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  • 特開-欠陥検査装置及び欠陥検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142887
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】欠陥検査装置及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050013
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久世 康之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051AC21
2G051CD02
2G051EC10
(57)【要約】
【課題】簡単な方法で、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレを検出することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】ウェハ上に形成されたチップの画像を撮像するオートフォーカス機構付きの光学顕微鏡10と、光学顕微鏡で撮像されたチップ画像の特徴量を算出する画像処理部30と、チップ内の指定領域Aを、ジャストフォーカスで撮像したときの画像に対して、画像処理部で算出した特徴量を記憶する記憶部40とを備え、オートフォーカス機構を用いて、指定領域と同じ検査領域Bを撮像する際に、画像処理部で算出した検査領域における画像の特徴量が、指定領域における画像の特徴量に対して、所定量だけ変動したとき、フォーカスズレが生じていると判定する判定手段50を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記チップの画像を撮像するオートフォーカス機構付きの光学顕微鏡と、
前記光学顕微鏡で撮像された前記チップの画像の特徴量を算出する画像処理部と、
予め、前記チップ内における指定領域を、ジャストフォーカスで撮像したときの画像に対して、前記画像処理部で算出した前記特徴量を記憶する記憶部と
を備え、
前記オートフォーカス機構を用いて、前記憶部に記憶された前記チップ内における前記指定領域と同じ領域である検査領域を撮像する際に、前記画像処理部で算出した前記検査領域における画像の特徴量が、前記憶部に記憶された前記指定領域における画像の特徴量に対して、所定の量だけ変動したとき、前記オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定する判定手段を備えている、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記チップ内における前記指定領域および前記検査領域を撮像した画像の各画素における輝度値の分散値σであって、下記の式(1)を用いて算出される、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【数1】

ここで、xは各画素の輝度値、μは各画素の輝度値の平均値、nは画素数である。
【請求項3】
オートフォーカス機構付きの光学顕微鏡を用いて、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
予め、前記チップ内における指定領域をジャストフォーカスで撮像したときの画像の特徴量を算出する工程(A)と、
前記オートフォーカス機構を用いて、前記指定領域と同じ領域である検査領域を撮像したときの画像の特徴量を算出する工程(B)と、
前記工程(B)で算出された特徴量が、予め前記工程(A)で算出された特徴量に対して、所定の量だけ変動したとき、前記オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定する工程(C)と
を含む、欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置、及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、1枚の半導体ウェハ上に、複数の半導体デバイス回路(チップ)をマトリクス状に繰り返し形成した後、個々のチップに個片化して、個片化したチップをパッケージングすることにより製造される。
【0003】
個々のチップが個片化される前に、ウェハ上に形成された各チップの外観パターンを逐次撮像しながら、検査画像と基準画像とを、画素単位で比較して、対比した画素同士の輝度値の差などに基づいて、チップ内の欠陥を検出している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-155610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップ内の欠陥検査は、光学顕微鏡でチップの画像を撮像しながら行われるが、鮮明な欠陥の画像が迅速に得られるよう、オートフォーカス機構付きの光学顕微鏡が用いられている。例えば、アクティブ方式と呼ばれるオートフォーカス機構は、検査対象物であるチップに光を照射し、その反射光を光センサーで検出することによって、チップの光軸上の位置を測定する。これにより、光学顕微鏡の高さをフォーカス位置に追従させながら、欠陥の検査を行うことができる。
【0006】
しかしながら、ウェハを載置するステージの傾きや、チップに形成されたパターン構造(例えば、チップ表面の凹凸構造や、膜の積層構造等)等の影響によって、光センサーで検出したチップの光軸上の位置と、実際の焦点の位置とに誤差が生じる場合がある。その場合、チップ内の欠陥を検査する際、欠陥の画像をピントのずれた状態で撮像するため、欠陥を見逃したり、欠陥でないところを欠陥として誤検出したりするおそれがある。
【0007】
