(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142785
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230928BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20230928BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E02F9/20 E
E02F9/16 A
E02F9/24 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049868
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 愛莉
(72)【発明者】
【氏名】井口 将利
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003CA02
2D003DA03
2D015EA00
2D015GA02
2D015GB01
(57)【要約】
【課題】予め定められた手順で操作しなければキャブを姿勢変化させることができない作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、シャットオフ操作部が阻止位置である第1条件、ロック操作部が解除位置である第2条件、及び姿勢操作部が操作された第3条件の全てが成立し、且つ第3条件が最後に成立したことに応じて、第2アクチュエータに作動油を供給してキャブを姿勢変化させ、第1条件または第2条件が最後に成立したことに応じて、第2アクチュエータに作動油を供給することなく、キャブを姿勢変化させるための操作手順が誤っていることを報知装置を通じて報知する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を有する車体と、
第1姿勢及び第2姿勢に姿勢変化が可能な状態で前記車体に支持されたキャブと、
作動油の給排によって前記作業装置を駆動する第1アクチュエータと、
作動油の給排によって前記キャブを姿勢変化させる第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータへの作動油の供給を許容する許容位置、及び前記第1アクチュエータへの作動油の供給を阻止する阻止位置に操作されるシャットオフ操作部と、
前記キャブの姿勢変化をロックするロック位置、及び前記キャブの姿勢変化のロックを解除する解除位置に操作されるロック操作部と、
前記キャブの姿勢変化を指示する姿勢操作部と、
情報を報知する報知装置と、
コントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記シャットオフ操作部が前記阻止位置である第1条件、前記ロック操作部が前記解除位置である第2条件、及び前記姿勢操作部が操作された第3条件の全てが成立し、且つ前記第3条件が最後に成立したことに応じて、前記第2アクチュエータに作動油を供給して前記キャブを姿勢変化させ、
前記第1条件または前記第2条件が最後に成立したことに応じて、前記第2アクチュエータに作動油を供給することなく、前記キャブを姿勢変化させるための操作手順が誤っていることを前記報知装置を通じて報知することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記報知装置を通じた報知の実行中に、前記シャットオフ操作部が前記阻止位置から前記許容位置に操作されたことに応じて、または、前記ロック操作部が前記解除位置から前記ロック位置に操作されたことに応じて、前記報知装置を通じた報知を停止することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第1姿勢は、前記キャブの基準面が水平方向を向く姿勢であり、
前記第2姿勢は、前記基準面の前端が後端より上方に位置する姿勢であることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢変化が可能なキャブを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、姿勢変化が可能なキャブを備える作業機械が知られている。姿勢変化の具体例としては、オペレータの視線が上を向くようにチルトするチルトキャブ、水平のままで昇降するリンクキャブ、水平のままで前後方向にスライドするスライドキャブ等が挙げられる。
【0003】
また、作業機械のキャブには、走行モータ、旋回モータ、フロント作業機の油圧シリンダ(以下、これらを総称して、「油圧アクチュエータ」と表記する。)を動作させる操作装置(ペダル、レバー等)の他、油圧アクチュエータへの作動油の供給を許容または阻止するシャットオフレバー、キャブの姿勢変化を指示する姿勢変化スイッチなどが配置されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-32056号公報
