの性能低下がより顕著となる。
【0006】
アセトアルデヒドの除去には、アミノトリアゾールも有効であることが知られている(特許文献3)。
そこで、活性炭とアミノトリアゾールとを併用することが考えられるが、アミノトリアゾールは、酸ヒドラジドと比較すると、吸着スピードが劣っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-58075号公報
【特許文献2】国際公開第2009/122975号
【特許文献3】特開2004-2523号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】化学工学論文集、2006年、第32巻、第1号、P72-P78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる脱臭材とその製造方法並びに脱臭剤層用塗液の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を採用した。
[1]支持体と、前記支持体に固着した脱臭剤層を備え、
前記脱臭剤層は、活性炭と、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールと、バインダーとを含有することを特徴とする、脱臭材。
[2]前記アミノトリアゾールが、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール及び4-アミノ-1,2,4-トリアゾールの一方又は両方である、[1]に記載の脱臭材。
[3]前記支持体を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料が無機繊維である、[1]又は[2]に記載の脱臭材。
[4]水に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールとを分散させた後、活性炭を添加し、さらに、バインダーを混合する、脱臭剤層用塗液の製造方法。
[5]前記活性炭を添加する際、さらに増粘剤を添加する、[4]に記載の脱臭剤層用塗液の製造方法。
[6][4]又は[5]に記載の脱臭剤層用塗液の製造方法により、脱臭剤層用塗液を製造する工程、
得られた脱臭剤層用塗液を支持体に塗布・含浸する工程、
前記脱臭剤層用塗液が塗布・含浸された支持体を乾燥する乾燥工程、
を備えることを特徴とする、脱臭材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の脱臭材は、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる。
また、本発明の脱臭剤層用塗液の製造方法によれば、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる脱臭剤層を得るための塗液を製造できる。
また、本発明の脱臭材の製造方法によれば、多くの臭気ガス成分とアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる脱臭材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1実施形態に係る脱臭材の模式的部分断面図である。
図2】本発明の脱臭材を構成する支持体の一態様を示す平面図である。
図3】本発明の脱臭材を構成する支持体の他の態様を示す平面図である。
図4】初期性能試験の結果を示す図である。
図5】減衰試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
<脱臭材>
図1は、本発明の1実施形態に係る脱臭材1の模式的部分断面図である。本実施形態の脱臭材1は、支持体10と支持体10の両面に各々固着した脱臭剤層20とを備えている。
【0015】
[支持体]
支持体10を構成する材料は、脱臭剤層20を構成する材料を固着でき、形状を維持できるものであれば特に限定はなく、無機材料、有機材料、あるいはこれらの組み合わせで構成することができる。
【0016】
また、支持体10を構成する材料は、不織布や織布としやすく、毛細管現象で吸液し薬液を保持しやすいことから、繊維状であることが好ましい。特に不織布は、湿式抄紙により容易に形成することができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維等が挙げられる。中でもガラス繊維は、人体に対する安全面やコストの点で好ましい。有機繊維としては、パルプ、樹脂繊維等が挙げられる。
【0017】
