(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142816
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】防災放送評価装置および防災放送評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049921
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 豊人
(72)【発明者】
【氏名】塩田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】小川 肇
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】門脇 篤史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】防災放送評価装置および防災放送評価方法において、防災放送用のスピーカの状態の調査を広範囲にわたって容易に実施する。
【解決手段】防災放送の基準音声データを記憶する記憶部と、携帯端末の位置情報とスピーカ13から出力される携帯端末のマイクにより収録された防災放送の収録音声データとを取得するデータ取得部と、基準音声データと収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする比較部と、前記携帯端末の位置情報と前記スコアとの分布を求めることにより防災放送のスピーカの設置状況と防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価する評価部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災放送の基準音声データを記憶する記憶部と、
携帯端末の位置情報とスピーカから出力されて前記携帯端末のマイクにより収録された前記防災放送の収録音声データとを取得するデータ取得部と、
前記基準音声データと前記収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする比較部と、
前記携帯端末の位置情報と前記スコアとの分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況と前記防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価する評価部と、
を備える防災放送評価装置。
【請求項2】
前記比較部は、前記基準音声データと前記収録音声データとを比較して音声一致度を算出する音声一致度算出部を有し、前記評価部は、前記携帯端末の位置情報と前記音声一致度算出部で算出された前記音声一致度との分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況を評価する、
請求項1に記載の防災放送評価装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記収録音声データをテキスト文章に変換する変換部を有し、前記音声一致度算出部は、前記基準音声データのテキスト文章と前記収録音声データのテキスト文章とを比較して前記音声一致度を算出する、
請求項2に記載の防災放送評価装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記スピーカの位置情報と前記携帯端末の位置情報に基づいて算出される前記スピーカからの前記防災放送の出力開始時刻から前記携帯端末への前記防災放送の到達時刻までの到達時間を記憶しており、
前記データ取得部は、前記携帯端末のマイクにより前記防災放送の収録音声データを収録したときの収録時刻の時刻情報を取得し、
前記比較部は、前記出力開始時刻から前記収録時刻までの遅延時間を算出する時間算出部と、前記到達時間と前記遅延時間とを比較して時間一致度を算出する時間一致度算出部を有し、
前記評価部は、前記携帯端末の位置情報と前記時間一致度算出部で算出された前記時間一致度との分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況を評価する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防災放送評価装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記基準音声データの音質と前記収録音声データの音質とを比較して音質一致度を算出し、前記評価部は、前記携帯端末の位置情報と前記比較部で算出された前記音質一致度との分布を求めることにより前記防災放送から出力される前記防災放送の音質を評価する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防災放送評価装置。
【請求項6】
携帯端末の位置情報とスピーカから出力されて前記携帯端末のマイクにより収録された防災放送の収録音声データとを取得するステップと、
予め設定された基準音声データと前記収録音声データとを比較して比較結果をスコアとするステップと、
前記携帯端末の位置情報と前記スコアとの分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況と前記防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価するステップと、
