(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142916
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体、並びに、レンズユニット組み立て方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230928BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20230928BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B30/00
G03B15/00 V
G03B15/00 Q
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050048
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】杉目 孝行
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB09
2H044AB23
2H044AD02
2H044AJ03
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】鏡筒内への水蒸気の侵入経路を遮断するように鏡筒と光学要素との間を封止する封止材の充填不足による気密不良が生じないようにするレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体、並びに、レンズユニット組み立て方法を提供する。
【解決手段】本発明のレンズユニット11において、レンズ間空間よりも像側に位置されるレンズ18の外周と鏡筒12の内周との間にはレンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材70が充填され、封止材70による気体流通経路の遮断に関与するレンズ18は、樹脂成形品であるとともに、成形後のゲートカットにより切り取られた状態のゲート跡として外周に残されるゲートカット部18cを有し、レンズ18との間に封止材70が充填されてゲートカット部18cと対向する鏡筒12の内周部位は、ゲートカット部18cの形状に沿うように延在する相補形状部12Aを形成している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群を少なくとも含む光学要素と、前記光学要素を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備え、前記レンズ群が、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズにその像側で隣接する第2のレンズとを有し、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間にレンズ間空間が形成されて成るレンズユニットにおいて、
前記レンズ間空間よりも像側に位置される前記光学要素の外周と前記鏡筒の内周との間には前記レンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材が充填され、
前記封止材による気体流通経路の遮断に関与する前記光学要素は、樹脂成形品であるとともに、成形後のゲートカットにより切り取られた状態のゲート跡として外周に残されるゲートカット部を有し、
前記光学要素との間に前記封止材が充填されて前記ゲートカット部と対向する前記鏡筒の内周部位は、前記ゲートカット部の形状に沿うように延在する相補形状部を形成していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの前記光軸に対して垂直な断面において、
前記鏡筒の内周は、多角形の形状を成すとともに、周方向の複数個所で円形の前記光学要素の外周と点接触し、
前記光学要素の前記ゲートカット部は、前記多角形の隣り合う辺間で延びるようにその両端がこれらの隣り合う各辺と点接触することにより、前記隣り合う辺が協働して形成する前記相補形状部と共に閉空間を画定することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの前記光軸に対して垂直な断面において、
前記鏡筒の内周は、多角形の形状を成すとともに、周方向の複数個所で円形の前記光学要素の外周と点接触し、
前記光学要素の前記ゲートカット部が前記多角形を形成する辺のうちの1つと対向し、この対向する辺が前記相補形状部を形成することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記封止材による気体流通経路の遮断に関与する前記光学要素は、前記レンズ群を構成する最も像側に位置されるレンズであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記最も像側に位置されるレンズは、メニスカスレンズであるとともに、前記鏡筒の像側端部が密閉されない状態で前記鏡筒の内面に対して所定の隙間を存して遊嵌されることを特徴とする請求項4に記載のレンズユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットの前記レンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項7】
車両に搭載される車載システムであって、
請求項6に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像素子から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なう制御部と、
を有することを特徴する車載システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車載システムと乗員への情報を出力する出力装置とを搭載した移動体であって、
前記制御部は、前記対象物の認識情報を前記出力装置に出力するように構成されていることを特徴とする移動体。