支持体10は、無機繊維を30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。無機繊維を含有することにより、高耐熱性、高断熱性、不燃性等を備えることができる。
支持体10を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料は無機繊維であることが好ましい。
また、支持体10を、無機繊維と有機繊維を併用して構成することも好ましい。無機繊維に加えて有機繊維を含むことにより、成形性が向上する。
【0018】
支持体10の坪量には特に限定はないが、不織布とする場合、10~100g/mとすることが好ましく、15~60g/mとすることがより好ましい。坪量が好ましい範囲の下限値以上であれば、不織布および該不織布から得られるコルゲート形状等に成形した支持体10の強度が充分に得られる。坪量が好ましい範囲の上限値以下であれば、厚みが抑えられ圧力損失も抑制できる。
【0019】
支持体10の形状に特に限定はなく、不織布等をシート状のまま用いてもよい。シート状の場合、エアーフィルターの用途の他に、室内や車内の脱臭シートや壁紙などに使用できる。
脱臭材1をエアフィターとして使用する場合は、エアとの接触面積を大きくしやすく、かつ、安定した形状を保ち安いことから、段ボールの断面のようなコルゲート形状や、ジグザク状に折り畳んだプリーツ形状とすることが好ましい。
【0020】
中でも、コルゲート形状は、圧力損失が小さいエアーフィルターとできるだけでなく、脱臭剤層20を構成するためのスラリーの塗布・含浸、及びその乾燥が容易であって、高い生産性で脱臭材1を得られるので好ましい。
コルゲート形状としては、例えば図2の第1シート11、図3の第2シート12に示すように、ライナー部材15とコルゲート部材16とが積層したものを支持体として使用することができる。
【0021】
エアーフィルターとして使用する場合、コルゲート部材16のピッチは、2~8mmが好ましく、4~6mmがより好ましい。また、コルゲート部材16の高さは1~5mmが好ましく、2~4mmがより好ましい。
コルゲート部材16のピッチと高さは、均一である必要はなく、例えば、各段に異なる高さやピッチのコルゲート部材16を用いてもよい。また、各段に同一の高さやピッチのコルゲート部材16を用いた場合、その位相は同一でも異なっていてもよい。
【0022】
エアーフィルターとして使用する場合、脱臭材1の支持体10は、例えば図2の第1シート11、図3の第2シート12を、交互に2層以上重ねたものであってもよい。その場合、第1シート11のライナー部材15と第2シート12のライナー部材15とが交差する方向に重ねることが、臭気ガスとの接触効率の点で好ましい。
【0023】
[脱臭剤層]
脱臭剤層20は、活性炭、機能材、酸ヒドラジド、アミノトリアゾール、及びバインダーを含有する層である。
機能材は、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方である。シリカゲル及びゼオライトは、酸ヒドラジドと共存させても酸ヒドラジドの機能を低下させることがない。脱臭剤層20において、酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールは、主として機能材に担持された状態で存在していると考えられる。
【0024】
(活性炭)
活性炭は、大きな表面積と細孔容積を有するため、その物理吸着能により、一般的な空気中の臭気物質を除去する効果がある。本実施形態に用いる活性炭は粉末状であることが好ましい。
活性炭のレーザー回析・散乱法による体積基準の平均粒子径D50は、5~150μmであることが好ましい。ただし、上記粒子径範囲は、平均粒子径であるため、その前後の粒子径の活性炭粉末も含まれる。
【0025】
活性炭粉末の比表面積(窒素吸着量に基づいて算出されるBET法)は、500~2000m/gであることが好ましい。
比表面積が好ましい下限値以上であることにより、エアとの接触面積が増大し、悪臭成分の吸着量を充分大きくすることができる。比表面積が好ましい上限値以下であることにより、コストと性能のバランスをとることができる。
【0026】
活性炭の原料としては、ヤシ殻、石炭、木質、フェノール樹脂等の樹脂、古タイヤ等が挙げられる。これらの原料を加熱焼成し、薬剤やガスにより適宜賦活処理を施したり、酸性薬剤で適宜洗浄処理を施したりすることで、活性炭の細孔を発達させることができる。
