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特開2023-142830ワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142830
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20230928BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049945
(22)【出願日】2022-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.発行者名:山梨大学 刊行物名:2021年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科 卒業論文発表会 予稿集 発行年月日:2022年(令和4年)2月21日 2.集会名:2021年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科 卒業論文発表会 開催日:2022年(令和4年)2月21日 資料名:結合コイルを用いた3次元ワイヤレス電力伝送の研究
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】關谷 尚人
(57)【要約】
【課題】コストアップを抑制することができるワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法を提供することを目的としている。
【解決手段】高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、少なくとも3つの給電コイルを有し、前記給電コイルは、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置され、前記給電コイルは、同一の共振周波数を有し、それらを結合させることで予め定められたモード周波数をもつ振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記給電コイルを前記振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、
前記励振器は、第1励振コイルを有し、
前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、少なくとも3つの給電コイルを有し、
前記給電コイルは、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置され、
前記給電コイルは、同一の共振周波数を有し、それらを結合させることで予め定められたモード周波数をもつ振動モードが生成され、
前記高周波電源は、前記振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記給電コイルを前記振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記給電コイルは、平面状または滑らかな曲面状に形成される、ワイヤレス給電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、各前記給電コイルを正面視したときにおいて、各前記給電コイルに同じ向きの電流が流れるような前記振動モードで前記給電コイルが共振するように、前記第1励振コイルに電力を供給する、ワイヤレス給電装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、発生する磁界の向きが異なる複数の前記振動モードで前記給電コイルが共振するように、前記第1励振コイルに供給される電力の周波数を変える、ワイヤレス給電装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記給電共振器は、4つの前記給電コイルを有する、ワイヤレス給電装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1励振コイルは、前記給電コイルの内側に配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項7】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記励振器は、第2励振コイルを更に有し、
前記第1励振コイルは、前記基準軸における周方向において、隣接する一対の前記給電コイルの間に挟まれるように配置され、
前記第2励振コイルは、前記基準軸における周方向において、前記第1励振コイルを挟む一対の前記給電コイルとは異なる一対の前記給電コイルの間に挟まれるように配置され、且つ、前記第2励振コイルは、前記第1励振コイルに略直交又は直交するように配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項8】
請求項7に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、前記第1及び第2励振コイルに対して交互に電力を供給する、ワイヤレス給電装置。
【請求項9】
請求項7に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、前記第1及び第2励振コイルに同時に電力を供給し、