【請求項9】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群を少なくとも含む光学要素と、前記光学要素を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備え、前記レンズ群が、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズにその像側で隣接する第2のレンズとを有し、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間にレンズ間空間が形成されて成るレンズユニットの組み立て方法であって、
所定の組み込み方向で前記鏡筒内に像側で所定数の前記光学要素を組み込むステップと、
前記鏡筒内の像側に所定数の前記光学要素を組み込んだ状態で、組み込まれた光学要素のうち最も物体側に位置される物体側光学要素の外周と前記鏡筒の内周との間に、前記レンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材を充填するステップであって、前記物体側光学要素が、樹脂成形品であるとともに、成形後のゲートカットにより切り取られた状態のゲート跡として外周に残されるゲートカット部を有し、前記物体側光学要素の前記ゲートカット部と対向する前記鏡筒の内周部位は、前記ゲートカット部の形状に沿うように延在する相補形状部を形成している、ステップと、
前記封止材を硬化させるステップと、
前記封止材によって前記物体側光学要素が前記鏡筒に対して回転方向で固定された状態で、前記物体側光学要素の物体側に他の光学要素を組み込むとともに、前記レンズユニットの光学特性を解析および評価し、その解析および評価の結果に基づいて前記他の光学要素を回転させつつその組み込み方向を調整して解像度を決定するステップと、
を含むレンズユニット組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニット、カメラモジュール、車載システム、および、車載システムを搭載した移動体、並びに、レンズユニット組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特に車載カメラ用のレンズユニットでは、少なくとも一部が車外に設置される場合、防水および防塵のため、
図9に示されるレンズユニット500のように、鏡筒120の内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ100と鏡筒120との間にシール部材として例えばOリング140が介挿され、鏡筒120の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ100の外周側面100aに、該レンズ100の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部100bが設けられ、この縮径部100bにOリング140が装着されて、第1のレンズ100の外周側面100aと鏡筒120の内周面120aとの間でOリング140が例えば径方向で圧縮されることにより、鏡筒120の物体側端部が封止された状態となっている。
【0004】
さらに、鏡筒120は、それが樹脂製であれば、例えば
図9に示されるようにその物体側の端部(
図9において上端部)にカシメ部123を有する形態が一般的であり、その場合、鏡筒120は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、カシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、第1のレンズ100をこのカシメ部123で鏡筒120の物体側端部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにOリング140によって防水対策を行なっても、湿気(水蒸気)は様々な経路を通じてレンズユニット500内に侵入し得る。そのため、外気温とレンズユニット500内の温度との間の差が大きくなると、レンズユニット500内の水蒸気が凝縮してレンズ表面に結露が生じる。特に、外部との温度差の影響が最も大きい第1のレンズ100とこれに隣接する第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が生じ易い。
【0007】
外気温とレンズユニット500内の温度との間の差が大きくなる要因としては、外気が冷たい冬期にレンズユニット500内の温度が上昇すること、具体的には、例えば、レンズユニット500を通じて集光される光を受光して電気信号に変換するための常時通電されたイメージセンサ(撮像素子)520から伝わる熱によりレンズユニット500内の温度が上昇すること、あるいは、イメージセンサ520や周囲環境(例えば車両のエンジン)からの熱によりレンズユニット500内の温度が高い状態で外部に露出する第1のレンズ100の表面100dが外気や雨に晒されたり路面上の水溜りの水しぶきを受けるなどして第1のレンズ100が冷却されることなどが挙げられる。
【0008】
また、レンズユニット500内への水蒸気の侵入を許容する経路としては、例えば、鏡筒120のカシメ部123と第1のレンズ100との間の隙間からOリング140の周囲の一部並びに第1のレンズ100と鏡筒120および/または第2のレンズ101との間の隙間を通じてレンズ間空間S1等へと至る経路、または、鏡筒120の透湿性の樹脂を直接に通じた経路、あるいは、鏡筒120およびレンズを形成する透湿性の樹脂を順次に通り抜ける経路などを挙げることができるが、とりわけ、イメージセンサ520が発する熱により該センサ520を支持する基板522の水分が蒸発して、その水蒸気がレンズユニット500内へ侵入することにより最終的にレンズ間空間S1内に入り込むことが最も懸念される。
【0009】
いずれにしても、このような経路を通じて水蒸気がレンズユニット500内に少しずつ侵入していき、前述したような要因により外気とレンズユニット500内との間で温度差が生じると、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が起こり、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)。したがって、レンズユニット500の気密性を更に一層確保して、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑制することが求められる。
