(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142821
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】運転制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230928BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230928BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230928BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 170
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049932
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 桂子
(72)【発明者】
【氏名】酢山 明弘
(72)【発明者】
【氏名】平原 茂利夫
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】店舗や事務所のような施設全体での消費電力を効率よく削減することが可能な設備機器の運転制御システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る運転制御システムは、施設に設置された複数の設備機器を運転制御する。運転制御システムは、太陽光発電機と、蓄電池と、ヒートポンプ式給湯装置と、複数の電気機器と、制御装置とを備える。蓄電池は、太陽光発電機が発電した電気で充電され、充電した電気の放電もしくは蓄電がいずれも可能である。ヒートポンプ式給湯装置は、施設で使用される温水を生成する。複数の電気機器は、商用電源からの給電もしくは蓄電池からの放電のいずれでも運転可能である。制御装置は、施設の所在地域の天気の予測情報を取得し、取得した予測情報に応じて太陽光発電機、蓄電池、およびヒートポンプ式給湯装置の運転を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置された複数の設備機器を運転制御する運転制御システムであって、
太陽光発電機と、
前記太陽光発電機が発電した電気で充電され、充電した電気の放電もしくは蓄電がいずれも可能な蓄電池と、
前記施設で使用される温水を生成するヒートポンプ式給湯装置と、
商用電源からの給電もしくは前記蓄電池からの放電のいずれでも運転可能な複数の電気機器と、
前記施設の所在地域の天気の予測情報を取得し、取得した予測情報に応じて前記太陽光発電機、前記蓄電池、および前記ヒートポンプ式給湯装置の運転を制御する制御装置と、を備える
運転制御システム。
【請求項2】
前記蓄電池は、前記太陽光発電機から充電されて蓄電した電気を、商用電源から買電可能な第1の電気もしくは前記商用電源から買電可能で買電料金が前記第1の電気よりも高い第2の電気として放電可能であり、
複数の前記電気機器は、前記第1の電気で運転される少なくとも一つの第1の電気機器と、前記第2の電気で運転される少なくとも一つの第2の電気機器とを有し、
前記制御装置は、前記第1の電気機器よりも前記第2の電気機器に対して優先的に前記蓄電池から放電させる
請求項1に記載の運転制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、一日において、午前中は前記太陽光発電機が発電した電気を前記蓄電池から前記電気機器に放電させ、午後からは前記蓄電池の蓄電残量のピークが午後の所定時間帯となるように前記太陽光発電機が発電した電気を前記蓄電池に蓄電させる
請求項2に記載の運転制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記所定時間帯に前記蓄電池から前記ヒートポンプ式給湯装置に放電させ、前記ヒートポンプ式給湯装置で温水を生成させる
請求項3に記載の運転制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記施設の所在地域の所定日の天気、日照量、日照時間、気圧のうちの少なくとも一つを前記予測情報として取得し、前記施設の所在地域の前記所定日が晴天であるか雨天であるかを判定して、雨天であると判定した場合、前記所定日の前記ヒートポンプ式給湯装置での温水の生成を中止させる
請求項4に記載の運転制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、翌日が雨天であると判定した場合、判定当日の前記ヒートポンプ式給湯装置での温水の生成量を翌日が晴天であると判定した場合よりも増加させる
