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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142931
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230928BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050068
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 魁
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH03
4F100AH03B
4F100AK42
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AL06
4F100AL06B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46
4F100EJ08
4F100JL08
4F100JL08B
4F100JL14
4F100JL14B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】離型性に優れ、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムを提供する。
【解決手段】メラミン化合物(A)、分子量1500以下のポリオール(B)、酸触媒(C)、およびカルボキシ基含有変性シリコーン樹脂(D)の硬化物を含有する離型層を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に有する離型フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン化合物(A)、分子量1500以下のポリオール(B)、酸触媒(C)、およびカルボキシ基含有変性シリコーン樹脂(D)の硬化物を含有する離型層を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に有する離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性に優れ、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、樹脂フィルム上に離型層を有する。離型フィルムは、例えば特開2019-194337号公報、特開2014-54811号公報等に開示されるように、保護フィルムが有する粘着剤層の表面を使用時まで保護するセパレーターとして使用されたり、特開2002-192510号公報に開示されるように、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックグリーンシートを作製するキャリアフィルムとして使用されたり、特開2005-342981号公報、特開2020-131440号公報等に開示されるように、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を離型フィルム上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を巻き取る、いわゆるキャスト製膜用のキャリアフィルムに使用されたり、さらには特開2014-65207号公報、特開2018-528449号公報、特開2019-112505号公報等に開示されるように、光硬化樹脂を離型フィルム上に塗布後、光照射で硬化して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を離型フィルムから剥離して使用する、光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルムに使用されたりしている。
【0003】
離型フィルムが有する離型層としては、優れた離型性を示すことから、シリコーン化合物を含有する離型層が一般的に利用される。しかし、上述した光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルム用途では、該離型層上において光硬化樹脂の硬化反応を繰り返すことにより離型フィルムの離型性が低下する場合があり、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムが求められていた。
【0004】
離型性に優れた離型層を有する離型フィルムとして、例えば特開2020-23690号公報(特許文献1)には、メチル化メラミン樹脂、水酸基含有有機変性シリコーン、酸触媒、および導電性高分子化合物を含有する水系帯電防止離型コーティング剤組成物により形成された離型層を有する離型フィルムが開示され、特開2017-78161号公報(特許文献2)には、メチル化メラミン樹脂、分子量100~3000のポリオール、酸触媒、および水酸基含有変性シリコーン樹脂を含有する熱硬化性離型コーティング剤により形成された離型層を有する離型フィルムが開示され、特開2018-104661号公報(特許文献3)にはメチル化メラミン樹脂、水酸基含有変性シリコーン樹脂および/またはシリコーン変性水酸基含有アクリル樹脂、および酸触媒を含有する熱硬化離型コーティング剤組成物により形成された離型層を有する離型フィルムが開示されている。しかし、上記した光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性については、さらなる改善が求められていた。
【0005】
また、特開2012-171230号公報(特許文献4)には、製造が容易で離型性に優れ、高温プレス時の被着体への離型層の移行が抑制された離型シートとして、基材上に酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、およびメラミン化合物を含有する離型用シートが開示され、特開2015-104917号公報(特許文献5)には、剥離力を保持しながら移行性が低い剥離フィルムとして、基材と、該基材表面にシリコーン変性ポリエステル樹脂および含窒素芳香族骨格を有する有機化合物を含有する剥離剤組成物を硬化させた剥離層を有する剥離フィルムが開示され、該シリコーン変性ポリエステル樹脂のシリコーン変性に用いられる材料の一例として、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサンが記載されている。しかしながら、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性については、さらなる改善が求められていた。
【0006】
