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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001428
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】CT画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20221226BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102140
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】512097042
【氏名又は名称】日本装置開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA02
2G001HA08
2G001HA14
2G001JA08
2G001LA11
2G001MA05
(57)【要約】
【課題】斜め方向から被検査体にX線を照射して被検査体のX線画像を取得するとともに取得した複数枚のX線画像に基づいてCT画像を生成するX線検査装置において、より精度の高いCT画像を生成することが可能となるCT画像生成方法を提供する。
【解決手段】このCT画像生成方法では、球体画像取得ステップにおいて、被検査体のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度θでX線光軸OAを回転中心軸CRに対して傾けた状態でテーブル5を回転させて一定角度ごとに球体22のX線画像を取得し、軌跡特定ステップにおいて、球体画像取得ステップで取得した複数枚の球体22のX線画像に基づいて、テーブル5が1回転する間の球体22の中心の軌跡である球体中心軌跡を特定し、CT画像生成ステップにおいて、球体中心軌跡に基づく所定の補正を行って被検査体のCT画像を生成している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器と、前記X線発生器との間に被検査体を挟むように配置されるX線検出器と、前記被検査体が載置されるテーブルと、上下方向に平行な回転中心軸を中心にして前記テーブルを回転させる回転機構とを備え、前記X線発生器が射出するX線の光軸であるX線光軸と前記回転中心軸とが前記X線発生器と前記被検査体との間においてなす角度が鋭角になっているX線検査装置でCT画像を生成するためのCT画像生成方法であって、
前記テーブルに球状の球体を載置し、前記被検査体のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度で前記X線光軸を前記回転中心軸に対して傾けた状態で前記テーブルを回転させるとともに前記X線発生器にX線を照射させて、一定角度ごとに前記X線検出器に前記球体のX線画像を取得させる球体画像取得ステップと、
前記球体画像取得ステップで取得した複数枚の前記球体のX線画像に基づいて、前記テーブルが1回転する間の前記球体の中心の軌跡である球体中心軌跡を特定する軌跡特定ステップと、
前記テーブルに前記被検査体を載置し、前記テーブルを回転させるとともに前記X線発生器にX線を照射させて、一定角度ごとに前記X線検出器に前記被検査体のX線画像を取得させる画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得した複数枚の前記被検査体のX線画像に基づく所定の演算を行って前記被検査体のCT画像を生成するCT画像生成ステップとを備え、
前記CT画像生成ステップでは、前記球体中心軌跡に基づく所定の補正を行って前記被検査体のCT画像を生成することを特徴とするCT画像生成方法。
【請求項2】
前記CT画像生成ステップでは、前記球体中心軌跡の重心と前記球体中心軌跡との平均距離を半径とし前記球体中心軌跡の重心を中心とする仮想円、または、前記球体中心軌跡に内接する仮想円、あるいは、前記球体中心軌跡に外接する仮想円の中心から前記球体中心軌跡までの距離と前記仮想円の半径との差の分の補正を行って前記被検査体のCT画像を生成することを特徴とする請求項1記載のCT画像生成方法。
【請求項3】
前記球体画像取得ステップでは、前記回転中心軸の近傍に前記球体を載置し、
