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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142885
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電子機器および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/14 20090101AFI20230928BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20230928BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230928BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20230928BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20230928BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W64/00 120
H04W84/12
H04B17/318
H04W72/04 132
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050009
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】大類 信晃
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067BB04
5K067BB21
5K067DD11
5K067DD23
5K067EE02
5K067EE03
5K067EE10
5K067EE32
5K067EE61
5K067FF03
5K067FF16
5K067FF23
5K067HH22
5K067JJ03
5K067JJ14
5K067JJ31
5K067JJ56
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】より確実に利用可能な周波数帯の利用を促す。
【解決手段】通信部は所定の通信方式を用いて無線で通信を行い、制御部は少なくとも、前記通信において基地局から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯の通信用電波について、前記通信への使用可否を判定する。本実施形態は、電子機器および通信方法のいずれでも実現することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信方式を用いて無線で通信を行う通信部と、
少なくとも、前記通信において基地局から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、
予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、
測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、
所定の周波数帯の通信用電波について、他の機器との通信への使用可否を判定する制御部と、を備える
電子機器。
【請求項2】
前記通信部は、前記通信用電波で搬送される識別情報に基づいて前記通信用電波の送信源となる基地局を特定し、
前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、少なくとも1個の基地局からの通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象を含む
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、
予め設定された基地局からの前記通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象を含む
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、
前記測位用電波で搬送される識別情報に基づいて検出される前記測位衛星の個数が所定の測位衛星の基準個数以上となる事象を含む
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記通信用電波と前記測位用電波に前記事象が発生したか否かを判定し、
発生した前記事象のそれぞれに対して予め定めた事象別スコアを総合した総合スコアに基づいて前記使用可否を判定する
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記通信用電波の電界強度の短時間平均値を当該通信用電波の強度の指標として用いる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御部は、
前記周波数帯を用いた前記他の機器との通信中に、当該周波数帯を使用否と判定するとき、
当該周波数帯の使用制限、または、前記通信に使用可能な周波数帯を通知する通知情報を出力する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記通信方式は、IEEE802.11に規定された通信方式であり、
前記周波数帯は、5GHz帯である
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
所定の通信方式を用いて無線で通信を行う電子機器における通信方法であって、
少なくとも、前記通信において基地局から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、
予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、
測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、
所定の周波数帯の通信用電波について、前記通信への使用可否を判定するステップを有する
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network、構内ネットワーク)は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、タブレット端末装置、多機能携帯電話機、などの情報通信機器をはじめ、様々な機器において採用されている。無線LANは、主に固定回線を経由したインターネットへのアクセス手段として用いられている。無線LANの国際規格のうちIEEE802.11で規定された通信方式は、Wi-Fi(登録商標)と呼ばれ、広く普及している。
【0003】