前記第1励振コイルに供給される電力と前記第2励振コイルに供給される電力とは、予め定められた位相差を有する、ワイヤレス給電装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記給電コイルは、平面視形状が三角形、平行四辺形、矩形、多角形、円形またはこれらの組合せの形状を有するスパイラルコイルで構成されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
少なくとも3つのパーティションを更に備え、
各前記パーティション内には、各前記給電コイルが設けられている、ワイヤレス給電装置。
【請求項12】
高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、
共振ステップを備え、
前記励振器は、第1励振コイルを有し、
前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、少なくとも3つの給電コイルを有し、
前記給電コイルは、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置され、
前記給電コイルは、同一の共振周波数を有し、それらを結合させることで予め定められたモード周波数をもつ振動モードが生成され、
前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記給電コイルを前記振動モードで共振させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノのインターネット(IoT: Internet of Things)の普及に伴い、様々な機器がインターネットに接続されるようになってきている。これらの機器には定期的な充電や電池交換を要し、電力供給のコストの問題が顕在化している。そこで、近年、3次元空間のあらゆる位置にある機器へのワイヤレス電力伝送(WPT: Wireless Power Transfer)が注目されている。WPTの中には、マイクロ波送電方式があるが、この方式は、3次元空間を介して電力を供給することが可能である一方、効率が非常に悪く、大きな電力を供給することができないという問題がある。これに対して、マイクロ波フィルタ等によく用いられる空洞共振器を部屋サイズに拡張し、部屋内(空洞共振器内)の広範囲にわたって大きな電力を送電する方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T. Sasatani et el "Multimode quasistatic cavity resonators for wireless power transfer," IEEE Antennas and wireless propagation letters, vol. 16, pp. 2746-2749, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の技術は、金属で構成される空洞共振器のサイズを大型して、ワイヤレス給電を実現したい空間を空洞共振器で囲む必要があり、コスト面での課題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コストアップを抑制することができるワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、少なくとも3つの給電コイルを有し、前記給電コイルは、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置され、前記給電コイルは、同一の共振周波数を有し、それらを結合させることで予め定められたモード周波数をもつ振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記給電コイルを前記振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置された少なくとも3つの給電コイルを、予め定められたモード周波数をもつ振動モードで共振させることで磁界を発生させてワイヤレス給電を行う方式であり、部屋サイズまで大型化したような空洞共振器が必要なく、コイルを対象となる空間に設ければ足りるため、コストアップを抑制することができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記給電コイルは、平面状または滑らかな曲面状に形成される、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、各前記給電コイルを正面視したときにおいて、各前記給電コイルに同じ向きの電流が流れるような前記振動モードで前記給電コイルが共振するように、前記第1励振コイルに電力を供給する、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、発生する磁界の向きが異なる複数の前記振動モードで前記給電コイルが共振するように、前記第1励振コイルに供給される電力の周波数を変える、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記給電共振器は、4つの前記給電コイルを有する、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1励振コイルは、前記給電コイルの内側に配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記励振器は、第2励振コイルを更に有し、前記第1励振コイルは、前記基準軸における周方向において、隣接する