【0010】
そのため、例えば、イメージセンサ520が位置される像側から第1のレンズ100と第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内へと向かう水蒸気の侵入経路を遮断するように封止するべく、レンズ間空間S1よりも像側に位置される任意の光学要素(レンズ、中間環、絞りなど)102と鏡筒120との間の隙間に接着剤等の封止材を充填することも考えられる。しかしながら、この場合には1つの問題が生じ得る。
【0011】
すなわち、水蒸気の侵入経路の封止に関与する前述した任意の光学要素102が樹脂成型品、例えば樹脂レンズ102であって、その成形後に成形品をランナーから切り離すゲートカット工程で、レンズ光軸に対して垂直な断面において円形の成形レンズからD形状部位がカットされることにより、ゲート跡が円弧の弦を成すように平面状に切り取られた状態で残される(以下、このように切り取られた部分をゲートカット部という)場合には、
図10に示されるように、鏡筒120に対して樹脂レンズ102を組み込んだ際に、そのようなゲートカット部102aと鏡筒120の内周面120aとの間にゲートカット隙間150が生じることにより、このゲートカット隙間150に起因して封止材の充填が不十分となって、気密不良が起こり得る。
【0012】
具体的には、
図10の(a)に示されるようにレンズ102を鏡筒120内に組み込んでレンズ102のゲートカット部102aと鏡筒120の内周面120aとの間にゲートカット隙間150が生じている状態で、例えばレンズ102の外周に環状に形成された段差溝を通じて
図10の(b)に示されるように鏡筒120の内周面120aとレンズ102の外周面102cとの間の環状隙間135に接着剤等の封止材130を充填していくと、レンズ102のゲートカット部102aと鏡筒120の内周面120aとの間のゲートカット隙間150が環状隙間135よりも大きく隔てられていることにより、このゲートカット隙間150で封止材130が充填不足状態となって気密不良が生じ、あるいは、場合によっては、
図10の(c)に示されるように、封止材130がその粘性等にも起因して像側に落ち込んで、空洞部を形成してしまい、この空洞部を通じた像側から物体側への水蒸気の流通を許容してしまう虞がある。無論、封止材130の像側への落ち込みによる空洞部の形成を防止するように封止材130をゲートカット隙間150において多めに充填することも考えられるが、充填量の制御は難しく、組み立て工程を複雑化しかねない。
【0013】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、鏡筒内への水蒸気の侵入経路を遮断するように鏡筒と光学要素との間を封止する封止材の充填不足による気密不良が生じないようにするレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体、並びに、レンズユニット組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群を少なくとも含む光学要素と、前記光学要素を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備え、前記レンズ群が、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズにその像側で隣接する第2のレンズとを有し、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間にレンズ間空間が形成されて成るレンズユニットにおいて、
前記レンズ間空間よりも像側に位置される前記光学要素の外周と前記鏡筒の内周との間には前記レンズ間空間内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材が充填され、
前記封止材による気体流通経路の遮断に関与する前記光学要素は、樹脂成形品であるとともに、成形後のゲートカットにより切り取られた状態のゲート跡として外周に残されるゲートカット部を有し、
前記光学要素との間に前記封止材が充填されて前記ゲートカット部と対向する前記鏡筒の内周部位は、前記ゲートカット部の形状に沿うように延在する相補形状部を形成していることを特徴とする。
【0015】
本発明の上記構成によれば、光学要素との間に封止材が充填されて光学要素のゲートカット部と対向する鏡筒の内周部位が、ゲートカット部の形状に沿うように延在する相補形状部を形成しているため、光学要素のゲートカット部と鏡筒の内周との間に大きく開口して存在していた従来のゲートカット隙間を、光学要素の組み込みに必要な最小限の大きさに抑えることが可能となり、したがって、ゲートカット隙間で封止材が充填不足状態となって気密不良が生じたり、あるいは、封止材が像側に落ち込んで水蒸気の流通を許容する空洞部を形成してしまうといった事態を回避することができる。
【0016】
また、本発明の上記構成によれば、レンズ間空間内へと向かう気体流通経路を像側で遮断する封止材が設けられているため、特に像側からの水蒸気、とりわけ、レンズユニットを通じて集光される光を像側で受光して電気信号に変換するイメージセンサの実装基板で生じて内側収容空間内に取り込まれる水蒸気が、レンズ間空間内へと侵入して第1のレンズの裏面に結露を生じさせるといった事態を効果的に回避できる。したがって、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)といった事態を回避できる。
【0017】
なお、上記構成において、「気体流通経路」とは、鏡筒内でレンズ間空間へと通じる鏡筒の内周と光学要素の外周との間のありとあらゆる隙間を指す。また、上記構成において、「光学要素」とは、レンズ群を構成するレンズはもとより、レンズ間に介挿される中間スペーサ、中間環等を含めて鏡筒内の光学系に関与する全ての要素を含むものとする。なお、封止材を鏡筒との間で介在させる光学要素として、レンズ以外の光学要素、例えば中間環や中間スペーサを使用すると、封止材を介在させるためにレンズを加工しないで済むため、光学特性に影響を及ぼすことがなく、有益である。
【0018】
