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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142759
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/67 20210101AFI20230928BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230928BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230928BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20230928BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20230928BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230928BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20230928BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C25B9/67
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/021
C25B9/19
F28D20/00 G
F28D20/02 D
C09K5/06 Z
C09K5/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049819
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】香山 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】若尾 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 常治
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC05
4K021CA10
4K021CA12
4K021DB04
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】水電解部による電解反応の反応効率を維持することができる技術を提供する。
【解決手段】水電解システムは、電解質膜を用いた水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、水電解部の内部を一部が通過し、水電解部との間で熱交換を行う熱媒体を循環する熱媒体流路を形成する熱媒体配管と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解システムであって、
電解質膜を用いた水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、
前記水電解部の内部を一部が通過し、前記水電解部との間で熱交換を行う熱媒体を循環する熱媒体流路を形成する熱媒体配管と、を備える、
水電解システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水電解システムであって、さらに、
前記熱媒体配管から分岐したバイパス配管と、
前記バイパス配管の一部を収容し、前記バイパス配管内を流通する前記熱媒体との熱交換により蓄熱と放熱が可能な蓄熱材を収容する蓄熱器と、を備える、
水電解システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水電解システムであって、
前記バイパス配管は、
前記熱媒体配管における第1位置から分岐するとともに、前記熱媒体配管が前記水電解部の内部から退出する退出位置を基準として前記第1位置より下流側の第2位置において前記熱媒体配管と合流する第1バイパス配管と、
前記熱媒体配管において前記退出位置を基準として前記第2位置より下流側の第3位置から分岐するとともに、前記第3位置より下流側の第4位置において前記熱媒体配管と合流する第2バイパス配管と、を含み、
前記蓄熱器は、前記第1バイパス配管及び前記第2バイパス配管の一部を収容し、
前記蓄熱材は、前記第1バイパス配管内及び前記第2バイパス配管内を流通する前記熱媒体との熱交換を行い、
さらに、前記第1位置から前記第2位置までの前記熱媒体の経路である第1経路を、前記熱媒体配管と前記第1バイパス配管との間で切り替える第1経路切替部と、
前記第3位置から前記第4位置までの前記熱媒体の経路である第2経路を、前記熱媒体配管と前記第2バイパス配管との間で切り替える第2経路切替部と、
前記水電解システムを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記蓄熱器に蓄熱させる蓄熱モードを実行する場合、前記第1経路を前記第1バイパス配管とし、
前記蓄熱器に放熱させる放熱モードを実行する場合、前記第2経路を前記第2バイパス配管とする、水電解システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水電解システムであって、
前記制御部は、前記蓄熱モード時に、前記蓄熱材の温度が蓄熱目標温度以上になった場合、もしくは、前記熱媒体配管内を流通する前記熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、前記第1経路を前記第1バイパス配管から前記熱媒体配管に切り替える、水電解システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の水電解システムであって、
