(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142820
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】室温制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20230928BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20230928BHJP
F24F 11/58 20180101ALI20230928BHJP
F24F 130/10 20180101ALN20230928BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/80
F24F11/58
F24F130:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049931
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 桂子
(72)【発明者】
【氏名】酢山 明弘
(72)【発明者】
【氏名】平原 茂利夫
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA08
3L260BA41
3L260BA74
3L260CA39
3L260CB90
3L260EA03
3L260EA04
3L260FA03
3L260JA15
3L260JA17
3L260JA19
(57)【要約】
【課題】一つの店舗全体で省エネルギー化を図れるように設備機器を運転させて、施設の室内温度を適切な温度とすることが可能な室温制御システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る室温制御システムは、施設に設置され、空気調和機および要冷機器を含む複数の設備機器と、複数の設備機器の運転を制御する制御装置を備え、施設の室内温度を制御する。制御装置は、位置取得部、予測情報取得部、情報保持部、運転制御部を有する。位置取得部は、施設の所在地を特定する。予測情報取得部は、位置取得部が特定した所在地の気候の予測情報を取得する。情報保持部は、一年を複数に区切った期間、施設の所在地、施設の室内温度の設定温度、複数の設備機器の運転態様の対応を示す情報を保持する。運転制御部は、予測情報取得部が取得した予測情報と情報保持部が保持する情報を用いて、室内温度が設定温度となるように複数の設備機器を前記運転態様で制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置され、空気調和機および要冷機器を含む複数の設備機器と、
複数の前記設備機器の運転を制御する制御装置と、を備え、前記施設の室内温度を制御する室温制御システムであって、
前記制御装置は、
前記施設の所在地を特定する位置取得部と、
前記位置取得部が特定した前記所在地の気候の予測情報を取得する予測情報取得部と、
一年を複数に区切った期間と、前記所在地と、前記施設の室内温度の設定温度と、複数の前記設備機器の運転態様との対応を示す情報を保持する情報保持部と、
前記予測情報取得部が取得した前記予測情報と前記情報保持部が保持する情報とを用いて、前記室内温度が前記設定温度となるように複数の前記設備機器を前記運転態様で制御する運転制御部と、を有する
室温制御システム。
【請求項2】
前記予測情報取得部は、前記予測情報として前記所在地における気温と湿度の予測情報を取得し、
前記運転制御部は、前記予測情報取得部が取得した前記所在地における気温と湿度の前記予測情報を用いて、複数の前記設備機器の運転制御時に適用する所定期間を複数の前記期間のいずれかに決定する
請求項1に記載の室温制御システム。
【請求項3】
前記所定期間は、夏季に対応する第1の期間、冬季に対応する第2の期間、前記第1の期間以外かつ前記第2の期間以外の第3の期間のいずれかである
請求項2に記載の室温制御システム。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記所在地よりも広域の複数の区画域を規定し、前記位置取得部が特定した前記所在地が複数の前記区画域のいずれに含まれるかを決定する
請求項2または3に記載の室温制御システム。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記区画域の境界を前記所定期間に応じて変動させる