焼成、賦活後には、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を使用して粉砕することにより、活性炭粉末を得られる。
【0027】
脱臭剤層に占める活性炭の割合は、乾燥固形分として、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。活性炭の割合を機能材の割合より少なくすることで、酸ヒドラジドの性能低下を抑制することができる。脱臭剤層に占める活性炭の割合が好ましい上限値以下であることにより、酸ヒドラジドの性能低下を抑制することができる。脱臭剤層に占める活性炭の割合が好ましい下限値以上であることにより、アルデヒド類以外の多くの臭気ガス成分の脱臭効果に優れる。
【0028】
(機能材)
シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方から選択される機能材は多孔性粉体である。
シリカゲルは、二酸化ケイ素を主成分とした一次粒子の凝集体であり気相法、湿式法(沈降法)、ゾルゲル法など各種方法により得ることができる。シリカゲルは、所望の特性が得られるものであれば、どのような方法にて得られるものでも用いることができる。
シリカゲルは、酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールの担体として機能する。
【0029】
ゼオライトとしては、ゼオライトY型、ゼオライトX型、ゼオライトZSM-5型などが例示できる。中でもY型は、酸ヒドラジドとアミノトリアゾール担持量単位重量当りの脱臭効果が高いので好ましい。
ゼオライトは、酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールの担体として機能する他、酢酸、メチルメルカプタンなどの脱臭剤としても機能する。ゼオライトを使用することにより、活性炭の機能を補うことが可能である。
【0030】
機能材としては、安価であることからシリカゲルが好ましい。また、シリカゲルとゼオライトを併用し、酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールの担体として機能させる他、活性炭の機能を補うことも好ましい。
機能材のレーザー回析・散乱法による体積基準の平均粒子径D50は、5~150μmであることが好ましい。ただし、上記粒子径範囲は、平均粒子径であるため、その前後の粒子径の機能材も含まれる。
【0031】
機能材の比表面積(窒素吸着量に基づいて算出されるBET法)は、50~700m/gが好ましく、200~600m/gがより好ましい。
比表面積が好ましい下限値以上であることにより、担持された酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールとエアとの接触面積が増大し、アルデヒドガス吸着量を充分大きくすることができる。比表面積が好ましい上限値以下であることにより、細孔径が小さくなりすぎず、細孔内に酸ヒドラジド及びアミノトリアゾールが入ることが妨げられない。
【0032】
脱臭剤層に占める機能材の割合は、乾燥固形分として、40~80質量%であることが好ましく、45~70質量%であることがより好ましく、50~60質量%であることがさらに好ましい。脱臭剤層に占める機能材の割合が好ましい下限値以上であることにより、酸ヒドラジドの担体としての機能を発揮する。脱臭剤層に占める機能材の割合が好ましい上限値以下であることにより、活性炭の割合が増え、アルデヒド類以外の多くの臭気ガス成分に脱臭効果が高まる。
【0033】
(酸ヒドラジド)
酸ヒドラジドは、アルデヒド類を脱臭するために用いる。酸ヒドラジドは、アセトアルデヒド等に対して良好な化学吸着性能を発現する。
酸ヒドラジドとしては、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジドなどが例示できる。中でも酸ジヒドラジドが好ましく、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドがより好ましく、アジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。
酸ヒドラジドは、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
脱臭剤層に占める酸ヒドラジドの割合は、乾燥固形分として、1.5~10質量%であることが好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~5質量%が更に好ましい。脱臭剤層に占める酸ヒドラジドの割合が好ましい下限値以上であることにより、アルデヒド類の吸着性能が向上する。脱臭剤層用塗液に占める酸ヒドラジドの割合が好ましい上限値以下であることにより、アルデヒド類以外の多くの臭気ガス成分の脱臭効果が高まる。
