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特開2023-142811表示方法、解析装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142811
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】表示方法、解析装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N27/447 325D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049912
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 康太
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
(57)【要約】
【課題】電気泳動データの解析装置において、着目するピークを自動で特定的に表示し、ユーザの作業効率を向上する。
【解決手段】複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた複数のデータの表示方法である。第1データは、分離された既知サンプルの成分に対応する第1ピークを含む。第2データは、分離された未知サンプルの成分に対応する第2ピークを含む。表示方法は、複数のデータを取得するステップと、第1データおよび第2データから、第1ピークおよび第2ピークをそれぞれ検出するステップと、第1ピークから所定の閾値内に含まれる範囲を特定範囲Ar1~Ar6として設定するステップと、第2データについて、第2ピークが特定範囲に含まれるか否かを判定するステップと、第2ピークが特定範囲にある場合、第2ピークを特定的に表示するステップとを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた複数のデータの表示方法であって、
前記複数のサンプルは、既知サンプルと、未知サンプルとを含み、
前記複数のデータは、前記既知サンプルに対応する第1データと、前記未知サンプルに対応する第2データとを含み、
前記第1データは、分離された前記既知サンプルの成分に対応する第1ピークを含み、
前記第2データは、分離された前記未知サンプルの成分に対応する第2ピークを含み、
前記表示方法は、
前記複数のデータを取得するステップと、
前記第1データおよび前記第2データから、前記第1ピークおよび前記第2ピークをそれぞれ検出するステップと、
前記第1ピークから所定の閾値内に含まれる範囲を特定範囲として設定するステップと、
前記第2データについて、前記第2ピークが前記特定範囲に含まれるか否かを判定するステップと、
前記第2ピークが前記特定範囲にある場合、前記第2ピークを特定的に表示するステップとを備える、表示方法。
【請求項2】
前記既知サンプルおよび前記未知サンプルは、各々DNAまたはRNAを含み、
前記複数のサンプルは、分離された成分を塩基対の数で規定するための基準サンプルを含み、
前記複数のデータは、前記基準サンプルに対応する第3データを含み、
前記設定するステップは、前記第1データにおいて、前記第3データに基づいて、前記第1ピークに対応する塩基対の数を算出するステップと、
塩基対の数に応じた前記特定範囲を設定するステップとを含む、請求項1に記載の表示方法。
【請求項3】
前記特定的に表示するステップは、前記第2データに基づいてエレクトロフェログラムを表示するステップをさらに含み、
前記エレクトロフェログラムを表示するステップは、前記第2ピークが前記特定範囲に含まれる場合、含まれない場合に比べて、異なる視覚的表現を有するように表示するステップを含む、請求項1または2に記載の表示方法。
【請求項4】
前記異なる視覚的表現を有するように表示するステップは、前記エレクトロフェログラムにおいて、前記特定範囲に含まれる前記第2ピークにマーカを付して表示するステップを含む、請求項3に記載の表示方法。
【請求項5】
前記特定的に表示するステップは、前記第2データに基づいてピークテーブルを表示するステップをさらに含み、
前記ピークテーブルは、前記第2ピークが前記特定範囲に含まれる場合のみ、前記第2ピークに対応する値を含むように構成される、請求項3または4に記載の表示方法。
【請求項6】
前記複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた前記複数のデータを解析する解析装置であって、
前記複数のデータを記憶するメモリと、
請求項1~5のいずれか1項に記載の表示方法を実行するプロセッサと、
前記特定範囲に含まれる前記第2ピークを特定的に表示する表示部とを備える、解析装置。
【請求項7】
コンピューターによって実行されることにより、前記コンピューターに請求項1~6のいずれか1項に記載の表示方法を実施させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示方法、解析装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気泳動データを解析・表示するソフトウェアでは、検出されたデータをエレクトロフェログラム、ゲルイメージおよびピークリストなどの形態で表示する。
【0003】
特開2020-20725号公報(特許文献1)には、検出されたデータをエレクトロフェログラムおよびゲルイメージの形態で表示する電気泳動で分離されたサンプルのデータ解析装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-20725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電気泳動データには、電気泳動で分画された複数の成分に対応する複数のピークが含まれている。通常、ユーザは複数のピークのうち、着目するピークを指定し、当該着目するピークについて解析を行なう。このような、着目するピークを指定する方法は、例えばユーザが着目する成分に対応するピークを、目視および手動で指定することで行なわれてきたが、さらなる工夫が求められている。