前記制御部は、前記放熱モード時に、前記蓄熱材の温度が放熱規定温度未満になった場合、もしくは、前記熱媒体配管内を流通する前記熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった場合、前記第2経路を前記第2バイパス配管から前記熱媒体配管に切り替える、水電解システム。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の水電解システムであって、
前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材もしくは化学蓄熱材である、水電解システム。
【請求項7】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の水電解システムであって、
前記蓄熱材は、物質の吸着及び脱離を介して放熱及び蓄熱が可能な吸着材である、水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解質膜を用いた水の電気分解(電解)により水素を生成する水電解システムが知られている。一般に、水の電解反応は低温時には反応効率が低下することから、反応に用いられる水はある程度高温であるのが好ましい。特許文献1には、太陽熱蓄熱器に蓄えられて太陽光により加熱された水を、水電解セルに供給する水素・酸素ガス製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-195076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、曇りや雨などの悪天候時には太陽光の量は減少することから、特許文献1に記載の装置では、天候によっては、太陽熱蓄熱器に到達する太陽光の量の減少に伴い、加熱した水を水電解セルに供給することができず、水の電解反応の反応効率が低下する場合がある。このため、水の電解反応の反応効率を高く維持することについては、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、水電解部による電解反応の反応効率を高く維持することができる水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、水電解システムが提供される。この水電解システムは、電解質膜を用いた水の電気分解により酸素及び水素を生成する水電解部と、前記水電解部の内部を一部が通過し、前記水電解部との間で熱交換を行う熱媒体を循環する熱媒体流路を形成する熱媒体配管と、を備える。
【0008】
この構成によれば、熱媒体配管内を流通する熱媒体と水電解部との間で熱交換が行われる。水の電気分解(電解)を実行させるために水電解部に供給される電力のうち一部は、ジュール熱となる。ジュール熱によって水電解部の温度が上昇し続けると、水電解部による電解反応に用いられる電解質膜が劣化する可能性が高くなる。この構成によれば、そのような高温状態にある水電解部から熱媒体が熱を奪うことにより、水電解部を冷ますことができる。また、一般に、水電解部が低温状態になると、水電解部による電解反応の反応効率は低下する。よって、寒冷地、冬場、夜間等の状況下においては、水電解部による電解反応の反応効率は低下する傾向にある。この構成によれば、そのような低温状態にある水電解部に対して熱媒体から熱を与えることにより、水電解部を温めることができる。したがって、この構成によれば、熱媒体との熱交換により水電解部の温度を所望の温度に調整することによって、高温による電解質膜の劣化及び低温による反応効率の低下を抑制できることから、水電解部による電解反応の反応効率を高く維持することができる。
【0009】
(2)上記形態の水電解システムにおいて、さらに、前記熱媒体配管から分岐したバイパス配管と、前記バイパス配管の一部を収容し、前記バイパス配管内を流通する前記熱媒体との熱交換により蓄熱と放熱が可能な蓄熱材を収容する蓄熱器と、を備えてもよい。
この構成によれば、バイパス配管内を流通する熱媒体は、蓄熱器に収容されている蓄熱材との熱交換により、蓄熱材に蓄熱することと、蓄熱材から放熱させることと、が可能である。このため、水電解部から熱を奪った熱媒体は、バイパス配管内を流通して熱交換により蓄熱材に蓄熱することができる。したがって、水電解部で発生したジュール熱を蓄熱材に蓄熱することから、水電解部を冷却する冷却負荷を低減することができる。一方、熱媒体は、バイパス配管内を流通して熱交換により蓄熱材から放熱される熱を受け取り、その熱により水電解部を温めて電解反応の反応効率を高めることもできる。したがって、この構成によれば、水電解部を冷却する冷却負荷の低減と、水電解部による電解反応の反応効率の向上と、を両立することができる。また、蓄熱材に蓄熱される熱の熱源は、水電解部による電解反応で常時発生するジュール熱であることから、蓄熱材に対して定期的に熱を蓄熱することができる。したがって、水電解部による電解反応の反応効率を高く維持することができる。
【0010】