【0035】
脱臭剤層における酸ヒドラジドの含有量(乾燥固形分)は、機能材(乾燥固形分)の含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。脱臭剤層における機能材の含有量に対する酸ヒドラジドの割合が好ましい下限値以上であることにより、機能材に担持した効果(吸着速度の向上)が発揮される。脱臭剤層における機能材の含有量に対する酸ヒドラジドの割合が好ましい上限値以下であることにより、機能材に対する酸ヒドラジドの量が最適化され経済的である。
【0036】
(アミノトリアゾール)
アミノトリアゾールとしては、例えば、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾールを挙げることができる。
これらの中でも、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾールの一方又は両方であることが好ましい。
アミノトリアゾールは、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
脱臭剤層に占めるアミノトリアゾールの割合は、乾燥固形分として、1.5~10質量%であることが好ましく、2~8質量%がより好ましく、3~5質量%が更に好ましい。
脱臭剤層に占めるアミノトリアゾールの割合が好ましい下限値以上であることにより、アルデヒド類の吸着性能が向上する。脱臭剤層用塗液に占めるアミノトリアゾールの割合が好ましい上限値以下であることにより、アルデヒド類以外の多くの臭気ガス成分の脱臭効果が高まる。
【0038】
脱臭剤層用塗液におけるアミノトリアゾールの含有量(乾燥固形分)は、機能材(乾燥固形分)の含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
脱臭剤層用塗液における機能材の含有量に対するアミノトリアゾールの割合が好ましい下限値以上であることにより、機能材に担持した効果(吸着速度の向上)が発揮される。脱臭剤層用塗液における機能材の含有量に対するアミノトリアゾールの割合が好ましい上限値以下であることにより、機能材に対するアミノトリアゾールの量が最適化され経済的である。
【0039】
脱臭剤層用塗液におけるアミノトリアゾールの含有量(乾燥固形分)は、酸ヒドラジド(乾燥固形分)の含有量に対して、85~115質量%であることが好ましく、90~110質量%であることがより好ましい。
上記範囲とすることにより、アルデヒド類の吸着スピードと吸着量の両立を図りやすい。
【0040】
(バインダー)
バインダーとしては、公知の無機バインダー、有機バインダーが使用できる。
無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、アルミナゾル、アルコキシラン等が挙げられる。有機バインダーとしては、例えば、エマルション系の有機バインダーが挙げられ、特にアクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、アクリル-シリコン樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、酢酸ビニル-アクリル樹脂、ポリシロキサン-アクリル樹脂等のアクリル系エマルション、及びブタジエン樹脂等のラテックス系エマルション等を用いることができる。
中でも、活性炭の固着性能にすぐれ、活性炭の細孔に残存しにくいバインダー、例えば水性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0041】
脱臭剤層に占めるバインダーの割合は、バインダーの種類にもよるが、乾燥固形分として、2~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。脱臭剤層に占めるバインダーの割合が好ましい下限値以上であることにより、粉落ちが抑制される。脱臭剤層用塗液に占めるバインダーの割合が好ましい上限値以下であることにより、活性炭の脱臭効果の低下を防ぐことができる。
【0042】
(増粘剤)
脱臭剤層20は、脱臭剤層20を形成するためスラリーに含有させた成分として、増粘剤を含有していてもよい。