【特許文献2】特開2020-51134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような作業機械において、オペレータが意図しないタイミングでキャブが姿勢変化すると、態勢を崩したオペレータの体が操作装置に触れて、他の油圧アクチュエータが作動してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、予め定められた手順で操作しなければキャブを姿勢変化させることができない作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、作業装置を有する車体と、第1姿勢及び第2姿勢に姿勢変化が可能な状態で前記車体に支持されたキャブと、作動油の給排によって前記作業装置を駆動する第1アクチュエータと、作動油の給排によって前記キャブを姿勢変化させる第2アクチュエータと、前記第1アクチュエータへの作動油の供給を許容する許容位置、及び前記第1アクチュエータへの作動油の供給を阻止する阻止位置に操作されるシャットオフ操作部と、前記キャブの姿勢変化をロックするロック位置、及び前記キャブの姿勢変化のロックを解除する解除位置に操作されるロック操作部と、前記キャブの姿勢変化を指示する姿勢操作部と、情報を報知する報知装置と、コントローラとを備える作業機械において、前記コントローラは、前記シャットオフ操作部が前記阻止位置である第1条件、前記ロック操作部が前記解除位置である第2条件、及び前記姿勢操作部が操作された第3条件の全てが成立し、且つ前記第3条件が最後に成立したことに応じて、前記第2アクチュエータに作動油を供給して前記キャブを姿勢変化させ、前記第1条件または前記第2条件が最後に成立したことに応じて、前記第2アクチュエータに作動油を供給することなく、前記キャブを姿勢変化させるための操作手順が誤っていることを前記報知装置を通じて報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め定められた手順で操作しなければキャブを姿勢変化させることができない作業機械を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】油圧ショベルに搭載された駆動回路を示す図である。
【
図5】シャットオフレバーが許容位置から阻止位置に切り替えられた場合のフローチャートである。
【
図6】ロックスイッチがロック位置から解除位置に切り替えられた場合のフローチャートである。
【
図7】チルトスイッチがオフ位置から可動位置に切り替えられた場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、油圧ショベル1の側面図である。
図2は、キャブ7の姿勢を示す側面図である。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラを備える。そして、走行モータ(図示省略)が駆動することによって、左右一対のクローラが独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラに代えて、装輪式であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4(作業装置)と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6とを主に備える。
【0013】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に回動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に回動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4aを駆動させるブームシリンダ4dと、アーム4bを駆動させるアームシリンダ4eと、バケット4cを駆動させるバケットシリンダ4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0014】
キャブ7は、姿勢変化可能な状態で旋回フレーム5に支持されている。キャブ7は、
図2(A)に示す水平姿勢(第1姿勢)と、
図2(B)に示すチルト姿勢(第2姿勢)との間で姿勢変化が可能な所謂「チルトキャブ」である。
【0015】
より詳細には、旋回フレーム5の上面には、キャブ7の後方にタワー10が立設されている。また、キャブ7は、ベッド11上に固定されている。そして、キャブ7は、タワー10の上端において左右方向に延びる連結ピン12を中心として、回動可能に構成されている。さらに、油圧ショベル1は、作動油の給排によって伸縮するキャブシリンダ13を備える。キャブシリンダ13は、一端がタワー10の下端に設けられたボス14に回動可能に支持され、他端がベッド11に設けられたボス15に回動可能に支持されている。