また、「封止材」としては、レンズ間空間内へと向かう気体(水蒸気)の流通を遮断する材料、例えば、接着剤等の接着媒体、水蒸気吸着体(吸水体)、気密材料などを挙げることができる。封止材として接着剤を用いる場合、そのような接着剤は、特にオレフィン系の低透湿性(例えば、60g/m2・24hr以下の透湿度)の接着剤(例えば、UV硬化性接着剤)であることが好ましく、とりわけ、透明以外の着色接着剤(例えば、白色、黒色、グレーに近い乳白色など)を用いることが望ましい。これは、接着剤が透明であると、光を反射してゴースト現象を発生させる虞があるからである。
また、封止材の接着剤の厚さは0.2mm以上であることが好ましく、この場合、接着剤は、光学要素と鏡筒との間の隙間(気体流通経路)に充填されてもよく、あるいは、光学要素の外面または鏡筒の内面を加工することによって形成される接着剤収容空間に充填されてもよい。
【0019】
また、上記構成において、封止材による気体流通経路の遮断に関与する光学要素の鏡筒に対する取り付け形態は特に限定されない。そのような光学要素は、例えば鏡筒に対して圧入、点接触、遊嵌などによって組み付けられて保持されてもよい。また、上記構成において、ゲートカット部の形状、光学要素の外周におけるゲートカット部の位置や数も特に限定されない。また、上記構成において、封止材による気体流通経路の遮断に関与する光学要素の光軸方向における位置は、レンズ間空間よりも像側であれば特に限定されない。しかしながら、前述したイメージセンサの実装基板を発生源とする水蒸気のレンズユニット内への侵入を規制するためには、封止材が、レンズユニットの像側端部付近、特に、レンズ群を構成する最も像側に位置されるレンズと鏡筒との間に設けられることが好ましい。このように、レンズユニット内への水蒸気の侵入を許容し得る経路の中でも、とりわけ、レンズユニット内への水蒸気侵入が最も懸念される像側端部で、鏡筒とレンズとの間に封止材を設ければ、レンズ間空間内へ向かう水蒸気をその発生源で根元から絶つことができるため、鏡筒の内側収容空間内全体を湿度の低い状態に保つことができ、レンズ群を構成する全てのレンズに関して優れたレンズ防曇効果を達成できる。また、このような像側端部封止構成は、特に、像側から水蒸気が侵入し易いレンズユニット構造の場合、例えば、鏡筒の像側端部が密閉されない状態で、最も像側に位置されるレンズが、温度変化の激しい環境下で変形し易いメニスカスレンズであることから、鏡筒の内面に対して所定の隙間を存して遊嵌されている場合において有益である。
【0020】
また、このような水蒸気遮断効果は、光学要素、とりわけレンズ群を構成するレンズが、光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒と周方向で点接触することにより、径方向で鏡筒の内面との間に隙間を形成するレンズ組み込み形態を少なくとも部分的に伴うレンズユニットにおいて特に有益である。このようなレンズ組み込み形態では、気体流通経路が、レンズ群を構成する各レンズと鏡筒の内面との間の各隙間によって形成されて光軸方向に沿って連続的に延びる連通路を形成することから、像側からの水蒸気がレンズ間空間内へと侵入し易く、したがって、そのような連通路を封止材によって遮断することにより、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を確実に防止して、第1のレンズの裏面に結露を生じさせるといった事態を効果的に回避できる。
【0021】
レンズを含む光学要素と鏡筒との点接触は、例えば、鏡筒の内周面の複数の突起が円形の光学要素の外周面と接触することによって実現されてもよいが、鏡筒の内周が多角形の形状を成し、その多角形に円形のレンズが内接することによって実現されてもよい。その場合、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面において、光学要素のゲートカット部は、多角形の隣り合う辺間で延びるようにその両端がこれらの隣り合う各辺と点接触することにより、隣り合う辺が協働して形成する相補形状部と共に閉空間を画定してもよい。これによれば、閉空間によって封止材の広がりを規制できるため、ゲートカット隙間での封止材充填不足による空洞化を確実に防止できる。また、鏡筒の内周が多角形の形状を成す場合、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面において、光学要素のゲートカット部が多角形を形成する辺のうちの1つと対向し、この対向する辺が相補形状部を形成してもよい。これによれば、相補形状部が光学要素との接触に関与しないため、相補形状部の形状を簡略化することも可能となる。いずれにしても、鏡筒内周の多角形に対するゲーットカット部の位置関係は任意であるが、例えば、そのような位置関係がゲートカット部の形状や大きさに基づいて決定されてもよい。
【0022】
また、本発明は、前述のレンズユニットを有するカメラモジュール、該カメラモジュールを有する車載システム、車載システムを搭載して成る移動体、および、レンズユニット組み立て方法も提供する。このようなカメラモジュール、車載システム、移動体、および、レンズユニット組み立て方法によっても前述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。なお、「移動体」とは、移動できる物体の全てを指し、例えば車両等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光学要素との間に封止材が充填されて光学要素のゲートカット部と対向する鏡筒の内周部位が、ゲートカット部の形状に沿うように延在する相補形状部を形成しているため、封止材の充填不足による気密不良が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの概略断面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う断面図(封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図)である。
【
図3】鏡筒の内周が多角形を成す第1の変形例に係る、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図であり、(a)は鏡筒に相補形状部を伴わない改善前の断面図、(b)は鏡筒に相補形状部を伴う改善後の本発明に係る断面図である。
