(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142822
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】空調制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20230928BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20230928BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20230928BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20230928BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20230928BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/74
F24F11/80
F24F11/64
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049933
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 桂子
(72)【発明者】
【氏名】酢山 明弘
(72)【発明者】
【氏名】平原 茂利夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信裕
(72)【発明者】
【氏名】志田 匠
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA08
3L260AB03
3L260BA41
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB62
3L260EA02
3L260EA03
3L260EA04
3L260FA02
3L260FA04
(57)【要約】
【課題】消費電力を効率的に削減することが可能な空調制御システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る空調制御システムは、少なくとも一台の空調機と、外調機と、外気温度検出部と、制御装置とを備える。空調機は、暖房モードおよび冷房モードを含む所定の運転モードで動作し、建屋の室内を空気調和する。外調機は、暖房モード、冷房モード、送風モードを含む所定の運転モードで動作し、建屋の外気を空気調和して空調機に供給する。外気温度検出部は、外気の温度を検出する。制御装置は、制御処理部と、通信制御部と、地域記憶部とを有し、空調機と外調機の動作を制御する。制御処理部は、外調機から空調機に外気が供給される際の空調機および外調機の動作を制御するための処理を実行する。通信制御部は、制御処理部と空調機との間および制御処理部と外調機との間でのデータの送受信を制御する。地域記憶部は、建屋が所在する地域を記憶する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房モードおよび冷房モードを含む所定の運転モードで動作し、建屋の室内を空気調和する少なくとも一台の空調機と、
暖房モード、冷房モード、送風モードを含む所定の運転モードで動作し、前記建屋の外気を空気調和して前記空調機に供給する外調機と、
前記外気の温度を検出する外気温度検出部と、
前記空調機と前記外調機の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記外調機から前記空調機に前記外気が供給される際の前記空調機および前記外調機の動作を制御するための処理を実行する制御処理部と、
前記制御処理部と前記空調機との間および前記制御処理部と前記外調機との間でのデータの送受信を制御する通信制御部と、
前記建屋が所在する地域を記憶する地域記憶部と、を有する
空調制御システム。
【請求項2】
前記制御処理部は、少なくとも前記外気温度検出部が検出した前記外気の温度と前記空調機の運転モードとに基づいて、前記外調機の運転モード、前記外調機から前記空調機に供給される前記外気の給気風量、前記外調機から前記空調機に供給される前記外気の給気温度をそれぞれ設定し、前記外調機の前記動作を制御する
請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記制御処理部は、前記地域における気温に対する前記外気の絶対湿度の推定に用いられる係数を記憶する湿度推定係数記憶部を有し、前記外気温度検出部に検出された前記外気の温度と前記湿度推定係数記憶部に記憶された前記係数とを用いて前記外気の絶対湿度を推定する
請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記制御処理部は、前記外気温度検出部に検出された前記外気の温度と推定した前記外気の絶対湿度を用いて前記外気の不快指数および露点温度を算出し、算出した前記不快指数および前記露点温度に応じて、前記外調機の運転モード、前記給気風量、前記給気温度の各設定を変える
