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特開2023-142911給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142911
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F22D 5/34 20060101AFI20230928BHJP
   F22D 5/28 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F22D5/34 Z
F22D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050043
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 大樹
(57)【要約】
【課題】蒸気発生器の給水制御を行うシステムを提供する。
【解決手段】給水制御システムは、蒸気発生器の給水系統を構成する主給水流路と、主給水弁、主給水流路のバイパス流路、主給水バイパス弁、給水制御装置を備える。給水制御装置は、蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、第1の目標弁開度となるよう主給水バイパス弁を閉動作させ、主給水バイパス弁の閉動作によって減少する給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、第2の目標開度となるよう閉状態の前記主給水弁を開動作させることによって、主給水弁及び主給水バイパス弁を開状態とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器へ冷却水を供給する給水系統を構成する主給水流路と、
前記主給水流路に設けられる主給水弁と、
前記給水系統を構成し、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、
前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、
前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御して前記冷却水の給水流量を制御する給水制御装置と、を有し、
前記給水制御装置は、
前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、
前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、
前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする、
給水制御システム。
【請求項2】
前記給水制御装置は、前記蒸気タービンの負荷が第1の閾値より低いときには、前記主給水バイパス弁を開、前記主給水弁を閉とし、その状態から、前記負荷が上昇し、前記第1の閾値に達すると、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水弁を第2の目標開度となるよう開動作させる、
請求項1に記載の給水制御システム。
【請求項3】
前記給水制御装置は、前記負荷が第1の閾値以上で、前記主給水バイパス弁および前記主給水弁を開とした状態から、前記負荷が第2の閾値まで低下すると、
前記主給水バイパス弁を開動作させ、前記主給水弁が全閉となるまで閉動作させる、
請求項2に記載の給水制御システム。
【請求項4】
前記給水制御装置は、前記主給水バイパス弁を前記第1の目標開度まで一定の速度で閉動作させ、前記主給水弁を前記第2の目標開度まで一定の速度で開動作させる、
請求項1または請求項2に記載の給水制御システム。
【請求項5】
前記給水制御装置は、
前記主給水弁と前記主給水バイパス弁の両方を開状態としたときの前記主給水バイパス弁の目標開度と前記蒸気流量との関係を規定した第1の関数と、
前記主給水バイパス弁の開度と前記主給水バイパス弁を通過する前記給水流量との関係を規定した第2の関数と、
前記主給水弁の開度と前記主給水弁を通過する前記給水流量との関係を規定した第3の関数と、を有し、
前記主給水バイパス弁を前記閉動作させる前の前記蒸気流量と、前記第1の関数と、に基づいて、前記第1の目標開度を算出し、
前記第1の目標開度と前記第2の関数とに基づいて、前記第1の目標開度を達成したときに前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量を算出し、
前記主給水バイパス弁を前記閉動作させる前の状態において前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量から、前記第1の目標開度を達成したときに前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量を減算して差分流量を算出し、
前記差分流量と、前記第3の関数と、に基づいて、前記第2の目標開度を算出する、
請求項1または請求項2に記載の給水制御システム。
【請求項6】
蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって前記冷却水の前記蒸気発生器への給水流量を制御する給水制御装置であって、
前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、
前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、
