IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-尿素除去装置 図1
  • 特開-尿素除去装置 図2
  • 特開-尿素除去装置 図3
  • 特開-尿素除去装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142762
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】尿素除去装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F01N3/08 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049832
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 卓史
(72)【発明者】
【氏名】石井 光
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真司
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB09
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA16
3G091CA17
3G091CB02
3G091DA02
3G091DB10
3G091DC03
3G091EA17
(57)【要約】
【課題】噴射ノズルに固着した尿素を除去しやすくする。
【解決手段】尿素除去装置2は、エンジン11の排気ガスが流れる排気管12内に噴射ノズル13から尿素水Nを噴射させる制御を行ったときに尿素水Nが噴射ノズル13から噴射されたか否かを判定する判定部221と、噴射ノズル13から尿素水が噴射されていないと判定された場合に、尿素水Nを貯蔵するタンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給するポンプ15を制御して、タンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給する供給制御部222と、タンク14から供給された尿素水Nが噴射ノズル13に貯留した状態で、排気ガスの温度を上げる制御を行う温度制御部223と、を有する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスが流れる排気管内に噴射ノズルから尿素水を噴射させる制御を行ったときに前記尿素水が前記噴射ノズルから噴射されたか否かを判定する判定部と、
前記噴射ノズルから前記尿素水が噴射されていないと判定された場合に、前記尿素水を貯蔵するタンクから前記噴射ノズルに前記尿素水を供給するポンプを制御して、前記タンクから前記噴射ノズルに前記尿素水を供給する供給制御部と、
前記タンクから供給された前記尿素水が前記噴射ノズルに貯留した状態で、前記排気ガスの温度を上げる制御を行う温度制御部と、
を有する尿素除去装置。
【請求項2】
前記温度制御部は、前記噴射ノズルに貯留している前記尿素水の温度が、尿素の水への溶解度が所定溶解度になる下限温度以上になるように、前記排気ガスの温度を上げる制御を行う、
請求項1に記載の尿素除去装置。
【請求項3】
前記温度制御部は、前記噴射ノズルに貯留している前記尿素水の温度が前記下限温度以上になり、かつ前記噴射ノズルの温度が前記下限温度よりも高く前記噴射ノズルの耐熱温度に応じた上限温度未満になるように、前記排気ガスの温度を上げる制御を行う、
請求項2に記載の尿素除去装置。
【請求項4】
前記温度制御部は、前記エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射部に、前記エンジンの1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行わせる制御を所定期間継続することにより前記排気ガスの温度を上げる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の尿素除去装置。
【請求項5】
前記供給制御部は、前記排気ガスを浄化する浄化装置が正常に機能しているか否かを判定する診断制御を実施している間に、前記噴射ノズルに前記尿素水を供給する制御を行う、
請求項1から4のいずれか一項に記載の尿素除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水を噴射する噴射ノズルに固着した尿素を除去する尿素除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガスに尿素水を噴射して窒素酸化物(NOx)を還元する技術が知られている。特許文献1には、噴射ノズルから尿素水を噴射した後に加圧された空気を噴射することにより噴射ノズルに残留した尿素水を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-31746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加圧された空気を噴射しても噴射ノズル内に尿素水が残留してしまうことがある。噴射ノズル内に残留した尿素水が加熱されると、尿素が析出して固着するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、噴射ノズルに固着した尿素を除去しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気ガスが流れる排気管内に噴射ノズルから尿素水を噴射させる制御を行ったときに前記尿素水が前記噴射ノズルから噴射されたか否かを判定する判定部と、前記噴射ノズルから前記尿素水が噴射されていないと判定された場合に、前記尿素水を貯蔵するタンクから前記噴射ノズルに前記尿素水を供給するポンプを制御して、前記タンクから前記噴射ノズルに前記尿素水を供給する供給制御部と、前記タンクから供給された前記尿素水が前記噴射ノズルに貯留した状態で、前記排気ガスの温度を上げる制御を行う温度制御部と、を有する尿素除去装置を提供する。
