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▶ ケアストリーム・デンタル・テクノロジー・トプコ・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014295
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】頭部計測解析のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A61B6/14 310
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192684
(22)【出願日】2022-12-01
(62)【分割の表示】P 2019535892の分割
【原出願日】2017-12-22
(31)【優先権主張番号】15/395,190
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517429282
【氏名又は名称】ケアストリーム・デンタル・テクノロジー・トプコ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イングレーゼ ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】チェン ショウプ
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】トレイル ジャック
(57)【要約】
【課題】治療計画立案の方向付けを促進することができ、継続中の治療の様々な段階における患者の経過の追跡を促進する頭部計測結果を生成し、報告する解析ユーティリティを提供する。
【解決手段】患者の3D頭部計測解析のための方法は、少なくとも第1の2Dビューからの患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査からの復元体積画像データを表示し、また、表示された少なくとも第1の2Dビュー上に少なくとも1つの基準マークを位置決めし、表示するオペレータ命令を受け取る。患者の口内の1つ以上の歯列要素がセグメント化され、また、少なくとも1つの基準マーク及び1つ以上のセグメント化された歯列要素からのデータに従って、患者のための頭部計測パラメータが計算され、表示される。計算された頭部計測パラメータを使用して、顎骨顔面非対称性を示す1つ以上の結果が計算され、非対称性を示す計算結果を示すために図形又はテキスト表示が起動される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にコンピュータプロセッサ上で実行される、患者の3D頭部計測解析のための方法であって、
少なくとも第1の2Dビュー又は3Dビューからの患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査からの復元体積画像データを表示するステップと、
表示された前記少なくとも第1の2Dビュー又は3Dビュー上に少なくとも1つの基準マークを位置決めし表示するオペレータ命令を受け取るステップと、
前記患者の口内の1つ以上の歯列要素をセグメント化するステップと、
前記少なくとも1つの基準マーク及び前記1つ以上のセグメント化された歯列要素からのデータに従って、前記患者のための複数の解剖学上の頭部計測パラメータ及び複数の被誘導頭部計測パラメータを計算し、表示するステップと、
前記計算された頭部計測パラメータを使用して、顎骨顔面非対称性を示す1つ以上の結果を計算するステップと、
顎骨顔面非対称性を示す計算結果を示すために図形又はテキスト表示を起動するステップであって、前記表示が、選択された異なる顎骨顔面非対称前後関係、非対称垂直方向関係及び非対称横方向関係を表す複数の計算結果、並びに、前記顎骨顔面非対称前後関係、前記非対称垂直方向関係、及び前記非対称横方向関係の少なくとも2つを組み合わせることで決定される非対称グローバルスコアを含む、ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の頭部計測パラメータが、前頭ビュー又は矢状ビューからの非対称性を図形的に示す、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記計算された結果を予め計算済みの結果と比較するステップと、
前記比較に関連するメッセージを表示するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記基準マークのうちの1つ以上を、前記第1の2Dビューに対して実質的に直角である第2の2Dビュー上に表示するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
複数の頭部計測パラメータを計算し、表示するステップが、前記計算された頭部計測パラメータに関連する3次元フレームワークを生成するステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記計算された結果を示すステップが、前記計算された結果のうちの1つ以上を患者母集団の試料から計算された値に対して評価するステップを含み、
前記少なくとも1つの基準マークが前記患者の前記口の外部に存在する解剖学的特徴を識別する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の入力の各々に対する前記計算された頭部計測パラメータからの計算に従って表報告書を生成し、表示するステップと、
をさらに含み、
前記複数の入力の前記各々が、前記複数の入力の前記各々に対応する前記表報告書中のセルのうちの1つのアクティブセルに対応する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの基準マーク及び顎骨顔面非対称性を示す前記計算された結果を示す図形プロットを表示するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記表示される図形プロットが矢状ビューからの計算結果を示し、
前記1つ以上の結果が歯の偏位を示す、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも第1の2Dビュー又は3Dビューからの患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査からの復元体積画像データを表示することと、
前記患者の口内の1つ以上の歯列要素をセグメント化することと、
少なくとも1つの顎骨顔面基準マーク及び前記1つ以上のセグメント化された歯列要素からのデータに従って、前記患者のための複数の解剖学上の頭部計測パラメータ及び複数の被誘導頭部計測パラメータを計算し、表示することと、
前記計算された頭部計測パラメータを使用して、顎骨顔面非対称性を示す1つ以上の結果を計算することと、
非対称性を示す計算結果を示すために図形又はテキスト表示を起動し、顎骨顔面非対称性を示す前記計算結果を示すために図形又はテキスト表示を起動することであって、前記表示が、選択された異なる顎骨顔面非対称前後関係、非対称垂直方向関係及び非対称横方向関係を表す複数の計算結果、並びに、前記顎骨顔面非対称前後関係、前記非対称垂直方向関係、及び前記非対称横方向関係の少なくとも2つを組み合わせることで決定される非対称グローバルスコアを含む、起動することと、
を行うための符号化された命令を使用して構成されることを特徴とする論理プロセッサ。
【請求項11】
請求項10に記載の論理プロセッサであって、
複数のネットワークを有する解析エンジンモデルを使用して頭部計測パラメータのために構成される、
ことを特徴とする論理プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、X線コンピュータ断層撮影法における画像処理に関し、詳細には、3次元頭部計測解析のための3Dデータの獲得に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部計測解析は、頭部の歯と骨格の関係の研究であり、患者の改善された治療のための評価及び計画立案ツールとして歯科医及び矯正歯科医によって使用されている。従来の頭部計測解析は、治療に先立って顔面の特徴及び異常を診断するために、あるいは治療の経過を評価するために、2D頭部計測X線像における骨組織及び軟組織標識を識別している。
【0003】
例えば、頭部計測解析で識別することができる優勢な異常は、上顎骨と下顎骨の間の骨格関係に関連する咬合異常の前後問題である。咬合異常は、上顎第1臼歯の相対位置に基づいて分類される。分類Iの中性咬合の場合、臼歯関係は正常であるが、他の歯は、間隔、密集又は高位咬合あるいは下位咬合などの問題を抱えている可能性がある。分類IIの遠心咬合の場合、上顎第1臼歯の近心頬側咬頭は、第1下顎骨臼歯と第2小臼歯の間に静止している。分類IIIの近心咬合の場合、上顎第1臼歯の近心頬側咬頭は、下顎骨第1臼歯の近心頬側溝の後方である。
