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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142930
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/46 20060101AFI20230928BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/28 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/323 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41M5/46 210
B41M5/41 200
B41M5/337 212
B41M5/42 221
B41M5/28 220
B41M5/323
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050067
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】乾 和生
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA24
2H026BB46
2H026DD23
2H026DD46
2H026DD53
2H026DD55
2H026EE05
2H026FF01
2H026FF11
2H026FF15
(57)【要約】
【課題】湿熱カブリが抑制され、さらに印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に、該支持体に近い側から、赤外線吸収層と、非感光性の有機銀塩、還元剤およびカブリ防止剤を含有する感熱記録層と、保護層とを少なくともこの順に有し、該赤外線吸収層と該保護層、あるいは該保護層がカブリ防止剤を含有し、該感熱記録層中のカブリ防止剤の含有量A(g/m)と、該赤外線吸収層と該保護層中のカブリ防止剤の含有量の合計B(g/m)との比A/Bの値が0.19~0.96である感熱記録材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体上に、該支持体に近い側から、赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層と、非感光性の有機銀塩、還元剤およびカブリ防止剤を含有する感熱記録層と、保護層とを少なくともこの順に有し、該赤外線吸収層と該保護層、あるいは該保護層がカブリ防止剤を含有し、該感熱記録層中のカブリ防止剤の含有量A(g/m)と、該赤外線吸収層と該保護層中のカブリ防止剤の含有量の合計B(g/m)との比A/Bの値が0.19~0.96である感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レーザーの照射により画像を形成することができる感熱記録材料に関し、特に版下材料の作製に好適な感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
版下材料の作製に用いられる高画質な画像記録方法として、ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法が長く一般的に用いられてきた。しかしながら、湿式処理を伴う画像形成方法では現像液や定着液等の廃液処理が必要で環境負荷が大きい事から、湿式処理を必要としない乾式の画像形成方法が種々検討されている。ハロゲン化銀感光材料を用いた湿式処理の画像形成方法と同等の、高いコントラストを得ることができる乾式の画像形成方法としては、支持体上に感熱記録層を有する感熱記録材料にサーマルヘッドあるいは赤外線レーザーを用いて画像形成する方法が挙げられる。その中でも、高密度記録、高画質記録ができる観点から、赤外線レーザーを用いた感熱記録方式が優位である。
【0003】
赤外線レーザーの照射により画像を形成する感熱記録材料としては、例えば特開平6-194781号公報(特許文献1)に高濃度の画像を記録できる、熱的に還元可能な銀源、銀イオン用還元剤、約500~1100nmの波長範囲のレーザーを吸収する染料、及び重合性結合剤を含有する画像形成系を有する感熱記録材料が開示されている。
【0004】
このような感熱記録材料では、保管中に高温、高湿度環境下にて非画像部が変色、および紫外線透過濃度が増加する、いわゆる湿熱カブリを抑制するためにカブリ防止剤を含有させることが知られている。例えば国際公開第2018/074430号パンフレット(特許文献2)には、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、バインダー、赤外線吸収染料、およびカブリ防止剤として有機ポリハロゲン化合物等を含有する画像形成層と、特定の赤外線吸収染料を含有するバック層を有する熱現像感光材料が開示されている。また、特開平10-29377号公報(特許文献3)には、有機銀塩、有機銀塩の現像剤、赤外線吸収色素、水溶性バインダー、および熱カブリ防止剤としてN-ハロゲノ化合物や酸安定剤等を含有する感熱層を有する赤外線レーザー光用感熱記録材料が開示されている。
【0005】
しかし、既存技術における感熱記録材料では、湿熱カブリを抑制するために感熱層中のカブリ防止剤を増加させた場合、出力した画像部の紫外光透過濃度に、版下材料として使用する場合に無視できない程度のムラ(以下、濃度ムラとする)が生じる場合があった。特開2008-31318号公報(特許文献4)には、飽和透過濃度を得るために必要なエネルギー量の幅、すなわちダイナミックレンジが広い感熱記録層を有することで濃度ムラが改善された感熱記録材料が開示されているが、カブリ防止剤を増加させた場合、飽和透過濃度そのものにムラが生じるため、特に湿熱条件下で保存した場合には出力した画像部の濃度ムラが顕著になる場合があり、更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-194781号公報