IEEE802.11では、固有の識別情報を報知するビーコンを所定の周波数帯域で受信し、受信したビーコンから検出された識別情報を用いて通信相手となる相手先機器を発見し、発見した相手先機器との接続を確立する手法が規定されている。例えば、特許文献1には、ビーコンを受信する無線通信部、ビーコンからSSID(Service Set Identifier、サービスセット識別子)を抽出し、抽出されたSSIDに含まれる固有の識別情報を抽出する端末識別子抽出部、抽出された固有の識別情報と無線設定情報を用いて無線通信の接続を確立するネットワーク制御部を備える無線端末装置について記載されている。
【0004】
IEEE802.11に規定されている無線通信方式において使用される電波の周波数帯には、無線局免許を不要として使用可能なものがある。かかる周波数帯には、大きく分けて2.4GHz帯と5GHz帯がある。5GHz帯には、5.2GHz、5.3GHz、および、5.6GHz帯が含まれる。これらの周波数帯は、いずれも屋内で使用可能であるが、上空での使用が制限されている。5GHz帯のうち5.3GHz帯は、屋外での使用も制限されている。5.2GHz帯には屋外において使用可能とする条件が付されている(平成30年6月29日総務省告示第223号)。屋外利用の条件として、具体的に次の制限が課されている。(1)人工衛星に影響を与えない工夫が施されていること、(2)アクセスポイントおよび中継器について事前に総合通信局に「登録局」の登録手続を行うこと、(3)気象レーダーに影響を与えない開設区域内での利用であること。5.6GHz帯は、原則として屋外で利用可能としているが、気象レーダーや航空レーダーの周波数帯と重複している。5.6GHz帯の電波からレーダーが検出される場合には、通信を停止する必要がある。かかる使用制限により、屋内では2.4GHz帯と5GHz帯の全体が利用され、屋外では2.4GHz帯が利用され5GHz帯の全体が利用されないように運用されることが通例である。ここで、屋内とは、家屋や建造物の内部空間を指す。例外的に、車両、船舶、航空機内は、屋内とみなして運用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-122782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に屋外における周波数帯の使用制限が十分に認識されているとは限らない。通信サービスの使用形態によっては、ユーザは意図せずに利用する周波数帯を誤るおそれがある。例えば、屋外においてユーザが所持する機器(以下の説明では、「ユーザ機器」と呼ぶことがある)がテザリング(tethering)機能を用い、他の機器とIEEE802.11に規定の無線通信方式を用いて接続する場合がある。この場合、ユーザ機器は、他の機器からWAN(Wide Area Network、広域ネットワーク)やインターネットへのアクセスを中継するアクセスポイントまたは中継器として機能する。また、屋外において気軽に通信を行なうために、一般ユーザが「登録局」の登録手続を行うことや、レーダーを検出する際に通信を停止することは現実的ではない。そのため、利用する周波数帯が常に2.4GHz帯に限定された機器もある。通信に利用できるチャンネルが2.4GHz帯の範囲内に限定されるので、十分なスループットが得られず通信品質が低下することがある。スループットを改善するためには、5GHz帯域の使用が期待される。そこで、接続時に屋外と屋内のいずれに所在しているかをユーザに選択させるための選択画面を表示することも提案されてきた。屋外と屋内のいずれかを選択するかは、ユーザの判断に委ねられるが、利用する周波数帯を誤ると処罰されるリスクが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様に係る電子機器は、所定の通信方式を用いて無線で通信を行う通信部と、少なくとも、前記通信において基地局から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯の通信用電波について、他の機器との通信への使用可否を判定する制御部と、を備える。
【0008】
上記電子機器において、前記通信部は、前記通信用電波で搬送される識別情報に基づいて前記通信用電波の送信源となる基地局を特定し、前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、少なくとも1個の基地局からの通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象を含んでもよい。
【0009】
上記電子機器において、前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、予め設定された基地局からの前記通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象を含んでもよい。
【0010】
上記電子機器において、前記制御部が前記周波数帯を使用可と判定する要因は、前記測位用電波で搬送される識別情報に基づいて検出される前記測位衛星の個数が所定の測位衛星の基準個数以上となる事象を含んでもよい。
【0011】
上記電子機器において、前記制御部は、前記通信用電波と前記測位用電波に前記事象が発生したか否かを判定し、発生した前記事象のそれぞれに対して予め定めた事象別スコアを総合した総合スコアに基づいて前記使用可否を判定してもよい。
【0012】
上記電子機器において、前記制御部は、前記通信用電波の電界強度の短時間平均値を当該通信用電波の強度の指標として用いてもよい。
【0013】
上記電子機器において、前記制御部は、前記周波数帯を用いた前記他の機器との通信中に、通信中に、当該周波数帯を使用否と判定するとき、当該周波数帯の使用制限、または、前記通信に使用可能な周波数帯を通知する通知情報を出力してもよい。
【0014】
上記電子機器において、前記通信方式は、IEEE802.11に規定された通信方式であり、前記周波数帯は、5GHz帯であってもよい。
【0015】
本発明の第2態様に係る通信方法は、所定の通信方式を用いて無線で通信を行う電子機器における通信方法であって、少なくとも、前記通信において基地局から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、
測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯の通信用電波について、前記通信への使用可否を判定するステップを有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、より確実に利用可能な周波数帯の利用を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電子機器のハードウェア構成の一例を示す概略ブロック図である。
図2】本実施形態に係る電子機器の機能構成例を示す概略ブロック図である。
図3】本実施形態に係る電子機器が実行する通信処理の例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態に係る所定の周波数帯の使用可否の判定方法の第1例を説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る所定の周波数帯の使用可否の判定方法の第2例を説明するための説明図である。