また、複数枚の指定領域における良品画像の特徴を良品画像モデルとして学習し、検査領域の画像の特徴が良品画像モデルに当てはまらないものを欠陥として識別する処理を行う場合、良品画像にピントのずれた画像が含まれていると、欠陥を識別する感度が低下してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、オートフォーカス機構付きの光学顕微鏡を用いて、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置において、簡単な方法で、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレを検出することができる欠陥検査装置、及び欠陥検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る欠陥検査装置は、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、チップの画像を撮像するオートフォーカス機構付きの光学顕微鏡と、光学顕微鏡で撮像されたチップの画像の特徴量を算出する画像処理部と、予め、チップ内における指定領域を、ジャストフォーカスで撮像したときの画像に対して、画像処理部で算出した特徴量を記憶する記憶部とを備え、オートフォーカス機構を用いて、記憶部に記憶されたチップ内における指定領域と同じ領域である検査領域を撮像する際に、画像処理部で算出した検査領域における画像の特徴量が、記憶部に記憶された指定領域における画像の特徴量に対して、所定の量だけ変動したとき、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定する判定手段を備えている。
【0010】
本発明に係る欠陥検査方法は、オートフォーカス機構付きの光学顕微鏡を用いて、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、予め、チップ内における指定領域をジャストフォーカスで撮像したときの画像の特徴量を算出する工程(A)と、オートフォーカス機構を用いて、指定領域と同じ領域である検査領域を撮像したときの画像の特徴量を算出する工程(B)と、工程(B)で算出された特徴量が、予め工程(A)で算出された特徴量に対して、所定の量だけ変動したとき、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定する工程(C)とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オートフォーカス機構付きの光学顕微鏡を用いて、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置において、簡単な方法で、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレを検出することができる欠陥検査装置、及び欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における欠陥検査装置の構成を模式的に示した図である。
【0013】

図2】本実施形態における欠陥検査装置を用いて、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの有無を判定する方法を示したフローチャートである。
図3】ウェハ上に形成された複数のチップのうち、任意のチップ内における指定領域Aを、ジャストフォーカス位置で撮像する工程を示した図である。
図4】指定領域Aを撮像したときのパターンPに対応する画像の各画素における輝度値を示した図である。
図5】オートフォーカス機構を用いて、指定領域Aと同じ領域である検査領域Bを撮像する工程を示した図である。
図6】検査領域Bを撮像したときのパターンPに対応する画像の各画素における輝度値を示した図である。
図7】ジャストフォーカス位置で撮像した画像の分散値と、ジャストフォーカス位置から、少しずつ、顕微鏡の高さ位置を上下に変えながら撮像した画像の分散値を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における欠陥検査装置1の構成を模式的に示した図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における欠陥検査装置1は、ウェハ上に形成されたチップ内の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、光学顕微鏡10と、光学顕微鏡10で撮像されたチップの画像の特徴量を算出する画像処理部30と、予めチップ内における指定領域を、ジャストフォーカスで撮像したときの画像に対して、画像処理部30で算出した特徴量を記憶する記憶部40と、を備えている、
光学顕微鏡10は、ウェハ60を載置するステージ11と、ステージ11を保持する顕微鏡本体12と、ウェハ60に対して、照明光Lを照射する照明部13と、チップの画像を撮像する撮像部18と、光学顕微鏡10のオートフォーカス機構を制御する制御部20と、を備えている。
【0017】
照明部13から照射された照明光Lは、集光レンズ14で集光された後、ハーフミラー15で、対物レンズ16の光軸に沿って偏向されて、ウェハ60の表面に照射される。ウェハ60からの反射光は、対物レンズ16、ハーフミラー15、及び結合レンズ17を経て、撮像素子19に入射する。撮像素子19で撮像された画像は、画像処理部30で画像処理される。
【0018】
光学顕微鏡10は、制御部20によって、光学顕微鏡10の高さが、チップの画像を撮像するフォーカス位置に自動制御される。オートフォーカス機構としては、例えば、アクティブ方式と呼ばれる機構を用いることができる。このオートフォーカス機構では、検査対象物であるチップに、赤外光レーザ等の光を照射し、その反射光を光センサーで検出することによって、チップの光軸上の位置を測定する。
【0019】
本実施形態における欠陥検査装置1は、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの有無を判定する判定手段50を備えている。判定手段50は、オートフォーカス機構を用いて、記憶部40に記憶されたチップ内における指定領域と同じ領域である検査領域を撮像する際に、画像処理部30で算出した検査領域における画像の特徴量が、記憶部40に記憶された指定領域における画像の特徴量に対して、所定の量だけ変動したとき、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定する。