(3)上記形態の水電解システムにおいて、前記バイパス配管は、前記熱媒体配管における第1位置から分岐するとともに、前記熱媒体配管が前記水電解部の内部から退出する退出位置を基準として前記第1位置より下流側の第2位置において前記熱媒体配管と合流する第1バイパス配管と、前記熱媒体配管において前記退出位置を基準として前記第2位置より下流側の第3位置から分岐するとともに、前記第3位置より下流側の第4位置において前記熱媒体配管と合流する第2バイパス配管と、を含み、前記蓄熱器は、前記第1バイパス配管及び前記第2バイパス配管の一部を収容し、前記蓄熱材は、前記第1バイパス配管内及び前記第2バイパス配管内を流通する前記熱媒体との熱交換を行い、さらに、前記第1位置から前記第2位置までの前記熱媒体の経路である第1経路を、前記熱媒体配管と前記第1バイパス配管との間で切り替える第1経路切替部と、前記第3位置から前記第4位置までの前記熱媒体の経路である第2経路を、前記熱媒体配管と前記第2バイパス配管との間で切り替える第2経路切替部と、前記水電解システムを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蓄熱器に蓄熱させる蓄熱モードを実行する場合、前記第1経路を前記第1バイパス配管とし、前記蓄熱器に放熱させる放熱モードを実行する場合、前記第2経路を前記第2バイパス配管としてもよい。
この構成によれば、バイパス配管は、第1バイパス配管と、退出位置を基準として第1バイパス配管より下流側に設けられた第2バイパス配管と、を含む。そして、蓄熱モードを実行する場合、第1経路を第1バイパス配管とする。このため、水電解部から熱を奪った熱媒体は、第1バイパス配管内を流通して熱交換により蓄熱材に蓄熱することができる。第1バイパス配管は、退出位置を基準として第2バイパス配管よりも上流側に設けられていることから、退出位置から蓄熱器に到達するまでの流通距離に応じて増大する熱損失を抑えつつ水電解部から奪った熱を蓄熱材に蓄熱することができる。一方、この構成によれば、放熱モードを実行する場合、第2経路を第2バイパス配管とする。このため、熱媒体は、第2バイパス配管内を流通して熱交換により蓄熱材から放熱される熱を受け取り、その熱により水電解部を温めて電解反応の反応効率を高めることができる。第2バイパス配管は、退出位置を基準として第1バイパス配管よりも下流側に設けられていることから、蓄熱器から進入位置(熱媒体配管が水電解部に進入する位置)に到達するまでの流通距離に応じて増大する熱損失を抑えつつ蓄熱材から受け取った熱を水電解部に与えることができる。
【0011】
(4)上記形態の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記蓄熱モード時に、前記蓄熱材の温度が蓄熱目標温度以上になった場合、もしくは、前記熱媒体配管内を流通する前記熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、前記第1経路を前記第1バイパス配
管から前記熱媒体配管に切り替えてもよい。
蓄熱材が蓄熱目標温度以上になった以降も蓄熱モードを持続させると、蓄熱材が劣化する可能性が高くなる。また、水電解部で発生するジュール熱が減少して第1バイパス配管内を流通する熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、そのような熱媒体は蓄熱材に蓄熱するより蓄熱材から熱を放熱させる可能性が高い。したがって、この構成によれば、蓄熱材が劣化する可能性と、蓄熱モード時にも関わらず蓄熱材から熱が放熱される可能性と、を低減することができる。また、第1経路において、熱媒体配管を経由するより第1バイパス配管を経由する方が圧力損失が大きい場合には、そのような圧力損失を低減できることから、熱媒体を流通させるために消費されるエネルギー量を低減することができる。
【0012】
(5)上記形態の水電解システムにおいて、前記制御部は、前記放熱モード時に、前記蓄熱材の温度が放熱規定温度未満になった場合、もしくは、前記熱媒体配管内を流通する前記熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった場合、前記第2経路を前記第2バイパス配管から前記熱媒体配管に切り替えてもよい。
放熱規定温度未満になると第2バイパス配管内を流通する熱媒体から蓄熱材が熱を奪う可能性が高くなる。また、第2バイパス配管内を流通する熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった以降も放熱モードを持続させると、蓄熱材が放熱規定温度未満になった場合と同様に、第2バイパス配管内を流通する熱媒体から蓄熱材が熱を奪う可能性が上がっていく。したがって、この構成によれば、放熱モード時に蓄熱材が第2バイパス配管内を流通する熱媒体から熱を奪う可能性を低減することができる。また、第2経路において、熱媒体配管を経由するより第2バイパス配管を経由する方が圧力損失が大きい場合には、そのような圧力損失を低減できることから、熱媒体を流通させるために消費されるエネルギー量を低減することができる。
【0013】
(6)上記形態の水電解システムにおいて、前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材もしくは化学蓄熱材であってもよい。
この構成によれば、潜熱蓄熱材もしくは化学蓄熱材の状態変化により、第1バイパス配管内を流通する熱媒体からの蓄熱及び第2バイパス配管内を流通する熱媒体への放熱を実行することができる。
【0014】
(7)上記形態の水電解システムにおいて、前記蓄熱材は、物質の吸着及び脱離を介して放熱及び蓄熱が可能な吸着材であってもよい。
この構成によれば、吸着材による物質の吸着及び脱離により、第1バイパス配管内を流通する熱媒体からの蓄熱及び第2バイパス配管内を流通する熱媒体への放熱を実行することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、水電解システムの制御方法、水電解システムにおける水の電気分解を制御するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の水電解システムの構成を例示した説明図である。