【0006】
本開示は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、電気泳動データの解析装置において、着目するピークを自動で特定的に表示し、ユーザの作業効率を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた複数のデータの表示方法に関する。複数のサンプルは、既知サンプルと、未知サンプルとを含む。複数のデータは、既知サンプルに対応する第1データと、未知サンプルに対応する第2データとを含む。第1データは、分離された既知サンプルの成分に対応する第1ピークを含む。第2データは、分離された未知サンプルの成分に対応する第2ピークを含む。表示方法は、複数のデータを取得するステップと、第1データおよび第2データから、第1ピークおよび第2ピークをそれぞれ検出するステップと、第1ピークから所定の閾値内に含まれる範囲を特定範囲として設定するステップと、第2データについて、第2ピークが特定範囲に含まれるか否かを判定するステップと、第2ピークが特定範囲にある場合、第2ピークを特定的に表示するステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示による表示方法によれば、第1データにおいて検出されたピーク(第1ピーク)から所定の閾値内に含まれる特定範囲に第2データのピーク(第2ピーク)が含まれる場合に、当該第2ピークが特定的に表示される。すなわち、ユーザが着目するピークが自動で特定的に表示される。よって、ユーザの作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に従う解析システムの全体の構成を示す図である。
図2】メソッド設定画面の一例を示す図である。
図3】検出設定画面の一例を示す図である。
図4】サンプル情報および分析順序の設定画面の一例を示す図である。
図5】解析結果画面の一例を示す図である。
図6】エレクトロフェログラムの一例を示す図である。
図7】解析装置の表示処理を示すフローチャートである。
図8】検出範囲の設定処理を示すフローチャートである。
図9】変形例に従う、解析結果画面の一例を示す図である。
図10】コントロールの事後設定に関する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0011】
[1.解析システムの構成]
図1は、解析システムの全体の構成を示す図である。図1に示されているように、解析システム100は、解析装置1と電気泳動装置2とを含む。
【0012】
電気泳動装置2は、行列状にウェルが形成されたプレート21に設置された複数のサンプルを自動的に連続分析する。具体的には、例えば、ユーザはサンプルをプレート21に設置する。電気泳動装置2は、プレート21から微細な分析流路中にサンプルを導入する。分析流路中には蛍光色素が含まれており、サンプルは分析流路中を泳動する間に蛍光色素で染色される。電気泳動装置2は、分析流路に電圧を印加し、サンプルを成分ごとに分離する。そして、電気泳動装置2は、分析流路に紫外線を照射し、分離された成分から発生する蛍光を検出する。電気泳動装置2は、蛍光の信号強度と、分析流路中の移動距離との関係を示す分離データを取得する。なお、当該移動距離は、一般にサンプルのサイズ(分子量)に相関する。
【0013】
本明細書では、サンプルはDNAまたはRNAを成分として含み、電気泳動装置2は、DNAまたはRNAをそのサイズである塩基対の数(bp:base pairまたはnt:nucleotide)によって分離する。ただし、サンプルの成分は以上の例に限定されず、電気泳動により分離されることが可能であればよく、例えばタンパク質であってもよい。
【0014】
解析装置1は、電気泳動で得られた分離データを電気泳動装置2から取得して、データ解析処理を実施する。分離データは、本開示における「データ」の一実施例に対応する。
【0015】
解析装置1は、プロセッサ10と、メモリ11と、入力部12と、表示部13とを備える。
【0016】
プロセッサ10は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ10は、メモリ11に格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。
【0017】
メモリ11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリを含む。ROMに格納されるプログラムは、解析装置1の処理手順が記されたプログラムである。不揮発性メモリは、電気泳動装置2から送られてきた分離データをデータファイルとして記憶する。なお、メモリ11は、不揮発性メモリに代えてまたはこれに加えてハードディスク装置を含んでいても良い。
【0018】
入力部12は、例えば、キーボードおよびマウス等を含む。表示部13は、液晶ディスプレイ等を含む。解析装置1は、処理手順が記されたプログラムに従って、表示用データを生成し、表示部13に表示させる。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0019】
[2.従来の解析システムとの比較]
電気泳動分離により得られた分離データには、分離した成分に対応するピークが含まれる。通常、分離データの解析においては、ユーザは、分離データに含まれるピークのうち着目すべき成分に対応するピークを目視または手動で指定し、当該指定したピークについて解析を行なう。