を含む防災放送評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災放送評価装置および防災放送評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自治体は、住民に防災情報を周知する防災放送システムが設けられている。防災放送システムは、自治体の役所に設置された防災放送装置と、自治体の地域の複数の位置に設置された多数のスピーカとを備える。自治体の職員は、必要時に防災放送装置により多数のスピーカから防災情報を放送する。このような防災放送システムとして、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-30051号公報
【特許文献2】特開2008-252279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防災放送システムは、防災放送装置により多数のスピーカから防災情報を放送することで、住民に防災情報を周知させることから、スピーカの設置位置が重要である。そのため、スピーカが適切な位置に設置されているかを確認する必要がある。ところが、スピーカの位置調査を業者に委託した場合、調査するスピーカの数は限られてしまい、十分な調査を行うことが困難となる。この場合、自治体が独自に調査を行うことが考えられるが、特殊な測定機器や技術が必要となり、高精度な調査が困難となる。また、スピーカが配置される場所によっては、業者が住民の住宅に入って調査することとなり、住民の承諾やプライバシーの問題が発生する。また、特許文献1および特許文献2の技術では、防災放送用のスピーカからの音声の聴取の程度については評価できない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、防災放送用のスピーカの状態の調査を広範囲にわたって容易に実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る防災放送評価装置は、防災放送の基準音声データを記憶する記憶部と、携帯端末の位置情報とスピーカから出力されて前記携帯端末のマイクにより収録された前記防災放送の収録音声データとを取得するデータ取得部と、前記基準音声データと前記収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする比較部と、前記携帯端末の位置情報と前記スコアとの分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況と前記防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価する評価部と、を備える。
【0007】
本発明に係る防災放送評価方法は、携帯端末の位置情報とスピーカから出力されて前記携帯端末のマイクにより収録された防災放送の収録音声データとを取得するステップと、予め設定された基準音声データと前記収録音声データとを比較して比較結果をスコアとするステップと、前記携帯端末の位置情報と前記スコアとの分布を求めることにより前記防災放送のスピーカの設置状況と前記防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防災放送用のスピーカの状態の調査を広範囲にわたって容易に実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る防災放送システムを表すブロック図である。
【
図2】
図2は、防災放送評価装置における音声データの評価方法を表すフローチャートである。
【
図3】
図3は、防災放送評価装置における時刻データの評価方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る防災放送評価装置、防災放送評価方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
<防災放送システム>
図1は、本実施形態に係る防災放送システムを表すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、防災放送システム10は、例えば、自治体の防災担当部署に設置される。防災放送システム10は、操作装置11と、防災放送制御装置12と、スピーカ13と、図示しないGPS受信部を備える。
【0013】
操作装置11は、防災放送制御装置12に接続される。操作装置11は、自治体の職員が操作可能であり、防災放送制御装置12に対して各種の操作指令信号を入力する。例えば、職員は、操作装置11を操作することで、防災放送開始信号や防災放送停止信号を防災放送制御装置12に入力する。
【0014】
防災放送制御装置12は、スピーカ13が接続される。防災放送制御装置12は、操作装置11から入力される各種の操作指令信号に基づいてスピーカ13を制御する。例えば、防災放送制御装置12は、操作装置11から入力された防災放送開始信号に基づいて、スピーカ13から防災放送を出力する。また、防災放送制御装置12は、操作装置11から入力された防災放送停止信号に基づいて、スピーカ13からの防災放送の出力を停止する。
【0015】
スピーカ13は、自治体が管理する地域における複数の所定の位置に設置される。すなわち、スピーカ13は、所定の距離だけ離間した位置に複数設置される。そのため、防災放送制御装置12は、複数のスピーカ13が接続される。
【0016】
また、防災放送システム10は、防災放送評価装置21と、表示部22とを備える。防災放送評価装置21は、後述するが、スピーカ13の位置を評価すると共に、スピーカ13から出力される防災放送の音質を評価する。防災放送評価装置21は、表示部22が接続される。表示部22は、防災放送評価装置21の評価結果を表示する。