請求項4に記載の室温制御システム。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記予測情報取得部が取得した前記所在地における気温と湿度の前記予測情報を用いて、夏季に対応する第1の期間、冬季に対応する第2の期間、前記第1の期間以外かつ前記第2の期間以外の第3の期間のいずれかに前記所定期間を決定し、前記所在地よりも広域の複数の区画域を規定し、前記位置取得部が特定した前記所在地が複数の前記区画域のいずれに含まれるかを、決定した前記所定期間に応じて決定し、決定した前記所定期間および決定した前記区画域と、前記情報保持部が保持する前記所在地および複数の前記設備機器の前記運転態様を用いて、前記室内温度が前記設定温度となるように複数の前記設備機器の運転を制御する
請求項2に記載の室温制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記予測情報を提供可能に保持する外部システムと通信網を介して接続され、前記外部システムと相互に通信する通信制御部を有し、
前記予測情報取得部は、前記通信制御部を介して前記外部システムと接続され、前記予測情報を前記外部システムから取得する
請求項1から6のいずれか一項に記載の室温制御システム。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記通信制御部が通信網を介して接続可能なクラウドに格納されている
請求項7に記載の室温制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、施設の室内温度を制御する室温制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)など、管理対象において使用されるエネルギーを節約するための管理システムが知られており、温暖化に伴う省エネルギー(省エネ)への要求が高まっている。このような省エネへの要求は、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの店舗にも広がっている。
【0003】
コンビニエンスストア等の店舗においては、店舗内の温度(店内温度)に影響を与える様々な設備機器が連携しながら稼働している。店内温度に影響を与える設備機器は、例えば冷蔵用や冷凍用のショーケースなどの要冷機器、空気調和機、換気装置などである。これらの設備機器の消費電力は、要冷機器が最も大きい。したがって、空気調和機によって単純に店舗内外の温度差を小さくすれば省エネルギー化を図れる訳ではない。また、店舗の外部の空気(外気)の温度と湿度の関係は、地域によって様々である。例えば、日本の夏は、九州・沖縄のような南の地域ほど高温多湿の気候となるが、北海道のような北の地域ほど低温低湿な気候となる。
【0004】
また、各店舗の設備機器の消費電力は、店内温度を上下させる顕熱の仕事量と、結露のような空気中の湿度が水に変化する潜熱の仕事量の合計になる。このため、例えば湿度が高い場合、設備機器は除湿するための潜熱の仕事量が増加し、消費電力が上昇する。したがって、省エネルギー化のために店舗内に設定すべき温度は、地域によって異なる。例えば、夏季において、店舗内外の温度差が小さくなるように店内温度を上げたとしても、店舗全体での設備機器の消費電力が低減する訳ではない。この場合、要冷機器で除湿する潜熱が大きくなり、消費電力が上昇する場合もある。
【0005】
このように、一つの店舗全体で省エネルギー化を図れるように設備機器を運転させることが求められている。また、昨今の人手不足により、コンビニエンスストア等の無人店舗も増加している。無人店舗においては、店内温度を人手で適宜調節できないため、設備機器の消費電力を削減することがより一層求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態の目的は、一つの店舗全体で省エネルギー化を図れるように設備機器を運転させて、施設の室内温度を消費電力が削減できる適切な温度とすることが可能な室温制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る室温制御システムは、施設に設置され、空気調和機および要冷機器を含む複数の設備機器と、複数の前記設備機器の運転を制御する制御装置とを備え、前記施設の室内温度を制御する。前記制御装置は、位置取得部と、予測情報取得部と、情報保持部と、運転制御部とを有する。前記位置取得部は、前記施設の所在地を特定する。前記予測情報取得部は、前記位置取得部が特定した前記所在地の気候の予測情報を取得する。前記情報保持部は、一年を複数に区切った期間と、前記施設の所在地と、前記施設の室内温度の設定温度と、複数の前記設備機器の運転態様との対応を示す情報を保持する。