【0020】
例えば、未知サンプルについて、対照試料(コントロール)である既知サンプルと同じ成分を含むか否かを解析する場合を考える。この場合、未知サンプルの分離データに含まれるピーク(以下、「未知サンプルピーク」とも称する)と、コントロールの分離データに含まれるピーク(以下、「コントロールピーク」とも称する)とが、一致するかが判定される。この場合には、例えば、コントロールピークに基づいて、未知サンプルピークの検出範囲が設定される。そして、ユーザは未知サンプルピークが検出範囲に含まれる場合、当該未知サンプルピークを検出し、未知サンプルがコントロールと同じ成分を含むかを判定する。
【0021】
具体的には、例えば、ユーザはまず、コントロールピークから所定の閾値内を検出範囲として設定し、解析装置に入力する。そして、解析装置は、検出範囲に未知サンプルピークが含まれるか否かを判定する。解析装置は、未知サンプルピークが検出範囲に含まれる場合、当該未知サンプルピークを検出する。よって、ユーザは、当該検出したピークに基づいて、未知サンプルがコントロールと同一であるか否かを判定できる。
【0022】
しかし、このようにユーザが手動で検出範囲を設定する場合、以下の問題が考えられる。1つ目の問題は、コントロールを変更するたびに、ユーザが検出範囲を設定し直す必要があることである。2つ目の問題は、コントロールの分離データに多数のピークが含まれる場合、ユーザは当該多数のピークに応じた多数の検出範囲を設定する必要があることである。3つ目の問題は、ユーザは、コントロールの分離データの解析を行ない、コントロールピークを検出した後に、コントロールピークを基に検出する範囲を設定した上で、未知サンプルの分離データの解析を改めて行なう必要があったことである。すなわち、ユーザにはサンプルの解析を二度行なう手間が生じていた。
【0023】
そこで、本実施形態に従う解析装置1は、コントロールピークから所定の閾値内に含まれる範囲を、検出範囲として自動で設定する。そして、未知サンプルピークが、検出範囲に含まれる場合、解析装置1は、当該未知サンプルピークを特定的に表示する。すなわち、解析装置1は、着目すべきピークを自動で特定的に表示するので、ユーザの作業効率が向上される。
【0024】
[3.設定画面]
続いて、図2図4を用いて、解析装置1によって行なわれるコントロールピークからの検出範囲の設定、および、検出範囲に含まれる未知サンプルピークの特定的な表示をするために、ユーザが各種設定を行なう画面について説明する。図2図4に示す画面は、プロセッサ10により表示部13に表示される。なお、コントロールピークおよび未知サンプルピークは、本開示における「第1ピーク」および「第2ピーク」の一実施例にそれぞれ対応する。同様に、コントロールの分離データおよび未知サンプルの分離データは、本開示における「第1データ」および「第2データ」の一実施例にそれぞれ対応する。
【0025】
(3-1.メソッド設定画面)
図2は、メソッド設定画面の一例を示す図である。メソッド設定画面は、分析に用いられるメソッドを設定するための画面である。メソッドは、分析に関する条件、消耗品の情報および手順の少なくとも1つを含む分析方法を示す。メソッドは、メソッドテーブルTb1と、メソッド設定ボタンBt1を含む。
【0026】
メソッドテーブルTb1は、メソッドに関する情報を提示する。メソッドテーブルTb1は、「メソッド名(コントロール使用/不使用)」「試薬キット」「色素」「モード」「サイズスタンダード」「編集者」「更新日時」「その他」の項目を含む。
【0027】
項目「メソッド名(コントロール使用/不使用)」は、メソッドの名称、ならびに、当該メソッドがコントロールを使用するメソッドであるか、または、不使用のメソッドであるかを示す。
【0028】
項目「試薬キット」は、当該メソッドに使用される試薬キットの名称を示す。試薬キットの種類は、例えば分離する成分のサイズ(bp)によって決定される。
【0029】
項目「色素」は、当該メソッドに使用される色素の名称を示す。色素は、電気泳動分離される成分を染色または発色するために用いられる。色素が蛍光色素の場合、例えば紫外線を照射することで発生する蛍光の信号強度(mV)が検出される。
【0030】
項目「モード」は、当該メソッドに使用される、試薬の調製モードを示す。
項目「サイズスタンダード」は、当該メソッドに使用されるサイズスタンダードの名称を示す。サイズスタンダードは、解析したい未知サンプル、および、コントロールである既知サンプルのサイズの指標となるサンプルである。本明細書におけるサイズスタンダードは、本開示において分離された成分を塩基対の数で規定するための「基準サンプル」の一実施例に対応する。サイズスタンダードの分離データは、本開示における「第3データ」の一実施例に対応する。
【0031】
項目「編集者」は、当該メソッドを編集した者を示す。
項目「更新日時」は、当該メソッドの更新日時を示す。
【0032】
項目「その他」は、メソッドテーブルTb1に含まれるその他の項目を示す。例えば、「その他」には、当該メソッドに関するコメントを含んでもよい。
【0033】
メソッド設定ボタンBt1は、メソッドの設定のために用いられるボタンである。
メソッド設定画面におけるメソッドの設定は、例えば以下のように行なわれる。ユーザは、メソッドテーブルTb1において、所望するメソッドを含む行をクリックで選択する。そののち、ユーザはメソッド設定ボタンBt1をクリックすることで、当該選択したメソッドを使用する設定を行なう。
【0034】
図2において、ユーザがコントロールを使用するためのメソッドを選択した場合、次に、図3の検出設定画面が表示される。
【0035】
(3-2.検出設定画面)
