(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142908
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】コークス炉の建設方法
(51)【国際特許分類】
C10B 29/02 20060101AFI20230928BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C10B29/02
E04H5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050037
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中杉 祐己
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 藤一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋作
(57)【要約】
【課題】建設時においても電車軌条を使用可能なコークス炉の建設方法を提供する。
【解決手段】既設コークス炉と兼用する電車軌条13に対して第1方向Xに並ぶ建設予定地PSにコークス炉を建設する方法であって、建設予定地PSを覆う仮設上屋20を設置する第1工程を含み、仮設上屋20のうち、第1方向Xに沿って、建設予定地PSに対して電車軌条13側に位置する第1の側部22は、仮設上屋20の荷重を受ける支柱26を備え、支柱26は、電車軌条13を第1方向Xに挟んで建設予定地PSの反対側に位置し、仮設上屋20は、仮設上屋20の内部を、建設予定地PSを含む作業空間S1と、電車軌条13上を走行する消火車12が通過する通路空間S2と、に区画する区画壁24を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コークス炉と兼用する電車軌条に対して第1方向に並ぶ建設予定地にコークス炉を建設する方法であって、
前記建設予定地を覆う仮設上屋を設置する第1工程を含み、
前記仮設上屋のうち、前記第1方向に沿って、前記建設予定地に対して前記電車軌条側に位置する第1の側部は、前記仮設上屋の荷重を受ける支柱を備え、
前記支柱は、前記電車軌条を前記第1方向に挟んで前記建設予定地の反対側に位置し、
前記仮設上屋は、前記仮設上屋の内部を、前記建設予定地を含む作業空間と、前記電車軌条上を走行する消火車が通過する通路空間と、に区画する区画壁を備える、コークス炉の建設方法。
【請求項2】
前記区画壁は、
前記建設予定地と前記電車軌条とに前記第1方向に挟まれ、鉛直方向に延びる側壁と、
前記側壁から前記第1方向に沿って前記支柱側に延びる天壁と、を備え、
前記天壁における前記第1方向に沿う前記支柱側の端部は、前記支柱に接続されている、請求項1に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記仮設上屋のうち、前記支柱および前記区画壁を先行して設置した後、残部を設置する、請求項2に記載のコークス炉の建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1、2に記載のコークス炉の建設方法が知られている。これらの建設方法では、コークス炉の建設予定地に仮設上屋を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-177846号公報
【特許文献2】特開2006-36934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コークス炉として、既設コークス炉と電車軌条を兼用するコークス炉を建設することが考えられる。この場合において、例えば、仮設上屋の一部が電車軌条上に位置すると、建設時に電車軌条が使用できなくなる。その結果、既設コークス炉の操業に影響が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、建設時においても電車軌条を使用可能なコークス炉の建設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
<1>本発明の一態様に係るコークス炉の建設方法は、既設コークス炉と兼用する電車軌条に対して第1方向に並ぶ建設予定地にコークス炉を建設する方法であって、前記建設予定地を覆う仮設上屋を設置する第1工程を含み、前記仮設上屋のうち、前記第1方向に沿って、前記建設予定地に対して前記電車軌条側に位置する第1の側部は、前記仮設上屋の荷重を受ける支柱を備え、前記支柱は、前記電車軌条を前記第1方向に挟んで前記建設予定地の反対側に位置し、前記仮設上屋は、前記仮設上屋の内部を、前記建設予定地を含む作業空間と、前記電車軌条上を走行する消火車が通過する通路空間と、に区画する区画壁を備える。
【0007】
支柱が、電車軌条を第1方向に挟んで建設予定地の反対側に位置する。したがって、支柱が電車軌条を遮らない。
区画壁が、仮設上屋の内部を、建設予定地を含む作業空間と、電車軌条上を走行する消火車が通過する通路空間と、に区画する。よって、消火車が赤熱コークスを搬送しているときであっても、赤熱コークスの輻射熱が建設予定地に伝わったり、赤熱コークスを起因とする有毒ガス(例えば、一酸化炭素ガスなど)が建設予定地に侵入したりすることが、区画壁によって規制される。