前記運転制御部は、前記予測情報取得部が取得した前記予測情報と前記情報保持部が保持する情報とを用いて、前記室内温度が前記設定温度となるように複数の前記設備機器を前記運転態様で制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る室温制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2A】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が北部である場合における夏期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図2B】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が北部である場合における中間期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図2C】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が北部である場合における冬期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図3A】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が中部である場合における夏期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図3B】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が中部である場合における中間期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図3C】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が中部である場合における冬期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図4A】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が南部である場合における夏期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図4B】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が南部である場合における中間期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図4C】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域が南部である場合における冬期での施設(店舗)の室内の設定温度と消費電力との関係を示す図である。
【
図5】実施形態に係る室温制御システムにおいて、区画域を北部、中部、南部に区画した場合における夏期、中間期、冬期での施設(店舗)の最適な室内温度の一例を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態に係る室温制御システムにおいて、夏期における北部、中部、南部の区画の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る室温制御システムにおいて、中間期における北部、中部、南部の区画の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る室温制御システムにおける室温制御処理時の運転制御部の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る室温制御システムの一実施形態について、
図1から
図8を参照して説明する。室温制御システムは、例えば店舗や事務所のような施設に設置された複数の設備機器を連携して適切に運転させ、該施設の室内温度を制御するために用いられる。本実施形態では一例として、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの各種の店舗に設置された複数の設備機器(以下、店舗機器という)を連携して適切に運転させ、該店舗の室内温度を制御する室温制御システムを想定する。ここでの室内温度は、例えば店舗の売り場やバックヤードなどを含む店内空間の温度である。店舗機器は、店舗に設置されて店舗運営に資する設備や機器である。店舗機器には、少なくとも空気調和機および要冷機器が含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る室温制御システム1の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、室温制御システム1は、主たる構成要素として、空気調和機2と、要冷機器4と、制御装置6とを備える。空気調和機2および要冷機器4は、いずれも店舗機器に該当する。制御装置6は、空気調和機2および要冷機器4の運転(動作態様)を制御する。なお、制御装置6は、店舗機器の一つに該当するが、後述する制御対象の店舗機器には含まれない。