他方、特開2021-91223号公報(特許文献6)には、高い平滑性を有し、剥離性に優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムとして、ポリエステルフィルム上にバインダー成分とカルボキシ基を有するシリコーン系離型剤を含有する組成物を硬化させた離型層を有するセラミックグリーンシート製造用離型フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-23690号公報
【特許文献2】特開2017-78161号公報
【特許文献3】特開2018-104661号公報
【特許文献4】特開2012-171230号公報
【特許文献5】特開2015-104917号公報
【特許文献6】特開2021-91223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、離型性に優れ、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
メラミン化合物(A)、分子量1500以下のポリオール(B)、酸触媒(C)、およびカルボキシ基含有変性シリコーン樹脂(D)の硬化物を含有する離型層を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に有する離型フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、離型性に優れ、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の離型フィルムは、メラミン化合物(A)(以降、(A)成分とも記載する)、分子量1500以下のポリオール(B)(以降、(B)成分とも記載する)、酸触媒(C)(以降、(C)成分とも記載する)、およびカルボキシ基含有変性シリコーン樹脂(D)(以降、(D)成分とも記載する)の硬化物を含有する離型層を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に有する。
【0013】
メラミン化合物(A)としては、メラミンおよびその誘導体として公知の化合物を用いることができ、該化合物はメラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られ、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基および/またはアルコキシメチル基をそれぞれ1つ以上有しているメラミン化合物が好ましい。中でも、下記一般式1で表される化合物が硬化性に優れるため好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
一般式1中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、メチロール基(-CHOH)、メトキシメチル基(-CHOCH)、エトキシメチル基(-CHOCHCH)、n-ブトキシメチル基(-CHOCHCHCHCH)およびイソブトキシメチル基(-CHOCHCH(CH)を表す。またR~Rの少なくとも1つはメトキシメチル基であることが望ましい。
【0016】
(A)成分の中でも、R~Rが水素原子およびメトキシメチル基であるイミノ基型メチル化メラミン化合物、R~Rがメチロール基およびメトキシメチル基であるメチロール基型メチル化メラミン化合物、R~Rが全てメトキシメチル基である完全アルキル化型メチル化メラミン化合物が、離型性および光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから好ましく、R~Rが全てメトキシメチル基である完全アルキル化型メチル化メラミン化合物が特に好ましい。
【0017】
(A)成分は市販されており、例えば完全アルキル化型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル(登録商標)300、サイメル303LF、サイメル350、(株)三和ケミカル製ニカラック(登録商標)MW-22、ニカラックMW-30、ニカラックMW-30M、ニカラックMW-30MLF等、イミノ基型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル325N、サイメル327、サイメル703、(株)三和ケミカル製ニカラックMZ-351、ニカラックMX-730等、メチロール基型メチル化メラミン化合物としては、オルネクスジャパン(株)製サイメル370N、(株)三和ケミカル製ニカラックMS-11、ニカラックMS-12LF等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0018】
上記(A)成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
分子量1500以下のポリオール(B)は、分子中に水酸基を2個以上有する分子量1500以下の化合物を意味する。分子量1500以下のポリオールに代わって分子量1500超のポリオールを用いた場合、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が低下する。
【0020】
(B)成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール等の脂環族ジオール、4,4′-メチレンジフェノール、ビスフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、1,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)、ジトリメチロールプロパン(DTMP)、トリメチロールエタン(TME)、1,2,6-ヘキサントリオール、1,3,5-アダマンタントリオール等の3価以上のポリオールが例示できる。
【0021】
さらに、(B)成分として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等の分子量1500以下のオリゴマーポリオールを用いることもできる。なお、便宜上、オリゴマーポリオールの分子量としては数平均分子量を用いる。数平均分子量の測定方法としてはGPC法を例示できる。
【0022】
分子量1500以下のオリゴマーポリオールは市販されており、例えばポリエーテルポリオールとしては、AGC(株)製エクセノール(登録商標)420、430、1020、1030等、ポリエステルポリオールとしては、(株)クラレ製P-510、P-1010、F-510、F-1010、P-520、P-530等、東ソー(株)製ニッポラン(登録商標)4002、4009等、ポリカーボネートポリオールとしては、(株)クラレ製C-590、C-1090等、ポリカプロラクトンポリオールとしては、(株)ダイセル製プラクセル(登録商標)205、205U、208、303、309、312、410、CD210等、ポリオレフィンポリオールとしては、NISSO-PB(登録商標)GI-1000(日本曹達(株)製)等が例示でき、いずれも好ましく用いることができる。
【0023】