【特許文献2】国際公開第2018/074430号パンフレット
【特許文献3】特開平10-29377号公報
【特許文献4】特開2008-31318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、湿熱カブリが抑制され、さらに印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題は、以下の発明により解決される。
光透過性支持体上に、該支持体に近い側から、赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層と、非感光性の有機銀塩、還元剤およびカブリ防止剤を含有する感熱記録層と、保護層とを少なくともこの順に有し、該赤外線吸収層と該保護層、あるいは該保護層がカブリ防止剤を含有し、該感熱記録層中のカブリ防止剤の含有量A(g/m)と、該赤外線吸収層と該保護層中のカブリ防止剤の含有量の合計B(g/m)との比A/Bの値が0.19~0.96である感熱記録材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、湿熱カブリが抑制され、さらに印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0011】
本発明の感熱記録材料は、後述する光透過性支持体上に、該光透過性支持体に近い側から赤外線吸収色素を含有する赤外線吸収層、非感光性の有機銀塩、還元剤およびカブリ防止剤を含有する感熱記録層、および保護層を少なくともこの順に有する。
【0012】
本発明の感熱記録材料が有する光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、硝酸セルロース、ポリカーボネート等の樹脂フィルムや、ガラスに代表される無機材料等が挙げられる。なお、本発明において光透過性支持体とは、全光線透過率が60%以上である支持体を意味し、更に好ましい全光線透過率は70%以上である。また該光透過性支持体のヘーズ値は10%以下である事が好ましい。更に該光透過性支持体は易接着層、ハードコート層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよい。本発明における光透過性支持体の厚みは特に規定されるものではないが、ハンドリング性の観点から50~300μmであることが好ましい。
【0013】
本発明において感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、赤外線吸収色素を含有する。本発明における赤外線吸収色素は、赤外線を吸収する公知の化合物を意味する。中でも、600~1500nmの波長領域に吸収を有する色素であることが好ましく、650~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素がより好ましく、750~1100nmの波長領域に吸収極大を有する色素が更に好ましい。また、本発明における赤外線吸収色素は、版下原稿の作製に好適な高コントラストな画像が形成可能な感熱記録材料が得られることから、高圧水銀ランプやケミカルランプの紫外線領域における発光ピークが存在する350~450nmの波長領域における吸収が上述した600~1500nmの波長領域の吸収と比べてできる限り小さいことが好ましい。具体的には600~1500nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε1と、350~450nmの波長領域の吸収極大における吸光度ε2の比ε1/ε2の値が4.0以上であることが好ましい。このような色素としてはスクアリリウム、シアニン、メロシアニン、ビス(アミノアリール)ポリメチン等のポリメチン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には以下の一般式(1)~(3)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
【化1】
【0015】
一般式(1)~(3)中、R~R10は置換基であり、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、チオエーテル基、スルホニル基等が例示される。これらはそれぞれ同じ置換基でも異なる置換基であってもよく、また他の置換基と結合して環構造を形成していてもよい。またXは負の電荷を有する原子または原子団を表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン等のオキソ酸、テトラフルオロボレート、ヘキサフロオロホスフェート、アルキル及びアリールスルホナート等が挙げられる。具体的には以下の例示化合物(1)~(7)のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
ε1及びε2の測定方法としては、赤外線吸収色素の2-ブタノン溶液を調製し、紫外可視分光光度計UV-2600((株)島津製作所製)を用いて、光路長1cmの石英セルを使用して該溶液の吸収スペクトルを測定する方法を例示できる。
【0019】
赤外線吸収層における赤外線吸収色素の含有量は、赤外線吸収層の全固形分に対して0.05~50質量%が好ましく、0.1~20質量%が更に好ましい。
【0020】
