(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142891
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】車両周辺監視装置および車両周辺監視方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050017
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 竣祐
(72)【発明者】
【氏名】赤松 秀治
(72)【発明者】
【氏名】向井 裕人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大陽
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 修
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
(57)【要約】
【課題】距離センサを用いて、車両の周辺の障害物を簡易に検知する車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】車両周辺監視装置200は、車両5に搭載されている複数の距離センサ(例えば距離センサ11、12)によって得られた、車両5の周辺の道路に対する複数の反射波R1、R2のそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する障害検知部201を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている複数の距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する複数の反射波のそれぞれの包絡線の差異に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する障害検知部を備える
車両周辺監視装置。
【請求項2】
前記複数の反射波のそれぞれの包絡線は、時間または距離を第1軸とし、前記反射波の強度を第2軸とする座標上の曲線であって、第1の包絡線および前記第1の包絡線と異なる第2の包絡線を含む
請求項1に記載の車両周辺監視装置。
【請求項3】
前記第1の包絡線は、前記複数の距離センサのうちの第1の距離センサによって得られた、前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線であり、
前記第2の包絡線は、前記複数の距離センサのうちの第2の距離センサによって得られた、前記車両の側方の前記道路に対する反射波の包絡線である
請求項2に記載の車両周辺監視装置。
【請求項4】
前記障害検知部は、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線との差分の値が予め決められた閾値よりも大きい場合に、前記障害物が有ると判定する
請求項2または3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項5】
前記障害検知部は、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線との差分である差分曲線に基づいて、前記車両から前記障害物までの距離を導出する
請求項2または3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項6】
前記障害検知部は、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線との差分である差分曲線に基づいて、前記障害物の幅寸法を導出する
請求項2または3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項7】
さらに、前記複数の距離センサの搭載条件の違いを起因として発生する誤差が小さくなるように、前記第1の包絡線を基準として前記第2の包絡線を正規化する正規化部を備える
請求項2または3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項8】
さらに、前記第1の包絡線が前記座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、当該第1の包絡線を前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線として使用できると判定する路面判定部を備える
請求項2または3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項9】
前記路面判定部は、
前記第1の包絡線が前記座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、当該第1の包絡線を前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線として出力するとともにメモリに保存し、
前記第1の包絡線が前記所定の閾値の範囲内にない場合に、前記メモリに保存されている過去の第1の包絡線を前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線として出力する
請求項8に記載の車両周辺監視装置。
【請求項10】
前記路面判定部は、
前記第1の包絡線の全部が前記座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、当該第1の包絡線を前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線として出力し、
前記第1の包絡線の一部が前記所定の閾値の範囲内にない場合に、前記第1の包絡線のうち前記一部を除く残りの部分の包絡線を前記車両の前方または後方の前記道路に対する反射波の包絡線として出力する
請求項8に記載の車両周辺監視装置。
【請求項11】
さらに、前記障害物に対する前記車両の進行方向の角度を導出する角度導出部を備え、
前記複数の反射波のそれぞれの包絡線は、さらに、前記第1の包絡線および前記第2の包絡線と異なる第3の包絡線を含み、
前記第3の包絡線は、前記複数の距離センサのうちの第3の距離センサによって得られた、前記車両の側方の前記道路に対する反射波の包絡線であり、
前記角度導出部は、前記第2の包絡線を用いて導出した前記車両から前記障害物までの距離と、前記第3の包絡線を用いて導出した前記車両から前記障害物までの距離とに基づいて、前記車両の進行方向の角度を導出する
請求項3に記載の車両周辺監視装置。
【請求項12】
さらに、前記車両の速度および舵角に関する情報に基づいて、所定時間経過後における前記車両と前記障害物との距離を予測する距離予測部を備える
請求項11に記載の車両周辺監視装置。
【請求項13】
さらに、前記車両と前記障害物との距離から前記車両と前記障害物との接触可能性を判定する接触判定部を備える
請求項12に記載の車両周辺監視装置。
【請求項14】
前記距離センサは、超音波センサ、レーダまたはライダーである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置。
【請求項15】
車両に搭載されている距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する反射波の包絡線の変化率に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する障害検知部を備える
車両周辺監視装置。
【請求項16】
車両に搭載されている複数の距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する複数の反射波のそれぞれの包絡線の差異に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する