以上から、建設時においても電車軌条が使用可能となる。
【0008】
<2>上記<1>に係るコークス炉の建設方法では、前記区画壁は、前記建設予定地と前記電車軌条とに前記第1方向に挟まれ、鉛直方向に延びる側壁と、前記側壁から前記第1方向に沿って前記支柱側に延びる天壁と、を備え、前記天壁における前記第1方向に沿う前記支柱側の端部は、前記支柱に接続されている構成を採用してもよい。
【0009】
天壁における第1方向に沿う支柱側の端部が、支柱に接続されている。よって、区画壁が支柱によって支持され、通路空間が確保される。
【0010】
<3>上記<2>に係るコークス炉の建設方法では、前記第1工程では、前記仮設上屋のうち、前記支柱および前記区画壁を先行して設置した後、残部を設置する、請求項2に記載の構成を採用してもよい。
【0011】
第1工程で、仮設上屋のうち、支柱および区画壁を先行して設置した後、残部を設置する。よって、通路空間を確保した状態で、仮設上屋の残部が設置される。結果として、仮設上屋の残部の設置時においても、電車軌条を使用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建設時においても電車軌条を使用可能なコークス炉の建設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコークス炉の建設方法を適用するコークス工場の平面図である。
【
図2】
図1に示すII-II矢視図であって、仮設上屋を二点鎖線で示している図である。
【
図3】
図1に示すII-II矢視図に相当する図であって、コークス炉の建設前の状態を示している図である。
【
図4】
図1に示すII-II矢視図に相当する図であって、コークス炉の建設方法の第1工程の一部を実施した状態を示している図である。
【
図5】
図1に示すII-II矢視図に相当する図であって、コークス炉の建設方法の第1工程を実施した状態を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係るコークス炉の建設方法(以下、単に建設方法とも言う)を説明する。
【0015】
(コークス工場10)
まず、この建設方法を適用するコークス工場10について説明する。
図1および
図2に示すように、コークス工場10は、コークス炉11と、装炭車(不図示)と、押出機(不図示)と、ガイド車(不図示)と、消火車12と、電車軌条13と、消火設備14と、を主に備える。
【0016】
図1に示すように、コークス炉11は、石炭からコークスを生成する。コークス工場10は、2つのコークス炉11を備えている。2つのコークス炉11は、第1コークス炉11aと、第2コークス炉11bと、である。第1コークス炉11aと第2コークス炉11bとは、並んでいる。
【0017】
図2に示すように、コークス炉11は、2つのプラットホーム15に挟まれている。
以下、水平方向のうち、コークス炉11を2つのプラットホーム15が挟む方向を、第1方向Xという。水平方向のうち、第1方向Xに直交する方向を第2方向Yという。なお、2つのコークス炉11は、第2方向Yに並んでいる。
【0018】
2つのプラットホーム15は、第1プラットホーム15aと、第2プラットホーム15bと、である。以下では、コークス炉11を基準として、第1方向Xに沿う第1プラットホーム15a側を第1方向Xの第1側X1といい、第1方向Xに沿う第2プラットホーム15b側を第1方向Xの第2側X2という。
【0019】
装炭車は、コークス炉11に石炭を装入する。装炭車は、コークス炉11の上方に配置される。押出機は、コークス炉11からコークスをガイド車に押し出す。押出機は、第2プラットホーム15b側に配置される。ガイド車は、コークスを消火車12に誘導する。ガイド車は、第1プラットホーム15aに配置される。
【0020】
図1に示すように、消火車12は、コークスを消火設備14に搬送する。消火車12は、電車軌条13を走行する
電車軌条13は、コークス炉11に対して第1方向Xに並ぶ。電車軌条13は、コークス炉11に対して第1側X1に並ぶ。電車軌条13は、第2方向Yに延びる。
【0021】
消火設備14は、コークスを冷却する。コークス工場10は、2つの消火設備14を備えている。2つの消火設備14の一の消火設備14は、電車軌条13の第1端側に配置されている。2つの消火設備14の他の消火設備14は、電車軌条13の第2端側に配置されている。なお消火設備14としては、乾式の消火設備(いわゆるCDQ)や、湿式の消火設備が例示される。
【0022】
(仮設上屋20)
次いで、この建設方法に用いる仮設上屋20を説明する。
図2に示すように、仮設上屋20は、コークス炉11の建設予定地PSを覆う。ここで本実施形態では、2つのコークス炉11のうち、第2コークス炉11bが存在する状態で第1コークス炉11aを建設する。なお建設には、新規の建設のみならず、更新も含まれる。
【0023】
仮設上屋20は、屋根21と、第1の側部22と、第2の側部23と、区画壁24と、補助柱25と、を備えている。
屋根21は、建設予定地PSの上方に位置している。
第1の側部22は、建設予定地PSに対して第1側X1(電車軌条13側)に位置している。第1の側部22は、地盤に据え付けられた基礎22a上に設けられている。