増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、カルボン酸系共重合体(アンモニウム塩)、カルボン酸系共重合体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなカルボン酸系共重合体ナトリウム塩)、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型アクリル系ポリマー、架橋型ポリアクリル酸等を挙げることができる。
【0043】
増粘剤を使用する場合、脱臭剤層用塗液に占める増粘剤の割合は、増粘剤の種類にもよるが、乾燥固形分として、0.1~3質量%が好ましい。上記割合が好ましい下限値以上であることにより、製造の際の活性炭および機能材の分散性が向上する。上記割合が好ましい上限値以下であることにより、製造の際の増粘過多による分散性悪化を防ぐことができる。
【0044】
(その他の成分)
脱臭剤層20は、必要に応じて、難燃剤、着色剤、濡れ剤、紙力向上剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等を含有してもよい。pH調整剤としては、有機酸類、無機酸類が挙げられる。中でも有機酸類は、アンモニア、トリメチルアミンなどの脱臭に効果を示すため好ましい。有機酸類としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸及びニコチン酸などが例示できる。
【0045】
[脱臭材の他の態様]
図1に示した脱臭材1は、支持体10の両面に脱臭剤層20が形成された態様としたが、脱臭剤層20は支持体10の一方の面のみに形成されていてもよい。
また、脱臭剤層20は、一方の面又は両面の全面に形成されていることが好ましいが、部分的に形成されていてもよい。
また、脱臭剤層20に加えて、他の脱臭剤層を有していてもよい。
また、エアーフィルターとして使用する場合、脱臭材1だけでエアーフィルターを構成してもよいが、脱臭材1と、他の脱臭材を組み合わせてエアーフィルターを構成してもよい。
【0046】
<脱臭剤層用塗液>
脱臭剤層用塗液は、脱臭剤層20を形成するための塗液であり、活性炭と、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールと、バインダーを含有する。
媒体としては安全性ならびに作業性の観点から水系溶媒が好ましく、通常水が使用される。
【0047】
脱臭剤層用塗液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、脱臭剤層用塗液を支持体10に塗布・含浸させる際に、塗液を常時撹拌することが困難である場合や、塗液が水やバインダー成分を含むエマルションと、活性炭及び機能材とに分離してしまう場合などに特に好適に用いられる。
【0048】
脱臭剤層用塗液の固形分濃度は、塗布・含侵する方法に応じて適宜調整でき、10~50質量%程度で調製することが好ましい。脱脱臭剤層用塗液の固形分濃度が好ましい下限値以上であることにより、アルデヒド類およびアルデヒド類以外の臭気成分の除去効果が高まる。脱臭剤層用塗液の固形分濃度が好ましい上限値以下であることにより、薬品配合量が最適化され経済的である。
【0049】
<脱臭剤層用塗液の製造方法>
脱臭剤層用塗液の製造方法に特に限定はないが、水に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールとを分散させた後、活性炭を添加し、さらに、バインダーを混合することが好ましい。
【0050】
機能材と、酸ヒドラジドと、アミノトリアゾールとを含有する水分散液を調製し、得られた水分散液に、後から活性炭を添加することで、酸ヒドラジドとアミノトリアゾールの機能を発揮しやすい。これは、酸ヒドラジドとアミノトリアゾールが、活性炭が添加される前に機能材に担持されるため、酸ヒドラジド等と活性炭の接触を減らせるためと思われる。
また、バインダーの混合を最後に行うことで、活性炭や機能材の細孔へのバインダーの浸透を抑制することができる。
【0051】
<脱臭材の製造方法>
本実施形態の脱臭材は、支持体を製造する工程、脱臭剤層用塗液を製造する工程、得られた脱臭剤層用塗液により、脱臭剤層を形成する工程により製造できる。
脱臭剤層を形成する工程は、脱臭剤層用塗液を支持体に塗布・含浸する工程、脱臭剤層用塗液が塗布・含浸された支持体を乾燥する乾燥工程を含む。
脱臭剤層用塗液を製造する工程は、上記の脱臭剤層用塗液の製造方法によることが好ましい。
以下図1の脱臭材1を例にとって、具体的に説明する。
【0052】
[支持体の製造]