車両周辺監視方法。
【請求項17】
車両に搭載されている距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する反射波の包絡線の変化率に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する
車両周辺監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周辺を監視する車両周辺監視装置、および、車両周辺監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全性向上かつ事故防止のために、車両の周辺の情報を取得してドライバの運転を支援するADAS(Advanced Driving Assistant System)の開発・導入が加速している。
【0003】
車両の周辺の情報を取得するための装置としては、例えば、超音波センサなどの距離センサ、および、カメラなどの撮像装置が挙げられる。特許文献1には、超音波センサおよびカメラを用いて、側溝などの障害物を検知する車両周辺監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばカメラを用いて障害物の検知を行う場合、夜間などの暗闇では車両の周辺の検知精度が落ちてしまうという問題がある。この問題を解決するために特許文献1では赤外線カメラを用いる方法が提案されているが、赤外線カメラは通常のカメラよりも価格が高く、また、新たな撮像装置を車両に搭載する必要があるため部品点数の増大につながる。
【0006】
本開示は、距離センサを用いて車両の周辺の障害物を簡易に検知することができる車両周辺監視装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る車両周辺監視装置は、車両に搭載されている複数の距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する複数の反射波のそれぞれの包絡線の差異に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する障害検知部を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る車両周辺監視装置は、車両に搭載されている距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する反射波の包絡線の変化率に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する障害検知部を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る車両周辺監視方法は、車両に搭載されている複数の距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する複数の反射波のそれぞれの包絡線の差異に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する。
【0010】
本開示の一態様に係る車両周辺監視方法は、車両に搭載されている距離センサによって得られた、前記車両の周辺の道路に対する反射波の包絡線の変化率に基づいて、前記車両の周辺の障害物を検知する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の車両周辺監視装置等によれば、距離センサを用いて車両の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る車両周辺監視装置を備える車両周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図2】車両に搭載されている距離センサの搭載位置の一例を示す図である。
【
図3】車両周辺監視装置で検知する道路および障害物の一例を示す図である。
【
図4】車両の前方を観測するための距離センサによって得られる反射波および包絡線の一例を示す図である。
【
図5】車両の側方を観測するための距離センサによって得られる反射波および包絡線の一例を示す図である。
【
図6】道路上の障害物の有無によって表れる包絡線を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る車両周辺監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係る車両周辺監視装置を備える車両周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図9】第1の包絡線、第2の包絡線、および、第1の包絡線と第2の包絡線との差分である差分曲線を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係る車両周辺監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態3に係る車両周辺監視装置を示すブロック図である。
【
図12】通常の路面であるか否かを判定するために設定された所定の閾値を示す図である。
【
図13】実施の形態3に係る車両周辺監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態4の車両周辺監視装置で取得した第1の包絡線を示す図である。
【
図15】実施の形態5に係る車両周辺監視装置を示すブロック図である。
【
図16】車両に搭載された距離センサと障害物との位置関係を示す図である。
【
図17】実施の形態5に係る車両周辺監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図18】実施の形態6に係る車両周辺監視装置を備える車両周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図19】所定時間経過後における車両および障害物の位置関係を示す図である。
【
図20】実施の形態7に係る車両周辺監視装置を備える車両周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図21】実施の形態7に係る車両周辺監視装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、複数の実施の形態のうちの2つ以上の実施の形態を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0014】
(実施の形態1)
[構成]
実施の形態1に係る車両周辺監視装置100の構成について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態1に係る車両周辺監視装置100を備える車両周辺監視システム1を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、車両周辺監視システム1は、車両5に搭載されている複数の距離センサ11、12および13と、車両5の周辺を監視する車両周辺監視装置100と、を備える。
【0017】
複数の距離センサ11~13のそれぞれは、車両5上の異なる位置に設けられている。各距離センサ11~13は、音または光などのセンシング波を道路に向けて発信し、道路で反射した反射波を受信するセンサである。各距離センサ11~13は、例えば、超音波センサ、レーダまたはライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)である。
【0018】
図2は、車両5に搭載されている距離センサ11~13の搭載位置の一例を示す図である。
【0019】