【0017】
防災放送評価装置21は、携帯端末100が無線またはネットワークなどにより接続可能である。携帯端末100は、例えば、スマートフォンやタブレット型PCなどである。
【0018】
<携帯端末>
携帯端末100は、地域の住民が所持し、操作する。携帯端末100は、少なくとも、マイク101と、GPS受信部102と、時計103と、処理部104と、通信部105とを備える。
【0019】
マイク101は、携帯端末100を所持する住民が操作することで、近くに設置されたスピーカ13から出力される防災放送の音声データを収録し、収録音声データとして取得する。このとき、マイク101は、必要に応じて収録音声データを記憶部(図示略)に記録してもよい。
【0020】
GPS受信部102は、GPS受信回路やGPS受信アンテナ等から構成され、GPS信号を受信する。GPS受信部102は、受信したGPS信号に基づいて携帯端末100の位置情報を取得する。
【0021】
時計103は、現在の時刻を取得して表示する。
【0022】
処理部104は、マイク101がスピーカ13から出力される防災放送の音声データを収録することで収録音声データを取得したとき、GPS受信部102から携帯端末100の位置情報を取得し、時計103から時刻情報を取得する。そして、処理部104は、収録音声データと携帯端末100の位置情報と時刻情報を関連付ける。
【0023】
通信部105は、防災放送システム10の防災放送評価装置21に対して、無線またはネットワークなどにより接続可能である。ネットワークは、例えば、インターネットである。通信部105は、処理部104により関連付けられた収録音声データと携帯端末100の位置情報と時刻情報の関連情報を防災放送評価装置21に送信可能である。
【0024】
なお、携帯端末100は、マイク101、GPS受信部102、時計103、処理部104、通信部105以外に、例えば、カメラ、地図情報取得部、気象情報取得部などを備えていてもよい。カメラは、周辺情報の画像を取得する。地図情報取得部は、通信部105により周辺の地図情報を取得する。気象情報取得部は、周辺の天気と気温と風向きなどの気象情報を取得する。処理部104は、収録音声データと携帯端末100の位置情報と時刻情報に加えて、周辺画像情報と地図情報と気象情報を関連付け、通信部105は、この関連情報を防災放送評価装置21に送信してもよい。
【0025】
<防災放送評価装置>
防災放送評価装置21は、通信部(データ取得部)31と、記憶部32と、比較部33と、評価部34とを備える。
【0026】
通信部31は、携帯端末100の通信部105に対して、無線またはネットワークなどにより接続可能である。ネットワークは、例えば、インターネットである。通信部31は、携帯端末100の通信部105から送信された収録音声データと携帯端末100の位置情報と時刻情報の関連情報を受信して取得可能である。なお、データ取得部を通信部31としたが、この構成に限定されるものではない。データ取得部は、携帯端末100と有線接続することができるケーブルであったり、SDカードやUSBフラッシュメモリなどの記録媒体であったりしてもよい。
【0027】
記憶部32は、防災放送の基準音声データを記憶する。基準音声データは、防災放送制御装置12がスピーカ13から出力する音声データと同じものである。また、記憶部32は、防災放送の基準音声データの到達時間を記憶する。到達時間は、スピーカ13の位置情報と携帯端末100の位置情報に基づいて算出される。到達時間は、スピーカ13から防災放送が出力される出力開始時刻から、携帯端末100へ防災放送が到達する到達時刻までの時間である。すなわち、防災放送制御装置12は、操作装置11から防災放送開始信号が入力されると、基準音声データを複数のスピーカ13に出力し、各スピーカ13から防災放送が流れる。出力開始時刻は、防災放送制御装置12から送信された基準音声データをスピーカ13が出力した時刻である。到達時刻は、各スピーカ13から出力された防災放送が各携帯端末100に到達する時刻である。到達時間は、出力開始時刻から到達時刻までの時間である。
【0028】
比較部33と評価部34は、制御装置である。制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、図示しない記憶部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御装置は、コントローラ(controller)であり、例えば、SOC(System on a chip)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0029】
比較部33は、音声データ比較部41と、時刻データ比較部42と、音質データ比較部43とを有する。音声データ比較部41は、変換部51と、音声一致度算出部52とを有する。時刻データ比較部42は、時間算出部53と、時間一致度算出部54とを有する。
【0030】
比較部33にて、音声データ比較部41は、記憶部32に記録された防災放送の基準音声データと、通信部31が受信した収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする。この場合、まず、変換部51は、通信部31が受信した収録音声データをテキスト文章に変換する。すなわち、変換部51は、住民が聴覚で認識する収録音声を、住民が視覚で認識する収録文章に変換する。一方、記憶部32に記録された防災放送の基準音声データは、予め、変換部51によりテキスト文章に変換されて記憶部32に記憶されている。
