(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142918
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04N1/60 970
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050050
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】高石 真也
(72)【発明者】
【氏名】松原 功一
(72)【発明者】
【氏名】西國 勇一
(72)【発明者】
【氏名】黒津 大地
【テーマコード(参考)】
2C262
5C079
【Fターム(参考)】
2C262AA04
2C262BA14
2C262BC17
2C262EA11
2C262FA13
2C262GA51
5C079HB01
5C079HB03
5C079HB12
5C079KA17
5C079LB02
5C079MA04
5C079MA19
5C079NA03
5C079NA29
5C079PA03
5C079PA05
(57)【要約】
【課題】用紙からの反射光だけを考慮して印刷物の画像の色味を再現する場合に比して、画面に表示する印刷物の画像の色味の再現性を高める。
【解決手段】印刷前に印刷物の色味を再現して画面上に表示するコンピュータに、メタリック色の色材で反射される第1成分と、色材を透過して用紙で反射される第2成分とに基づいて、印刷物の色味を再現した画像を生成する機能を実現させるためのプログラムを提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷前に印刷物の色味を再現して画面上に表示するコンピュータに、
メタリック色の色材で反射される第1成分と、当該色材を透過して用紙で反射される第2成分とに基づいて、前記印刷物の色味を再現した画像を生成する機能、
を実現させるためのプログラム。
【請求項2】
前記画像を生成する機能は、前記色材の濃度値の大きさに応じた割合で前記第1成分と前記第2成分を合成し、当該画像を生成する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記画像を生成する機能は、前記第2成分の割合を、前記色材の濃度値の大きさに反比例させる、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記画像を生成する機能は、前記色材の反射係数と前記濃度値を乗算した値をαとする場合、前記第1成分と前記第2成分をα:1-αの割合で加算する、
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記画像を生成する機能は、前記色材が前記用紙の表面を覆う面積率に応じ、前記第2成分の割合を設定する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記色材は、前記用紙の表面に層を形成するトナーである、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記用紙は非白紙の用紙である、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
メタリック色の色材で反射される第1成分と、当該色材を透過して用紙で反射される第2成分とに基づいて、印刷物の色味を再現した画像を生成する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷前に、印刷される画像の色味を画面上で確認することがある。この確認にはプレビュー機能が用いられる。印刷前に色味を確認することで、用紙や色材の無駄が少なくなる。
カラー印刷の分野では、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色を基本色とする。昨今では、基本色に加え、金銀その他のメタリック色を使用することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、印刷には様々な色の用紙が使用されるが、同じ画像を印刷する場合でも、用紙の色が異なると印刷物の色味が異なって見えることがある。例えば白色の用紙(以下「白色紙」という。)に印刷する場合と青色の用紙に印刷する場合では同じ画像でも色味が違って見える。
そこで、プレビュー機能により印刷物の画像を表示する場合には、白色紙に印刷するときの印刷物の画像の見え方を用紙の色に応じて定まる係数で補正する技術が実用化されている。
【0005】