【0016】
そして、キャブ7は、キャブシリンダ13が縮小することによって、
図2(A)に示す水平姿勢となる。水平姿勢は、キャブ7の下面(基準面)が水平方向を向いた姿勢である。すなわち、水平姿勢のキャブ7に搭乗したオペレータは、水平方向の前方を視認しやすくなる。また、キャブ7は、キャブシリンダ13が伸長することによって、
図2(B)に示すチルト姿勢となる。チルト姿勢は、キャブ7の下面の前端が後端より上方に位置する姿勢である。すなわち、チルト姿勢のキャブ7に搭乗したオペレータは、前上方を視認しやすくなる。
【0017】
走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fは、作動油の給排によって動作(伸縮、回転)する第1アクチュエータの一例である。また、キャブシリンダ13は、作動油の給排によって動作(伸縮)する第2アクチュエータの一例である。但し、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの具体例は、これらに限定されない。
【0018】
また、キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。そして、キャブ7の内部空間には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0019】
操作装置は、走行モータの駆動を指示する走行ペダル、旋回モータの駆動を指示する旋回レバー、ブームシリンダの駆動を指示するブームレバー、アームシリンダの駆動を指示するアームレバー、バケットシリンダの駆動を指示するバケットレバーの他に、
図4に示すように、シャットオフレバー16(シャットオフ操作部)と、ロックスイッチ17(ロック操作部)と、チルトスイッチ18(姿勢操作部)とを含む。
【0020】
シャットオフレバー16は、オペレータに操作されることによって、許容位置及び阻止位置に切り替え可能に構成されている。許容位置は、走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fへの作動油の供給を許容する位置である。阻止位置は、走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fへの作動油の供給を阻止する位置である。そして、シャットオフレバー16は、現在位置を示すシャットオフ信号を後述するコントローラ50(
図4参照)に出力する。
【0021】
ロックスイッチ17は、オペレータに操作されることによって、ロック位置及び解除位置に切り替え可能に構成されている。ロック位置は、キャブ7の姿勢変化をロックする位置である。解除位置は、キャブ7の姿勢変化のロックを解除する位置である。また、ロックスイッチ17は、オペレータによる操作が終わった後も現在位置を保持する所謂オルタネートスイッチである。そして、ロックスイッチ17は、現在位置を示すロック信号をコントローラ50に出力する。
【0022】
チルトスイッチ18は、オペレータによって操作されることによって、オフ位置、チルトアップ位置、チルトダウン位置に切り替え可能に構成されている。オフ位置は、キャブ7の姿勢変化を指示していない位置である。チルトアップ位置は、キャブ7をチルト姿勢に向けて姿勢変化させる指示に対応する。チルトダウン位置は、キャブ7を水平姿勢に向けて姿勢変化させる指示に対応する。
【0023】
チルトアップ位置及びチルトダウン位置は、例えば、オフ位置を挟んで反対側の位置である。また、チルトスイッチ18は、オペレータによる操作が終わるとオフ位置に戻る所謂モーメンタリスイッチである。そして、チルトスイッチ18は、現在位置を示す姿勢変化信号をコントローラ50に出力する。
【0024】
図3は、油圧ショベル1に搭載された駆動回路を示す図である。
図3に示す駆動回路は、ブームシリンダ4d及びキャブシリンダ13を駆動する回路である。なお、図示は省略するが、油圧ショベル1は、走行モータ、旋回モータ、アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fを駆動する駆動回路も含む。
図2に示すように、エンジン20と、作動油タンク21と、メインポンプ22と、パイロットポンプ23と、キャブポンプ24と、方向制御弁25、26と、パイロット制御弁27a、27b、28a、28bと、シャットオフ弁29とを主に備える。
【0025】
エンジン20は、油圧ショベル1を駆動するための駆動力を発生させる。作動油タンク21は、作動油を貯留する。メインポンプ22、パイロットポンプ23、及びキャブポンプ24は、エンジン20のエンジン20の駆動力によって回転し、作動油タンク21に貯留された作動油を圧送する油圧ポンプである。メインポンプ22から圧送された作動油は、ブームシリンダ4dに供給される。パイロットポンプ23から圧送された作動油は、方向制御弁25、26のパイロットポート25a、25b、26a、26bに供給される。キャブポンプ24から圧送された作動油は、キャブシリンダ13に供給される。