図2】蓄熱器の内部の拡大図である。
図3】蓄熱モード時の流通経路を示した説明図である。
図4】放熱モード時の流通経路を示した説明図である。
図5】第2実施形態の水電解システムの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての水電解システム1の構成を例示した説明図である。水電解システム1は、水の電気分解により酸素及び水素を生成するシステムである。水電解システム1は、セルスタック10と、DC電源12と、コンバータ14と、水素気液分離器20と、凝縮器22と、酸素気液分離器30と、凝縮器32と、循環ポンプPM1と、タンク44と、循環ポンプPM2と、熱交換器46と、蓄熱器50と、制御部60と、を備える。また、水電解システム1は、第1混合物送出配管P1と、第2混合物送出配管P2と、酸素送出配管P3と、水供給配管P4と、熱媒体配管HPと、第1バイパス配管B1と、第2バイパス配管B2と、を備える。
【0018】
セルスタック10は、複数の水電解セルが積層されて構成される。各々の水電解セルは、電解質膜を用いた水の電気分解(電解)により酸素及び水素を生成する水電解部である。DC電源12は、セルスタック10の電源である。コンバータ14は、DC電源12から供給される電力を変換して、セルスタック10に供給する。
【0019】
セルスタック10にて生成された水素と水との混合物は、当該混合物をセルスタック10から送り出す混合物送出流路を形成する第1混合物送出配管P1に送られる。第1混合物送出配管P1には、水素気液分離器20及び凝縮器22が設けられている。水素気液分離器20は、セルスタック10にて生成された水素と水との混合物を水素と水とに分離する。凝縮器22は、内部に冷却水が供給されており、水素と水との混合物が内部を通過する際に当該混合物に含まれる水蒸気を凝縮させる。水素気液分離器20及び凝縮器22を経て分離された水素は、第1混合物送出配管P1を通って水電解システム1の外部に送られる。
【0020】
セルスタック10にて生成された酸素と水との混合物は、当該混合物をセルスタック10から送り出す混合物送出流路を形成する第2混合物送出配管P2に送られる。第2混合物送出配管P2は、セルスタック10と酸素気液分離器30とを接続している。酸素気液分離器30は、セルスタック10にて生成された酸素と水との混合物を酸素と水とに分離する。なお、酸素気液分離器30には、酸素と水との混合物の他に、図示しないタンクから純水が適宜供給される。また、酸素気液分離器30は、酸素送出配管P3に接続されている。酸素送出配管P3には、凝縮器32が設けられている。凝縮器32は、凝縮器22と同様に、内部に冷却水が供給されており、酸素と水との混合物が内部を通過する際に当該混合物に含まれる水蒸気を凝縮させる。酸素気液分離器30及び凝縮器32を経て分離された酸素は、酸素送出配管P3を通って水電解システム1の外部に送られる。
【0021】
水供給配管P4は、セルスタック10に水を供給する水供給流路を形成する配管である。水供給配管P4は、酸素気液分離器30とセルスタック10とを接続している。水供給配管P4内を流通する水は、酸素気液分離器30において分離された水である。水供給配管P4には、循環ポンプPM1が設けられている。循環ポンプPM1は、酸素気液分離器30からセルスタック10へ水を送出する。
【0022】
熱媒体配管HPは、セルスタック10の内部を一部が通過し、セルスタック10との間で熱交換を行う熱媒体を循環する熱媒体流路を形成する配管である。本実施形態では、熱媒体は水である。熱媒体配管HPは、熱媒体を循環してセルスタック10の内部を繰り返し通過させる配管である。なお、図1において、熱媒体配管HP内の熱媒体の循環方向は、矢印で示されている。図1に示された進入位置ENは、熱媒体配管HPがセルスタック10の内部に進入する位置である。一方、図1に示された退出位置EXは、熱媒体配管HPがセルスタック10の内部から退出する位置である。熱媒体配管HPには、タンク44と、循環ポンプPM2と、熱交換器46と、が設けられている。タンク44は、上流側から送られてくる熱媒体を一時的に貯留するとともに、下流側へ熱媒体を適宜供給する。循
環ポンプPM2は、下流側へ熱媒体を送出する。熱交換器46は、内部に水が循環されており、熱媒体配管HP内を流通する熱媒体が比較的高温となっている場合には、その循環水が熱を回収する。
【0023】
熱媒体配管HPから分岐したバイパス配管には、第1バイパス配管B1と、第2バイパス配管B2と、が含まれる。第1バイパス配管B1は、熱媒体配管HPにおける第1位置L1から分岐するとともに、退出位置EXを基準として第1位置L1より下流側の第2位置L2において熱媒体配管HPと合流する配管である。第1バイパス配管B1には、バルブV1が設けられている。バルブV1は、第1位置L1から第1バイパス配管B1を介した第2位置L2への熱媒体の流通を遮断可能な遮断弁である。一方、熱媒体配管HPのうち第1位置L1と第2位置L2との間には、バルブV2が設けられている。バルブV2は、第1位置L1から熱媒体配管HPを介した第2位置L2への熱媒体の流通を遮断可能な遮断弁である。本実施形態において、バルブV1及びバルブV2は、第1位置L1から第2位置L2までの熱媒体の経路である第1経路を、熱媒体配管HPと第1バイパス配管B1との間で切り替える第1経路切替部に相当する。
【0024】