【0004】
「Cephalometrics in Clinical Practice」(チャールズ H.(Charles H.)Tweed Foundation for Orthodontic Research、1956年10月、頁8~29に記載されている文書)という名称の論文でスタイナ(Steiner)によって記述されている従来の例示的2D頭部計測解析方法は、角測度を使用して、頭蓋底に対する関係で上顎骨及び下顎骨を評価している。記述されている手順では、スタイナ(Steiner)は、Nasion、Point A、Point B及びSellaの4つの標識を選択している。Nasionは、頭骨の前頭骨と2つの鼻骨の交点である。Point Aは、上顎骨の歯槽基底の前方限界と見なされる。Point Bは、下顎骨の歯槽基底の前方限界と見なされる。Sellaは、トルコ鞍の中間点に位置している。角度SNA(SellaからNasionまで、次にPoint Aまで)を使用して、上顎骨が頭蓋底の前方に位置しているか、あるいは後方に位置しているかどうかが決定され、約82度の読値は正常と見なされる。角度SNB(SellaからNasionまで、次にPoint Bまで)を使用して、下顎骨が頭蓋底の前方に位置しているか、あるいは後方に位置しているかどうかが決定され、約80度の読値は正常と見なされる。
【0005】
歯科矯正学における最近の研究は、従来の2D頭部計測解析を使用して提供される結果には、しつこい不正確性及び矛盾が存在していることを示している。注目に値する1つの研究は、Angle Orthodontics、2008年9月、頁873~879における、バンダナカーマ(Vandana Kumar)らによる、「In vivo comparison of conventional and cone beam CT synthesized cephalograms」という名称である。
【0006】
データ収集における基本的な限界のため、従来の2D頭部計測解析は、主として美学に的が絞られており、ヒトの顔についての平衡及び対称性には無関心である。World Journal of Orthodontics、頁1~6における、トレイル(Treil)らによる、「The human face as a 3D model for cephalometric analysis」という名称の論文で言及されているように、平面幾何学は、解剖学的体積及びそれらの成長を解析するためには不適切であり、解剖学的顎骨顔面複合体を適切に解析することができるのは3D診断のみである。正常な関係は、もう2つの重要なアスペクト、すなわち平衡及び対称性を有しており、モデルの平衡及び対称性が安定している場合、これらの特性は、各個人に対して、いわゆる正常性を定義する。
【0007】
タンケイ(Tuncay)らに対する、「System and method of digitally modeling craniofacial features for the purposes of diagnosis and treatment predictions」という名称の米国特許第6,879,712号は、頭蓋顔面特徴のコンピュータモデルを生成する方法を開示している。レーザ走査及びデジタル写真を使用して3次元顔面特徴データが獲得され、歯の特徴は、歯を物理的にモデル化することによって獲得される。モデルはレーザ走査される。次にX線像から骨格の特徴が獲得される。データは、操作することができ、また、3次元で観察することができる単一のコンピュータモデルに結合される。また、モデルは、現在モデル化された頭蓋顔面特徴と理論上の頭蓋顔面特徴の間のアニメーションのための能力を同じく有している。
【0008】
サクデバ(Sachdeva)らに対する、「Method and apparatus for simulating tooth movement for an orthodontic patient」という名称の米国特許第6,250,918号は、実際の歯科矯正構造の3Dデジタルモデル及び所望の歯科矯正構造の3Dモデルから、運動の3D直接経路を決定する方法を開示している。この方法は、レーザ走査された歯冠、及びスケーリングのための歯の表面のマーカーを使用して、個々の歯の対応する3次元直接経路に基づいて歯の運動を模擬する。記述されている方法を使用した歯全体の真の3Dデータは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,879,712号明細書
【特許文献2】米国特許第6,250,918号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】スタイナ、「Cephalometrics in Clinical Practice」(チャールズ H.(Charles H.)Tweed Foundation for Orthodontic Research、1956年10月、頁8~29
【非特許文献2】バンダナカーマら、「In vivo comparison of conventional and cone beam CT synthesized cephalograms」、Angle Orthodontics、2008年9月、頁873~879
【非特許文献3】トレイルら、「The human face as a 3D model for cephalometric analysis」、World Journal of Orthodontics、頁1~6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
測値の入力を自動化し、また、このような測値に基づく頭蓋顔面特徴のための生物測定学データの計算を自動化する技法の開発に向かって重要な進歩がなされているが、改善の余地がまだまだ残されている。既存のツールの利点を考慮しても、開業医には、生物測定学データを有効に使用するための十分な訓練が必要である。測定され、また、計算されるデータの相当な量は、治療計画を開発し、維持するタスクを複雑にし、また、人間による見落し及び誤りの危険を増加させ得る。
【0012】
したがって治療計画立案の方向付けを促進することができ、また、継続中の治療の様々な段階における患者の経過の追跡を促進することができる頭部計測結果を生成し、報告する解析ユーティリティの開発には、とりわけ価値があることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の目的は、頭部計測解析のための3D解剖学的データを獲得するための改善された方法の必要性に対処することである。この目的を念頭において、本開示は3D頭部計測解析のための方法を提供し、方法は、少なくとも部分的にコンピュータプロセッサ上で実行され、また、患者の3D頭部計測解析のための方法を含み、方法は、少なくとも部分的にコンピュータプロセッサ上で実行され、また、少なくとも第1の2Dビューからの患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査からの復元体積画像データを表示するステップと、表示された少なくとも第1の2Dビュー上に少なくとも1つの基準マークを位置決めし、表示するオペレータ命令を受け取るステップと、患者の口内の1つ以上の歯列要素をセグメント化するステップと、少なくとも1つの基準マーク及び1つ以上のセグメント化された歯列要素からのデータに従って、患者のための複数の頭部計測パラメータを計算し、表示するステップと、計算された頭部計測パラメータを使用して、顎骨顔面非対称性を示す1つ以上の結果を計算するステップと、顎骨顔面非対称性を示す計算結果を示すために図形又はテキスト表示を起動するステップとを含む。
【0014】
本開示の特徴は、解剖学的特徴を示す基準マークの位置を識別するためのオペレータとの対話である。
【0015】
本開示の実施形態は、互いに作用し合う方法で、システムの人間オペレータの技能と、特徴識別のためのコンピュータ能力とを統合する。これには、人間の創造性の技能、発見的方法の使用、柔軟性及び判断を利用し、計算の速度、徹底的で、かつ、正確な処理のための能力、及び報告並びにデータアクセス能力などのコンピュータの利点とのこれらを結合する。
【0016】
本開示のこれら及び他の態様、目的、特徴並びに利点は、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を精査し、また、添付の図面を参照することによってより明確に理解され、かつ、認識されよう。
【0017】
本発明の以上及び他の目的、特徴並びに利点は、添付の図面に図解されている本開示の実施形態についての以下のより特定の説明から明らかになるであろう。図面の要素は、互いに対して必ずしもスケール通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】頭部計測解析を提供するための画像化システムを示す略図である。
図2】本開示の実施形態による3D頭部計測解析のためのプロセスを示す論理流れ図である。
図3】3Dレンダー化CBCT頭部体積画像を示す図である。
