(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142942
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/768 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/90 P
H01L21/90 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050084
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰治
【テーマコード(参考)】
5F033
【Fターム(参考)】
5F033HH03
5F033HH07
5F033HH11
5F033HH15
5F033HH19
5F033HH20
5F033HH33
5F033RR03
5F033RR04
5F033RR06
5F033SS08
5F033SS10
5F033SS11
(57)【要約】
【課題】基板上の金属膜がエッチングされるのを抑制しながら、保護膜としての自己組織化単分子膜を選択的に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の基板処理方法は、金属膜1が形成された金属膜形成領域と、金属膜1が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する基板を処理する基板処理方法であって、自己組織化単分子膜4を形成するための材料を含む処理液の溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程と、溶存酸素濃度低減工程後の処理液を基板の表面に少なくとも接触させることにより、金属膜形成領域の金属膜1上に、金属膜1の酸化を抑制しながら自己組織化単分子膜4を形成する自己組織化単分子膜形成工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する基板を処理する基板処理方法であって、
自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液の溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程と、
溶存酸素濃度低減工程後の前記処理液を前記基板の表面に少なくとも接触させることにより、前記金属膜形成領域の前記金属膜上に、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記自己組織化単分子膜を形成する自己組織化単分子膜形成工程と、
を含む基板処理方法。
【請求項2】
前記溶存酸素濃度低減工程は、前記処理液に不活性ガスをバブリングすることにより前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記溶存酸素濃度低減工程は、不活性ガスの雰囲気下で行う請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記自己組織化単分子膜形成工程は、溶存酸素濃度を低減させた後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で行う請求項1~3の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記溶存酸素濃度低減工程後の前記処理液の溶存酸素濃度が、100ppb未満である請求項1~4の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記処理液は、前記金属膜の表面に吸着するホスホン酸基を有するホスホン酸化合物と、溶媒とを含む請求項1~5の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記自己組織化単分子膜形成工程の後、前記金属膜形成領域に形成した前記自己組織化単分子膜を保護膜として、前記金属膜非形成領域に選択的に膜を形成する膜形成工程と、
前記膜形成工程の後、前記金属膜形成領域に形成された前記自己組織化単分子膜を除去して前記金属膜を露出させる除去工程と、
をさらに含む請求項1~6の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する基板を処理する基板処理装置であって、
自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留される前記処理液中に不活性ガスを供給して、前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる第1不活性ガス供給部と、
溶存酸素濃度低減後の前記処理液を、前記基板の表面に供給して、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記金属膜形成領域の前記金属膜上に前記自己組織化単分子膜を形成する供給部と、
を備える基板処理装置。
【請求項9】
金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する複数枚の基板を一括して処理する基板処理装置であって、
自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留される前記処理液中に不活性ガスを供給して、前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる第1不活性ガス供給部と、
前記貯留部から溶存酸素濃度低減後の前記処理液を下流に向けて送液する送液部と、
前記送液部により送られてきた溶存酸素濃度低減後の前記処理液を貯留し、前記複数枚の基板を一括して前記処理液に浸漬して、各々の基板の表面に於ける前記金属膜形成領域の前記金属膜上に、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記自己組織化単分子膜を形成する処理槽と、
を備える基板処理装置。
【請求項10】
前記第1不活性ガス供給部は、前記貯留部の内部に前記不活性ガスを供給して前記貯留部の内部を不活性ガスの雰囲気下にすると共に、前記貯留部に貯留される前記処理液中に前記不活性ガスを供給して前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる請求項8又は9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記供給部は、
前記基板の表面に対し、任意の離間距離で近接して対向する対向部材と、
前記基板の表面と前記対向部材との間の空間に向けて不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給部と、
をさらに有しており、
前記第2不活性ガス供給部は、前記空間に向けて前記不活性ガスを供給することにより、前記空間を、溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下にし、
前記供給部は、前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で、溶存酸素濃度低減後の前記処理液を、前記基板の表面に供給する請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記供給部による前記基板の表面への前記処理液の供給を、密閉空間内で行うためのチャンバと、
前記チャンバ内に不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給部と、
前記チャンバ内の気体を排気する減圧部と、
をさらに備え、
前記第3不活性ガス供給部が前記不活性ガスを前記チャンバ内に供給すると共に、前記減圧部が前記チャンバ内の気体を排気することにより、前記チャンバ内を、溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下にし、
前記供給部は、前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で、溶存酸素濃度低減後の前記処理液を、前記基板の表面に供給する請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項13】
溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が100ppb未満となるように、前記第1不活性ガス供給部を制御する制御部をさらに備える請求項8~12の何れか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的な成膜を良好に行うことが可能な基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に於いて、基板の特定の表面領域に選択的に膜を形成する技術として、フォトリソグラフィ技術が広く用いられている。例えば、下層配線形成後に絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、トレンチ及びビアホールを有するデュアルダマシン構造を形成し、トレンチ及びビアホールにCu等の導電膜を埋め込んで配線を形成する。
【0003】