一対の前記給電コイルの間に挟まれるように配置され、前記第2励振コイルは、前記基準軸における周方向において、前記第1励振コイルを挟む一対の前記給電コイルとは異なる一対の前記給電コイルの間に挟まれるように配置され、且つ、前記第2励振コイルは、前記第1励振コイルに略直交又は直交するように配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、前記第1及び第2励振コイルに対して交互に電力を供給する、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、前記第1及び第2励振コイルに同時に電力を供給し、前記第1励振コイルに供給される電力と前記第2励振コイルに供給される電力とは、予め定められた位相差を有する、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記給電コイルは、平面視形状が三角形、平行四辺形、矩形、多角形、円形またはこれらの組合せの形状を有するスパイラルコイルで構成されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、少なくとも3つのパーティションを更に備え、各前記パーティション内には、各前記給電コイルが設けられている、ワイヤレス給電装置が提供される。
本発明の実施形態の別の観点によれば、高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、共振ステップを備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、少なくとも3つの給電コイルを有し、前記給電コイルは、予め定められた基準軸における径方向に沿うように略放射状又は放射状に配置され、前記給電コイルは、同一の共振周波数を有し、それらを結合させることで予め定められたモード周波数をもつ振動モードが生成され、前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記給電コイルを前記振動モードで共振させる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るワイヤレス給電装置100の全体構成を示す模式図である。
図2図2Aは、図1に示すパーティションp1~p3の斜視図である。図2Bは、図2Aに示すパーティションp1~p3を取り除き、給電コイル31~33及び励振コイル21を露出させた状態を示す斜視図である。
図3図3は、給電コイル31及び励振コイル21の平面図である。
図4図4Aは、電磁界シミュレータ(給電コイルの高さ幅90cm,横幅90cm)の計算結果であって、本振動モードにおける磁界の強さを示す分布図である。図4Aでは、給電コイル31~33の高さ方向の中央位置(図3の座標z2)における水平面の磁界の強さを示している。図4Aでは、色が濃いほど、磁界が強いことを示しており、また、符号Sg1は、図3に示すコイル部分X1を通る電流の向きを示し、符号Sg2は、図3に示すコイル部分X2を通る電流の向きを示している(以下の図6等も同様)。図4Bは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図4Aと同じ水平面における、図4Aに示す振動モードの磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。図4Bでは、矢印の方向が各箇所の磁界の方向を示しており、矢印の色が濃いほど、磁界が強いことを示している(以下の図6等も同様)。
図5図5Aは、給電コイル31~33における高さ方向の中央位置から15cm高い位置における、水平面の磁界の強さを示している。図5Bは、給電コイル31~33における高さ方向の中央位置から30cm高い位置における、水平面の磁界の強さを示している。
図6図6Aは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図4A及び図4Bとは異なる振動モード(周波数が図4A及び図4Bの振動モードの周波数より高い)における磁界の強さを示す分布図である。図6Aでは、給電コイル31~33の高さ方向の中央位置における水平面の磁界の強さを示している。図6Bは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図6Aと同じ水平面における、図6Aに示す振動モードの磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図7図7は、実施形態に係るワイヤレス給電装置100の変形例1の全体構成を示す模式図である。
図8図8Aは、図7に示すパーティションp1~p4の斜視図である。図8Bは、図8Aに示すパーティションp1~p4を取り除き、給電コイル31~34及び励振コイル21を露出させた状態を示す斜視図である。
図9図9A図9Dは、電磁界シミュレータの計算結果であって、4つの振動モード(周波数は、低い方から順番に図9A図9B図9C及び図9D)における磁界の強さを示す分布図である。図9A図9Dでは、給電コイル31~34の高さ方向の中央位置における水平面の磁界の強さを示している。
図10図10A図10Dは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図9A図9Dと同じ水平面における、図9A図9Dに示す振動モードの磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図11図11は、実施形態に係るワイヤレス給電装置100の変形例2の全体構成を示す模式図である。