前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする、
給水制御装置。
【請求項7】
蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御する給水制御方法であって、
前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、
前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、
前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする、
給水制御方法。
【請求項8】
蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御するコンピュータに、
前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、
前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、
前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気発生器の給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの蒸気発生器の給水流路には、主給水流路に加え、バイパス流路が設けられている。主給水流路には主給水弁が設けられ、バイパス流路には主給水バイパス弁が設けられている。従来、蒸気発生器からタービンへ供給される蒸気流量が多い高負荷のときには、主給水バイパス弁を閉じて主給水流路を通じて蒸気発生器へ冷却水を供給し、蒸気流量が少ない低負荷のときには、主給水弁を閉じてバイパス流路を通じて、蒸気発生器へ冷却水を供給する制御を行っている(特許文献1)。このように従来制御では、負荷に応じて、主給水流路とバイパス流路とを切り換えて、何れか1つの流路によって冷却水の給水を行っている。一方、より多くの給水流量を必要とするプラントに対して、主給水流路とバイパス流路の両方を使って、蒸気発生器へ冷却水を供給する方法が検討されている。主給水流路とバイパス流路を使用して給水する方法としては、例えば、負荷を上昇させる過程で、主給水バイパス弁を開としたまま、主給水弁を徐々に開いていく方法が考えられる。しかし、この方法では、主給水弁が微開状態で給水流量が変動し、給水制御が不安定となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-253007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態に制御して、蒸気発生器への給水を行う方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の給水制御システムは、蒸気発生器へ冷却水を供給する給水系統を構成する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記給水系統を構成し、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御して前記冷却水の給水流量を制御する給水制御装置と、を有し、前記給水制御装置は、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
【0007】
本開示の給水制御装置は、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって前記冷却水の前記蒸気発生器への給水流量を制御する給水制御装置であって、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
【0008】
本開示の給水制御方法は、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御する給水制御方法であって、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御するコンピュータに、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラムによれば、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態にして、蒸気発生器に給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る蒸気発生器の給水制御システムの概略図である。
図2】実施形態に係る給水制御装置の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る負荷上昇時の制御の一例を示す図である。
図4A】実施形態に係る開度算出に用いる関数の一例を示す第1の図である。
図4B】実施形態に係る開度算出に用いる関数の一例を示す第2の図である。
図4C】実施形態に係る開度算出に用いる関数の一例を示す第3の図である。
図5】実施形態に係る負荷降下時の制御の一例を示す図である。
図6A】実施形態に係る負荷上昇時の処理の一例を示すフローチャートである。
図6B】実施形態に係る負荷降下時の処理の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る給水制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の給水制御システムについて、図1図7を参照して説明する。
<実施形態>
(構成)
本実施形態の給水制御システムの構成について、図1図2を参照して説明する。