請求項5に記載の運転制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記所定時間帯において、前記施設の外気温度が所定温度未満である場合における前記蓄電池の蓄電残量がピークとなる時間よりも、前記外気温度が所定温度以上である場合における前記蓄電池の蓄電残量がピークとなる時間が遅くなるように、前記太陽光発電機が発電した電気の前記蓄電池に対する充電を制御する
請求項3に記載の運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、店舗や事務所のような施設に設置された複数の設備機器を運転制御する運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoTの発展に伴ってHEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)など、管理対象となる施設で使用されるエネルギーを節約するための管理システムの普及が進んでいる。加えて、温暖化に伴う省エネルギー化の推進要求も高まっている。このため、例えば店舗や事務所のような施設では、太陽光発電機、蓄電池、ヒートポンプ式給湯装置などの設備機器を設置し、施設全体を仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)のように捉えて消費電力の効率化を図っている。その一方で、個別の設備機器における消費電力の最適化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、電気料金は基本料金と電力量料金とに分けられる。基本料金は契約電力量に応じて異なり、契約電力量が大きいほど高額となる。したがって、例えば蓄電池を効率よく使用しない場合、契約電力量を下げられず、結果として電気料金を削減できない。太陽光発電機による発電量は、日中が大きく、夜間が小さい。これに対し、施設における消費電力量は24時間絶え間なく発生する。しかしながら、施設においては、太陽光発電機などによる発電量よりも蓄電量の方が小さい場合が多い。したがって、電気料金、換言すれば消費電力を削減するためには、電力消費(放電)と蓄電量(充電)との関係も考慮する必要がある。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、店舗や事務所のような施設全体での消費電力を効率よく削減することが可能な設備機器の運転制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る運転制御システムは、施設に設置された複数の設備機器を運転制御する。前記運転制御システムは、太陽光発電機と、蓄電池と、ヒートポンプ式給湯装置と、複数の電気機器と、制御装置とを備える。前記蓄電池は、前記太陽光発電機が発電した電気で充電され、充電した電気の放電もしくは蓄電がいずれも可能である。前記ヒートポンプ式給湯装置は、前記施設で使用される温水を生成する。複数の前記電気機器は、商用電源からの給電もしくは前記蓄電池からの放電のいずれでも運転可能である。前記制御装置は、前記施設の所在地域の天気の予測情報を取得し、取得した予測情報に応じて前記太陽光発電機、前記蓄電池、および前記ヒートポンプ式給湯装置の運転を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る運転制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る運転制御システムを備えた店舗での一日における冬期の晴天時の電力需給の時間推移の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る運転制御システムを備えた店舗での一日における雨天時の電力需給の時間推移の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る運転制御システムを備えた店舗での一日における夏期の晴天時の電力需給の時間推移の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る運転制御システムを備えた店舗での一日における中間期の晴天時の電力需給の時間推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る運転制御システムの一実施形態について、
図1から