図2には、複数の距離センサ11~13として、2つの第1の距離センサ11、2つの第2の距離センサ12、および、2つの第3の距離センサ13が示されている。なお、
図1に示されている距離センサ11~13は、
図2に示すそれぞれ2つの距離センサ11~13のうち、車両5の左側に位置する距離センサ11~13である。
【0020】
距離センサ11は、車両5の前方の道路を観測するためのセンサである。距離センサ11は、バンパーなどの車両5の前面に設けられており、車両5の前方の路面状況を観測する。車両5の前方は、走行面となっており、障害物Obの存在する可能性が低いと考えられる。
【0021】
距離センサ12は、車両5の側方の道路を観測するためのセンサである。距離センサ12は、サイドボディまたはサイドミラーなどの車両5の側面に設けられており、車両5の側方の路面状況を観測する。2つの側方のうちの一方は、路肩となっており、障害物Obが存在する可能性がある。
【0022】
距離センサ13は、車両5の斜め側方(言い換えると斜め前方)の道路を観測するためのセンサである。距離センサ13は、車両5の前面と側面との間に位置するコーナ面に設けられており、車両5の斜め側方の路面状況を観測する。2つの斜め側方のうちの一方は、走行面および路肩となっており、障害物Obが存在する可能性がある。なお、以下において、車両5の前方および後方と異なる方向、すなわち、車両5の側方および斜め側方の両方を含めて側方と呼ぶ場合がある。
【0023】
図3は、車両周辺監視装置100で検知する道路および障害物Obの一例を示す図である。
【0024】
図3の(a)には、障害物Obが無い場合の平坦な道路が示され、
図3の(b)には、側溝などの障害物Obが有る道路が示され、
図3の(c)には、縁石などの障害物Obが有る道路が示されている。
【0025】
障害物Obとは、道路上に位置する縁石、ガードレール、側溝および陥没体など、車両5にとって障害となる物体である。障害物Obは、走行面とは異なる形態を有している。
【0026】
距離センサ11~13によって得られるセンシング結果について、距離センサ11および12を例に挙げて説明する。
【0027】
図4は、車両5の前方を観測するための距離センサ11によって得られる反射波R1および包絡線W1の一例を示す図である。
図5は、車両5の側方を観測するための距離センサ12によって得られる反射波R2および包絡線W2の一例を示す図である。
【0028】
図4の(a)には、距離センサ11から送波されるセンシング波(直接波)が示されている。
図5の(a)には、距離センサ12から送波されるセンシング波が示されている。各センシング波は、例えば、50ms周期で各距離センサ11、12から発信される。
【0029】
図4の(b)には、車両5の前方の道路(走行面)で反射した反射波R1が示されている。この例では、比較的平坦な道路で反射した反射波R1が示されている。
図5の(b)には、車両5の側方の道路で反射した反射波R2が示されている。この例では、車両5の側方の道路に陥没体が存在している場合の反射波R2が示されている。
【0030】
図4の(c)には、距離センサ11で受波した反射波R1が示され、
図5の(c)には、距離センサ12で受波した反射波R2が示されている。各反射波R1、R2は、時間を第1軸(横軸)とし、反射波R1、R2の強さであるパワーを第2軸(縦軸)とする座標上の波形曲線として表されている。
【0031】
図4の(d)には、
図4の(c)に示す反射波R1をヒルベルト変換することで得られた包絡線W1が示されている。
図5の(d)には、
図5の(c)に示す反射波R2をヒルベルト変換することで得られた包絡線W2が示されている。各包絡線W1、W2は、時間を第1軸とし、反射波R1、R2の強さであるパワーを第2軸とする座標上の曲線として表されている。
図4の(d)に示すように、道路上に障害物Obが無い場合は、包絡線W1は緩やかな曲線となり、
図5の(d)に示すように、道路上に陥没体が存在している場合、包絡線W2は凹みを有する曲線となる。
【0032】
なお、上記では距離センサ11および12を例に挙げて説明したが、距離センサ13についても同様である。距離センサ11~13で検出されたセンシング結果は、車両周辺監視装置100へ出力される。
【0033】
車両周辺監視装置100は、車両5の周辺の障害物Obを検知する障害検知部101と、メモリ102と、を備えている。
【0034】
メモリ102には、車両5上における距離センサ11~13の搭載位置に関する情報が記憶されている。また、メモリ102には、ソフトウェアプログラムが格納されている。車両周辺監視装置100が備える障害検知部101等の機能は、ソフトウェアプログラムを作動することで実現される。
【0035】
障害検知部101は、距離センサ11~13によって得られたセンシング結果を用いて障害物Obを検知する。例えば、障害検知部101は、距離センサ12によって得られた、車両5の周辺の道路に対する反射波R2の包絡線W2の変化率に基づいて、障害物Obを検知する。
【0036】
図6は、道路上の障害物Obの有無によって表れる包絡線W2を示す図である。
【0037】
図6の(a)には、道路上に障害物Obが無いときの包絡線W2が示され、
図6の(b)には、道路上に縁石などの突起状の障害物Obが有るときの包絡線W2が示され、
図6の(c)には、道路上に側溝などの陥没状の障害物Obがあるときの包絡線W2が示されている。各包絡線W2は、車両5の側面に設けられた距離センサ12からの水平距離を第1軸とし、反射波R2の強さであるパワー(波高値)を第2軸とする座標上の曲線として表されている。なお、距離センサ12からの水平距離は、センシング波を発してから反射波R2が返ってくるまでの時間、および、距離センサ12の高さ座標に基づいて算出される。本実施の形態では、距離センサ12からの水平距離を、車両5を平面視したときの車両5の側面からの距離として扱い、車両5の側面からの距離のことを、車両5からの距離と呼ぶ。
【0038】
障害検知部101は、距離センサ12によって得られる反射波R2の包絡線W2の変化率を検知する。包絡線W2の変化率は、例えば、所定距離間におけるパワーの変化量に基づいて求められる。例えば、障害検知部101は、
図6の(a)に示すように、パワーの変化量が全体的に小さい場合、すなわち変化率が小さい場合は障害物Obが無いと判定する。また、障害検知部101は、
図6の(b)および(c)に示すように、パワーの変化量の大きい箇所が存在する場合、すなわち変化率の大きい箇所が存在する場合は障害物Obが有ると判定する。
【0039】
また、障害検知部101は、
図6の(b)に示すように、包絡線W2のパワーが正の方向に変化する場合、変化している箇所に突起状の障害物Obがあると判定する。また、障害検知部101は、
図6の(c)示すように、包絡線W2のパワーが負の方向に変化する場合、変化している箇所に陥没状の障害物Obがあると判定する。障害検知部101で検知および判定された結果は、外部の報知装置等へ出力される。
【0040】
この構成によれば、例えば、車両5に既に搭載されている距離センサ(例えば距離センサ12)を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0041】
[動作]
実施の形態1に係る車両周辺監視装置100の動作について説明する。
【0042】
図7は、車両周辺監視装置100の動作を示すフローチャートである。
【0043】
まず、車両周辺監視装置100は、車両5に搭載されている距離センサから、車両5の周辺の道路に対する反射波の包絡線を取得する(ステップS110)。具体的には、車両周辺監視装置100は、車両5の側面に設けられた距離センサ12から、車両5の側方の道路に対する反射波R2の包絡線W2を取得する。
【0044】