図4】歯をセグメント化した後の3Dレンダー化歯体積画像を示す図である。
図5】CBCT頭部体積画像の3面図及びオペレータ入力基準マークを表示するユーザインタフェースを示す図である。
図6】一組の3D基準マークが表示された3Dレンダー化CBCT頭部体積画像を示す図である。
図7A】頭部計測解析のためのフレームワークを提供する識別された解剖学的特徴を示す斜視図である。
図7B】頭部計測解析のためのフレームワークを提供する識別された解剖学的特徴を示す斜視図である。
図7C】頭部計測解析のためのフレームワークを提供する識別された解剖学的特徴を示す斜視図である。
図8】頭部計測解析のために使用されるフレームワークを生成するオペレータ命令を受け取るためのステップを示す論理流れ図である。
図9A】オペレータ入力基準マークを使用して解剖学的特徴の位置を指定するためのオペレータインタフェースを示す図である。
図9B】オペレータ入力基準マークを使用して解剖学的特徴の位置を指定するためのオペレータインタフェースを示す図である。
図9C】オペレータ入力基準マークを使用して解剖学的特徴の位置を指定するためのオペレータインタフェースを示す図である。
図10A】様々な被誘導パラメータが体積画像データ及び対応するオペレータ入力基準マークを使用して計算される様子を示すグラフである。
図10B】様々な被誘導パラメータが体積画像データ及び対応するオペレータ入力基準マークを使用して計算される様子を示すグラフである。
図10C】様々な被誘導パラメータが体積画像データ及び対応するオペレータ入力基準マークを使用して計算される様子を示すグラフである。
図10D】様々な被誘導パラメータが体積画像データ及び対応するオペレータ入力基準マークを使用して計算される様子を示すグラフである。
図10E】様々な被誘導パラメータが体積画像データ及び対応するオペレータ入力基準マークを使用して計算される様子を示すグラフである。
図11】セグメント化された歯データからの多数の被誘導頭部計測パラメータを示す3Dグラフである。
図12】セグメント化された歯データからの被誘導頭部計測パラメータを示す2Dグラフである。
図13】セグメント化された歯データからの被誘導頭部計測パラメータを示す別の3Dグラフである。
図14】セグメント化された歯データからの被誘導頭部計測パラメータ及び治療パラメータを示すグラフである。
図15】システムによって歯排除が学習される様子を示す3Dグラフである。
図16A】デジタル模型の歯を示す斜視図である。
図16B】上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示す3Dグラフである。
図17A】特定の歯構造に対する平行を示すグラフである。
図17B】特定の歯構造に対する平行を示すグラフである。
図18A】歯が欠損したデジタル模型の歯を示す斜視図である。
図18B図18Aの例に対する上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示すグラフである。
図19A】特定の歯構造に対する平行の不足を示すグラフである。
図19B】特定の歯構造に対する平行の不足を示すグラフである。
図20A】歯排除を有するデジタル模型の歯を示す斜視図である。
図20B図20Aの例に対する上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示すグラフである。
図21A】欠損歯に対する歯排除を示す例である。
図21B図21Aの例に対する上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示すグラフである。
図22A】欠損歯に対する歯排除を示す例である。
図22B図22Aの例に対する上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示すグラフである。
図23A】特定の歯の排除の結果を示す画像である。
図23B図23Aの例に対する上顎及び下顎のための慣性系の計算された軸を示すグラフである。
図24】DOL基準系の多数の標識及び座標軸すなわちベクトルを示す図である。
図25】DOL基準系の代替空間への標識再マッピングを示す図である。
図26】側面図から、この再マッピングを使用した変換済み歯慣性系を有する例を示す図である。
図27】本開示の実施形態による解析エンジンのための独立ネットワークを示す略図である。
図28】本開示の実施形態による解析エンジンのための依存すなわち結合されたネットワークを示す略図である。
図29図27の独立ネットワーク配置を使用したアルゴリズムのための疑似コードを示す図である。
図30図28の依存ネットワーク配置を使用したアルゴリズムのための疑似コードを示す図である。
図31A】数値及びそれらの解釈として例示的パラメータを列挙したものである。
図31B】特定の患者に対する、本出願の例示的実施形態による、例示的総顎骨顔面非対称性パラメータに基づく、顎骨顔面非対称性に対する数値及びそれらの解釈として例示的パラメータを列挙したものである。
図31C】特定の患者に対する、本出願の例示的実施形態による、例示的総顎骨顔面非対称性パラメータに基づく、顎骨顔面非対称性に対する数値及びそれらの解釈として例示的パラメータを列挙したものである。
図31D】特定の患者に対する、本出願の例示的実施形態による、例示的総顎骨顔面非対称性パラメータに基づく、顎骨顔面非対称性に対する数値及びそれらの解釈として例示的パラメータを列挙したものである。
図32A】特定の例に対する例示的作表結果を咬合解析及びアーチ角特性と共に示す図である。
図32B】上切歯及び下切歯のトルクの特定の例に対する例示的作表結果を示す図である。
図32C】別の例に対する例示的作表結果を重後退又は重突出の評価と共に示す図である。
図32D】特定の患者の頭部計測解析に対する結果の例示的要約リストを示す図である。
図32E図35に列挙されている状態のうちの1つに対する詳細なリストを示す図である。
図33】システム表示を、解析結果に基づく推奨メッセージと共に示す図である。
図34】システム表示を、解析結果を補助するためのグラフ描写と共に示す図である。
図35】本開示の実施形態による非対称性に対する例示的報告書を示す図である。
図36】正面図における患者の相対左右非対称性を示すグラフである。
図37】患者の顔の左側及び右側の相対重畳を示すグラフである。
図38】顔面開散を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態についての以下の詳細な説明では、連続する図における全く同じ要素には同じ参照番号が割り当てられている図が参照されている。これらの図は、本発明の実施形態による総合的な機能及び関係を例証するために提供されたものであり、実際のサイズ又はスケールを表すことを意図して提供されたものではないことに留意されたい。
【0020】
「第1の」、「第2の」、「第3の」、等々という用語は、それらが使用されている場合、必ずしも何らかの順序、あるいは何らかの優先関係を表しているわけではなく、ある要素又は時間インターバルを別の要素又は時間インターバルからより明確に区別するために使用され得る。
【0021】
本開示の文脈においては、「画像」という用語は、離散画像要素から構成される多次元画像データを意味している。2D画像の場合、離散画像要素はピクチャ要素すなわちピクセルである。3D画像の場合、離散画像要素は体積画像要素すなわちボクセルである。「体積画像」という用語は、「3D画像」という用語と同義語と見なされる。
【0022】
本開示の文脈においては、「コード値」という用語は、個々の2D画像ピクセル、又はそれに応じて個々の体積画像データ要素、すなわち復元された3D体積画像におけるボクセルと関連付けられる値を意味している。コンピュータ断層撮影法(CT)又はコーンビームコンピュータ断層撮影法(CBCT)画像のためのコード値は、常にではないが、個々のボクセルの減衰係数に関する情報を提供するハウンスフィールド単位で表されることがしばしばである。
【0023】
本開示の文脈においては、「幾何プリミティブ」という用語は、長方形、円、線、トレース曲線又は他のトレースパターンなどの開いた、又は閉じた形状に関連している。「標識」及び「解剖学的特徴」という用語は、表示される患者解剖学の特定の特徴と等価であると見なされ、それを意味している。
【0024】
本開示の文脈においては、「観察者」、「オペレータ」及び「ユーザ」という用語は、観察する開業医、又は歯の画像などの画像をディスプレイモニタ上で観察し、操作する他の個人と等価であると見なされ、それを意味している。「オペレータ命令」又は「観察者命令」は、コンピュータマウス又はタッチスクリーンあるいはキーボード入力などを使用して観察者によって入力される明確なコマンドから獲得される。
【0025】