【0026】
方向制御弁25は、メインポンプ22からブームシリンダ4dに至る流路上に配置されている。そして、方向制御弁25は、メインポンプ22から供給された作動油をブームシリンダ4dに供給すると共に、ブームシリンダ4dから排出された作動油を作動油タンク21に還流させる。
【0027】
方向制御弁25は、遮断位置Aと、伸長位置Bと、縮小位置Cとの間を移動するスプールを備える。遮断位置Aは、ブームシリンダ4dへの作動油の給排を遮断する位置である。伸長位置Bは、ブームシリンダ4dのボトム室に作動油を供給し、ロッド室から排出された作動油を作動油タンク21に還流させることによって、ブームシリンダ4dを伸長させる位置である。縮小位置Cは、ブームシリンダ4dのロッド室に作動油を供給し、ボトム室から排出された作動油を作動油タンク21に還流させることによって、ブームシリンダ4dを縮小させる位置である。
【0028】
方向制御弁25のスプールの初期位置は、遮断位置Aである。また、方向制御弁25は、パイロットポート25aにパイロット圧油が供給され、パイロットポート25bからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aから伸長位置Bに向かって移動する。また、方向制御弁25は、パイロットポート25bにパイロット圧油が供給され、パイロットポート25aからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aから縮小位置Cに向かって移動する。
【0029】
方向制御弁26は、キャブポンプ24からキャブシリンダ13に至る流路上に配置されている。そして、方向制御弁26は、キャブポンプ24から供給された作動油をキャブシリンダ13に供給すると共に、キャブシリンダ13から排出された作動油を作動油タンク21に還流させる。
【0030】
方向制御弁26は、遮断位置Aと、伸長位置Bと、縮小位置Cとの間を移動するスプールを備える。遮断位置Aは、キャブシリンダ13への作動油の給排を遮断する位置である。伸長位置Bは、キャブシリンダ13のボトム室に作動油を供給し、ロッド室から排出された作動油を作動油タンク21に還流させることによって、キャブシリンダ13を伸長させる位置である。縮小位置Cは、キャブシリンダ13のロッド室に作動油を供給し、ボトム室から排出された作動油を作動油タンク21に還流させることによって、キャブシリンダ13を縮小させる位置である。
【0031】
方向制御弁26のスプールの初期位置は、遮断位置Aである。また、方向制御弁26は、パイロットポート26aにパイロット圧油が供給され、パイロットポート26bからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aから伸長位置Bに向かって移動する。また、方向制御弁26は、パイロットポート26bにパイロット圧油が供給され、パイロットポート26aからパイロット圧油が排出されることによって、遮断位置Aから縮小位置Cに向かって移動する。
【0032】
パイロット制御弁27a、27bは、パイロットポンプ23からパイロットポート25a、25bに至る流路上に配置されている。パイロット制御弁27a、27bの構成は共通するので、以下、パイロット制御弁27aについて説明する。
【0033】
パイロット制御弁27aは、ブームシリンダの駆動を指示するブームレバーの操作に従って、供給位置Dと還流位置Eとの間をスプールが移動する。供給位置Dは、パイロットポンプ23から供給されたパイロット圧油をパイロットポート25aに供給する位置である。還流位置Eは、パイロットポート25aから排出されたパイロット圧油を作動油タンク21に還流させる位置である。パイロット制御弁27aのスプールの初期位置は、還流位置Eである。そして、ブームレバーが操作されることによって、スプールが還流位置Eから供給位置Dに移動する。
【0034】
パイロット制御弁28a、28bは、パイロットポンプ23からパイロットポート26a、26bに至る流路上に配置されている。パイロット制御弁28a、28bの構成は共通するので、以下、パイロット制御弁28aについて説明する。
【0035】
パイロット制御弁28aは、コントローラ50の制御に従って、供給位置Dと還流位置Eとの間をスプールが移動する電磁比例弁である。供給位置Dは、パイロットポンプ23から供給されたパイロット圧油をパイロットポート26aに供給する位置である。還流位置Eは、パイロットポート26aから排出されたパイロット圧油を作動油タンク21に還流させる位置である。パイロット制御弁28aのスプールの初期位置は、還流位置Eである。そして、コントローラ50から指令電流が供給されことによって、スプールが還流位置Eから供給位置Dに移動する。