【0020】
図2は、本実施形態における欠陥検査装置1を用いて、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの有無を判定する方法を示したフローチャートである。なお、ここでは、判定の指標となる「特徴量」として、撮像した画像の各画素における輝度値の分散値を例に説明する。
【0021】
まず、図3に示すように、ウェハ60上に形成された複数のチップ61のうち、任意のチップ61a内における指定領域Aを、ジャストフォーカス位置で撮像する(ステップS101)。指定領域Aには、パターンPが形成されており、撮像された指定領域Aの画像は、複数の画素で構成されている。なお、ジャストフォーカス位置は、オートフォーカス機構を用いて決めてもよいが、この場合、目視により、撮像された画像が鮮明なジャストフォーカス位置であることを確認する。
【0022】
次に、図4に示すように、指定領域Aを撮像したときのパターンPに対応する画像の各画素70における輝度値(数値は任意単位)を求め、下記の式(1)を用いて、各画素70における輝度値の分散値(σ)を算出する(ステップS102)。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、xは各画素70の輝度値、μは各画素70の輝度値の平均値、nは画素数である。なお、図4に示した各画素70における輝度値は、イメージ図で、実際の輝度値を表すものではない。
【0025】
次に、図5に示すように、オートフォーカス機構を用いて、指定領域Aと同じ領域である検査領域Bを撮像する(ステップS103)。検査領域Bには、指定領域Aと同じ位置に、パターンPが形成されている。なお、検査領域Bの撮像は、チップ61内の欠陥を検査するときの撮像だけでなく、良品画像モデルを学習するときの撮像にも適用することができる。
【0026】
次に、図6に示すように、検査領域Bを撮像したときのパターンPに対応する画像の各画素70における輝度値(数値は任意単位)を求め、上記の式(1)を用いて、各画素70における輝度値の分散値(σ)を算出する(ステップS104)。なお、図6に示した各画素70における輝度値は、パターンPがピントのずれた状態で撮像されたときのイメージ図で、実際の輝度値を表すものではない。
【0027】
次に、ステップS102で求めた分散値(σ)と、ステップS104で求めた分散値(σ)とを比較する(ステップS105)。
【0028】
図6に示すように、パターンPがピントのずれた状態で撮像されたときの画像は、図4に示したジャストフォーカス位置で撮像されたときの画像に比べて、明るいところの画素は、暗いところの画素と混じって暗くなり、暗いところの画素は、明るいところの画素と混じって明るくなる。そのため、画素全体の輝度値は、平均値に近くなるため、ステップS104で算出された分散値(σ)は、ステップS102で算出された分散値(σ)よりも小さくなる。
【0029】
図7は、ジャストフォーカス位置で撮像した画像の分散値と、ジャストフォーカス位置から、少しずつ、顕微鏡の高さ位置を上下に変えながら撮像した画像の分散値を示した表である。ここで、高さ位置の数値は、任意単位で、ゼロがジャストフォーカス位置を示し、マイナスの数値が、ジャストフォーカス位置より高い位置、プラスの数値が、ジャストフォーカス位置より低い位置を示す。図7に示すように、ジャストフォーカス位置から離れるに従い、分散値が小さくなっているのが分かる。
【0030】
このように、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの有無を判定する工程(ステップS106)において、ステップS104で算出された分散値(σ)が、ステップS102で算出された分散値(σ)に対して、所定の量だけ変動したとき、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレが生じていると判定することができる。
【0031】
なお、判定の閾値となる分散値の変動量は、欠陥検査に求められる検出精度や、良品画像モデルに求められる検出感度などの仕様に応じて、適宜決めればよい。
【0032】
本実施形態によれば、検査領域Bにおける画像の分散値(σ)を、ジャストフォーカスで撮像したときの指定領域Aにおける画像の分散値(σ)と比較することによって、簡単で、かつ精度よく、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの有無を判定することができる。これにより、チップ内の欠陥を検査する際、欠陥を見逃したり、欠陥でないところを欠陥として誤検出したりすることを防止することができる。
【0033】
また、複数枚の指定領域における良品画像の特徴を良品画像モデルとして学習する際、良品画像にピントのずれた画像が含まれてしまうことを防止することができる。これにより、検査領域の画像の特徴が良品画像モデルに当てはまらないものを欠陥として識別する処理を行う場合、欠陥を識別する感度が低下するのを防止することができる。
【0034】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、オートフォーカス機構におけるフォーカスズレの判定の指標となる「特徴量」として、撮像した画像の各画素における輝度値の分散値を例に説明したが、これに限定されず、フォーカスズレによって変化する特徴量であれば、他の特徴量を用いてもよい。例えば、図3及び図5に示した指定領域A及び検査領域Bを撮像した画像に対して、画像処理の手法として知られているエッジフィルタ処理を行い、エッジフィルタ処理を行った後の各画素における輝度値の平均値を、特徴量として用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 欠陥検査装置
10 光学顕微鏡
11 ステージ
12 顕微鏡本体
13 照明部
14 集光レンズ
15 ハーフミラー
16 対物レンズ
17 結合レンズ
18 撮像部
19 撮像素子
20 制御部
30 画像処理部
40 記憶部
50 判定手段
60 ウェハ
61、61a チップ
70 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7