表示された特徴に対する「強調」という用語は、情報及び画像表示技術の技術者に理解されるその従来の意味を有している。一般に、強調は、何らかの形態の局所表示拡張を使用して観察者の注意を引き付ける。例えば個体臓器、骨又は構造、あるいは1つの室から次の室への経路などの画像の一部の強調は、それらに限定されないが、注釈を付けること、近傍又は重畳記号を表示すること、他の画像又は情報内容とは異なる色又は著しく異なる強度あるいはグレースケール値で表示に輪郭を付けるか、又は追跡すること、表示の一部の明滅又はアニメーション、あるいはより高い鮮鋭度又はコントラストでの表示を含む多くの方法のうちの任意の方法で達成することができる。
【0026】
本開示の文脈においては、「被誘導パラメータ」という記述的用語は、獲得されたデータ値又は入力されたデータ値の処理から計算された値に関連している。被誘導パラメータは、スカラー、点、線、体積、ベクトル、平面、曲線、角度値、画像、閉じた輪郭、面積、長さ、行列、テンソル又は数学的表現式であってもよい。
【0027】
本明細書において使用されている「セット」という用語は、セットの要素又は部材の集合の概念は初等数学において広く理解されているため、空ではないセットを意味している。「サブセット」という用語は、そうではないことが明確に言及されていない限り、本明細書においては空ではない固有サブセット、すなわち1つ以上の部材を有するより大きいセットのサブセットを意味するべく使用されている。セットSの場合、サブセットは完全なセットSを備えることができる。しかしながらセットSの「固有サブセット」は、厳密にセットSに含まれており、セットSの少なくとも1つの部材を排除する。あるいはより形式的に記述すると、本開示においてこの用語が使用されている場合、サブセットBは、(i)サブセットBが空ではない場合、また、(ii)B∩Sが同じく空ではなく、また、サブセットBがさらにセットSに存在する要素のみを含み、かつ、セットSの基数未満である基数を有している場合、セットSの固有サブセットであると見なすことができる。
【0028】
本開示の文脈においては、「平面図」又は「2Dビュー」は、2次元(2D)表現、すなわち水平面の位置からの3次元(3D)対象の該対象を介した投影である。この用語は、特定の透視法からの3D体積画像データ内からの2D平面状表現の表示を記述するために従来から使用されている「画像スライス」という用語と同義語である。3D体積データの2Dビューは、その2Dビューが取られた対応する平面が互いに90(+/-10)度で配置されるか、あるいは互いに90度の整数n倍(n*90度+/-10度)で配置されると、実質的に直交していると見なされる。
【0029】
本開示の文脈においては、「歯列要素」という一般用語は、歯、義歯及びインプラントなどの補綴デバイス、並びに顎を含む歯及び関連する補綴デバイスのための支持構造に関連している。
【0030】
本開示の主題は、デジタル画像処理及びコンピュータビジョン技術に関しており、コンピュータビジョン技術は、デジタル画像からのデータをデジタル処理し、それにより人間が理解することができる対象、属性又は状態を認識し、延いてはそれらに有用な意味を割り当て、次に、デジタル画像のさらなる処理で得られた結果を利用する技術を意味するものとして理解されている。
【0031】
背景技術の節で既に言及したように、従来の2D頭部計測解析には多くの重大な欠点がある。患者の頭部をセファロスタット又は他の測定デバイスの中心に置くことは困難であり、再現性を期待することは不可能である。得られる2次元X線像は、3D画像と比較すると重畳した頭部解剖学的画像をもたらす。標識を頭部描写図の上に配置することは場合によっては困難であり、また、結果は一致しないことがしばしばである(カリン・カレルス(Carine Carels)、ガイ・ウィレムス(Guy Willems)、Leuven University Press編集、1998年、頁181~192、The Future of Orthodonticsにおける、P. プランシェ(P. Planche)及びJ. トレイル(J. Treil)による、「Cephalometrics for the next millennium」という名称の論文を参照されたい)。治療計画を開発し、追跡する仕事は、一部には、収集され、また、計算される頭部計測データの量が著しく大量であるため、複雑である。
【0032】
本開示の実施形態は、頭部計測解析における3D解剖学的特徴点、これらの特徴点から誘導されたパラメータ、及びこれらの誘導されたパラメータの使用方法の選択の点でTreilの理論を利用している。トレイル(Treil)によって著述された参考刊行物は、World Journal of Orthodontics、2005年、Supplement、Vol. 6、issue 5、頁33~38における「The Human Face as a 3D Model for Cephalometric Analysis」ジャック・トレイル(Jacques Treil)、B, ウェイセンソン(B, Waysenson)、J. ブラガ(J. Braga及びJ. カステート(J. Casteigt)、及びSeminars in Orthodontics、Vol. 15、No. 1、2009年3月における、J. トレイル(J. Treil)、J. ブラガ(J. Braga)、J.-M. ルーブス(J.-M. Loubes)、E. マザ(E. Maza)、J.-M. イングレス(J.-M. Inglese)、J. カステート(J. Casteigt)及びB. ウェイセンソン(B. Waysenson)による「3D Tooth Modeling for Orthodontic Assessment」を含む。
【0033】
図1の略図は、3D CBCT頭部計測画像化のための画像化装置100を示したものである。患者12を画像化するために、画像化装置100を使用して複数の2D投影の連続画像が獲得され、処理される。コラム118の上に回転式マウント130が提供されており、好ましいことには高さを調整して患者12のサイズに合わせることができる。マウント130は、X線源110及び放射線センサ121を患者12の頭部のそれぞれ反対側に維持し、また、回転させてX線源110及びセンサ121を頭部の周りを走査パターンで旋回させる。マウント130は、患者の頭部の中心部分に対応する軸Qの周りを回転し、したがってマウント130に取り付けられた構成要素が頭部の周りを旋回する。デジタルセンサであるセンサ121は、マウント130の、CBCT体積画像化に適した放射パターンを放出するX線源110とは反対側に結合されている。頤レストすなわちバイト要素などの任意選択の頭部サポート136は、画像収集中における患者の頭部の安定化を提供している。コンピュータ106は、オペレータコマンドを受け取るため、及び画像化装置100によって獲得された歯科矯正学画像データの体積画像を表示するためのオペレータインタフェース104及びディスプレイ108を有している。コンピュータ106は、画像データを獲得して、X線源110を制御し、また、任意選択でマウント130構成要素のための回転アクチュエータ112を制御するための信号を提供するためにセンサ121と信号通信している。また、コンピュータ106は、画像データを記憶するためのメモリ132と同じく信号通信している。任意選択のアライメント装置140は、画像化プロセスのための患者の頭部の適切な整列を補助するために提供されている。
【0034】
図2の論理流れ図を参照すると、本開示の実施形態による歯CBCT体積を使用した3D頭部計測解析のための歯科矯正学データを獲得するために使用されるステップのシーケンス200が示されている。CBCT体積画像データは、データ収集ステップS102でアクセスされる。体積は、1つ以上の2D画像のための画像データ(又は等価的にはスライス)を含む。元の復元CT体積は、複数の2D投影又はCTスキャナから得られる副鼻腔撮影図を使用している標準復元アルゴリズムを使用して形成される。一例として図3は、骨解剖学、軟組織及び歯を含む例示的歯CBCT体積202を示したものである。
【0035】
図2のシーケンスを継続すると、セグメント化ステップS104で、歯CBCT体積202に3D歯セグメント化アルゴリズムを適用することによって3D歯列要素データが収集される。歯及び関連する歯列要素のためのセグメント化アルゴリズムは、歯画像化技術では周知である。例示的歯セグメント化アルゴリズムは、例えば、同一出願人による、チェン(Chen)らによる「PANORAMIC IMAGE GENERATION FROM CBCT DENTAL IMAGES」という名称の米国特許出願公開第2013/0022252号、チェン(Chen)らによる「METHOD AND SYSTEM FOR TOOTH SEGMENTATION IN DENTAL IMAGES」という名称の米国特許出願公開第2013/0022255号、及びチェン(Chen)による「METHOD FOR TOOTH DISSECTION IN CBCT VOLUME」という名称の米国特許出願公開第2013/0022254号に記載されており、その全体を本明細書に引用して援用する。
【0036】
図4に示されているように、歯セグメント化結果は、画像302を使用してレンダー化され、歯は全体としてレンダー化されるが、個々にセグメント化される。個々の歯は、歯体積、例えば歯体積304と呼ばれる個別の実体である。