【0036】
シャットオフ弁29は、パイロットポンプ23からパイロット制御弁27a、27bに至る流路上に配置されている。シャットオフ弁29は、コントローラ50の制御に従って、遮断位置Fと供給位置Gとの間をスプールが移動する電磁比例弁である。遮断位置Fは、パイロットポンプ23から供給されるパイロット圧油を、パイロット制御弁27a、27bに供給せず、作動油タンク21に還流させる位置である。供給位置Gは、パイロットポンプ23から供給されるパイロット圧油を、パイロット制御弁27a、27bに供給する位置である。シャットオフ弁29のスプールの初期位置は、遮断位置Fである。そして、コントローラ50から指令電流が供給されことによって、スプールが遮断位置Fから供給位置Gに移動する。
【0037】
図4は、油圧ショベル1の制御ブロック図である。
図4に示すように、油圧ショベル1は、CPU51(Central Processing Unit)と、メモリ52とを有するコントローラ50を備える。メモリ52は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ50は、メモリ52に格納されたプログラムコードをCPU51が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。
【0038】
但し、コントローラ50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0039】
コントローラ50は、油圧ショベル1全体の動作を制御する。コントローラ50は、シャットオフレバー16から出力されるシャットオフ信号と、ロックスイッチ17から出力されるロック信号と、チルトスイッチ18から出力される姿勢変化信号とに基づいて、エンジン20及び油圧ポンプ22、23、24を回転させると共に、パイロット制御弁28a~28b、シャットオフ弁29を開閉(指令電流を出力)する。また、コントローラ50は、操作装置から出力される信号の組み合わせに基づいて、キャブ内報知部31及びキャブ外報知部32を作動させる。
【0040】
キャブ内報知部31は、キャブ7内に設置されて、キャブ7に搭乗するオペレータに情報を報知する報知装置の一例である。キャブ内報知部31は、例えば、ディスプレイ、LEDランプ、スピーカ、またはこれらの組み合わせである。キャブ外報知部32は、油圧ショベル1の外面に設置されて、油圧ショベル1の周囲で作業する作業者に対して情報を報知する報知装置の他の例である。キャブ外報知部32は、例えば、LEDランプ、スピーカ、またはこれらの組み合わせである。
【0041】
コントローラ50は、シャットオフレバー16が許容位置に操作されたことに応じて、シャットオフ弁29を供給位置Gに切り替える。これにより、パイロットポンプ23から供給されるパイロット圧油は、パイロット制御弁27a、27bに供給される。
【0042】
次に、コントローラ50は、ブームレバーが操作されることによって、パイロット制御弁27a、27bの一方を供給位置Dに切り替える。これにより、パイロットポート25a、25bのいずれかにパイロット圧油が供給されて、方向制御弁25が伸長位置Bまたは縮小位置Cに切り替えられる。その結果、ブームシリンダ4dは、メインポンプ22から作動油が給排されて伸縮する。
【0043】
一方、コントローラ50は、シャットオフレバー16が阻止位置に操作されたことに応じて、シャットオフ弁29を遮断位置Fに切り替える。これにより、パイロットポンプ23から供給されるパイロット圧油は、パイロット制御弁27a、27bに供給されずに、作動油タンク21に還流する。
【0044】
次に、パイロット制御弁28a、28bの一方が供給位置Dに切り替えられることによって、方向制御弁26が伸長位置Bまたは縮小位置Cに切り替えられる。その結果、キャブシリンダ13は、キャブポンプ24から作動油が給排されて伸縮する。
【0045】
一方、パイロット制御弁27a、27bにはパイロット圧油が供給されていないので、ブームレバーが操作されても、方向制御弁25は遮断位置Aのままである。その結果、メインポンプ22からブームシリンダ4dに作動油が給排されない。すなわち、シャットオフ弁29の遮断位置Fは、ブームシリンダ4dへの作動油の供給を遮断する位置である。
【0046】
また、コントローラ50は、パイロット制御弁28a、28bを、原則として下記のように制御する。まず、コントローラ50は、チルトスイッチ18がオフ位置に操作されたことに応じて、パイロット制御弁28a、28bの両方を還流位置Eに切り替える。また、コントローラ50は、チルトスイッチ18がチルトアップ位置に操作されたことに応じて、パイロット制御弁28aを供給位置Dに切り替え、パイロット制御弁28bを還流位置Eに切り替える。さらに、コントローラ50は、チルトスイッチ18がチルトダウン位置に操作されたことに応じて、パイロット制御弁28aを還流位置Eに切り替え、パイロット制御弁28bを供給位置Dに切り替える。