第2バイパス配管B2は、熱媒体配管HPのうち退出位置EXを基準として第2位置L2より下流側の第3位置L3から分岐するとともに、第3位置L3より下流側の第4位置L4において熱媒体配管HPと合流する配管である。第2バイパス配管B2には、バルブV3が設けられている。バルブV3は、第3位置L3から第2バイパス配管B2を介した第4位置L4への熱媒体の流通を遮断可能な遮断弁である。一方、熱媒体配管HPのうち第3位置L3と第4位置L4との間には、バルブV4が設けられている。バルブV4は、第3位置L3から熱媒体配管HPを介した第4位置L4への熱媒体の流通を遮断可能な遮断弁である。本実施形態において、バルブV3及びバルブV4は、第3位置L3から第4位置L4までの熱媒体の経路である第2経路を、熱媒体配管HPと第2バイパス配管B2との間で切り替える第2経路切替部に相当する。
【0025】
図2は、蓄熱器50の内部の拡大図である。蓄熱器50は、バイパス配管(第1バイパス配管B1及び第2バイパス配管B2)の一部を収容し、バイパス配管内(第1バイパス配管B1内及び第2バイパス配管B2内)を流通する熱媒体との熱交換により蓄熱と放熱が可能な蓄熱材54を収容している。図2には、蓄熱器50に収容された第1バイパス配管B1及び第2バイパス配管B2の一部が示されている。本実施形態では、蓄熱器50は、断熱材により構成された筐体52内に蓄熱材54としての流体である水を収容している。すなわち、第1バイパス配管B1内、もしくは、第2バイパス配管B2内に熱媒体が流通した際には、その熱媒体と蓄熱器50に収容された蓄熱材54との間において、熱交換が行われる。
【0026】
図1の説明に戻り、制御部60は、水電解システム1が備える各種センサから得た情報に基づいて、水電解システム1を制御する。制御部60による具体的な制御としては、例えば、バルブV1~V4の開閉制御や、DC電源12からセルスタック10への電力供給の制御が挙げられる。制御部60は、DC電源12からセルスタック10へ電力供給を開始することにより、セルスタック10による電解反応を開始させる。電解反応の開始時、制御部60は、バルブV1を閉弁してバルブV2を開弁するとともに、バルブV3を閉弁してバルブV4を開弁する。また、制御部60は、セルスタック10による電解反応が実行されている間に、水電解システム1が備える図示しない温度センサから得た情報に基づいて、蓄熱器50に蓄熱させる蓄熱モードと、蓄熱器50に放熱させる放熱モードと、のうちいずれかを実行する。温度センサから得られる情報には、セルスタック10内の温度、蓄熱器50内の温度、が含まれる。
【0027】
図3は、蓄熱モード時の流通経路を示した説明図である。制御部60は、セルスタック
10による電解反応が実行されている際、セルスタック10内の温度が予め設定された蓄熱実行温度を上回っている場合、蓄熱モードを実行する。蓄熱実行温度は、蓄熱モードを実行すべき程度に、セルスタック10内の温度が高温であるとみなすことができる目安の温度である。蓄熱モードを実行する場合、制御部60は、図3に示すように、第1経路(第1位置L1から第2位置L2までの熱媒体の経路)を第1バイパス配管B1とするとともに、第2経路(第3位置L3から第4位置L4までの熱媒体の経路)を熱媒体配管HPとする。具体的には、制御部60は、バルブV1を開弁してバルブV2を閉弁するとともに、バルブV3を閉弁してバルブV4を開弁する。
【0028】
このような状態において、セルスタック10の内部を通過した熱媒体は、図3に示すように、第1位置L1から第2位置L2までの間においては、第1バイパス配管B1を通る。その後、熱媒体は、図3に示すように、第3位置L3から第4位置L4までの間においては、熱媒体配管HPを通る。水の電解反応を実行させるためにセルスタック10に供給される電力のうち一部はジュール熱となり、セルスタック10の内部を通過した熱媒体は、このジュール熱によって加熱された状態で第1バイパス配管B1内を流通する。そして、上述したように、セルスタック10内の温度が予め設定された蓄熱実行温度を上回っていることを要件として蓄熱モードは実行されることから、このとき第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体は、ある程度高温である。したがって、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体から蓄熱材54に熱が供給されることにより、蓄熱材54による蓄熱が実行される。
【0029】
また、制御部60は、蓄熱モード時に、蓄熱材54の温度が蓄熱目標温度以上になった場合、もしくは、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、第1経路を第1バイパス配管B1から熱媒体配管HPに切り替えて、蓄熱モードを終了させる。蓄熱目標温度は、蓄熱材54が目標とする温度であって、蓄熱材54への蓄熱が十分であるとみなすことができる目安の温度である。蓄熱規定温度は、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体が蓄熱材54に蓄熱するより蓄熱材54から熱を放熱させる可能性が高くなる目安の温度である。なお、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体の温度は、セルスタック10内の温度から推定されてもよいし、第1位置L1における温度を測定する温度センサを設けてその温度センサから取得されてもよい。
【0030】