図1に、加圧水型(PWR:Pressurized Water Reactor)の原子力発電プラントにおける蒸気発生器の給水制御システムの概略図を示す。給水制御システム100は、蒸気発生器1と、蒸気タービン4と、復水器5と、二次冷却ループ6と、給水制御装置10と、を含む。蒸気発生器1には一次冷却ループ2が接続されている。一次冷却ループ2は、図示しない原子炉と蒸気発生器1との間で、一次冷却水を循環させる流路を形成している。一次冷却ループ2は、一次冷却水を循環させるための一次冷却ポンプP1を有している。蒸気発生器1は、一次冷却ループ2を循環する一次冷却水を加熱し蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、水蒸気供給流路3を通じて、蒸気タービン4へ供給される。蒸気タービン4は、蒸気発生器1から供給された水蒸気の熱エネルギーを使用して回転駆動する。蒸気タービン4の回転軸は、図示しない発電機に連結されており、蒸気タービン4の回転駆動により、図示しない発電機が発電する。二次冷却ループ6は、蒸気発生器1と蒸気タービン4との間で、二次冷却水を循環させる流路を形成している。二次冷却ループ6は、水蒸気供給流路3と、主給水流路7と、主給水バイパス流路8と、を含む。復水器5は、二次冷却ループ6における蒸気タービン4の下流側に配置され、蒸気タービン4で仕事をした後の蒸気を水へ凝縮する。主給水流路7は、二次冷却水を循環させるポンプP2を有しており、ポンプP2により、復水器5にて凝縮された水(二次冷却水)が、蒸気発生器1と蒸気タービン4との間で循環するようになっている。主給水流路7におけるポンプP2よりも二次冷却水の流れ方向の下流側の分岐点71では、主給水流路7から、主給水バイパス流路8が分岐している。主給水バイパス流路8には、主給水バイパス弁V2が設けられている。主給水バイパス弁V2の開度を調整することにより、主給水バイパス流路8を流れる二次冷却水の流量が制御される。主給水流路7における分岐点71の下流側には、主給水弁V1が設けられている。主給水弁V1の開度を調整することにより、主給水流路7を流れる二次冷却水の流量が制御される。主給水バイパス流路8は、主給水弁V1よりも下流側の合流点72にて、主給水流路7に接続(合流)している。ここで、主給水弁V1は、主給水バイパス弁V2と比べて、弁容量が大きく、細かな開度調整が難しい。また、主給水弁V1は、開度が微小の状態では流量に揺らぎが生じる。その反面で、主給水弁V1は、大流量の制御性に優れているといった特性を有している。
【0013】
蒸気発生器1には、冷却水の水位を計測するセンサc1が設けられている。水蒸気供給流路3には、蒸気発生器1から蒸気タービン4へ供給される蒸気の流量を計測するセンサc2が設けられている。主給水流路7には、二次冷却ループ6によって蒸気発生器1へ還流する二次冷却水の給水流量を計測するセンサc3が設けられている。これらのセンサc1~c3は、給水制御装置10と接続されている。センサc1~c3が計測した、水位、水蒸気流量、給水流量は給水制御装置10へ送信され、蒸気発生器1へ供給される二次冷却水の給水流量の制御、即ち、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の開度制御に利用される。センサc2が計測する蒸気流量は、図示しない発電機の発電負荷と正の相関があり、負荷の指標とされる(例えば、発電負荷と蒸気流量は互いに換算することができる。)。つまり、発電負荷に対応する蒸気流量を実現できるように給水制御が行われる。また、センサc2が計測する蒸気流量とセンサc3が計測する給水流量にも正の相関が存在する。
【0014】
次に給水制御装置10の機能、構成について説明する。給水制御装置10は、蒸気発生器1に供給される給水の流量を制御する。図2は、実施形態に係る給水制御装置の一例を示すブロック図である。給水制御装置10は、センサデータ取得部11と、入力受付部12と、制御部13と、出力部14と、記憶部15とを備える。
センサデータ取得部11は、センサc1~c3が計測した計測値を取得する。
入力受付部12は、ユーザからの入力を受け付ける。例えば、入力受付部12は、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の自動切り替え制御の開始を指示する操作の入力を受け付ける。主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の自動切り替え制御については、後述する。
【0015】
制御部13は、二次冷却ループ6の動作を制御する。例えば、制御部13は、ポンプP2の起動・停止、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の開度制御を実行する。特に制御部13は、本実施形態に係る主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の自動切り替え制御を実行する。自動切り替え制御とは、原子力発電プラントの発電負荷(図示しない発電機の負荷)に応じて、主給水バイパス弁V2のみが開の状態と、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の両方が開の状態とを切り替える制御である。制御部13は、開度算出部131と、主給水弁制御部132と、主給水バイパス弁制御部133と、を備える。
【0016】
開度算出部131は、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の目標開度を算出する。
主給水弁制御部132は、開度算出部131が算出した主給水弁V1の目標開度に基づいて、主給水弁V1の開度を制御する。