請求項3に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記制御処理部は、
前記外調機の運転モードが暖房モードである場合、前記外気温度検出部が検出した前記外気の温度に所定の補正値を加えて前記給気温度を設定し、
前記外調機の運転モードが冷房モードである場合、前記外気温度検出部が検出した前記外気の温度から所定の補正値を減じて前記給気温度を設定し、
前記外調機の運転モードが送風モードである場合、前記外気温度検出部が検出した前記外気の温度を前記給気温度に設定する
請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記制御処理部は、前記外調機の運転モードに応じた所定の上限値および下限値の範囲内で前記給気温度を設定する
請求項5に記載の空調制御システム。
【請求項7】
前記空調機が複数備えられている場合、前記制御処理部は、各々の前記空調機の運転モードを一致させ、すべての前記空調機で一致させた運転モードに応じて前記外調機の運転モードを設定する
請求項1から6のいずれか一項に記載の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオフィスビルや店舗などの建屋においては、空調制御システムによって建屋内の空調が制御されている。かかる空調制御システムは、主たる構成要素として、外気調和装置、建屋の各室内の空気調和装置、これらの動作を制御する制御装置を備えている。
【0003】
外気調和装置(以下、外調機という)は、AHU(Air Handling Unit)、送風機、VAV(Variable Air Volume)などの機器を含んで構成され、建屋内に設置されたダクトを通して建屋外の空気(外気)を取り込んで各室内に供給する。
空気調和装置(以下、空調機という)は、一例としてFCU(Fan Coil Unit)などと呼ばれ、各室内に設置されている。空調機は、外調機から供給された空気の温度を調節し、室内の所定箇所に供給する機器である。
【0004】
制御装置は、外調機および空調機の動作をそれぞれ制御する機器であり、例えば外調機の送風機から各室内に供給される空気量(風量)を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような空調制御システムに対し、近年、環境負荷の軽減が求められており、そのための対策の一つとして消費電力の削減を図ることが必要とされている。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、消費電力を効率的に削減することが可能な空調制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る空調制御システムは、少なくとも一台の空調機と、外調機と、外気温度検出部と、制御装置とを備える。前記空調機は、暖房モードおよび冷房モードを含む所定の運転モードで動作し、建屋の室内を空気調和する。前記外調機は、暖房モード、冷房モード、送風モードを含む所定の運転モードで動作し、前記建屋の外気を空気調和して前記空調機に供給する。前記外気温度検出部は、前記外気の温度を検出する。前記制御装置は、制御処理部と、通信制御部と、地域記憶部とを有し、前記空調機と前記外調機の動作を制御する。前記制御処理部は、前記外調機から前記空調機に前記外気が供給される際の前記空調機および前記外調機の動作を制御するための処理を実行する。前記通信制御部は、前記制御処理部と前記空調機との間および前記制御処理部と前記外調機との間でのデータの送受信を制御する。前記地域記憶部は、前記建屋が所在する地域を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る空調制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る空調制御システムにおいて、湿度推定テーブルが保持するレコードのデータ項目の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る空調制御システムにおいて、給気制御処理時における制御処理部の制御フロー図である。
【
図4】実施形態に係る空調制御システムにおいて、設定値決定処理時における制御処理部の制御フロー図である。
【