しかし、近時、半導体デバイスの微細化が益々進んでおり、フォトリソグラフィ技術では位置合わせ精度が十分でない場合も生じている。このため、フォトリソグラフィ技術に替えて、基板表面の特定領域に高精度で選択的に膜を形成する手法が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、膜形成を望まない基板領域の表面に自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を形成し、SAMが形成されていない基板領域に選択的に膜形成をする成膜方法が開示されている。この成膜方法によれば、SAMを形成するための処理液として、最適な誘電率を有する溶媒、より具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)からなる混合溶媒を用いることにより、SAMの被覆率の低減を抑制すると共に、処理溶液の金属膜に対する選択性の低下を防止することが可能とされている。
【0005】
しかし特許文献1に開示の成膜方法では、例えば、銅からなる金属膜上にSAMを形成する際に、金属膜がエッチングされるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は基板上の金属膜がエッチングされるのを抑制しながら、保護膜としての自己組織化単分子膜を選択的に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自己組織化単分子膜(SAM)を基板表面の金属膜形成領域に形成する際の金属膜のエッチングが、SAMを形成するための処理液の溶存酸素濃度に起因する点に着想を得て完成されたものである。即ち、処理液中の溶存酸素濃度が高すぎると、溶存酸素が金属膜を酸化する結果、金属膜を構成する金属が処理液中に溶解し、これにより金属膜がエッチングされ得るとの知見に基づきなされたものである。
【0009】
本発明に係る基板処理方法は、前記の課題を解決するために、金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する基板を処理する基板処理方法であって、自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液の溶存酸素濃度を低減させる溶存酸素濃度低減工程と、溶存酸素濃度低減工程後の前記処理液を前記基板の表面に少なくとも接触させることにより、前記金属膜形成領域の前記金属膜上に、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記自己組織化単分子膜を形成する自己組織化単分子膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記の構成によれば、金属膜上に自己組織化単分子膜を形成するための処理液として、予め溶存酸素濃度を低減させたものを用いる。これにより、処理液中の溶存酸素が金属膜に接触した際に、金属膜が酸化して金属膜を構成する金属が処理液に溶解するのを低減することができる。その結果、金属膜がエッチングされるのを抑制又は低減しながら自己組織化単分子膜を金属膜上に形成することができる。
【0011】
前記の構成に於いて、前記溶存酸素濃度低減工程は、前記処理液に不活性ガスをバブリングすることにより前記処理液の溶存酸素濃度を低減させることができる。この様な処理液の溶存酸素濃度の低減方法であると、例えば、不活性ガスの供給量や供給時間を調整することにより処理液中の溶存酸素濃度の低減の程度を容易に制御することができる。
【0012】
前記の構成に於いて、前記溶存酸素濃度低減工程は、不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、処理液が空気中の酸素と接触することによる溶存酸素濃度の増加を抑制しながら処理液中の溶存酸素濃度の低減を図ることができる。
【0013】
前記の構成に於いて、前記自己組織化単分子膜形成工程は、溶存酸素濃度を低減させた後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、金属膜に接触する処理液が空気中の酸素と接触することによる溶存酸素濃度の増加を抑制しながら、金属膜上に自己組織化単分子膜を形成することができる。その結果、自己組織化単分子膜形成の際、金属膜のエッチングを一層防止することができる。
【0014】
前記の構成に於いては、前記溶存酸素濃度低減工程後の前記処理液の溶存酸素濃度が、100ppb未満であることが好ましい。これにより、自己組織化単分子膜を形成する際に金属膜がエッチングされるのを一層抑制することができる。
【0015】
前記の構成に於いて、前記処理液としては、前記金属膜の表面に吸着するホスホン酸基を有するホスホン酸化合物と、溶媒とを含むものを用いることができる。
【0016】
前記の構成に於いては、前記自己組織化単分子膜形成工程の後、前記金属膜形成領域に形成した前記自己組織化単分子膜を保護膜として、前記金属膜非形成領域に選択的に膜を形成する膜形成工程と、前記膜形成工程の後、前記金属膜形成領域に形成された前記自己組織化単分子膜を除去して前記金属膜を露出させる除去工程と、をさらに含むことができる。
【0017】
前記の構成によれば、膜形成工程において、金属膜形成領域に形成された自己組織化単分子膜を金属膜に対する保護膜とすることで、金属膜非形成領域にのみ選択的に膜を形成し、金属膜上に膜が形成されるのを阻害することができる。さらに除去工程に於いて自己組織化単分子膜を除去することで、金属膜と膜とが表面に露出した積層構造の基板を作製することができる。
【0018】
本発明の基板処理装置は、前記の課題を解決するために、金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する基板を処理する基板処理装置であって、自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留される前記処理液中に不活性ガスを供給して、前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる第1不活性ガス供給部と、溶存酸素濃度低減後の前記処理液を、前記基板の表面に供給して、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記金属膜形成領域の前記金属膜上に前記自己組織化単分子膜を形成する供給部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
前記の構成によれば、自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留部に貯留し、第1不活性ガス供給部が当該処理液中に不活性ガスを供給することで、処理液中の溶存酸素濃度を予め低減しておく。そして、基板の金属膜形成領域の金属膜上に自己組織化単分子膜を形成させる際には、供給部が、予め溶存酸素濃度が低減された処理液を基板の表面に供給する。これにより、処理液中の溶存酸素が金属膜に接触した際に、金属膜が酸化して、金属膜を構成する金属が処理液に溶解するのを低減することができる。その結果、金属膜がエッチングされるのを抑制又は低減しながら自己組織化単分子膜を形成することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【0020】
また本発明の基板処理装置は、前記の課題を解決するために、金属膜が形成された金属膜形成領域と、前記金属膜が形成されていない金属膜非形成領域とを表面に有する複数枚の基板を一括して処理する基板処理装置であって、自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留される前記処理液中に不活性ガスを供給して、前記処理液の溶存酸素濃度を低減させる第1不活性ガス供給部と、前記貯留部から溶存酸素濃度低減後の前記処理液を下流に向けて送液する送液部と、前記送液部により送られてきた溶存酸素濃度低減後の前記処理液を貯留し、前記複数枚の基板を一括して前記処理液に浸漬して、各々の基板の表面に於ける前記金属膜形成領域の前記金属膜上に、前記金属膜の酸化を抑制しながら前記自己組織化単分子膜を形成する処理槽と、を備えることを特徴とする。
【0021】
前記の構成によれば、自己組織化単分子膜を形成するための材料を含む処理液を貯留部に貯留し、第1不活性ガス供給部が当該処理液中に不活性ガスを供給することで、処理液中の溶存酸素濃度を予め低減しておく。そして、基板の金属膜形成領域の金属膜上に自己組織化単分子膜を形成させる際には、処理槽が、予め溶存酸素濃度が低減された処理液を貯留して、複数枚の基板を処理液に一括して浸漬させる。これにより、処理液中の溶存酸素が金属膜に接触した際に、金属膜が酸化して、金属膜を構成する金属が処理液に溶解するのを低減することができる。その結果、金属膜がエッチングされるのを抑制又は低減しながら自己組織化単分子膜を形成することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【0022】
前記の構成に於いて、前記第1不活性ガス供給部は、前記貯留部の内部に前記不活性ガスを供給して前記貯留部の内部を不活性ガスの雰囲気下にすると共に、前記貯留部に貯留される前記処理液中に前記不活性ガスを供給して前記処理液の溶存酸素濃度を低減させることが好ましい。
【0023】
前記の構成によれば、第1不活性ガス供給部が貯留部の内部も不活性ガスの雰囲気下にすることで、処理液が空気中の酸素と接触することによる溶存酸素濃度の増加を抑制しながら処理液中の溶存酸素濃度の低減を図ることができる。
【0024】