【0031】
次に、音声一致度算出部52は、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章とを比較して音声一致度を算出する。この音声一致度とは、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章との一致割合であり、例えば、パーセントまたは10段階レベルなどで表される。例えば、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章とが完全一致していれば、一致度は、100%または、レベル10である。また、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章との一致度が8割であれば、一致度は、80%または、レベル8である。
【0032】
なお、変換部51は、収録音声データをテキスト文章に変換し、音声一致度算出部52は、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章とを比較して音声一致度を算出したが、この構成に限定されるものではない。例えば、変換部51は、収録音声データを音声出力波形に変換し、音声一致度算出部52は、基準音声出力波形と収録音声出力波形とを比較して音声一致度を算出してもよく、その他の方法であってもよい。
【0033】
比較部33にて、時刻データ比較部42は、記憶部32に記録された防災放送の到達時間(出力開始時刻-到達時刻)と、通信部31が受信した時刻情報から算出した遅延時間(出力開始時刻-収録時刻)とを比較して比較結果をスコアとする。この場合、まず、時間算出部53は、スピーカ13から出力される防災放送の出力開始時刻から、携帯端末100のマイク101が防災放送の音声データを収録した収録時刻までの遅延時間を算出する。次に、時間一致度算出部54は、防災放送の到達時間と遅延時間とを比較して時間一致度を算出する。この時間一致度とは、防災放送の到達時間と遅延時間との偏差時間である。
【0034】
比較部33にて、音質データ比較部43は、記憶部32に記録された防災放送の基準音声データと、通信部31が受信した収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする。ここで、音声データの音質とは、周波数(低音または高音)、ラウドネス、シャープネス、変動強度、音量などである。音質データ比較部43は、音声データ比較部41や時刻データ比較部42と同様に、記憶部32に記録された防災放送の基準音声データの音質と、通信部31が受信した収録音声データの音質とを比較して比較結果をスコアとする。この場合、音質データ比較部43は、防災放送の基準音声データの音質と収録音声データの音質とを比較して音質一致度を算出する。この音質一致度とは、例えば、パーセントまたは10段階レベルなどで表される。
【0035】
評価部34は、音声データ評価部61と、時刻データ評価部62と、音質データ評価部63とを有する。評価部34は、携帯端末100の位置情報に関連付けられたスコアの分布により防災放送のスピーカ13の設置位置(設置状況)と防災放送の音質を評価する。
【0036】
音声データ評価部61は、音声データ比較部41の音声一致度算出部52が算出した音声一致度に基づいて、携帯端末100の位置情報に関連付けられた音声一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置(設置状況)を評価する。すなわち、防災放送評価装置21は、通信部31が地域における多数の住民の携帯端末100からの防災放送の情報を受信する。多数の住民は、地域の異なる位置で携帯端末100のマイク101により防災放送を収録する。そのため、音声データ評価部61は、地域の異なる位置での音声一致度を地域の地図上に表記する。そして、音声データ評価部61は、この複数の異なる位置での音声一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。
【0037】
つまり、音声一致度が高い地域では、スピーカ13が正しい位置に設置されていると評価する。一方、音声一致度が低い地域では、スピーカ13が正しい位置に設置されていないと評価する。この場合、スピーカ13の設置位置を変更する必要があることを提示することができる。
【0038】
時刻データ評価部62は、時刻データ比較部42の時間一致度算出部54が算出した時間一致度に基づいて、携帯端末100の位置情報に関連付けられた時間一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置(設置状況)を評価する。すなわち、時刻データ評価部62は、地域の異なる位置での時間一致度を地域の地図上に表記する。そして、時刻データ評価部62は、この複数の異なる位置での時間一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。つまり、時間一致度が高い地域では、スピーカ13が正しい位置に設置されていると評価する。一方、時間一致度が低い地域では、スピーカ13が正しい位置に設置されていないと評価する。この場合、スピーカ13の設置位置を変更する必要があることを提示することができる。
【0039】