図5】実施形態に係る空調制御システムにおいて、空調機が二台(メインとサブ)である場合における運転モードのコンフリクト解消結果の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る空調制御システムにおいて、設定値決定テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る空調制御システムの一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。空調制御システムは、例えばオフィスビルや店舗などの建屋において室内の空調態様を制御するために用いられる。本実施形態では一例として、コンビニエンスストア等の店舗内の空調態様を制御する空調制御システムを想定する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る空調制御システム10の構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、空調制御システム10は、主たる構成要素として、空調機2と、外調機4と、制御装置6とを備える。空調機2と外調機4とは、空気配管(ダクト)を介して接続され、制御装置6によってそれぞれ動作制御される。
【0012】
空調機2は、建屋の室内、本実施形態では一例として店舗内を空気調和する。空調機2が空気調和する空気は、外調機4から供給される。すなわち、空調機2は、外調機4から供給された空気を空気調和して店舗内に給気する。空調機2は、一例としてFCU(Fan Coil Unit)などと呼ばれ、空調対象空間である店舗内の所望箇所に設置される。本実施形態において、空調機2は店舗に少なくとも一台、図示例では複数台(空調機21~2n:nは任意の数)が設置されている。設置箇所は、例えば店舗の入口付近、レジ付近、冷凍・冷蔵ケース付近、バックヤード付近など、空調を要する任意の箇所である。
【0013】
空調機2は、所定の運転モードで動作する。本実施形態では、停止モード、冷房モード、および暖房モードの三つの運転モードを適用する。空調機2は、冷房モードもしくは暖房モードのいずれかでは稼働し、停止モードでは停止する(非稼働状態となる)。ただし、運転モードの態様はこれらに限定されない。なお、本実施形態では停止モードで停止した状態、つまり非稼働状態も空調機2の動作態様の一態様として捉える。空調機2は、運転モードの設定値、つまり停止モード、冷房モード、および暖房モードをそれぞれ示す設定値を保持する運転モード保持部2aを有する。各モードの設定値はそれぞれ一例として、停止モードが0、冷房モードが1、暖房モードが2である。空調機2は、運転モード保持部2aに保持された設定値に対応する運転モードで動作する。運転モード保持部2aに保持された設定値は、適宜書き換え可能である。かかる設定値の書き換えは、例えば空調機2の操作パネルやリモコン、店舗に設置されたマスタコントローラ(いずれも図示省略)などからの入力をトリガーとして制御装置6によって実行される。
【0014】
外調機4は、建屋、本実施形態では一例として店舗の外気(店舗外の空気、以下単に外気という)を空気調和して空調機2に供給する。外調機4は、AHU(Air Handling Unit)、送風機、VAV(Variable Air Volume)などの機器を含んで構成される。外調機4は、例えば店舗内の天井裏や壁裏などに設置され、外気を取り込み、取り込んだ外気を空気調和する。空気調和された外気は、外調機4とともに店舗内の天井裏や壁裏に設置されたダクトを通して空調機2に供給される。本実施形態では一例として、かかる外気は、各空調機2(21~2n)の設置箇所に向けて分岐したダクトを通して各空調機2(21~2n)に分配される。
【0015】
外調機4は、所定の運転モードで動作する。本実施形態では、停止モード、冷房モード、暖房モード、および送風モードの四つの運転モードを適用する。外調機4は、冷房モード、暖房モード、送風モードのいずれかでは稼働し、停止モードでは停止する(非稼働状態となる)。ただし、運転モードの態様はこれらに限定されない。なお、本実施形態では停止モードで停止した状態、つまり非稼働状態も外調機4の動作態様の一態様として捉える。外調機4は、運転モードの設定値、つまり停止モード、冷房モード、暖房モード、および送風モードをそれぞれ示す所定値を保持する運転モード保持部4aを有する。各モードの設定値はそれぞれ一例として、停止モードが0、冷房モードが1、暖房モードが2、送風モードが3である。外調機4は、運転モード保持部4aに保持された設定値に対応する運転モードで動作する。運転モード保持部4aに保持された設定値は、制御装置6によって適宜書き換え可能とされている。
【0016】
外調機4は、所定の風量(以下、給気風量という)で外気(外調機4で空調した外気)を空調機2に供給する。このため、外調機4は、給気風量の値(以下、給気風量値という)を保持する給気風量保持部4bを有する。給気風量値は、例えば送風機の出力(風量タップ)などに紐付けられて設定された値であり、本実施形態では停止、弱、強、急の四段階に対応付けられている。各段階の設定値はそれぞれ一例として、停止が0、弱が1、強が2、急が3である。給気風量に相当する送風機の出力(風量タップ)は、停止、弱、強、急の順に大きくなり、停止が最小(風量ゼロ)、急が最大である。ただし、設定可能な給気風量は四段階に限定されず、三段階以下であっても五段階以上であってもよい。給気風量保持部4bに保持された給気風量値は、制御装置6によって適宜書き換え可能とされている。