前記の構成に於いて、前記供給部は、前記基板の表面に対し、任意の離間距離で近接して対向する対向部材と、前記基板の表面と前記対向部材との間の空間に向けて不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給部と、をさらに有しており、前記第2不活性ガス供給部は、前記空間に向けて前記不活性ガスを供給することにより、前記空間を、溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下にし、前記供給部は、前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で、前記溶存酸素濃度を低減させた後の前記処理液を、前記基板の表面に供給してもよい。
【0025】
前記の構成によれば、供給部が、基板の表面に対し任意の離間距離で近接して対向できる対向部材を備えることで、基板の表面と対向部材との間に空間を形成することができる。また供給部が、この空間に向けて不活性ガスを供給することが可能な第2不活性ガス供給部を備えることで、当該空間を空気から不活性ガスに置換することができる。これにより、供給部が基板の表面に処理液を供給して金属膜上に自己組織化単分子膜を形成させる際に、処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で行うことができ、処理液が空気中の酸素と接触することによる溶存酸素濃度の増加を抑制しながら自己組織化単分子膜の形成が可能になる。その結果、自己組織化単分子膜形成の際、金属膜のエッチングを一層防止できる基板処理装置を提供することができる。
【0026】
また前記の構成に於いて、前記供給部による前記基板の表面への前記処理液の供給を、密閉空間内で行うためのチャンバと、前記チャンバ内に不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給部と、前記チャンバ内の気体を排気する減圧部と、をさらに備え、前記第3不活性ガス供給部が前記不活性ガスを前記チャンバ内に供給すると共に、前記減圧部が前記チャンバ内の気体を排気することにより、前記チャンバ内を、溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下にし、前記供給部は、前記処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で、前記溶存酸素濃度を低減させた後の前記処理液を、前記基板の表面に供給してもよい。
【0027】
前記の構成によれば、チャンバを備えることで、供給部による基板の表面への処理液の供給を密閉空間内で行うことができる。また、チャンバ内に不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給部と、チャンバ内の気体を排気する減圧部とを備えることで、チャンバ内を空気から不活性ガスに置換することができる。これにより、供給部が基板の表面に処理液を供給して金属膜上に自己組織化単分子膜を形成させる際に、処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気下で行うことができ、処理液が空気中の酸素と接触することによる溶存酸素濃度の増加を抑制しながら自己組織化単分子膜の形成が可能になる。その結果、自己組織化単分子膜形成の際、金属膜のエッチングを一層防止できる基板処理装置を提供することができる。
【0028】
さらに前記の構成に於いては、溶存酸素濃度低減後の前記処理液の溶存酸素濃度が100ppb未満となるように、前記第1不活性ガス供給部を制御する制御部をさらに備えることが好ましい。これにより、自己組織化単分子膜を形成する際に金属膜がエッチングされるのを一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、基板上の金属膜がエッチングされるのを抑制しながら、保護膜としての自己組織化単分子膜を選択的に成膜することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜の形成材料を基板表面に供給する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域に自己組織化単分子膜が形成された様子を表し、同図(c)は基板表面の金属膜非形成領域に膜が形成された様子を表し、同図(d)は基板表面の金属膜形成領域の自己組織化単分子膜が除去された様子を表す。
【
図3】本発明の実施形態に係る基板処理装置の要部の概略を表す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る基板処理装置に備えられた枚葉式の成膜装置の概略を表す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る基板処理装置に備えられた他の枚葉式の成膜装置の概略を表す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る基板処理装置に備えられたバッチ式の成膜装置の概略を表す説明図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る処理液の溶存酸素濃度とバブリング時間の関係を表すグラフである。
【
図8】本発明の実施例1に係る基板サンプルの表面状態を表す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(基板処理方法)
先ず、本実施形態に係る基板処理方法について、
図1及び
図2を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
図2(a)~
図2(d)は本発明の実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜の形成材料を基板表面に供給する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域に自己組織化単分子膜が形成された様子を表し、同図(c)は基板表面の金属膜非形成領域に膜が形成された様子を表し、同図(d)は基板表面の金属膜形成領域の自己組織化単分子膜が除去された様子を表す。
【0032】
本実施形態の基板処理方法は、基板Wの表面に膜を形成する際に、基板表面の材質に応じて選択的に成膜するための技術を提供するものである。尚、本明細書に於いて「基板」とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板をいう。
【0033】
本実施形態の基板処理方法は、
図1に示すように、基板Wの準備工程S101と、処理液の溶存酸素濃度低減工程S102と、自己組織化単分子膜(以下、「SAM」という。)形成工程S103と、膜形成工程S104と、SAMを除去する除去工程S105とを少なくとも含む。
【0034】
基板Wの準備工程S101で準備される基板Wは、
図1及び
図2(a)に示すように、金属膜1が露出して形成された金属膜形成領域と、絶縁膜2が露出して形成された金属膜非形成領域とを含む。基板Wとしては、より具体的には、例えば、任意の配線幅のトレンチが形成された絶縁膜2と、当該トレンチに埋め込まれた金属膜1とを有するものが挙げられる。尚、基板Wの準備工程は、例えば、基板搬入出機構により基板Wを収容する容器であるチャンバ(詳細については後述する。)の内部に基板Wを搬入することを含み得る。
【0035】
金属膜形成領域及び金属膜非形成領域は、
図2(a)では1つずつ形成されているが、それぞれ複数形成されていてもよい。例えば、隣り合う帯状の金属膜形成領域の間に帯状の金属膜非形成領域が介在されるように配置されてもよく、隣り合う帯状の金属膜非形成領域の間に帯上の金属膜形成領域が介在されるように配置されてもよい。
【0036】
また本実施形態の基板Wは、その表面に金属膜形成領域及び金属膜非形成領域のみが設けられている場合に限定されるものではない。例えば、金属膜1及び絶縁膜2とは異なる材料からなる他の膜が、表面に露出して形成される領域が設けられていてもよい。この場合、当該領域が設けられる位置は特に限定されず、任意に設定することができる。
【0037】
金属膜1としては特に限定されず、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、窒化チタン(TiN)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等からなるものが挙げられる。
【0038】
また絶縁膜2としては特に限定されず、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(SiN)等からなるものが挙げられる。
【0039】
処理液の溶存酸素濃度低減工程S102は、SAM形成材料を含む処理液中の溶存酸素濃度を低減させる工程である。これにより、金属膜が酸化して金属が処理液中に溶解し、金属膜がエッチングされるのを低減することができる。
【0040】
処理液の溶存酸素濃度を低減させる方法としては特に限定されず、例えば、不活性ガスを処理液中に供給してバブリングを行う方法や、真空脱気装置又は酸素透過膜を用いた方法等が挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス及びアルゴン(Ar)ガス等が挙げられる。
【0041】
不活性ガスを用いたバブリングにより処理液中の溶存酸素濃度を低減させる場合、本工程は不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。これにより、処理液中の溶存酸素濃度を一層低減させることができる。また、不活性ガスの雰囲気下で行う場合、当該不活性ガスの雰囲気中に於ける酸素濃度は0.1%未満であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。酸素濃度が0.1%未満の不活性ガス雰囲気下で処理液の溶存酸素濃度を低減させると、雰囲気中に含まれる酸素が処理液に溶解するのを防止することができ、処理液中の溶存酸素濃度を一層低減することができる。尚、不活性ガスとしては、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス及びアルゴン(Ar)ガス等を用いることができる。