図6】本実施形態に係る所定の周波数帯の使用可否の判定方法の第3例を説明するための説明図である。
図7】本実施形態に係る通知画面の例を示す図である。
図8】本実施形態に係る強度表示画面の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る強度表示画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態に係る電子機器10の概要について説明する。本実施形態に係る電子機器10は、所定の通信方式を用いて無線で通信を行う通信機能を有する。電子機器10は、所定の通信方式として、例えば、IEEE802.11に記載された方式を用いて無線で各種のデータを1個以上の別個の機器と送受信可能とする。電子機器10と別個の機器との間で無線LANが形成される。以下の説明では、所定の通信方式がIEEE802.11である場合を主とし、この通信方式を「本通信方式」と呼ぶ。電子機器10は、本通信方式を用いた通信において受波される電波である通信用電波の強度を測定し、測定される強度の時間変化を監視する。
【0019】
電子機器10は、所定の測位方式を用いて測位衛星から受波される電波である測位用電波を用いて自器の位置を測定する測位機能を有する。電子機器10は、所定の測位方式として、例えば、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を用いることができる。以下の説明では、所定の測位方式がGPSである場合を主とし、この測位方式を「本測位方式」と呼ぶ。
【0020】
電子機器10は、送信源となる基地局から受波される通信用電波の強度の時間変化、予め設定された基地局からの通信用電波の強度、および、受波される測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯の通信用電波について、基地局とは別個の他の機器との通信への使用可否を判定する。所定の周波数帯は、例えば、本通信方式に規定された5GHz帯である。電子機器10は、所定の周波数帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因として、例えば、基地局からの通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象(図4参照)と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象(図5参照)を参照する。また、電子機器10は、所定の周波数帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因として、例えば、検出される測位衛星の数が所定の基準個数以上となる事象(図6参照)を参照する。
【0021】
所定の周波数帯の通信用電波の他の機器との通信への使用可否は、その時点において電子機器10が屋内に所在しているか否かによる。以下の説明では、屋内に所在しているか否かの判定は、「本通信方式を用いた他の機器との通信への使用可否」の判定、という意味を含むことがある。また、「通信用」とは、通信を主目的として提供されることを意味し、現実に通信が実行されるという意味まで含まれないこともある。また、「測位用」とは、測位を主目的として提供されることを意味し、現実に測位が実行されるという意味が含まれないこともある。
【0022】
一般に、無線LANは、複数の機器間において構成される。複数の機器には、1個以上の基地局と1個以上の端末装置が含まれる。基地局は、アクセスポイント、親機、などと呼ばれることがある。基地局は、インターネット、公衆通信ネットワークなど、他の通信方式に基づく他のネットワークにも通信する機能を有する。端末装置は、子機と呼ばれることもある。本実施形態では、電子機器10は、主に端末装置として機能する。但し、電子機器10は、他の機器に対して基地局としての機能を提供してもよい。電子機器10は、端末装置として機能する他の機器と接続し、本通信方式に基づくテザリング機能を提供してもよい。テザリングは、電子機器10を経由し、基地局に接続される他の通信ネットワークに接続された別個の第3の機器にアクセスし、通信可能とする機能を指す。テザリングにおいて、電子機器10は、他の機器と基地局との間における通信を中継する。
【0023】
次に、本実施形態に係る電子機器10のハードウェア構成について説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器10のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
電子機器10は、構成部として、通信部102、測位部104、表示部112、操作部114、記憶部116、および、プロセッサ118を含んで構成される。これらの構成要素は、相互に各種のデータを入出力可能に有線(例えば、バス(基線))で接続される。
【0024】
通信部102は、プロセッサ118の制御に基づいて、ネットワークに接続された別個の機器と通信を行う。通信部102は、本通信方式を用いて各種のデータを無線で送受信するための送受信器を含んで構成される。通信部102は、本通信方式を用いて基地局を経由し、基地局と他の通信方式を用いて間接的に第3の機器と通信を行うことができる。
通信部102は、本通信方式に従って通信相手となる相手先装置との間で通信用電波を用いて各種のデータを送受信する。本通信方式では、基地局と他の端末装置が直接的な相手先装置となりうる。本通信方式では、使用可能チャンネルとして、2.4GHz帯において14チャンネル、5GHz帯において19チャンネル規定されている。相手先装置との間でデータの送受信において、それらの使用可能チャンネルのうち、通例、1チャンネル用いられる。
【0025】
通信部102は、相手先装置からの通信用電波をアンテナで受波して得られる電気信号を受信信号として受信し、所定の復調方式を用いて復調し、復調された受信信号をプロセッサ118に出力する。復調方式は、相手先装置において通信用電波を用いて搬送する信号の変調に用いられた変調方式(例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分離多重)方式)に対応する復調方式であればよい。他方、通信部102は、プロセッサ118から入力される送信信号を所定の変調方式を用いて変調した送信信号をアンテナに供給し、アンテナから通信用電波を送波する。
【0026】