主給水バイパス弁制御部133は、開度算出部131が算出した主給水バイパス弁V2の目標開度に基づいて、主給水バイパス弁V2の開度を制御する。
【0017】
出力部14は、諸々の情報を表示装置や電子ファイルに出力する。
記憶部15は、諸々の情報を記憶する。例えば、記憶部15は、センサデータ取得部11が取得した計測値、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の開度の算出に用いる関数F1~F3や閾値などの情報を記憶する。
【0018】
(主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の制御)
次に図3図5を参照して、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の自動切り替え制御について説明する。自動切り替え制御とは、負荷上昇時において、主給水弁V1が閉で主給水バイパス弁V2が開の状態から、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の両方を開とすることであり、負荷降下時においては、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の両方が開となっている状態から、主給水バイパス弁V2を開としたまま、主給水弁V1を全閉する制御である。従来の制御では、図示しない発電機の負荷が低負荷のときには、主給水バイパス弁V2を開とし、主給水弁V1を閉とする。そして負荷が上昇したときには、主給水弁V1を開とし、主給水バイパス弁V2を閉とする。これに対し、本実施形態では、低負荷時には、従来の制御と同様に、主給水バイパス弁V2を開とし、主給水弁V1を閉とする。そして、高負荷時には、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態とし、より多量の二次冷却水を蒸気発生器1へ供給できるようにする。また、自動切り替えに際して、給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2を開状態に制御する。
【0019】
[負荷上昇時]
図3は、実施形態に係る負荷上昇時の制御の一例を示す図である。
図3の上図31の縦軸は給水流量、横軸は時間を示している。図3の下図32の縦軸は主給水バイパス弁制御信号(主給水バイパス弁V2の開度指令値)又は、主給水弁制御信号(主給水バイパス弁V1の開度指令値)、横軸は時間を示している。上図31と下図32の横軸の同じ位置は同じ時間を示している。グラフg1の実線は、本実施形態の制御における主給水バイパス弁V2の開度を示し、グラフg2の実線は、本実施形態の制御における主給水弁V1の開度を示す。グラフg1の破線部分は、従来制御における主給水バイパス弁V2の開度を示し、グラフg2の破線部分は、従来制御における主給水弁V1の開度を示す。グラフg3は、センサc3が計測する給水流量を示す。時刻t0では、主給水バイパス弁V2(グラフg1)は開(例えば、70%)、主給水弁V1(グラフg2)の開度は全閉(0%)である。この状態では、センサc1が計測する蒸気発生器1における液相の水位が所定の範囲内となり、センサc1が計測する蒸気流量が発電負荷に応じた流量となるように、主給水バイパス弁V2の開度が制御されている。
【0020】
ここで、発電負荷の上昇に備えて、ユーザが、時刻t1に、自動切り換え制御(負荷上昇に係る自動切り換え制御)の開始を給水制御装置10へ指示する。すると、開度算出部131が、センサc2が計測した現在の(切り替え前の)蒸気流量に基づいて、図4Aに例示する蒸気流量と主給水バイパス弁開度の関係を定めた関数F1を参照して、主給水バイパス弁V2の目標開度を算出する。例えば、開度算出部131は、センサc2が計測した切り替え前の蒸気流量が20%(定格出力時の蒸気流量を100%とする。)の場合、主給水バイパス弁V2の目標開度を20%と算出する。
【0021】
次に開度算出部131は、図4Bに例示する主給水バイパス弁開度と主給水バイパス流路8を流れる(主給水バイパス弁V2を通過する)二次冷却水の給水流量との関係を定めた関数F2を参照して、主給水バイパス弁V2を上記の目標開度としたときに、主給水バイパス流路8を流れる給水流量を算出する。例えば、開度算出部131は、主給水バイパス弁V2の目標開度が20%の場合、主給水バイパス弁V2を通過する給水流量を100(トン/h)と算出する。
【0022】
次に開度算出部131は、現在(切り替え前)の給水流量から、主給水バイパス流路8で負担する二次冷却水の流量を減算して、主給水流路7で負担すべき給水流量(主給水弁V1を通過して供給すべき給水流量)を算出する。例えば、センサc3が計測した切り替え前の給水流量が250(トン/h)の場合、開度算出部131は、主給水流路7で負担すべき給水流量を、250-100(トン/h)=150(トン/h)により算出する。次に開度算出部131は、図4Cに例示する主給水弁開度と主給水弁V1を通過する二次冷却水の給水流量の関係を定めた関数F3を参照して、主給水弁V1の目標開度を算出する。例えば、開度算出部131は、図4Cに例示する関数F3を参照して、150(トン/h)を流すために必要な主給水弁V1の目標開度15%を算出する。これにより、切り替え前の主給水弁V1の開度0%、主給水バイパス弁V2の開度70%に対する、切り替え後の主給水弁V1の目標開度15%、主給水バイパス弁V2の目標開度20%を算出する。
【0023】