前記CT画像生成ステップでは、前記球体中心軌跡の重心と前記球体中心軌跡との距離の分の補正を行って前記被検査体のCT画像を生成することを特徴とする請求項1記載のCT画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の被検査体を非破壊で検査するためのX線検査装置においてCT画像を生成するためのCT画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を用いて被検査体の断層像を撮影する断層撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の断層撮影装置は、X線管と、X線検出器と、被検査体が載置されるテーブルと、上下方向に平行な回転中心軸を回転中心にしてテーブルを回転させる回転機構と、X線検出器を移動させる検出器移動機構とを備えている。この断層撮影装置では、検出器移動機構によってX線検出器を移動させることで、テーブルの回転中心軸とX線光軸とがなす角度であるラミノ角を0°~約70°の範囲で変えることが可能になっている。
【0003】
特許文献1に記載の断層撮影装置では、被検査体の検査を行うときに、回転中心軸を回転中心にしてテーブルを回転させ360°に亘ってX線検出器で被検査体のX線画像を取得する。このときには、ラミノ角は0°を超える角度に設定されている。すなわち、この断層撮影装置では、被検査体の検査を行うときのラミノ角は鋭角になっており、被検査体に斜め方向からX線を照射している。
【0004】
特許文献1に記載の断層撮影装置では、被検査体の検査に先立って、ラミノ角を0°に設定するとともに被検査体の代わりに基準被検査体をテーブルの回転中心軸の近傍に載置し、回転中心軸を中心にしてテーブルを回転させ360°に亘ってX線検出器で基準被検査体のX線画像を取得している。基準被検査体は、たとえば、X線を透過しやすい板の上にX線を透過しにくい金属ボールを接着したものであり、金属ボールが回転中心軸の近傍に配置される。
【0005】
特許文献1に記載の断層撮影装置では、基準被検査体のX線画像から、テーブルが360°回転したときの金属ボールの重心の振れを求めてメモリに記憶する。より具体的には、上述のように、この断層撮影装置では、基準被検査体のX線画像を取得するときのラミノ角が0°に設定されているため、基準被検査体のX線画像から、テーブルが360°回転したときの金属ボールの重心の水平方向の振れを求めてメモリに記憶する。被検査体の検査時には、メモリに記憶された金属ボールの重心の水平方向の振れに基づいて、X線検出器で取得された被検査体のX線画像を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5060862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、工業製品等の被検査体を非破壊で検査するためのX線検査装置を開発している。具体的には、本願発明者は、特許文献1に記載の断層撮影装置と同様に、被検査体の検査を行うときのラミノ角が鋭角に設定されるX線検査装置を開発している。すなわち、本願発明者は、斜め方向から被検査体にX線を照射して被検査体のX線画像を取得するX線検査装置を開発している。このX線検査装置では、X線検出器で取得された被検査体の複数枚のX線画像に基づく所定の演算が行われてCT画像が生成される。このX線検査装置において、被検査体の検査精度をより高めるためには、より精度の高いCT画像が生成されることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の課題は、斜め方向から被検査体にX線を照射して被検査体のX線画像を取得するとともに取得した複数枚のX線画像に基づいてCT画像を生成するX線検査装置において、より精度の高いCT画像を生成することが可能となるCT画像生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本願発明者は、まず、被検査体が載置されるテーブルを回転させる回転機構の機械的な調整を精度良く行って、被検査体がテーブルと一緒に回転するときの被検査体の水平方向の振れを抑制することにした。また、本願発明者は、回転機構の機械的な調整を行ってテーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れを抑制した後、テーブルを回転させてX線検出器で被検査体のX線画像を取得し、取得したX線画像を確認することにした。
【0010】