【0007】
前記温度制御部は、前記噴射ノズルに貯留している前記尿素水の温度が、尿素の水への溶解度が所定溶解度になる下限温度以上になるように、前記排気ガスの温度を上げる制御を行ってもよい。
【0008】
前記温度制御部は、前記噴射ノズルに貯留している前記尿素水の温度が前記下限温度以上になり、かつ前記噴射ノズルの温度が前記下限温度よりも高く前記噴射ノズルの耐熱温度に応じた上限温度未満になるように、前記排気ガスの温度を上げる制御を行ってもよい。
【0009】
前記温度制御部は、前記エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射部に、前記エンジンの1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行わせる制御を所定期間継続することにより前記排気ガスの温度を上げてもよい。
【0010】
前記供給制御部は、前記排気ガスを浄化する浄化装置が正常に機能しているか否かを判定する診断制御を実施している間に、前記噴射ノズルに前記尿素水を供給する制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、噴射ノズルに固着した尿素を除去しやすくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】排気ガスを浄化する浄化システムの構成を説明するための図である。
図2】温度に対する尿素の水への溶解度の表である。
図3】排気ガスの温度を上げる制御を説明するための図である。
図4】尿素を除去する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[浄化システムSの構成]
図1は、排気ガスを浄化する浄化システムSの構成を説明するための図である。浄化システムSは、エンジン11、噴射ノズル13、タンク14、ポンプ15、浄化装置16、チューブ17及び尿素除去装置2を含む。浄化システムSは、例えば自動車や船舶に搭載されている。
【0014】
エンジン11は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させるディーゼルエンジンである。燃料噴射部111は、尿素除去装置2の制御に従って、エンジン11の燃焼室に燃料を噴射する。エンジン11の排気ガスは、排気管12を通って外部に排出される。
【0015】
浄化装置16は、エンジン11の排気ガスを浄化する。浄化装置16は、エンジン11の排気ガスが流れる排気管12内に設けられている選択触媒還元脱硝装置(いわゆる尿素SCR(Selective Catalytic Reduction))である。選択触媒還元脱硝装置は、アンモニアの前駆体である尿素水Nを、排気管12を流れる排気ガスに噴射することにより、NOxとアンモニアとを反応させて窒素と水に還元させる。
【0016】
温度センサ18は、浄化装置16に流入する排気ガスの温度を検出する熱電対又はサーミスタを含むセンサユニットである。温度センサ18は、浄化装置16の上流に設けられており、浄化装置16に流入する排気ガスの温度を検出する。温度センサ18が排気ガスの温度を検出する間隔は適宜設定すればよく、例えばセンサユニットのマイクロプロセッサの処理周期であり、具体的には100ミリ秒である。
【0017】
噴射ノズル13は、浄化装置16に尿素水Nを噴射する。尿素水Nは、タンク14に貯蔵されている。尿素水Nは、タンク14からチューブ17を通って噴射ノズル13に供給される。チューブ17は、例えばシリコンチューブやゴムチューブである。
【0018】
ポンプ15は、尿素除去装置2の制御によりタンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給するポンプである。また、ポンプ15は、尿素除去装置2の制御により噴射ノズル13からタンク14に尿素水Nを送ることができる。例えば、ポンプ15は、エンジン11が停止したときに、噴射ノズル13からタンク14に尿素水Nを送ることで噴射ノズル13から尿素水Nを排出する。
【0019】
ところで、噴射ノズル13から尿素水Nを排出しても、噴射ノズル13内に尿素水Nが残留することがある。噴射ノズル13内に残留した尿素水Nが、高温の排気ガスや排気ガスの余熱等により加熱されると、尿素水Nの水分が蒸発して尿素が析出し、析出した尿素が固着してしまう。そこで、尿素除去装置2は、噴射ノズル13内に尿素が固着した場合、噴射ノズル13内に尿素水Nが貯留している状態で排気ガスの温度を上げることにより、噴射ノズル13内に貯留している尿素水Nの温度を上げる。これにより、尿素の水への溶解度が上がるので噴射ノズルに固着した尿素が尿素水に融解しやすくなり、固着した尿素を除去できる。
以下、尿素除去装置2の構成を説明する。
【0020】
尿素除去装置2は、記憶部21及び制御部22を有する。記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部21は、制御部22が実行するプログラムを記憶する。
【0021】
制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行することにより、判定部221、供給制御部222及び温度制御部223としての機能を実現する。
【0022】