【0037】
セグメント化された歯の個々の歯、又はより広義にはセグメント化された個々の歯列要素は、最低でも、セグメント化された歯列要素内のボクセル毎の3D位置座標、及びセグメント化された要素内のボクセルの各々のコード値リストを含む3D位置リストを有している。この点において、ボクセル毎の3D位置は、CBCT体積座標系に対して画定される。
【0038】
図2のシーケンスにおける基準マーク選択ステップS106で、異なるビュー角度に対して獲得された2つ以上の異なる2Dビューを使用してCBCT体積画像が表示される。異なる2Dビューは、例えば異なる角度であってもよく、また、異なる画像スライスであっても、あるいは正射影又は実質的に正射影投影であっても、あるいは斜視図であってもよい。本開示の実施形態によれば、3つのビューは互いに直交している。
【0039】
図5は、3つの直交2Dビューを示す表示インタフェース402を使用した例示的フォーマットを示したものである。表示インタフェース402では、画像404は、CBCT体積画像202(図3)の軸方向の2Dビューのうちの1つであり、画像406は、CBCT体積画像202の歯冠側2Dビューのうちの1つであり、また、画像408は、CBCT体積画像202の矢状2Dビューのうちの1つである。この表示インタフェースにより、開業医又は技術者などの観察者は、複数の3D頭部計測解析タスクを達成するために様々な画像処理/コンピュータアルゴリズムを実行するコンピュータシステムと対話することができる。観察者対話は、引き続いてより詳細に説明される対話のための、コンピュータマウス、ジョイスティック又はタッチパッドなどのポインタの使用、又はアクションを選択し、あるいは画像の座標を指示するためのタッチスクリーンの使用などの、ユーザインタフェース技術の技術者に知られている多くの形態のうちの任意の形態を取ることができる。
【0040】
3D頭部計測解析タスクの1つは、図2の3D基準マーク選択ステップS106における自動識別を実施することである。あるタイプの3D標識又は表示された画像上で観察者によって識別される特徴点と等価である3D基準マークは、図5の表示インタフェース402の互いに異なる直交2Dビューに示されている。図5に示されている例示的3D解剖学的基準マークは、基準マーク414における下部鼻骨口蓋孔である。図6のビューに示されているように、表示された画像502上で観察者によって示すことができる他の解剖学的基準マークは、基準マーク508及び510に眼窩下の孔を含み、また、基準マーク504及び506に槌骨を含む。
【0041】
図2のステップS106で、観察者は、ポインティングデバイス(例えばマウス又はタッチスクリーンなど)を使用して、あるタイプの幾何プリミティブとして基準マークを3つのビューのうちの任意のビューの適切な位置に置く。本明細書において図に示されている本開示の実施形態によれば、基準マークは円として表示される。観察者は、例えば図5の表示インタフェーススクリーンを使用して、画像404として示されているビュー中の位置414に基準点のための基準マークとして小さい円を置く。基準マーク414は、画像404中に小さい円として表示されるだけでなく、画像406及び408中の対応するビュー中の適切な位置にも表示される。観察者に必要なことは、表示されたビュー404、406又は408のうちの1つの中に基準マーク414の位置を指示することだけであることに留意することは有益であり、システムは、同じ基準マーク414を患者解剖学の他のビューの中に示すことによって応答する。したがって観察者は、目視が最も容易なビューの中で基準マーク414を識別することができる。
【0042】
基準マーク414を入力すると、ユーザは、表示されたビューのうちの任意のビュー上の基準マーク414の位置を調整するために、キーボード又は表示されたアイコンなどのオペレータインタフェースツールを使用することができる。また、観察者は、入力された基準マークを除去して新しい基準マークを入力するオプションを同じく有している。
【0043】
表示インタフェース402(図5)は、表示されたビューのうちの任意のビュー又はすべてのビューの大きさを変更するためのズームイン/アウトユーティリティを提供する。したがって観察者は、異なる画像を有効に操作して基準マークの位置決めを改善することができる。
【0044】
3D画像内容のビュー上の出現を参照し、また、それを使用してなされた基準マークの収集は、患者の頭部の形状及び構造をより正確に特性化するために使用することができる一組の頭部計測パラメータを提供する。頭部計測パラメータは、患者の頭部の特定の特徴に対する基準マーク入力によって直接的に提供される座標情報を含む。また、頭部計測パラメータは、座標又は幾何構造として直接的に入力されず、「被誘導頭部計測パラメータ」と呼ばれる、座標情報から誘導される患者の頭部の解剖学の様々な測定可能特性に関する情報を同じく含む。被誘導頭部計測パラメータは、相対サイズ及び体積、対称性、配向、形状、運動経路及び運動の可能範囲、慣性の軸、質量の中心及び他のデータに関する情報を提供することができる。本開示の文脈においては、「頭部計測パラメータ」という用語は、基準マークなどによって直接的に識別されるパラメータ、又は基準マークに従って計算される被誘導頭部計測パラメータのいずれかに適用される。例えば特定の基準点は、それらの対応する基準マークによって識別されるため、フレームワーク接続線522は、図6により明確に示されているように、基準点を結合して総合特徴を適切に特性化するために構築されている。フレームワーク接続線522は、3D空間におけるベクトルと見なすことができ、それらの寸法及び空間特性は、歯科矯正学及び他の目的のための計算に使用することができる追加体積画像データを提供する。
【0045】
個々の基準マーク414、504、506、508、510は、画像処理装置100のコンピュータ106によって体積データ内で自動的に生成される、1つ以上のフレームワーク接続線522のための終端点であり、後続する解析及び測定処理を容易にするフレームワークを形成している。図7A、7B及び7Cは、異なる斜視図から表示された3D画像502a、502b及び502cに対する、頂点に基準点を有する選択された基準点のフレームワーク520が総合頭部構造の寸法アスペクトの画定を補助する様子を示したものである。本開示の実施形態によれば、オペレータ命令は、オペレータによる、図5に示されている2Dビューと同様の2Dビューと、図6に示されている体積表現との間の切換えを、患者の頭部のボクセルに対する部分的透明性で許容する。これは、オペレータによる、基準マーク配置及び接続線配置に対する多くの角度からの調査を可能にし、基準マーク位置の調整を表示されたビューのうちの任意のビュー上で実施することができる。さらに、本開示の実施形態によれば、オペレータは、特定の基準マークのためのより正確な座標を打ち込むことができる。
【0046】
図8の論理流れ図は、基準マークを入力し、識別するためのオペレータ命令、及び画像データ及び基準マークに従って計算されたパラメータを提供するためのオペレータ命令を受け取り、処理するためのシーケンスにおけるステップを示したものである。表示ステップS200は、例えば患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査から復元された3D画像データの1つ以上の2Dビューを互いに直角の角度などの異なる角度から表示する。任意選択の作表ステップS210で、システムは、表リスト、一連のプロンプト、又は復元された3D画像中の多数の標識又は解剖学的特徴のための位置データの入力を必要とする、数値入力のためのラベルが付された欄の連続などのテキスト作表を提供する。この作表は、引き続いて説明されるように、ユーザインタフェースプロンプト又はメニュー選択の形態で明確にオペレータに提供することができる。別法としては、作表はそれとなく定義することも可能であり、したがってオペレータは、特定のシーケンスに従って位置情報を入力する必要はない。異なる解剖学的特徴のためのx、y、z位置データを与える基準マークは、記録ステップS220で入力される。解剖学的特徴は、患者の口内又は口外に位置することができる。本開示の実施形態は、ステップS220で入力された、ディスプレイ上で識別された解剖学的特徴、及び図2を参照して上で言及した、歯及び他の歯列要素のために自動的に生成されたセグメント化データの組合せを使用することができる。
【0047】
図8の記録ステップS220で、システムは、解剖学の個々の標識特徴に対応する基準マークを配置するオペレータ命令を受け取る。基準マークは、第1の2Dビュー上又は第2の2Dビュー上のいずれか、あるいは3つ以上のビューが提示されている場合、他のビューのうちの任意のビュー上でオペレータによって入力され、また、入力に引き続いて、表示されたビューの個々のビュー上に表示する。識別ステップS230は、入力された基準マークに対応する解剖学的特徴又は標識を識別し、また、任意選択でオペレータ入力の精度を検証する。所与のオペレータ入力が特定の解剖学的特徴のための基準マークの位置を正確に識別する可能性を決定するために比例値が計算される。例えば眼窩下の孔は、典型的には口蓋孔から一定の距離範囲内に存在しており、システムは、入力された距離をチェックし、対応する基準マークが適切に配置されていることが明らかではない場合、オペレータに通知する。