本願発明者は、かかる過程の中で、テーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れが抑制されてくると、テーブルと一緒に回転する被検査体の上下方向(鉛直方向)の振れが被検査体のX線画像に与える影響が大きくなって、被検査体のX線画像の精度を高めることが困難になり、その結果、より精度の高いCT画像を生成することが困難になることを知見するに至った。また、本願発明者は、テーブルと一緒に回転する被検査体の上下方向の振れが被検査体のX線画像に与える影響が大きくなって、被検査体のX線画像の精度を高めることが困難になっても、複数枚のX線画像に基づいてCT画像を生成する際に、テーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れを補正するだけでなく被検査体の上下方向の振れを補正することで、より精度の高いCT画像を生成することが可能になることを知見するに至った。
【0011】
本発明のCT画像生成方法は、かかる新たな知見に基づくものであり、X線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置されるX線検出器と、被検査体が載置されるテーブルと、上下方向に平行な回転中心軸を中心にしてテーブルを回転させる回転機構とを備え、X線発生器が射出するX線の光軸であるX線光軸と回転中心軸とがX線発生器と被検査体との間においてなす角度が鋭角になっているX線検査装置でCT画像を生成するためのCT画像生成方法であって、テーブルに球状の球体を載置し、被検査体のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度でX線光軸を回転中心軸に対して傾けた状態でテーブルを回転させるとともにX線発生器にX線を照射させて、一定角度ごとにX線検出器に球体のX線画像を取得させる球体画像取得ステップと、球体画像取得ステップで取得した複数枚の球体のX線画像に基づいて、テーブルが1回転する間の球体の中心の軌跡である球体中心軌跡を特定する軌跡特定ステップと、テーブルに被検査体を載置し、テーブルを回転させるとともにX線発生器にX線を照射させて、一定角度ごとにX線検出器に被検査体のX線画像を取得させる画像取得ステップと、画像取得ステップで取得した複数枚の被検査体のX線画像に基づく所定の演算を行って被検査体のCT画像を生成するCT画像生成ステップとを備え、CT画像生成ステップでは、球体中心軌跡に基づく所定の補正を行って被検査体のCT画像を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明のCT画像生成方法では、球体画像取得ステップにおいて、上下方向に平行な回転中心軸に対してX線光軸を傾けた状態でテーブルを回転させて一定角度ごとにX線検出器に球体のX線画像を取得させ、軌跡特定ステップにおいて、球体画像取得ステップで取得した複数枚の球体のX線画像に基づいて、テーブルが1回転する間の球体の中心の軌跡である球体中心軌跡を特定している。そのため、本発明では、テーブルと一緒に回転する球体の水平方向の振れに加えて球体の上下方向の振れを含んだ球体のX線画像を取得して、テーブルと一緒に回転する球体の水平方向の振れおよび上下方向の振れを含んだ球体中心軌跡を取得することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、球体画像取得ステップにおいて、被検査体のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度でX線光軸を回転中心軸に対して傾けた状態でテーブルを回転させているため、被検査体のX線画像を取得するときにテーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れおよび上下方向の振れと同程度の振れを含んだ球体中心軌跡を取得することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明では、被検査体のCT画像を生成するCT画像生成ステップにおいて、テーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れおよび上下方向の振れと同程度の振れを含んだ球体中心軌跡に基づく所定の補正を行って被検査体のCT画像を生成している。そのため、本発明では、複数枚の被検査体のX線画像に基づいて被検査体のCT画像を生成する際に、テーブルと一緒に回転する被検査体の水平方向の振れを補正するだけでなく被検査体の上下方向の振れを補正することが可能になる。したがって、本発明のCT画像生成方法でCT画像を生成すれば、より精度の高いCT画像を生成することが可能になる。