図4は、放熱モード時の流通経路を示した説明図である。制御部60は、セルスタック10による電解反応が実行されている際、セルスタック10内の温度が予め設定された放熱実行温度未満になっていて、且つ、蓄熱器50内の温度が予め設定された放熱許可温度以上となっている場合、放熱モードを実行する。放熱実行温度は、放熱モードを実行すべき程度に、セルスタック10内の温度が低温であるとみなすことができる目安の温度である。むろん、放熱実行温度は、上述した蓄熱実行温度より低い温度である。また、放熱許可温度は、放熱モードを実行できる程度に蓄熱材54が蓄熱されているとみなすことができる目安の温度である。放熱モードを実行する場合、制御部60は、図4に示すように、第1経路を熱媒体配管HPとするとともに、第2経路を第2バイパス配管B2とする。具体的には、制御部60は、バルブV1を閉弁してバルブV2を開弁するとともに、バルブV3を開弁してバルブV4を閉弁する。
【0031】
このような状態において、セルスタック10の内部を通過した熱媒体は、図4に示すように、第1位置L1から第2位置L2までの間においては、熱媒体配管HPを通る。その後、熱媒体は、図4に示すように、第3位置L3から第4位置L4までの間においては、第2バイパス配管B2を通る。上述したように、セルスタック10内の温度が予め設定された放熱設定温度未満になっていることを要件の1つとして放熱モードは実行されることから、このとき第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体は、ある程度低温である。したがって、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体は、蓄熱材54から放熱される熱を受
け取ることにより加熱される。
【0032】
また、制御部60は、放熱モード時に、蓄熱材54の温度が放熱規定温度未満になった場合、もしくは、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった場合、第2経路を第2バイパス配管B2から熱媒体配管HPに切り替えて、放熱モードを終了させる。放熱規定温度とは、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体に対して蓄熱材54が放熱するより熱媒体から蓄熱材54が熱を奪う可能性が高くなる目安の温度である。放熱目標温度は、熱媒体が目標とする温度であって、セルスタック10の昇温に用いられる熱媒体への放熱が十分であるとみなすことができる目安の温度である。なお、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体の温度は、セルスタック10内の温度から推定されてもよいし、第3位置L3における温度を測定する温度センサを設けてその温度センサから取得されてもよい。
【0033】
以上説明したように、第1実施形態の水電解システム1によれば、熱媒体配管HP内を流通する熱媒体とセルスタック10との間で熱交換が行われる。水の電気分解(電解)を実行させるためにセルスタック10に供給される電力のうち一部は、ジュール熱となる。ジュール熱によってセルスタック10の温度が上昇し続けると、セルスタック10による電解反応に用いられる電解質膜が劣化する可能性が高くなる。第1実施形態の水電解システム1によれば、そのような高温状態にあるセルスタック10から熱媒体が熱を奪うことにより、セルスタック10を冷ますことができる。また、一般に、セルスタック10が低温状態になると、セルスタック10による電解反応の反応効率は低下する。よって、寒冷地、冬場、夜間等の状況下においては、セルスタック10による電解反応の反応効率は低下する傾向にある。第1実施形態の水電解システム1によれば、そのような低温状態にあるセルスタック10に対して熱媒体から熱を与えることにより、セルスタック10を温めることができる。したがって、第1実施形態の水電解システム1によれば、熱媒体との熱交換によりセルスタック10の温度を所望の温度に調整することによって、高温による電解質膜の劣化及び低温による反応効率の低下を抑制できることから、セルスタック10による電解反応の反応効率を高く維持することができる。
【0034】
また、第1実施形態の水電解システム1では、第1バイパス配管B1内及び第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体は、蓄熱器50に収容されている蓄熱材54との熱交換により、蓄熱材54に蓄熱することと、蓄熱材54から放熱させることと、が可能である。このため、セルスタック10から熱を奪った熱媒体は、熱交換により蓄熱材54に蓄熱することができる。したがって、セルスタック10で発生したジュール熱を蓄熱材54に蓄熱することから、セルスタック10を冷却する冷却負荷を低減することができる。また、熱媒体は、熱交換により蓄熱材54から放熱される熱を受け取り、その熱によりセルスタック10を温めて電解反応の反応効率を高めることもできる。したがって、第1実施形態の水電解システム1によれば、セルスタック10を冷却する冷却負荷の低減と、セルスタック10による電解反応の反応効率の向上と、を両立することができる。また、蓄熱材54に蓄熱される熱の熱源は、セルスタック10による電解反応で常時発生するジュール熱であることから、蓄熱材54に対して定期的に熱を蓄熱することができる。したがって、セルスタック10による電解反応の反応効率を高く維持することができる。
【0035】
また、第1実施形態の水電解システム1では、バイパス配管は、第1バイパス配管B1と、退出位置EXを基準として第1バイパス配管B1より下流側に設けられた第2バイパス配管B2と、を含む。そして、蓄熱モードを実行する場合、第1経路を第1バイパス配管B1とする。このため、セルスタック10から熱を奪った熱媒体は、第1バイパス配管B1内を流通して熱交換により蓄熱材に蓄熱することができる。第1バイパス配管B1は、退出位置EXを基準として第2バイパス配管B2よりも上流側に設けられている(すなわち、第1バイパス配管B1は、第2バイパス配管B2より退出位置EXに近い)ことか