【0047】
但し、シャットオフレバー16、ロックスイッチ17、及びチルトスイッチ18が任意の順序で操作された場合にキャブシリンダ13が伸縮すると、オペレータが意図しないタイミングでキャブ7が姿勢変化する可能性がある。その結果、キャブ7内で態勢を崩したオペレータの体が他の操作装置に触れて、油圧ショベル1が意図しない動作をしてしまう可能性がある。
【0048】
そこで、
図5~
図7を参照して、シャットオフレバー16、ロックスイッチ17、及びチルトスイッチ18の操作順序による制御を説明する。
図5は、シャットオフレバー16が許容位置から阻止位置に切り替えられた場合のフローチャートである。
図6は、ロックスイッチ17がロック位置から解除位置に切り替えられた場合のフローチャートである。
図7は、チルトスイッチ18がオフ位置から可動位置に切り替えられた場合のフローチャートである。なお、
図5~
図7では、チルトスイッチ18のチルトアップ位置及びチルトダウン位置を総称して、「可動位置」と表記する。
【0049】
まず、
図5に示すように、コントローラ50は、シャットオフレバー16が許容位置から阻止位置に操作されたことに応じて、シャットオフ弁29を遮断位置Fに切り替える(S11)。次に、コントローラ50は、ロックスイッチ17から出力されるロック信号に基づいて、ロックスイッチ17が解除位置か否かを判定する(S12)。そして、コントローラ50は、ロックスイッチ17が解除位置であることに応じて(S12:Yes)、チルトスイッチ18から出力されるチルト信号に基づいて、チルトスイッチ18が可動位置か否かを判定する(S13)。
【0050】
そして、コントローラ50は、ロックスイッチ17が解除位置で、且つチルトスイッチ18が可動位置の状態で、シャットオフレバー16が阻止位置に操作されたことに応じて(S12:Yes&S13:Yes)、キャブ7を姿勢変化させるための操作手順が誤っていることをキャブ内報知部31を通じて報知する(S14)。このとき、後述する
図7のステップS34において、チルトスイッチ18が可動位置に操作されてもパイロット制御弁28a、28bが還流位置Eに保持されたままなので、キャブシリンダ13は伸縮(キャブ7は姿勢変化)しない。
【0051】
また、コントローラ50は、ロックスイッチ17が解除位置で、且つチルトスイッチ18がオフ位置の状態で、シャットオフレバー16が阻止位置に操作されたことに応じて(S12:Yes&S13:No)、キャブ7が姿勢変化する可能性があることをキャブ外報知部32を通じて報知する(S15)。さらに、コントローラ50は、ロックスイッチ17がロック位置の状態で、シャットオフレバー16が阻止位置に操作されたことに応じて(S12:No)、ステップS13以降の処理を実行せずに
図5の処理を終了する。
【0052】
なお、コントローラ50は、ステップS14、S15において、シャットオフレバー16が許容位置に操作されたことに応じて、または、ロックスイッチ17がロック位置に操作されたことに応じて、キャブ内報知部31及びキャブ外報知部32による報知を停止する。後述する
図6のステップS23、S24についても同様である。
【0053】
次に、
図6に示すように、コントローラ50は、ロックスイッチ17がロック位置から解除位置に操作されたことに応じて、シャットオフレバー16から出力されるシャットオフ信号に基づいて、シャットオフレバー16が阻止位置か否かを判定する(S21)。そして、コントローラ50は、シャットオフレバー16が阻止位置であることに応じて(S21:Yes)、チルトスイッチ18から出力されるチルト信号に基づいて、チルトスイッチ18が可動位置か否かを判定する(S22)。
【0054】
そして、コントローラ50は、シャットオフレバー16が阻止位置で、且つチルトスイッチ18が可動位置の状態で、ロックスイッチ17が解除位置に操作されたことに応じて(S21:Yes&S22:Yes)、キャブ7を姿勢変化させるための操作手順が誤っていることをキャブ内報知部31を通じて報知する(S23)。このとき、後述する
図7のステップS34において、チルトスイッチ18が可動位置に操作されてもパイロット制御弁28a、28bが還流位置Eに保持されたままなので、キャブシリンダ13は伸縮(キャブ7は姿勢変化)しない。
【0055】
また、コントローラ50は、シャットオフレバー16が阻止位置で、且つチルトスイッチ18がオフ位置の状態で、ロックスイッチ17が解除位置に操作されたことに応じて(S21:Yes&S22:No)、キャブ7が姿勢変化する可能性があることをキャブ外報知部32を通じて報知する(S24)。さらに、コントローラ50は、シャットオフレバー16が許容位置の状態で、ロックスイッチ17が解除位置に操作されたことに応じて(S21:No)、ステップS22以降の処理を実行せずに
図6の処理を終了する。
【0056】
次に、