【0015】
本発明において、CT画像生成ステップでは、たとえば、球体中心軌跡の重心と球体中心軌跡との平均距離を半径とし球体中心軌跡の重心を中心とする仮想円、または、球体中心軌跡に内接する仮想円、あるいは、球体中心軌跡に外接する仮想円の中心から球体中心軌跡までの距離と仮想円の半径との差の分の補正を行って被検査体のCT画像を生成する。この場合には、CT画像生成ステップでの補正量を小さくすることが可能になる。
【0016】
本発明において、球体画像取得ステップでは、回転中心軸の近傍に球体を載置し、CT画像生成ステップでは、球体中心軌跡の重心と球体中心軌跡との距離の分の補正を行って被検査体のCT画像を生成しても良い。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のCT画像生成方法でCT画像を生成すれば、斜め方向から被検査体にX線を照射して被検査体のX線画像を取得するとともに取得した複数枚のX線画像に基づいてCT画像を生成するX線検査装置において、より精度の高いCT画像を生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法でCT画像を生成するX線検査装置の概略構成を説明するための図である。
図2図1に示す保持部材の平面図である。
図3】本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法の球体画像取得ステップを説明するための概略図である。
図4】(A)は、本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法を説明するための図であり、(B)、(C)は、本発明の他の実施の形態にかかるCT画像生成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(X線検査装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法でCT画像を生成するX線検査装置1の概略構成を説明するための図である。図2は、図1に示す保持部材11の平面図である。
【0021】
本形態のCT画像生成方法は、工業製品等の被検査体2を非破壊で検査するためのX線検査装置1においてCT画像を生成するための方法である。被検査体2は、たとえば、平板状に形成されるガラスエポキシ基板等の基板(回路基板)である。被検査体2である基板には、ICチップ等の電子部品が実装されており、X線検査装置1では、基板と電子部品との接合部分の検査が行われる。そのため、X線検査装置1での検査では、たとえば、ミクロン単位の高い検査精度が要求される。
【0022】
X線検査装置1は、被検査体2にX線を照射するX線発生器3と、X線発生器3との間で被検査体2を挟むように配置されるとともに被検査体2のX線画像を取得するX線検出器4と、被検査体2が載置されるテーブル5と、上下方向(鉛直方向)に平行な回転中心軸CRを回転中心にしてテーブル5を回転させる回転機構6と、X線検出器4で取得されたX線画像を取り込んで処理するパーソナルコンピュータ(PC)7とを備えている。
【0023】
X線検査装置1では、X線発生器3が射出するX線の光軸であるX線光軸OAが水平方向に対して傾くとともに上下方向に対して傾いている。具体的には、X線検査装置1では、X線発生器3と被検査体2との間においてX線光軸OAと回転中心軸CRとがなす角度(ラミノ角)θが鋭角になっている。すなわち、X線検査装置1は、いわゆる斜めCT装置である。角度θは、たとえば、45°~60°となっている。
【0024】
X線発生器3は、被検査体2に向かって円錐状のX線を射出する。X線検出器4は、二次元のX線検出器(エリアセンサ)である。X線検出器4は、X線検出器4の受光面がX線発生器3側を向くように配置されている。X線光軸OAは、X線検出器4の受光面に直交している。X線検出器4には、被検査体2の透視像が写し出される。X線発生器3とX線検出器4との間には、たとえば、被検査体2の一部分が挟まれている。テーブル5は、回転機構6の上端に取り付けられており、回転機構6の上側に配置されている。X線発生器3は、被検査体2よりも上側に配置されている。X線検出器4は、回転機構6よりも下側に配置されている。
【0025】