他方、通信部102は、チャンネルごとに入力される受信信号の強度を用いて別個の機器から受信した通信用電波の強度を測定する。通信部102は、例えば、アンテナから出力され、あるチャンネルに対応する周波数帯の出力電力を測定し、測定した出力電力から受信した通信用電波の電界強度を定めることができる。測定対象となるチャンネルは、自器との通信に用いているチャンネルに限られず、自器との通信に用いられていないチャンネルも含まれる。通信部102は、受信信号を復調し、復調された受信信号から送信元となる他の機器を示す識別情報を抽出する。識別情報として、例えば、ビーコンで伝達されるSSID(Service Set Identifier)が利用可能である。ビーコンは、本通信方式に従って基地局から所定時間間隔で発信される。ビーコンは、主に端末装置により相手先装置となる基地局を発見するために用いられる。SSIDは、本来、個々のネットワークを示す識別子であるが、そのネットワークを提供する基地局を送信源として示す。通信部102は、測定したチャンネルに係る強度を示す強度情報を、抽出した識別情報と関連付けてプロセッサ118に出力する。
【0027】
通信部102は、基地局としての機能を提供するため、通信に使用されていないチャンネルの通信用電波を用いてビーコンを所定時間間隔で発信する。通信部102には、自器を発見した他の機器である端末装置からの接続要求を受信するとき、受信した接続要求に応じて、その機器との接続を確立し、通信を開始してもよい。通信部102は、予め設定された他の機器からの接続要求に応じて、テザリング機能を提供してもよい。テザリング機能を提供する際、通信部102は、その機器との接続を確立するとともに、その機器との通信に用いられるチャンネルとは別個のチャンネルで搬送されるビーコンに基づいて他の基地局を発見する。通信部102は、発見した基地局に接続要求を送信し、発見した基地局との接続を確立する。
【0028】
測位部104は、本測位方式を用いて4個以上の測位衛星から受波される測位用電波を用いて自器の位置を測定する測位機能を有する。測位部104は、個々の測位衛星からの測位用電波を受波して得られる電気信号を受信信号として復調し、測位信号と送信元の測位衛星の識別情報を抽出する。測位用電波では、測位衛星ごとに異なるチャンネルの周波数帯が用いられる。測位部104は、測位衛星間で抽出された測位信号の時間差を解析し、得られた時間差に基づいて自器の位置を算出する。測位部104は、算出した位置を示す測位情報をプロセッサ118に出力する。測位部104は、抽出した識別情報をプロセッサ118に出力する。測位部104は、例えば、GPSモジュールを含んで構成される。
【0029】
表示部112は、画像、テキスト、など視認可能な情報を表示情報として表示するディスプレイ、光源、またはそれらの組み合わせを含んで構成される。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ(LED:Light Emitting Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)などのいずれであってもよい。表示部112は、制御部130から入力される表示データで表される表示画面を表示する。
【0030】
操作部114は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に基づく操作信号を生成し、生成した操作信号を出力する。操作部114は、ボタン、ダイヤルなどの専用の部材を含んで構成されてもよいし、キーボード、マウス、タッチセンサなどの汎用の部材を含んで構成されてもよい。タッチセンサは、表示部112として機能する液晶ディスプレイパネルと一体化したタッチパネルとして構成されてもよい。
【0031】
記憶部116は、電子機器10の処理に用いられる各種の情報、電子機器10が処理により取得した各種の情報、を記憶する記憶媒体を含んで構成される。各種の情報には、プログラム、パラメータ、画像、などが含まれる。記憶部116は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Read-Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成される。なお、電子機器10には、各種の入出力インタフェースを用いて、他の記憶媒体と接続されてもよい。
【0032】
プロセッサ118は、記憶部116に記憶されている各種のプログラムに記述された命令で指示される処理を実行し、電子機器10の各部の動作を制御する。プロセッサ118は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)などのいずれか1個、または、いずれかの組み合わせであってもよい。なお、以下の説明では、プログラムに記述された命令で指示される処理を実行することを、「プログラムを実行する」と呼ぶことがある。実行される情報処理は、記憶部116をはじめとするハードウェア資源のいずれか1個、または、いずれかの組み合わせと協働して制御部130の機能を奏してもよい。
【0033】
図2は、本実施形態に係る制御部130の機能構成例を示す概略ブロック図である。制御部130は、電子機器10の機能を実現するための処理、および、その機能を制御するための処理を実行する。制御部130は、通信制御部132、および、出力処理部134を備える。
【0034】
通信制御部132は、別個の機器との通信に関する処理を行う。通信制御部132には、通信部102から送信源ごとの識別情報と測定情報が関連付けて入力される。通信制御部132には、測位部104から測位衛星ごとの識別情報が入力される。通信制御部132は、測定情報に示される通信用電波の強度の時間変化と測位衛星の数に基づいて基地局とは異なる他の機器との通信への5GHz帯の使用可否を判定する。通信制御部132は、例えば、基地局ごとの通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象を5GHz帯域の使用可と判定する要因として参照する。
【0035】
通信制御部132は、その時点(現時点)までに所定の観測期間(例えば、数秒~数分)継続して検出される識別情報の数を測位衛星の数として計数してもよい。通信制御部132は、計数した測位衛星の数が所定の基準個数よりも多い事象を他の機器との通信に5GHz帯域を使用可と判定する要因として参照する。本通信方式では、電子機器10の所在が屋内か否かに関わらず2.4GHz帯が使用可である。他方、電子機器10の所在が屋内であるとき、5GHz帯は使用可であり、電子機器10の所在が屋外であるとき5GHz帯は使用否と運用される。5GHz帯の使用可否の判定については、後述する。
【0036】
通信制御部132は、使用可と判定した周波数帯に含まれる使用可能チャンネルから、通信に用いるチャンネルを選択する。通信への使用を許可するチャンネルまたは周波数帯が、通信制御部132に予め設定されていることがある。その場合には、通信制御部132は、本通信方式に所定の使用可能チャンネルのうち、設定されたチャンネルまたは設定された周波数帯に含まれるチャンネルを、通信に用いるチャンネルの候補として定める。以下の説明では、主に通信に用いるチャンネルの候補が本通信方式に所定の使用可能チャンネルである場合を例とする。
【0037】