図5を参照して説明する。運転制御システムは、例えば店舗や事務所のような施設に設置された複数の設備機器を連携して運転制御するために用いられる。本実施形態では一例として、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの各種の店舗に設置された複数の設備機器(以下、店舗機器という)の運転(動作態様)を制御する運転制御システムを想定する。店舗機器は、店舗に設置されて店舗運営に資する設備や機器である。
【0009】
図1は、本実施形態に係る運転制御システム1の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、運転制御システム1は、主たる構成要素として、太陽光発電機2と、蓄電池3と、ヒートポンプ式給湯装置4と、電気機器5と、制御装置6とを備える。太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4、電気機器5は、いずれも店舗機器に該当する。制御装置6は、これらの店舗機器の動作態様を制御する。
【0010】
太陽光発電機2は、いずれも図示省略するが、太陽電池モジュール(太陽光パネル)、電力変換部(パワーコンディショナ)、電力計測部、出力制御部などを有しており、太陽電池モジュールで太陽光を受けて発電する。本実施形態では、太陽光発電機2は、発電した電気(電力)を充電電力として蓄電池3に供給する。また、太陽光発電機2は、漏電防止のため、抑制電力が接地されている。
【0011】
蓄電池3は、太陽光発電機2で発電された電気(充電電力)で充電され、充電した電気を放電もしくは蓄電する。蓄電池3から放電された電気(放電電力)は、ヒートポンプ式給湯装置4や電気機器5などへ供給される。すなわち、蓄電池3は、太陽光発電機2で発電された電気を店舗機器に対して放電可能に蓄電する。蓄電池3は、蓄電した電気を商用電源7a,7bから買電可能な電気として放電する。例えば、商用電源7aから買電可能な電気(電力)は三相200Vの動力用の電力であり、商用電源7bから買電可能な電気(電力)は単相100Vの電灯用の電力である。以下、商用電源7aから買電可能な電気を第1の電気、商用電源7bから買電可能な電気を第2の電気という。第2の電気は、第1の電気よりも買電料金が高い。蓄電池3は、第1の電気(三相200Vの動力用の電力)や第2の電気(単相100Vの電灯用の電力)を店舗機器に合わせて放電する。なお、第1の電気の買電料金と第2の電気の買電料金は、同じでも構わない。
【0012】
ヒートポンプ式給湯装置4は、店舗10で使用される温水を生成する。ヒートポンプ式給湯装置4は、商用電源7bから電力(電灯用の買電電力)もしくは蓄電池3から放電電力が温水の沸き上げ電力として供給されて動作する。したがって、ヒートポンプ式給湯装置4は、第2の電気(単相100Vの電灯用の電力)によって動作する。ヒートポンプ式給湯装置4は、主たる構成要素として、熱源装置41とタンク42を備える。熱源装置41は、例えば圧縮機、水熱交換器、ポンプ、ヒータなど(いずれも図示省略)を有する。熱源装置41は、タンク42との間の水流路においてポンプで水を循環させ、圧縮機から吐出された冷媒で循環水を水熱交換器によって加熱させる。タンク42は、加熱された水(温水)を貯留し、所定の給湯先へ給湯する。給湯された温水は、例えば店舗10の空調やフライヤー51cの洗浄などに使用される。
【0013】
電気機器5は、商用電源7a,7bからの給電(電灯用および動力用の買電電力の供給)もしくは蓄電池3からの放電(放電電力)のいずれでも運転可能な各種の機器である。店舗10には、複数の電気機器5が設置される。電気機器5は、第1の電気機器51と、第2の電気機器52とを含む。第1の電気機器51および第2の電気機器52は、いずれも少なくとも一つずつ店舗10に設置されている。第1の電気機器51は、第1の電気(三相200Vの動力用の供給電力)で運転される(動作する)店舗機器である。
図1に示す例では、冷凍機51a、空調機51b、フライヤー51cが第1の電気機器51として店舗10に設置されている。ただし、第1の電気機器51の具体例はこれらに限定されない。第2の電気機器52は、第2の電気(単相100Vの電灯用の供給電力)で運転される(動作する)店舗機器である。
図1に示す例では、全熱交換器52a、要冷機器52b、店内機器52cが第2の電気機器52として店舗10に設置されている。ただし、第2の電気機器52の具体例はこれらに限定されない。店内機器52cは、例えば照明機器や放送機器などである。なお、ヒートポンプ式給湯装置4は、第2の電気機器52に含まれる。
【0014】