図3は、検出設定画面の一例である。検出設定画面は、コントロールの分離データに基づく、未知サンプルピークの検出範囲に関する設定を行なう画面である。検出範囲に関する設定は、例えば、検出範囲の閾値の設定を含む。
【0036】
具体的には、例えば、コントロールピークが対応するサイズ(bp)に、所定のパーセンテージを掛け合わせた積が閾値として設定される。この場合、コントロールピークから閾値内に含まれる範囲が検出範囲となる。
【0037】
例えば、ユーザが所定のパーセンテージとして「10%」を入力した場合、コントロールピークが100bpであれば閾値は10bpとなり、検出範囲は90~110bpに設定される。一方、コントロールピークが200bpであれば閾値は20bpとなり、検出範囲は180~220bpとなる。
【0038】
検出範囲の閾値の設定は、上記の例に限定されず、直接サイズ(bp)そのものを入力してもよい。しかし、分離データにおけるピークのサイズの誤差は、ピークのサイズに比例すると考えられる。よって、上記のように、閾値をサイズのパーセンテージとして設定することで、より適当な検出範囲を設定できる。
【0039】
図3の検出設定画面においてユーザが検出設定を完了すると、もしくは、図2のメソッド設定画面においてユーザがコントロールを使用するメソッドを選択した場合、図4に示される設定画面が表示される。
【0040】
(3-3.サンプル情報および分析順序の設定)
図4は、サンプル情報および分析順序の設定画面の一例を示す図である。サンプル情報および分析順序の設定画面は、順序設定ボタンBt2,Bt3およびサンプルテーブルTb2を含む。
【0041】
順序設定ボタンBt2,Bt3は、分析順序の設定のために用いられるボタンである。順序設定ボタンBt2は、クリックされるとサンプルの分析順序をプレートに対して横方向(行方向)に設定するように構成される。順序設定ボタンBt3は、クリックされるとサンプルの分析順序をプレートに対して縦方向(列方向)に設定するように構成される。
【0042】
サンプルテーブルTb2は、ユーザがサンプル情報を入力するためのテーブルである。サンプルテーブルTb2は、項目「ウェル番号」「サンプル名」「タイプ」「その他」を含む。サンプルテーブルTb2の一番上の行のセルには、これらの項目の名称がそれぞれ表示される。サンプルテーブルTb2の2行目以降の各セルは、ユーザが各項目に対応する値を入力部12を用いて入力できるように構成される。サンプルテーブルTb2の2行目以降の各セルは、ユーザが各項目に対応する値を、各セルに表示される選択肢から選択できるように構成してもよい。
【0043】
項目「ウェル番号」は、プレート21上のウェル番号を示す(図5のプレートイメージ参照)。
【0044】
項目「サンプル名」は、サンプルの名称を示す。サンプル名の一例は、サンプルの採取時に当該サンプルに割り振られたサンプルのIDである。サンプル名の他の例は、ユーザが認識および管理しやすいように、適宜命名した名称である。
【0045】
項目「タイプ」は、サンプルのタイプを示す。サンプルのタイプとは、例えば、サイズスタンダード、コントロールおよび未知サンプルである。
【0046】
項目「その他」は、サンプルテーブルTb2に含まれるその他の項目を示す。例えば、「その他」は、サンプルに関するコメントであってもよい。
【0047】
サンプル情報および分析順序の設定画面におけるサンプル情報および分析順序の設定は、例えば以下のように行なわれる。ユーザは順序設定ボタンBt2またはBt3をクリックすることで、サンプルの分析順序を設定する。次に、ユーザは、サンプルテーブルTb2において、サンプルの情報を入力する。
【0048】
サンプルの情報の入力は、例えば以下のように行なわれる。まず、ユーザは、分析順序を鑑みて、分析に使用するウェル番号をプレートに対して横方向に入力する。このように構成すると、電気泳動装置2において、サンプルテーブルTb2の上から順にサンプルの分析が行なわれる。次に、ユーザは各ウェルに設置するサンプルを決定する。このときに、各未知サンプルについて、当該未知サンプルピークの検出範囲を設定するためのコントロールが指定される。
【0049】
なお、このようにサンプルのピークの検出範囲を設定するためのコントロールを指定することを、以下、「未知サンプルとコントロールとを対応づける」とも称する。
【0050】
本実施形態では、未知サンプルは、直近に分析されたコントロールに対応づけられるものと仮定とする。すなわち、所定のコントロールと比較したい未知サンプルが1以上ある場合、当該1以上の未知サンプルは、当該コントロールの直後に分析されるようにサンプルテーブルTb2に入力される。すなわち、当該1以上の未知サンプルの情報は、当該コントロールの情報に続いて、サンプルテーブルTb2に入力される。換言すると、当該1以上の未知サンプルの情報は、当該コントロールの情報を入力した行の直下の1以上の行にそれぞれ入力される。
【0051】
図4の例では、未知サンプルであるサンプルS3~S8は、コントロールであるサンプルS2に対応づけられている。また、未知サンプルであるサンプルS10~S19は、コントロールであるサンプルS9に対応づけられている。また、未知サンプルであるサンプルS21~S25は、コントロールであるサンプルS21に対応づけられている。
【0052】
このように構成すると、ユーザは分析順序を鑑みてサンプル情報を入力するだけで、自動で未知サンプルとコントロールの対応づけが行なえる。また、図5に示すように、分析順序毎に並べられたサンプルの解析結果においても、コントロールと未知サンプルとを見比べることが容易である。
【0053】
しかし、未知サンプルとコントロールの対応づけはこの例に限定されず、例えば、ユーザが未知サンプル毎に、コントロールとするサンプルを設定する構成としてもよい。
【0054】
なお、図2図4に示した各種設定は、分析毎に全て設定し直されなくとも、設定の変更の指示が無い限り、前回使用された設定が自動で使用されるように構成してもよい。このように構成すれば、同じ条件での分析(ルーティン作業)の効率が向上できる。