しかし、従前のプレビュー機能では、金銀その他のメタリック色に対応する色材が色付きの用紙(以下「非白色の用紙」という。)に印刷される場合が想定されていない。実際、従前のプレビュー機能でメタリック色を表示すると、白色紙に印刷する場合とは異なり、実際の印刷物の見た目との差が大きい。特に、メタリック色に対応する色材の濃度が高い場所では、実際の印刷物との見え方の差が大きくなる。
【0006】
本発明は、用紙からの反射光だけを考慮して印刷物の画像の色味を再現する場合に比して、画面に表示する印刷物の画像の色味の再現性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、印刷前に印刷物の色味を再現して画面上に表示するコンピュータに、メタリック色の色材で反射される第1成分と、当該色材を透過して用紙で反射される第2成分とに基づいて、前記印刷物の色味を再現した画像を生成する機能、を実現させるためのプログラムである。
請求項2に記載の発明は、前記画像を生成する機能は、前記色材の濃度値の大きさに応じた割合で前記第1成分と前記第2成分を合成し、当該画像を生成する、請求項1に記載のプログラムである。
請求項3に記載の発明は、前記画像を生成する機能は、前記第2成分の割合を、前記色材の濃度値の大きさに反比例させる、請求項2に記載のプログラムである。
請求項4に記載の発明は、前記画像を生成する機能は、前記色材の反射係数と前記濃度値を乗算した値をαとする場合、前記第1成分と前記第2成分をα:1-αの割合で加算する、請求項3に記載のプログラムである。
請求項5に記載の発明は、前記画像を生成する機能は、前記色材が前記用紙の表面を覆う面積率に応じ、前記第2成分の割合を設定する、請求項1に記載のプログラムである。
請求項6に記載の発明は、前記色材は、前記用紙の表面に層を形成するトナーである、請求項1に記載のプログラムである。
請求項7に記載の発明は、前記用紙は非白紙の用紙である、請求項1に記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、メタリック色の色材で反射される第1成分と、当該色材を透過して用紙で反射される第2成分とに基づいて、印刷物の色味を再現した画像を生成する、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、用紙からの反射光だけを考慮して印刷物の画像の色味を再現する場合に比して、画面に表示する印刷物の画像の色味の再現性を高めることができる。
請求項2記載の発明によれば、色材の濃度値の大きさに応じて色味を調整できる。
請求項3記載の発明によれば、色材の濃度値が大きいほど、用紙で反射される第2成分の影響を小さくできる。
請求項4記載の発明によれば、色材の濃度値の大きさに応じて第1成分と第2成分の割合を調整し、印刷物の画像を実際の見え方に近づけることができる。
請求項5記載の発明によれば、色材の面積率に応じて色味を調整できる。
請求項6記載の発明によれば、メタリック色に対応するトナーで印刷される印刷物の画像を実際の見え方に近づけることができる。
請求項7記載の発明によれば、非白紙にメタリック色を印刷する場合の印刷物の画像を実際の見え方に近づけることができる。
請求項8記載の発明によれば、用紙からの反射光だけを考慮して印刷物の画像の色味を再現する場合に比して、画面に表示する印刷物の画像の色味の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態で使用する印刷システムの構成例を示す図である。
【
図2】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】白色DLUTのデータ構造の一例を説明する図である。
【
図5】色が認識されるメカニズムと色紙DLUTの演算アルゴリズムを説明する図である。(A)は白色の用紙の見え方を説明する図であり、(B)は白色の用紙の表面に黄トナーで印刷された部分の色味の見え方を説明する図であり、(C)は青色の用紙の見え方を説明する図であり、(D)は青色の用紙の表面に黄トナーで印刷された部分の色味の見え方を説明する図であり、(E)は青色の用紙に基本色を用いて印刷する場合を想定した色紙DLUTの演算アルゴリズムである。
【
図6】メタリック色が色味に与える影響と色紙DLUTの演算アルゴリズムを説明する図である。(A)は青色の用紙の表面に銀トナーと黄トナーが順番に印刷される部分の色味の見え方を説明する図であり、(B)は青色の用紙に基本色とメタリック色を用いて印刷する場合を想定した色紙DLUTの演算アルゴリズムである。
【