【0012】
空気調和機2は、例えば圧縮機、アキュムレータ、室外熱交換器、室外送風機、室内熱交換器、室内送風機などを備えて構成される。空気調和機2は、冷房運転、暖房運転、除湿運転、送風運転などの運転モードで運転され、店舗10の室内温度を調節する。
【0013】
要冷機器4は、圧縮機が店舗10の室外に設置されたショーケースや陳列棚などであり、例えば冷蔵用のショーケースや冷凍用のショーケース、保温用の陳列棚である。要冷機器4であるこれらのショーケースや陳列棚は、例えばその数、冷蔵や冷凍あるいは保温の度合いなどに応じて、店舗10の室内温度を変動させる。
【0014】
なお、
図1には店舗機器として空気調和機2と要冷機器4のみを示すが、店舗10にはこれら以外にも複数の各種設備機器が設置され得る。空気調和機2および要冷機器4以外の店舗機器としては、例えば全熱交換器、ヒートポンプ式給湯装置、照明機器、放送機器などが挙げられる。空気調和機2および要冷機器4に加えて、列挙したこれらの店舗機器も店舗10に適宜設置される。
【0015】
制御装置6は、店舗10に設置された複数の店舗機器、具体的には空気調和機2および要冷機器4の運転(動作態様)を制御し、店舗10の室内温度を所定の設定温度とする。制御装置6は、例えばCPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなど(いずれも図示省略)を含み、所定の演算処理を実行する。制御装置6は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて空気調和機2および要冷機器4の各々の運転制御を行う。制御装置6は、空気調和機2および要冷機器4とそれぞれ有線もしくは無線で接続され、演算処理の実行に必要なデータの送受信を行う。
【0016】
制御装置6は、位置取得部61と、予測情報取得部62と、情報保持部63と、通信制御部64と、運転制御部65とを有する。
【0017】
位置取得部61は、店舗10の所在地、例えば住所の番地を特定する。所在地は、例えば室温制御システム1が店舗10に導入される際に人為的に設定されてもよいし、位置取得部61によって動的に取得されてもよい。人為的に設定された場合、位置取得部61は、例えば設定された内容(情報)を店舗10の所在地として特定し、該所在地を示すデータを記憶装置(不揮発性メモリ)に保持する。動的に取得される場合、位置取得部61は、例えば複数の衛星から放射される電波を受信して現在位置を検出するGPS(Global Positioning System:衛星測位システム)機能を利用可能な手段を有していればよい。位置取得部61は、特定した所在地を示すデータを運転制御部65に付与する。運転制御部65は、位置取得部61から付与された所在地を示すデータに基づいて、店舗10の所在地が含まれる地域(以下、区画域という)を判定する。区画域は、店舗10の所在地よりも広域の範囲として規定される。例えば、区画域は、該所在地が含まれる都道府県、市区町村などを最小区画として、任意に区画された所定の範囲(エリア)である。
【0018】
本実施形態では一例として、日本全国47の都道府県を第1の地域、第2の地域、第3の地域の三つに区画して店舗10の区画域が判定される。ただし、区画域の区画数はこれに限定されず、二つ以下、あるいは四つ以上の任意の数であって構わない。以下の説明では、第1の地域を「北部」、第2の地域を「中部」、第3の地域を「南部」として規定する。これらの区画域の具体例については後述する。
【0019】
これら三つの区画の境界は、例えば一年を複数に区切った期間(以下、季節という)に応じて変動する。季節の分け方は任意であるが、例えば一年を第1の期間、第2の期間、第3の期間の三つに分けることが可能である。これらの各期間は、例えば気温と湿度との関係に応じて判定可能である。また、気温と湿度との関係ではなく、日付によっても季節の判定は可能である。第1の期間(以下、夏期という)は、夏季に対応する期間であり、例えば六月から九月までの四箇月間である。第2の期間(以下、冬期という)は、冬季に対応する期間であり、例えば一月から三月までの三箇月間および十二月の合計四箇月間である。第3の期間(以下、中間期という)は、夏期以外かつ冬期以外の期間であり、例えば四月から五月までの二箇月間および十月から十一月までの二箇月間の合計四箇月間である。季節をこのように分けた場合、夏期、中間期、冬期において北部、中部、南部を区画する境界が変動する(詳細は後述)。
【0020】