音質データ評価部63は、同様に、音質一致度に基づいて、携帯端末100の位置情報に関連付けられた音質一致度の分布により防災放送のスピーカ13の音質を評価する。すなわち、音質データ評価部63は、地域の異なる位置での音質一致度を地域の地図上に表記する。そして、音質データ評価部63は、この複数の異なる位置での音質一致度の分布により防災放送のスピーカ13の音質を評価する。つまり、音質一致度が高い地域では、スピーカ13の音質が正しく調整されていると評価する。一方、音質一致度が低い地域では、スピーカ13の音質が正しく調整されていないと評価する。この場合、スピーカ13の音質を調整する必要があることを提示することができる。
【0040】
<防災放送評価方法>
図2は、防災放送評価装置における音声データの評価方法を表すフローチャート、
図3は、防災放送評価装置における時刻データの評価方法を表すフローチャートである。
【0041】
防災放送の音声データの評価方法において、
図1および
図2に示すように、ステップS11にて、自治体の職員は、操作装置11を操作して防災放送開始信号を防災放送制御装置12に入力する。すると、防災放送制御装置12は、地域に設置されている多数のスピーカ13から防災放送を出力する。ステップS12にて、住民は、携帯端末100のマイク101を用いてスピーカ13から流れる防災放送を収録する。ステップS13にて、住民は、携帯端末100を操作し、処理部104により、収録した防災放送の音声データ(収録音声データ)と、防災放送を収録した位置の位置情報を自治体の防災放送評価装置21に送信する。
【0042】
ステップS14にて、自治体の防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の収録音声データと位置情報を受信したか否かを判定する。ここで、防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の収録音声データと位置情報を受信していないと判定(No)すると、この状態で待機する。一方、防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の収録音声データと位置情報を受信したと判定(Yes)すると、ステップS15に移行する。
【0043】
ステップS15にて、防災放送評価装置21にて、音声データ比較部41は、変換部51が受信した収録音声データをテキスト文章に変換する。ステップS16にて、音声データ比較部41は、音声一致度算出部52が基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章とを比較して音声一致度を算出する。そして、ステップS17にて、音声データ評価部61は、音声一致度算出部52が算出した音声一致度に基づいて、携帯端末100の位置情報に関連付けられた音声一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。すなわち、音声データ評価部61は、地域の異なる位置での音声一致度を地域の地図上に表記する。
【0044】
そして、ステップS18にて、音声データ評価部61は、評価結果を表示部22に出力する。表示部22は、地域の地図上に、複数の異なる位置での音声一致度を表示する。そのため、自治体の職員は、表示部22に表示された音声一致度の分布を見て防災放送のスピーカ13の設置位置を評価することができる。例えば、音声一致度は、レベル1~10で表記され、音声一致度のレベル1~3で表記されたスピーカ13の設置位置を見直す必要がある。
【0045】
防災放送の時刻データの評価方法において、
図1および
図3に示すように、ステップS21にて、自治体の職員は、操作装置11を操作して防災放送開始信号を防災放送制御装置12に入力する。すると、防災放送制御装置12は、地域に設置されている多数のスピーカ13から防災放送を出力する。ステップS22にて、住民は、携帯端末100のマイク101を用いてスピーカ13から流れる防災放送を収録する。ステップS23にて、住民は、携帯端末100を操作し、処理部104により、防災放送を収録した位置の位置情報と、防災放送を収録した時刻の時刻情報を自治体の防災放送評価装置21に送信する。
【0046】
ステップS24にて、自治体の防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の位置情報と時刻情報を受信したか否かを判定する。ここで、防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の位置情報と時刻情報を受信していないと判定(No)すると、この状態で待機する。一方、防災放送評価装置21は、通信部31が住民の携帯端末100から防災放送の位置情報と時刻情報を受信したと判定(Yes)すると、ステップS25に移行する。
【0047】
ステップS25にて、防災放送評価装置21にて、時刻データ比較部42は、時間算出部53が防災放送の出力開始時刻から携帯端末100のマイク101が防災放送の音声データを収録した収録時刻までの遅延時間を算出する。ステップS26にて、時間一致度算出部54は、防災放送の到達時間と遅延時間とを比較して時間一致度を算出する。そして、ステップS27にて、時刻データ評価部62は、時間一致度算出部54が算出した時間一致度に基づいて、携帯端末100の位置情報に関連付けられた時間一致度の分布により防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。すなわち、時刻データ評価部62は、地域の異なる位置での時刻一致度を地域の地図上に表記する。
【0048】