【
図4】鏡筒の内周が多角形を成す第2の変形例に係る、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図であり、(a)は鏡筒に相補形状部を伴わない改善前の断面図、(b)は鏡筒に相補形状部を伴う改善後の本発明に係る断面図である。
【
図5】
図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
【
図6】レンズユニット組み立て方法の一例に係るフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを備える撮像システム(車載システム)が搭載される移動体としての車両の概略図である。
【
図8】
図7の撮像システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】従来のレンズユニットの一例を示す概略断面図である。
【
図10】封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図であり、(a)は、従来のゲートカット隙間を伴う断面図、(b)は、(a)のゲートカット隙間を含めてレンズと鏡筒との間に封止材を充填した状態を示す断面図、(c)は、(b)の充填後にゲートカット隙間における充填不足により空洞部が生じてしまっている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、特にセンシングシステムにおいて信頼性の高いシステムを実現でき、強靭なインフラの開発に貢献するものであり、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」をターゲットとするものである。
なお、以下で説明される本実施形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した
図9および
図10を含む全ての図において、レンズについてはハッチングを省略している。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製(金属製であっても構わない)の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17および第6のレンズ18から成る6つのレンズと、2つの絞り部材22a,22bとを備えている。この場合、第1のレンズ13は、その物体側表面が凸面13dを成すとともに像側表面の中央部に凹面13eを有し、また、この第1のレンズ13にその像側で隣接する第2のレンズ14は、その物体側表面の中央部に凹面14bを有し、したがって、第1および第2のレンズ13,14をその径方向外側の座面13a,14a同士で接合する
図1の組み込み状態では、第1のレンズ13と第2のレンズ14との間にレンズ間空間S1が形成される。また、第3のレンズ15は、第2のレンズ14と第4のレンズ16との間に介挿された円筒状を成す樹脂製の中間スペーサ(中間環)30の内側保持部によって保持されており、この内側保持部は、中間スペーサ30の内周面に形成された段部30aによって第3のレンズ15を像側から保持している。また、中間スペーサ30はその内径側の上部にカシメ部30bを有しており、このカシメ部30bは、第3のレンズ15の像側の段差面15aを中間スペーサ30の段部30aに対して光軸方向で押し付けるようにして径方向内側に熱的にカシメられている。なお、第4のレンズ16および第5のレンズ17は互いに貼り合わされて成る貼り合わせレンズ29を構成しており、第5のレンズ17は、その像側表面に形成された環状の凸部17aが第6のレンズ18の物体側表面の凹部18a内に嵌合されて、レンズ16,17,18同士の芯出しが行なわれる。また、最も像側に位置される第6のレンズ18は、温度変化の激しい環境下で変形し易いメニスカスレンズであり、そのため、鏡筒12の内面に対して所定の隙間を存して遊嵌されている。
【0027】
また、本実施形態では、第2のレンズ14と中間スペーサ30との間、および、中間スペーサ30と第4のレンズ16との間にそれぞれ絞り部材22a,22bが介挿されており、これらの絞り部材22a,22bは、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0028】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は球面ガラスレンズであり、また、中間スペーサ30に保持される第3のレンズ15も球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,16,17,18は樹脂レンズであるが、これに限定されない。また、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面(物体側の表面および/または像側の表面)には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。特に、本実施形態において、中間スペーサ30に保持された第3のレンズ15の物体側表面には、赤外線カットフィルタ28が蒸着によって設けられる。したがって、本実施形態の場合、内側収容空間S内を外部に対して密閉するように鏡筒12の像側端部に赤外線カットフィルタが設けられていない(すなわち、鏡筒12の像側端部が外部に対して密閉されていない)。なお、以上説明してきたレンズ群の各レンズ13,14,15,16,17,18、中間スペーサ(中間環)30、赤外線カットフィルタ28、絞り22a,22bは全て、鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれてレンズユニット11の光学特性に関与する光学要素である。
【0029】
また、本実施形態において、最も物体側に位置される第1のレンズ13と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ13の外周側面13bに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13cが設けられ、この縮径部13cにOリング26が装着されて、第1のレンズ13の外周側面13bと鏡筒12の内周面との間でOリング26が径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。