【0055】
[4.解析結果画面]
(4-1.解析結果画面)
次に、上記のように設定された各種設定に基づいて、解析システム100がサンプルを分析し分離データを解析した結果を示す画面である図5を説明する。
【0056】
図5は、解析結果画面の一例を示す図である。解析結果画面は、ウィンドウW1~W5を含む。ウィンドウW1は、プレートイメージを表示する。ウィンドウW2は、ゲルイメージを表示する。ウィンドウW3はサンプルリストを表示する。ウィンドウW4はエレクトロフェログラムを表示する。ウィンドウW5はピークテーブルを表示する。
【0057】
プレートイメージは、図1のプレート21に形成されている行列状のウェルの配置に対応する画像である。プレートイメージは、図4のサンプル情報および分析順序の設定に基づいて作成される。プレートイメージにおいては、サンプルが設置されたウェルが、設置されたサンプルのタイプ(サイズスタンダード、コントロールおよび未知サンプル)に応じて異なる視覚的表現を有するように示されている。異なる視覚的表現の一例は、例えば異なるハッチングである。また、異なる視覚的表現の他の例は、例えば異なる色である。このサンプルのタイプに応じた異なる視覚的表現は、ゲルイメージおよびサンプルリストでも共通して用いられる。よって、ユーザはプレートイメージ、ゲルイメージおよびサンプルリストの各々において、各サンプルのタイプを容易に認識できる。また、プレートイメージ、ゲルイメージおよびサンプルリストのいずれか1つにおいて着目したサンプルが、他の2つにおいてどこに位置するかを容易に認識できる。すなわち、ユーザは、プレートイメージ、ゲルイメージおよびサンプルリストにおけるサンプルの対応関係を容易に認識できる。
【0058】
本実施形態では、プレート21は、A~H行、X1~X3,1~12列のウェルを含む。図5の例では、サイズスタンダードはA行X1列のウェルX1Aに設置される。コントロールおよび未知サンプルは、A~B行×12列のウェルに設置されている。
【0059】
サンプルリストは、プレートイメージで示された各サンプルを分析順に並べたリストである。サンプルリストは、各サンプルについて、ハッチングで示されたサンプルのタイプ、()の中に示された分析順、ウェル番号およびサンプル名の情報を含む。
【0060】
本実施形態では、4つの分析流路を有し、一度に4つのサンプルの電気泳動が可能な電気泳動装置2が使用されている。図5の例では、まず、サイズスタンダードであるサンプルS1について、4つの分析流路を使用して分析が実行されるため、分析順(1)~(4)には同じウェルX1Aが示されている。そののち、分析順(5)以降で、サンプルS2以降が順に1回ずつ分析されている。
【0061】
ゲルイメージは、サンプルの分離データを簡易な表現で表している。ゲルイメージにおいて、分析順が(1)~(28)として示され、ウェルの位置がその下に示されている。ゲルイメージは、電気泳動装置2で得られた分離データに基づいて作成される。ゲルイメージの縦軸は、泳動時間、サイズ、または移動距離に相関する単位である。ゲルイメージにおける濃淡は、信号強度(mV)に相関する。よって、ゲルイメージにおける縞の各々は、試料に含まれる成分を示している。
【0062】
図5、または、図6の拡大図に示すエレクトロフェログラムは、コントロールおよび未知サンプルのエレクトロフェログラムである。エレクトロフェログラムは、電気泳動装置2で得られた分離データに基づいて作成される。エレクトロフェログラムの横軸は、泳動時間、サイズ、または移動距離に相関する単位である。本実施形態では、エレクトロフェログラムの横軸はサイズ(bp)とする。エレクトロフェログラムの縦軸は信号強度(mV)である。
【0063】
エレクトロフェログラムの横軸である成分のサイズは、サイズスタンダードを基に、例えば以下のように算出される。サイズスタンダードは、その分離データにおいて、複数の所定のサイズ(bp)に対応するピークを示す成分を含む。よって、サイズスタンダードの分離データからは、成分のサイズ(bp)と、分析流路中の泳動時間との、相関が算出できる。この相関に基づいて、コントロールおよび未知サンプルの分離データに含まれる泳動時間をbpに変換することができる。
【0064】
エレクトロフェログラムには、試料に含まれる成分に対応するピークが示される。当該ピークは、例えば、解析装置1により、信号強度の時間あたりの変化が所定の閾値以上であることを指標として検出される。エレクトロフェログラムで示されたピークは、ゲルイメージにおける縞に対応している。
【0065】
本実施形態では、コントロールが設定されている状態のエレクトロフェログラムにおいては、未知サンプルピークが、コントロールピークから所定の閾値内に含まれる検出範囲に含まれる場合、含まれない場合に比べて、異なる視覚的表現を有するように表示される。
【0066】
図5および図6の例では、A行1列のウェルA1に設置されたコントロールであるサンプルS2、および、A行2~7列のウェルA2~A7に設置された未知サンプルであるサンプルS3~S8のエレクトロフェログラムが表示されている。サンプルS2のエレクトロフェログラムにおいて、(1)~(6)の記号を付された6つのコントロールピークが検出されている。また、コントロールピーク(1)~(6)について、コントロールピーク(1)~(6)から所定の閾値内に含まれる検出範囲R1~R6が示されている。検出範囲R1~R6は、図3の検出設定画面での設定に基づいて設定される、そして、サンプルS3~S8に含まれる未知サンプルピークのうち、検出範囲R1~R6に含まれる未知サンプルピークについては、マーカMk1,Mk2が付されて表示されている。マーカMk1,Mk2は、マーカMk1,Mk2が付された未知サンプルピークが検出範囲R1~R6に含まれることを示す。すなわち、ユーザが着目すべきピークが自動で特定的に表示されている。よって、ユーザは着目すべきピークを容易に認識できる。よって、ユーザの作業効率が向上する。