本発明において赤外線吸収層は上述した赤外線吸収色素と共にバインダー成分を含有することが好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えばヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が例示される。これらのバインダー成分は水や有機溶媒に溶解して用いるか、疎水性ポリマー固体が微粒子の状態で分散しているラテックスやポリマー分子がミセルを形成し分散しているものを用いてもよい。本発明においては、上述したバインダー成分は乾燥後に光透過性の被膜を形成するものが好ましい。またこれらのバインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上併用してもよい。
【0021】
本発明において、赤外線吸収層と保護層、あるいは保護層はカブリ防止剤を含有する。本発明におけるカブリ防止剤とは、高温、高湿度環境下で感熱記録材料の非画像部が着色し、紫外光透過濃度が上昇する、いわゆる湿熱カブリを抑制させるものである。本発明において赤外線吸収層と保護層の少なくとも一方が含有するカブリ防止剤としては特開平9-281637号公報、特開2003-191646号公報、特開2004-338378号公報記載の化合物が挙げられるが、その中でもベンゾトリアゾール誘導体を含有することが湿熱カブリを効果的に抑制する観点から好ましい。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その中でも特に湿熱カブリを抑制する効果が高いことから、1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾールを含有することがさらに好ましい。また種々の目的のために、上述したカブリ防止剤は2種以上を含有してもよい。
【0022】
赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分、カブリ防止剤以外に、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0023】
本発明において感熱記録材料が有する赤外線吸収層は、上述した赤外線吸収色素、バインダー成分、及び赤外線吸収層が含有可能な添加剤、更に公知の溶剤を含有する赤外線吸収層塗布液を作製し、該赤外線吸収層塗布液を上述した光透過性支持体上に塗布、乾燥して形成することが好ましい。また、該赤外線吸収層の塗布量は乾燥質量で0.01~8.0g/mが好ましく、0.05~5.0g/mが更に好ましい。
【0024】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は、非感光性の有機銀塩を含有する。該有機銀塩は、後述する還元剤と共に加熱される事により還元されて銀画像を形成する。具体的には、熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(II)項、第29963(XVI)項に記載されているような没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の有機酸の銀塩;1-(3-カルボキシプロピル)チオ尿素、1-(3-カルボキシプロピル)-3,3-ジメチルチオ尿素等のカルボキシアルキルチオ尿素の銀塩;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類とサリチル酸、安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5,5-チオジサリチル酸等の芳香族カルボン酸との高分子反応生成物と銀との錯体;3-(2-カルボキシエチル)-4-ヒドロキシメチル-4-チアゾリン-2-チオン、3-カルボキシメチル-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオン等のチオン類の銀塩または錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選ばれる含窒素複素環の銀塩または錯体;サッカリン、5-クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。これらのうち炭素数が10以上の脂肪酸銀が好ましく、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀が更に好ましい。
【0025】
本発明において感熱記録層が含有する非感光性の有機銀塩の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~65質量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は還元剤を含有する。かかる還元剤としては、ハイドロキノン、カテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、クロロヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン化合物、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ステアリル、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル等のポリヒドロキシ安息香酸化合物、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール等のアミノフェノール化合物、1-フェニル-3-ピラゾリドン及びその誘導体、ヒドロキシルアミン類、特開平6-317870号公報記載のポリヒドロキシインダン類や、特開2001-328357号公報記載のジヒドロキシ安息香酸誘導体等が例示できる。上記した還元剤の中でも、ポリヒドロキシベンゼン化合物及びポリヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。