【0042】
溶存酸素濃度低減工程後(又は処理液を基板Wに接触させる直前)の処理液の溶存酸素濃度は100ppb未満であることが好ましく、50ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。
【0043】
処理液は、SAMを形成する材料(以下、「SAM形成材料」という。)と、溶媒とを少なくとも含む。SAM形成材料は溶媒に溶解していてもよく、分散していてもよい。
【0044】
SAM形成材料としては特に限定されず、例えば、モノホスホン酸、ジホスホン酸等のホスホン酸基を有するホスホン酸化合物が挙げられる。これらのホスホン酸化合物は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
モノホスホン酸としては特に限定されず、例えば、一般式R-P(=O)(OH)2(式中、Rは炭素数1~18で表されるアルキル基;炭素数1~18の範囲内であって、フッ素原子を有するアルキル基;又はビニル基を表す。)で表されるホスホン酸化合物が挙げられる。尚、本明細書に於いて炭素数の範囲を表す場合、その範囲は当該範囲に含まれる全ての整数の炭素数を含むことを意味する。従って、例えば「炭素数1~3」のアルキル基とは、炭素数が1、2及び3の全てのアルキル基を意味する。
【0046】
炭素数1~18で表されるアルキル基は、直鎖状及び分岐状の何れでもよい。さらにアルキル基の炭素数は、10~18の範囲が好ましく、14~18の範囲がより好ましい。また、炭素数1~18の範囲内であって、フッ素原子を有するアルキル基は、直鎖状及び分岐状の何れでもよい。さらにフッ素原子を有するアルキル基の炭素数は、10~18の範囲が好ましく、14~18の範囲がより好ましい。
【0047】
さらに前記R-P(=O)(OH)2で表されるモノホスホン酸としては、具体的には、例えば、以下の化学式(1)~(16)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【0048】
【0049】
またモノホスホン酸としては、前述の例示したものの他に以下の化学式(17)~(19)の何れかで表される化合物も用いることができる。
【0050】
【0051】
ジホスホン酸としては、以下の化学式(20)及び(21)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【0052】
【0053】
例示したホスホン酸化合物のうち、緻密なSAM形成の観点からは、オクタデシルホスホン酸(Octadecylphosphonic acid)等が好ましい。
【0054】
処理液に於ける溶媒としては特に限定されず、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グリコールエステル溶媒等が挙げられる。アルコール溶媒としては特に限定されず、例えば、エタノール等が挙げられる。エーテル溶媒としては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。グリコールエーテル溶媒としては特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等が挙げられる。グリコールエステル溶媒としては特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの溶媒は、前述の例示したホスホン酸化合物と任意に組み合わせて用いることができる。例示した溶媒のうちホスホン酸化合物を溶解させることができるとの観点からは、アルコール溶媒が好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0055】
SAM形成材料の含有量は、処理液の全質量に対し、0.0004質量%~0.2質量%の範囲内が好ましく、0.004質量%~0.08質量%の範囲内がより好ましく、0.02質量%~0.06質量%の範囲内が特に好ましい。
【0056】
また処理液には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては特に限定されず、例えば、安定剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
SAM形成工程S103は、
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、溶存酸素濃度低減後の処理液を基板Wの表面に接触させ、金属膜1の表面に処理液中に含まれるSAM形成材料3を吸着させることにより、SAM4を形成する工程である。ここで、SAM4は基板Wの金属膜形成領域の金属膜1上にのみ選択的に形成され、金属膜非形成領域には形成されない。SAM4が金属膜1上にのみ形成されるのは、例えば、金属膜1がCu(銅)膜である場合、SAM形成材料3であるホスホン酸化合物のホスホン酸基と、Cu膜表面の-OH基とが以下の化学反応式で表されるように反応するためである。
【0058】
【0059】
ここで、ホスホン酸化合物がCu膜表面に吸着する際にはH2Oが生成するが、本発明に於いては基板Wに接触させる処理液中の溶存酸素濃度を予め低減させているため、CuがH2O中に溶解するのを極力低減している。そのため、本実施形態は、処理液の溶存酸素濃度を低減させずにSAMを形成させる場合と比較して、Cu膜がエッチングされるのを抑制することができる。
【0060】
処理液を基板Wに接触させる方法としては特に限定されず、例えば、処理液を基板Wの表面に塗布する方法や処理液を基板Wの表面に噴霧する方法、基板Wを処理液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0061】
処理液を基板Wの表面に塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、処理液を基板Wの表面の中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面に供給された処理液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散される。その結果、基板Wの表面の全面が処理液で覆われて、当該処理液の液膜が形成される。
【0062】
SAM形成工程S103は、溶存酸素濃度を低減させた後の処理液の溶存酸素濃度が維持又は低減される雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、SAM4の形成中に、雰囲気中に含まれる酸素が処理液に溶解するのを防止することができる。その結果、処理液の溶存酸素濃度が低減された状態を良好に維持することができる。本工程を不活性ガスの雰囲気下で行う場合、当該不活性ガスの雰囲気中に於ける酸素濃度は0.1%未満であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。
【0063】
SAM形成工程S103に於いては、基板Wの表面に残存する処理液を除去する工程を含み得る。処理液を除去する工程としては特に限定されず、例えば、基板Wを一定速度で回転させることにより遠心力で処理液を振り切る工程等が挙げられる。
【0064】
また、処理液を遠心力により振り切る工程を行う場合、基板Wの回転数としては処理液を十分に振り切れる程度であれば特に限定されないが、通常は800rpm~2500rpmの範囲で設定され、好ましくは1000rpm~2000rpm、より好ましくは1200rpm~1500rpmである。
【0065】
膜形成工程S104は、
図1及び
図2(c)に示すように、目的とする膜5を金属膜非形成領域の絶縁膜2上に形成する工程である。このとき、金属膜形成領域に形成されたSAM4が金属膜1の保護膜としてマスクする機能を果たす。これにより、目的とする膜5を金属膜非形成領域に選択的に形成することができる。
【0066】
目的とする膜5としては特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化コバルト(CoO)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなる膜が挙げられる。またこれらの膜5を形成する方法としては特に限定されず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成膜)法、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、真空蒸着、スパッタリング、メッキ、サーマルCVD及びサーマルALD等が挙げられる。
【0067】
除去工程S105は、
図1及び
図2(d)に示すように、膜5を形成する工程の実行後に、金属膜形成領域に形成されたSAM4を除去する工程である。SAM4を除去する方法としては特に限定されず、例えば、SAM4を溶解又はエッチング等により直接除去する方法、金属膜1の表層部分をSAM4ごと薄く剥離する方法等を利用することができる。
【0068】
例えば、ホスホン酸化合物からなるSAM4を除去する場合には、紫外線をSAM4に照射することでSAM4を酸化させ、その後に酢酸をSAM4に接触させることによりSAM4を除去することができる。これにより、
図2(d)に示すように、金属膜非形成領域にのみ膜5が選択的に形成され、かつ金属膜1が露出した基板Wを得ることができる。尚、紫外線の照射条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0069】