ら、退出位置EXから蓄熱器50に到達するまでの流通距離に応じて増大する熱損失を抑えつつセルスタック10から奪った熱を蓄熱材54に蓄熱することができる。また、第1実施形態の水電解システム1によれば、放熱モードを実行する場合、第2経路を第2バイパス配管B2とする。このため、熱媒体は、第2バイパス配管B2内を流通して熱交換により蓄熱材54から放熱される熱を受け取り、その熱によりセルスタック10を温めて電解反応の反応効率を高めることができる。第2バイパス配管B2は、退出位置EXを基準として第1バイパス配管B1よりも下流側に設けられている(すなわち、第2バイパス配管B2は、第1バイパス配管B1より進入位置ENに近い)ことから、蓄熱器50から進入位置ENに到達するまでの流通距離に応じて増大する熱損失を抑えつつ蓄熱材54から受け取った熱をセルスタック10に与えることができる。
【0036】
また、第1実施形態の水電解システム1では、蓄熱モード時に、蓄熱材54の温度が蓄熱目標温度以上になった場合、もしくは、熱媒体配管HP内を流通する熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、第1経路を第1バイパス配管B1から熱媒体配管HPに切り替える。蓄熱材54が蓄熱目標温度以上になった以降も蓄熱モードを持続させると、蓄熱材54が劣化する可能性が高くなる。また、セルスタック10で発生するジュール熱が減少して第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体の温度が蓄熱規定温度未満になった場合、そのような熱媒体は蓄熱材54に蓄熱するより蓄熱材54から熱を放熱させる可能性が高い。したがって、第1実施形態の水電解システム1によれば、蓄熱材54が劣化する可能性と、蓄熱モード時にも関わらず蓄熱材54から熱が放熱される可能性と、を低減することができる。また、第1経路において、熱媒体配管HPを経由するより第1バイパス配管B1を経由する方が圧力損失が大きい場合には、そのような圧力損失を低減できることから、熱媒体を流通させるために消費されるエネルギー量を低減することができる。ここでいうエネルギー量とは、具体的には、循環ポンプPM2による消費電力量である。
【0037】
また、第1実施形態の水電解システム1では、放熱モード時に、蓄熱材54の温度が放熱規定温度未満になった場合、もしくは、熱媒体配管HP内を流通する熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった場合、第2経路を第2バイパス配管B2から熱媒体配管HPに切り替える。放熱規定温度未満になると第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体から蓄熱材54が熱を奪う可能性が高くなる。また、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体の温度が放熱目標温度以上になった以降も放熱モードを持続させると、蓄熱材54が放熱規定温度未満になった場合と同様に、第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体から蓄熱材54が熱を奪う可能性が上がっていく。したがって、第1実施形態の水電解システム1によれば、放熱モード時に蓄熱材54が第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体から熱を奪う可能性を低減することができる。また、第2経路において、熱媒体配管HPを経由するより第2バイパス配管B2を経由する方が圧力損失が大きい場合には、そのような圧力損失を低減できることから、熱媒体を流通させるために消費されるエネルギー量を低減することができる。ここでいうエネルギー量とは、具体的には、循環ポンプPM2による消費電力量である。
【0038】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の水電解システム1aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の水電解システム1aの構成は、第1実施形態の水電解システム1(図1)の構成と比べて、第2バイパス配管B2を備えていない点を除いて、第1実施形態の水電解システム1の構成と同じである。
【0039】
水電解システム1aにおいても、制御部60は、セルスタック10による電解反応が実行されている間に、水電解システム1が備える図示しない温度センサから得た情報に基づいて、蓄熱器50に蓄熱させる蓄熱モードと、蓄熱器50に放熱させる放熱モードと、のうちいずれかを実行する。そして、蓄熱モードと放熱モードとのうちいずれを実行する場
合にも、制御部60は、第1経路(第1位置L1から第2位置L2までの熱媒体の経路)を第1バイパス配管B1とする。蓄熱モードは、第1実施形態と同様に、セルスタック10内の温度が予め設定された蓄熱実行温度を上回っていることを要件として実行されることから、蓄熱モードの実行時に第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体は、ある程度高温である。したがって、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体から蓄熱材54に熱が供給されることにより、蓄熱材54による蓄熱が実行される。また、放熱モードも、第1実施形態と同様に、セルスタック10内の温度が予め設定された放熱実行温度未満になっていることを要件の1つとして実行されることから、放熱モードの実行時に第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体は、ある程度低温である。したがって、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体は、蓄熱材54から放熱される熱を受け取ることにより加熱される。