次に、障害検知部101は、取得した包絡線W2に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する(ステップS120)。障害検知部101は、包絡線W2の変化率の大きさに基づいて、車両5の側方における障害物Obの有無を検知する。また、障害検知部201は、包絡線W2のパワーが正の方向に変化している場合に、車両5の側方に突起状の障害物Obがあると判定する。また、障害検知部101は、包絡線W2のパワーが負の方向に変化している場合に、車両5の側方に陥没状の障害物Obがあると判定する。
【0045】
以降、ステップS110およびS120に示す処理が繰り返し実行される。この方法によれば、例えば、車両5に既に搭載されている距離センサ12を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0046】
[効果等]
本実施の形態に係る車両周辺監視装置100は、車両5に搭載されている距離センサ(例えば距離センサ12)によって得られた、車両5の周辺の道路に対する反射波R2の包絡線W2の変化率に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する障害検知部101を備える。
【0047】
この構成によれば、例えば、車両5に既に搭載されている距離センサ12を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0048】
本実施の形態に係る車両周辺監視方法は、車両5に搭載されている距離センサ12によって得られた、車両5の周辺の道路に対する反射波R2の包絡線W2の変化率に基づいて、車両5の周辺の障害物を検知する。
【0049】
この方法によれば、例えば、車両5に既に搭載されている距離センサ12を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0050】
なお、上記では、各距離センサ11、12および13が、車両5に2つずつ搭載されている例を示したが、それに限られず、各距離センサ11、12および13は、車両5に1つずつ搭載されてもよい。上記では、車両5に距離センサ12および13の両方が搭載されている例を示したが、それに限られず、車両5には、距離センサ12および13の少なくとも一方が搭載されていればよい。また、車両5には、車両5の後方、車両5の後ろ側の側方および後ろ側の斜め側方を観測するための他の距離センサが設けられてもよい。
【0051】
また、上記では、距離センサ12が、包絡線W2に関するセンシング結果を車両周辺監視装置100へ出力する例を示したが、それに限られない。例えば、反射波R2に関するセンシング結果が距離センサ12から車両周辺監視装置100へ出力される場合、車両周辺監視装置100は、取得した反射波R2に基づいて包絡線W2に関する情報を生成し、生成した包絡線W2に基づいて障害物Obを検知してもよい。距離センサ11、13についても同様である。
【0052】
(実施の形態2)
[構成]
実施の形態2に係る車両周辺監視装置200の構成について説明する。実施の形態2では、複数の反射波のそれぞれの包絡線の差異に基づいて、障害物Obを検知し、車両5から障害物Obまでの距離等を算出する例について説明する。また、実施の形態2では、包絡線を正規化する例について説明する。
【0053】
以降において、複数の距離センサによって得られた複数の反射波の一部または全部を指して反射波Rと呼び、複数の反射波のそれぞれに対応する複数の包絡線の一部または全部を指して包絡線Wと呼ぶ場合がある。
【0054】
図8は、実施の形態2に係る車両周辺監視装置200を備える車両周辺監視システム1を示すブロック図である。
【0055】
車両周辺監視システム1は、車両5に搭載されている複数の距離センサ11、12および13と、車両5の周辺を監視する車両周辺監視装置200と、を備える。各距離センサ11~13は、実施の形態1と同様である。
【0056】
実施の形態2に係る車両周辺監視装置200は、包絡線Wを正規化する正規化部203と、障害物Obを検知する障害検知部201と、メモリ102と、を備える。メモリ102は、実施の形態1と同様である。先に、障害検知部201について説明する。
【0057】
障害検知部201は、複数の距離センサ11~13によって得られた、車両5の周辺の道路に対する複数の反射波Rのそれぞれの包絡線Wの差異に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する。
【0058】
図9は、第1の包絡線W1、第2の包絡線W2、および、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分である差分曲線Wdを示す図である。各包絡線W1、W2は、車両5からの距離を第1軸とし、反射波R1、R2の強さであるパワーを第2軸とする座標上の曲線として表されている。
【0059】
図9の(a)に示す第1の包絡線W1は、第1の距離センサ11によって得られた、車両5の前方の道路に対する反射波Rの包絡線である。この第1の包絡線W1には、車両5の前方に障害物Obが検出されていないときの状態が示されている。
【0060】
図9の(b)に示す第2の包絡線W2は、第2の距離センサ12によって得られた、車両5の側方の道路に対する反射波Rの包絡線である。第2の包絡線W2には、車両5の側方に陥没状の障害物Obが検出されたときの状態が示されている。
【0061】
図9の(c)に示す差分曲線Wdは、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分をとることで求められる。具体的にはこの差分曲線Wdは、第2の包絡線W2から第1の包絡線W1を減算することで求められている。
【0062】
障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2とを比較し、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分が、予め決められた閾値THobjよりも大きい場合に、障害物Obが有ると判定する。第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分をとるのは、路面状況に合わせた精度の良い判定を行うためである。なお、閾値THobjは、障害物Obの形状、大きさ、材質等に基づいて予め決められた値であり、パワー0(ゼロ)を基準としてプラス側およびマイナス側に設定される。プラス側の閾値THobjおよびマイナス側の閾値THobjは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0063】
また、障害検知部201は、上記の差分曲線Wdに基づいて、車両5から障害物Obまでの距離D2を導出する。
図9の(c)に示すように、障害検知部201は、差分曲線Wdのパワーが閾値TH
objを初めて超えた地点を障害物Obまでの距離D2とする。
【0064】
例えば、障害検知部201は、差分曲線Wdのパワーがマイナス側の閾値TH
objを初めて超えた地点に陥没状の物体があると判断し、当該地点を障害物Obまでの距離D2とする(
図9の(c)参照)。例えば障害検知部201は、差分曲線Wdのパワーがプラス側の閾値TH
objを初めて超えた地点に突起状の物体があると判断し、当該地点を障害物Obまでの距離D2とする(図示省略)。
【0065】
また、障害検知部201は、差分曲線Wdに基づいて、障害物Obの幅寸法L2を導出する。障害物Obの幅寸法L2とは、車両5の側面から遠ざかる方向における障害物Obの長さである。障害検知部201は、差分曲線Wdのパワーが初めて閾値THobjを超えた地点から差分曲線Wdのパワーが再び閾値THobjの範囲内に戻った地点までの距離を幅寸法L2とする。なお、差分曲線Wdのパワーが閾値THobjの範囲内に戻らなかった場合は、距離センサ12によって測定できる範囲までを幅寸法L2としてもよい。障害検知部201で検知された検知結果は、外部の報知装置等へ出力される。