図7に示すように、コントローラ50は、チルトスイッチ18がオフ位置から可動位置に操作されたことに応じて、シャットオフレバー16から出力されるシャットオフ信号に基づいて、シャットオフレバー16が阻止位置か否かを判定する(S31)。また、コントローラ50は、ロックスイッチ17から出力されるロック信号に基づいて、ロックスイッチ17が解除位置か否かを判定する(S32)。
【0057】
そして、コントローラ50は、シャットオフレバー16が阻止位置で、且つロックスイッチ17が解除位置の状態で、チルトスイッチ18が可動位置に操作されたことに応じて(S31:Yes&S32:Yes)、パイロット制御弁28a、28bの一方(チルトスイッチ18の操作方向に対応する側)を供給位置Dに切り替える(S33)。これにより、キャブポンプ24からキャブシリンダ13に作動油が供給されて、キャブ7の姿勢が変化する。
【0058】
一方、コントローラ50は、シャットオフレバー16が許容位置の状態で、または、ロックスイッチ17がロック位置の状態で、チルトスイッチ18が可動位置に操作されたことに応じて(S31:No/S32:No)、パイロット制御弁28a、28bの両方を還流位置Eに保持する。これにより、キャブポンプ24からキャブシリンダ13に作動油が供給されない。その結果、前述したステップS14、S23のように、チルトスイッチ18が操作されてもキャブ7の姿勢が変化しない。
【0059】
シャットオフレバー16が阻止位置である条件を「第1条件」、ロックスイッチ17がロック位置である条件を「第2条件」、チルトスイッチ18が可動位置に操作されている条件を「第3条件」とする。このとき、コントローラ50は、第1条件、第2条件、及び第3条件の全てが成立し、且つ第3条件が最後に成立したことに応じて、キャブシリンダ13に作動油を供給してキャブ7を姿勢変化させる。一方、コントローラ50は、第1条件または第2条件が最後に成立したことに応じて、キャブシリンダ13に作動油を供給することなく、キャブ7を姿勢変化させるための操作手順が誤っていることをキャブ内報知部31を通じて報知する。
【0060】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0061】
上記の実施形態によれば、チルトスイッチ18が可動位置に操作された状態で、シャットオフレバー16が阻止位置に操作され、且つロックスイッチ17が解除位置に操作された場合に、キャブ7を姿勢変化させずにキャブ内報知部31を作動させる。これにより、予め定められた手順で操作しなければ、キャブ7を姿勢変化させることができないことを、オペレータに認識させることができる。
【0062】
また、上記の実施形態によれば、キャブ内報知部31が作動した状態で、シャットオフレバー16が許容位置に操作された場合に、または、ロックスイッチ17がロック位置に操作された場合に、キャブ内報知部31の報知が停止する。これにより、オペレータがキャブ7を姿勢変化させるつもりがない時にまで、キャブ内報知部31が作動するのを防止できる。
【0063】
さらに、上記の実施形態によれば、シャットオフレバー16、ロックスイッチ17、及びチルトスイッチ18が所定の順序で操作された場合にのみ、キャブ7が姿勢変化する。その結果、意図しないタイミングでキャブ7が姿勢変化することによって、態勢を崩したオペレータの体が他の操作装置に触れて、他の油圧アクチュエータが作動するのを防止できる。なお、キャブ7を姿勢変化させるのに、シャットオフレバー16及びロックスイッチ17の操作順序は特に限定されない。
【0064】
なお、本発明は、チルトキャブのみならず、リンクキャブやスライドキャブにも適用できる。一例として、リンクキャブの場合における第1姿勢及び第2姿勢は、上下方向に離間した位置である。他の例として、スライドキャブの場合における第1姿勢及び第2姿勢は、前後方向に離間した位置である。
【0065】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d ブームシリンダ(第1アクチュエータ)
4e アームシリンダ(第1アクチュエータ)
4f バケットシリンダ(第1アクチュエータ)
5 旋回フレーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
10 タワー
11 ベッド
12 連結ピン
13 キャブシリンダ(第2アクチュエータ)
14,15 ボス
16 シャットオフレバー(シャットオフ操作部)
17 ロックスイッチ(ロック操作部)
18 チルトスイッチ(姿勢操作部)
20 エンジン
21 作動油タンク
22 メインポンプ
23 パイロットポンプ
24 キャブポンプ
25,26 方向制御弁
25a,25b,26a,26b パイロットポート
27a,27b,28a,28b パイロット制御弁
29 シャットオフ弁
31 キャブ内報知部(報知装置)
32 キャブ外報知部
50 コントローラ
51 CPU
52 メモリ