基地局とは異なる他の機器との通信を開始する場合には、通信制御部132は、例えば、他の機器との通信に用いられていない空きチャンネルのうち、基地局からの通信用電波が検出されないチャンネルのいずれかを選択する。この場合には、例えば、テザリング機能を提供する際、他の機器と第3の機器との通信を中継する場合も含まれうる。基地局からの通信用電波が検出されないチャンネルが存在しない場合には、通信制御部132は、通信用電波の強度が最も低いチャンネルを選択してもよい。この選択により、電波の干渉による影響が低減する。通信制御部132は、選択したチャンネルを示す選択チャンネル情報を通信部102に出力し、選択したチャンネルの通信用電波を用いてビーコンを搬送させる。電子機器10は、ビーコンを検出した端末装置となる他の機器との通信を開始することができる。
【0038】
電子機器10がいずれかの基地局との接続を開始するとき、通信制御部132は、使用可と判定した周波数帯に含まれる使用可能チャンネルごとに、基地局から通信用電波で搬送されたビーコンから抽出される識別情報の入力の有無を判定する。よって、チャンネルごとにビーコンを搬送する通信用電波の有無が検出される(チャンネルスキャン)。通信の開始は、アプリに記述されたコマンドの実行、操作部114から入力される操作信号、他の機器からのテザリングに伴う接続要求などを受け付けて指示されることがある。通信制御部132は、チャンネルごとに識別情報と関連付けて入力される強度情報を表す強度表示画面を出力処理部134に生成させる。出力処理部134は、生成した強度表示画面を表す表示画面データを表示部112に出力してもよい。表示部112には、チャンネルごとの強度情報を表す強度表示画面が表示される。電子機器10のユーザは、強度表示画面を視認し、通信に用いるチャンネルを操作により選択する手がかりが与えられる。強度表示画面の例については後述する。
【0039】
通信制御部132は、未使用のチャンネルのいずれかを基地局と接続するチャンネルとして選択する。通信制御部132は、例えば、強度が最も高いチャンネルを選択してもよいし、操作部114から入力される操作信号で指示されるチャンネルを選択してもよい。通信制御部132は、認証処理を行って成功した基地局と接続するチャンネルを選択してもよい。通信制御部132は、通信部102に対して、ビーコンに対する応答として、選択したチャンネルの通信用電波での接続要求を、送信源である基地局に送信させる。よって、端末装置として機能する電子機器10と基地局との接続処理が開始される。
【0040】
5GHz帯に属するチャンネルを用いて基地局とは別個の他の機器と通信しているとき、通信制御部132は、5GHz帯を使用否と判定する場合がある。その場合には、通信制御部132は、通知情報を出力処理部134に出力する。通知情報には、5GHz帯の使用制限、または、本通信方式を用いた通信に使用できる周波数帯として2.4GHz帯を通知するための情報が含まれる。出力処理部134は、その通知情報を含む通知画面を示す表示データを表示部112に出力する。表示部112には、出力処理部134から入力される表示データに基づく通知画面が表示される。
【0041】
通知画面には、5GHz帯の使用の要否を回答するための回答ボタンが含まれてもよい。通信制御部132は、回答ボタンの押下を検出し、5GHz帯に属するチャンネルを用いた通信を継続するか否かを判定する。この判定は、周波数帯の変更指示の有無とみなすこともできる。このとき、出力処理部134は、表示データの表示部112への出力を停止し、通知画面を消去する。本願では、「押下」とは、操作部114から入力される操作信号でボタン、その他の画面部品の表示領域の位置が指示されるという意味を含む。通知画面の例については後述する。
【0042】
通信制御部132は、5GHz帯に属するチャンネルを用いた他の機器との通信を継続しないと判定するとき、通信に用いるチャンネルを2.4GHz帯に属するいずれかのチャンネルに切り替える。このとき、通信制御部132は、2.4GHz帯に属する未使用のいずれかのチャンネルを選択し、選択したチャンネルへの変更を示すチャンネル変更要求を、通信部102を経由して他の機器に送信する。他方、他の機器の通信制御部132は、電子機器10からチャンネル変更要求を受信し、受信したチャンネル変更要求で指示される新たなチャンネルを示すチャンネル切替指示を自装置の通信部102に出力する。
【0043】
他の機器の通信制御部132は、チャンネル変更要求に対する応答として確認応答を電子機器10に送信する。チャンネル変更要求の送信から所定時間内(例えば、数秒~数十秒)に他の機器から確認応答を受信するとき、電子機器10の通信制御部132は、チャンネル切替指示を自器の通信部102に出力する。チャンネル切替指示では、切替先のチャンネルとして、他の機器との通信に用いるチャンネルとして選択したチャンネルが指示される。電子機器10の通信部102は、他の機器との通信においてチャンネル切替指示で指示されるチャンネルの使用を開始し、5GHz帯に属するチャンネルの使用を終了する。
【0044】
なお、電子機器10の通信部102は、他の機器との通信を中継するために5GHz帯に属するチャンネルを使用して基地局と通信しながら、5GHz帯に属する補間チャンネルを用いた他の機器との通信を継続しないと判定する場合が起こりうる。この場合、通信制御部132は、基地局との接続を切断して5GHz帯に属するチャンネルの使用を終了する。通信制御部132は、5GHz帯の使用制限のため通信を継続できないことを通知するための通知情報を含む通知画面を表示部112に表示させてもよい。通信制御部132は、基地局に対し切断要求を送信する。基地局は、電子機器10から切断要求を受信するとき、電子機器10に対する応答として確認応答を送信し、その後、電子機器10との通信に用いていたチャンネルを解放(リリース)する。通信制御部132は、電子機器から確認応答を受信し、5GHz帯に属するチャンネルを用いて実行していた通信の終了を確認することができる。
【0045】
出力処理部134は、表示部112に表示させる各種の表示情報を表す表示データを出力するための処理を行う。出力処理部134は、例えば、相手先機器との通信において受信した受信情報を表す表示データを生成し、生成した表示データを表示部112に出力する。表示される情報には、通信により受信した受信情報、各種の設定画面の他、上記の強度表示画面、通知画面なども含まれうる。
【0046】
次に、本実施形態に係る通信処理の例について説明する。図3は、本実施形態に係る通信処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)通信部102は、チャンネルごとにアンテナに到来する通信用電波の強度を測定する。
(ステップS104)通信部102は、通信用電波に基づく受信信号を復調し、復調した受信信号から通信用電波で搬送される基地局の識別情報を解析する。
(ステップS106)通信制御部132は、基地局ごとに測定された通信用電波の強度の時間変化を監視(モニタ)する。
(ステップS110)測位部104は、測位衛星ごとに所定のチャンネルで測位用電波を受波し、受波して得られる電気信号を復調し、測位衛星の識別情報を解析する。
(ステップS112)通信制御部132は、検出された識別情報に基づいて測位衛星の個数を計数する。
【0047】