図7】制御装置によるプレビュー画像の表示に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】特色を使用しない場合のプレビュー画像の表示例を説明する図である。(A)は白紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(B)は青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示す。
【
図9】特色を使用する場合のプレビュー画像の表示例を説明する図である。(A)は銀トナーを下地に使用して白紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(B)は銀トナーを下地に使用して青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(C)は金トナーを下地に使用して青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<システム構成>
図1は、実施の形態で使用する印刷システム1の構成例を示す図である。
図1に示す印刷システム1は、給紙装置10と、印刷装置20と、後処理装置30、制御装置40で構成されている。
ここでの印刷システム1は画像形成システムの一例であり、印刷装置20は画像形成装置の一例であり、制御装置40は情報処理装置の一例である。
【0011】
図1に示す印刷システム1は、プロダクションプリンタとも呼ばれる。もっとも、印刷システム1は、プロダクションプリンタに限らず、オフィスで使用されるプリンタや家庭で使用されるプリンタでもよい。オフィスで使用されるプリンタには、プリント機能に加え、スキャナ機能、FAXを送受信する機能等が設けられている。オフィスで使用されるプリンタと家庭で使用されるプリンタの違いは主に性能である。
【0012】
図1に示す印刷システム1には、2台の給紙装置10が直列に接続されている。
給紙装置10は、用紙を印刷装置20に供給する装置である。本実施の形態の場合、給紙装置10には、カット紙が収容されている。給紙装置10には、例えば7000枚のカット紙が収容される。もっとも、給紙装置10に収容される用紙は、カット紙に限らず、ロール紙でもよい。本実施の形態の場合、用紙は、いわゆる白色紙(以下「白紙」ともいう。)に限らず、色付きの用紙(以下「非白色紙」という。)の使用も想定する。
【0013】
本実施の形態における非白色紙は、用紙の全体が単色である場合に限らない。例えば用紙に含まれる色が複数でもよい。
また、非白色紙は、染色された用紙に限らず、表面だけに着色した用紙も含まれる。このため、メタリック色の下層となる表面に何らかの色が付されている用紙も、広義には非白色紙に含めてもよい。ここでの用紙は、記録媒体の一例である。
【0014】
図1に示す印刷システム1には、2台の印刷装置20が直列に接続されている。本実施の形態における印刷装置20は、電子写真方式により用紙に画像を印刷するエンジン(以下「印刷エンジン」ともいう。)を有している。
印刷エンジンは、帯電、露光、現像、転写、及び定着の工程を経て、用紙に画像を印刷する。印刷エンジンは、複数の色材を使用して用紙に画像を形成する形成部の一例である。画像には、いわゆる図や写真に限らず、文字も含まれる。以下では、用紙の表面に形成される図や写真をオブジェクトともいう。
【0015】
本実施の形態で使用する印刷装置20は、基本色に対応する4種類のトナーとメタリック色に対応する1又は2種類のトナーを用いた印刷が可能な装置である。
本実施の形態では、金、銀その他のメタリック色を想定する。メタリック色は、例えば自然光に対する反射係数が基本色に比して高い色とも呼ばれる。メタリック色は、基本色以外の色である点で「特色」と呼ばれることもある。
印刷装置20で使用するトナーは、色材の一例である。
本実施の形態における印刷装置20は、用紙の片面に印刷する機能に加え、用紙の両面に印刷する機能も備える。画像が印刷された用紙を印刷物という。
【0016】
図1に示す印刷システム1には、2台の後処理装置30が直列に接続されている。後処理装置30には、例えば同じページの印刷物を単位として位置をずらして排出する処理(すなわちスタック処理)、複数枚の用紙を針で綴るステープル処理、複数枚の用紙を粘着テープで製本する処理が設けられる。
【0017】
制御装置40は、印刷装置20等の動きを制御する装置である。制御装置40は、例えばDLUT(=Direct Look Up Table)の生成、DLUTの読み出し、印刷ジョブや印刷に使用する文書データの管理、RIP(=Raster Image Processer)処理を制御する。
DLUTは、各トナー色の濃度値を各表示色の算出に使用する値に対応付けるテーブルである。DLUTは、変換テーブルの一例である。
また、制御装置40は、前述したDLUTを使用して印刷前に印刷物の色味を再現するプレビュー画像の生成も制御する。