制御装置6は、店舗10に設置された複数の店舗機器、具体的には太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4(熱源装置41、タンク42)、および電気機器5(第1の電気機器51、第2の電気機器52)の運転(動作態様)を制御する。制御装置6は、例えばCPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなど(いずれも図示省略)を含み、所定の演算処理を実行する。制御装置6は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて太陽光発電機2、蓄電池3、熱源装置41、タンク42、第1の電気機器51、および第2の電気機器52の各々の運転制御を行う。制御装置6は、これらの店舗機器とそれぞれ有線もしくは無線で接続され、演算処理の実行に必要なデータの送受信を行う。
【0015】
本実施形態において、制御装置6は、施設の一例である店舗10の所在地域の気象情報を取得し、取得した気象情報に応じて太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4の運転(動作態様)を制御する。このため、制御装置6は、有線もしくは無線を含むインターネットなどの通信網を介して外部システム8と接続されている。
【0016】
外部システム8は、店舗10の所在地域の気象情報を提供可能に保持するシステムであり、例えば気象庁や気象会社などのシステムである。気象情報は、店舗10の所在地域の天気に関する情報であり、例えば実際の観測情報や予測情報などである。本実施形態において、制御装置6は、店舗10の所在地域の所定日の天気の予測情報を外部システム8から取得する。例えば、制御装置6は、店舗10の所在地域の翌日や翌々日の天気の予測情報を取得して翌日や翌々日の天気を予測する。ただし、予測の対象日である所定日は、翌日や翌々日に限られず、一週間先や一か月先、あるいは当日などであってもよい。
【0017】
本実施形態では一例として、制御装置6は、店舗10の所在地域の翌日の天気が晴天もしくは雨天のいずれであるかを判定する。晴天であるか雨天であるかの判定基準は、例えば太陽光発電機2によって発電される電力量(発電量)が閾値に達するだけの日照量(日照時間)が得られるか否かである。したがって、制御装置6は、店舗10の所在地域の翌日の日照量(日照時間)の予測情報を外部システム8から取得する。
【0018】
判定基準の閾値は、例えばヒートポンプ式給湯装置4以外の第2の電気機器52の運転に要する電力(電灯用の放電電力)を賄え、さらにヒートポンプ式給湯装置4を運転させて温水を沸き上げることが可能な電力を賄えるだけの発電量の値である。かかる閾値は、例えばヒートポンプ式給湯装置4を含む第2の電気機器52の能力などに応じて予め設定される。制御装置6は、設定された閾値と太陽光発電機2の発電量が該閾値に達する日照量(日照時間)とが紐付けられた情報を記憶装置に記憶し、晴天であるか雨天であるかの判定時にメモリに読み出す。そして、制御装置6は、外部システム8から取得した店舗10の所在地域の日照量(日照時間)と、メモリに読み出した閾値に紐付けられた日照量(日照時間)とを比較し、晴天であるか雨天であるかを判定する。制御装置6は、例えば外部システム8から取得した店舗10の所在地域の日照量(日照時間)が閾値以上であれば晴天、閾値未満であれば雨天であると判定する。なお、晴天であるか雨天であるかは、このような日照量(日照時間)ではなく、例えば気圧変動などに基づいて判定されてもよい。また、天気の予測情報、具体的には晴天もしくは雨天の予測情報に応じて、晴天であるか雨天であるかが判定されてもよい。これらの場合、制御装置6は、所定日(一例として翌日)の気圧の予測情報や天気の予測情報を外部システム8から取得すればよい。
【0019】
図2および
図3には、店舗10での一日における電力需給の時間推移の一例をそれぞれ示す。
図2は、晴天時における電力需給の時間推移の一例を示す図である。これに対し、
図3は、雨天時における電力需給の時間推移の一例を示す図である。
図2および
図3において、棒グラフのC1~C6、折れ線グラフのL1~L4はそれぞれ次の指標の時間推移を示す。
【0020】
C1は、動力用の買電電力量(以下、動力用買電量という)であり、第1の電気の買電量、例えば三相200Vの動力用の電力の買電量である。C2は、電灯用の買電電力量(以下、電灯用買電量という)であり、第2の電気の買電量、例えば単相100Vの電灯用の電力の買電量である。C3は、動力用の放電電力量(以下、動力用放電量という)であり、動力用の買電電力量の削減量に相当する。C4は、電灯用の放電電力量(以下、電灯用放電量という)であり、電灯用の買電電力量の削減量に相当する。C5は、ヒートポンプ式給湯装置4の消費電力量であり、温水を沸き上げるためにヒートポンプ式給湯装置4を運転させるのに要する電力量(沸き上げ電力量)である。C6は、蓄電池3の充電電力量(以下、充電量という)であり、太陽光発電機2によって発電されて蓄電池3に充電される電力量である。蓄電池3に充電された電力は、そのまま第1の電気機器51および第2の電気機器52に放電(給電)され、放電量を超える電力は蓄電される。