【0027】
感熱記録層における還元剤の含有量は、還元剤の種類や、有機銀塩の種類によって広範に変化しうるが、有機銀塩1モルあたり0.1~3.0モルであることが好ましく、0.5~2.0モルであることが更に好ましい。また種々の目的のために、上述した還元剤は2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明において感熱記録層は上述したカブリ防止剤を含有する。かかるカブリ防止剤としては、上述した赤外線吸収層、および保護層の少なくとも一方が含有するカブリ防止剤と同様のものが例示できる。種々の目的のために、上述したカブリ防止剤は2種以上を含有してもよい。
【0029】
感熱記録層が含有するカブリ防止剤の含有量としては、感熱記録層の全固形分に対して0.2~5.0質量%が好ましく、0.5~2.5質量%がより好ましく、1.0~1.5質量%がさらに好ましい。含有量が少ない場合は湿熱カブリの抑制効果が十分でなく、含有量が多い場合は印字した画像の紫外光透過濃度が部分的に有意に異なる、いわゆる濃度ムラが生じる。
【0030】
本発明において、感熱記録層中のカブリ防止剤の含有量A(g/m)と、赤外線吸収層と保護層中のカブリ防止剤の含有量の合計B(g/m)の比A/Bの値が0.19~0.96である必要がある。これによって湿熱カブリが抑制され、さらに印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料を得ることができる。またA/Bの値は0.4~0.8であることがより好ましく、0.5~0.7であることがさらに好ましい。赤外線吸収層、感熱記録層、および保護層が含有するカブリ防止剤はいずれも同一の化合物でも良く、それぞれ異なる化合物でも良い。
【0031】
赤外線吸収層がカブリ防止剤を含有する場合、その含有量としては、赤外線吸収層の全固形分に対して0.5~30.0質量%が好ましく、1.0~25.0質量%がより好ましく、3.0~20.0質量%がさらに好ましい。また保護層がカブリ防止剤を含有する場合、その含有量としては、保護層の全固形分に対して0.5~20.0質量%が好ましく、1.0~10.0質量%がより好ましく、2.0~7.0質量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層は、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィの分野において知られている、いわゆる色調剤を含有する事が好ましい。色調剤の例としては前出の熱現像感光材料に関するリサーチディスクロージャー第17029(V)項、第29963(XXII)項等で公知であり、具体的にはフタルイミドに代表されるイミド類、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールに代表されるメルカプト化合物、フタラジン、フタラゾン、4-メチルフタル酸、テトラクロロフタル酸及びそれらの無水物に代表されるフタル酸誘導体、1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンに代表されるベンズオキサジン誘導体等が挙げられる。また種々の目的のために、上述した色調剤は2種以上を含有してもよい。
【0033】
本発明において感熱記録層が含有する色調剤の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、2~20質量%がさらに好ましい。
【0034】
本発明において感熱記録材料が有する感熱記録層はバインダー成分を含有することが好ましい。かかるバインダー成分としては熱可塑性樹脂が好ましく、例えば上述した赤外線吸収層のバインダー成分と同様の熱可塑性樹脂を好ましく含有することができる。また、バインダー成分は必要に応じてお互いに相溶する樹脂を2種以上含有してもよい。
【0035】
感熱記録層が含有するバインダー成分の含有量としては、感熱記録層の全固形分に対して10~70質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%である。
【0036】
上述したバインダー成分は、塩化物イオンや臭化物イオン等の遊離のハロゲン化物イオンを含有しないことが好ましい。ハロゲン化物イオンは有機銀塩の銀イオンと反応し、感光性のハロゲン化銀を形成するため、本発明の感熱記録材料の耐光性を低下させる原因となる。具体的にはバインダー成分の含有量に対して500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。
【0037】
感熱記録層は、上述した成分以外に紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0038】
本発明において感熱記録層は、上述した赤外線吸収層と隣接していることが好ましく、これにより赤外線レーザーの照射による画像の形成が効率的になり、高精細な画像を得ることができる。
【0039】
感熱記録層を形成する方法としては、上述した有機銀塩、還元剤、色調剤、バインダー成分、及び感熱記録層が含有可能な添加剤、更に公知の溶剤を含有する感熱記録層塗布液を作製し、該感熱記録層塗布液を上述した赤外線吸収層上に塗布、乾燥して形成する事が好ましい。また、該感熱記録層塗布液の塗布量は乾燥質量で2.0~30.0g/mが好ましく、5.0~20.0g/mがより好ましく、8.0~20.0g/mが更に好ましい。
【0040】