図1の場合、制御装置40は、印刷装置20の筐体の上部に配置されているが、印刷装置20の筐体内に配置してもよい。
【0018】
印刷ジョブは、文書の印刷を指示するジョブを意味する。1つの印刷ジョブには、印刷の対象である文書に対応するデータファイル(以下「文書データ」ともいう。)が含まれる。文書データのデータ形式は問わない。
文書データには、アプリケーションプログラム(以下「アプリ」という。)で生成された電子文書と、紙の文書から生成された電子化文書がある。
【0019】
電子文書には、例えばいわゆるオフィスアプリで生成された電子データ、製図アプリで生成された電子データ、会計アプリで生成された電子データ、ウェブサイトを閲覧するアプリ(すなわちブラウザ)に表示されるウェブページがある。
電子化文書には、例えばスキャナから出力される電子データ、カメラから出力される電子データがある。
【0020】
本実施の形態における文書データは、図形や文字などのオブジェクトを含み、各オブジェクトには色が設定されている。オブジェクトの色は、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、メタリック色の各濃度値で与えられる。
本実施の形態における濃度値は、例えば0~100%、又は、0~255で表現される。0%又は0が最小の濃度値を示し、100%又は255が最高の濃度値を示す。
【0021】
<制御装置の構成>
図2は、制御装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示す制御装置40は、プロセッサ41と、BIOS(=Basic Input Output System)等が記憶されたROM(=Read Only Memory)42と、プロセッサ41のワークエリアとして用いられるRAM(=Random Access Memory)43と、補助記憶装置44と、ユーザインタフェース45と、通信インタフェース46と、I/O47を有している。制御装置40の各部は、バスその他の信号線48を通じて接続されている。
【0022】
プロセッサ41は、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現するデバイスである。
本実施の形態におけるプロセッサ41は、プログラムの実行を通じ、各種の機能を実現する。プロセッサ41、ROM42、RAM43は、コンピュータとして機能する。
補助記憶装置44は、例えばハードディスク装置や半導体ストレージである。補助記憶装置44は、プログラムや印刷ジョブ等の記憶に使用される。プログラムは、OS(=Operating System)やアプリケーションプログラムの総称として使用する。
【0023】
この他、補助記憶装置44には、文書データが与える各色の濃度値を、白色の用紙に印刷した場合に観察される表示色に変換するDLUT(以下「白色DLUT」という。)44Aが記憶されている。
図3は、白色DLUT44Aのデータ構造の一例を説明する図である。
データ構造の左欄は、文書データで規定されている濃度値に対応し、右欄は、表示色の算出に使用する値が対応する。
【0024】
図3の場合、濃度値は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、メタリック色で与えられる。
一方、表示値の算出に使用する値は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各階調値と光沢度とで与えられる。階調値は、「信号値」と呼ばれることもある。階調値は、例えば0~255で表現される。0が最小値であり、255が最高値である。光沢度は、例えば0~100%で表現される。0%が最小値であり、100%が最高値である。
図3では、具体的な数値は省略している。
【0025】
図2の説明に戻る。
ユーザインタフェース45は、印刷装置20を使用するユーザの操作を受け付けるインタフェースである。ユーザインタフェース45は、例えば操作用のボタンやユーザの指先による操作を検知するタッチセンサ等の入力部と、液晶ディスプレイや有機EL(=Electro-Luminescent)ディスプレイ等の表示部とを有している。
【0026】
通信インタフェース46は、他の端末等と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース46の通信方式には有線又は無線が用いられる。通信インタフェース46の通信規格には、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等が用いられる。
I/O47は、プロセッサ41と印刷装置20(
図1参照)等との通信に用いるデバイスである。