判定部221は、噴射ノズル13から尿素水Nを噴射させる噴射制御を行う。具体的には、判定部221は、噴射ノズル13に所定の噴射電圧を印加して、噴射ノズル13内の尿素水Nを噴射させる噴射制御を行う。噴射電圧が印加されたときに噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されると、噴射電圧を印加してから所定の判定時間が経過するまで間の電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上になる。一方、噴射電圧が印加されたときに噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されないと、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値未満になる。
【0023】
判定部221は、噴射制御を行ったときに尿素水Nが噴射ノズル13から噴射されたか否かを判定する。例えば、判定部221は、排気ガスを浄化する浄化装置16が正常に機能しているか否かを判定する診断制御を実施している間に噴射制御を行い、尿素水Nが噴射ノズル13から噴射されたか否かを判定する。具体的には、判定部221は、噴射ノズル13に噴射電圧を印加してから判定時間が経過するまでの電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上か否かに基づき、尿素水Nが噴射されたか否かを判定する。判定部221は、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上であれば、尿素水Nが噴射されたと判定する。判定部221は、極大値と極小値の差が判定閾値未満であれば、噴射されていないと判定する。なお、判定部221は、上記に限らず他の方法で尿素水Nが噴射ノズル13から噴射されたか否かを判定してもよい。
【0024】
供給制御部222は、噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されていないと判定された場合に、タンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給する。例えば、供給制御部222は、ポンプ15を制御してタンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給する。具体的には、供給制御部222は、タンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを送った後、一度噴射ノズル13からタンク14に尿素水Nを戻し、再度タンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを送る供給・吸い戻し制御を行う。より具体的には、噴射ノズル13とポンプ15を接続するチューブ17には、サイフォン構造の配管が設けられており、供給制御部222は、供給・吸い戻し制御を複数回行いチューブ17内の尿素水Nの液面を操作することで、チューブ17内に溜まっている空気と尿素水Nを入れ替えて、噴射ノズル13に尿素水Nを供給する。噴射ノズル13内に尿素水Nが貯留している状態になると、噴射ノズル13に固着した尿素が尿素水Nに融解しはじめる。
【0025】
ところで、尿素の水への溶解度は水の温度が高いほど大きくなる。図2は、温度に対する尿素の水への溶解度の表である。噴射ノズル13内に貯留した尿素水Nの温度が高くなれば尿素の水への溶解度が大きくなるので、噴射ノズル13に固着した尿素が尿素水Nに融解しやすくなる。つまり、噴射ノズル13内に貯留した尿素水Nの温度を上げる場合、尿素水Nの温度を上げない場合よりも短時間で噴射ノズル13に固着した尿素を尿素水Nに融解させられる。
【0026】
温度制御部223は、タンク14から供給された尿素水Nが噴射ノズル13に貯留した状態で、排気ガスの温度を上げる制御を行う。例えば、温度制御部223は、供給制御部222が尿素水Nを噴射ノズル13に供給する制御を開始するのと同時又は供給する制御が開始されてから所定の待機時間が経過したら、排気ガスの温度を上げる制御を行う。待機時間は、供給する制御の開始時点から尿素水Nが噴射ノズル13に貯留した状態になるまでにかかる時間である。これにより、温度制御部223は、尿素水Nが噴射ノズル13に貯留した状態で、排気ガスの温度を上げる制御を開始できる。
【0027】
温度制御部223は、エンジン11の1燃焼サイクル中に燃焼室に複数回の燃料噴射を行わせる昇温制御を継続することにより排気ガスの温度を上げる。温度制御部223の昇温制御では、1燃焼サイクル中に燃焼室に4回の燃料噴射を行わせる制御を継続することにより排気ガスの温度を上げる。なお、燃料噴射の回数は、4回に限らない。
【0028】
温度制御部223は、噴射ノズル13に貯留している尿素水Nの温度が、尿素の水への溶解度が下限温度以上になるように排気ガスの温度を上げる。例えば、温度制御部223は、尿素の水への溶解度が[400g/100ml]になる80℃を下限温度として、噴射ノズル13に貯留している尿素水Nの温度が80℃以上になるように排気ガスの温度を上げる。
【0029】
温度制御部223は、エンジン負荷が低く排気ガスの温度が加熱温度以下である場合に、1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行わせる昇温制御を継続することにより排気ガスの温度を上げる。具体的には、温度制御部223は、排気ガスの温度が加熱温度以上になるまで昇温制御を継続することにより、尿素水Nの温度を下限温度(80℃)以上にする。加熱温度は、噴射ノズル13に達した排気ガスにより加熱された噴射ノズル13内の尿素水Nの温度が下限温度(80℃)以上になる温度である。言い換えると、加熱温度は、尿素水Nの温度を下限温度(80℃)以上にできる排気ガスの温度である。温度制御部223は、エンジン負荷が高く排気ガスの温度が加熱温度よりも高い場合には、排気ガスの温度を維持する制御を実行して尿素水Nの温度を下限温度(80℃)以上に維持する。例えば、温度制御部223は、1燃焼サイクル中に燃焼室に、昇温制御で噴射させる回数よりも少ない回数(例えば1回)の燃料噴射を行わせることにより排気ガスの温度を維持する制御を実行する。