本発明において感熱記録材料は、ハンドリング中の落下や擦過、汚れ等から感熱記録層を保護する目的で、感熱記録層上に保護層を有する。該保護層の構成や形成方法は特に限定されないが、多価イソシアネート化合物を含有する保護層塗布液を塗布して形成することが好ましい。これにより感熱記録材料の表面が汚れた際に、表面の汚れをアルコールで拭き取りを行っても感熱記録材料がアルコールによって侵されない、つまり耐アルコール性に優れる保護層を得ることができる。上記した多価イソシアネート化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、例えばジメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多価イソシアネート化合物や、トリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチルベンゾール-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート等の芳香族多価イソシアネート化合物や、これらのうち単独または2種類以上の多価イソシアネート化合物が2量体または3量体を形成したアダクト体、またはこれらの多価イソシアネート化合物と2価または3価のポリオールとが反応したアダクト体等が挙げられる。またこれらのうち、脂肪族多価イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネート及びそのアダクト体が好ましく、芳香族多価イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネート及びそのアダクト体が好ましい。なお、これらの多価イソシアネート化合物は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのような多価イソシアネート化合物はイソシアネート系架橋剤として一般的に販売されている製品をそのまま用いることができ、具体的な製品名としては三井化学(株)製のタケネート(登録商標)シリーズ、DIC(株)製のバーノック(登録商標)シリーズ、東ソー(株)製のコロネート(登録商標)シリーズ等を挙げることができる。
【0041】
本発明における保護層塗布液が含有することができる多価イソシアネート化合物の含有量は、保護層塗布液の全固形分に対して50~95質量%であることが感熱記録材料の表面の耐アルコール性が優れることから好ましく、55~90質量%であることがより好ましく、59~80質量%であることが更に好ましい。含有量が50質量%未満の場合は感熱記録材料の表面の耐アルコール性が不十分になる場合があり、含有量が95質量%より多い場合は指触乾燥時間が長くなり、生産性が低下する場合がある。
【0042】
本発明における保護層は、保護層塗布液の指触乾燥時間を短縮して生産性を向上させる目的で、上記した多価イソシアネート化合物とともにバインダー成分として高分子化合物を含有することが好ましい。該高分子化合物としては、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有していることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等のポリビニルアルコール誘導体や、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体や、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等に代表される多価アルコールと種々モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は、種々の目的によって単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。またこれらのうち、アクリルポリオールを用いることが更に好ましく、市販されているアクリルポリオールとしてはアクリディック(登録商標)シリーズ(DIC(株)製)や、#6000シリーズ(大成ファインケミカル(株)製)が例示される。従って、本発明における保護層はアクリルポリオールと多価イソシアネートが反応したアクリルウレタン樹脂を好ましく含有することができる。
【0043】
上述したように、本発明において、赤外線吸収層と保護層、あるいは保護層はカブリ防止剤を含有する。種々の目的のために、上述したカブリ防止剤は2種以上を含有してもよい。
【0044】
本発明において保護層はバキューム性や耐傷性を高める目的で、艶消し剤を含有していてもよい。該保護層を形成するにあたり、艶消し剤は上述した保護層塗布液中に分散させて用いることが好ましい。艶消し剤の分散には、ホモディスパーのような高速攪拌機が適している。
【0045】
上記した艶消し剤は有機系または無機系いずれの艶消し剤でも使用することができる。有機系艶消し剤としては、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等が例示され、無機系艶消し剤としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ等が例示される。市販品としては例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社から発売されているシリコーン微粒子であるトスパール(登録商標)シリーズや、日本触媒(株)から発売されているシリカ球状微粒子であるシーホスター(登録商標)KEシリーズや、AGCエスアイテック(株)から発売されているシリカ微粒子であるサンスフェア(登録商標)シリーズ等を例示することができる。これらは単一の微粒子であるが、艶消し剤の形態としては単一の微粒子及び微粒子が集合した微粒子集合体粒子のいずれを用いてもよい。