【0067】
なお、エレクトロフェログラムにおける異なる視覚的表現は、この例に限定されず、例えば検出範囲に含まれる未知サンプルピークの部分のみ異なる色でエレクトロフェログラムが描画されるように構成してもよい。また、(1)~(6)の記号、および、検出範囲R1~R6は、図5および図6には説明のために表示しているが、実際の解析装置1の表示部13には表示されなくてもよい。
【0068】
再び図5を参照して、ピークテーブルはピークに対応する値を含むテーブルである。ピークテーブルは、例えば、項目「サイズ(bp)」「移動時間インデックス」「その他」を含む。項目「サイズ(bp)」は、検出範囲に含まれるピークのサイズ(bp)を示す。項目「移動時間インデックス」は、分析流路における泳動時間のインデックスであり、サイズ(bp)を算出するために用いられる。項目「その他」はピークテーブルに含まれるその他の項目を示す。例えば、「その他」の項目は、検出範囲に含まれるピークの信号強度から算出されるピークに対応する成分の濃度の値を含んでもよい。
【0069】
本実施形態では、コントロールが設定されている状態において、ピークテーブルには、未知サンプルピークが検出範囲に含まれる場合にのみ、対応する値が表示されるように構成される。図5の例では、A行4列のウェルA4に配置されたS5のピークテーブルが例示されている。このように構成すれば、ピークテーブルにおいても、ユーザは着目すべきピークを容易に認識できる。よって、ユーザの作業効率が向上する。
【0070】
[5.解析装置の表示処理の流れ]
図7は、解析装置の表示処理を示すフローチャートである。図7を参照して、ステップ(以下、STとも称する)02において、プロセッサ10は、メソッド設定画面(図2)を用いて、ユーザによるメソッドの設定を受け付ける。
【0071】
ST04において、プロセッサ10は、ST02において設定されたメソッドが、コントロールを使用するものであるか否かを判定する。
【0072】
メソッドがコントロールを使用するものである場合(ST04においてYES)、ST06において、プロセッサ10は、検出設定画面(図3)を用いて、ユーザによるピークの検出範囲に関する設定を受け付ける。検出範囲に関する設定は、検出範囲の閾値の設定を含む。
【0073】
メソッドがコントロールを使用しないものである場合(ST04においてNO)、または、ST06に続いて、ST08において、プロセッサ10は、サンプル情報および分析順序の設定画面(図4)を用いて、ユーザによる分析順序の設定を受け付ける。
【0074】
ST10において、プロセッサ10は、サンプル情報および分析順序の設定画面(図4)を用いて、ユーザによるサンプル情報の入力を受け付ける。サンプル情報は、サンプルのタイプを含む。
【0075】
続くST12の前に、ユーザは、サンプル情報および分析順序の設定を鑑みて、サンプルをプレート21に設置する。そして、ユーザは、当該プレート21を電気泳動装置2に設置する。
【0076】
ST12において、プロセッサ10は、分析開始の指示を受け付ける。分析開始の指示は、例えばユーザが表示部13に表示される分析開始ボタン(図示せず)をクリックすることで行なわれる。
【0077】
ST14において、プロセッサ10は、電気泳動分離により得られた分離データを電気泳動装置2から取得する。
【0078】
ST16において、プロセッサ10は、サイズスタンダード、コントロールおよび未知サンプルの分離データに含まれるピークを検出する。
【0079】
ST18において、プロセッサ10は、プレートイメージ、サンプルリストおよびゲルイメージ(図5)を生成し、表示部13に表示する。
【0080】
ST20において、プロセッサ10は、ST02において設定されたメソッドが、コントロールを使用するものであるか否かを判定する。
【0081】
メソッドがコントロールを使用するものである場合(ST20においてYES)、ST22において、プロセッサ10は、コントロールピークから、ST06において設定された所定の閾値内に含まれる範囲を検出範囲として設定する。検出範囲の設定に関する詳細な処理は、図8において説明する。
【0082】
ST24において、プロセッサ10は、未知サンプルピークが、設定された検出範囲に含まれるか否かを判定する。
【0083】
ST26において、プロセッサ10は、検出範囲に含まれる未知サンプルピークにマーカを付したエレクトロフェログラムを生成し、表示部13に表示する。換言すると、当該エレクトロフェログラムにおいては、未知サンプルピークが検出範囲に含まれる場合、マーカを付して表示される。
【0084】
ST28において、プロセッサ10は、検出範囲に含まれる未知サンプルピークを含むピークテーブルを生成し、表示部13に表示する。換言すると、当該ピークテーブルは、未知サンプルピークが検出範囲に含まれる場合のみ、当該未知サンプルピークに対応する値を含むように構成される。ST28が完了すると、プロセッサ10は処理を終了する。
【0085】
メソッドがコントロールを使用するものでない場合(ST20においてNO)、プロセッサ10は、ST30において、エレクトロフェログラムを生成し、表示部13に表示する。この場合、エレクトロフェログラムは、ST26と異なり、マーカを含まない状態で表示される。
【0086】
ST32において、全ての未知サンプルピークを含むピークテーブルを生成し、表示部13に表示し、処理を終了する。
【0087】
図8は、検出範囲の設定処理を示すフローチャートである。