【0048】
図8のシーケンスを継続すると、構築ステップS240で、基準マークを接続してフレームを生成するためのフレームワーク接続線が生成される。次に、計算及び表示ステップS250が実行され、配置された基準マークに従って1つ以上の頭部計測パラメータが計算される。次に、計算されたパラメータがオペレータに表示される。
【0049】
図9A、9B及び9Cは、ディスプレイ108上に出現するオペレータインタフェースを示したものである。オペレータインタフェースは、ディスプレイ108上に、オペレータ命令を受け取るため、及び特定の患者の頭部計測パラメータに対する計算結果を表示するための対話ユーティリティを提供する。ディスプレイ108は、例えばオペレータ指定基準マーク及び他の命令を入力するためのタッチスクリーンディスプレイであってもよい。ディスプレイ108は、体積画像データの少なくとも1つの2Dビュー、又は異なる角度又は透視法からの体積画像データの2つ以上の2Dビューを同時に表示する。一例として、図9Aは、側面すなわち矢状ビュー152と対になった前頭すなわち歯冠側ビュー150を示したものである。3つ以上のビューを同時に示すことができ、また、異なる2Dビューを示すことも可能であり、表示されるビューの各々は、本開示の実施形態に従って独立して配置される。ビューは、互いに直交していてもよく、あるいは単純に異なる角度からのビューであってもよい。ディスプレイ108のインタフェースの一部として、任意選択のコントロール166は、代替固定ビューの間を切り換えるか、あるいは相対透視角度を3D軸(x、y、z)のうちの任意の軸に沿って増分で変更するかのいずれかによって、2Dビューのうちの1つ以上が獲得される透視角度の観察者による調整を可能にしている。対応するコントロール166は、図9Cに示されているように個々の2Dビューに提供することができる。ディスプレイ108のために示されているオペレータインタフェースを使用することにより、個々の基準マーク414が何らかのタイプのポインタを使用してオペレータによって入力され、ポインタは、マウス又は他の電子ポインタであっても、あるいは図9Aに示されているようにタッチスクリーン入力であってもよい。オペレータインタフェースの一部として、プロンプトに従って特定の基準マークを入力するようにオペレータを導くか、あるいは図9Bの例に示されているようなドロップ-ダウンメニュー168からの選択などによってオペレータ入力を識別するかのいずれかのために、任意選択の作表156が提供されている。したがってオペレータは作表156に値を入力することができ、あるいは欄158に値を入力することができ、次に、入力された値と関連付けられる名称をドロップ-ダウンメニュー168から選択する。図9A~9Cは、基準点と基準点の間に構築されたフレームワーク154を示したものである。図9Aに示されているように、入力された個々の基準マーク414は、ビュー150及び152の両方に示すことができる。選択された基準マーク414は、際立って出現する、あるいは他の色で出現する、などでディスプレイ108上で強調されている。基準マークに関する情報を獲得するか、又は入力するために、あるいは例えばその位置をシフトさせるなどの何らかのアクションを実施するために特定の基準マークが選択される。
【0050】
図9Bに示されている実施形態では、オペレータによって入力又は選択されたばかりの基準マーク414は、作表156からの選択によって識別される。図に示されている例の場合、オペレータは、指示された基準マーク414を選択し、次に、「眼窩下の孔」などのメニュー168からのメニュー選択を実施する。任意選択の欄158は、強調された基準マーク414を識別する。モデルに基づく、あるいは知られている標準の解剖学的関係に基づく計算を使用して、例えば基準マーク414を識別することができる。
【0051】
図9Cは、不正確なもの、あるいはありそうもないものとしてシステムによって検出される基準マーク414命令をオペレータが入力する例を示したものである。エラープロンプト又はエラーメッセージ160が表示され、オペレータ入力がエラーであることが明らかになったことを示す。システムは、例えばモデルに基づいてあるいは学習したデータに基づいて、特定の標識又は解剖学的特徴のための可能位置を計算する。オペレータ入力が不正確であることが明らかになると、任意選択の代替位置416と共にメッセージ160が表示される。システムからの計算された情報に従って基準マークを配置し直すための再配置命令164と共に指定変更命令162が表示される。再配置は、表示画面又はキーボードから別のオペレータ入力を受け取ることによって、あるいは図9Cの例における代替位置416でシステム計算基準マーク位置を受け取ることによって実施することができる。
【0052】
本開示の代替実施形態によれば、オペレータは、基準マークを入力する際に、それらにラベルを振る必要はない。その代わりに、ディスプレイは、表示された2Dビューのうちの任意のビュー上に特定の標識又は解剖学的特徴を指示するようにオペレータにプロンプトが表示され、指示された特徴に自動的にラベルが振られる。この案内シーケンスにおいて、オペレータは、指定した標識のための基準マークに対応する位置を指示することによって個々のシステムプロンプトに応答する。
【0053】
本開示の別の代替実施形態によれば、システムは、オペレータが基準マークを指示する際に、どの標識又は解剖学的特徴が識別されたかを決定し、オペレータは、基準マークを入力する際に、それらにラベルを振る必要はない。システムは、既に識別済みの解剖学的特徴に関する既知の情報を使用して、あるいは復元された3D画像自体の寸法を使用した計算によって、最も可能性のある基準マークを計算する。
【0054】
図9A~9Cの例に示されているオペレータインタフェースを使用することにより、本開示の実施形態は、3D頭部計測解析のプロセスにおいて、システムの人間オペレータの技能とコンピュータの能力とを相乗作用的に統合する実際的な3D頭部計測解析システムを提供する。これには、人間の創造性の技能、発見的方法の使用、柔軟性及び判断を利用し、計算の速度、正確で、かつ、反復可能な処理のための能力、報告及びデータアクセス並びに記憶能力、並びに表示の柔軟性などのコンピュータの利点とのこれらを結合する。
【0055】
図2のシーケンスに戻ると、十分なセットの標識が入力されると、計算ステップS108で被誘導頭部計測パラメータが計算される。図10Aないし図10Eは、頭部計測データを計算し、解析するための処理シーケンスを示したものであり、また、オペレータ入力命令に従って、また、歯列要素のセグメント化に従って、結合された体積画像データ及び解剖学的特徴情報から多数の頭部計測パラメータが獲得される様子を示したものである。本開示の実施形態によれば、図10Aないし図10Eに示されている特徴の部分は、ディスプレイ108(図1)上に表示される。
【0056】
図10Aに示されている例示的被誘導頭部計測パラメータは、図6を参照して既に説明したように基準マーク504、506、508及び510を有する第1の幾何プリミティブのセットのサブセットを使用することによって計算される3D平面602である(頭部計測解析においてはt-基準平面と呼ばれる)。他の被誘導頭部計測パラメータは、t-基準系と呼ばれ、また、既に言及した刊行物の中でトレイル(Treil)によって記述されている3D座標基準系612である。t-基準系612のz軸は、3D t-基準平面602に対して直角として選択される。t-基準系612のy軸は、基準マーク508と504の間のフレームワーク接続線522と整列される。t-基準系612のx軸は平面602に存在し、また、t-基準系のz軸及びy軸の両方に対して直角である。t-基準系の軸の方向は、図10A及び後続する図10B図10C図10D及び図10Eの中に示されている。t-基準系の原点は、基準マーク504及び506を接続しているフレームワーク接続線522の中間に位置している。
【0057】
t-基準系612が確立されると、ステップS106からの3D基準マーク及びステップS104からの3D歯データ(歯の3D位置リスト)がCBCT体積座標系からt-基準系612に変換される。次に、この変換を使用して、被誘導頭部計測パラメータの後続する計算及び解析をt-基準系612に対して実施することができる。
【0058】
図10Bを参照すると、t-基準系612における歯データからの頭部計測パラメータから、3D上顎平面704及び3D下顎平面702を誘導することができる。誘導される上顎平面704は、上顎(上顎骨)からセグメント化された歯データに従って計算される。頭部計測測定及び解析における技術者にはありふれた方法を使用して、誘導される下顎平面702が同様に下顎(下顎骨)からセグメント化された歯データに従って計算される。
【0059】