また、エッチングによりSAM4を除去する場合、例えば、酸素含有ガスを接触させてSAM4をガス化することにより当該SAM4を除去することもできる。尚、酸素含有ガスとしては特に限定されず、例えば、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス等が挙げられる。これらの酸素含有ガスは、化学反応を促進すべく、高温に加熱されていてもよい。また、これらの酸素含有ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されていてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態の基板処理方法によれば、溶存酸素濃度を低減させた処理液を用いてSAM4を形成することにより、当該SAM4の金属膜形成領域に於ける選択的な成膜の過程で、金属膜1がエッチングされるのを抑制することができる。
【0071】
(基板処理装置)
次に、本実施形態に係る基板処理装置について、
図3に基づき説明する。
図3は、本実施形態に係る基板処理装置の要部を表す説明図である。
【0072】
本実施形態の基板処理装置10は、
図3に示すように、処理液を供給するための処理液供給装置100と、SAM4を成膜するための成膜装置200と、基板処理装置10の各部を制御するための制御部300とを少なくとも備える。
【0073】
[処理液供給装置]
本実施形態に係る処理液供給装置100は、
図3に示すように、溶存酸素濃度を当初から低減させた処理液を成膜装置200に供給する機能を有しており、処理液タンク11と、加圧部12と、配管13とを備える。
【0074】
処理液タンク11は、処理液タンク11内の処理液を撹拌する撹拌部、及び処理液タンク11内の処理液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、処理液タンク11内の処理液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部を備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部300と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部300が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で処理液を撹拌させることができる。その結果、処理液タンク11内で、処理液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0075】
加圧部12は、処理液タンク11内を加圧する気体の供給源である窒素ガス供給源16、窒素ガスを加圧するポンプ(図示しない)、窒素ガス供給管14及び窒素ガス供給管14の経路途中に設けられたバルブ15を備える。窒素ガス供給源16は窒素ガス供給管14により処理液タンク11と管路接続されている。処理液タンク11内には、制御部300と電気的に接続した気圧センサ(図示しない)を設けることができる。この場合、制御部300は、気圧センサが検出した値に基づいてポンプの動作を制御することにより、処理液タンク11内の気圧を大気圧より高い所定の気圧に維持することができる。また、バルブ15も制御部300と電気的に接続させることにより、バルブ15の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ15が開栓されると、処理液が配管13を介して圧送される。
【0076】
配管13は第1配管13aと第2配管13bに分岐しており、第1配管13aは第1貯留部21aに管路接続され、第2配管13bは第2貯留部21bに管路接続されている(第1貯留部21a及び第2貯留部21bの詳細については後述する。)。さらに、第1配管13aの途中経路には第1バルブ16aが設けられ、第2配管13bの途中経路には第2バルブ16bが設けられている。第1バルブ16a及び第2バルブ16bはそれぞれ制御部300と電気的に接続されており、第1バルブ16a及び第2バルブ16bの開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令により第1バルブ16a及び第2バルブ16bが開栓されると、処理液を第1貯留部21a及び第2貯留部21bのそれぞれに供給することができる。
【0077】
また処理液供給装置100は、処理液を貯留する貯留部としての第1貯留部21a及び第2貯留部21bと、第1貯留部21a及び第2貯留部21bにそれぞれ不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給部とを備える。
【0078】
第1貯留部21a及び第2貯留部21bでは、処理液タンク11から供給される処理液に対し、第1不活性ガス供給部から供給される不活性ガスにより溶存酸素濃度の低減処理が行われる。第1貯留部21a及び第2貯留部21bにはそれぞれ、貯留される処理液を撹拌する撹拌部、及び処理液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、処理液タンク11に設置可能なものと同様のものを用いることができる。
【0079】
第1不活性ガス供給部は、不活性ガス供給源29、不活性ガスを加圧するポンプ(図示しない)、不活性ガス供給管22及び不活性ガス供給管22の途中経路に設けられるバルブ23を備える。不活性ガス供給管22は、バルブ23の下流側で第1不活性ガス供給管22aと第2不活性ガス供給管22bとに分岐している。バルブ23は制御部300と電気的に接続されることにより、バルブ23の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ23が開栓されると、第1貯留部21a及び第2貯留部21bへの不活性ガスの供給が可能になる。
【0080】
第1不活性ガス供給管22aの途中経路には、上流側から下流側に向けて第1上流側バルブ23a及び第1下流側バルブ24aが順次設けられている。また、第2不活性ガス供給管22bの途中経路にも、上流側から下流側に向けて第2上流側バルブ23b及び第2下流側バルブ24bが順次設けられている。さらに、第1不活性ガス供給管22a及び第2不活性ガス供給管22bの終端には、不活性ガスを吐出するためのバブリングノズルがそれぞれ設けられている。バブリングノズルは、貯留されている処理液の液面よりも下方となるように、第1貯留部21a及び第2貯留部21bの底部近傍に位置するように設けられているのが好ましい。また、バブリングノズルには不活性ガスを吐出するための吐出口が複数設けられているのが好ましい。さらに、バブリングノズルは第1貯留部21a及び第2貯留部21bの底部に対し略水平方向となるように延在させるのが好ましい。
【0081】
第1貯留部21a及び第2貯留部21bへの不活性ガスの供給量及び供給時間は、第1不活性ガス供給管22aに於いては第1上流側バルブ23a及び/又は第1下流側バルブ24aの開度を調整することによって、また第2不活性ガス供給管22bに於いては第2上流側バルブ23b及び/又は第2下流側バルブ24bの開度を調整することによって制御可能である。そして、第1上流側バルブ23a、第1下流側バルブ24a、第2上流側バルブ23b及び第2下流側バルブ24bの開度の調整は、制御部300の動作指令により行うことができる。
【0082】
尚、不活性ガスの供給量や供給時間の制御により、第1貯留部21a及び第2貯留部21b内の処理液中の溶存酸素濃度の低減の程度を調整することができる。また、第1不活性ガス供給管22aと第2不活性ガス供給管22bとで、それぞれ第1貯留部21a及び第2貯留部21bに供給する不活性ガスの供給量や供給時間を異ならせることにより、第1貯留部21aに貯留される処理液の溶存酸素濃度と、第2貯留部21bに貯留される処理液の溶存酸素濃度とを相互に異ならせることもできる。
【0083】
また、第1不活性ガス供給管22aに於いては、第1上流側バルブ23aと第1下流側バルブ24aとの間で分岐するように、第1分岐管22cが管路接続されている。第2不活性ガス供給管22bに於いても、第2上流側バルブ23bと第2下流側バルブ24bとの間で分岐するように、第2分岐管22dが管路接続されている。さらに、第1貯留部21a及び第2貯留部21bには、内部の減圧を行うための第1排出管25a及び第2排出管25bがそれぞれ管路接続されている。そして第1排出管25a及び第2排出管25bには、それぞれ途中経路に第1排気バルブ26aと第2排気バルブ26bとが設けられている。また、第1排出管25a及び第2排出管25bは、それぞれ排気ポンプ(図示しない)に接続されていてもよい。これらの構成を備えることにより、第1貯留部21a及び第2貯留部21bでの溶存酸素濃度の低減処理を、不活性ガスの雰囲気下で行うことが可能になる。即ち、例えば、第1貯留部21aの場合、制御部300の動作指令により、バルブ23、第1上流側バルブ23a及び第1排気バルブ26aを開栓すると共に、第1下流側バルブ24aを閉栓する。これにより、第1貯留部21a内に不活性ガスが供給されると、第1貯留部21aの内部にある空気が第1排出管25aから排出され、空気が不活性ガスに置換される。その結果、第1貯留部21aの内部を不活性ガスの雰囲気にすることができ、第1貯留部21aの内部の酸素濃度を低減させることができる。尚、第1貯留部21a及び第2貯留部21b内部の空気を不活性ガスに置換する際には、排気ポンプを用いて、第1排出管25a及び第2排出管25bから空気を排出させるようにしてもよい。即ち、制御部300の動作指令により、第1排気バルブ26a及び第2排気バルブ26bを開栓させると共に排気ポンプを動作させ、第1貯留部21a及び第2貯留部21bの内部の空気を排出させることにより、不活性ガスへの置換を迅速に行うことができる。