【0021】
L1は太陽光発電機2の発電電力量(以下、発電量という)、L2は蓄電池3の蓄電電力量(以下、蓄電残量という)、L3はヒートポンプ式給湯装置4のタンク42の貯湯量、L4は店舗10における給湯需要量である。太陽光発電機2の発電量L1は、蓄電池3の充電量C6に相当する。
【0022】
横軸は当日の時刻(0時から24時)、左側縦軸は消費電力量、右側縦軸は湯量を示す。消費電力量は、左側縦軸中央をゼロとして上側がプラス、下側がマイナスとされている。したがって、動力用買電量C1および電灯用買電量C2は、消費電力量のプラスの値として示されている。蓄電池3の充電量C6および太陽光発電機2の発電量L1は、消費電力量のマイナスの値として示されており、マイナス値が大きくなるほど充電および発電される電力量が大きくなる。なお、蓄電池3の蓄電残量L2は、消費電力量のプラスの値として示されている。これは、プラス値が大きくなるほど消費可能な電力量が増え、蓄電残量L2も大きくなるものとして捉えているためである。
【0023】
図2に示すように、晴天時においては、日中の日照時間帯、
図2に示す例では6時から17時の間、太陽光発電機2の発電量L1(蓄電池3の充電量C6)を生じさせることができる。したがって、かかる時間帯においては、本来必要となる動力用放電量C3および電灯用放電量C4の少なくとも一部を、発電量L1(充電量C6)で賄うことができる。例えば11時においては、動力用放電量C3および電灯用放電量C4のすべてを発電量L1(充電量C6)で賄うことができ、その間、動力用買電量C1および電灯用買電量C2のすべてを削減できる。
【0024】
また、日中の日照時間帯において、制御装置6は、買電料金の高い第2の電気の電力量である電灯用買電量C2を、第1の電気での電力量である動力用買電量C1よりも優先的に発電量L1(充電量C6)から店舗機器に供給する。すなわち、制御装置6は、第1の電気機器51よりも第2の電気機器52に対して優先的に蓄電池3から放電させる。したがって、例えば7時および8時においては、電灯用買電量C2の一部が発電量L1(充電量C6)で賄われているに過ぎず、動力用買電量C1および電灯用買電量C2がいずれも生じている。次いで、9時および10時においては、電灯用買電量C2のすべてが発電量L1(充電量C6)で賄われており、電灯用買電量C2がゼロとなっている。これに対し、動力用買電量C1はその一部が発電量L1(充電量C6)で賄われ、残りが動力用買電量C1で賄われている。そして、11時においては、動力用買電量C1および電灯用買電量C2は、いずれもすべてが発電量L1(充電量C6)で賄われている。
【0025】
一方、11時においては、太陽光発電機2の発電量L1がピークとなり、これに伴って充電量C6もピークとなる。12時以降、発電量L1(充電量C6)は減少するが、積算値が動力用放電量C3および電灯用放電量C4を上回る。このため、蓄電池3の蓄電残量L2は、11時までほぼゼロであるが、12時以降、増加していく。
【0026】
このように、制御装置6は、一日において、午前中(例えば日の出時刻から12時まで)は太陽光発電機2が発電した電気を蓄電池3から店舗機器、端的には電気機器5に放電させる。
【0027】
その一方、制御装置6は、午後からは蓄電池3の蓄電残量L2のピークが所定時間帯となるように太陽光発電機2が発電した電気を蓄電池3に充電させる。したがって、制御装置6は、蓄電池3の蓄電残量L2が午後の所定時間帯にピークとなるように、蓄電池3の蓄電残量L2を制御する。換言すれば、制御装置6は、蓄電池3の蓄電残量L2が所定時刻間にピークとなるように、発電量L1(充電量C6)による店舗機器への電力供給を制御する。所定時間帯は任意に設定可能であるが、本実施形態では一例として14時から18時の間とされている。14時から18時は、一日のうちで最も気温(店舗10の外気温度)が上昇する時間帯に相当し、この時間帯は蓄電池3の蓄電残量L2がピークとなる時刻を含んでおり、蓄電残量L2を放電電力として蓄電池3から店舗機器に十分に供給可能な時間帯(以下、放電可能時間帯という)となる。
【0028】
制御装置6は、蓄電池3の蓄電残量L2のピークをこのように制御しつつ、放電可能時間帯に蓄電池3からヒートポンプ式給湯装置4に放電させ、ヒートポンプ式給湯装置4で温水を生成させる。このため、制御装置6は、放電可能時間帯の開始時刻以降、つまり14時以降にヒートポンプ式給湯装置4の消費電力(沸き上げ電力)の供給を開始する。