次に主給水弁制御部132が時刻t1に主給水弁V1を開き始め、一定の速度で目標開度15%まで主給水弁V1を開いてゆく。主給水弁V1を開く速度は予め定められている。主給水バイパス弁制御部133は時刻t2に主給水バイパス弁V2を閉じ始め、一定の速度で目標開度20%まで主給水バイパス弁V2の開度を低下させる。図3の例では、時刻t3に、主給水弁V1の目標開度15%と主給水バイパス弁V2の目標開度20%が達成され、その後、負荷上昇に伴って、時刻t4に、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の開度が上昇し始めている。時刻t4以降は、時刻t1~t4までの自動切換え制御とは、異なるロジックによって、要求された負荷を実現できるような開度制御が実行される。これにより、高負荷時には、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態とすることができ、従来の主給水弁V1のみを開として給水を行うときと比較して、大容量の二次冷却水を蒸気発生器1へ供給することができる。また、主給水バイパス弁V2を開とすることで、主給水弁V1のみに負担を掛けることが無く、主給水弁V1の負担を軽減することができる。
【0024】
また、本実施形態では、主給水弁V1を微開状態としたまま徐々に開くようなことをせず、目標開度15%まで上昇させる。これにより、上図31のグラフg3に示すように、自動切り換え制御による給水流量の変動を抑制し、比較的小さな変動のみで、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態とすることができる。グラフg3に示すように、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態とすれば、速やかに給水流量の変動を静定することができる。本実施形態の自動切り換え制御との比較対象として、主給水バイパス弁V2を開いたまま、主給水弁V1を少しずつ開いてゆく制御を行ったところ、グラフg3に例示する変動よりも短い周期で大きな変動が生じることが確認されている。これは、主給水弁V1を少しずつ開いてゆく過程では、主給水弁V1を微開状態としているために給水流量に変動が生じたためと考えられる。
【0025】
[負荷降下時]
図5は、実施形態に係る負荷降下時の制御の一例を示す図である。
図5の縦軸は主給水バイパス弁制御信号(主給水バイパス弁V1の開度指令値)又は、主給水弁制御信号(主給水バイパス弁V2の開度指令値)、横軸は時間を示している。グラフg1の実線は、本実施形態の制御における主給水バイパス弁V2の開度を示し、グラフg2の実線は、本実施形態の制御における主給水弁V1の開度を示す。グラフg1の破線部分は、従来制御における主給水バイパス弁V2の開度を示し、グラフg2の破線部分は、従来制御における主給水弁V1の開度を示す。従来制御では、グラフg1の破線部分に示すように、主給水バイパス弁V2が全閉の状態から切り替え制御を開始するのに対し、本実施形態では、主給水バイパス弁V2をある程度開いた状態から自動切り替え制御を開始する点が異なる。主給水弁V1については開状態から全閉とする点は従来制御も本実施形態の自動切り替え制御でも変わらないが、切り替え開始前に、主給水バイパス弁V2が開となっている分、主給水弁V1の開度は小さくなっている。例えば、時刻t1に、ユーザが、自動切り換え制御(負荷降下に係る自動切り換え制御)の開始を給水制御装置10へ指示する。すると、開度算出部131が、切り替え後の主給水バイパス弁V2の開度を算出する。主給水弁v1の目標開度は0%である。例えば、開度算出部131は、目標負荷に基づく蒸気流量に基づいて、蒸気流量と主給水バイパス弁開度の関係を定めた図示しない関数を参照して、主給水バイパス弁V2の目標開度を算出してもよい。
【0026】
次に主給水弁制御部132が時刻t2に主給水弁V1を閉じ始め、一定の速度で目標開度0%まで主給水弁V1を閉じてゆく。主給水弁V1を閉じる速度は予め定められている。主給水バイパス弁制御部133は時刻t1に主給水バイパス弁V2を開き始め、一定の速度で目標開度まで主給水バイパス弁V2の開度を上昇させる。時刻t4に切り替えが完了すると、時刻t1~t4までの自動切換え制御とは、異なるロジックによって、主給水バイパス弁V2の開度制御が実行される。負荷降下時においても、自動切り換え制御中の給水流量が一定となるように、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2は制御される。また、負荷降下時においても、主給水弁V1を微開状態とすること無く全閉とするので、給水流量の変動を抑制することができる。
【0027】
(動作)
次に図6A図6Bを参照して、給水制御システム100の動作について説明する。
[負荷上昇時]
図6Aは、実施形態に係る負荷上昇時の処理の一例を示すフローチャートである。
センサデータ取得部11が、センサc1~c3が計測した計測値を取得する(ステップS1)。例えば、センサデータ取得部11は、センサc1が計測した水位、センサc2が計測した蒸気流量、センサc3が計測した給水流量を取得して、記憶部15に記録する。
【0028】