【0027】
図4は、制御装置40の機能構成の一例を示す図である。
図4に示す機能部は、プロセッサ41(
図2参照)によるプログラムの実行を通じて実現される。
図4に示す機能部は、概略、入力受付部410と、画像処理部420と、出力部430とに分類される。
【0028】
入力受付部410は、印刷物の色味の予測に必要な情報を受け付ける機能部である。
図4の場合、入力受付部410は、文書データ411と、トナー色412と、用紙色413の入力を受け付ける。文書データ411は、例えば色味が異なる複数の色をマトリクス状に配置したカラーチャートである。トナー色412は、印刷装置20が色材として使用が可能なトナーの色を示す。トナー色412は、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、メタリック色で与えられる。メタリック色は、例えば銀色である。用紙色413は、給紙装置10(
図1参照)に収容されている用紙の色であり、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の濃度値で与えられる。
【0029】
画像処理部420は、印刷物の色味を予測するプレビュー画像を生成する機能部である。
図4の場合、画像処理部420は、プレビュー画像作成部421と白色DLUT44Aで構成される。
プレビュー画像作成部421は、非白色紙の表面にオブジェクトを印刷する場合に観察される色味を再現する色変換テーブル(以下「色紙DLUT」という。)の作成と、プレビュー画像の作成とを実行する機能部である。
【0030】
本実施の形態におけるプレビュー画像作成部421は、文書データ411と、トナー色412と、用紙色413と、白色DLUT44Aを用いて色紙DLUTを作成する。
なお、作成された色紙DLUTは、補助記憶装置44(
図2参照)に記憶される。
出力部430は、印刷物の色味を予測するプレビュー画像を表示部に表示する機能部である。
図4の場合、出力部430は、プレビュー部431で構成される。プレビュー部431は、白紙DLUTと色紙DLUTの参照により、文書データ411で指定されているオブジェクトの色を、非白色紙に印刷した場合の見え方を再現する色に変換して表示部に表示する。本実施の形態におけるプレビュー画像は、3次元でプレビュー表示される。
【0031】
<色紙DLUTの演算アルゴリズム>
以下では、
図5及び
図6を用い、色紙DLUTの演算アルゴリズムを説明する。
図5は、色が認識されるメカニズムと色紙DLUTの演算アルゴリズムを説明する図である。(A)は白色の用紙の見え方を説明する図であり、(B)は白色の用紙の表面に黄トナーで印刷された部分の色味の見え方を説明する図であり、(C)は青色の用紙の見え方を説明する図であり、(D)は青色の用紙の表面に黄トナーで印刷された部分の色味の見え方を説明する図であり、(E)は青色の用紙に基本色を用いて印刷する場合を想定した色紙DLUTの演算アルゴリズムである。
【0032】
図5(A)~(D)の各図では、自然光としてのR(赤)、G(緑)、B(青)の入射と反射を矢印により表している。
下向きの矢印は入射光を示し、上向きの矢印は反射光を示す。なお、矢印の長さは、光の強度を表している。
図5(A)では、白色の用紙に入射する光成分の強度と白色の用紙で反射する光成分の強度がほぼ同じである。このため、R(赤)、G(緑)、B(青)が混合されて白く見えている。
【0033】
ところで、B(青)の成分は、黄トナーに吸収される性質がある。このため、
図5(B)では、B(青)の反射光の成分の強度だけが少なくなっている。結果的に、R(赤)の成分とG(緑)の成分が混合されて黄色く見えている。
なお、
図5では、吸収される成分の量の違いを円の大きさで表している。
一方、
図5(C)では、B(青)の成分だけ、入射時と同等の光成分が青色の用紙で反射され、R(赤)とG(緑)の成分の一部は、青色の用紙で吸収されている。
図5(C)に示すように、青色の用紙からの反射光は、B(青)が支配的になる。結果的に、青色の用紙は、青く見えることになる。
【0034】
なお、R(赤)の成分は、G(緑)の成分よりも青色の用紙での吸収量が大きい。このため、
図5(C)におけるR(赤)の成分の吸収を表す円はG(緑)の成分の吸収を表す円よりも大きく、反射光の強度を表す矢印の長さはR(赤)の成分の方がG(緑)の成分よりも短い。
図5(D)は、青色の用紙に黄トナーを印刷すると緑っぽく見えるメカニズムを表している。
図5(D)に示すように、R(赤)とG(緑)の成分については、
図5(C)で説明した吸収が発生し、B(青)の成分については
図5(B)で説明した吸収が発生する。
この結果、黄トナーを透過して外に出力される反射光の成分は、G(緑)の成分が支配的となる。このため、緑っぽく見えることになる。