脱臭材1の支持体10の製造方法に特に限定はないが、湿式抄紙により無機繊維を含有する不織布を得て支持体10を構成する場合、使用する無機繊維の加重平均繊維径は、3~10μmが好ましく、4~7μmがより好ましい。加重平均繊維径が好ましい下限値以上であれば人体に対して安全である。加重平均繊維径が好ましい上限値以下であれば得られる支持体の強度が優れる。なお、加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0053】
また、使用する無機繊維の加重平均繊維長は、1~15mmであることが好ましく、1~10mmであることがより好ましい。加重平均繊維長が好ましい下限値以上であれば、得られる支持体の強度が優れる。加重平均繊維長が好ましい上限値以下であれば、得られる支持体の地合が優れる。なお、長さ加重平均繊維長は、100本の繊維の繊維長を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0054】
湿式抄紙により無機繊維と有機繊維を含む不織布を得て支持体10を構成する場合、無機繊維と共に使用する有機繊維(ただし、バインダー成分として使用され、製造時の加熱等により、繊維形状を留めない有機繊維を除く。以下、同じ。)の加重平均繊維径は、特に制限はないが、無機繊維の加重平均繊維径に対して3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。
【0055】
有機繊維の加重平均繊維径が無機繊維の加重平均繊維径の3倍以下であると、有機繊維による支持体の剛性の低減効果や耐折強度の向上効果が向上する傾向にある。有機繊維の加重平均繊維径の下限は特に制限はされないが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。なお、繊維径の加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0056】
また、無機繊維と共に使用する有機繊維のアスペクト比(加重平均繊維径に対する加重平均繊維長の比)は、300~5000であることが好ましく、400~3000であることがより好ましい。アスペクト比が好ましい下限値以上であれば、剛性の低減効果が得られ、耐折強度も大きくなるため、コルゲート山が裂けにくくなり、紙粉が発生しにくくなる傾向にある。アスペクト比が好ましい上限値以下であれば、繊維が結束しにくくなる傾向にある。
【0057】
湿式抄紙により不織布を得るための原料スラリーは、無機繊維(主にガラス繊維)および必要に応じて有機繊維を含有するとともに、任意に有機又は無機のバインダー成分、助剤、添加剤、充填剤等を含んでもよい。また、媒体としては通常水が使用される。
【0058】
有機バインダー成分は、繊維同士を接着させる成分である。有機バインダー成分としては、不織布を製造する際の加熱により少なくとも一部が溶融する熱可塑性樹脂等が挙げられる。有機バインダー成分の形態には制限はなく、繊維状、粒子状、エマルション、液状等のいずれであってもよい。有機バインダー成分としては、熱硬化型樹脂も使用できる。
【0059】
無機バインダー成分は、特に制限されないが、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、シリカゾル、アルミナゾル、セピオライト、アルコキシラン等が挙げられる。
【0060】
湿式抄紙は、上述した各成分と水(媒体)とを含有する原料スラリーを調製した後、該原料スラリーを公知の抄紙機で抄紙する方法により行うことができる。抄紙機としては、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機が挙げられる。これら抄紙機のうち、同種または異種の抄紙機を組み合わせて多層抄紙を行ってもよい。抄紙後の脱水および乾燥の方法にも、特に制限はない。
【0061】
なお、バインダー成分は、原料スラリーに添加する以外に、抄紙後の不織布に対して、バインダー成分を含む液をスプレー塗布、カーテン塗布、含浸塗布、バー塗布、ロール塗布、ブレード塗布等の方法で付着(外添塗布)させてもよい。外添塗布の対象である不織布は、乾燥後の乾燥不織布であってもよいし、乾燥前の湿潤ウェブであってもよい。
【0062】
支持体10を、第1シート11、第2シート12のようなコルゲート形状とする場合、得られた不織布に対してコルゲート加工を施すことにより、波型(凹凸)を付与することによりコルゲート部材16が得られる。