次に制御部13が、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の切り替え指示(負荷上昇に係る自動切り替え制御の実行指示)の有無を判定する(ステップS2)。例えば、ユーザが、切り替えを指示する操作を、給水制御装置10へ入力した場合、入力受付部12が、この操作を受け付け、切り替えを指示があったことを制御部13へ通知する。制御部13は、入力受付部12からの通知に基づいて、替え指示の有無を判定する。切り替え指示が無い場合(ステップS2;No)、ステップS1からの処理を繰り返す。切り替え指示がある場合(ステップS2;Yes)、制御部13は、ステップS1にて取得された給水流量が所定の許容範囲内かどうかを判定する(ステップS3)。給水流量があまりにも少なすぎるか、多すぎる場合、自動切り替え制御の実行は適切では無いため、記憶部15には、給水流量の許容範囲が予め設定されている。制御部13は、センサc3によって計測された給水流量が許容範囲内かどうかを判定する。給水流量が許容範囲を超える場合(ステップS3;No)、ステップS1からの処理を繰り返す。出力部14は、給水流量が許容範囲内では無いため、自動切り換え制御の実行ができないことを表示装置等へ出力する。
【0029】
給水流量が許容範囲内の場合(ステップS3;Yes)、制御部13は、主給水弁V1が閉で主給水バイパス弁V2が開の状態から、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2が開の状態へ切り替えることを決定する(ステップS4)。開度算出部131は、切り替え後の目標開度を算出する(ステップS5)。図3図4A図4Cを用いて説明したように、開度算出部131は、切り替え前の蒸気流量と関数F1(図4A)に基づいて、切り替え後の主給水バイパス弁V2の目標開度を算出する。また、開度算出部131は、切り替え後に主給水弁V1を通過して蒸気発生器1へ供給するべき二次冷却水の供給流量と関数F3(図4C)とに基づいて、切り替え後の主給水弁V1の目標開度を算出する。次に主給水弁制御部132が、一定の速度で、主給水弁V1を、主給水弁V1の目標開度まで開く制御を行い、主給水バイパス弁制御部133が、一定の速度で、主給水主給水バイパス弁V2を主給水バイパス弁V2の目標開度まで開く制御を行う(ステップS6)。主給水弁制御部132は、主給水弁V1の開度が目標開度に達したかどうかを判定し、主給水バイパス弁制御部133は、主給水バイパス弁V2の開度が目標開度に達したかどうかを判定する。主給水弁V1の開度が目標開度に達すると、主給水弁制御部132は、主給水弁V1を開く制御を停止する(ステップS7)。主給水バイパス弁V2の開度が目標開度に達すると、主給水バイパス弁制御部133は、主給水バイパス弁V2を閉じる制御を停止する(ステップS7)。これにより、給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁V1と主給水主給水バイパス弁V2の両方を開状態に制御することができる。
【0030】
[負荷降下時]
次に負荷降下時の処理について説明する。図6Aと同様の処理については、簡単に説明する。図6Bは、実施形態に係る負荷降下時の処理の一例を示すフローチャートである。
センサデータ取得部11が、センサc1~c3が計測した計測値を取得する(ステップS11)。次に制御部13が、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の切り替え指示(負荷降下に係る自動切り替え制御の実行指示)の有無を判定する(ステップS12)。切り替え指示が無い場合(ステップS12;No)、ステップS11からの処理を繰り返す。切り替え指示がある場合(ステップS12;Yes)、制御部13は、ステップS1にて取得された給水流量が所定の許容範囲内かどうかを判定する(ステップS13)。給水流量が許容範囲を超える場合(ステップS13;No)、出力部14は警告を出力し、ステップS11からの処理が繰り返される。
【0031】
給水流量が許容範囲内の場合(ステップS13;Yes)、制御部13は、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2が開の状態から、主給水弁V1が閉で主給水バイパス弁V2が開の状態へ切り替えることを決定する(ステップS14)。開度算出部131が、切り替え後の目標開度を算出する(ステップS15)。主給水弁V1については、開度算出部131は、目標開度を0%に設定する。主給水バイパス弁V2については、例えば、開度算出部131は、切り替え後の目標負荷に対応する蒸気流量に基づいて、主給水バイパス弁V2の目標開度を算出する。例えば、記憶部15には、蒸気流量と主給水バイパス弁開度の関係を定めた関数F4(図示せず)が登録されていて、開度算出部131は、目標負荷に対応する蒸気流量に基づいて関数F4を参照し、切り換え後の主給水バイパス弁V2の目標開度を算出する。図4Aに例示する関数F1には、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2を開とした場合の主給水バイパス弁V2の開度が規定されているのに対し、負荷降下時の自動切り替え制御で参照する関数F4では、主給水バイパス弁V2のみを開とした場合の主給水バイパス弁V2の開度が規定されている。その為、関数F4では、例えば、同じ負荷(例えば、蒸気流量が20%)に対して関数F1にて規定されている開度よりも大きな開度が設定されている。
【0032】
次に主給水弁制御部132が、一定の速度で、主給水弁V1を全閉する制御を行い、主給水バイパス弁制御部133が、一定の速度で、主給水主給水バイパス弁V2を主給水バイパス弁V2の目標開度まで開く制御を行う(ステップS16)。例えば、主給水弁制御部132は、給水流量を一定に保てるように、主給水バイパス弁V2を開くことによって増大する給水流量を相殺できるような速度で主給水弁V1を閉じてゆく。主給水弁制御部132は、主給水弁V1の開度が目標開度(0%)に達したかどうかを判定し、主給水バイパス弁制御部133は、主給水バイパス弁V2の開度が目標開度に達したかどうかを判定する。主給水弁V1の開度が目標開度に達すると、主給水弁制御部132は、主給水弁V1を開く制御を停止する(ステップS17)。主給水バイパス弁V2の開度が目標開度に達すると、主給水バイパス弁制御部133は、主給水バイパス弁V2を閉じる制御を停止する(ステップS17)。これにより、給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁V1を閉状態に制御することができる。