【0017】
加えて、外調機4は、所定の温度(以下、給気温度という)で外気(外調機4で空調した外気)を空調機2に供給する。このため、外調機4は、給気温度の設定値を保持する給気温度保持部4cを有する。給気温度の設定の詳細については後述する。外調機4は、給気温度保持部4cに保持された給気温度の設定値で外気を空調機2に供給する。給気温度保持部4cに保持された給気温度の設定値は、制御装置6によって適宜書き換え可能とされている。
【0018】
また、外調機4は、外気の温度を検出する外気温度検出部4dを有する。外気温度検出部4dは、例えばサーミスタなどの温度センサである。外気温度検出部4dは、検出した外気温度を制御装置6に付与する。なお、本実施形態では一例として、外気温度検出部4dを外調機4の構成要素の一つとしているが、外気温度検出部4dは外調機4から独立した構成要素であってもよい。また、外気温度検出部4dに代えてもしくは加えて、外部システム、例えば気象庁や気象会社などのシステムが提供する外気温度のデータを取得して制御装置6に付与することが可能な実施形態であってもよい。
【0019】
制御装置6は、空調制御システム10で空調態様が制御される建屋、本実施形態ではコンビニエンスストア等の店舗に設置され、該店舗に設置された空調機2および外調機4の動作を制御する。制御装置6は、店舗コントローラなどと呼ばれる装置であり、例えばCPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。制御装置6は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて空調機2および外調機4の動作制御を行う。具体的には、制御装置6は運転モード保持部2aに保持された設定値に対応する運転モードで空調機2を動作させる。また、制御装置6は、運転モード保持部4aに保持された設定値に対応する運転モードで外調機4を動作させる。その際、制御装置6は、外調機4の給気風量保持部4bに保持された設定値に対応する給気風量、かつ給気温度保持部4cに保持された設定値に対応する給気温度で外調機4から空調機2に外気を供給させる。
【0020】
空調機2および外調機4をこのように動作させるべく、制御装置6は、制御処理部6aと、通信制御部6bと、地域記憶部6cと、湿度推定係数記憶部6dとを有する。
【0021】
制御処理部6aは、外調機4から空調機2に空気調和した外気が供給される際の空調機2および外調機4の動作を制御するための処理(以下、給気制御処理という)を実行する。給気制御処理は、外調機4から空調機2に外気供給される際に要する処理であり、空調機2の運転モード、外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の設定に伴う一連の処理である。本実施形態では一例として、制御処理部6aは、制御装置6において給気制御処理を実行するためのプログラムとして構成されており、記憶装置に格納されてメモリに読み出される。なお、制御処理部6aであるプログラムをクラウド上に格納し、制御装置6をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、制御装置6は、クラウドとの通信モジュールなどを備えた構成とする。
【0022】
通信制御部6bは、制御処理部6aと空調機2との間および制御処理部6aと外調機4との間でのデータの送受信を制御する。通信制御部6bは、空調機2および外調機4とそれぞれ有線もしくは無線で接続され、例えばECHONET Lite(登録商標)に基づいて、空調機2および外調機4と相互に通信する。なお、適用される通信規格は、ECHONET Lite(登録商標)に限定されず、その他の通信プロトコルであっても構わない。通信制御部6bは、データ送受信の通知や受信したデータを制御処理部6aに付与する。
【0023】
地域記憶部6cは、空調制御システム10で空調態様が制御される建屋、本実施形態では制御装置6が設置されたコンビニエンスストア等の店舗が所在する地域(以下、対象地域という)を記憶する。地域記憶部6cは、例えば制御装置6の記憶装置における記憶領域の一部として構成される。対象地域は、該対象地域に対応するデータ項目を有するレコードとして地域記憶部6cに記憶されている。レコードのデータ項目は、例えば対象地域の地域コード(ID)、該地域コードに対応して設定された地域名などである。地域コードおよび地域名は、例えば都道府県ごと、市区町村ごとなどの任意の区画を適用して一意に割り振られる。地域記憶部6cに記憶されたレコード、つまり対象地域に対応したデータ項目は、給気制御処理において制御処理部6aに読み出される。
【0024】