(B)成分の中でも、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性がより優れることから、分子量750未満のポリオールを用いることが好ましく、分子量375未満のポリオールを用いることが特に好ましい。
【0024】
上記(B)成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
離型層が含有する硬化物における(B)成分の含有量は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから、(A)成分100質量部に対して1~100質量部が好ましく、より好ましくは5~70質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。
【0026】
酸触媒(C)としては、公知の無機酸や有機酸、およびそれらの塩や水和物を用いることができる。具体的には、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が例示でき、有機酸としてはギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等が例示できるが、これらに限定されない。(A)成分として完全アルキル化型メチル化メラミン化合物を用いる場合、(C)成分として脂肪族スルホン酸あるいは芳香族スルホン酸を用いることが好ましい。これにより低温での硬化性に優れた離型層を得ることができる。さらに、(A)成分や(B)成分との相溶性に優れることから、(C)成分としては芳香族スルホン酸が特に好ましい。
【0027】
上記(C)成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
離型層が含有する硬化物における(C)成分の含有量は特に限定されないが、低温での硬化性に優れることから、(A)成分100質量部に対して0.5~25質量部が好ましく、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0029】
カルボキシ基含有変性シリコーン樹脂(D)とは、主鎖または側鎖にポリオルガノシロキサン骨格を有し、かつカルボキシ基を含有する樹脂を意味する。具体的には、カルボキシ基含有変性シリコーンオイル、カルボキシ基含有シリコーン変性アクリル樹脂等が例示できるが、これらに限定されない。
【0030】
(D)成分は市販されており、例えばカルボキシ基含有変性シリコーンオイルとしては信越化学工業(株)製X-22-3701E、X-22-162C、X-22-3710等、ダウ・東レ(株)製DOWSIL(登録商標) BY 16-880 Fluid等が挙げられ、カルボキシ基含有シリコーン変性アクリル樹脂としては東亞合成(株)製サイマック(登録商標)US-450、US-350、US-352、US-380等、日油(株)製モディパー(登録商標)FS770等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0031】
本発明において上記(D)成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
離型層が含有する硬化物における(D)成分の含有量は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を形成可能であることから、(A)成分100質量部に対して1~50質量部が好ましく、より好ましくは1.5~45質量部である。
【0033】
本発明の離型フィルムが有する離型層は、上記した成分以外に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、軟化剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等)、分子量1500超のポリオール、カルボキシ基以外の官能基を含有する変性シリコーン樹脂等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0034】
本発明の離型フィルムが有する樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、セロファン、ナイロン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂等の各種公知の樹脂のフィルムが例示できる。樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、2~300μmであることが、本発明で得られる離型フィルムの柔軟性および取り扱い性が優れることから好ましく、より好ましくは3~200μmであり、特に好ましくは4~100μmである。樹脂フィルムはその表面の少なくとも一方の面に、易接着層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層等の公知の層を有していてもよく、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等の公知の表面改質処理が施されていてもよい。
【0035】
樹脂フィルム上に有する離型層の厚みは特に限定されないが、0.01~10μmであることが離型層の光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性が優れたものになることから好ましく、0.02~8μmがより好ましく、0.03~7μmが特に好ましい。
【0036】
本発明の離型フィルムの製造方法は特に限定されないが、上記した(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、ならびに離型層が含有していてもよい添加剤、以上を含有する塗液を樹脂フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、その後、加熱により塗液を硬化させ離型層とする方法が、生産性に優れることから特に好ましい。
【0037】
塗液は上記した(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分、ならびに離型層が含有していてもよい添加剤以外に、溶剤を含有していてもよい。かかる溶剤としては特に限定されず、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、1-ブタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、水等の公知の溶媒から、塗液が含有する各成分を溶解可能な溶剤を用いることができる。
【0038】
上記溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
塗液中の溶剤の含有量は特に限定されず、後述する塗布方法に適した粘度、固形分濃度になるように含有量を調節することができる。
【0040】