そして、ステップS28にて、時刻データ評価部62は、評価結果を表示部22に出力する。表示部22は、地域の地図上に、複数の異なる位置での時刻一致度を表示する。そのため、自治体の職員は、表示部22に表示された時刻一致度の分布を見て防災放送のスピーカ13の設置位置を評価することができる。例えば、時刻一致度は、レベル1~10で表記され、時刻一致度のレベル1~3で表記されたスピーカ13の設置位置を見直す必要がある。
【0049】
なお、上述の説明では、音声データの評価方法と時刻データの評価方法を別のフローチャートにより説明したが、同時に実施してもよい。また、防災放送の音声データにおける音質評価方法も、音声データの評価方法や時刻データの評価方法とほぼ同様の処理であり、別々に実施してもよいし、同時に実施してもよい。
ほぼ同様の処理である。
【0050】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の防災放送評価装置は、防災放送の基準音声データを記憶する記憶部32と、携帯端末100の位置情報とスピーカ13から出力されて携帯端末のマイク101により収録された防災放送の収録音声データを取得する通信部(データ取得部)31と、基準音声データと収録音声データとを比較して比較結果をスコアとする比較部33と、前記携帯端末100の位置情報とスコアとの分布を求めることにより防災放送のスピーカの設置位置(設置状況)と防災放送の音質の少なくともいずれか一方を評価する評価部34とを備える。
【0051】
そのため、地域の住民が所持する携帯端末100を用いて、防災放送の音声データを取得し、自治体側でこの音声データを取得して比較し、携帯端末100の位置情報とスコアとの分布を求めることにより防災放送のスピーカの状態を評価する。その結果、スピーカ13の状態の調査を業者に委託する必要がなく、また、住民の承諾やプライバシーの問題が発生することもなく、防災放送用のスピーカの状態の調査を広範囲にわたって容易に実施することができる。
【0052】
本実施形態の防災放送評価装置は、比較部33は、基準音声データと収録音声データとを比較して音声一致度を算出する音声一致度算出部52を有し、評価部34は、携帯端末100の位置情報と音声一致度算出部52で算出された音声一致度との分布を求めることにより防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。そのため、防災放送の収録音声データの評価を容易に実施することができる。
【0053】
本実施形態の防災放送評価装置は、比較部33は、収録音声データをテキスト文章に変換する変換部51を有し、音声一致度算出部52は、基準音声データのテキスト文章と収録音声データのテキスト文章とを比較して音声一致度を算出する。そのため、防災放送の収録音声データの評価を高精度に実施することができる。
【0054】
本実施形態の防災放送評価装置は、記憶部32は、スピーカ13の位置情報と携帯端末100の位置情報に基づいて算出されるスピーカ13からの防災放送の出力開始時刻から携帯端末100への防災放送の到達時刻までの到達時間を記憶しており、通信部31は、携帯端末100のマイク101により防災放送の収録音声データを収録したときの収録時刻の時刻情報を取得し、比較部33は、出力開始時刻から収録時刻までの遅延時間を算出する時間算出部53と、到達時間と遅延時間とを比較して時間一致度を算出する時間一致度算出部54を有し、評価部34は、携帯端末100の位置情報と時間一致度算出部54で算出された時間一致度との分布を求めることにより防災放送のスピーカ13の設置位置を評価する。そのため、防災放送の音声データの遅延状態の調査を高精度で容易に実施することができる。
【0055】
本実施形態の防災放送評価装置は、比較部33は、基準音声データの音質と収録音声データの音質とを比較して音質一致度を算出し、評価部34は、携帯端末100の位置情報と比較部33で算出された音質一致度との分布を求めることにより防災放送から出力される防災放送の音質を評価する。そのため、防災放送の収録音声データの評価を容易に実施することができる。
【0056】
これまで本発明に係る防災放送評価装置について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0057】
図示した防災放送評価装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0058】
防災放送評価装置の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0059】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0060】
本開示は、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の産業と技術革新の基盤をつくろう」の実現に貢献し、IoTソリューションによる価値創出に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0061】
10 防災放送システム
11 操作装置
12 防災放送制御装置
13 スピーカ
21 防災放送評価装置
22 表示部
31 通信部(データ取得部)
32 記憶部
33 比較部
34 評価部
41 音声データ比較部
42 時刻データ比較部
43 音質データ比較部
51 変換部
52 音声一致度算出部
53 時間算出部
54 時間一致度算出部
61 音声データ評価部
62 時刻データ評価部
63 音質データ評価部
100 携帯端末
101 マイク
102 GPS受信部
103 時計
104 処理部
105 通信部