湿度推定係数記憶部6dは、対象地域の気温に対する外気の湿度(絶対湿度)の推定に用いられる係数(以下、湿度推定係数という)を記憶する。湿度推定係数記憶部6dは、例えば制御装置6の記憶装置の一つ、あるいは制御装置6の記憶装置における記憶領域の地域記憶部6cとは別の一部として構成される。湿度推定係数記憶部6dは、湿度推定係数を含むデータ項目を有する複数のレコードを保持するテーブル(以下、湿度推定テーブルという)を格納している。湿度推定係数は、湿度推定テーブルのデータ項目の一つとして湿度推定係数記憶部6dに記憶されている。湿度推定テーブルに保持されたレコードの湿度推定係数は、給気制御処理において制御処理部6aに読み出される。
【0025】
図2は、湿度推定テーブルT1が保持するレコードのデータ項目の一例を示す図である。
図2に示すように、レコードは、例えば地域コード(ID)、該地域コードに対応して設定された地域名、および湿度推定係数をデータ項目として有する。湿度推定係数は、地域コードに対応した地域(具体的には対象地域)の気温に対する外気の絶対湿度の推定に用いられる係数である。
図2に示す例では、一つの地域コードに対して五つの湿度推定係数(A0~A4)が設定されている。これらの湿度推定係数は、例えば対象地域における気象統計情報の気温と湿度(絶対湿度)の関係を示す関数から予め設定されている。
図2には、鹿児島市、東京23区、仙台市の三地域にそれぞれ設定された五つの係数(A0~A4)の各値の一例を示す。
図2に示す例における三地域の地域コード(ID)および地域コードに対応して設定された地域名は、鹿児島市が「462」および「Kagoshima」、東京23区が「131」および「Tokyo」、仙台市が「041」および「Sendai」である。
【0026】
以上のような構成を備えた空調制御システム10において、制御装置6の制御処理部6aが行う給気制御処理について、制御処理部6aの制御フローに従って説明する。
図3には、給気制御処理時における制御処理部6aの制御フローを示す。
【0027】
給気制御処理にあたって、制御処理部6aは、すべての空調機2(本実施形態では空調機21~2n。以下同様)の運転モードの設定状態を、通信制御部6bを介して取得する(S01,S02)。その際、制御処理部6aは、すべての空調機2の運転モードの設定値が取得されているか否かを判定する(S01)。運転モードの設定値が未取得の空調機2が存在する場合(S01においてNo)、制御処理部6aは、かかる空調機2の運転モードの設定値を該空調機2の運転モード保持部2aから取得する(S02)。制御処理部6aは、すべての空調機2の運転モードの設定値が取得されるまで(S01においてYes)、このような運転モードの設定値の取得を繰り返す(S02)。
【0028】
続いて、制御処理部6aは、外気温度を取得する(S03)。外気温度は、外調機4の外気温度検出部4dによって検出されており、制御処理部6aは、通信制御部6bを介して外気温度検出部4dが検出した外気温度の検出値を取得する。
【0029】
ここで、制御処理部6aは、外気の湿度(相対湿度)が取得可能であるか否かを判定する(S04)。本実施形態では、外気の相対湿度を検出する湿度センサなどの外気湿度検出部を備えていない空調制御システム10を想定している。したがって、制御処理部6aは、ここでは外気の相対湿度が取得不可と判定する(S04においてNo)。ただし、空調制御システム10は前記外気湿度検出部を備えた形態であってもよい。例えば、前記外気湿度検出部が外調機4などに備えられている場合、制御処理部6aは外気の相対湿度が取得可能と判定する(S04においてYes)。この場合、制御処理部6aは、前記外気湿度検出部から外気の相対湿度の検出値を取得する(S05)。なお、対象地域が同一であるか異なるかを問わず、空調制御システム10で空調態様が制御される複数の店舗が存在する場合、各店舗において前記外気湿度検出部の存否は一致していても、一致していなくともよい。
【0030】
次いで、制御処理部6aは、設定値決定処理を行う(S06)。設定値決定処理は、空調機2の運転モードのコンフリクトを解消するとともに、外調機4に設定する運転モード、給気風量、および給気温度の各設定値をそれぞれ算出するための処理である。
図4には、設定値決定処理時における制御処理部6aの制御フローを示す。
【0031】
設定値決定処理にあたって、制御処理部6aは、空調機2の運転モードのコンフリクトを解消させ、すべての空調機2の運転モードを一致させる(S101)。コンフリクトは、各空調機21~2nの運転モードが一致しておらず、異なっている状態である。各空調機21~2nにおいて運転モードのコンフリクトを解消させる際、制御処理部6aは運転モードの優先順位に従って、より上位の運転モードにすべての空調機2の運転モードを合わせる。本実施形態では、暖房モードが最も優先順位が高く、次いで冷房モードであり、停止モードが最も優先順位が低い。
【0032】
図5には、空調機2が二台(メインとサブ)である場合における運転モードのコンフリクト解消結果の例を示す。
図5に示すように、メインとサブの二台の空調機2の双方が停止モード、冷房モード、および暖房モードのいずれか同一の運転モードで動作している場合、制御処理部6aは、該同一の運転モードで二台の空調機2の動作を継続させる。これに対し、メインとサブの二台の空調機2が異なる運転モードで動作している場合、制御処理部6aは、メインとサブのうち、下位の運転モードで動作している一方を他方の運転モード(上位の運転モード)に変更して動作させる。その際、制御処理部6aは、運転モードを変更して動作させる空調機2の運転モード保持部2aに保持された設定値を新たな運転モードの設定値に書き換える。