図12図12Aは、電磁界シミュレータの計算結果であって、励振コイル21を使用しているときにおける磁界の強さを示す分布図である。図12Bは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図12Aと同じ水平面における、図12Aに示す振動モードの磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。図12Cは、電磁界シミュレータの計算結果であって、励振コイル22を使用しているときにおける磁界の強さを示す分布図である。図12Dは、電磁界シミュレータの計算結果であって、図12Cと同じ水平面における、図12Cに示す振動モードの磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。図12A及び図12Cでは、給電コイル31~34の高さ方向の中央位置における水平面の磁界の強さを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1 実施の形態
1-1 全体構成説明
図1及び図2Aに示すように、実施形態に係るワイヤレス給電装置100は、例えば、オフィス等の空間に配置されるパーティション(建築物の内部空間を区切る仕切板)に適用されている。図1図2Bに示すように、ワイヤレス給電装置100は、高周波電源1と、励振器2と、給電共振器3と、パーティションp1~p3とを備えている。ワイヤレス給電装置100は、充電対象である各種装置(受電側の装置)に対して、3次元空間を隔てて充電可能な磁界結合方式を採用している。
充電対象である各種装置は、例えば、オフィス等に配置される電化製品(携帯電話、パソコン、照明等)である。なお、実施形態では、ワイヤレス給電装置100がパーティションに適用されているものとして説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、工場に適用され、工場の電動工具の給電に用いられてもよい。その他に、実施形態は、IoT社会に欠かせない各種センサ類への非接触給電や、カプセル内視鏡等の体内医療機器の非接触給電にも適用することが可能である。
【0012】
ワイヤレス給電装置100は、複数の給電コイル(後述する給電コイル31~33)を結合(電磁界結合)させることが可能となっている。そして、複数の給電コイルが結合することで、複数の給電コイルには、異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成される。具体的には、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル21を使用することで図4A及び図4Bに示すような振動モードと、図6A及び図6Bに示すような振動モードとを生成することができる。
【0013】
1-2 高周波電源1
図1に示すように、高周波電源1は、励振器2を介して給電共振器3を励振するように構成されている。つまり、高周波電源1は、その出力信号を励振器2に出力し、励振器2は、給電共振器3に電磁的に結合する。高周波電源1は、後述する励振器2の励振コイル21に接続されている。高周波電源1の制御は、不図示の制御装置によって制御される。
【0014】
1-3 励振器2
図2B及び図3に示すように、励振器2は、励振コイル21を備えている。励振コイル21は、高周波電源1に電気的に接続されており、高周波の交流電力が供給されるように構成されている。励振コイル21は、第1励振コイルの一例である。励振コイル21は、給電コイル31~33を励振させる機能を有する。つまり、高周波電源1が、振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル21に供給すると、給電コイル31~33が励振される。
【0015】
励振コイル21の構成(形状)は、特に限定されるものではないが、後述する給電コイル31~33と電磁界結合を形成しやすい形状や大きさであることが好ましい。実施形態では、励振コイル21の形状は、円形状である。また、実施形態において、励振コイル21は、給電コイルのうちの1つ(実施形態では給電コイル31)の内側に配置されている。換言すると、励振コイル21の周囲は、給電コイル31に取り囲まれるように設けられている。また、励振コイル21は、給電コイル31が配置される平面と同じ平面上に配置されている。更に、実施形態において、励振コイル21の中心位置は、給電コイル31の中心位置に一致又は略一致している。
【0016】
1-4 給電共振器3
図2B及び図3に示すように、給電共振器3は、給電コイル31~33を備えている。各給電コイル31~33の構成(形状)は、同じであり、同一の共振周波数を有する。また、ワイヤレス給電装置100は、給電コイル31~33を結合(電磁界結合)させることが可能となっており、給電コイル31~33が結合することで、給電コイル31~33には、異なる共振周波数をもつ振動モードが生成される。
具体的には、共振周波数が低い方の振動モード(図4A及び図4B:共振周波数は例えば1.57MHz)と、共振周波数が高い方の振動モード(図6A及び図6B:共振周波数は例えば1.64MHz)を生成することができる。
【0017】
実施形態では、各給電コイル31~33の構成(形状)は、同じであるため、給電コイル31を例に給電コイルの形状を説明する。
図3に示すように、給電コイル31は、平面状又は滑らかな曲面状に形成することができる。実施形態では、給電コイル31は、平面状に形成されている。