【0033】
図6A図6Bで例示した処理では、ユーザが、切り替え指示を行うこととしたが(図6AのステップS2、図6BのステップS12)、制御部13が、センサc2が計測する蒸気流量が、例えば、定格負荷で運転するときの20%未満の蒸気流量の状態から上昇して20%に至り、且つ、給水流量が許容範囲内であれば(ステップS3;Yes)、負荷上昇に係る自動切り替え制御を行うと自動的に決定してもよい。同様に、制御部13は、20%を上回る蒸気流量の状態から低下して20%に至り、且つ、給水流量が許容範囲内であれば(ステップS13;Yes)、負荷降下に係る自動切り替え制御を行うと決定してもよい。
【0034】
また、上記の図3の説明では、負荷がある程度上昇した際に、自動切り替え制御を行って、その後、別の制御ロジックによって負荷を上昇させる例で説明したが、負荷を上昇させながら自動切り替え制御を行ってもよい。その場合、開度算出部131は、以下のようにして、主給水弁V1および主給水バイパス弁V2の目標開度を算出してもよい。例えば、開度算出部131は、切り替え後の目標負荷に応じた目標蒸気流量と図4Aの関数F1によって、主給水バイパス弁V2の目標開度を設定し、図4Bの関数F2に基づいて、切り替え後の主給水バイパス弁V2を通過する給水流量を算出する。そして、開度算出部131は、目標負荷に応じた目標給水流量を、例えば、負荷と給水流量の関係を規定した所定の関数によって算出し、算出した目標給水流量から主給水バイパス弁V2を通過する給水流量を減算して、目標給水流量を達成するための主給水弁V1を通過する給水流量を算出する。さらに、開度算出部131は、算出した主給水弁V1を通過する給水流量と、図4Cの関数F3によって、主給水弁V1の目標開度を算出する。
【0035】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、原子力発電プラントの発電負荷が一定以上となると、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態に制御して、蒸気発生器に給水する。これにより、主給水弁V1だけで給水を行う場合と比較して、高負荷時の給水流量を増大させることができる。また、主給水バイパス弁V2だけが開となっている状態から、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開とする切り替え時には、主給水弁V1を微開した状態を維持すること無く、ある程度の開度まで開くので、微開状態での流量が不安定な主給水弁V1によって、給水流量が変動することを防ぎつつ、主給水弁V1と主給水バイパス弁V2の両方を開状態に制御することができる。
【0036】
図7は、実施形態に係る給水制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の給水制御装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0037】
給水制御装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0038】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の給水制御システム、給水制御装置、給水制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る給水制御システム100は、蒸気発生器1へ冷却水を供給する給水系統を構成する主給水流路7と、前記主給水流路に設けられる主給水弁V1と、前記給水系統を構成し、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路8と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁V2と、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御して前記冷却水の給水流量を制御する給水制御装置10と、を備え、前記給水制御装置は、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、第1の目標弁開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような前記主給水弁の第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるよう閉状態の前記主給水弁を開動作させることによって、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
これにより、給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態に制御することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る給水制御システムは、(1)の給水制御システムであって、前記給水制御装置は、前記蒸気タービンの負荷が第1の閾値より低いときには、前記主給水バイパス弁を開、前記主給水弁を閉とし、その状態から、前記負荷が前記第1の閾値に達すると、前記第1の目標弁開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水弁を第2の目標開度となるよう開動作させる。