(ステップS114)通信制御部132は、基地局ごとの通信用電波の強度の時間変化と計数された測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯として5GHz帯の他の機器との通信への使用可否を判定する。検出された基地局に予め設定された基地局が含まれる場合には、通信制御部132は、その基地局からの通信用電波の強度をさらに参照して5GHz帯の使用可否を判定する。使用可と判定されるとき(ステップS114 YES)、ステップS124の処理に進む。使用否と判定されるとき(ステップS114 NO)、ステップS116の処理に進む。
(ステップS116)通信制御部132は、他の機器と5GHz帯に属するチャンネルを用いた通信中であるか否かを判定する。そのチャンネルを使用中と判定されるとき(ステップS116 YES)、ステップS118の処理に進む。使用されていないと判定されるとき(ステップS116 NO)、ステップS102の処理に戻る。
【0048】
(ステップS118)通信制御部132は、5GHz帯の使用制限、または、他の周波数帯である2.4GHz帯の使用を通知するための通知情報を含む通知画面を表示部112に表示させる。
(ステップS120)通信制御部132は、操作信号に基づく周波数帯変更が指示されたか否かを判定する。指示されたと判定されるとき(ステップS120 YES)。ステップS122の処理に進む。指示されていないと判定されるとき(ステップS120 NO)、ステップS102の処理に戻る。後述するように、周波数帯変更の指示は、通知画面に配置された特定の回答ボタンへの押下によりなされることがある。通信制御部132は、いずれかの回答ボタンの押下を検出するとき、表示部112に対して通知画面を消去させる。
(ステップS122)通信制御部132は、他の機器との通信に用いるチャンネルを、2.4GHz帯に属するチャンネルのいずれかに変更する。その後、ステップS102の処理に戻る。
【0049】
(ステップS124)通信制御部132は、他の機器と5GHz帯を用いた通信が要求されたか否かを判定する。要求される場合(ステップS124 YES)、ステップS126の処理に進む。要求されない場合(ステップS124 NO)、ステップS102の処理に戻る。
(ステップS126)通信制御部132は、5GHz帯に属するチャンネルのいずれかを選択し、選択したチャンネルを用いた通信を開始する。
【0050】
次に、所定の周波数帯として5GHz帯の通信用電波について他の機器との通信への使用可否の判定方法の例について、より詳細に説明する。5GHz帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因には、通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象が含まれる。図4に例示されるように、外出の際には移動により屋内から屋外に漏洩する通信用電波の強度の変化が顕著に検出される。
【0051】
図4の例では、電子機器10の位置が、(1)から(5)に変化する過程で、A.事務所、B.住宅、C.工場のそれぞれの基地局から到来する通信用電波の強度が、電子機器10への距離の変化により顕著に変動する。また、A.事務所、B.住宅、および、C.工場のそれぞれからの通信用電波の強度の変化パターンも異なる。最も強度が高い通信用電波の発信源となる基地局の所在は、(1)から(5)への移動により、A.事務所、A.事務所、B.住宅、C.工場、C.工場と変化する。5GHz帯の電波は2.4GHz帯の電波よりも直進性と反射特性が高いので、電界強度の位置による変化が著しいことも顕著な変動の一因となりうる。通信用電波の強度の時間変化が少ないことは、電子機器10が屋内に所在する可能性を肯定する要因となりうる。
【0052】
通信制御部132は、例えば、一定時間(例えば、数秒~数十秒)ごとに測定される通信用電波の強度の移動平均値を算出し、算出した移動平均値を強度の指標値とし、強度の分散を強度変化の指標値として算出する。通信制御部132は、算出した分散が所定の強度変化の基準値よりも小さい通信用電波の送信源が少なくとも1個存在する事象を、5GHz帯の電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因として特定する。移動平均値を算出する際、通信制御部132は、その時点までの所定の期間内(観測窓)の強度の平均値を移動平均値として逐次に算出する。平均値は、単純平均でもよいし重み付き平均でもよい。移動平均値を算出する際、通信制御部132は、指数移動平均法を用いてもよい。指数移動平均法は、現時点の強度と平滑化係数の乗算値と、前時点の平均値と1から平滑化係数を差し引いて得られる値との乗算値との和を、強度の現時点の平均値として逐次に算出する手法である。平滑化係数として、0より大きく1より小さい実数値を予め通信制御部132に設定しておく。移動平均により強度の時間変化が平滑化される。
【0053】
通信制御部132は、5GHz帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因として、個々の基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも大きい事象を含めてもよい。一時的に一部の基地局からの電波強度が顕著に変動する事象が生じても、通信制御部132は、電子機器10が屋内と屋外のいずれに所在している可能性が高いかをより的確に判定できる。上記のように、電波強度が顕著に変動する要因として、基地局を搭載する移動体の移動、基地局からの電波を遮蔽する他の物体の有無の変化、電子機器10の向きや位置の変化、などがある。
【0054】
5GHz帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因には、予め設定された基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象が含まれる。通信制御部132には、予め強度を監視すべき通信用電波の送信源を予め設定しておく。図5の例では、通信制御部132に、ある家屋の屋内に設置された基地局HOMEが登録されている。例示される家屋の近傍に5個の基地局aaa~eeeが設置されている。基地局cccからの通信用電波の強度は、電子機器10が「屋内」、「屋外」と表示されている位置のいずれについても「強」となり、それらの位置間における強度差も比較的小さい。他方、基地局HOMEからの通信用電波の強度は、基地局HOMEからの距離が大きくなるほど減衰する傾向がある。
【0055】
図5の例では、電子機器10が「屋内」と表示されている位置に所在しているとき「強」となるのに対し、「屋外」と表示されている位置に所在していると「中」となる。予め設定された基地局からの通信用電波が十分な強度を有することは、電子機器10がその基地局が設置された建造物の屋内に所在する可能性を肯定する要因となりうる。通信制御部132は、予め設定された基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象を、5GHz帯を使用可と判定する要因として用いることで、5GHz帯の使用の可否判定がより的確になされる。なお、強度表示画面(図8図9参照)が表示されているとき、いずれかのチャンネルが操作部114から入力される操作信号で指示されることがある。後述するように、通信制御部132は、指示されたチャンネルを用いて通信用電波を送波する基地局の識別情報を自部に設定してもよい。設定した識別情報は、その識別情報で示される基地局からの通信用電波の5GHz帯の使用の可否判定に用いられてもよい。