また、給電コイル31は、平面視形状が、三角形、平行四辺形、矩形、多角形、円形またはこれらの組合せの形状を有するコイルで構成することができる。実施形態では、給電コイル31は、平面視形状が、矩形となっており、高さ方向において領域Sp1の磁界強度のムラが生じることを抑制することができる(図4A図5A及び図5B参照)。更に、各給電コイル31は、スパイラルコイルで構成されている。すなわち、給電コイル31は、導線が平面的にスパイラル状に巻かれて形成されたコイルで構成されている。換言すると、給電コイル31は、内側端部s及び外側端部tを有する非環状のコイルである。実施形態では、図3に示すように、給電コイル31の導線の巻回し方向は、外側端部tから内側端部sに向かう方向において時計回りである。
【0018】
放射状に配置されるパーティションp1~p3の基準軸O(中心位置)は、パーティションp1~p3を上面視したときにおいて、各パーティションp1~p3の全体に重なる各仮想線を引いたとき、3つの仮想線が交わる位置における、垂直方向の軸として定義することができる。
【0019】
給電コイル31~33は、図1に示すように、基準軸Oにおける径方向に沿うように放射状に配置されている。実施形態では、基準軸Oから各給電コイル31~33までの距離(基準軸Oから各給電コイル31~33のうち最も内側に位置する導線までの距離)は、同じである。給電コイル31~33が基準軸Oにおける径方向に沿うように放射状に配置されていることで、ワイヤレス給電装置100は、給電コイル31~33の内側の空間Spにおける所望の領域に均一な磁界を発生させることができ、効果的に給電することができる。ワイヤレス給電装置100は、複数の振動モードを実行可能に構成されているが、その中の特に図4A及び図4Bに示す振動モードでは、パーティションp1~p3の間の空間Spのうち基準軸O寄りの領域Sp1に重点的且つ均一な磁界を形成することができる。
なお、給電コイル31~33は、基準軸Oにおける径方向に沿うように完全に放射状に配置されていなくてもよい。つまり、給電コイル31~33は、略放射状(基準軸Oにおける径方向に平行ではなく、当該径方向からずれている)に配置されていてもよい。
【0020】
図2Bに示すように、各給電コイル31~33は、基準軸Oを中心として、等角度で並ぶように配置されている。つまり、給電コイル31と給電コイル32は120度をなすように配置されている。そして、給電コイル32と給電コイル33とのなす角度、及び、給電コイル32と給電コイル33とのなす角度も同様に120度である。
なお、実施形態では、各給電コイル31~33は、基準軸Oを中心として、等角度(120度)で並ぶように配置されているものとして説明しているが、これに限定されるものではない。各給電コイルのなす角度にある程度ばらつきがあってもよい。各給電コイル31~33のなす角度は、具体的には例えば、100,105,110,115,120,125,130,135,140であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。換言すると、例えば、給電コイル31と給電コイル32とが、100度をなし、給電コイル32と給電コイル33とが、100度をなし、給電コイル33と給電コイル31とが、160度をなしていてもよい。また、例えば、給電コイル31と給電コイル32とが、90度をなし、給電コイル32と給電コイル33とが、90度をなし、給電コイル33と給電コイル31とが、180度をなしていてもよい。
【0021】
次に、給電コイル31や励振コイル21の各種寸法や基準軸Oに対する位置関係について説明する。以下に説明する構成とすることで、特に、図4A及び図4Bに示す振動モードで発生する磁界を領域Sp1に局在化させる効果を期待できる。なお、給電コイル32,33も同様であるため、ここでは、給電コイル31について言及する。図3に示すように、径方向の座標系r及び垂直方向の座標系zを定義する。このとき、図3に示す各種座標は以下の通りである。なお、座標系rは、基準軸Oから水平方向に延びる方向の座標系である。また、座標系zは、基準軸Oに重なっている。
・座標r0は、座標系rにおける基準軸Oに対応している。
・座標r1は、座標系rにおいて、給電コイル31のうち最も内側の部分の位置に対応している。
・座標r2は、座標系rにおいて、励振コイル21の中心位置Cに対応している。
・座標r3は、座標系rにおいて、給電コイル31のうち最も外側の部分の位置に対応している。
・座標z0は、パーティションp1~p3の設置面の高さ位置に対応している。
・座標z1は、給電コイル31の下端部の高さ位置に対応している。
・座標z2は、励振コイル21の中心位置Cの高さ位置に対応している。
・座標z3は、給電コイル31の上端部の高さ位置に対応している。
【0022】
給電コイル31の縦幅(座標z3と座標z1の差)は、具体的には例えば、50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
給電コイル31の横幅(座標r3と座標r1の差)は、具体的には例えば、50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
実施形態では、給電コイル31の縦幅及び給電コイル31の横幅は、概ね同じであるものとして説明している、これに限定されるものではなく、異なっていてもよい。
【0023】
基準軸Oから給電コイル31までの距離(座標r1と座標r0の差)は、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