次いで、得られたコルゲート部材16とライナー部材15(コルゲート加工をしていない不織布)とを接着して片波成形体を製造する。そして、複数の片波成形体を積層したり、円筒状にしたりすることで、コルゲート形状とすることができる。
【0063】
平面視が図2の第1シート11、図3の第2シート12のような形状で、紙面の厚さ方向に厚みを有するシート状の支持体とするためには、ライナー部材15とコルゲート部材16とを積層した後、その積層方向と直交する面で所定の厚みに切断すればよい。
前述のように、図2の第1シート11と図3の第2シート12を、交互に2層以上重ねて互いに接着してもよい。
【0064】
ライナー部材15とコルゲート部材16の接着、第1シート11と第2シート12の接着等に使用する接着剤としては、コロイダルシリカ、水ガラス、セピオライト、アルミナゾル等の無機糊が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。また、接着剤としては、エチレン-ビニルアルコール等の有機糊を併用してもよい。
支持体10は、そのまま用いても、焼成して用いてもよい。
【0065】
[脱臭剤層の形成]
本実施形態の脱臭材の製造方法において、脱臭剤層の形成は、脱臭剤層用塗液を支持体に塗布・含浸する工程、前記脱臭剤層用塗液が塗布・含浸された支持体を乾燥する乾燥工程を備える。
【0066】
脱臭剤層用塗液を支持体10に塗布・含浸する方法としては、公知の塗布方法、含浸方法が使用でき、特に限定するものではないが、脱臭剤層用塗液の液溜に支持体を浸ける、脱臭剤層用塗液によるカーテンに支持体を潜らせるなど、適宜選択するとよい。塗布・含浸の工程は複数回行ってもよい。
【0067】
脱臭剤層用塗液は、支持体10の単位面積あたりの活性炭量(乾燥固形分)が20~150g/mとなるように塗布・含浸することが好ましく、50~130g/mとなるように塗布・含浸することがより好ましい。
また、脱臭剤層用塗液は、支持体10の単位面積あたりの酸ヒドラジド量とアミノトリアゾールの合計量(乾燥固形分)が10~200g/mとなるように塗布することが好ましく、40~160g/mとなるように塗布・含浸することがより好ましい。
【0068】
脱臭剤層用塗液の塗布・含浸量が好ましい下限値以上であることにより、悪臭成分の除去効果を充分に得られる。脱臭剤層用塗液の塗布・含浸量が好ましい上限値以下であることにより、余剰液の除去が容易で安定した塗膜を確保できる。
【0069】
脱臭剤層用塗液を塗布・含浸する工程の後、乾燥工程を行う。
乾燥工程の温度は、105~120℃であることが好ましい。乾燥工程の温度が好ましい下限値以上であることにより、乾燥工程の時間を短くすることができる。乾燥工程の温度が好ましい上限値以下であることにより、活性炭の発火リスクを低減でき安全に生産することができる。また、酸ヒドラジドの機能低下を抑制できる。
なお、乾燥工程における乾燥方法は特に限定するものではなく、公知の方法が使用できる。
【0070】
[作用効果]
本実施形態の脱臭剤によれば、活性炭を使用しつつ、アルデヒド類の除去効果にも優れる。
活性炭と共に酸ヒドラジドを使用すると、酸ヒドラジドの機能が低下し、アルデヒドの吸着量が落ちるが、本実施形態によれば、活性炭の影響を受けにくいアミノトリアゾールを併用することにより、アルデヒドの吸着量低下を抑制できる。
【0071】
また、アミノトリアゾールは、アルデヒドの吸着スピードに劣るが、アミノトリアゾールを併用しても、アルデヒド類除去剤として酸ヒドラジドのみを使用する場合と比較して、ほぼ同等の吸着スピードが得られることがわかった。これは、酸ヒドラジドの官能基(アミン基)量が活性炭の影響により減少しても、吸着スピードは残存する酸ヒドラジドの官能基に依存するためであると考えられる。
【実施例0072】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0073】
<原料>
各例の脱臭剤層用塗液は、下記原料を用いて調製した。
酸ヒドラジド:アジピン酸ヒドラジド(ADH)
トリアゾール:4-アミノ-1,2,4-トリアゾール
【0074】
シリカゲル:ミズカシル(登録商標)P-758C, 水澤化学工業社製
ゼオライト1:Y型ゼオライト
ゼオライト2:ZSM-5型ゼオライト
【0075】
活性炭:粉末活性炭 SA1000、フタムラ化学社製、含有水分50質量%
増粘剤:カルボキシメチルセルロース
pH調整剤:有機酸
バインダー:スチレン-アクリル樹脂
【0076】
<脱臭剤層用塗液の調製>
各例の脱臭剤層用塗液は、表1に示す配合(単位:固形分質量部)の原料を用い、下記の手順で調製した。