【0035】
図5(E)は、基本色を使用して非白色紙に印刷する場合におけるプレビュー画像の表示に使用する色紙DLUTの演算式を表している。
色紙DLUT[RGB] = 色紙[RGB] × 白紙DLUT[RGB] / 白紙[RGB]
色紙[RGB]は、非白色紙にメタリック色を印刷する場合における表示色の信号値であり、RGB値で与えられる。白紙[RGB]は、白紙にメタリック色を印刷する場合における表示色の信号値であり、RGB値で与えられる。
【0036】
印刷に白紙を使用する場合、分子と分母に同じ値が現れるので、白紙DLUT[RGB]だけの式になる。
なお、分母の値は、非白色紙での吸収の影響を白色の用紙に対する相対値として規格化するために用いられる。
なお、
図5(E)における[RGB]は、プレビュー画像の表示色であるR(赤)、G(緑)、B(青)に対応する。
【0037】
図6は、メタリック色が色味に与える影響と色紙DLUTの演算アルゴリズムを説明する図である。(A)は青色の用紙の表面に銀トナーと黄トナーが順番に印刷される部分の色味の見え方を説明する図であり、(B)は青色の用紙に基本色とメタリック色を用いて印刷する場合を想定した色紙DLUTの演算アルゴリズムである。
なお、銀トナーその他のメタリック色の濃度値が最大でも、
図6(A)に示すように、銀トナーを透過して用紙の表面で反射される成分は存在する。理由の一つは、銀トナー等のメタリック色のトナーは、用紙の表面を完全に覆わないためである。
【0038】
トナーが用紙の表面を覆う単位面積当たりの割合を「面積率」ともいう。面積率は、各トナーの濃度値に比例する。すなわち、濃度値が高いほど面積率も大きくなり、濃度値が小さいほど面積率も小さくなる。
図6(A)では、青色の用紙の表面に銀トナーの層を形成し、更にその表面に黄トナーの層を形成した構造を表している。
【0039】
前述したように、メタリック色は、基本色に比して反射係数が大きい色材である。
このため、
図6(A)には、用紙の表面で反射する成分を表す矢印と、銀トナーで反射する成分を表す矢印を記載している。
各色の左側に記載する矢印の対は、銀トナーを通過して青色の用紙の表面で反射される成分を表している。この成分は第2成分の一例である。
他方、各色の右側に記載する矢印の対は、銀トナーで反射される成分を表している。この成分は第1成分の一例である。
【0040】
このうち、青色の用紙の表面での各成分の反射は、
図5(C)と同じである。すなわち、R(赤)とG(緑)の成分の一部が青色の用紙で吸収される。このため、R(赤)とG(緑)の成分が用紙の表面で反射される成分の強度は入射される成分の強度よりも小さくなっている。
一方、銀トナーの表面における反射では、吸収の影響は無視される。このため、銀トナーで反射される成分の強度は、基本的に、入射時の各成分の強度と同じになる。
【0041】
なお、銀トナーの濃度が高いほど、銀トナーで反射される光の成分は多くなり、相対的に銀トナーを透過して下地である青色の用紙の表面で反射される光の成分が少なくなる。換言すると、銀トナーの濃度が低いほど、銀トナーで反射される光の成分は少なくなり、相対的に銀トナーを透過して青色の用紙の表面で反射される光の成分が多くなる。
【0042】
ところで、B(青)の成分も、青色の用紙の表面と銀トナーの表面との両方で反射される。
青色の用紙の表面で反射されたB(青)の成分は、銀トナーを透過するが、一部が黄トナーで吸収される。この吸収は、
図5(D)と同様である。このため、青色の用紙の表面で反射されたB(青)の成分の強度を表す矢印の長さは、入射時よりも短くなっている。
ところで、B(青)の成分の一部も銀トナーの表面で反射される。反射であるので、反射による強度の低下は考慮しない。しかし、銀トナーで反射されたB(青)の成分の一部も黄トナーで吸収される。
【0043】
結果的に、黄トナーを通過して外に出力されるB(青)の成分の強度は、R(赤)やG(緑)に比して少なくなる。
つまり、青色の用紙で反射される光の成分は
図5(D)に近く、銀トナーで反射される光の成分は
図5(B)に近くなる。
このため、青色の用紙の表面に銀トナーが形成され、その表面に黄トナーが形成された部位では、
図5(B)と
図5(D)の中間色、すなわち黄緑っぽく見えることになる。
この演算アルゴリズムを表したのが
図6(B)である。
【0044】
図6(B)は、基本色と特色を使用して非白色紙に印刷する場合におけるプレビュー画像の表示に使用する色紙DLUTの演算式を表している。
特色対応の色紙DLUT[RGB]
= 反射係数 × 特色Cin × 白紙DLUT[RGB]
+ (1 - 反射係数 × 特色Cin) × 色紙[RGB] × 色紙DLUT[RGB] / 白紙[RGB]