【0046】
艶消し剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは2.0~20μmであり、より好ましくは2.0~16μmである。平均粒子径としてはレーザー回折・散乱式粒度分布測定にて求められる体積基準の算出値を用いることができる。具体的には、マイクロトラック・ベル(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定器MT3000IIを用いて測定する方法が例示できる。
【0047】
保護層における艶消し剤の含有量は、保護層の全固形分に対して0.5~40質量%である事が好ましく、1~30質量%である事がより好ましい。
【0048】
本発明において保護層は、上述した多価イソシアネート化合物、高分子化合物、カブリ防止剤、艶消し剤以外に、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0049】
本発明における保護層塗布液は、上述した多価イソシアネート化合物、高分子化合物、艶消し剤、及び保護層が含有可能な添加剤を芳香族系及び/またはグリコール系の揮発性成分中に溶解、または分散させて作製することが好ましい。芳香族系の揮発性成分とは芳香環を有する揮発性成分であり、具体的にはベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、スチレン等が挙げられる。グリコール系の揮発性成分とは2つ以上の炭素を有する脂肪族炭化水素の2つの炭素原子にそれぞれ1つずつ酸素原子が単結合で結合した構造を有する揮発性成分であり、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらのうち、芳香族系の揮発性成分を使用することが好ましく、その中でも良好な耐アルコール性が得られるという点からトルエン、о-キシレンを使用することがより好ましい。これらの揮発性成分は種々の目的によって単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明において感熱記録材料が有する保護層は、上述した保護層塗布液を感熱記録層上に塗布、乾燥して形成する。本発明における保護層の塗布量は、用いる高分子化合物の種類や求められる感熱感度により広範に変化しうるが、乾燥質量で0.5~10g/mが好ましく、1.0~8.0g/mがより好ましい。
【0051】
本発明において、上述した赤外線吸収層塗布液、感熱記録層塗布液、及び保護層塗布液の塗布方法については特に制限はなく、E.D.Cohen,E.B.Gutoff,“Modern Coating and Drying Technology”,WILEY-VCH,Inc.New York,1992に記載されているような各種の塗布方法から選択することができる。更にスリット型ダイコーターを用いたスライド塗布方式や、同種、あるいは異種のコーター装置を組み合わせて塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式によって複数の層を同時に塗布する事は、生産性を向上させる意味でも特に好ましい。
【0052】
本発明において感熱記録材料は更に必要に応じて、上述した赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層に加えて、光透過性支持体と赤外線吸収層との間に易接着層や断熱層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層のそれぞれの層の間に中間層等を設けたり、保護層上に易剥離層等を設けたり、赤外線吸収層、感熱記録層、及び保護層を有する光透過性支持体の面の反対の面に帯電防止層等を設けたりすることもできるが、上述したように高精細な画像を得る観点から赤外線吸収層と感熱記録層は隣接していることが好ましい。また版下材料として用いる場合に画像記録層を通過した光が屈折や拡散することを抑制するために、感熱記録層と保護層は隣接していることが好ましく、また光透過性支持体から見て感熱記録層側の面の最外層は保護層であることが好ましい。
【0053】
上述した感熱記録材料を用い、該感熱記録材料の保護層側から画像様に赤外線レーザーを照射することにより画像を得ることができる。該赤外線レーザーの光源としては、半導体レーザー、He-Neレーザー、Arレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー等が挙げられる。本発明における感熱記録材料は、照射する赤外線レーザーのエネルギー及び露光時間を変える事により、画像部の濃度を変化させることができる。赤外線レーザーを照射する方法としては、フレキソ印刷版やオフセット印刷版の製版等に用いられるサーマルCTPセッターを使用することができる。サーマルCTPセッターとしては、AURAシリーズ(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製)、Trendsetter(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、Achieve(登録商標)シリーズ(Eastman Kodak Co.製)、等が例示される。
【0054】
本発明の感熱記録材料は上述のようにして画像を得た後、フレキソ印刷版やスクリーン印刷版等の印刷版を製版する際に用いられる遮光用のマスク材料、いわゆる版下材料として好適に用いることができるが、他の用途、例えばフォトリソグラフィーにおけるフォトマスクとして用いることもできる。なお、この記述により本発明が限定されるものではない。