設置面から給電コイル31の下端部までの距離(座標z1と座標z0の差)は、具体的には例えば、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
基準軸Oから中心位置Cまでの距離(座標r2と座標r0の差)は、具体的には例えば、26,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
接置面から中心位置Cまでの距離(座標z2と座標z0の差)は、具体的には例えば、55,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
給電コイル31の巻数は、具体的には例えば、6,10,14,18,22,26,30,34,38,42,46,50,54,58,62,66,70,74,78,82,86,90,94,98であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
給電コイル31を構成する導線の線間距離(ピッチ)は、具体的には例えば、3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20(mm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、給電コイル31を構成する導線の線間距離(ピッチ)は、均一でもいいし、不均一であってもよい。給電コイル31を構成する導線の線間距離(ピッチ)が不均一である場合には、各ピッチが、上記で例示した数値の何れか2つの間の範囲内に収まっていればよい。
給電コイル31を構成する導線の径は、具体的には例えば、1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0(mm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
励振コイル21の径(直径)は、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150(cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、励振コイル21の径(直径)は、給電コイル31よりも大きくてもよい。
【0027】
なお、実施形態では、ワイヤレス給電装置100が、オフィス等の空間に配置されるパーティションに適用されているものとして説明し、上述の通り、数値を一例として列挙しているが、これに限定されるものではなく、部屋サイズにまで拡大されたものであってもよい。
この場合には、上述した給電コイル31の縦幅、給電コイル31の横幅、基準軸Oから給電コイル31までの距離、設置面から給電コイル31の下端部までの距離、基準軸Oから中心位置Cまでの距離、給電コイル31の巻数、給電コイル31を構成する導線の線間距離(ピッチ)、及び給電コイル31を構成する導線の径に関して、上述で例示した数値及び当該例示した数値の何れか2つの間の範囲は、例えば、2倍、3倍、4倍、5倍であってもよい。
【0028】
1-5 パーティションp1~p3
図1図2Bに示すように、パーティションp1~p3は、オフィス等の各空間Spを区画するように構成されている。パーティションp1~p3は、例えば、パネル11~13や、パネル11~13が取り付けられる枠体(図示省略)等から構成されている。パーティションp1内には、給電コイル31及び励振コイル21が内蔵されており、パーティションp2,p3内には、給電コイル32,33が内蔵されている。なお、給電コイル31~33は、導電性の高い部材(金属等)に固定することができないため、各パーティションp1~p3は、誘電体で構成される固定部材を備えていてもよい。固定部材は、各パーティションp1~p3に設けられ、給電コイル31~33や励振コイル21を保持する機能を有する。
【0029】
1-6 その他構成:受電側の装置
受電側の装置(充電対象である各種装置)は、不図示のコイル(共振器)を備えている。受電側の装置が、空間Spに配置されると、受電側の装置のコイルが、給電共振器3の給電コイル31~33によって形成される磁界と結合する。これにより、高周波電源1の電力が、励振コイル及び給電コイルを介して受電側の装置に伝えられる。なお、受電側の装置への電力の供給にあたって、受電側のコイルが給電コイル31~33と必ずしも共振している必要はなく、電磁誘導で電力を供給するものであってもよい。
【0030】
2 振動モードの説明
ワイヤレス給電装置100は、共振ステップを実行可能に構成されている。共振ステップでは、高周波電源1が、上述した振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル21に供給して給電共振器3を励振させ、給電コイル31~33を当該振動モードで共振させる。
【0031】
2-1 基準軸O寄りの領域に集中的に磁界を発生させるモード(図4A及び図4B
図4A及び図4Bに示す振動モードは、空間Spのうち基準軸O寄りの領域Sp1に集中的に磁界を発生させることができる。なお、図4Aに示すように、各給電コイル31~33に流れる電流の向きは同じである。換言すると、高周波電源1は、各給電コイル31~33を正面視したときにおいて、各各給電コイル31~33には同じ向きの電流が流れるような振動モードで給電コイル31~33が共振するように、励振コイル21に所望の高周波電力を供給する。