【0056】
5GHz帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定する要因には、検出される測位衛星の数が所定の基準個数以上となる事象が含まれる。図6の例では、測位衛星から到来する測位用電波は建造物の壁に阻まれ、窓、その他、屋外に開放された空間を経由して屋内に入射または透過する。屋内に進入した測位用電波の強度は、屋外に到来する測位用電波の強度よりも低くなる。測位用電波が十分な強度を有しないと、受信信号に含まれる雑音成分が相対的に顕著となるので、測位用電波で搬送される測位衛星の識別情報を特定できないことがある。図6の例では、屋外において識別情報に基づいて検出される測位衛星の数は8個であるのに対し、屋内では4個に過ぎない。そのため、検出された測位衛星の個数が少ないことは、電子機器10が屋内に所在する可能性を肯定する要因となりうる。
【0057】
通信制御部132は、上記の複数の事象を総合して、5GHz帯の通信用電波を他の機器との通信に使用可と判定してもよい。通信制御部132は、例えば、少なくとも、基地局ごとの通信用電波の強度変化が少ない事象と、予め設定されたごとに到来する通信用電波の強度が低い事象のうちいずれか1件と、検出された測位衛星の個数が少ない事象、がいずれも発生するとき、5GHz帯の通信用電波を使用可と判定してもよい。電子機器10が屋内に所在する可能性を肯定する要因の発生を総合することで、5GHz帯の通信用電波の使用の可否判定がより的確になされる。
通信制御部132は、事象ごとに予め定めた事象別スコアの発生した事象間の和を総合スコアとして算出してもよい。通信制御部132は、算出した総合スコアが予め定めた総合スコアの基準値よりも大きいか否かにより、5GHz帯の他の機器との通信への使用可否を判定してもよい。
【0058】
次に、通知画面の例について説明する。図7は、通知画面の例を示す図である。通知画面は、5GHz帯に属するチャンネルを用いた他の機器との通信中に、5GHz帯の通信用電波が使用できないと判定されるときに表示される。例示される通知画面では、通知情報と2個の回答ボタンが配置されている。通知情報として5GHz帯の通信用電波の使用制限を通知するための情報が伝達される。具体的には、5GHz帯の通信用電波の使用制限は、「5GHz帯(屋内/W52)は、屋外では使用できません」との文言を用いて伝達される。また、「屋内で使用しますか?」との文言は、屋内における5GHz帯の通信用電波の使用をユーザに照会することを目的とする。この文言により5GHz帯の通信用電波の屋内での使用が促される。
【0059】
2個の回答ボタンには、それぞれ「はい」の文言が表されたボタン(以下、「はいボタン」と呼ぶ)、「いいえ」の文言が付されたボタン(以下、「いいえボタン」と呼ぶ」)が配置されている。この例では、「はいボタン」は、押下により5GHz帯の継続使用を回答させるために用いられる。通信制御部132は、「はいボタン」への押下を検出するとき、通知画面を消去し、通信に用いる使用チャンネルを変更せずに維持する。通信制御部132は、「いいえボタン」への押下を検出するとき、通知画面を消去し、通信に用いる使用チャンネルを2.4GHz帯に属するいずれかのチャンネルに変更する。
【0060】
なお、通知情報には、5GHz帯の使用制限に代えて、または、それとともに、他の機器との通信に使用できる周波数帯として2.4GHz帯を通知するための情報が含まれてもよい。2.4GHz帯を通知するための情報として、例えば、「2.4GHz帯(屋内)を使用しますか?」との文言が、「5GHz帯(屋内/W52)は、屋外では使用できません」との文言に続いて、「屋内で使用しますか?」との文言に代えて表されてもよい。その場合、通信制御部132は、「はいボタン」への押下を検出するとき、通知画面を消去し、通信に用いる使用チャンネルを2.4GHz帯に属するいずれかのチャンネルに変更する。通信制御部132は、「いいえボタン」への押下を検出するとき、通知画面を消去し、他の機器との通信に用いる使用チャンネルを変更せずに維持する。
【0061】
次に、強度表示画面の例について説明する。強度表示画面は、チャンネルごとに基地局の識別情報と強度情報を表す。図8は、強度表示画面の第1例を示す図である。図示の例では、5GHz帯に属するチャンネルのそれぞれについて、識別情報、チャンネル、および、強度情報の組が各行に配列されている。
図9は強度表示画面の第2例を示す図である。図示の例では、2.4GHz帯に属するチャンネルのそれぞれについて、識別情報、チャンネル、および、強度情報の組が各行に配列されている。
強度情報は、棒線グラフを用いて電界強度のデシベル値が長さで表現されている。強度情報は、長さに代え、または、長さとともに、色、濃度、塗りつぶしパターンなどの表示態様で表現されてもよい。強度情報は、異なる種類または形態の図形を用いて表現されてもよいし、その値が数字で表現されてもよい。
【0062】
出力処理部134は、例えば、操作信号により強度表示画面の表示が指示されるとき強度表示画面を生成する。出力処理部134は、通信制御部132から取得されるチャンネルごとの識別情報と強度情報に基づいて、所定の画面構成に従って強度表示画面を生成することができる。出力処理部134は、生成した強度表示画面を表示部112に表示させる。
【0063】
なお、通信制御部132は、強度表示画面において、いずれかのチャンネルに係る行が押下されるとき、そのチャンネルを用いた通信を、そのチャンネルに対応する識別情報で示される基地局を相手先として開始してもよい。そして、通信制御部132は、相手先として選択された基地局を示す識別情報を設定してもよい。設定された送信源からの通信用電波は、上記のように5GHz帯の通信用電波について他の機器との通信への使用可否の判定に用いられてもよい。また、通信制御部132は、他の機器と通信中に、強度表示画面において、いずれかの未使用のチャンネルに係る行が押下されるとき、現在使用されているチャンネルを、押下により選択されたチャンネルに切り替えてもよい。
【0064】
通信制御部132から5GHz帯の使用否を示す使用可能周波数帯情報が通知されるとき、出力処理部134は、5GHz帯に属するチャンネル、識別情報、および、強度情報の組を省略して強度表示画面を構成し、更新された強度表示画面を表示部112に表示させ、その時点までに表示されていた強度表示画面を消去してもよい。5GHz帯に属する各チャンネルの強度情報が消去されるので、使用が制限された5GHz帯に属するいずれかのチャンネルの押下による選択が回避される。