【0029】
図2に示す例では、蓄電池3の放電可能時間帯は14時から18時の間であり、ピーク時刻は15時となっている。制御装置6は、ヒートポンプ式給湯装置4の消費電力量(沸き上げ電力量)C5の供給を14時に開始する。これにより、ヒートポンプ式給湯装置4が動作し、温水を沸き上げる。すなわち、放電可能時間帯の開始時刻である14時に温水の沸き上げが開始される。したがって、発電量L1(充電量C6)および蓄電池3の蓄電残量L2で、沸き上げ電力量C5および本来必要となる電灯用買電量C2に相当する電力量を賄うことができる。このため、かかる電灯用買電量C2に相当する電力量である電灯用放電量C4だけ、電灯用の買電電力を削減できる。
【0030】
ヒートポンプ式給湯装置4が動作して温水を沸き上げることで、ヒートポンプ式給湯装置4のタンク42の貯湯量L3が増す。貯湯量L3は、店舗10における給湯需要量L4を常時上回っている。したがって、店舗10における給湯需要量L4をタンク42の貯湯量L3で賄うことができ、給湯量を不足させずに済む。
【0031】
そして、発電量L1(充電量C6)および蓄電池3の蓄電残量L2がいずれもゼロとなる18時以降、翌日の7時までの間、店舗機器へ供給される電力は、ほぼすべて動力用買電量C1および電灯用買電量C2で賄われる。
【0032】
したがって、一日における動力用買電量C1および電灯用買電量C2、つまり買電による電力量を低減させることができ、買電料金を削減できる。加えて、買電による電力量を低減させることで、省エネルギー化の促進や環境負荷の低減にも積極的に寄与できる。また、放電可能時間帯においては、蓄電池3の蓄電残量L2で電灯用買電量C2に相当する電力量および沸き上げ電力量C5を賄うことで、電気料金の契約電力量を下げることが可能となる。これにより、電気料金の基本料金を下げることができ、電気料金、つまり買電料金をさらに削減可能となる。
【0033】
図3に示すように、雨天時においては、日中の日照時間帯、
図3に示す例では6時から16時の間、太陽光発電機2の発電量L1(蓄電池3の充電量C6)を生じさせることができる。ただし、その発電量L1は、
図2に示す晴天時と比べて少ない。したがって、かかる時間帯を含め、発電量L1(充電量C6)で動力用放電量C3および電灯用放電量C4を十分に賄うことができず、7時から14時において電灯用放電量C4の一部を賄うにとどまる。この場合であっても、制御装置6は、買電料金の高い第2の電気の電力量である電灯用買電量C2を、第1の電気での電力量である動力用買電量C1よりも優先的に発電量L1(充電量C6)から供給する。すなわち、制御装置6は、第1の電気機器51よりも第2の電気機器52に対して優先的に蓄電池3から放電させる。したがって、例えば7時から14時においては、電灯用買電量C2の一部を発電量L1(充電量C6)で賄うことができ、買電料金の削減を図ることができる。
【0034】
一方、発電量L1が少ないため、蓄電池3の蓄電残量L2は、全日を通してほぼゼロとなっている。また、雨天時においては、店舗10における給湯需要量L4が晴天時と比べて少ない。例えば、タンク42には、前日などに沸き上げられて保温されている温水が貯留されている。このため、貯湯量L3は、店舗10における給湯需要量L4を晴天時よりも常時大きく上回っている。したがって、店舗10における給湯需要量L4をタンク42の貯湯量L3で賄うことができ、制御装置6は、温水を沸き上げるためにヒートポンプ式給湯装置4を動作させなくともよい。
【0035】
そして、蓄電残量L2は、全日を通してほぼゼロとなっているため、発電量L1および充電量C6がいずれもゼロとなる16時以降、翌日の6時までの間、店舗機器へ供給される電力は、ほぼすべて動力用買電量C1および電灯用買電量C2で賄われる。
【0036】
このように、晴天時と雨天時において、店舗10での一日における電力需給の時間推移が異なるため、制御装置6は、店舗10の所在地域の天気の予測情報に基づいて、太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4の運転(動作態様)を制御する。
【0037】
本実施形態においては一例として、制御装置6は、上述したように外部システム8から店舗10の所在地域の翌日の日照量(日照時間)を取得し、翌日が晴天であるか雨天であるかを判定する。
【0038】
翌日が雨天であると判定した場合、制御装置6は、雨天の当日のヒートポンプ式給湯装置4での温水の生成を中止させる。すなわち、雨天の当日は、ヒートポンプ式給湯装置4が動作されず、温水の沸き上げがなされない。したがって、例えば温水を沸き上げるために必要な電力量(