これにより、低負荷時には主給水バイパス弁のみを開とし、高負荷時には、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態とする。これにより、高負荷時の給水流量を、主給水弁のみを開とするときと比較して増大することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る給水制御システムは、(2)の給水制御システムであって、前記給水制御装置は、前記負荷が第1の閾値以上で、前記主給水バイパス弁および前記主給水弁を開とした状態から、前記負荷が第2の閾値まで低下すると、前記主給水バイパス弁を開動作させ、前記主給水弁を閉動作させる。
これにより、高負荷時には、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態とし、低負荷時には、主給水バイパス弁のみを開とするよう制御できる。
【0043】
(4)第4の態様に係る給水制御システムは、(1)~(3)の給水制御システムであって、前記給水制御装置は、前記主給水バイパス弁を前記第1の目標弁開度まで一定の速度で閉動作させ、前記主給水弁を前記第2の目標開度まで一定の速度で開動作させる。
これにより、一定の速度で、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁を開閉させることにより、給水流量の変動を抑えつつ、主給水弁と主給水バイパス弁の両方を開状態に制御することができる。
【0044】
(5)第5の態様に係る給水制御システムは、(1)~(4)の給水制御システムであって、前記給水制御装置は、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁の両方を開状態としたときの前記主給水バイパス弁の目標開度と前記蒸気流量との関係を規定した第1の関数と、前記主給水バイパス弁の開度と前記主給水バイパス弁を通過する前記給水流量との関係を規定した第2の関数と、前記主給水弁の開度と前記主給水弁を通過する前記給水流量との関係を規定した第3の関数と、を有し、前記主給水バイパス弁を前記閉動作させる前の前記蒸気流量と、前記第1の関数と、に基づいて、前記第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度と前記第2の関数とに基づいて、前記第1の目標開度を達成したときに前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量を算出し、前記主給水バイパス弁を前記閉動作させる前の状態において前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量から、前記第1の目標開度を達成したときに前記主給水バイパス弁を通過する前記冷却水の給水流量を減算して差分流量を算出し、前記差分流量と、前記第3の関数と、に基づいて、前記第2の目標開度を算出する。
これにより、前記第1の目標開度と前記第2の目標開度を算出することができる。
【0045】
(6)第6の態様に係る給水制御装置は、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって前記冷却水の前記蒸気発生器への給水流量を制御する給水制御装置であって、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標弁開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
【0046】
(7)第7の態様に係る給水制御方法は、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御する給水制御方法であって、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする。
【0047】
(8)第8の態様に係るプログラムは、蒸気発生器へ冷却水を供給する主給水流路と、前記主給水流路に設けられる主給水弁と、前記主給水流路をバイパスする主給水バイパス流路と、前記主給水バイパス流路に設けられる主給水バイパス弁と、を備える給水系統において、前記主給水弁と前記主給水バイパス弁とを制御することによって給水流量を制御するコンピュータに、前記蒸気発生器から蒸気タービンへ供給される蒸気流量に基づいて第1の目標開度を算出し、前記第1の目標開度となるよう前記主給水バイパス弁を閉動作させ、前記主給水バイパス弁の前記閉動作によって減少する前記冷却水の給水流量を補うような第2の目標開度を算出し、前記第2の目標開度となるように閉状態の前記主給水弁を開動作させ、前記主給水弁及び前記主給水バイパス弁を開状態とする処理、を実行させる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・蒸気発生器
2・・・一次冷却ループ
3・・・水蒸気供給流路
4・・・蒸気タービン
5・・・復水器
6・・・二次冷却ループ
7・・・主給水流路
8・・・主給水バイパス流路
10・・・給水制御装置
11・・・センサデータ取得部
12・・・入力受付部
13・・・制御部
131・・・開度算出部
132・・・主給水弁制御部
133・・・主給水バイパス弁制御部
14・・・出力部
15・・・記憶部
100・・・給水制御システム
P1・・・一次冷却ポンプ
V1・・・主給水弁
V2・・・主給水バイパス弁
c1、c2、c3・・・センサ
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7