【0030】
このようにすることで、加熱温度以上の排気ガスが噴射ノズル13に達することにより、噴射ノズル13が加熱されて噴射ノズル13内に貯留している尿素水Nの温度が下限温度以上になる。その結果、噴射ノズル13に固着した尿素が尿素水Nに融解しやすくなるので、尿素水Nを加熱しない場合よりも短時間で、固着した尿素を噴射ノズル13内に貯留している尿素水Nに融解させることができる。
【0031】
判定部221は、昇温制御が行われている間においても噴射ノズル13に噴射電圧を印加し続ける。これにより、噴射ノズル13に固着していた尿素が尿素水Nに融解したタイミングで、固着していた尿素が融解した尿素水Nが噴射ノズル13から噴射されるので、噴射ノズル13内に固着していた尿素が除去される。噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されたら、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上になるので、判定部221は、尿素水Nが噴射されたと判定する。そして、温度制御部223は、尿素水Nが噴射されたと判定部221が判定したら、昇温制御を終了する。
【0032】
ところで、噴射ノズル13の温度が噴射ノズル13の耐熱温度(例えば400℃)よりも高い温度になると、尿素固着物がより強固に固着したり、噴射ノズル13が故障したり、噴射ノズル13の性能が低下したりする。そこで、温度制御部223は、噴射ノズル13の耐熱温度に応じた上限温度未満になるように、排気ガスの温度を上げる制御を行う。具体的には、温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度以上であれば、排気ガスの温度を上げる制御を停止する。上限温度は、噴射ノズル13に熱による故障及び性能低下が生じない温度であり下限温度よりも高い。上限温度は250℃から350℃の範囲内である。上限温度は280℃が望ましい。排気ガスの温度が上限温度のときの噴射ノズル13の温度は、耐熱温度よりも低く、下限温度よりも高くなっている。これにより、噴射ノズル13の過剰な温度上昇が抑制されて、噴射ノズル13の温度を耐熱温度よりも低い温度にできるので、噴射ノズル13の故障や性能低下が抑制される。
【0033】
なお、噴射ノズル13に尿素水Nが貯留していることにより、噴射ノズル13及び尿素水Nの温度を上昇させるのに必要な熱量が増加するので、噴射ノズル13の過剰な温度上昇が抑制されている。また、噴射ノズル13の過剰な温度上昇を抑制するために、温度制御部223は、噴射ノズル13にエンジン11を冷却する冷却水を供給してもよい。この場合、浄化システムSは、噴射ノズル13に冷却水を供給する配管と、当該配管から噴射ノズル13に冷却水を供給するポンプを備える。温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度以上になったら、冷却水を供給するポンプを制御して噴射ノズル13に冷却水を供給する。
【0034】
温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度未満であれば排気ガスの温度を上げる制御を継続し、排気ガスの温度が上限温度以上であれば排気ガスの温度を上げる制御を停止する。このようにすることで、温度制御部223は、尿素水Nの温度を下限温度(80℃)以上に維持しつつ、噴射ノズル13の温度を耐熱温度よりも低い温度にすることができる。
【0035】
図3は、排気ガスの温度を上げる制御を説明するための図である。図3の横軸は時刻を示し、縦軸は温度を示す。排気ガス温度G1は、浄化装置16に流入する排気ガスの温度変化を示すグラフである。尿素水温度G2は、噴射ノズル13に貯留している尿素水Nの温度変化を示すグラフである。
【0036】
時刻T1は、温度を上げる制御を行った時刻である。温度制御部223は、噴射ノズル13に貯留している尿素水Nの温度が下限温度A以上になるように排気ガスの温度を上げる。具体的には、温度制御部223は、排気ガス温度G1が、加熱温度B以上になるように排気ガスの温度を上げる。これにより、温度制御部223は、噴射ノズル13の温度を下限温度A以上にできる。
【0037】
また、温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度C未満になるように排気ガスの温度を制御する。具体的には、温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度Cを超えたら、排気ガスの温度を上げる制御を停止する。これにより、温度制御部223は、噴射ノズル13の温度を耐熱温度よりも低い温度D未満にできるので、噴射ノズル13の故障や性能低下を抑制できる。
【0038】
[尿素除去装置2が実行する尿素を除去する処理]
図4は、尿素を除去する処理の一例を示すフローチャートである。尿素を除去する処理は、浄化装置16及び噴射ノズル13が正常に機能しているか否かを判定する診断制御の一部である。尿素を除去する処理は、例えば浄化装置16及び噴射ノズル13が正常に機能しているかを判定する診断制御が開始したタイミングで実行される。
【0039】
判定部221は、噴射ノズル13から尿素水Nを噴射させる制御を行う(ステップS1)。具体的には、判定部221は、噴射ノズル13から尿素水Nを噴射させるために噴射ノズル13に噴射電圧を印加する。