【0040】
以上のような第2実施形態の水電解システム1aによれば、熱媒体配管HPから分岐したバイパス配管は第1バイパス配管B1のみであることから、第1実施形態と比べて、水電解システム1aの構成を簡略化した上で、第1実施形態と同様に、セルスタック10を冷却する冷却負荷の低減と、セルスタック10による電解反応の反応効率の向上と、を両立することができる。
【0041】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
[変形例1]
上記実施形態では、バルブV1及びバルブV2は、第1経路を熱媒体配管HPと第1バイパス配管B1との間で切り替える第1経路切替部に相当していたが、これに限られない。例えば、バルブV1及びバルブV2の代わりに、第1位置L1に設けられた三方弁が第1経路切替部に相当していてもよい。また、同様に、バルブV3及びバルブV4の代わりに、第3位置L3に設けられた三方弁が第2経路切替部に相当していてもよい。
【0043】
[変形例2]
上記実施形態では、蓄熱モード時に蓄熱目標温度もしくは蓄熱規定温度を基準として、第1経路を第1バイパス配管B1から熱媒体配管HPに切り換えていたが、これに限られない。例えば、蓄熱モードが実行されてから一定時間経過したのち、第1経路を第1バイパス配管B1から熱媒体配管HPに切り換えてもよい。また、同様に、放熱モードが実行されてから一定時間経過したのち、第2経路を第2バイパス配管B2から熱媒体配管HPに切り換えてもよい。
【0044】
[変形例3]
上記実施形態では、放熱モードを実行する要件は、セルスタック10内の温度が予め設定された放熱実行温度未満になっていて、且つ、蓄熱器50内の温度が予め設定された放熱許可温度以上となっている場合であったが、これに限られない。例えば、放熱モードを実行する要件は、水電解システムを構成する構成部品の少なくとも1つの温度が予め設定された部品下限温度を下回っていて、且つ、蓄熱器50内の温度が予め設定された放熱許可温度を上回っている場合であってもよい。また、この要件に対して更に、セルスタック10内の温度が予め設定された放熱実行温度未満になっていることが追加されてもよい。
【0045】
[変形例4]
上記実施形態では、蓄熱材54は水であったが、これに限られない。例えば、蓄熱材54は、潜熱蓄熱材もしくは化学蓄熱材であってもよい。このような形態でも、潜熱蓄熱材もしくは化学蓄熱材の状態変化により、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体からの
蓄熱及び第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体への放熱を実行することができる。潜熱蓄熱材としては、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの混合物から成る溶融塩、パラフィン類(飽和炭化水素化合物)、脂肪酸類(脂肪酸エステルを含む)等の有機系化合物が挙げられる。化学蓄熱材としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
【0046】
[変形例5]
また、蓄熱材54は、物質の吸着及び脱離により放熱及び蓄熱が可能な吸着材であってもよい。このような形態でも、吸着材による物質の吸着及び脱離により、第1バイパス配管B1内を流通する熱媒体からの蓄熱及び第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体への放熱を実行することができる。吸着剤としては、例えば、活性炭が挙げられる。なお、このような形態では、第1バイパス配管B1内もしくは第2バイパス配管B2内を流通する熱媒体が、蓄熱材54である吸着剤を通過することによって、蓄熱材54との間で熱交換を行う。
【0047】
[変形例6]
第2実施形態の水電解システム1aの構成は、第1実施形態の水電解システム1の構成から第2バイパス配管B2を除いた構成であったが、これに限られない。例えば、他の実施形態の水電解システムの構成は、第1実施形態の水電解システム1の構成から第1バイパス配管B1を除いた構成であってもよい。このような構成の形態では、蓄熱モードと放熱モードとのうちいずれを実行する場合にも、制御部60は、第2経路(第3位置L3から第4位置L4までの熱媒体の経路)を第2バイパス配管B2とする。
【0048】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1a…水電解システム
10…セルスタック
12…DC電源
14…コンバータ
20…水素気液分離器
22…凝縮器
30…酸素気液分離器
32…凝縮器
44…タンク
46…熱交換器
50…蓄熱器
52…筐体
54…蓄熱材
60…制御部
B1…第1バイパス配管
B2…第2バイパス配管
EN…進入位置
EX…退出位置
HP…熱媒体配管
L1…第1位置
L2…第2位置
L3…第3位置
L4…第4位置
P1…第1混合物送出配管
P2…第2混合物送出配管
P3…酸素送出配管
P4…水供給配管
PM1…循環ポンプ
PM2…循環ポンプ
V1~V4…バルブ
図1
図2
図3
図4
図5