塗液は樹脂フィルムの一方の面のみに塗布してもよく、樹脂フィルムの両面に塗布してもよい。塗布方法としてはディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング等が例示できるがこれらに限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。塗液の塗布量は特に限定されず、後述するように、加熱後に樹脂フィルム上に形成される離型層が目的の厚みになるように調節すればよい。
【0041】
樹脂フィルム上に塗液を塗布した後は加熱を行うことが好ましい。加熱により(A)成分、(B)成分が硬化し、離型層を形成する。塗液が溶剤を含有する場合、加熱により溶剤が乾燥した後、(A)成分、(B)成分が硬化し、離型層を形成する。加熱方法は特に限定されず、ヒーター、熱媒による加熱、赤外線等のエネルギー線の照射、熱風、電磁誘導加熱等、公知の方法を用いることができる。加熱温度は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型フィルムが得られることから塗布面を80℃以上に加熱することが好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、(A)成分、(B)成分の硬化は150℃以下で十分に進行するため、150℃以下が好ましい。加熱時間は特に限定されないが、光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性に優れた離型層を有する離型フィルムが得られることから0.25分間以上が好ましく、0.5分間以上がより好ましく、1分間以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、生産性の観点から10分間以下が好ましい。
【0042】
本発明の離型フィルムは、離型層を有する面と反対側の面に機能層を有していてもよい。かかる機能層としては、易接着層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、導電層(導電性金属酸化物、導電性高分子、網目状金属細線パターン等の公知の導電性材料を含有する層)、粘着剤層(アクリル粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン粘着剤等の公知の粘着剤を含有する層)、偏光層、遮光層、加飾層が例示できるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の離型フィルムの用途は限定されず、光硬化樹脂成膜用のキャリアフィルムの用途の他、キャスト製膜用のキャリアフィルム、セラミックグリーンシート成型用キャリアフィルム、保護フィルムやOCA等の粘着フィルムが有する粘着剤層の表面を使用時まで保護するセパレーター、ドライフィルムレジストの感光性樹脂層のキャリアフィルムやカバーフィルム、フォトマスクへのフォトレジスト付着を防ぐためのフォトマスク用保護フィルム、プリプレグ加工用離型フィルム等の用途に好適に用いることができる。
【実施例0044】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<塗液1~16の作製>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を表1に示した質量部(固形分として)用意し、それらを2-ブタノン350質量部および2-プロパノール350質量部の1:1混合溶剤に溶解し、塗液1~16を得た。(B)成分の分子量も表1に記載した。
【0046】
【表1】
【0047】
<離型フィルム1~16の作製>
得られた塗液1~16を、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にグラビアコーティングによりそれぞれ均一に塗布し、熱風乾燥機を用いて130℃で2分間加熱して、塗布面を110℃に昇温し、塗液の溶剤を乾燥させ、さらに(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を硬化させた。このようにして厚み1.0μmの離型層を有する離型フィルム1~16を得た。なお、離型フィルム9については離型層が硬化せず、液体状のままであった。
【0048】
<離型性評価>
23℃50%RHの環境にて、離型フィルム1~16の離型層を有する面にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製、品番No.31B、25mm幅、基材厚み50μm)を2kgのハンドローラーを1往復させて貼合した。ポリエステル粘着テープを貼合した離型フィルムを23℃50%RHの環境で30分間保管後、剥離試験機(イマダ(株)製)を用いて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度でポリエステル粘着テープ側を剥離し、剥離強度(N/25mm)を測定した。剥離強度が0.20N/25mm未満の場合を離型性が4、0.20N/25mm以上0.30N/25mm未満の場合を離型性が3、0.30N/25mm以上0.40N/25mm未満の場合を離型性が2、0.40N/25mm以上の場合を離型性が1として評価した。結果を表2に示す。なお離型フィルム9は剥離強度測定の過程で離型層がポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がれたため、剥離強度が測定できず、離型性評価は実施不能であった。
【0049】
<光硬化樹脂の硬化反応に対する耐久性評価>
離型フィルム1~16の離型層を有する面に、下記組成の紫外線硬化樹脂塗液を10μmの厚さに塗布し、さらに該塗布面に厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼合した。その後、高圧水銀灯を用いて照度200mW/cmの紫外線を照射し、かかる照射は光量で5000mJ/cm照射されるまで継続した。最後に、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムごと硬化した紫外線硬化樹脂を剥がした。以上の工程を合計で50回繰り返した。
【0050】
<紫外線硬化樹脂塗液組成>
ウレタンアクリレート 95g
(三菱ケミカル(株)製UV-1700B)
光重合開始剤 5g
(IGM RESINS製Omnirad(登録商標)184)
【0051】
上記した紫外線硬化樹脂の塗布、硬化、剥離を50回繰り返した後、上記した剥離強度評価と同様にして離型フィルム1~16の剥離強度を再測定した。再測定した剥離強度が、初期剥離強度の1倍以上2倍未満の場合を耐久性が4、2倍以上4倍未満の場合を耐久性が3、4倍以上8倍未満の場合を耐久性が2、8倍以上の場合を耐久性が1として評価した。結果を表2に示す。なお、離型性評価が実施不能、もしくは1であった離型フィルム9、13については評価を未実施とした。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果から、本発明の有効性が判る。