ST222において、プロセッサ10は、サイズスタンダードの分離データに基づいてコントロールピークに対応するbpを算出する。具体的には、例えば、プロセッサ10は、まず電気泳動分離により得られた分離データの泳動時間を、対応するサイズ(bp)に変換する。そして、プロセッサ10は、変換された分離データに基づいて、コントロールピークに対応するbpを算出する。
【0088】
ST224において、プロセッサ10は、bpに応じた検出範囲を設定する。ST06において所定のパーセンテージで設定された閾値を、各コントロールピークについてbpで表される検出範囲に変換する。
【0089】
以上のように、本実施形態に従う解析装置1は、コントロールの分離データに基づいて、未知サンプルピークの検出範囲を自動で設定する。そして、解析装置1は、当該検出範囲に含まれる未知サンプルピークを自動で特定的に表示する。これにより、ユーザは容易にコントロールピークと同じサイズの未知サンプルピークが検出されているか否かを認識できる。すなわち、解析装置1が、ユーザが着目するピークを自動で検出し、特定的に表示することで、ユーザの作業効率が向上する。
【0090】
[6.変形例]
以上の実施形態では、解析装置1において、電気泳動装置2による分離データの取得前に、未知サンプルピークの検出範囲を設定するためのコントロールが設定された。しかし、解析装置1は、分離データの解析後にも、コントロールを設定できるように構成可能である。本明細書では、分離データの解析後に行なうコントロールの設定を、コントロールの「事後設定」とも称する。
【0091】
本変形例では、コントロールの事後設定に関する解析装置1の処理について説明する。
(6-1.コントロールの事後設定画面)
図9は、変形例に従う、解析結果画面の一例を示す図である。図9は、図5に示した解析結果画面と同一のサンプルの解析結果を示す画面である。しかし、図5と異なり、図9では、コントロールを事前に設定していない状態で解析を行なった結果が示されている。当該状態は、例えば、サンプル情報および分析順序設定画面(図4)において、実際はコントロールであるはずのウェルA2,A8およびB7のサンプルが未知サンプルとして誤って設定された状態である。
【0092】
この場合、プレートイメージ、ゲルイメージおよびサンプルリストでは、ウェルA2,A8およびB7のサンプルに対し、未知サンプルと同じハッチングが付与されている。エレクトロフェログラムには、検出範囲R1~R6およびマーカMk1,Mk2が含まれていない。また、ピークテーブルには未知サンプルS5の全てのピークが表示されている。
【0093】
さらに、図9は、図5と異なり、ウィンドウW6を含む。ウィンドウW6は、コントロールの事後設定を行なうためのウィンドウである。ウィンドウW6は、事後設定を行なうための事後設定ボタンBt4を含む。
【0094】
ウィンドウW6における事後設定は、例えば以下のように行なわれる。ユーザは、解析結果画面の他のウィンドウW1~W5を参照して、コントロールの事後設定を行なうか否かを判断する。ユーザが事後設定を行なうと判断した場合、ユーザは事後設定ボタンBt4を用いて、事後設定を行なうことができる。具体的には、例えば、事後設定ボタンBt4がユーザによりクリックされると、プロセッサ10は、サンプル情報および分析順序設定画面(図4)を表示する。ユーザは、当該画面に含まれるサンプルテーブルTb2を用いて、サンプル情報の変更を行なうことができる。例えば、ユーザは、コントロールであるはずのウェルA2,A8およびB7のサンプルに対し、サンプルのタイプを未知サンプルからコントロールに変更する。この状態で、ユーザがこの変更を解析結果画面に反映するように指定すれば、解析結果画面のウィンドウW1~W5の表示内容が変更されて表示される。すなわち、図5に示した、ウェルA2,A8およびB7のサンプルがコントロールとして正しく設定された解析結果画面が表示部13に表示される。
【0095】
なお、ユーザが誤ってコントロールを設定しない状態は、上記の例に限定されず、例えば、コントロールを使用しないメソッドが誤って設定された状態であってもよい。この場合、事後設定ボタンBt4をクリックすると、例えばメソッド設定画面が表示され、メソッド設定の変更を行なうことができる。ユーザが当該変更を解析結果画面に反映するように指定すれば、コントロールが正しく設定された解析結果画面が表示部13に表示される。
【0096】
(6-2.コントロールの事後設定に関する処理の流れ)
図10は、コントロールの事後設定に関する処理を示すフローチャートである。図10を参照して、ST42において、プロセッサ10は、事後設定ボタンBt4(図9)を用いたユーザによるコントロールの事後設定を受け付ける。
【0097】
ST44において、プロセッサ10は、サンプルテーブルTb2(図3)を用いたユーザによるサンプルのタイプの変更を受け付ける。
【0098】
ST46において、プロセッサ10は、検出設定画面(図2)を表示部13に表示し、ユーザによる検出範囲に関する設定を受け付ける。検出範囲に関する設定は、例えば検出範囲の閾値の設定を含む。ただし、検出範囲に関する設定として、前回使用した設定をそのまま用いるようにしてもよい。
【0099】
ST48において、プロセッサ10は、プレートイメージ、サンプルリストおよびゲルイメージの変更および表示部13への表示を行なう。
【0100】
ST50において、プロセッサ10は、コントロールピークから、ST46において設定された所定の閾値内に含まれる範囲を検出範囲として設定する。
【0101】
ST52において、プロセッサ10は、未知サンプルピークが、検出範囲に含まれるか否かを判定する。
【0102】
ST54において、プロセッサ10は検出範囲に含まれる未知サンプルピークにマーカを付したエレクトロフェログラムを生成し、表示部13に表示する。具体的には、例えば、プロセッサ10は、一度目の解析により既に生成されたエレクトロフェログラムに当該マーカを追加する変更を行なう。