【0066】
次に、包絡線Wを正規化する正規化部203について説明する。包絡線Wの正規化処理は、障害検知部201で障害物Obを検知する前に実行される。
【0067】
車両5に設けられる各距離センサ11~13は、車両5に搭載される位置、高さ、向き等によって路面までの距離や指向減衰特性が変化する。そのため、各距離センサ11~13によって得られる各包絡線Wのデータには、搭載条件の違いによる誤差が含まれる。そこで正規化部203は、各距離センサ11~13の搭載条件の違いを起因として発生する複数の包絡線Wの誤差が小さくなるように、一方の包絡線Wを基準として他方の包絡線Wの正規化を行う。
【0068】
例えば、正規化部203は、第1の包絡線W1を基準として第2の包絡線W2を正規化するため、下記の(式1)に示すように、包絡線W2に正規化項kを掛け合わせることで、正規化後の包絡線W2’を導出する。
【0069】
【0070】
正規化項kは、距離センサ11、12の仕様または距離センサ11、12を使った路面の実測値に基づいて適宜設定される。なお、以降では正規化後の包絡線W2’も包絡線W2と表記する。正規化後の包絡線W2に関する情報は、障害検知部201へ出力される。障害検知部201は、包絡線W1と正規化後の包絡線W2とを比較することで、車両5の周辺の障害物Obを検知する。
【0071】
実施の形態2の車両周辺監視装置200によれば、例えば、車両5に既に搭載されている複数の距離センサ(例えば距離センサ11、12)を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。また、複数の距離センサ11、12から得られたそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて障害物Obを検知するので、障害物Obを精度よく検知することができる。また、正規化後の包絡線W2を用いるので、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0072】
なお上記では、正規化部203が、第1の包絡線W1を基準として第2の包絡線W2を正規化する例を示したが、それに限られない。例えば、正規化部203は、第2の包絡線W2を基準として第1の包絡線W1を正規化してもよい。また上記では、1つの距離センサ12に対応する包絡線W2に関する情報を障害検知部201へ出力する例を示したが、それに限られない。例えば、正規化部203は、複数の距離センサ11、13に対応する各包絡線Wを正規化処理し、正規化後の各包絡線Wを障害検知部201へ出力してもよい。
【0073】
[動作]
実施の形態2に係る車両周辺監視装置200の動作について説明する。
【0074】
図10は、車両周辺監視装置200の動作を示すフローチャートである。
【0075】
まず、車両周辺監視装置200は、車両5に搭載されている複数の距離センサから、車両5の周辺の道路に対する反射波の包絡線を取得する(ステップS210)。具体的には、車両周辺監視装置200は、距離センサ11から、車両5の前方の道路に対する反射波R1の第1の包絡線W1を取得し、また、距離センサ12から、車両5の側方の道路に対する反射波R2の第2の包絡線W2を取得する。
【0076】
次に、正規化部203は、複数の距離センサ11、12の搭載条件の違いを起因として発生する誤差が小さくなるように、第1の包絡線W1を基準として第2の包絡線W2を正規化する(ステップS220)。正規化部203は、正規化後の第2の包絡線W2を障害検知部201へ出力する。
【0077】
次に、障害検知部201は、距離センサ11から取得した第1の包絡線W1および正規化後の第2の包絡線W2に基づいて、車両5の周辺の障害物Obの有無を判定する(ステップS230)。
【0078】
障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分の値が予め決められた閾値TH
objよりも小さい場合に、障害物Obが無いと判定し(S230でNo)、
図10に示すフローを終了する。
【0079】
一方、障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分の値が予め決められた閾値THobjよりも大きい場合に、障害物Obが有ると判定する(S230でYes)。このとき障害検知部201は、差分曲線Wdのパワーが、予め決められたプラス側の閾値THobj以上の値なら突起状の障害物Obであると判定し、予め決められたマイナス側の閾値-THobj以下の値なら陥没状の障害物Obであると判定する。
【0080】
また、障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分である差分曲線Wdに基づいて、車両5から障害物Obまでの距離D2、および、障害物Obの幅寸法L2を導出する(ステップS240)。
【0081】
なお、障害検知部201は、障害物Obが陥没状で、かつ、障害物Obの幅寸法L2が特定の閾値(例えばタイヤ幅)以下である場合には、車両5は脱輪する可能性がないので、検知した障害物Obは問題となる障害物Obでないと判断してもよい。
【0082】
また、障害検知部201は、複数の距離センサを用いて複数の障害物Obを検知した場合、車両5から一番近い障害物Obを問題となる障害物Obと判断し、この障害物Obまでの距離、および、障害物Obの幅寸法を導出してもよい。
【0083】
以降、ステップS210~S240に示す処理が繰り返し実行される。この方法によれば、例えば、車両5に既に搭載されている距離センサを用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0084】
[効果等]
本実施の形態に係る車両周辺監視装置200は、車両5に搭載されている複数の距離センサ(例えば距離センサ11、12)によって得られた、車両5の周辺の道路に対する複数の反射波R1、R2のそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する障害検知部201を備える。
【0085】
この構成によれば、例えば、車両5に既に搭載されている複数の距離センサ11、12を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。また、複数の距離センサ11、12から得られたそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて障害物Obを検知するので、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0086】
また、複数の反射波R1、R2のそれぞれの包絡線は、時間または距離を第1軸とし、反射波R1、R2の強度を第2軸とする座標上の曲線であって、第1の包絡線W1および第1の包絡線W1と異なる第2の包絡線W2を含んでいてもよい。
【0087】
この構成によれば、複数の距離センサ11、12から得られた第1の包絡線W1および第2の包絡線W2の差異に基づいて障害物Obを検知することができる。これにより、距離センサ11、12を用いて、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0088】
また、第1の包絡線W1は、複数の距離センサのうちの第1の距離センサ11によって得られた、車両5の前方または後方の道路に対する反射波R1の包絡線であり、第2の包絡線W2は、複数の距離センサのうちの第2の距離センサ12によって得られた、車両5の側方の道路に対する反射波R2の包絡線であってもよい。
【0089】
この構成によれば、車両5の前方または後方の道路に対応する第1の包絡線W1、および、車両5の側方の道路に対応する第2の包絡線W2の差異に基づいて障害物Obを検知することができる。これにより、距離センサ11、12を用いて、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0090】