予測情報取得部62は、位置取得部61が特定した所在地の気候の予測情報を取得する。気候は、例えば一ヶ月以上にわたる期間の気象の平均的な状態や翌日の気象状態などである。予測情報取得部62は、通信制御部64を介して外部システム8と接続され、かかる気候の予測情報を外部システム8から取得する。外部システム8は、店舗10の所在地の気候の予測情報を提供可能に保持するシステムであり、例えば気象庁や気象会社などのシステムである。本実施形態において、予測情報取得部62は、店舗10の所在地の所定期間の気温および湿度の予測情報を外部システム8から取得する。予測情報取得部62は、取得した所在地の気温および湿度の予測情報を示すデータを運転制御部65に付与する。運転制御部65は、予測情報取得部62から付与された予測情報を示すデータに基づいて、後述する室温制御処理の実行時の季節を決定する。
【0021】
情報保持部63は、季節と、店舗10の所在地と、店舗10の最適温度と、複数の店舗機器、本実施形態では空気調和機2および要冷機器4の運転態様との対応を示す情報を保持する。店舗10の所在地は、位置取得部61によって特定された住所の番地などである。店舗10の最適温度は、省エネルギー化に寄与することが可能な、換言すれば店舗10での消費電力を効率的に削減できる店舗10の室内温度である。空気調和機2および要冷機器4の運転態様は、店舗10の室内を最適温度(設定温度)とするために必要とされる運転の態様(動作態様)である。例えば、空気調和機2の圧縮機や要冷機器4の圧縮機の回転数や周波数、空気調和機2の空調目標温度、要冷機器4の冷蔵・冷却・保温の目標温度などが運転態様を示す具体値である。季節については後述するが、情報保持部63は、一つの店舗10の所在地に対して、複数の季節(夏期、冬期、中間期)のそれぞれにおける最適温度と運転態様の対応を示す情報を保持する。情報保持部63は、例えばNOR型またはNAND型のFROM(Flash Read Only Memory)等の不揮発メモリ、あるいは磁気ディスク装置などである。
【0022】
図2A~2C、
図3A~3C、
図4A~
図4Cには、店舗10の室内の設定温度と店舗10での消費電力との関係をそれぞれ示す。ここでの設定温度は、例えば空気調和機2および要冷機器4が運転されることにより想定される店舗10の室内温度である。各図の横軸は設定温度を示し、左ほど低く右ほど高くなる。各図の縦軸は消費電力を示し、下ほど小さく上ほど大きくなる。
図2Aは区画域が北部である場合における夏期、
図2Bは区画域が北部である場合における中間期、
図2Cは区画域が北部である場合における冬期の設定温度と消費電力の関係をそれぞれ示す図である。
図3Aは区画域が中部である場合における夏期、
図3Bは区画域が中部である場合における中間期、
図3Cは区画域が中部である場合における冬期の設定温度と消費電力の関係をそれぞれ示す図である。
図4Aは区画域が南部である場合における夏期、
図4Bは区画域が南部である場合における中間期、
図4Cは区画域が南部である場合における冬期の設定温度と消費電力の関係をそれぞれ示す図である。
【0023】
夏期においては、
図2Aに示すように、北部では、設定温度が高いほど消費電力が小さくなる。これに対し、
図3A、
図4Aに示すように、中部および南部では、設定温度が高くなるにつれて消費電力も最小値まで小さくなるが、その後は消費電力が大きくなる。
【0024】
中間期においては、
図2B、
図3B、
図4Bに示すように、北部、中部、南部のいずれにおいても、設定温度が高いほど消費電力も大きくなる。
【0025】
冬期においては、
図2Cに示すように、北部では、設定温度が高いほど消費電力も大きくなる。これに対し、
図3C、
図4Cに示すように、中部および南部では、設定温度が高いほど消費電力も小さくなる。
【0026】
本実施形態では、
図2A~2C、
図3A~3C、
図4A~
図4Cに示す上述したような設定温度と消費電力との関係を踏まえて、区画域を北部、中部、南部に区画した場合における夏期、中間期、冬期での店舗10の最適な室内温度を設定する。例えば、消費電力が最小となる設定温度として、最適な室内温度(最適温度)を設定する。かかる最適温度は、区画域を北部、中部、南部に区画した場合における夏期、中間期、冬期においてそれぞれ設定される。
【0027】
図5は、区画域を北部、中部、南部に区画した場合における夏期、中間期、冬期での店舗10の最適な室内温度の一例を模式的に示す図である。本実施形態では店舗10の室内温度が
図5に示す最適温度となるように、換言すればかかる最適温度を室内温度の設定温度として、空気調和機2および要冷機器4の運転(動作態様)が制御される(詳細は後述)。ここでの最適温度は、夏期、中間期、冬期において省エネルギー化に寄与することが可能な(消費電力を効率的に削減できる)店舗10の室内温度であり、区画域が北部、中部、南部である場合についてそれぞれ規定されている。
【0028】
図5に示す例において、横軸は区画域を示しており、左から右にずれるに従って北部から中部、さらに南部であることを示す。例えば、横軸の左から右へ都道府県番号の昇順に都道府県を並べた場合、最も左が北海道にあたり、最も右が沖縄県にあたる。都道府県番号は、JISコード(JIS X0401)によって各都道府県に割り当てられた二桁の番号である。縦軸は店舗10の室内の最適温度を示す。