【0084】
さらに第1貯留部21a及び第2貯留部21bには、溶存酸素濃度低減後の処理液を成膜装置200に供給するための第1排出管27a及び第2排出管27bがそれぞれ管路接続されている。この第1排出管27a及び第2排出管27bの途中経路には、それぞれ第1排出バルブ28aと第2排出バルブ28bとが設けられている。さらに第1排出管27aと第2排出管27bとは、第1排出バルブ28a及び第2排出バルブ28bの下流側で合流するように第3排出管27cに管路接続されている。この第3排出管27cの経路途中には、第3排出バルブ28cが設けられている。また、第1貯留部21a及び第2貯留部21bの内部には、制御部300と電気的に接続した気圧センサを設けることができる。この場合、制御部300は、気圧センサが検出した値に基づいてポンプの動作を制御することにより、第1貯留部21a及び第2貯留部21b内の気圧を大気圧より高い所定の気圧に維持することができる。また、第1排出バルブ28a、第2排出バルブ28b及び第3排出バルブ28cも制御部300と電気的に接続させることにより、これらのバルブの開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令により第1排出バルブ28a、第2排出バルブ28b及び第3排出バルブ28cが開栓されると、溶存酸素濃度低減後の処理液が、第1排出管27a、第2排出管27b及び第3排出管27cを介して成膜装置200に圧送される。
【0085】
尚、本実施形態に於いては、処理液供給装置100として一対の第1貯留部21a及び第2貯留部21bを備える場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、貯留部は、例えば、1つであってもよい。
【0086】
[成膜装置]
次に、成膜装置200について、
図4に基づき説明する。
図4は、基板処理装置10に備えられた成膜装置200の概略を表す説明図である。
【0087】
本実施形態に係る成膜装置200は、金属膜1が形成された金属膜形成領域にSAM4を成膜することが可能な枚葉式の成膜装置である。
【0088】
成膜装置200は、
図4に示すように、基板Wを保持する基板保持部30と、基板Wの表面Wfに処理液を供給する供給部40と、基板Wを収容する容器であるチャンバ50と、処理液を捕集する飛散防止カップ60とを少なくとも備える。また、成膜装置200は基板Wを搬入又は搬出する搬入出手段(図示しない)を備えることもできる。
【0089】
基板保持部30は基板Wを保持する手段であり、
図4に示すように、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。この基板保持部30は、スピンベース33と回転支軸34とが一体的に結合されたスピンチャック31を有している。スピンベース33は平面視に於いて略円形形状を有しており、その中心部に、略鉛直方向に延びる中空状の回転支軸34が固定されている。回転支軸34はモータを含むチャック回転機構36の回転軸に連結されている。チャック回転機構36は円筒状のケーシング37内に収容され、回転支軸34はケーシング37により、鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持されている。
【0090】
チャック回転機構36は、制御部300のチャック駆動部(図示しない)からの駆動により回転支軸34を回転軸周りに回転することができる。これにより、回転支軸34の上端部に取り付けられたスピンベース33が回転軸J周りに回転する。制御部300は、チャック駆動部を介してチャック回転機構36を制御して、スピンベース33の回転速度を調整することができる。
【0091】
スピンベース33の周縁部付近には、基板Wの周端部を把持するための複数個のチャックピン35が立設されている。チャックピン35の設置数は特に限定されないが、円形状の基板Wを確実に保持するために、少なくとも3個以上設けることが好ましい。本実施形態では、スピンベース33の周縁部に沿って等間隔に3個配置する。それぞれのチャックピン35は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持ピンと、基板支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持ピンとを備えている。
【0092】
供給部40は基板保持部30の上方位置に配置されており、処理液供給装置100から供給される処理液を基板Wの表面Wf上に供給する。供給部40は、中心部に開口部を有する円環状の対向部材41と、第2不活性ガス供給部と、対向部材41を支持する略円筒形状の回転支軸42と、回転支軸42の内部及び対向部材41の開口部に挿通された内挿軸43と、アーム45とを有している。
【0093】
対向部材41は回転支軸42の下端部に略水平に取り付けられ、基板保持部30に保持された基板Wの表面Wfに対向配置されている。また、対向部材41の下面(底面)44は基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっている。対向部材41の下面44は、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。回転支軸42の内周面と内挿軸43の外周面の間には、ベアリング(図示せず)が設けられており、回転支軸42が内挿軸43に対して回転自在となっている。また、回転支軸42は水平方向に延びるアーム45により基板Wの中心を通る回転軸J回りに回転可能に保持されている。
【0094】
第2不活性ガス供給部は、不活性ガス供給源48、不活性ガスを加圧するポンプ(図示しない)、不活性ガス供給管49及び不活性ガス供給管49の途中経路に設けられるバルブ51を備える。不活性ガス供給路47は、不活性ガス供給源48と不活性ガス供給管49を介して管路接続されている。バルブ51は制御部300と電気的に接続されることにより、バルブ51の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ51が開栓されると、基板Wの表面Wfに向けて不活性ガスの供給が可能になる。
【0095】
回転支軸42は、処理液が流れる処理液供給路46と、不活性ガスが流れる不活性ガス供給路47とを内部に有している。処理液供給路46は、処理液供給装置100の第3排出管27cと管路接続されている。また処理液供給路46は、回転支軸42の先端部に設けられた吐出口(図示しない)と連通している。これにより、処理液が回転支軸42の先端部から吐出するのを可能にしている。不活性ガス供給路47は、不活性ガス供給源48と不活性ガス供給管49を介して管路接続されている。また不活性ガス供給路47は、回転支軸42の先端部に設けられた他の吐出口(図示しない)と連通している。これにより、不活性ガスが回転支軸42の先端部から吐出するのを可能にしている。
【0096】
供給部40は、供給部回転機構53と、供給部昇降機構54とをさらに有している。供給部回転機構53及び供給部昇降機構54は、回転支軸42のアーム45にそれぞれ接続されている。
【0097】
供給部回転機構53は制御部300と電気的に接続されており、制御部300からの動作指令に応じて回転支軸42を回転させる。この回転動作によって、対向部材41が回転支軸42と共に一体的に回転する。供給部回転機構53は基板保持部30に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で対向部材41を回転させることができる。不活性ガスを他の吐出口から吐出させる際に、対向部材41及び基板Wを回転させることで、それにより生じる遠心力によって基板Wの中央部から基板Wの周縁部に向かって、不活性ガスを流動させ、基板Wの表面Wfの全面に拡散させることができる。
【0098】
供給部昇降機構54は制御部300と電気的に接続されており、制御部300からの動作指令に応じて供給部40を昇降させることができる。これにより、供給部40の対向部材41を、基板保持部30に保持されている基板Wに接近又は離隔させ、対向部材41の下面44と基板Wの表面Wfとの間の離間距離を調整することができる。基板Wの表面Wf上を不活性ガスの雰囲気下にする場合には、制御部300の動作指令により供給部昇降機構54を作動させ、供給部40を下降させる。これにより、対向部材41の下面44を基板Wの表面Wfに接近させ、微小な空間52を形成させる。さらに、制御部300の動作指令によりバルブ51を開栓させ、回転支軸42の吐出口から基板Wの表面Wfに向けて不活性ガスを吐出させると、対向部材41の下面44と基板Wの表面Wfとの間の空間52の空気が不活性ガスに置換される。これにより、空間52を不活性ガスの雰囲気にすることができ、空間52での酸素濃度を低減することができる。その結果、その後に基板Wの表面Wfに供給される処理液の溶存酸素濃度が変動するのを抑制することができ、金属膜1の処理液によるエッチングを一層防止することができる。尚、不活性ガスの供給による空間52での不活性ガス雰囲気の形成は、自己組織化単分子膜形成工程S102の開始前に行われていることが好ましい。また、不活性ガスの供給は、自己組織化単分子膜形成工程S102が行われている間中、継続して又は断続的に行ってもよい。
【0099】
尚、基板Wを成膜装置200内に搬入出させる際には、制御部300の動作指令により供給部昇降機構54を作動させ、供給部40を上昇させる。これにより、対向部材41の下面44と基板Wの表面Wfとを一定の距離に離隔させることができ、基板Wの搬入出を容易にすることができる。