また、障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分の値が予め決められた閾値THobjよりも大きい場合に、障害物Obが有ると判定してもよい。
【0091】
この構成によれば、路面状況に合わせた精度の良い判定を行うことが可能となる。これにより、距離センサ11、12を用いて、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0092】
また、障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分である差分曲線Wdに基づいて、車両5から障害物Obまでの距離D2を導出してもよい。
【0093】
この構成によれば、距離センサ11、12を用いて、車両5から障害物Obまでの距離D2を簡易に導出することができる。
【0094】
また、障害検知部201は、第1の包絡線W1と第2の包絡線W2との差分である差分曲線Wdに基づいて、障害物Obの幅寸法L2を導出してもよい。
【0095】
この構成によれば、距離センサ11、12を用いて、障害物Obの幅寸法L2を簡易に導出することができる。
【0096】
また、車両周辺監視装置200は、さらに、複数の距離センサ11、12の搭載条件の違いを起因として発生する誤差が小さくなるように、第1の包絡線W1を基準として第2の包絡線W2を正規化してもよい。
【0097】
この構成によれば、正規化後の包絡線W2を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0098】
また、距離センサ11、12は、超音波センサ、レーダまたはライダーであってもよい。
【0099】
これによれば、超音波センサ、レーダまたはライダーを用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。
【0100】
本実施の形態に係る車両周辺監視方法は、車両5に搭載されている複数の距離センサ(例えば距離センサ11、12)によって得られた、車両5の周辺の道路に対する複数の反射波R1、R2のそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて、車両5の周辺の障害物Obを検知する。
【0101】
この方法によれば、例えば、車両5に既に搭載されている複数の距離センサ11、12を用いて、障害物Obを検知することができる。これにより、車両5の周辺の障害物を簡易に検知することができる。また、複数の距離センサ11、12から得られたそれぞれの包絡線W1、W2の差異に基づいて障害物Obを検知するので、障害物Obを精度よく検知することができる。
【0102】
(実施の形態3)
[構成]
実施の形態3に係る車両周辺監視装置300の構成について説明する。例えば、車両5が斜めに傾いている場合、車両5の前面に設けられた距離センサ11が、斜め側方に位置する障害物Obを検出することがある。その場合、距離センサ11によって得られる包絡線W1が包絡線W2と似たような波形曲線となり、包絡線W1およびW2の差分をとる方法では障害物Obを正確に検知できないことがある。そこで実施の形態3では、距離センサ11によって得られた包絡線W1を、通常の路面のデータとして使用できるか否かを判定した後に、障害物Obを検知する例について説明する。
【0103】
図11は、実施の形態3に係る車両周辺監視装置300を示すブロック図である。なお、
図11には、実施の形態2と同様の距離センサ11、12および13が示されている。
【0104】
実施の形態3に係る車両周辺監視装置300は、路面判定部304と、正規化部203と、障害検知部201と、メモリ102と、を備える。
【0105】
実施の形態3のメモリ102には、通常の路面であるか否かを判定するために設定された所定の閾値が記憶されている。
【0106】
図12は、通常の路面であるか否かを判定するために設定された所定の閾値を示す図である。
【0107】
所定の閾値は、
図12に示すように、上限閾値および下限閾値としてメモリ102に設定されている。上限閾値および下限閾値のそれぞれは、標準的な包絡線Wsに対して所定の間隔をあけながら、標準的な包絡線Wsに沿うように設定されている。標準的な包絡線Wsおよび所定の閾値のそれぞれは、距離センサ11を使った路面の実測値に基づいて適宜設定される。
【0108】
路面判定部304は、距離センサ11によって得られた第1の包絡線W1が、
図12に示す座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、すなわち上限閾値と下限閾値との間に有る場合に、この第1の包絡線W1を車両5の前方の道路に対する反射波R1の包絡線として使用できると判定する。
【0109】
路面判定部304は、使用できると判定した第1の包絡線W1に関する情報を障害検知部201へ出力する。障害検知部201は、路面判定部304から出力された第1の包絡線W1を用いて障害物Obの検知を行う。また、路面判定部304は、第1の包絡線W1に関する情報を、メモリ102へ出力して記憶させる。メモリ102に記憶された第1の包絡線W1に関する情報は、例えば、距離センサ11によって得られた第1の包絡線W1が、通常の路面のデータとして使用できない場合に、その代わりとして使用される。つまり路面判定部304は、第1の包絡線W1が所定の閾値の範囲内にない場合に、メモリ102に保存されている過去の第1の包絡線W1を車両5の前方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力する。
【0110】
[動作]
実施の形態3に係る車両周辺監視装置300の動作について説明する。
【0111】
図13は、車両周辺監視装置300の動作を示すフローチャートである。
【0112】
まず、車両周辺監視装置300は、距離センサ11から第1の包絡線W1を取得し、また、距離センサ12から第2の包絡線W2を取得する(ステップS310)。
【0113】
次に、路面判定部304は、距離センサ11よって得られた第1の包絡線W1が所定の閾値の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS320)。このステップS320の判断は、車両5および車両周辺監視装置300の稼働中に随時実行される。
【0114】
路面判定部304は、第1の包絡線W1が所定の閾値の範囲内にある場合(S320でYes)、第1の包絡線W1を通常の路面のデータとして使用できると判断し、この第1の包絡線W1に関する情報を障害検知部201へ出力する(ステップS330)。また、路面判定部304は、この第1の包絡線W1に関する情報をメモリ102へ出力し、メモリ102に保存する(ステップS340)。
【0115】
一方、路面判定部304は、第1の包絡線W1が所定の閾値の範囲内にない場合(S320でNo)、第1の包絡線W1を通常の路面のデータとして使用できないと判断する。この場合、路面判定部304は、メモリ102に記憶されている過去の第1の包絡線W1に関する情報を読み出し、過去の第1の包絡線W1に関する情報を障害検知部201へ出力する(ステップS350)。以降、実施の形態2のステップS220~S240が実行される。
【0116】
[効果等]
本実施の形態に係る車両周辺監視装置300は、さらに、第1の包絡線W1が座標(第1軸および第2軸を有する座標)上において所定の閾値の範囲内にある場合に、第1の包絡線W1を車両5の前方または後方の道路に対する反射波の包絡線として使用できると判定する路面判定部304を備える。
【0117】