テーブル5は、いわゆるXYテーブルであり、テーブル5に載置される被検査体2は、上下方向に直交するX方向と、上下方向とX方向とに直交するY方向とに移動可能となっている。被検査体2である基板は、基板の厚さ方向と上下方向とが一致するようにテーブル5に載置される。テーブル5には、X線発生器3から射出されるX線を通過させるための貫通穴が形成されている。
【0026】
回転機構6は、テーブル5が取り付けられるとともにテーブル5と一緒に回転する回転部材10と、回転部材10を回転可能に保持する保持部材11と、回転部材10と保持部材11との間に配置される転がり軸受12とを備えている。また、回転機構6は、回転部材10を回転させる駆動機構(図示省略)を備えている。駆動機構は、たとえば、駆動源としてのモータと、モータの動力を回転部材10に伝達する動力伝達機構とを備えている。モータは、保持部材11に固定されている。動力伝達機構は、たとえば、モータの出力軸に固定される駆動歯車と、回転部材10に固定される円環状かつ大径の従動歯車とを備えている。
【0027】
転がり軸受12(以下「軸受12」とする。)は、クロスローラ軸受である。軸受12は、回転部材10に固定される円環状の内輪14と、保持部材11に固定される円環状の外輪15と、内輪14と外輪15との間に配置される複数のローラ(ころ)とを備えている。軸受12は、比較的大型の軸受であり、内輪14の内径は、たとえば、500mmとなっている。なお、軸受12は、クロスローラ軸受以外のころ軸受(ローラ軸受)であっても良いし、玉軸受(ボール軸受)であっても良い。
【0028】
回転部材10は、内輪14の内周側に配置されている。回転部材10は、円環状に形成されている。X線発生器3から射出されるX線は、円環状に形成される回転部材10の内周側を通過する。保持部材11は、円環状に形成されている。X線発生器3から射出されるX線は、円環状に形成される保持部材11の内周側を通過する。保持部材11には、外輪15が載置される載置面11aが形成されている。載置面11aは、円環状に形成される保持部材11の中心を曲率中心とする円環状に形成されている。また、載置面11aは、上下方向に直交する平面である。載置面11aに載置される外輪15は、軸受12の周方向に配列される複数の固定用ネジによって保持部材11に固定されている。
【0029】
(CT画像生成方法)
図3は、本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法の球体画像取得ステップを説明するための概略図である。図4(A)は、本発明の実施の形態にかかるCT画像生成方法を説明するための図である。
【0030】
X線検査装置1では、以下のように被検査体2のCT画像が生成される。まず、被検査体2のX線画像を取得する前に、テーブル5に球状の球体22を載置し、被検査体2のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度θでX線光軸OAを回転中心軸CRに対して傾けた状態でテーブル5を回転させるとともにX線発生器3にX線を照射させて、テーブル5の回転方向における一定角度ごとにX線検出器4に球体22のX線画像を取得させる(球体画像取得ステップ)。
【0031】
球体画像取得ステップにおいてテーブル5に載置される球体22は、X線が透過しにくい(あるいは、X線が透過しない)金属製のボールである。球体22は、たとえば、鋼材によって形成された鋼球であり、球体22の真球度は高くなっている。球体22の直径は、たとえば、0.3mmとなっている。球体22は、被検査体2の検査を行う作業者によって回転中心軸CRの近傍に載置される。
【0032】
球体画像取得ステップでは、回転機構6は、球体22が載置されたテーブル5を一定速度で少なくとも360°回転させ、X線発生器3は、回転機構6が等速で回転させている球体22にX線を照射する。X線検出器4は、球体22の透視像が写る二次元のX線画像を、テーブル5が一定角度回転するごとに連続的に複数枚取得する。たとえば、X線検出器4は、テーブル5が0.36°回転するごとに連続的に1000枚のX線画像を取得する。X線検出器4で取得された複数枚の球体22のX線画像は、PC7に取り込まれる。本形態では、後述の画像取得ステップで取得される被検査体2のX線画像の枚数と同じ枚数の球体22のX線画像が取得される。
【0033】
なお、本形態では、球体画像取得ステップの前に、回転機構6の機械的な調整が行われている。たとえば、テーブル5と一緒に回転する球体22の水平方向の振れが5μm程度となり、テーブル5と一緒に回転する球体22の上下方向の振れが10μm程度となるように、回転機構6の精密な調整が行われている。
【0034】