【実施例0055】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、この記述により本発明が限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
【0057】
<赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布>
2-ブタノン81.0g、メタノール24.0gに、ポリビニルブチラール(Butvar(登録商標)B-79、イーストマンケミカルジャパン(株)製)9.0g、赤外線吸収色素として例示化合物(5)(IRT、昭和電工(株)製、ε1/ε2=6.2)0.45gを加えて赤外線吸収層塗布液とした。厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムベース(全光線透過率92%、ヘーズ値4%)上に、この赤外線吸収層塗布液を乾燥質量が1.0g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、60℃にて1分間乾燥させ赤外線吸収層を形成した。
【0058】
<ベヘン酸銀分散液の調製>
ベヘン酸銀結晶24.0g、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)19.5gを175gの2-ブタノンに加え、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル装置(DYNO-MILL KD20B型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いてベヘン酸銀分散液(平均粒子径0.8μm)を得た。
【0059】
<感熱記録層塗布液の調製及び塗布>
2-ブタノン28.0g、メタノール17.0gに、ポリビニルブチラール(ButvarB-79)4.2g、上述したベヘン酸銀分散液91.2g、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル5.0g、テトラクロロフタル酸無水物0.1g、フタラゾン1.9gと、カブリ防止剤として1,2,3-ベンゾトリアゾール0.33gを加えて感熱記録層塗布液とした。上述のようにして既に得られた赤外線吸収層上に、この感熱記録層塗布液を乾燥質量が13.1g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させ感熱記録層を形成した。
【0060】
<保護層塗布液の調製及び塗布>
トルエン25.7gに、アクリディックWFU-289(DIC(株)製;アクリルポリオール樹脂、固形分50質量%)11.4gを溶解させたのち、サンスフェアH-51(AGCエスアイテック(株)製;平均粒子径5.0μm)0.30gと、カブリ防止剤として1,2,3-ベンゾトリアゾール0.87gを加え、攪拌して全体を均一にした後、攪拌しながらコロネートHL(東ソー(株)製;ポリイソシアネート、固形分75質量%)14gを加えて保護層塗布液を得た。この保護層塗布液を上述した感熱記録層上に乾燥質量が4.2g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗布し、80℃にて3分間乾燥させたのち40℃にて5日間加温して保護層を形成した。このようにして実施例1の感熱記録材料を得た。なお、実施例1のA/Bの値は0.69である。
【0061】
<実施例2>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.25gとした以外は実施例1と同様にして実施例2の感熱記録材料を得た。なお、実施例2のA/Bの値は0.53である。
【0062】
<実施例3>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.19gとした以外は実施例1と同様にして実施例3の感熱記録材料を得た。なお、実施例3のA/Bの値は0.40である。
【0063】
<実施例4>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール1.02gを加え、感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.19gとし、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を1.16gとした以外は実施例1と同様にして実施例4の感熱記録材料を得た。なお、実施例4のA/Bの値は0.23である。
【0064】
<実施例5>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.42gとした以外は実施例1と同様にして実施例5の感熱記録材料を得た。なお、実施例5のA/Bの値は0.88である。
【0065】
<実施例6>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を1.04gとした以外は実施例1と同様にして実施例6の感熱記録材料を得た。なお、実施例6のA/Bの値は0.58である。
【0066】
<実施例7>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を1.16gとした以外は実施例1と同様にして実施例7の感熱記録材料を得た。なお、実施例7のA/Bの値は0.53である。
【0067】
<実施例8>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール0.68gを加え、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.57gとした以外は実施例1と同様にして実施例8の感熱記録材料を得た。なお、実施例8のA/Bの値は0.70である。