【0033】
例えば、二台の空調機2のうち、メインが停止モード、サブが冷房モードで動作している場合、メインの運転モードが冷房モードに変更される。逆に、二台の空調機2のうち、メインが冷房モード、サブが停止モードで動作している場合、サブの運転モードが冷房モードに変更される。また例えば、二台の空調機2のうち、メインが冷房モードもしくは停止モード、サブが暖房モードで動作している場合、メインの運転モードが暖房モードに変更される。逆に、二台の空調機2のうち、メインが暖房モード、サブが冷房モードもしくは停止モードで動作している場合、サブの運転モードが暖房モードに変更される。
【0034】
このように運転モードのコンフリクトを解消させると、制御処理部6aは、外気の湿度(相対湿度)が取得されているか否かを判定する(S102)。本実施形態では、上述したように外気湿度検出部を備えていない空調制御システム10を想定しているため、制御処理部6aは、ここでは外気の相対湿度の取得なしと判定する(S102においてYes)。ただし、前記外気湿度検出部が外調機4などに備えられ、該外気湿度検出部から外気の相対湿度の検出値を取得している場合(S05)、制御処理部6aは外気の相対湿度の取得ありと判定する(S102においてNo)。
【0035】
外気の相対湿度の取得なしと判定した場合(S102においてYes)、制御処理部6aは、外気の相対湿度を推定する(S103)。かかる推定にあたって、制御処理部6aは、地域記憶部6cに記憶されたレコードを読み出し、該レコードから例えば対象地域の地域コード(ID)を取得する。また、制御処理部6aは、取得した地域コード(ID)をキーとして湿度推定係数記憶部6dに記憶された湿度推定テーブルT1(
図2)のレコードを読み出し、該レコードから対象地域の湿度推定係数(A0~A4)の値を取得する。次いで、制御処理部6aは、取得した対象地域の湿度推定係数(A0~A4)の値、および外気温度(To)の値に基づき、以下の式(1)を用いて、対象地域の気温に対する絶対湿度(Xo)の値を算出する。外気温度(To)の値は、上述したS03において取得された値(外気温度検出部4dによって検出された検出値)である。なお、式(1)において、^はべき乗を示す。
Xo=A4×To^4+A3×To^3+A2×To^2+A1×To+A0 …(1)
【0036】
絶対湿度(Xo)を算出すると、制御処理部6aは、算出した絶対湿度(Xo)の値、および外気温度(To)の値に基づき、以下の式(2)を用いて、飽和水蒸気圧(Pws)の値を算出する。なお、式(2)において、^はべき乗を示す。
Pws=0.1×6.11×10^(7.5×To/(To+237.3)) …(2)
【0037】
続けて、制御処理部6aは、算出した飽和水蒸気圧(Pws)の値、および絶対湿度(Xo)の値に基づき、以下の式(3)を用いて、外気の相対湿度(Ho)の値を算出する。
Ho=101.3×Xo×100/(Xo+0.62198)/Pws …(3)
【0038】
制御処理部6aは、算出した値を外気の相対湿度(Ho)の値として推定する。
【0039】
外気の相対湿度(Ho)の値を推定すると、制御処理部6aは、外気の不快指数および露点温度を算出する(S104)。また、S102において外気の相対湿度の取得ありと判定した場合(S102においてNo)、制御処理部6aは、同様に外気の不快指数および露点温度を算出する(S104)。この場合、外気の相対湿度(Ho)の値は、例えば外気湿度検出部から取得した外気の相対湿度の検出値である(S05)。制御処理部6aは、外気温度(To)の値および外気の相対湿度(Ho)の値に基づき、以下の式(4)を用いて、外気の不快指数(DI)の値を算出する。
DI=To×0.81+0.01×Ho×(0.99×To-14.3)+46.3 …(4)
【0040】
また、制御処理部6aは、算出した飽和水蒸気圧(Pws)の値、および外気の相対湿度(Ho)の値に基づき、以下の式(5)を用いて、外気の露点温度(DPT)の値を算出する。
DPT=-(RES×273.3)/(RES-17.2693882) …(5)
ただし、RESの値は、以下の式(6)を用いて算出される。なお、式(6)において、Logは自然対数を示す。
RES=Log(Pws×10×Ho/100/6.1078) …(6)
【0041】
そして、制御処理部6aは、外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各設定値をそれぞれ決定する(S105,S106,S107)。なお、
図4に示す制御フローの例では、外調機4の運転モードの決定(S105)、給気風量の決定(S106)、給気温度の決定(S107)をこの順番でそれぞれ行っているが、決定順序はこの順番に限定されない。