【0040】
判定部221は、噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されたか否かを判定する(ステップS2)。例えば、判定部221は、噴射電圧を印加してから判定時間が経過するまでの電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上か否かに基づき、噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されたか否かを判定する。判定部221は、関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上であれば(ステップS2でYes)、噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されたと判定し、処理を終了する。
【0041】
供給制御部222は、噴射ノズル13から尿素水Nが噴射されていないと判定されたら(ステップS2でNo)、尿素水Nを噴射ノズル13に供給する(ステップS3)。具体的には、供給制御部222は、ポンプ15を制御して、供給・吸い戻し制御を繰り返すことで、サイフォン構造の配管を有したチューブ17内の尿素水Nの液面を操作することでチューブ17中に残存する空気と、尿素水Nを置換して、タンク14から噴射ノズル13に尿素水Nを供給する。
【0042】
温度制御部223は、タンク14から供給された尿素水Nが噴射ノズル13に供給されて、尿素水Nが噴射ノズル13に貯留した状態になったら、排気ガスの温度が加熱温度B未満か否かを判定する(ステップS4)。温度制御部223は、排気ガスの温度が加熱温度B未満である場合(ステップS4でYes)、排気ガスの温度を上げる制御を行う(ステップS5)。具体的には、温度制御部223は、供給制御部222が尿素水Nを噴射ノズル13に供給する制御を開始してから待機時間が経過したら、1燃焼サイクル中に燃焼室に4回の燃料噴射を行わせる昇温制御を開始して、排気ガスの温度を上げる。
【0043】
温度制御部223は、排気ガスの温度が加熱温度B以上である場合(ステップS4でNo)、排気ガスの温度が上限温度C以上か否かを判定する(ステップS6)。温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度C以上である場合(ステップS6でYes)、排気ガスの温度を下げる制御を実行する(ステップS7)。例えば、温度制御部223は、昇温制御を実施していれば昇温制御を停止する。また、温度制御部223は、エンジン11の冷却水を噴射ノズル13に供給する。
【0044】
温度制御部223は、排気ガスの温度が上限温度C未満である場合(ステップS6でNo)、ステップS4に戻る。尿素除去装置2は、診断制御が実行されている間、ステップS4からステップS7を繰り返す。
【0045】
判定部221は、昇温制御が行われている間においても噴射ノズル13に噴射電圧を印加し続ける。判定部221は、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値以上になったら、尿素水Nが噴射されたと判定する。温度制御部223は、尿素水Nが噴射されたと判定部221が判定したら、昇温制御を終了する。
【0046】
判定部221は、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値未満である間、尿素水Nが噴射されていないと判定する。温度制御部223は、尿素水Nが噴射されていないと判定部221が判定している間、昇温制御を継続する。判定部221は、診断制御が開始してから所定の診断時間が経過しても、電流値の時間変化を示す関数の極大値と極小値の差が判定閾値未満であれば、噴射ノズル13が異常であると判定する。診断時間は、浄化システムSが搭載された車両の仕様などにより適宜定めればよく、例えば1500秒である。
【0047】
[尿素除去装置2の効果]
以上説明したとおり、尿素除去装置2は、噴射ノズル13に尿素水Nが貯留している状態で排気ガスの温度を上げる制御を行う。これにより、温度が上昇した排気ガスが噴射ノズル13に達することにより、噴射ノズル13に貯留している尿素水Nの温度が上昇するので、尿素水Nの溶解度が上がる。その結果、噴射ノズル13に固着した尿素が尿素水Nに短時間で融解しやすくなり、噴射ノズル13に固着した尿素を除去できる。
【0048】
また、噴射ノズル13内に尿素水Nが貯留しているので、排気ガスの温度を上げても噴射ノズル13の温度が上がりにくくなる。そのため、噴射ノズル13の温度が、噴射ノズル13の耐熱温度を超えてしまうことが抑制されるので、噴射ノズル13の故障や性能低下を抑制できる。
【0049】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上記の実施の形態では、温度制御部223は、尿素除去装置2の一部であるが、これに限らず、尿素除去装置2とは別にエンジン燃料噴射を主としたエンジン動力・排気温度を制御するエンジン制御装置を温度制御部223として設置し、CAN(Controller Area Network)通信等を用いて尿素除去装置2との協調した制御を行っても良い。さらに、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0050】
S 浄化システム
11 エンジン
111 燃料噴射部
12 排気管
13 噴射ノズル
14 タンク
15 ポンプ
16 浄化装置
17 チューブ
18 温度センサ
2 尿素除去装置
21 記憶部
22 制御部
221 判定部
222 供給制御部
223 温度制御部
図1
図2
図3
図4