【0030】
また、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23で鏡筒12の物体側端部に固定する。なお、第1のレンズ13の固定は、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,16,17,18を収容した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定キャップによって行なわれてもよい。
【0031】
また、鏡筒12の像側の端部(
図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18と、中間スペーサ30と、絞り部材22a,22bとが光軸方向で保持固定されている。
【0032】
また、本実施形態のレンズユニット11では、レンズ間空間S1内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材が、レンズ間空間S1よりも像側に位置される光学要素の外周と鏡筒12の内周との間の隙間(気体流通経路の一部)に充填されている。特に本実施形態では、そのような封止材による気体流通経路の遮断に関与する光学要素が、レンズ群Lを構成する最も像側に位置される樹脂製のメニスカスレンズである第6のレンズ18となっている。この樹脂製の第6のレンズ18は、
図1のA-A線に沿う断面図である
図2に明確に示されるように、その成形後に成形品をランナーから切り離すゲートカット工程でレンズ光軸に対して垂直な断面において円形の成形レンズからD形状部位がカットされることにより、円弧の弦を成すように平面状に切り取られた状態のゲート跡として外周に残されるゲートカット部18cを有する。具体的に、このゲートカット部18cは、径方向外側に所定の幅で所定量突出する中央の突出部18caと、この突出部18caの両側の直線部18cb,18cbとによって構成される。
【0033】
また、本実施形態において、鏡筒12は、
図2に示されるように、光軸に対して垂直な断面においてその内周が円形を成しているが、第6のレンズ18のゲートカット部18cと対向する鏡筒12の内周部位は、ゲートカット部18cの形状に沿うように延在する相補形状部12Aを形成している。具体的に、この相補形状部12Aは、ゲートカット部18cとの間に、鏡筒12内への第6のレンズ18の組み込みに必要な最小限の隙間を隔てて、ゲートカット部18cの形状に沿って延びており、ゲートカット部18cの突出部18caを内側に受け入れるように突出部18caの形状に沿って延びる中央の凹部12Aaと、凹部12Aaの両側に位置してゲートカット部18cの直線部18cbに沿って延びる直線部12Ab,12Abとにより構成される。
【0034】
したがって、このような構成によれば、第6のレンズ18のゲートカット部18cと鏡筒12の内周面12bとの間のゲートカット隙間40は、従来のように大きく開口することなく(
図10参照)、第6のレンズ18の組み込みに必要な最小限の大きさに抑えられ得る。
【0035】
また、このようなゲートカット隙間40を含めて第6のレンズ18の外周面18dと鏡筒12の内周面12bとの間の環状の隙間42に充填されるべき封止材70は、第6のレンズ18の物体側表面の外周に環状に形成された段差溝18eを通じて流し込まれていく。この場合、段差溝18eは、第6のレンズ18の物体側表面の径方向外側に形成されて径方向外側ほど厚さ(光軸方向寸法)が薄くなるテーパ側面18eaと、テーパ側面18eaの径方向外側端縁から径方向外側に向かって水平に延びる底面18ebとから成り、鏡筒12の内周面12bとの間に環状の封止材収容空間を形成している。そして、この環状の封止材収容空間の全周にわたって封止材70が充填される。このようにして充填された封止材70は、第6のレンズ18の外周面18dと鏡筒12の内周面12bとの間の隙間40,42に流れ込んで気体流通経路を遮断する。
【0036】
本実施形態において、封止材70は、接着剤、特にオレフィン系の低透湿性(例えば、60g/m2・24hr以下の透湿度)の接着剤(例えば、UV硬化性接着剤)であることが好ましく、とりわけ、透明以外の着色接着剤(例えば、白色、黒色、グレーに近い乳白色など)を用いることが望ましい。これは、接着剤が透明であると、光を反射してゴースト現象を発生させる虞があるからである。
また、封止材70を形成する接着剤の厚さは0.2mm以上であることが好ましい。また、本実施形態では、封止材による気体流通経路の遮断に関与する光学要素が第6のレンズ18であったが、他の樹脂レンズ14,16,17においても同様の構成を適用できる。
【0037】
また、このような封止構造を伴う第6のレンズ18も含めて光学要素を鏡筒12内に組み込むレンズユニット組み立て方法としては、例えば以下のような方法が考えられる。すなわち、
図6に示されるように、まず最初に、所定の組み込み方向で鏡筒12内に像側で所定数の光学要素(本実施形態では、1枚の第6のレンズ18のみ)を組み込む(ステップS1)。このようにして鏡筒12内の像側に所定数の光学要素(本実施形態では、1枚の第6のレンズ18のみ)を組み込んだ状態で、今度は、組み込まれた光学要素のうち最も物体側に位置される物体側光学要素(本実施形態では、第6のレンズ18)の外周と鏡筒12の内周との間に、レンズ間空間S1内へと向かう気体流通経路を遮断するように封止する封止材70を前述したように充填する(ステップS2)。その後、封止材70を硬化させ(ステップS3)、続いて、封止材70によって物体側光学要素(本実施形態では、第6のレンズ18)が鏡筒12に対して回転方向で固定された状態で、物体側光学要素(本実施形態では、第6のレンズ18)の物体側に他の光学要素(本実施形態では、第5のレンズ17およびそれよりも物体側のレンズ13,14,15、中間スペーサ30、絞り22a,22b)を組み込むとともに、レンズユニット11の光学特性を解析および評価する(ステップS4)。そして、その解析および評価の結果に基づいて他の光学要素を回転させつつその組み込み方向を調整して解像度を決定する(ステップS5)。
【0038】
図3および
図4には、封止材充填前の第6のレンズ18における封止構造の変形例が示される。