球体画像取得ステップで球体22のX線画像が取得されると、球体画像取得ステップで取得した複数枚の球体22のX線画像に基づいて、テーブル5が1回転する間(360°回転する間)の球体22の中心(重心)の軌跡である球体中心軌跡BTを特定する(軌跡特定ステップ)。軌跡特定ステップでは、PC7に取り込まれた複数枚の球体22のX線画像に基づいてPC7が球体中心軌跡BTを特定する。球体中心軌跡BTは、テーブル5の回転角度に応じて、たとえば、図4(A)のように変動する。
【0035】
また、球体画像取得ステップの後には、テーブル5から球体22を降ろしてテーブル5に被検査体2を載置し、テーブル5を回転させるとともにX線発生器3にX線を照射させて、テーブル5の回転方向における一定角度ごとにX線検出器4に被検査体2のX線画像を取得させる(画像取得ステップ)。画像取得ステップでは、回転機構6は、被検査体2が載置されたテーブル5を一定速度で少なくとも360°回転させ、X線発生器3は、回転機構6が等速で回転させている被検査体2にX線を照射する。X線検出器4は、被検査体2の透視像が写る二次元のX線画像を、テーブル5が一定角度回転するごとに連続的に複数枚取得する。X線検出器4で取得された複数枚の被検査体2のX線画像は、PC7に取り込まれる。
【0036】
画像取得ステップで被検査体2のX線画像が取得されると、画像取得ステップで取得した複数枚の被検査体2のX線画像に基づく所定の演算を行って被検査体2のCT画像を生成する(CT画像生成ステップ)。CT画像生成ステップでは、PC7に取り込まれた複数枚の被検査体2のX線画像に基づいてPC7が所定の演算処理を行って被検査体2のCT画像を生成する。また、CT画像生成ステップでは、球体中心軌跡BTに基づく所定の補正を行って被検査体2のCT画像を生成する。
【0037】
球体中心軌跡BTの重心と球体中心軌跡BTとの平均距離(球体中心軌跡BTの重心と球体中心軌跡BTとの距離の平均値)を半径rとし、球体中心軌跡BTの重心を中心Cとする円を仮想円VCとすると(図4(A)参照)、本形態では、CT画像生成ステップにおいて、仮想円VCの中心Cから球体中心軌跡BTまでの距離と仮想円VCの半径rとの差dの分の補正を行って被検査体2のCT画像を生成する。具体的には、上述のように、画像取得ステップでは、テーブル5の回転方向における一定角度ごとに複数枚の被検査体2のX線画像が取得されており、CT画像生成ステップでは、テーブル5の各回転角度における被検査体2のX線画像に対して、その回転角度において算出される差dの分の補正を行って被検査体2のCT画像を生成する。
【0038】
たとえば、CT画像生成ステップでは、テーブル5の各回転角度における被検査体2のX線画像を差dの分だけ所定の方向へずらす補正を行う。この場合、仮想円VCの中心Cから球体中心軌跡BTまでの距離が仮想円VCの半径rよりも大きければ、差dの分だけマイナスの方向に被検査体2のX線画像をずらし、仮想円VCの中心Cから球体中心軌跡BTまでの距離が仮想円VCの半径rよりも小さければ、差dの分だけプラスの方向に被検査体2のX線画像をずらす。
【0039】
あるいは、CT画像生成ステップでは、複数枚のX線画像に対する所定の演算を行う際に、テーブル5の各回転角度において算出される差dの分の補正を行う。なお、本形態では、球体画像取得ステップにおける回転部材10、保持部材11および軸受12等の状態と、画像取得ステップにおける回転部材10、保持部材11および軸受12等の状態とが、環境温度の変動等に伴って変動するのを抑制して、回転部材10、保持部材11および軸受12等の状態の変動がCT画像に与える影響を最小限に抑制するために、球体画像取得ステップの直後に画像取得ステップを行っている。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、球体画像取得ステップにおいて、上下方向に平行な回転中心軸CRに対してX線光軸OAを傾けた状態でテーブル5を回転させて一定角度ごとに球体22のX線画像を取得し、軌跡特定ステップにおいて、球体画像取得ステップで取得した複数枚の球体22のX線画像に基づいて、テーブル5が1回転する間の球体22の中心の軌跡である球体中心軌跡BTを特定している。そのため、本形態では、テーブル5と一緒に回転する球体22の水平方向の振れに加えて球体22の上下方向の振れを含んだ球体22のX線画像を取得して、テーブル5と一緒に回転する球体22の水平方向の振れおよび上下方向の振れを含んだ球体中心軌跡BTを取得することが可能になる。