【0100】
飛散防止カップ60は、スピンベース33を取り囲むように設けられる。飛散防止カップ60は昇降駆動機構(図示しない)に接続され、上下方向に昇降可能となっている。基板Wの表面Wfに処理液を供給する際には、飛散防止カップ60が昇降駆動機構によって所定位置に位置決めされ、チャックピン35により保持された基板Wを側方位置から取り囲む。これにより、基板Wやスピンベース33から飛散する処理液を捕集することができる。
【0101】
次に、他の成膜装置201について、
図5に基づき説明する。
図5は、基板処理装置に備えられた他の成膜装置の概略を表す説明図である。尚、
図5に示す他の成膜装置に於いて、前述の成膜装置200と同一の構成を有するものについては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0102】
他の成膜装置201は、
図5に示すように、基板Wを保持する基板保持部30と、基板Wの表面Wfに処理液を供給する供給部40’と、基板Wを収容する容器であるチャンバ50と、チャンバ50内に不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給部と、チャンバ50内の気体を排気する減圧部と、処理液を捕集する飛散防止カップ60とを少なくとも備える。また、成膜装置201は基板Wを搬入又は搬出する搬入出手段(図示しない)を備えることもできる。
【0103】
供給部40’は基板保持部30の上方位置に配置されており、処理液供給装置100から供給される処理液を基板Wの表面Wf上に供給する。供給部40’は、ノズル66と、アーム45とを有している。ノズル66は、水平に延設されたアーム45の先端部に取り付けられており、処理液を吐出する際にはスピンベース33の上方に配置される。
【0104】
第3不活性ガス供給部は、不活性ガス供給源48、不活性ガスを加圧するポンプ(図示しない)、不活性ガス供給管49、不活性ガス供給管49の途中経路に設けられるバルブ51、バルブ51の下流側に設けられるインラインヒータ61及び一対の不活性ガスノズル62を備える。
【0105】
一対の不活性ガスノズル62は、インラインヒータ61の下流側で分岐した不活性ガス供給管49に管路接続されている。また、バルブ51の下流側に設けられるインラインヒータ61は、不活性ガス供給源48から供給される不活性ガスを所定温度に加熱することができる。バルブ51は制御部300と電気的に接続されることにより、バルブ51の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ51が開栓されると、チャンバ50内に向けて不活性ガスの供給が可能になる。不活性ガスの供給量は、バルブ51の開度の制御により調整することができる。また、インラインヒータ61も制御部300と電気的に接続されており、制御部300の動作指令によって加熱を制御することができる。
【0106】
減圧部は、排気ポンプ63、排気管64及び排気管64の途中経路に設けられた排気バルブ65を少なくとも備える。排気ポンプ63は制御部300と電気的に接続されることにより、排気ポンプ63による排気を制御部300の動作指令によって制御することができる。また、排気バルブ65は制御部300と電気的に接続されることにより、排気バルブ65の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。チャンバ50内の雰囲気制御を行う場合、制御部300は第3不活性ガス供給部のバルブ51を開栓する。不活性ガス供給源48からチャンバ50内に不活性ガスを供給させる。また制御部300は、排気ポンプ63を作動させ、次いで排気バルブ65を開栓させる。これにより、チャンバ50内への不活性ガスの供給に加えて、排気ポンプ63によるチャンバ50内の気体を排出させ、チャンバ50内を不活性ガスの雰囲気にすることができる。その結果、チャンバ50内の酸素濃度を低減させ、基板Wの表面Wfに供給される処理液の溶存酸素濃度が変動するのを抑制することができ、金属膜1の処理液によるエッチングを一層防止することができる。
【0107】
以上の説明に於いては、本発明の基板処理装置に於ける成膜装置が基板Wに対して1枚毎に処理を行う枚葉式である場合を例にして説明した。しかし本発明の基板処理装置はこの態様に限定されるものでなく、本発明の基板処理装置の他の形態として成膜装置が複数枚の基板に対して一括して処理を行うバッチ式の形態である場合にも適用可能である。以下に、本実施形態に係る基板処理装置がバッチ式の成膜装置を備える場合について、
図6に基づき説明する。
図6は、基板処理装置に於けるバッチ式の成膜装置202の概略を表す説明図である。尚、
図6に示す成膜装置202に於いて、前述の成膜装置200、201と同一の構成を有するものについては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0108】
成膜装置202は、
図6に示すように、槽内に処理液を貯留し、複数枚の基板Wを処理液中に同時に浸漬した状態で収容可能な処理槽70と、処理槽70の槽内に処理液を供給する送液部90と、複数枚の基板Wを保持して移動させることが可能なリフタ71と、処理槽70の周囲を囲むチャンバ80と、チャンバ80内に不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給部と、チャンバ80内の気体を排気する減圧部とを少なくとも備える。
【0109】
処理槽70は、溶存酸素濃度低減後の処理液を槽内に貯留可能であり、処理液供給装置100(より詳細には、第1貯留部21a及び第2貯留部21b)の下流側となるように配置される。また処理槽70は、複数枚の基板Wを立設した状態(起立姿勢)で槽内に収容可能である。立設した状態(起立姿勢)とは、基板Wの表面Wfが水平面に対し略垂直となるように、基板Wが保持されている状態を意味する。処理液が貯留された処理槽70内に基板Wを収容することにより、基板Wを処理液中に浸漬させることができる。
【0110】
リフタ71は、起立姿勢とされた複数枚の基板Wを保持可能である。リフタ71は、図示しない昇降機構により上下方向に移動可能である。リフタ71は、保持する複数枚の基板Wをチャンバ80外であってチャンバ80の上方にあたるチャンバ外待機位置P1と、チャンバ80内であって処理槽70の上方にあたる槽外位置P2と、チャンバ80内であって処理槽70内の槽内位置P3と、にわたって移動させる。
【0111】
チャンバ80は、チャンバ80の上部に、開閉自在の上部カバー81を備える。上部カバー81が開放すると、複数枚の基板Wを保持するリフタ71は、チャンバ80内に進入し、立設状態で保持する複数枚の基板Wを、チャンバ外待機位置P1とチャンバ80内の位置との間で、上下方向に移動させることが可能になる。
【0112】
送液部90は、処理液供給装置100から供給される溶存酸素濃度低減後の処理液を、処理槽70内に供給する。送液部90は、処理液供給装置100の第3排出管27cと管路接続されている供給管91と、供給管91の菅路途中に設けられるバルブ92と、供給管91と管路接続して処理液を処理槽70内に噴出可能な二本の噴出管93とを備える。二本の噴出管93は、リフタ71に保持された複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理槽70の底部に設けられる。バルブ92は制御部300と電気的に接続されることにより、バルブ92の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ92が開栓されると、噴出管93から、処理槽70内に処理液が噴出可能になる。
【0113】
第3不活性ガス供給部は、前述の通り、不活性ガス供給源48、不活性ガスを加圧するポンプ(図示しない)、不活性ガス供給管49、不活性ガス供給管49の途中経路に設けられるバルブ51、バルブ51の下流側に設けられるインラインヒータ61及び一対の不活性ガスノズル62を備える。
【0114】
減圧部は、前述の通り、排気ポンプ63、排気管64及び排気管64の途中経路に設けられた排気バルブ65を少なくとも備える。
【0115】
第3不活性ガス供給部と減圧部は、チャンバ80内の雰囲気制御を行うことができる。第3不活性ガス供給部と減圧部は、チャンバ80内に、不活性ガス雰囲気を形成することができる。チャンバ80内に不活性ガスの雰囲気を形成する場合、制御部300は第3不活性ガス供給部のバルブ51を開栓する。不活性ガス供給源48からはチャンバ80内に不活性ガスが供給される。また、制御部300は、排気ポンプ63を作動させる。次いで、制御部300は、排気バルブ65を開栓する。そうすると、チャンバ80内への不活性ガスの供給に加えて、排気ポンプ63によりチャンバ80内の気体が排出される。その結果、チャンバ80内に不活性ガスの雰囲気が形成される。
【0116】
また、チャンバ80内の雰囲気制御を行う際、第3不活性ガス供給部は、インラインヒータ61により加熱された不活性ガスをチャンバ80内に供給することができる。これにより、処理槽70の処理液から引き上げられ、処理液が付着した基板Wが乾燥されるのを一層促進することができる。
【0117】
次に、上述したバッチ式の成膜装置202の動作について説明する。チャンバ80上部の上部カバー81が開放する。次に、リフタ71が、チャンバ80内に進入し、立設した状態で保持されている未処理の複数枚の基板Wを、チャンバ80外のチャンバ外待機位置P1からチャンバ80内の槽外位置P2まで移動させる。そして、上部カバー81がチャンバ80を閉止する。
【0118】