図5においては、店舗10の最適温度を、夏期は実線L1、中間期は破線L2、冬期は一点鎖線L3でそれぞれ示す。
図5に示すように、夏期における店舗10の最適温度は、例えば北部が27℃、中部が22℃、南部が23℃である。中間期における店舗10の最適温度は、例えば北部が20℃、中部が23℃、南部が27℃である。冬期における店舗10の最適温度は、例えば北部、中部、南部のいずれも16℃である。なお、上記の最適温度の値は一例であり、これらの値に限定されない。
【0029】
図6は、夏期における北部、中部、南部の区画の一例を示す図である。
図7は、中間期における北部、中部、南部の区画の一例を示す図である。なお、
図6および
図7は区画の一例を示すに過ぎず、区画はこれに限定されない。北部、中部、南部にそれぞれ区画される(属する)都道府県は、任意に設定可能である。また、これらの区画への属否は都道府県ごとではなく、例えば市区町村ごとであってもよいし、あるいは都道府県および市区町村が混在した区画などであってもよい。これらの区画は、季節における店舗10の室内の最適温度の設定のために規定されている。本実施形態では上述したとおり、冬期における店舗10の室内の最適温度は北部、中部、南部のいずれも16℃で均一とされている。こため、冬期における北部、中部、南部の区画は不要であり、図示は省略する。
【0030】
図6において、二点鎖線BL1は北部と中部の境界、二点鎖線BL2は中部と南部の境界をそれぞれ示す。
図6に示すように、夏期における北部には、北海道が区画されている。同様に、夏期における中部には、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県が区画されている。そして、夏期における南部には、石川県、福井県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県が区画されている。
【0031】
したがって、
図6に示す夏期の例では、店舗10の室内の最適温度は、区画域が北部に区画される北海道であれば27℃、中部に区画される19都県であれば22℃、南部に区画される27府県であれば23℃である。
【0032】
図7において、二点鎖線BL3は北部と中部の境界、二点鎖線BL4は中部と南部の境界をそれぞれ示す。
図7に示すように、中間期における北部には、北海道、青森県、岩手県、秋田県が区画されている。同様に、中間期における中部には、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県が区画されている。そして、中間期における南部には、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県が区画されている。
【0033】
したがって、
図7に示す中間期の例では、店舗10の室内の最適温度は、区画域が北部に区画される4道県であれば20℃、中部に区画される8県であれば23℃、南部に区画される35都府県であれば27℃である。
【0034】
通信制御部64は、運転制御部65と空気調和機2の間、運転制御部65と要冷機器4との間、および予測情報取得部62と外部システム8との間でのデータの送受信をそれぞれ制御する。通信制御部64は、空気調和機2および要冷機器4とそれぞれ有線もしくは無線で接続され、所定の通信プロトコルに基づいて空気調和機2および要冷機器4と相互に通信する。また、通信制御部64は、有線もしくは無線を含むインターネットなどの通信網を介して外部システム8と接続され、所定の通信プロトコルに基づいて外部システム8と相互に通信する。通信制御部64は、データ送受信の通知や受信したデータを運転制御部65に付与する。
【0035】
運転制御部65は、店舗10の室内温度が設定温度となるように複数の店舗機器、本実施形態では空気調和機2および要冷機器4の運転を制御するための処理(以下、室温制御処理という)を実行する。その際、運転制御部65は、予測情報取得部62が取得した店舗10の所在地の気温と湿度の予測情報と、情報保持部63が保持する情報とを用いて、空気調和機2および要冷機器4の運転を制御する。室温制御処理は、空気調和機2および要冷機器4を適切な運転態様として、店舗10の室内温度を設定温度に維持するために要する一連の処理である。ここでの設定温度は上述した最適温度である。
【0036】
本実施形態では一例として、運転制御部65は、制御装置6において室温制御処理を実行するためのプログラムとして構成されており、記憶装置に格納されてメモリに読み出される。なお、運転制御部65であるプログラムをクラウド上に格納し、制御装置6をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、制御装置6、例えば通信制御部64は、クラウドとの通信モジュールなどを備えた構成とする。運転制御部65であるプログラムをクラウド上に格納することで、制御装置6の構成を簡略化することが可能となり、ひいてはコンパクト化や低コスト化なども可能となる。