図3は、鏡筒12の内周が多角形を成す第1の変形例に係る、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図であり、(a)は、鏡筒12に相補形状部を伴わず、したがって、前述した
図10と同様に大きなゲートカット隙間150を伴う改善前の断面図、(b)は、第6のレンズ18のゲートカット部18cと対向する鏡筒12の内周部位に相補形状部12Aを伴う改善後の本発明に係るレンズユニット11の断面図である。図示のように、この第1の変形例において、多角形の形状を成す鏡筒12の内周は、周方向の複数個所で円形の第6のレンズ18の外周と点接触し、第6のレンズ18のゲートカット部18cは、多角形を形成する辺のうちの任意の1つの辺12cと対向し、この対向する辺12cが相補形状部12Aを形成している(したがって、ゲートカット隙間40が狭い隙間となっている)。これによれば、相補形状部12Aが第6のレンズ18との接触に関与しないため、相補形状部12Aの形状を簡略化することも可能となる。
【0039】
図4は、鏡筒12の内周が多角形を成す第2の変形例に係る、封止材による気体流通経路の遮断に関与するレンズユニットの光軸に対して垂直な断面図であり、(a)は、鏡筒12に相補形状部を伴わず、したがって、前述した
図10と同様に大きなゲートカット隙間150を伴う改善前の断面図、(b)は、第6のレンズ18のゲートカット部18cと対向する鏡筒12の内周部位に相補形状部12Aを伴う改善後の本発明に係るレンズユニット11の断面図である。図示のように、この第2の変形例において、多角形の形状を成す鏡筒12の内周は、周方向の複数個所で円形の第6のレンズ18の外周と点接触し、第6のレンズ18のゲートカット部18cは、多角形の任意の隣り合う辺12ca,12cb間で延びるようにその両端18cd、18cdがこれらの隣り合う各辺12ca,12cbと点接触することにより、隣り合う辺12ca,12cbが協働して形成する相補形状部12Aと共に閉空間40Aを画定している(ゲートカット隙間40が狭い閉空間40Aとなっている)。これによれば、閉空間40Aによって封止材70の広がりを規制できるため、ゲートカット隙間40での封止材充填不足による空洞化を確実に防止できる。
【0040】
また、
図5は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が像側端部に装着された
図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0041】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子;イメージセンサ)304を備えている。
【0042】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12aに鍔状に設けられるフランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0043】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、光学要素である第6のレンズ18との間に封止材70が充填されて第6のレンズ18のゲートカット部18cと対向する鏡筒12の内周部位が、ゲートカット部18cの形状に沿うように延在する相補形状部12Aを形成しているため、第6のレンズ18のゲートカット部18cと鏡筒12の内周との間に大きく開口して存在していた従来のゲートカット隙間を、第6のレンズ18の組み込みに必要な最小限の大きさに抑えることが可能となる。したがって、このように必要最小限の大きさに抑えられたゲートカット隙間40で封止材70が充填不足状態となって気密不良が生じたり、あるいは、封止材70が像側に落ち込んで水蒸気の流通を許容する空洞部を形成してしまうといった事態を回避することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、レンズ間空間S1内へと向かう気体流通経路を像側で遮断する封止材70が設けられているため、特に像側からの水蒸気、とりわけ、レンズユニット11を通じて集光される光を像側で受光して電気信号に変換するイメージセンサ304の実装基板で生じて内側収容空間S内に取り込まれる水蒸気が、レンズ間空間S1内へと侵入して第1のレンズ13の裏面13eに結露を生じさせるといった事態を効果的に回避できる。したがって、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)といった事態を回避できる。
【0046】
図7には、
図5のカメラモジュール300を含む撮像装置250を備える車載システム(撮像システム)が搭載される移動体としての車両240が概略的に示されている。図示のように、撮像装置250は車両240に搭載することができ、
図7は、車両240における撮像装置250の搭載位置を例示する配置例である。車両240に搭載される撮像装置250は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両240の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置250aは、車両240が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパーまたはその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置250bは、車両240の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置250cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上またはインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置250dは、車両240の後方モニター用に車両240の後部に設置されてもよい。撮像装置250a、250bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置250cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置250dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置250は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラおよび右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0047】