【0024】
第1の側部22は、第1支柱26と、第2支柱27と、図示しない上部壁と、を備えている。第1の側部22のうち、下部は第1支柱26によって構成され、上部は第2支柱27および前記上部壁によって構成されている。
第1支柱26および第2支柱27(支柱)は、仮設上屋20の荷重の一部を受ける。第1支柱26は、基礎22aから上方に延びている。第2支柱27は、第1支柱26から上方に延びている。第2支柱27の上端は、屋根21を支持している。第1支柱26および第2支柱27は、第2方向Yに間隔をあけて(間欠的に)複数配置されている。前記上部壁は、第2方向Yに連続して設けられている。前記上部壁は、第2支柱27を第1方向Xに覆う。前記上部壁は、第1支柱26には設けられていない。
【0025】
第2の側部23は、建設予定地PSに対して第2側X2に位置している。第2の側部23は、地盤に据え付けられた基礎23a上に設けられている。なお図示の例では、第2の側部23は、下屋28が設けられている。しかしながら、下屋28はなくてもよい。
【0026】
区画壁24は、側壁29と、天壁30と、を備えている。側壁29は、建設予定地PSと電車軌条13とに第1方向Xに挟まれている。側壁29は、第1プラットホーム15a上に位置している。側壁29は、鉛直方向に延びている。天壁30は、側壁29から第1側X1(第1方向Xに沿って第1支柱26側)に延びている。区画壁24を第2方向Yから見ると、区画壁24は倒立L字状である。天壁30における第1側(第1方向Xに沿う第1支柱26側)の端部は、第1支柱26(図示の例では第1支柱26の上端)に接続されている。
【0027】
区画壁24は、仮設上屋20の内部を、作業空間S1と通路空間S2とに区画する。
作業空間S1は、建設予定地PSを含む空間である。作業空間S1は、屋根21と、前記上部壁と、区画壁24と、第2の側部23と、の間の空間である。
通路空間S2は、消火車が通過する空間である。なお通路空間S2は、第2方向Yの隣り合う第1支柱26の間から、仮設上屋20の外部に開放されている。
補助柱25は、屋根21の荷重を補助的に受ける。補助柱25はなくてもよい。
【0028】
(建設方法)
最後に、建設方法を説明する。
建設方法は、仮設上屋20を設置する第1工程と、コークス炉11を構築する第2工程と、仮設上屋20を解体する第3工程と、を含む。第1工程と第2工程とは、一部を並行して実施してもよい。第2工程と第3工程とは、一部を並行して実施してもよい。
【0029】
第1工程の一例について説明する。ただし、第1工程はこの例に限られない。
まず
図3に示すように、建設者は、第1プラットホーム15aを設置する。次に
図4に示すように、建設者は、第1支柱26および区画壁24を設置する。その後、
図5に示すように、仮設上屋20の残部を設置する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る建設方法によれば、第1支柱26が、電車軌条13を第1方向Xに挟んで建設予定地PSの反対側に位置する。したがって、第1支柱26が電車軌条13を遮らない。
区画壁24が、仮設上屋20の内部を、建設予定地PSを含む作業空間S1と、電車軌条13上を走行する消火車12が通過する通路空間S2と、に区画する。よって、消火車12が赤熱コークスを搬送しているときであっても、赤熱コークスの輻射熱が建設予定地PSに伝わったり、赤熱コークスを起因とする有毒ガス(例えば、一酸化炭素ガスなど)が建設予定地PSに侵入したりすることが、区画壁24によって規制される。
以上から、建設時においても電車軌条13が使用可能となる。
【0031】
なお本実施形態のように、2つの消火設備14が電車軌条13の両端に配置されている場合、電車軌条13が全長にわたって使用できないと、既存コークス炉である第2コークス炉11bが一方の消火設備14のみしか使用できなくなる。
この場合、第2コークス炉11bが使用可能な消火設備14が何らかの原因で停止してしまうと、第2コークス炉11bの操業を停止する必要が生じる。
さらにこの場合、第2コークス炉11bが使用可能な消火設備14が湿式であって、使用不能な消火設備14が乾式である場合、付加価値を高められる乾式の消火設備14を使用する機会を損失する。
【0032】
天壁30における第1方向Xに沿う第1支柱26側の端部が、第1支柱26に接続されている。よって、区画壁24が第1支柱26によって支持され、通路空間S2が確保される。
第1工程で、仮設上屋20のうち、第1支柱26および区画壁24を先行して設置した後、残部を設置する。よって、通路空間S2を確保した状態で、仮設上屋20の残部が設置される。結果として、仮設上屋20の残部の設置時においても、電車軌条13を使用できる。
【0033】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、コークス工場10は上記実施形態に示した構成やレイアウトに限られない。
【0035】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
11 コークス炉
12 消火車
13 電車軌条
20 仮設上屋
22 第1の側部
24 区画壁
26 第1支柱(支柱)
29 側壁
30 天壁
PS 建設予定地
S1 作業空間
S2 通路空間
X 第1方向