【0042】
これらの決定にあたって、制御処理部6aは、設定値決定テーブルT2を参照する。
図6には、設定値決定テーブルT2の一例を示す。設定値決定テーブルT2は、外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各設定値と、外気の不快指数(DI)、露点温度(DPT)、および空調機2の運転モードの各値との対応関係を示すテーブルである。外気の不快指数(DI)および露点温度(DPT)の値は、上述したS104で算出された値を参照する。空調機2の運転モードの値は、コンフリクト解消後の運転モードの値、つまり上述したS101において制御処理部6aがすべての空調機2において一致させた運転モードに対応する値である。設定値決定テーブルT2は、例えば制御装置6の記憶装置に格納されている。制御処理部6aは、外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各設定値を決定する際、設定値決定テーブルT2を制御装置6の記憶装置からメモリに読み出す。
【0043】
制御処理部6aは、設定値決定テーブルT2を参照し、外気の不快指数(DI)、露点温度(DPT)、および空調機2の運転モードの各値に応じて、外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各設定値をそれぞれ決定する。
【0044】
例えば、外気の不快指数(DI)が57未満、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]未満、かつ空調機2の運転モードが暖房モードもしくは停止モードである場合、制御処理部6aは、外調機4の運転モードを暖房モード、給気風量を弱とする。また、この場合、制御処理部6aは、給気温度(T
SA)の値を外気温度(To)の値にΔTの値を加算した値とする。ΔTは、給気温度(T
SA)の補正値であり、
図6に示す設定値決定テーブルT2の例では12[℃]である。ただし、ΔTの値としては、任意の値を適用可能である。さらに、給気温度(T
SA)の算出値は、下限値を12[℃]、上限値を18[℃]として補正される。
【0045】
外気の不快指数(DI)が57以上70未満、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]未満である場合、空調機2の運転モードに関わらず、制御処理部6aは、外調機4の運転モードを送風モード、給気風量を急とする。また、この場合、制御処理部6aは、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値とする。すなわちこの場合、給気温度(TSA)の値は、外気温度(To)の値に対して補正されない。
【0046】
外気の不快指数(DI)が57以上70未満、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]以上である場合、空調機2の運転モードが暖房モードであれば、制御処理部6aは、外調機4の運転モードを送風モード、給気風量を弱とする。また、この場合、制御処理部6aは、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値に設定する。すなわちこの場合も、給気温度(TSA)の値は、外気温度(To)の値に対して補正されない。
【0047】
同様に外気の不快指数(DI)が57以上70未満、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]以上である場合、空調機2の運転モードが停止モードもしくは冷房モードであれば、制御処理部6aは、外調機4の運転モードを冷房モード、給気風量を弱とする。また、この場合、制御処理部6aは、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値にΔTの値(一例として、12[℃])を減算した値とする。さらに、給気温度(TSA)の算出値は、下限値を14[℃]、上限値を22[℃]として補正される。
【0048】
さらに、外気の不快指数(DI)が70以上、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]以上である場合、空調機2の運転モードが停止モードもしくは冷房モードであれば、制御処理部6aは、外調機4の運転モードを冷房モード、給気風量を弱とする。また、この場合、制御処理部6aは、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値にΔTの値(一例として、12[℃])を減算した値とする。さらに、給気温度(TSA)の算出値は、下限値を14[℃]、上限値を22[℃]として補正される。
【0049】
外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各値を決定すると、制御処理部6aは、設定値決定処理を終了し、
図3に示すように給気制御処理を引き続き行う。