この構成によれば、距離センサ11によって得られた第1の包絡線W1を、通常の路面のデータとして使用できるか否かを判定することができる。そのため、例えば車両5が斜めに傾いている場合であっても、障害物Obを検知することが可能となる。これにより、障害物Obを正しく検知することが可能となる。
【0118】
また、路面判定部304は、第1の包絡線W1が上記座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、第1の包絡線W1を車両5の前方または後方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力するとともにメモリ102に保存し、第1の包絡線W1が所定の閾値の範囲内にない場合に、メモリ102に保存されている過去の第1の包絡線W1を車両5の前方または後方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力してもよい。
【0119】
この構成によれば、例えば車両5が斜めに傾いている場合であっても、過去の第1の包絡線W1に関する情報を用いて、障害物Obを検知することが可能となる。これにより、障害物Obを正しく検知することができる。
【0120】
(実施の形態4)
[構成]
実施の形態4に係る車両周辺監視装置400の構成について説明する。例えば、実施の形態3において、距離センサ11によって得られた第1の包絡線W1が通常の路面のデータとして使用できない場合、メモリ102から過去の第1の包絡線W1のデータを読み出すための時間が必要となる。そこで実施の形態4では、距離センサ11から得られた第1の包絡線W1のうちの使える部分を使って障害物Obを検知することで、検知時間を短縮する例について説明する。
【0121】
実施の形態4に係る車両周辺監視装置400は、実施の形態3と同様に、路面判定部304と、正規化部203と、障害検知部201と、メモリ102と、を備える(
図11参照)。
【0122】
路面判定部304は、第1の包絡線W1の全部が座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、実施の形態3と同様に、第1の包絡線W1を通常の路面の包絡線として出力する。一方、路面判定部304は、第1の包絡線W1の一部が所定の閾値の範囲内にない場合、以下に示す処理を行う。
【0123】
図14は、車両周辺監視装置400で取得した第1の包絡線W1を示す図である。
【0124】
図14には、第1の包絡線W1のうちの一部が上限閾値を超え、当該一部を除く残りの部分が所定の閾値の範囲内にある例が示されている。
【0125】
実施の形態4の路面判定部304は、第1の包絡線W1の一部が所定の閾値の範囲内にない場合に、第1の包絡線W1のうち一部を除く残りの部分の包絡線を車両5の前方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力する。すなわち路面判定部304は、第1の包絡線W1のうち一部を除く残りの部分の包絡線を通常の路面のデータとみなし、残りの部分の包絡線に関する情報を障害検知部201へ出力する。
【0126】
なお、残りの部分の包絡線を通常の路面のデータとみなすためには、残りの部分の包絡線の第1軸(横軸)方向の距離が、車両5の安全を確保するのに十分な距離であることが望ましい。
【0127】
[効果等]
実施の形態4の路面判定部304は、第1の包絡線W1の全部が座標上において所定の閾値の範囲内にある場合に、第1の包絡線W1を車両5の前方または後方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力し、第1の包絡線W1の一部が所定の閾値の範囲内にない場合に、第1の包絡線W1のうち一部を除く残りの部分の包絡線を車両5の前方または後方の道路に対する反射波R1の包絡線として出力する。
【0128】
このように、第1の包絡線W1の一部が所定の閾値の範囲内にない場合に、一部を除く残りの部分の包絡線を使うことで、メモリ102から過去の第1の包絡線W1に関する情報を読み出す必要がなくなる。これにより、障害物Obを検知する時間を短縮することができる。
【0129】
(実施の形態5)
[構成]
実施の形態5に係る車両周辺監視装置500の構成について説明する。実施の形態5では、車両5の進行方向の角度θを導出する例について説明する。
【0130】
図15は、実施の形態5に係る車両周辺監視装置500を示すブロック図である。
【0131】
車両周辺監視装置500は、角度導出部505と、路面判定部304と、正規化部203と、障害検知部201と、メモリ102と、を備える。路面判定部304、正規化部203、障害検知部201およびメモリ102は、実施の形態4と同様である。
【0132】
角度導出部505は、障害物Obに対する車両5の進行方向の角度θを導出する。実施の形態5では、第2の包絡線W2および第3の包絡線W3を用いて車両5の進行方向の角度θを導出する。第3の包絡線W3は、第3の距離センサ13によって得られた、車両5の側方の道路に対する反射波R3の包絡線である。なお、ここで説明する包絡線Wは、車両5を平面視した場合に、障害物Obに対して垂直方向に戻ってくる反射波Rの包絡線である。
【0133】
図16は、車両5に搭載された距離センサ12、13と障害物Obとの位置関係を示す図である。
【0134】
図16の(a)には、車両5が、障害物Obに対して角度θで進行する例が示されている。距離センサ12、13の搭載位置は、車両5の後輪軸と車両5の中心線との交点を原点0とし、車両5の進行方向をX軸、車両5の幅方向をY軸とした座標で表されている。
図16の(b)には、距離センサ12、13および障害物Obの位置関係に着目した図が示されている。
【0135】
角度導出部505は、メモリ102に記憶されている距離センサ12、13の搭載位置に関する情報を取得する。そして、角度導出部505は、第2の包絡線W2を用いて導出した車両5から障害物Obまでの距離D2と、第3の包絡線W3を用いて導出した車両5から障害物Obまでの距離D3とに基づいて、角度θを導出する。
【0136】
[動作]
実施の形態5に係る車両周辺監視装置500の動作について説明する。
【0137】
図17は、車両周辺監視装置500の動作を示すフローチャートである。
【0138】
角度導出部505は、障害検知部201によって導出した車両5から障害物Obまでの距離D2、D3を取得する(ステップS510)。また、角度導出部505は、メモリ102に記憶されている距離センサ12の搭載位置(X12,Y12)、および、距離センサ13の搭載位置(X13,Y13)を取得する(ステップS520)。また、角度導出部505は、ステップS510およびS520によって得た値を、以下の(式2)に代入することで、障害物Obに対する車両5の進行方向の角度θを算出する(ステップS530)。
【0139】
【0140】
(式2)を近似式としているのは、
図16の(b)において、距離センサ12、13が直線上に配置されていない場合もあるからである。その場合であっても、(式3)に示すように、距離センサ12、13の搭載位置の差(Y13-Y12)を、距離D3またはD2よりも十分に小さく設定することで、角度θを近似式である(式2)で導出することができる。
【0141】
【0142】
[効果等]
実施の形態5の車両周辺監視装置500は、さらに、障害物Obに対する車両5の進行方向の角度θを導出する角度導出部505を備える。複数の反射波のそれぞれの包絡線は、さらに、第1の包絡線W1および第2の包絡線W2と異なる第3の包絡線W3を含み、第3の包絡線W3は、複数の距離センサ11~13のうちの第3の距離センサ13によって得られた、車両5の側方の道路に対する反射波R3の包絡線である。角度導出部505は、第2の包絡線W2を用いて導出した車両5から障害物Obまでの距離D2と、第3の包絡線W3を用いて導出した車両5から障害物Obまでの距離D3とに基づいて、車両5の進行方向の角度θを導出する。