歯データからの3D平面の例示的計算の場合、3D位置ベクトル及び顎の中のすべての歯のボクセルのコード値を使用することによって慣性テンソルが形成され(記載されている刊行物の中でトレイル(Treil)によって記述されているように)、次に、慣性テンソルから固有ベクトルが計算される。これらの固有ベクトルは、t-基準系612における顎の配向を数学的に記述する。3D平面は、固有ベクトルのうちの2つを使用して、あるいは固有ベクトルのうちの1つを平面法線として使用して形成することができる。
【0060】
図10Cを参照すると、他の被誘導パラメータが示されている。顎毎に顎曲線が被誘導パラメータとして計算される。上顎曲線810は上顎のために計算され、下顎曲線812は下顎のために誘導される。顎曲線は、それぞれの顎の中の個々の歯の質量中心と交差するように構築され、また、対応する顎平面に位置するよう構築される。歯の質量中心は、次いでセグメント化された歯のための3D位置リスト及びコード値リストを使用して計算することができる。
【0061】
また、歯の質量も、歯のコード値リストから計算される同じく被誘導頭部計測パラメータである。図10Cでは、例示的歯質量は、上顎歯に対して円814又は他のタイプの形で表示されている。本開示の実施形態によれば、例えば円半径などの形の相対寸法のうちの1つ以上は、相対質量値、すなわち顎の中の他の歯の質量に対する関係で特定の歯の質量値を示している。例えば上顎の第1臼歯は、隣の歯の質量値より大きい質量値を有している。
【0062】
本開示の実施形態によれば、歯毎の固有ベクトル系が同じく計算される。最初に慣性テンソルが、記載されている刊行物の中でトレイル(Treil)によって記述されているように、歯のボクセルの3D位置ベクトル及びコード値を使用して形成される。次に、固有ベクトルが被誘導頭部計測パラメータとして慣性テンソルから計算される。これらの固有ベクトルは、t-基準系における歯の配向を数学的に記述する。
【0063】
図10Dに示されているように、別の被誘導パラメータ、すなわち咬合平面である3D平面908が2つの顎平面702及び704から計算される。咬合平面である3D平面908は、2つの顎平面702と704の間に位置している。平面908の法線は、平面702の法線及び平面704の法線の平均である。
【0064】
個々の歯の場合、通常、計算された最も大きい固有値に対応する固有ベクトルは、歯の中間軸を示す別の被誘導頭部計測パラメータである。図10Eは、歯の例示的中間軸の2つのタイプ、すなわち上切歯に対する中間軸1006及び下切歯に対する中間軸1004を示したものである。
【0065】
歯の中間軸の計算された長さは、他の被誘導パラメータと共に、頭部計測解析及び治療計画立案における有用な頭部計測パラメータである。記載されている刊行物の中でトリエル(Triel)によって提案されているように固有値を使用して軸の長さを設定する代わりに、本開示の実施形態は、異なる手法を使用して、被誘導パラメータとして実際の中間軸の長さを計算することに留意されたい。歯体積の底部スライスとの中間軸の第1の交点の位置が最初に突き止められる。次に、歯体積の頂部スライスとの中間軸の第2の交点が識別される。本開示の実施形態は、次に、2つの交点の間の距離を計算する。
【0066】
図11は、咬合平面908を上顎平面704及び下顎平面702に対する関係で隔離するクローズアップビューを提供するグラフ1102を示したものであり、また、顎曲線810及び812の相対位置及び曲率を示したものである。
【0067】
図12は、上歯中間軸1006と下歯中間軸1004の間の位置及び角度関係を示すグラフ1202を示したものである。
【0068】
上記の説明の中で言及したように、また、対応する図に示されているように、歯列要素セグメント化及びオペレータ入力基準マークを含む、結合された体積画像データから誘導することができる多くの頭部計測パラメータが存在している。これらはコンピュータ支援頭部計測解析ステップS110(図2)で計算される。
【0069】
ステップS110における、とりわけ価値があり得る一例示的3D頭部計測解析手順は、上顎骨(上顎)平面702及び下顎骨(下顎)平面704の相対平行に関連している。上顎平面702及び下顎平面704は、いずれも、既に言及したようにそれぞれ被誘導パラメータである。評価は、以下のシーケンスを使用して実施することができる。
・ 上顎骨慣性系(すなわち固有ベクトル)のx軸をt-基準系のx-z平面に投影し、t-基準系のz軸と投影の間の角度MX1_RFを計算する。
・ 下顎骨慣性系(すなわち固有ベクトル)のx軸をt-基準系のx-z平面に投影し、t-基準系のz軸と投影の間の角度MD1_RFを計算する。
・ MX1_MD1_RF=MX1_RF-MD1_RFは、t-基準系のx-z平面における上顎及び下顎の平行評価を与える。
・ 上顎骨慣性系(すなわち固有ベクトル)のy軸をt-基準系のy-z平面に投影し、t-基準系のy軸と投影の間の角度MX2_RSを計算する。
・ 下顎骨慣性系(すなわち固有ベクトル)のy軸をt-基準系のy-z平面に投影し、t-基準系のy軸と投影の間の角度MD2_RSを計算する。
・ MX2_MD2_RS=MX2_RS-MD2_RSは、t-基準系のy-z平面における上顎及び下顎の平行評価を与える。
【0070】
ステップS110で実行される別の例示的3D頭部計測解析手順は、中間軸1006及び1004(図10E図12)を使用して、上顎骨(上顎)切歯と下顎骨(下顎)切歯の間の角度特性を評価している。評価は、以下のシーケンスを使用して実施することができる。
・ 上切歯中間軸1006をt-基準系のx-z平面に投影し、t-基準系のz軸と投影の間の角度MX1_AFを計算する。
・ 下切歯中間軸1004をt-基準系のx-z平面に投影し、t-基準系のz軸と投影の間の角度MD1_AFを計算する。
・ MX1_MD1_AF=MX1_AF-MD1_AFは、t-基準系のx-z平面における上切歯及び下切歯の角度特性評価を与える。
・ 上切歯中間軸1006をt-基準系のy-z平面に投影し、t-基準系のy軸と投影の間の角度MX2_ASを計算する。
・ 下切歯中間軸1004をt-基準系のy-z平面に投影し、t-基準系のy軸と投影の間の角度MD2_ASを計算する。
・ MX2_MD2_AS=MX2_AS-MD2_ASは、t-基準系のy-z平面における上切歯及び下切歯の角度特性評価を与える。
【0071】
図13は、上切歯に対する局所x-y-z座標系1302及び下切歯に対する局所x-y-z座標系1304を示すグラフ1300を示したものである。x-y-z座標系の局所軸は、その特定の歯と結合した固有ベクトルと整列している。x軸は示されていないが、右手系法則を満たしている。
【0072】
図13では、座標系1302の原点は、軸1006に沿った任意の場所に選択することができる。座標系1302に対する例示的原点は、軸1006と結合される歯の質量中心である。同様に、座標系1304の原点は、軸1004に沿った任意の場所に選択することができる。座標系1304に対する例示的原点は、軸1004と結合される歯の質量中心である。
【0073】
ステップS110(図2)で実施された解析に基づいて、調整すなわち治療計画が計画立案ステップS112で手配される。例示的治療計画は、上切歯をその局所座標系原点などの3D点で反時計回りに、局所x-y-z座標系のx軸の周りなどの任意の3D軸の周りを回転させることである。図14のグラフは、軸位置1408に対する回転を示したものである。
【0074】
図2の治療ステップS114で、計画に基づいて、例えば上切歯回転に基づいて治療が実施される。治療計画は、実際に治療を施す前に、視覚化ステップS116で視覚的に試験し、検証することができる。
【0075】
図2に戻ると、ステップS114からステップS102への線120が示されている。これは、シーケンス200のワークフローには帰還ループが存在していることを示している。患者に治療が施されると、関連するデータをシステムへの入力として入力することにより、治療の即時の評価、あるいは別法として、計画された評価を実施することができる。この目的のための関連する例示的データは、光学X線像、MRI又は超音波画像化からの結果、及び/又は意味のある関連測定又は結果を含むことができる。
【0076】
図2のシーケンス200には任意選択の歯排除ステップS124が同じく示されている。例えば患者が1つ以上の歯を抜歯している場合、抜歯された歯を補っている歯を排除することができる。このステップのために、オペレータは、トレイル(Treil)の顎平面平行の理論に基づいて、存在している場合、残りの処理ステップから排除されるべき1つ以上の歯を指定する。図15のグラフは、システムが、仮想すなわちデジタル模型912を使用して歯排除を学習することができる様子を示したものである。デジタル模型912は、計算及び表示のために使用される、一組の標識、並びに上顎のデジタルモデルの一組の上歯、及び下顎のデジタルモデルの一組の下歯を使用して構築される仮想モデルである。デジタル模型912は、患者解剖学から獲得され、また、標識及び提供される他の解剖学的情報を使用して生成され、また、参照のために記憶することができ、あるいは必要に応じて使用するために生成することができる画像データを表す3Dすなわち体積画像データモデルである。様々なタイプのデジタル模型の使用は、デジタルX線像技術の技術者には周知である。デジタル模型912の基準マーク504、506、508及び510などの標識は、CBCT体積202(図3)から識別された実際の基準マークに対応している。これらの標識を使用してt-基準系612(図10A~10E)が計算される。