【0045】
ここでの第1項は、特色トナーで反射される光の成分に対応し、第2項は、用紙で反射される光の成分に対応する。
第1項のうち、「反射係数 × 特色Cin」の部分は、特色トナーで反射する成分の影響の大きさを表している。
ここでの特色は、銀や金等のメタリック色である。
反射係数は、印刷に使用される特色の反射係数である。反射係数は、0以上1以下の数値とする。
【0046】
Cinは、特色の濃度値である。濃度値も、0以上1以下の数値とする。0が最小濃度であり、1が最大濃度である。ここでの濃度値は、
図3における濃度値を正規化した値である。つまり、各濃度値を濃度値の最大値である100で除算した値である。
このため、濃度値が同じでも反射係数が大きいほど、「反射係数 × 特色Cin」の値は大きくなる。また、反射係数が同じでも濃度値が大きいほど、「反射係数 × 特色Cin」の値は大きくなる。すなわち、特色トナーで反射される成分の影響が大きくなる。
なお、第1項のうち、白紙DLUT[RGB]の部分は、白紙に印刷した場合の色の見え方を表している。
【0047】
第2項は、
図5(E)で説明した基本色を非白色紙に印刷する場合の色味を再現する色紙DLUTが全体の色味に与える影響を計算するための式である。
第2項のうち、「1 - 反射係数 × 特色Cin」の部分は、第1項との按分比を与える係数である。
つまり、「反射係数 × 特色Cin」の値が大きいほど、「1 - 反射係数 × 特色Cin」の値は小さくなることを表している。
【0048】
ここで、「反射係数 × 特色Cin」をαとすると、
特色対応の色紙DLUT[RGB]
=α× 白紙DLUT[RGB]+ (1-α) × 色紙DLUT[RGB]
と書き表すことが可能である。
αは0以上1以下の値である。
【0049】
すなわち、特色トナーの濃度が高いほど、白紙DLUTで読み出される第1成分の影響が合成される第2成分よりも大きくなり、特色トナーの濃度が低いほど、色紙DLUTで読み出される第2成分の影響が合成される第1成分よりも大きくなる。
換言すると、第1成分に合成される第2成分の割合は、特色トナーの濃度値の大きさに反比例される。
白紙DLUTで読み出される(R、G、B、gloss)は第1成分の一例であり、色紙DLUTで読み出される(R、G、B、gloss)は第2成分の一例である。
【0050】
<処理動作例>
図7は、制御装置40によるプレビュー画像の表示に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。図中に示す記号のSはステップを意味する。
なお、
図7に示す処理動作は、プロセッサ41(
図2参照)によるプログラムの実行を通じて制御される。
図7に示す処理動作は、プロセッサ41が、例えば印刷前に印刷物の色味を再現するプレビュー画像の表示を受け付けた場合に開始される。
【0051】
まず、プロセッサ41は、文書データ、トナー色、用紙色を受け付ける。トナー色は、印刷装置20(
図1参照)が実際に使用可能なトナーの色である。前述したように、トナー色には、基本色と特色がある。本実施の形態では、特色としてメタリック色を想定する。用紙色には、文書データの印刷に使用する用紙の色が与えられる。
次に、プロセッサ41は、白色DLUTを取得する(ステップ2)。白色DLUTは、特色トナーを使用しない印刷物のプレビュー画像の作成にも、特色トナーを使用する印刷物のプレビュー画像の作成にも必要になる。
【0052】
白色DLUTを取得すると、プロセッサ41は、色紙DLUTを作成する(ステップ3)。色紙DLUTは、
図5(E)により算出が可能である。
次に、プロセッサ41は、白紙DLUTと色紙DLUTを使用して文書データの色を変換する(ステップ4)。ここでの変換は、
図6(B)に示す計算式により実現される。
最後に、プロセッサ41は、ステップ1で受け付けた用紙色と、ステップ4で算出された色を用いて作成したプレビュー画像を表示する(ステップ5)。
本実施の形態では、プレビュー画像は、制御装置40の表示部に表示される。
【0053】
<プレビュー画像の表示例>
図8は、特色を使用しない場合のプレビュー画像の表示例を説明する図である。(A)は白紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(B)は青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示す。
図8(A)及び(B)は、同じカラーチャートを用紙に印刷する場合を想定している。
図8(A)の場合、用紙が白色なのでカラーパッチの色はほぼ入力値のまま再現される。このため、3行4列目のカラーパッチは黄色として表示される。