【0103】
ST56において、プロセッサ10は、検出範囲に含まれる未知サンプルピークを含むピークテーブルを生成し、表示部13に表示する。具体的には、例えば、プロセッサ10は、一度目の解析により既に生成されたピークテーブルから、検出範囲に含まれないピークを除く変更を行なう。ST56が完了すると、プロセッサ10は処理を完了する。
【0104】
以上のように、変形例に従う解析装置1は、電気泳動分離の前にコントロールを設定することを忘れていた場合等に、分離データの解析後に、コントロールを事後設定することができる。よって、分離データの解析後にも、解析装置1が、ユーザが着目するピークを自動で特定的に表示することが可能であり、ユーザの作業効率が向上する。
【0105】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0106】
(第1項)一態様に係る表示方法は、複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた複数のデータの表示方法である。複数のサンプルは、既知サンプルと、未知サンプルとを含む。複数のデータは、既知サンプルに対応する第1データと、未知サンプルに対応する第2データとを含む。第1データは、分離された既知サンプルの成分に対応する第1ピークを含む。第2データは、分離された未知サンプルの成分に対応する第2ピークを含む。表示方法は、複数のデータを取得するステップと、第1データおよび第2データから、第1ピークおよび第2ピークをそれぞれ検出するステップと、第1ピークから所定の閾値内に含まれる範囲を特定範囲として設定するステップと、第2データについて、第2ピークが特定範囲に含まれるか否かを判定するステップと、第2ピークが特定範囲にある場合、第2ピークを特定的に表示するステップとを備える。
【0107】
第1項に記載の表示方法によれば、第1データにおいて検出されたピーク(第1ピーク)から所定の閾値内に含まれる特定範囲に第2データのピーク(第2ピーク)が含まれる場合に、当該第2ピークが特定的に表示される。すなわち、ユーザが着目するピークが自動で特定的に表示される。よって、ユーザの作業効率が向上する。
【0108】
(第2項)第1項に記載の表示方法において、既知サンプルおよび未知サンプルは、各々DNAまたはRNAを含む。複数のサンプルは、分離された成分を塩基対の数で規定するための基準サンプルを含む。複数のデータは、基準サンプルに対応する第3データを含む。設定するステップは、第1データにおいて、第3データに基づいて、第1ピークに対応する塩基対の数を算出するステップと、塩基対の数に応じた特定範囲を設定するステップとを含む。
【0109】
第2項に記載の表示方法によれば、DNAまたはRNAを含む未知サンプルにおいて、塩基対の数に応じた特定範囲を設定し、当該特定範囲に含まれる第2ピークを特定的に表示することで、ユーザの作業効率を向上することができる。
【0110】
(第3項)第1または2項に記載の表示方法において、特定的に表示するステップは、第2データに基づいてエレクトロフェログラムを表示するステップをさらに含む。エレクトロフェログラムを表示するステップは、第2ピークが特定範囲に含まれる場合、含まれない場合に比べて、異なる視覚的表現を有するように表示するステップを含む。
【0111】
第3項に記載の表示方法によれば、ユーザは異なる視覚的表現によって、着目すべきピークである、特定範囲に含まれる第2ピークに着目することが容易となる。よって、ユーザの作業効率が向上される。
【0112】
(第4項)第3項に記載の表示方法において、異なる視覚的表現を有するように表示するステップは、エレクトロフェログラムにおいて、特定範囲に含まれる第2ピークにマーカを付して表示するステップを含む。
【0113】
第4項に記載の表示方法によれば、ユーザはマーカによって、着目すべきピークである、特定範囲に含まれる第2ピークに着目することが容易となる。よって、ユーザの作業効率が向上される。
【0114】
(第5項)第3または4項に記載の表示方法において、特定的に表示するステップは、第2データに基づいてピークテーブルを表示するステップをさらに含む。ピークテーブルは、第2ピークが特定範囲に含まれる場合のみ、第2ピークに対応する値を含むように構成される。
【0115】
第5項に記載の表示方法によれば、ユーザはピークテーブルにおいて、着目すべきピークである特定範囲に含まれる第2ピークのみを参照することが可能となる。よって、ユーザの作業効率が向上される。
【0116】
(第6項)他の態様に係る解析装置は、複数のサンプルについて電気泳動分離によりそれぞれ得られた複数のデータを解析する解析装置である。解析装置は、メモリと、プロセッサと、表示部とを備える。メモリは、複数のデータを記憶する。プロセッサは、第1~5項のいずれか1項に記載の表示方法を実行する。表示部は、特定範囲に含まれる第2ピークを特定的に表示する。
【0117】
(第7項)さらに他の態様に係るプログラムは、コンピューターによって実行されることにより、コンピューターに第1~6項のいずれか1項に記載の表示方法を実施させる、プログラムである。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 解析装置、2 電気泳動装置、10 プロセッサ、11 メモリ、12 入力部、13 表示部、21 プレート、100 解析システム、X1A,A1~A12,B1~B12 ウェル、Bt1 メソッド設定ボタン、Bt2,Bt3 順序設定ボタン、Bt4 事後設定ボタン、Mk1,Mk2 マーカ、R1,R6 検出範囲、S1~S28 サンプル、Tb1 メソッドテーブル、Tb2 サンプルテーブル、W1~W6 ウィンドウ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10