図5A及び図5Bに示すように、水平面の高さ位置が変わると、全体的にやや磁界の強度は落ちるものの、図4Aに類似した磁界分布となる。本振動モードでは、図4Aに示す領域Sp1にデスクや電化製品(パソコン等)を配置することで、領域Sp1に存在する電化製品を効率的に充電することができる。また、人体は、領域Sp2に位置するため、磁界が弱められており、磁界が人体に影響を及ぼしてしまうことを回避することができる。
【0032】
2-2 給電コイル31に強い磁界を発生させるモード(図6A及び図6B
図6A及び図6Bに示す振動モードでは、励振コイル21が付設されている給電コイル31側の領域において、給電コイル32,33よりも相対的に強い磁界を発生させることができる。この振動モードは、給電コイル32と給電コイル33との間の空間Spに発生する磁界を抑え、給電コイル31と給電コイル32との間の空間Spや、給電コイル31と給電コイル33との間の空間Spに限定的に電力を送電したい場合に有効である。
【0033】
また、高周波電源1が、発生する磁界の向きが異なる複数の振動モードで給電コイル31~33が共振するように、励振コイル21に供給する電力の周波数を変えてもよい。つまり、図4A及び図4Bに示す振動モードと、図6A及び図6Bに示す振動モードとを切り替えることで、状況に応じた所望の領域に電力を送電することが可能である。これにより、ペースメーカーの医療機器等をつけている人がいても、当該機器に影響を与えることを回避することが可能である。
【0034】
3 実施形態の作用・効果
3-1 コスト抑制
実施形態では、複数の給電コイルを複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させることで磁界を発生させてワイヤレス給電行う方式を採用しており、原理的に広範囲に大きな電力を伝送することができる。従来技術(非特許文献1)では、部屋サイズまで大型化したような空洞共振器が必要であるのに対し、実施形態では、このような大掛かりな装置は不要であるため、コストアップを抑制することができる。
【0035】
3-2 発生させる磁界の局在化
実施形態は、給電コイル31~33及び励振コイル21を備えているので、特に、図4A及び図4Bの振動モードを生成可能である。この振動モードは、空間Spのうち基準軸O寄りの領域Sp1に重点的且つ均一な磁界を発生させることが可能である。換言すると、当該振動モードでは、限定的な箇所にワイヤレス充電に適した大きさの磁界を発生させることが可能である。このため、領域Sp1に受電側の装置を配置することで、効率的に送電が可能である。
図4A及び図4Bに示す振動モードは、空間Spに磁界に晒したくない対象が存在する場合に有効である。例えば、空間Spがオフィスである場合には、基準軸O寄りの位置(領域Sp1)にデスクや、電化製品(携帯電話、パソコン、照明等)を配置し、基準軸Oから離れた位置(領域Sp2)に人間が位置するように椅子等を配置することよい。これにより、人体は磁界に晒されず、例えば、ペースメーカーの医療機器等をつけている人がいても、当該機器に影響を与えることを回避することができる。
【0036】
3-3 電力の送電効率
実施形態では、磁界の向きを変えることが可能に構成されている。つまり、ワイヤレス給電装置100は、図4A及び図4Bの振動モードと図6A及び図6Bの振動モードとを切り替えることで空間Spに形成される磁界の向きを変更することができる。これにより、受電側の装置の向きに応じて磁界の向きを制御することができるので、受電側の装置の向きに起因して電力の送電効率が低下することを抑制することができる。
【0037】
4 変形例
4-1 変形例1:給電コイルが4つ+励振コイルが1つの形態
実施形態では、3つの給電コイル31~33が、基準軸Oにおける径方向に沿うように放射状に配置されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ワイヤレス給電装置100が4つ以上の給電コイルを備えていてもよい。図7図8Bに示すように、本変形例1では、4つの給電コイル31~34が、基準軸Oにおける径方向に沿うように放射状に配置されている。この形態であっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
図7図8Bに示すように、ワイヤレス給電装置100は、パーティションp4及び給電コイル34を更に備えている。そして、パーティションp4は、パーティションp1~p3と同様の構成であり、例えば、パネル14や、パネル14が取り付けられる枠体(図示省略)等から構成されている。
【0039】
本変形例1では、パーティションp1~p4(4つの給電コイル31~34)が、基準軸Oを中心として、等角度で並ぶように配置されている。換言すると、給電コイル31と給電コイル32は90度をなすように配置され、給電コイル32と給電コイル33とのなす角度、給電コイル32と給電コイル33とのなす角度、及び、給電コイル34と給電コイル31とのなす角度も同様に90度である。
なお、実施形態では、各給電コイル31~34は、基準軸Oを中心として、等角度(90度)で並ぶように配置されているものとして説明しているが、これに限定されるものではない。各給電コイルのなす角度にある程度ばらつきがあってもよい。各給電コイル31~34のなす角度は、具体的には例えば、具体的には例えば、70,75,80,85,90,95,100,105,110であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