まず、水にアルデヒド吸着材と機能材を分散させて分散液を得た。この分散液に活性炭、増粘剤の順に添加し、混合した。次いで、有機酸とバインダーを加え、各例の脱臭剤層用塗液を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
<初期性能試験>
各例の脱臭剤層用塗液を用いたフィルター(吸着材)の吸着スピードは、以下の初期性能試験により評価した。
【0079】
フィルター(吸着材)における支持体としては、王子エフテックス製ガラスペーパーPHN-50G(ガラス繊維とパルプを用いたガラス製不織布、坪量50g/m)を、図2の第1シート11と同等のコルゲート形状(縦100mm×横100mm、厚さ10mm、1インチ四方あたりのセル数約70。コルゲート部材16のピッチは5.9mm、高さは3.5mm。)としたものを使用した。
【0080】
各例の脱臭剤層用塗液24g(水を含む)を、上記支持体に含浸させた。含浸後、105℃で30分間加熱して乾燥させ、各例のフィルターを得た。
試験容器(内容積1mのアクリルチャンバー)にアクリル製風洞(ファン付き)をセットし、その風洞に得られたフィルターを設置した。
【0081】
その後、試験容器内に、試験容器内のガス(試験ガス)中のアセトアルデヒドの初期濃度が約20ppmになるようにアセトアルデヒドを注入してから、ファンを運転しフィルターに、風速1.6m/sで約30分間試験ガスを通風させ、その間のアセトアルデヒド濃度変化を求めた。
【0082】
なお、初期アセトアルデヒド濃度と、アセトアルデヒドを注入後、t分間通風させた後のアセトアルデヒド濃度は、何れも、アセトアルデヒドを注入する前の試験容器内のアセトアルデヒド濃度(バックグラウンド濃度)を差し引いた値である。
結果を図4に示す。なお図4において、自然減衰は、試験容器の風洞にフィルターを設置しなかった場合のアセトアルデヒド濃度変化である。
【0083】
図4に示すように、酸ヒドラジドを用いず、アミノトリアゾールを用いた比較例2は、酸ヒドラジドを用いた比較例1よりも吸着スピードに劣っており、アミノトリアゾールだけでは、充分な吸着スピードを確保できないことがわかった。
これに対して、酸ヒドラジドとアミノトリアゾールを併用した実施例1は、酸ヒドラジドの使用量が比較例1の半量であるにもかかわらず、比較例1と比較して殆ど遜色のない吸着スピードを示した。
【0084】
<減衰試験>
各例の脱臭剤層用塗液を用いたフィルター(吸着材)の吸着量は、以下の減衰試験により評価した。
【0085】
フィルター(吸着材)における支持体としては、王子エフテックス製ガラスペーパーPHN-50G(ガラス繊維とパルプを用いたガラス製不織布、坪量50g/m)を、図2の第1シート11と同等のコルゲート形状(縦50mm×横50mm、厚さ5mm、1インチ四方あたりのセル数約70。コルゲート部材16のピッチは5.9mm、高さは3.5mm。)としたものを使用した。
【0086】
各例の脱臭剤層用塗液4g(水を含む)を、上記支持体に含浸させた。含浸後、105℃で30分間加熱して乾燥させ、各例のフィルターを得た。
試験容器(内容積5Lのフラスコ)にアクリル製風洞(ファン付き)をセットし、その風洞に得られたフィルターを設置した。
【0087】
その後、試験容器内に、試験容器内のガス(試験ガス)中のアセトアルデヒドの初期濃度が500~1000ppmになるようにアセトアルデヒドを注入してから、ファンを運転しフィルターに、風速1.0m/sで15分間試験ガスを通風させる試験を4~7回繰り返した。
【0088】
各回の通風前後のアセトアルデヒド濃度の差から、その回のアルデヒドの吸着量求めた。図5に、各回の通風後のアセトアルデヒド濃度(終了濃度)と累積吸着量との関係を示す。図5において、終了濃度に対する累積吸着量の上昇率が低下した部分は、累積吸着量が、当該フィルターの平衡吸着量に近づいたことを示す。
【0089】
図5に示すようにアミノトリアゾールを用いず、酸ヒドラジドを用いた比較例1は、アミノトリアゾールを用いた比較例2よりも吸着量に劣っており、酸ヒドラジドだけでは、活性炭の存在下で充分な吸着量を確保できないことがわかった。
これに対して、酸ヒドラジドとアミノトリアゾールを併用した実施例1は、比較例1と比較して吸着量が増加しており、活性炭の存在下においても、一定の吸着量を確保できることがわかった。
【符号の説明】
【0090】
1 脱臭材
10 支持体
11 第1シート
12 第2シート
15 ライナー部材
16 コルゲート部材
20 脱臭剤層
図1
図2
図3
図4
図5