撮像装置250により撮像された画像の画像信号は、車両240内の情報処理装置(制御部)242および/または表示装置(出力装置)243等に出力され得る。これらの情報処理装置242および表示装置243は、撮像装置250と共に車載システムを構成する。車両240内の情報処理装置242は、撮像装置250により取得される画像信号(撮像画像)を処理し、画像を認識(撮像画像の中の対象物を認識)して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置242は、撮像画像の中の対象物の認識情報を表示装置243に出力するように構成され、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、および、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置243は、情報処理装置242により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置250から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置243は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、および、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置243は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置250から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる(乗員への情報を出力できる)。
【0048】
図8には、
図7の車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、一実施形態に係る撮像装置250は、制御部252と、記憶部254と、前述した
図5のカメラモジュール300を備える。
【0049】
制御部252は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール80の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部252は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部252は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application
Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable
Gate Array)を含んでもよい。制御部252は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、および、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。また、制御部252は、前述した情報処理装置242と同様の機能を有してもよく、例えば、撮像素子304から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なってもよい。
【0050】
記憶部254は、撮像装置250の動作に係る各種情報またはパラメータを記憶する。記憶部254は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部254は、制御部252のワークメモリとして機能してもよい。記憶部254は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部254は、制御部252が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部254は制御部252に含まれてもよい。
【0051】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0052】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide
Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流または電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0053】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部252に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部252によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部252から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0054】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒、ゲートカット部、相補形状部などの形状および位置、並びに、封止材の形成形態等は、前述した実施形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11 レンズユニット
12 鏡筒
12A 相補形状部
13 第1のレンズ(光学要素)
14 第2のレンズ(光学要素)
18 第6のレンズ(光学要素)
18c ゲートカット部
30 中間スペーサ(光学要素)
70 封止材
242 情報処理装置
243 表示装置
250 撮像装置
252 制御部
300 カメラモジュール
304 パッケージセンサ(撮像素子)
L レンズ群
O 光軸
S 内側収容空間
S1 レンズ間空間