図2に示す例のような沸き上げ電力量C5)だけ、消費電力量を低減でき、結果として買電料金を削減可能となる。店舗10の空調やフライヤー51cの洗浄などのために温水を要する場合、タンク42に貯留されている温水が供給される。このため、制御装置6は、翌日が雨天であると判定した場合、翌日分も考慮して、当日分(翌日に対する前日分)のタンク42の貯湯量を調整する。
【0039】
制御装置6は、例えば晴天である当日の翌日が雨天であると判定した場合、
図2に示す例のように、蓄電池3の放電可能時間帯の開始時刻以降、具体的には14時にヒートポンプ式給湯装置4を動作させて温水の沸き上げを開始する。その際、雨天である翌日分の使用量を考慮して、判定当日のヒートポンプ式給湯装置4での温水の生成量、つまり貯湯量を翌日が晴天であると判定した場合よりも増加させる。このように沸き上げを行った場合であっても、ヒートポンプ式給湯装置4の消費電力量(沸き上げ電力量)C5は、蓄電池3の蓄電残量L2によって賄えるため、買電料金を増加させずに済む。
【0040】
これに対し、制御装置6は、翌日が晴天であると判定した場合も同様に、
図2に示す例のように、蓄電池3の放電可能時間帯の開始時刻以降、具体的には14時にヒートポンプ式給湯装置4を動作させて温水の沸き上げを開始する。ただし、翌日が雨天であると判定した場合のように翌日分の使用量を考慮する必要がないため、雨天判定時のような貯湯量の増加は要しない。この場合も、ヒートポンプ式給湯装置4の消費電力量(沸き上げ電力量)C5は、蓄電池3の蓄電残量L2によって賄えるため、買電料金を増加させずに済む。
【0041】
また、制御装置6は、このような店舗10の所在地域の天気予測、換言すれば翌日が晴天であるか雨天であるかに加えて、季節に応じて太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4の運転(動作態様)を制御してもよい。季節の分け方は任意であるが、例えば一年を夏期、中間期、冬期の三つに分けることが可能である。夏期は、夏季に対応する期間であり、例えば六月から九月までの四箇月間である。冬期は、冬季に対応する期間であり、例えば十二月から三月までの四箇月間である。中間期は、夏期と冬期の残りの期間であり、例えば四月から五月までの二箇月間および十月から十一月までの二箇月間の合計四箇月間である。夏期、中間期、冬期のうち、夏期は最も気温(店舗10の外気温度)が高い期間であり、冬期は最も気温が低い期間であり、中間期はこれらの間の気温の期間である。
【0042】
なお、このような季節単位、端的には月単位ではなく、気温に応じて季節を分けてもよい。気温によれば、より細かくかつ精度よく、太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4の運転を制御装置6で制御可能となる。例えば第1の閾値以上の気温であれば夏期と同様、第2の閾値未満の気温であれば冬期と同様、第2の閾値以上で第1の閾値未満の気温であれば中間期と同様として、月単位、週単位、日単位などに季節を捉えることが可能である。
【0043】
図4は、夏期の晴天時における店舗10での一日における電力需給の時間推移の一例を示す図である。
図5は、中間期の晴天時における店舗10での一日における電力需給の時間推移の一例を示す図である。なお、上述した
図2は、冬期の晴天時における店舗10での一日における電力需給の時間推移の一例を示す図である。
図4および
図5において、棒グラフのC1~C6、折れ線グラフのL1~L4は、上述した
図2における棒グラフのC1~C6および折れ線グラフのL1~L4の各指標と同一である。
【0044】
図4、
図5、および
図2に示すように、制御装置6は、蓄電池3の蓄電残量L2の放電可能時間帯において、発電量L1(充電量C6)および蓄電池3の蓄電残量L2で、沸き上げ電力量C5および本来必要となる電灯用買電量C2に相当する電力量を賄うように太陽光発電機2、蓄電池3、ヒートポンプ式給湯装置4の運転を制御する。すなわち、かかる制御は、夏期、中間期、および冬期のいずれにおける晴天時であっても共通する。
【0045】
その際、つまり夏期、中間期、および冬期のいずれの晴天時における運転制御時であっても、制御装置6は、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯を冬期、中間期、夏期の順に遅らせる。ピーク時間帯は、放電可能時間帯のうち、蓄電残量L2がピークとなる時間(ピーク時刻)を含む所定の時間帯(例えば一時間程度の時間帯)である。したがって、
図4、
図5、および