制御処理部6aは、設定値決定処理で決定した外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の各値を外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の設定値としてそれぞれ設定する(S07,S08,S09)。なお、
図3に示す制御フローの例では、外調機4の運転モードの設定(S07)、給気風量の設定(S08)、給気温度の設定(S09)をこの順番でそれぞれ行っているが、設定順序はこの順番に限定されない。
【0050】
外調機4の運転モードの設定にあたって、制御処理部6aは、外調機4の運転モード保持部4aが保持する運転モードの設定値を、決定した運転モードの値に通信制御部6bを介して書き換える。すなわち、運転モード保持部4aが保持する運転モードの設定値は、設定値決定処理で決定された値に設定される(S07)。これにより、外調機4は、運転モード保持部4aに保持された設定値に対応する運転モードで動作する。
【0051】
外調機4の給気風量の設定にあたって、制御処理部6aは、外調機4の給気風量保持部4bが保持する給気風量値を、決定した給気風量の値に通信制御部6bを介して書き換える。すなわち、給気風量保持部4bが保持する給気風量値は、設定値決定処理で決定された値に設定される(S08)。これにより、外調機4は、給気風量保持部4bに保持された設定値に対応する給気風量で空調機2に給気する。
【0052】
外調機4の給気温度の設定にあたって、制御処理部6aは、外調機4の給気温度保持部4cが保持する給気温度の設定値を、決定した給気温度の値に通信制御部6bを介して書き換える。すなわち、給気温度保持部4cが保持する給気温度の設定値は、設定値決定処理で決定された値に設定される(S09)。これにより、外調機4は、給気温度保持部4cに保持された設定値(給気温度)で空調機2に給気する。
【0053】
外調機4の運転モード、給気風量、および給気温度の設定値をそれぞれ設定すると(S07,S08,S09)、制御処理部6aは、設定値決定処理(S101~S107)を含む一連の給気制御処理(S01~S09)を終了する。そして、制御処理部6aは、空調制御システム10が稼働している間、換言すれば空調機2および外調機4が動作している間、所定間隔で給気制御処理を繰り返す。所定間隔は任意に設定可能であり、例えば15分間隔などである。この場合には、15分に一回、給気制御処理(S01~S09)が実行される。
【0054】
このように本実施形態によれば、外気の温度(To)および相対湿度(Ho)に基づいた所定条件、具体的には外気の不快指数(DI)および露点温度(DPT)の値に応じて外調機4の運転モード、給気風量および給気温度を設定できる。かかる所定条件は、空調制御システム10で空調態様が制御される建屋、本実施形態ではコンビニエンスストア等の店舗、つまり対象地域によって、さらに対該象地域の季節によっても異なる。したがって、本実施形態によれば、外調機4の運転モード、給気風量および給気温度を、対象地域さらには該対象地域の季節に合わせて柔軟に設定する(変える)ことが可能となる。加えて、外気の不快指数(DI)および露点温度(DPT)の値に加えて空調機2の運転モードも考慮することで、より柔軟に外調機4の運転モード、給気風量および給気温度を対象地域に合わせて適切に設定できる。
【0055】
例えば夏季のように、外気の不快指数(DI)が70以上、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]以上である高温高湿度の状況下において、空調機2が冷房モードで動作している場合、外調機4の運転モードを冷房モード、給気風量を弱、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値から12[℃]だけ減じた値とすることが可能となる。さらにこの場合、給気温度(TSA)は下限値が14[℃]、上限値が22[℃]の範囲で補正されるため、外調機4による除湿効果と消費電力の削減効果をいずれも高めることができる。
【0056】
また、例えば冬季のように、外気の不快指数(DI)が57未満、かつ外気の露点温度(DPT)が14[℃]未満である状況下において、空調機2が暖房モードで動作している場合、外調機4の運転モードを暖房モード、給気風量を弱、給気温度(TSA)の値を外気温度(To)の値に12[℃]だけ加えた値とすることが可能となる。さらにこの場合、給気温度(TSA)は下限値が12[℃]、上限値が18[℃]の範囲で補正されるため、空調機2の空調負荷を軽減できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
2,21,2n…空調機、2a…運転モード保持部、4…外調機、4a…運転モード保持部、4b…給気風量保持部、4c…給気温度保持部、4d…外気温度検出部、6…制御装置、6a…制御処理部、6b…通信制御部、6c…地域記憶部、6d…湿度推定係数記憶部、10…空調制御システム。