制御部300は、第3不活性ガス供給部のバルブ51を開栓する。不活性ガス供給源48からチャンバ80内に不活性ガスが供給される。制御部300は、排気ポンプ63を作動させる。次いで、制御部300は、排気バルブ65を開栓する。これにより、チャンバ80内への不活性ガスの供給に加えて、排気ポンプ63によりチャンバ80内の気体が排出される。そして、チャンバ80内は、不活性ガスの雰囲気になる。
【0119】
制御部300は、バルブ92を開放する。処理液供給装置100から供給される溶存酸素濃度低減後の処理液が、噴出管93から、処理槽70内に噴出される。これにより、処理槽70内に噴出された処理液は、処理槽70内に貯留される。
【0120】
リフタ71は、保持する複数枚の基板Wを処理槽70の上方の槽外位置P2から処理槽70内の槽内位置P3まで移動させる。そうすると、処理液が貯留された処理槽70内に、リフタ71に保持された複数枚の基板Wが収容される。リフタ71に保持された複数枚の基板Wは、処理槽70内に貯留された処理液に浸漬される。これにより、溶存酸素濃度低減後の処理液が、複数枚の基板Wの表面Wfに接触する。処理液が基板Wの表面Wfに接触することで、基板Wの表面Wfの金属膜1が形成された金属膜形成領域にSAM4が成膜される。
【0121】
続いて、リフタ71は、保持する複数枚の基板Wを槽内位置P3から槽外位置P2まで移動させる。これにより、処理液に浸漬された複数枚の基板Wは、処理槽70内から引き上げられる。リフタ71に保持された複数枚の基板Wは、処理槽70内に貯留された処理液から、チャンバ80内に形成された不活性ガス雰囲気に露出される。基板Wの表面Wfに付着して残存する処理液は、不活性ガス雰囲気中で露出されることにより気化する。その結果、基板Wの表面Wfが乾燥される。リフタ71に保持された複数枚の基板Wは、例えば、槽外位置P2で乾燥される。
【0122】
制御部300は、排気ポンプ63の作動を停止させる。制御部300は、排気バルブ65を閉栓する。さらに、制御部300は、第3不活性ガス供給部のバルブ51を閉栓する。これにより、チャンバ80内の雰囲気制御が停止する。
【0123】
チャンバ80上部の上部カバー81が開放する。リフタ71が、槽外位置P2からチャンバ外待機位置P1まで移動する。これにより、複数枚の基板Wはチャンバ80内から搬出される。
【0124】
以上のように、バッチ式の成膜装置202に於いては、チャンバ80内を不活性ガスの雰囲気にすることで、チャンバ80内の酸素濃度を低減させることができる。また、チャンバ80内の酸素濃度を低減させることで、処理槽70内に貯留される処理液の溶存酸素濃度が変動するのを抑制し、溶存酸素濃度が低減された状態を維持することができる。その結果、金属膜1の処理液によるエッチングを一層防止することができる。また、処理槽70から引き上げられた後の基板Wの表面Wfに付着して残存する処理液に対しても、その溶存酸素濃度が変動するのを抑制することができる。これにより、基板Wの表面Wfに残存する処理液によっても、金属膜1がエッチングされるのをさらに防止することができる。
【0125】
またバッチ式の成膜装置202に於いては、第3不活性ガス供給部と減圧部がチャンバ80内の雰囲気制御を行うことで、処理槽70から引き上げられた後の、処理液が付着した基板Wの乾燥も促進することができる。また、第3不活性ガス供給部と減圧部は、チャンバ80内に不活性ガス雰囲気を形成することで、基板Wの表面Wfに付着した処理液の気化により、基板Wの乾燥を促進することができる。尚、リフタ71に保持された複数枚の基板Wは、例えば、槽外位置P2で乾燥される。
【0126】
また、チャンバ80内の雰囲気制御を行う際、第3不活性ガス供給部は、インラインヒータ61により加熱された不活性ガスをチャンバ80内に供給することができる。これにより、処理液が付着した基板Wが乾燥されるのを一層促進することができる。
【0127】
[制御部]
制御部300は、基板処理装置10の各部と電気的に接続しており、各部の動作を制御する。制御部300は、演算部と、記憶部とを有するコンピュータにより構成される。演算部としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、記憶部は、基板処理プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータ等を記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、処理液の溶存酸素濃度の低減処理や不活性ガスの供給条件、及びSAM4の成膜条件等を含む基板処理条件が予め格納されている。CPUは、基板処理条件をRAMに読み出し、その内容に従って基板処理装置10の各部を制御する。
【0128】
(その他の事項)
本実施形態の処理液供給装置は、基板処理装置以外の様々な装置に利用されてもよく、又は単独で使用されてもよい。
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施態様について説明した。しかし、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。前述の実施形態及び各変形例に於ける各構成は、相互に矛盾しない範囲内で変更、修正、置換、付加、削除及び組合わせが可能である。
【実施例0129】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量、条件等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0130】
(実施例1)
[処理液の調製及び溶存酸素濃度の低減処理]
SAM形成材料としてのオクタデシルホスホン酸(CH3(CH2)17P(=O)(OH)2)をエタノール溶媒に溶解させ、本実施例に係る処理液を調製した。オクタデシルホスホン酸の濃度は、処理液の全質量に対し0.04質量%とした。
【0131】
次に、作製直後の処理液の溶存酸素濃度を、溶存酸素計(商品名:フィールド型マルチデジタル水質計LAQUA WQ-310、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。その結果、処理液の初期溶存酸素濃度は6000ppbであった。
【0132】
続いて、処理液に対し、グローボックス内で溶存酸素濃度の低減処理を行った。溶存酸素濃度の低減処理は、先ずグローボックス内を酸素濃度が0.1%未満となるように窒素ガス雰囲気とし、その後容器に入れた処理液内に窒素ガスを供給してバブリングを行った。窒素ガスによるバブリングは、バブリング時間(窒素ガスの供給時間)5分間の条件で行った。
図7に処理液の溶存酸素濃度とバブリング時間の関係を表すグラフを示す。溶存酸素濃度の低減処理後の処理液に対し、前述の溶存酸素計を用いて溶存酸素濃度を測定した。その結果、溶存酸素濃度低減後の処理液の溶存酸素濃度は100ppbであった。
【0133】
[SAMの形成及び除去]
溶存酸素濃度の低減処理後の処理液を用いて、基板の表面にSAMを形成した。具体的には、先ず、配線幅が100nmのトレンチが形成されたSiO2膜(膜厚200nm)からなる層間絶縁膜を有し、金属膜としてのCu膜(膜厚200nm)が当該トレンチに埋め込まれた基板を準備した。
【0134】
次に、この基板の表面に溶存酸素濃度の低減処理後の処理液を塗布し、オクタデシルホスホン酸がCu膜上に吸着してなるSAMを成膜した。続いて、Cu膜上のSAMに紫外線を照射した後、酢酸溶液を接触させることによりSAMを除去して、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0135】
(比較例1)
本比較例に於いては、処理液に対して溶存酸素濃度の低減処理を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にしてCu膜上へのSAMの成膜とSAMの除去を行い、本比較例に係る基板サンプルを作製した。尚、処理液の初期溶存酸素濃度は6000ppbであった。
【0136】
(表面粗さの測定)
SAM形成前の基板、並びに実施例1及び比較例1に係る各基板サンプルに於いて、中心線平均粗さRa及び最大高さRmaxをそれぞれ測定した。測定には、AFM(原子間力顕微鏡、商品名:Dimension ICON-PT型、ブルカージャパン株式会社製)を用いた。またRaの測定は、
図8に示すように、Cu膜が形成されたNo.1~3の金属膜形成領域の3点を測定し、それらの平均値を算出した。Rmaxの測定は、
図8に示すように、金属膜形成領域及び金属膜非形成領域の延在方向に対し直角となるNo.1~3の領域の3点を測定し、それらの平均値を算出した。結果を表1に示す。尚、
図8は、本発明の実施例1に係る基板サンプルの表面状態を表す電子顕微鏡写真である。
【0137】
【0138】
表1から分かる通り、比較例1では溶存酸素濃度が6000ppbの処理液を用いてSAMを形成したことにより、SAM形成前の基板と比較して、Cu膜表面の中心線平均粗さRaの値が大きくなっていることが確認された。また、最大高さRmaxの値も大きくなっており、Cu膜とSiO2膜との間の段差が拡大していることが確認された。その一方、実施例1では、溶存酸素濃度を100ppbに低減した処理液を用いてSAMを形成したため、SAM形成前の基板や比較例1に係る基板と比較して、Cu膜表面の中心線平均粗さRaの値を低減させることができた。さらに、最大高さRmaxの値も、SAM形成前の基板及び比較例1に係る基板と比較して低減しており、Cu膜とSiO2膜との間の段差が縮小していることが確認された。これにより、Cu膜表面にSAMを成膜する際に、溶存酸素濃度を低減した処理液を用いることにより、Cu膜が酸化してエッチングされるのを抑制できることが確認された。