図2に示すように、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯は夏期が最も遅く、冬期が最も早く、中間期がその間となる。
図4に示す夏期の晴天時の例では、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯は16時から17時の時間帯である。
図5に示す中間期の晴天時の例では、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯は15時から16時の時間帯である。
図2に示す冬期の晴天時の例では、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯は14時から15時の時間帯である。
【0046】
すなわち、制御装置6は、気温(店舗10の外気温度)が所定温度未満である場合における蓄電池3の蓄電残量L2がピークとなる時間(ピーク時刻)よりも、気温が所定温度以上である場合における蓄電池3の蓄電残量L2がピークとなる時間が遅くなるように、太陽光発電機2が発電した電気の蓄電池3に対する充電を制御する。ここでは、所定温度として第1の閾値と第2の閾値を用いて、冬期、中間期、夏期の順で蓄電池3の蓄電残量L2がピークとなる時間(ピーク時刻)を遅らせている。これにより、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯は夏期が最も遅く、冬期が最も早く、中間期がその間となる。
【0047】
したがって、夏期、中間期、および冬期のいずれの晴天時であっても、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯を含む放電可能時間帯において、発電量L1(充電量C6)および蓄電池3の蓄電残量L2で、沸き上げ電力量C5および本来必要となる電灯用買電量C2に相当する電力量を賄うことができる。これにより、かかる電灯用買電量C2に相当する電力量である電灯用放電量C4だけ、電灯用の買電電力を削減できる。
【0048】
また、一日のうちで最も気温が上昇する時間帯は、冬期、中間期、夏期の順で遅くなり、冬期が最も早く、夏期が最も遅く、中間期がその間となる。このため、蓄電池3の蓄電残量L2のピーク時間帯を冬期、中間期、夏期の順に遅らせることで、沸き上げ電力量C5および本来必要となる電灯用買電量C2に相当する電力量を蓄電池3の蓄電残量L2で賄う時間帯を遅らせることができる。したがって、かかる電灯用買電量C2に相当する買電料金をより効率的に削減可能となる。
【0049】
なお、雨天時における店舗10での一日における電力需給の時間推移は、夏期、中間期、および冬期のいずれであっても
図3に示す例に準ずることができる。したがって、制御装置6は、夏期、中間期、および冬期において翌日が雨天であると判定した場合、例えば翌日、つまり雨天の当日はヒートポンプ式給湯装置4を運転させず、ヒートポンプ式給湯装置4での温水の生成を中止させる。これにより、夏期、中間期、および冬期のいずれの雨天時であっても、例えば温水を沸き上げるために必要な電力量(
図2に示す例のような沸き上げ電力量C5)だけ、消費電力量を低減でき、結果として買電料金を削減可能となる。
【0050】
例えば晴天である当日の翌日が雨天であると判定した場合、制御装置6は、
図2に示す例のように、蓄電池3の蓄電残量L2の放電可能時間帯の開始時刻以降、具体的には14時にヒートポンプ式給湯装置4を運転させて温水の沸き上げを開始する。その際、雨天である翌日分の使用量を考慮して翌日が晴天であると判定した場合よりも貯湯量を増加させる。このように沸き上げを行った場合であっても、ヒートポンプ式給湯装置4の消費電力量(沸き上げ電力量)C5は、蓄電池3の蓄電残量L2によって賄えるため、買電料金を増加させずに済む。また、店舗10の空調やフライヤー51cの洗浄などのために温水を要する場合、前日の晴天時などに沸き上げられてタンク42に貯留されている温水を供給できる。
【0051】
このように本実施形態に係る店舗機器(設備機器)の運転制御システム1によれば、店舗10のような施設全体での消費電力を効率よく削減することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…運転制御システム、2…太陽光発電機、3…蓄電池、4…ヒートポンプ式給湯装置、5…電気機器、6…制御装置、7a,7b…商用電源、8…外部システム、10…店舗、41…熱源装置、42…タンク、51…第1の電気機器、51a…冷凍機、51b…空調機、51c…フライヤー、52…第2の電気機器、52a…全熱交換器、52b…要冷機器、52c…店内機器。