本変形例1において、給電コイル31~34が結合することで、異なる共振周波数をもつ振動モードを4つ生成可能である。具体的には、共振周波数が最も低い振動モード(図9A及び図10A:共振周波数は例えば1.49MHz)と、共振周波数が2番目に低い振動モード(図9B及び図10B:共振周波数は例えば1.61MHz)と、共振周波数が2番目に高い振動モード(図9C及び図10C:共振周波数は例えば1.68MHz)と、共振周波数が最も高い振動モード(図9D及び図10D:共振周波数は例えば1.72MHz)とを生成することができる。
【0041】
図9A及び図10Aに示す振動モードは、実施形態において説明した図4A及び図4Bの振動モードに類似する振動モードである。つまり、各給電コイル31~34に流れる電流の向きは同じである。そして、本振動モードでは、空間Spのうち基準軸O寄りの領域Sp1に集中的に磁界を発生させることができる。本振動モードは、ペースメーカーの医療機器等をつけている人がいても、当該機器に影響を与えることを回避する効果がより顕著である。
【0042】
図9B及び図10Bに示す振動モードと、図9C及び図10Cに示す振動モードは、磁界の向きが90度異なる磁界分布となっている。
また、図9D及び図10Dに示す振動モードは、図9B及び図10Bに示す振動モード及び図9C及び図10Cに示す振動モードの磁界の弱い領域を含むような磁界分布となっている。
例えば、給電コイル31~34の周辺以外の領域について磁界を弱めたい場合には、これらの振動モードを組み合わせて使用(状況に応じて選択的に使用)することにより、より限定的な領域に電力を送電することが可能である。つまり、給電コイルが4つの場合、ペースメーカーの医療機器等をつけている人がいても、当該機器に影響を与えることを回避する効果がより高い。
また、給電コイルが4つの場合、磁界の向きの変更の自由度が増えおり、受電側の装置の向きに起因して電力の送電効率が低下することを効果的に抑制することができる。
【0043】
4-2 変形例2:給電コイルが4つ+励振コイルが2つの形態
図11に示すように、本変形例2に係るワイヤレス給電装置100は、2つの励振コイル21,22を備えている。励振コイル21は、パーティションp1と、パーティションp2との間に配置され、励振コイル22は、パーティションp2と、パーティションp3との間に配置されている。換言すると、励振コイル21は、基準軸Oにおける周方向において、隣接する一対の給電コイル31,32の間に挟まれるように配置されている。また、励振コイル22は、基準軸Oにおける周方向において、励振コイル21を挟む一対の給電コイル31,32とは異なる一対の給電コイル32,33の間に挟まれるように配置されている。つまり、励振コイル21,22は、周方向において、互いに隣接する空間Spに配置されている。なお、励振コイル21,22のうちの一方が第1励振コイルの一例であり、他方が第2励振コイルの一例である。
【0044】
本変形例では、給電コイル31~34及び励振コイル21,22を上面視したときにおいて、励振コイル22は、励振コイル21に略直交又は直交するように配置されている。また、給電コイル31~34及び励振コイル21,22を上面視したときにおいて、励振コイル21,22は、給電コイル31~34に対して、45度の角度をなすように配置されている。本変形例2では、変形例1のように、4つの振動モードは生成されないが、以下に説明するような2つの方法で励振コイル21,22を使用することが可能である。
【0045】
4-2-1 励振コイル21,22を選択的に駆動
第1の方法は、高周波電源1から励振コイル21,22に対して交互に電力を供給するものである。つまり、高周波電源1が、励振コイル21に電力を供給しているとき、励振コイル22には電力を供給しない(図12A及び図12B参照)。逆に、高周波電源1が、励振コイル22に電力を供給しているとき、励振コイル21には電力を供給しない(図12C及び図12D参照)。
ここで、図12A及び図12Bに示す磁界は、図12C及び図12Dに示す磁界に対して、90度方向がずれている。つまり、高周波電源1が、励振コイル21,22に対して交互に電力を供給することで、磁界の向きを90度変えることが可能である。このように、本変形例では、励振コイル21,22を選択的に駆動することによって、磁界分布の変更が可能(磁界が弱い部分を変更可能)である。加えて、非常に短い時間で励振コイル21,22交互にオンオフすることで、基準軸O寄りの領域Sp1において、周方向に均一な磁界を発生させることができる。
【0046】
4-2-2 励振コイル21,22を同時に駆動
第2の方法は、高周波電源1から励振コイル21,22に同時に電力を供給するものである。この場合、励振コイル21に供給される電力と励振コイル22に供給される電力とは、予め定められた位相差(本変形例では90度)を有する。これにより、基準軸O寄りの領域Sp1において、基準軸Oを中心として回転するような磁界を発生させることができる(不図示)。
【符号の説明】
【0047】
1 :高周波電源
2 :励振器
3 :給電共振器
11 :パネル
12 :パネル
13 :パネル
14 :パネル
21 :励振コイル
22 :励振コイル
31 :給電コイル
32 :給電コイル
33 :給電コイル
34 :給電コイル
100 :ワイヤレス給電装置
C :中心位置
O :基準軸
Sp1 :領域
Sp2 :領域
Sp :空間
p1 :パーティション
p2 :パーティション
p3 :パーティション
p4 :パーティション
s :内側端部
t :外側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12