ところが、用紙が青色の場合には、
図5(D)で説明したように、黄トナーにおけるR(赤)の成分とB(青)の成分の吸収が大きい。この結果、
図8(B)では、3行4列目のカラーパッチを緑色と表記している。
【0054】
図9は、特色を使用する場合のプレビュー画像の表示例を説明する図である。(A)は銀トナーを下地に使用して白紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(B)は銀トナーを下地に使用して青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示し、(C)は金トナーを下地に使用して青紙に印刷する場合のプレビュー画像の例を示す。
図9の場合にも、
図8と同じカラーチャートを用紙に印刷する場合を想定している。
【0055】
図9(A)の場合、用紙が白色であるが、各カラーパッチの下地として銀トナーの層が形成されている。このため、3行4列目のカラーパッチは、薄黄色として観察されている。他のカラーパッチについても、
図8(A)に比して全体的に薄い色で表示されている。
図9(B)の場合、用紙が青色となる。この場合、銀トナーの濃度値の影響を受け、
図8(A)と
図8(B)の中間の色がプレビュー画像として表示される。
図9(B)の例では、3行4列目のカラーパッチは黄緑色として表示される。
図9(C)の場合も用紙は青色であるが、メタリック色として金トナーを使用している。このため、プレビュー画像の見え方は、銀トナーを使用する場合と違っている。
【0056】
<まとめ>
以上説明しように、本実施の形態では、印刷物の表面に入射した光の成分がメタリック色のトナー層で反射する特性に着目する。
また、同じ反射係数であっても、メタリック色のトナーの濃度値が高いほど、メタリック色での反射の成分が増えることに着目し、プレビュー画像では、用紙で反射される成分の影響よりもメタリック色で反射される成分の影響を大きくする。
この結果、非白色紙にメタリック色を下地に使用して文書データのイメージを印刷する場合における色味が実際に観察される色味に近いプレビュー画像を生成することが可能になる。
【0057】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0058】
(2)前述の実施の形態では、第1成分であるメタリック色の層で反射される光の成分と第2成分である用紙の表面で反射される光の成分との割合をメタリック色の反射係数とメタリック色の濃度値との乗算値であるαによって決定する場合について説明したが、メタリック色が用紙の表面を覆う面積率を使用して第1成分と第2成分の割合を決定してもよい。
【0059】
(3)前述の実施の形態では、制御装置40(
図1参照)が印刷装置20(
図1参照)の筐体の上部に配置されているが、ネットワークや信号線を通じて接続された独立した情報処理装置、例えばサーバとして実現してもよい。
【0060】
(4)前述の実施の形態では、メタリック色の色材の例としてトナーを例示しているが、色材はインクでもよい。
【0061】
(5)前述の実施の形態では、メタリック色として、銀色と金色を例示したが、メタリックレッド、メタリックブルー、メタリックグリーン、メタリックピンク等でもよい。
【0062】
(6)前述した実施の形態におけるプロセッサは、広義的な意味でのプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU等)の他、専用的なプロセッサ(例えばGPU(=Graphical Processing Unit)、ASIC(=Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(=Field Programmable Gate Array)、プログラム論理デバイス等)を含む。
また、前述した各実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサが単独で実行してもよいが、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して実行してもよい。また、プロセッサにおける各動作の実行の順番は、前述した各実施の形態に記載した順番のみに限定されるものでなく、個別に変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…印刷システム、10…給紙装置、20…印刷装置、30…後処理装置、40…制御装置、41…プロセッサ、44…補助記憶装置、44A…白色DLUT、410…入力受付部、411…文書データ、412…トナー色、413…用紙色、420…画像処理部、421…プレビュー画像作成部、430…出力部、431…プレビュー部