【0068】
<実施例9>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール1.02gを加え、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.42gとした以外は実施例1と同様にして実施例9の感熱記録材料を得た。なお、実施例9のA/Bの値は0.72である。
【0069】
<実施例10>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.33gを5-メチルベンゾトリアゾール0.33gに変更し、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.87gを5-メチルベンゾトリアゾール0.87gに変更した以外は実施例1と同様にして実施例10の感熱記録材料を得た。なお、実施例10のA/Bの値は0.69である。
【0070】
<実施例11>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.33gを5-カルボキシベンゾトリアゾール0.33gに変更し、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.87gを5-カルボキシベンゾトリアゾール0.87gに変更した以外は実施例1と同様にして実施例11の感熱記録材料を得た。なお、実施例11のA/Bの値は0.69である。
【0071】
<比較例1>
実施例1の感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.50gとした以外は実施例1と同様にして比較例1の感熱記録材料を得た。なお、比較例1のA/Bの値は1.04である。
【0072】
<比較例2>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール1.02gを加え、感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.50gとし、さらに保護層塗布液の調整及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.42gとした以外は実施例1と同様にして比較例2の感熱記録材料を得た。なお、比較例2のA/Bの値は1.09である。
【0073】
<比較例3>
実施例1の保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.42とした以外は実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材料を得た。なお、比較例3のA/Bの値は1.40である。
【0074】
<比較例4>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール1.02gを加え、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールを添加せずに保護層塗布液を得た以外は実施例1と同様にして比較例3の感熱記録材料を得た。なお、比較例4のA/Bの値は1.49である。
【0075】
<比較例5>
実施例1の赤外線吸収層塗布液の調製及び塗布において、赤外線吸収層塗布液に1,2,3-ベンゾトリアゾール1.02gを加え、感熱記録層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を0.13gとし、さらに保護層塗布液の調製及び塗布において、1,2,3-ベンゾトリアゾールの添加量を1.16gとした以外は実施例1と同様にして比較例5の感熱記録材料を得た。なお、比較例5のA/Bの値は0.15である。
【0076】
このようにして得られた実施例1~11及び比較例1~5の感熱記録材料を、サーマルCTPセッター(Guangzhou Amsky Technology Co Ltd製、AURA600E)を用いて赤外線レーザーで露光し、ベタ画像(50mm×200mm)を得た。サーマルCTPセッターのドラム回転数は300rpm、レーザー出力は250mWとした。
【0077】
<濃度ムラ評価>
上述のようにしてベタ画像を得た後、実施例1~11及び比較例1~5の感熱記録材料のベタ画像の長辺方向の両端とその間を等間隔に3か所、計5か所の紫外光透過濃度を、X-Rite361T(ビデオジェット・エックスライト(株)製)の紫外光モードで測定した。5か所の紫外光透過濃度の振れ幅が0.00~0.15であったものを○、0.16~0.30であったものを△、0.31以上であったものを×として表1に示した。このうち、○、△であったものを印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料であるとした。
【0078】
<湿熱カブリ評価>
上述のようにして濃度ムラ評価を行った後、実施例1~11及び比較例1~5の感熱記録材料を、50℃80%RHに設定した恒温恒湿機内にて3日間保管し、保管前後で非画像部の紫外光透過濃度をX-Rite361T(ビデオジェット・エックスライト(株)製)の紫外光モードで測定した。紫外光透過濃度の変化量が0.00~0.03であったものを○、0.04~0.07であったものを△、0.08以上であったものを×とし、○および△であるものを湿熱カブリが抑制された感熱記録材料であるとした。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、本発明によって湿熱カブリが抑制され、さらに印字画像の濃度ムラが抑制された感熱記録材料を得ることができる。