通信制御部132から5GHz帯の使用可を示す使用可能周波数帯情報が再度通知されるとき、出力処理部134は、5GHz帯に属するチャンネル、識別情報、および、強度情報の組を含めて強度表示画面を新たに構成し、更新された強度表示画面を表示部112に表示させ、その時点までに表示されていた強度表示画面を消去してもよい。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態に係る電子機器10は、所定の通信方式を用いて無線で通信を行う通信部102と、少なくとも、通信において基地局(例えば、アクセスポイント)から受波する電波である通信用電波の強度の時間変化と、予め設定された基地局からの通信用電波の強度と、測位衛星から受波する電波である測位用電波に基づいて検出される測位衛星の数に基づいて、所定の周波数帯の通信用電波について、他の機器(例えば、端末装置)との通信への使用可否を判定する制御部130と、を備える。
所定の通信方式は、例えば、IEEE802.11に規定された通信方式であり、所定の周波数帯は、5GHz帯であってもよい。
この構成により、通信用電波の強度の時間変化、予め設定された送信源からの通信用電波の強度の他、検出される測位衛星の数を用いることで、電子機器10が屋内に所在しているか否かが、より確実に判定される。屋外での使用が制限されている所定の周波数帯の不適切な使用を検出または回避する手がかりが与えられるので、利用可能な周波数帯の利用が促される。
【0066】
通信部102は、通信用電波で搬送される識別情報に基づいて通信用電波の送信源となる基地局を特定してもよい。また、制御部130が所定の周波数帯を使用可と判定する要因は、少なくとも1個の基地局からの通信用電波の強度の時間変化が所定の時間変化の基準値よりも少ない事象を含んでいてもよい。
この構成により、強度が安定した通信用電波の送信源を特定することができる。そのため、強度が安定した通信用電波が到来する環境である屋内に所在することが的確に判定される。
【0067】
制御部130が所定の周波数帯を使用可と判定する要因は、予め設定された基地局からの通信用電波の強度が所定の強度の基準値よりも高い事象を含んでいてもよい。
この構成により、屋内に設置された既知の送信源から発される通信用電波が十分な強度をもって受波できることをもって、十分な強度を有する通信用電波が到来する環境である屋内に所在することが的確に判定される。
【0068】
制御部130が所定の周波数帯を使用可と判定する要因は、測位用電波で搬送される識別情報に基づいて検出される測位衛星の個数が所定の測位衛星の基準個数以上となる事象を含んでいてもよい。
一般に建造物による反射および吸収により測位用電波の屋内への進入が阻まれる。この構成により、出される測位衛星の個数の減少をもって、十分な強度をもって測位用電波が進入できない環境である屋内に所在することが的確に判定される。
【0069】
制御部130は、通信用電波と測位用電波に所定の周波数帯を使用可と判定する要因とする事象が発生したか否かを判定し、発生した事象のそれぞれに対して予め定めた事象別スコアを総合した総合スコアに基づいて所定の周波数帯の使用可否を判定してもよい。
この構成により、所定の周波数帯を使用可と判定する要因とする事象を総合して所定の周波数帯の使用可否が判定される。発生した事象を定量的に総合することで、より的確に所定の周波数帯の使用可否が判定される。
【0070】
制御部130は、通信用電波の電界強度の短時間平均値を当該通信用電波の強度の指標として用いてもよい。
この構成により、通信用電波の電界強度の時間変化が平滑化されるので、一時的な要因、例えば、障害物による遮蔽、他の送信源の通過、などよる影響が低減される。そのため、より的確に所定の周波数帯の使用可否が判定される。
【0071】
制御部130は、所定の周波数帯を用いた他の機器との通信中に、当該周波数帯を使用否と判定するとき、当該周波数帯の使用制限、または、前記通信に使用可能な周波数帯を通知する通知情報を出力してもよい。
この構成により、通知情報に接したユーザは、所定の周波数帯の使用制限、または、使用可能な周波数帯に気づくことができる。そのため、通信における周波数帯の適切な使用が促される。
【0072】
この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、矛盾が生じない限り組み合わせることができ、構成の一部が省略されてもよい。
【0073】
例えば、電子機器10は、基地局と本通信方式を用いて接続可能であれば、図7から図9に示されるように多機能携帯電話機(スマートフォン)として構成されてもよいし、図4から図6に示されるようにパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)として構成されてもよい。電子機器10は、タブレット端末装置などの他の形態の情報機器として構成されてもよい。通信用電波の通信への使用可否の判定に係る他の機器は、電子機器10と接続可能な端末装置として機能を有していれば、PC、タブレット端末装置など、いかなる形態の情報機器として構成されてもよい。他の機器は、必ずしも基地局と接続できなくてもよい。
表示部112と操作部114の一方または双方は、他の機能部と無線または有線で入出力可能に接続することができれば、必ずしも電子機器10の一部として備わっていなくてもよい。
【0074】
上記の説明では、所定の通信方式がIEEE802.11に規定された無線通信方式である場合を主として説明したが、これには限られない。所定の通信方式は、他の無線LAN方式であってもよいし、既存の方式であるか否かに関わらない。また、所定の周波数帯が5GHz帯である場合を主として説明したが、電子機器10の所在が屋内であるか否かにより使用可否が規定されている周波数帯であれば、他の周波数帯であってもよい。所定の通信方式において、電子機器10の所在が屋内であるか否かに関わらず使用可能な周波数帯であれば、2.4GHz帯でなくてもよい。
【0075】
上記の説明では、所定の測位方式がGPSである場合を主としたが、これには限られない。GPSとは別個の測位システム(例えば、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、準天頂衛星システム)、Galileo、など)において運用されている測位衛星から到来する測位用電波が用いられてもよい。
また、通信部102は、測位用電波により使用される周波数帯を受波でき、測位用電波から測位衛星を示す識別情報を検出することができれば、測位部104が省略されてもよい。
なお、上記の設定値、設定情報、画面配置、画面部品、などは、本実施形態の目的を達することができれば、任意に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…電子機器、102…通信部、104…測位部、112…表示部、114…操作部、116…記憶部、118…プロセッサ、130…制御部、132…通信制御部、134…出力処理部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9