【0041】
また、本形態では、球体画像取得ステップにおいて、被検査体2のX線画像を取得するときの傾斜角度と同じ角度θでX線光軸OAを回転中心軸CRに対して傾けた状態でテーブル5を回転させているため、被検査体2のX線画像を取得するときにテーブル5と一緒に回転する被検査体2の水平方向の振れおよび上下方向の振れと同程度の振れを含んだ球体中心軌跡BTを取得することが可能になる。
【0042】
さらに、本形態では、CT画像生成ステップにおいて、テーブル5と一緒に回転する被検査体2の水平方向の振れおよび上下方向の振れと同程度の振れを含んだ球体中心軌跡BTに基づく所定の補正を行って被検査体2のCT画像を生成している。そのため、本形態では、複数枚の被検査体2のX線画像に基づいて被検査体2のCT画像を生成する際に、テーブル5と一緒に回転する被検査体2の水平方向の振れを補正するだけでなく被検査体2の上下方向の振れを補正することが可能になる。したがって、本形態のCT画像生成方法でCT画像を生成すれば、より精度の高いCT画像を生成することが可能になる。
【0043】
なお、本形態では、軸受12が比較的大型の軸受であって、内輪14の内径は比較的大きくなっている。また、本形態では、X線発生器3から射出されるX線が回転部材10および保持部材11の内周側を通過するように、回転部材10および保持部材11が円環状に形成されている。そのため、本形態では、回転部材10、保持部材11および軸受12の剛性が比較的低くなっていて、テーブル5と一緒に回転する被検査体2に上下方向の振れが生じやすくなるが、本形態では、テーブル5と一緒に回転する被検査体2に上下方向の振れが生じやすくなっていても、より精度の高いCT画像を生成することが可能になる。
【0044】
本形態では、CT画像生成ステップにおいて、仮想円VCの中心Cから球体中心軌跡BTまでの距離と仮想円VCの半径rとの差dの分の補正を行って被検査体2のCT画像を生成している。そのため、本形態では、球体中心軌跡BTの重心と球体中心軌跡BTとの距離の分の補正を行う場合と比較して、CT画像生成ステップでの補正量を小さくすることが可能になる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態において、仮想円VCは、図8(B)に示すように、球体中心軌跡BTに内接する内接円であっても良いし、図8(C)に示すように、球体中心軌跡BTに外接する外接円であっても良い。この場合であっても、CT画像生成ステップにおいて、仮想円VCの中心Cから球体中心軌跡BTまでの距離と仮想円VCの半径rとの差dの分の補正を行って被検査体2のCT画像を生成する。この場合であっても、CT画像生成ステップでの補正量を小さくすることが可能になる。また、上述した形態において、仮想円VCの半径rが十分に小さい場合には、CT画像生成ステップにおいて、球体中心軌跡BTの重心と球体中心軌跡BTとの距離の分の補正を行って被検査体2のCT画像を生成しても良い。
【0046】
上述した形態において、画像取得ステップで被検査体2のX線画像を取得するときに、360°の等分割位置においてテーブル5を一時停止させながら、順次、X線検出器4が被検査体2のX線画像を取得しても良い。また、上述した形態において、球体画像取得ステップで球体22のX線画像を取得するときに、360°の等分割位置においてテーブル5を一時停止させながら、順次、X線検出器4が球体22のX線画像を取得しても良い。
【0047】
上述した形態において、画像取得ステップの後に球体画像取得ステップを行っても良い。この場合には、画像取得ステップの直後に球体画像取得ステップを行うことが好ましい。また、上述した形態において、画像取得ステップで取得される被検査体2のX線画像の枚数と球体画像取得ステップで取得される球体22のX線画像の枚数とが異なっていても良い。さらに、上述した形態において、X線検出器4が被検査体2より上側に配置され、X線発生器3が回転機構6より下側に配置されていても良い。また、上述した形態において、X線検査装置1で検査が行われる被検査体2は、基板以外のものであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 X線検査装置
2 被検査体
3 X線発生器
4 X線検出器
5 テーブル
6 回転機構
22 球体
BT 球体中心軌跡
C 仮想円の中心
CR 回転中心軸
d 仮想円の中心から球体中心軌跡までの距離と仮想円の半径との差
OA X線光軸
r 仮想円の半径
VC 仮想円
図1
図2
図3
図4