【0037】
図8には、室温制御処理時における運転制御部65の制御フローを示す。以下、
図8に示す制御フローに従って、運転制御部65が実行する室温制御処理について説明する。
【0038】
室温制御処理において、運転制御部65は、適用する季節を決定する(S01)とともに、店舗10の所在地が含まれる区画域を決定する(S02)。決定にあたって、運転制御部65は、位置取得部61から店舗10の所在地を示すデータを取得するとともに、予測情報取得部62から店舗10の所在地の気候の予測情報を示すデータ、具体的には気温と湿度の予測情報を示すデータを取得する。
【0039】
まず、運転制御部65は、取得した予測情報を示すデータにおける気温と湿度の関係から季節が夏期、中間期、冬期のいずれであるかを判定する。判定の結果、運転制御部65は、室温制御処理時(空気調和機2および要冷機器4の運転制御時)に適用する季節(所定期間)を夏期、中間期、冬期のいずれかに決定する。例えば、運転制御部65は、温度と湿度の関係を示す空気線図などを用いて、かかる季節の判定を行うことが可能である。なお、このような気温と湿度の関係からの判定に代えてもしくは加えて、例えば判定日の日付に応じて季節を判定してもよい。これらの判定を併せて行う場合、気温と湿度の関係に応じた判定により、判定日の日付による固定的な判定の精度を高めることができる。すなわち、気候状況に則してより柔軟かつ自由度を高めて季節を決定できる。
【0040】
次いで、運転制御部65は、店舗10の所在地が含まれる区画域が北部、中部、南部のいずれであるかを判定する。その際、運転制御部65は、夏期、中間期、冬期において北部、中部、南部を区画する境界を変動させる。本実施形態では一例として、運転制御部65は、夏期であれば
図6に示すように区画域を規定し、中間期であれば
図7に示すように区画域を規定する。これにより、
図6もしくは
図7に従って、運転制御部65は、区画域を北部、中部、南部のいずれかに決定する。すなわち、運転制御部65は、店舗10の所在地が北部、中部、南部のいずれに含まれるかを決定する。なお、冬期であれば、運転制御部65は、いずれの所在地であっても同一の区画域を規定する。別の捉え方をすれば、冬期において、運転制御部65は、区画域を特に規定しない。
【0041】
また、運転制御部65は、決定した季節および区画域に対応する動作態様で空気調和機2および要冷機器4を運転させる(S03)。その際、運転制御部65は、情報保持部63が保持する情報を季節および所在地をキーとして読み出し、これらに対応する店舗10の室内の最適温度、空気調和機2および要冷機器4の動作態様を決定する。そして、運転制御部65は、かかる動作態様で空気調和機2および要冷機器4をそれぞれ運転させる。これにより、店舗10の室内温度が設定温度、つまり最適温度に調節されて維持される。
【0042】
このように店舗10の室内温度を最適温度に維持することで、店舗10における省エネルギー化、換言すれば消費電力を効率的に削減可能となる。すなわち、本実施形態によれば、店舗10の所在地および季節(端的には気温と湿度)に応じて空気調和機2および要冷機器4の動作態様を適切に変化させて、店舗10の室内温度を最適温度に維持できる。したがって、快適性を損なうことなく、また店舗10の所在地や季節によらず常に、店舗10での消費電力を効率的に削減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。その際、所在地が含まれる区画域の境界を季節に応じて変動させることができる。このため、店舗10での消費電力をより精度よく削減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、店舗10の所在地および季節に応じて空気調和機2および要冷機器4の運転態様を適切に自動で変化させることも可能である。したがって、例えば店舗10が無人店舗で室内温度を人手で適宜調節できない場合であっても、室内の快適性を損なうことなく、所在地や季節によらずに消費電力を効率よく削減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。結果として、店舗10の無人化を積極的に推進することも可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…室温制御システム、2…空気調和機、4…要冷機器、6…制御装置、8…外部システム、10…店舗、61…位置取得部、62…予測情報取得部、63…情報保持部、64…通信制御部、65…運転制御部。