【0143】
このように、車両周辺監視装置500が角度導出部505を備えることで、第2の距離センサ12および第3の距離センサ13を用いて、障害物Obに対する車両5の進行方向の角度θを簡易に導出することができる。
【0144】
(実施の形態6)
[構成]
実施の形態6に係る車両周辺監視装置600の構成について説明する。実施の形態6では、所定時刻から所定時間経過後における車両5と障害物Obとの距離を予測する例について説明する。
【0145】
図18は、車両周辺監視装置600を備える車両周辺監視システム1Aを示すブロック図である。
【0146】
車両周辺監視システム1Aは、複数の距離センサ11、12および13と、車両5の周辺を監視する車両周辺監視装置600と、を備える。各距離センサ11~13は、実施の形態1と同様である。また、車両周辺監視システム1Aは、速度センサ50および舵角センサ60を備える。
【0147】
実施の形態6に係る車両周辺監視装置600は、距離予測部606と、角度導出部505と、路面判定部304と、正規化部203と、障害検知部201と、メモリ102と、を備える。角度導出部505、路面判定部304、正規化部203、障害検知部201、メモリ102は、実施の形態5と同様である。
【0148】
距離予測部606は、車両5の速度および舵角に関する情報に基づいて、所定時刻から所定時間経過後における車両5と障害物Obとの距離を予測する。
【0149】
図19は、所定時間経過後における車両5および障害物Obの位置関係を示す図である。
【0150】
図19の(a)の下図には、所定時刻における車両5の位置と障害物Obまでの距離D
meaが示され、上図には、所定時刻から所定時間tを経過した後の車両5の位置と障害物Obまでの距離D
preが示されている。
図19の(b)には、車両5の速度vを障害物Obに対して平行な成分と垂直な成分とに分解した図が表されている。
【0151】
距離予測部606は、角度導出部505にて算出した車両5から障害物Obまでの距離D2、D3、および、障害物Obに対する車両5の進行方向の角度θを取得する。距離予測部606は、取得した距離D2、D3のうちの短い距離を最小の距離Dmeaとして選択する。また、距離予測部606は、速度センサ50から車両5の速度vを取得し、舵角センサ60から車両5の舵角θstrを取得する。そして距離予測部606は、所定時刻から所定時間tを経過した後の車両5と障害物Obとの予測距離である距離Dpreを以下の(式4)を用いて算出する。
【0152】
【0153】
なお、(式4)では、速度v、角度θおよび舵角θstrが時間の関数で表されているが、現状のまま走行した場合に障害物Obと接触するか否かを判定する場合は、以下の(式5)で算出した距離Dpreを予測した距離としてもよい。
【0154】
【0155】
[効果等]
実施の形態6の車両周辺監視装置600は、さらに、車両5の速度vおよび舵角θstrに関する情報に基づいて、所定時間経過後における車両5と障害物Obとの距離Dpreを予測する距離予測部606を備える。
【0156】
この構成によれば、例えば障害物Obに対して車両5が近づき、障害物Obが距離センサ11~13の検知範囲内から外れた場合であっても、障害物Obに対する車両5の距離を予測し、障害物Obとの接触を回避することができる。
【0157】
(実施の形態7)
[構成]
実施の形態7に係る車両周辺監視装置700の構成について説明する。実施の形態7では、障害物Obとの接触可能性を判定する例について説明する。
【0158】
図20は、実施の形態7に係る車両周辺監視装置700を備える車両周辺監視システム1Bを示すブロック図である。
【0159】
車両周辺監視システム1Bは、複数の距離センサ11、12および13と、車両5の周辺を監視する車両周辺監視装置700と、を備える。各距離センサ11~13は、実施の形態1と同様である。また、車両周辺監視システム1Bは、速度センサ50、舵角センサ60、警告表示部70、ブレーキ指示部80およびステアリング制御部90を備える。
【0160】
実施の形態7に係る車両周辺監視装置700は、接触判定部707と、距離予測部606と、角度導出部505と、路面判定部304と、正規化部203と、障害検知部201と、メモリ102と、を備える。距離予測部606、角度導出部505、路面判定部304、正規化部203、障害検知部201、メモリ102は、実施の形態6と同様である。
【0161】
接触判定部707は、車両5と障害物Obとの距離から車両5と障害物Obとの接触可能性を判定する。接触判定部707は、車両5が障害物Obに接触する可能性があると判定した場合に、接触を回避するための指示を警告表示部70、ブレーキ指示部80およびステアリング制御部90へ出力する。
【0162】
[動作]
実施の形態7に係る車両周辺監視装置700の動作について説明する。
【0163】
図21は、車両周辺監視装置700の動作を示すフローチャートである。
【0164】
接触判定部707は、障害検知部201で検知した車両5から障害物Obまでの距離D2、D3を取得する(ステップS710)。また、接触判定部707は、距離予測部606で予測した車両5から障害物Obまでの距離Dpreを取得する(ステップS720)。
【0165】
接触判定部707は、これらの距離D2、D3およびDpreに基づいて、障害物Obとの接触可能性を判定する(ステップS730)。
【0166】
例えば、接触判定部707は、距離D2、D3およびDpreのうち、いずれか1つでも接触の危険性が高まる閾値距離を下回っている場合、障害物Obに接触する可能性があると判定する(S730でYes)。この場合、接触判定部707は、接触を回避するための指示信号を警告表示部70、ブレーキ指示部80およびステアリング制御部90に出力する(ステップS740)。
【0167】
また、接触判定部707は、距離D2、D3およびD
preの全てが閾値距離を上回っている場合、障害物Obに接触する可能性がないと判定し(S730でNo)、
図21に示すフローを終了する。
【0168】
[効果等]
実施の形態7の車両周辺監視装置700は、さらに、車両5と障害物Obとの距離から車両5と障害物Obとの接触可能性を判定する接触判定部707を備える。
【0169】
この構成によれば、障害物Obとの接触の危険性が高まった場合に、障害物Obとの接触を回避することが可能となる。
【0170】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態1~7等について説明した。ただし以上の実施の形態等は、本質的に好ましい例示であって、この発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0171】
例えば、距離センサ11~13は、路面状況の観測専用のセンサでなく、路面方向に正面を向いていない監視用のセンサであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示は、ドライバの運転を支援する車両周辺監視装置として、自動車技術などの分野に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0173】
1、1A、1B 車両周辺監視システム
5 車両
11、12、13 距離センサ
50 速度センサ
60 舵角センサ
70 警告表示部
80 ブレーキ指示部
90 ステアリング制御部
100、200、300、400、500、600、700 車両周辺監視装置
101 障害検知部
102 メモリ
201 障害検知部
203 正規化部
304 路面判定部
505 角度導出部
606 距離予測部
707 接触判定部
D2、D3、Dmea、Dpre 距離
L2 幅寸法
Ob 障害物
R、R1、R2、R3 反射波
THobj 閾値
W、W1、W2、W3 包絡線
θ 角度