【0077】
オペレータは、ディスプレイから歯を選択することによって、あるいはディスプレイ上の被排除歯を識別する情報を入力することによって1つ以上の歯を排除することができる。
【0078】
図15の表現では、デジタル模型912のデジタル歯2202及び2204などの上歯及び下歯はデジタル的に生成されている。デジタル歯の例示的形状は、図に示されているように円筒状である。この例におけるデジタル歯に対する例示的ボクセル値は255である。他の形状及び値を模型912の表現及び処理のために使用することも可能であることは認識され得る。
【0079】
図16Aは、デジタル模型912のデジタル歯2202及び2204を示したものである。上デジタル顎及び下デジタル顎の中の対応するデジタル歯は、同じ方法で、同じサイズ及び同じコード値で生成される。
【0080】
上デジタル顎及び下デジタル顎の平行を評価するために、デジタル顎の中のすべてのデジタル歯のボクセルの3D位置ベクトル及びコード値を使用することによってデジタル顎毎に慣性テンソルが形成される(上で記載したトレイル(Treil)刊行物を参照されたい)。次に、固有ベクトルが慣性テンソルから計算される。これらの固有ベクトルは、慣性系として、t-基準系612(図10A)における顎の配向を数学的に記述する。既に言及したように、慣性テンソルデータから計算される固有ベクトルは、1つのタイプの被誘導頭部計測パラメータである。
【0081】
上顎歯及び下顎歯は同じ方法で創造されるため、図16Bに示されているように、上デジタル顎慣性系2206及び下デジタル顎慣性系2208の計算された軸は、期待されるように、生成されたデジタル模型912に対して平行である。図17Aは、上顎に対する線2210に沿った、また、下顎に対する線2212に沿った矢状ビューにおけるこの平行を示したものであり、図17Bは、上顎に対する線2214及び下顎に対する線2216における前頭(歯冠側)ビューにおける平行を示したものである。
【0082】
図18A及び図18Bを参照すると、デジタル歯2204が欠損している事例が示されている。上デジタル顎慣性系2206及び下デジタル顎慣性系2208の計算された軸はもはや平行ではない。対応する図19A及び図19Bでは、この不正列は、上顎に対する線2210及び下顎に対する線2212に沿った矢状ビュー、上顎に対する線2214及び下顎に対する線2216に沿った前頭ビューの中で同じく調査することができる。本開示の実施形態によれば、1つ以上の欠損歯による上顎平面及び下顎平面(慣性系)のこのタイプの不正列は、図20A及び図20Bに図解されているように、個々の欠損歯のコンパニオン歯を排除することによって修正することができる。歯2204に対するコンパニオン歯は、歯2304、2302及び2202であり、歯2304は、歯2204に対する上顎中の対応する歯である。歯2202及び2302は、歯2304及び2204に対する他の側の対応する歯である。欠損歯2204に対するコンパニオン歯が排除されると、上顎に対する慣性系2206及び下顎に対する慣性系2208の計算された軸が平行に戻る。
【0083】
図21A及び図21Bは、欠損歯のためにコンパニオン歯が排除される事例におけるCBCT体積からのセグメント化された歯を図解したものである。セグメント化結果は画像2402に示されている。上顎及び下顎に対する慣性系の計算された軸は、グラフ2404で立証されているように平行である。
【0084】
図22A及び図22Bは、別の患者に適用された、歯排除ステップS124(図2)を使用してコンパニオン歯を排除する方法を示したものである。画像2500に示されているように、歯2502、2504、2506及び2508は完全に展開されていない。それらの位置、サイズ及び配向は、慣性系計算に関して、上顎及び下顎の物理的特性を容赦なくゆがめている。図22Bのグラフ2510は、上顎慣性系2512及び下顎慣性系2514が容赦なく不正列している(平行ではない)状況を描写したものである。
【0085】
図23A及び23Bは、画像から特定の歯を排除した結果を示したものである。画像2600は、図22Aの画像2500から歯2502、2504、2506及び2508を排除した結果を示している。これらの歯を乱すことなく、画像2600に示されている歯の上顎の慣性系2612及び下顎の慣性系2614の軸は、グラフ2610に描写されているように平行である。
【0086】
生物測定学計算
解剖学的基準点のための入力された標識データ、歯、インプラント及び顎並びに関連する支持構造などの歯列要素のセグメント化、並びに既に説明したようにして得られた計算されたパラメータが与えられると、詳細な生物測定学計算を実施することができ、また、その結果を使用して、治療計画及び進行中の治療経過監視の設定を補助することができる。図8に戻ると、引き続いて説明される生物測定学計算は、記録された基準マークから生成されたパラメータの解析及び表示のためのステップS250に関するさらなる詳細を与える。
【0087】
本開示の実施形態によれば、歯の入力された標識及び計算された慣性系は、元のCBCT画像ボクセル空間から、直接直交標識(DOL)基準系と呼ばれる、座標(x、y、z)である代替基準系に変換される。図24は、DOL基準系の多数の標識及び座標軸すなわちベクトルを示したものである。標識RIO及びLIOは眼窩下の孔を示しており、標識RHM及びLHMは鼻疸に印を付けている。(x、y、z)の原点Oは、標識RIO及びLIOを接続している線の中間に選択されている。ベクトルx方向は、標識RIOからLIOまで画定されている。YZ平面は、点Oにおけるベクトルxに対して直角である。平面YZと、RHM及びLHMを接続している線との交点O’が存在している。ベクトルy方向は、O’からOまでである。ベクトルzは、x及びyのクロス乗積である。
【0088】
この変換を使用して、識別された標識を図25に示されている座標空間にマップし直すことができる。図26は、側面図から、この再マッピングを使用した変換済み慣性系を有する例を示したものである。
【0089】
非制限の一例として、以下のリストは、さらなる解析のために、変換された標識、歯列セグメント化及び慣性系データを使用して計算し、使用することができる多数の個々のデータパラメータを識別したものである。
【0090】
変換された空間における標識を使用して計算することができるデータパラメータの第1のグループは前後値を与える。
1.前後歯槽GIM-Gim:上切歯と下切歯の慣性の平均中心間のy位置差。
2.前後歯槽GM-Gm:上歯と下歯の慣性の平均中心間の差。
3.前後歯槽TqIM:上切歯の平均トルク。
4.前後歯槽Tqim:下切歯の平均トルク。
5.前後歯槽(GIM+Gim)/2:GIM及びGimの平均y位置。
6.前後底MNP-MM:平均鼻骨口蓋と平均頤孔の間のy位置差。
7.前後底MFM-MM:平均下顎骨孔と平均頤孔の間の実際の差。
8.前後アーキテクチャMMy:平均頤孔のy位置。
9.前後アーキテクチャMHM-MM:平均鼻疸と平均頤孔の間の実際の差。
第2のグループは垂直値を与える。
10.垂直歯槽Gdz:すべての歯の慣性中心のz位置。
11.垂直歯槽MxII-MdII:上アーチと下アーチの第2の軸の角度間の差。
12.垂直底<MHM-MIO、MFM-MM>:ベクトルMHM-MIOとMFM-MMの間の角度差。
13.垂直アーキテクチャMMz:平均頤孔のz位置。
14.垂直アーキテクチャ13:ベクトルMHM-MIOとMHM-MMの間の角度差。
横方向の値が同じく提供される。
15.横方向歯槽dM-dm:上右/左臼歯距離と下右/左臼歯距離の間の差。
16.横方向歯槽TqM-Tqm:上第1及び第2臼歯のトルクと下第1及び第2臼歯のトルクの間の差。
17.横方向底(RGP-LGP)/(RFM-LFM):右/左のより長い口蓋距離と下顎骨孔距離の比率。
18.横方向アーキテクチャ(RIO-LIO)/(RM-LM):右/左眼窩下の孔距離及び頤孔距離の比率。
計算又は「演繹された」他の値は以下のように与えられる。
19.被演繹隠れGIM:平均上切歯y位置。
20.被演繹隠れGim:平均下切歯y位置。
21.被演繹隠れ(TqIM+Tqim)/2:上切歯の平均トルク及び下切歯の平均トルクの平均。
22.被演繹隠れTqIM-Tqim:上切歯の平均トルクと下切歯の平均トルクの差。
23.被演繹隠れMNPy:平均鼻骨口蓋y位置。
24.被演繹隠れGIM-MNP(y):平均上切歯y位置と平均鼻骨口蓋y位置の差。
25.被演繹隠れGim-MM(y):平均頤孔y位置。
26.被演繹隠れGdz/(MMz-Gdz):Gdzの値とMMz-Gdzの値の間の比率。
【0091】
このリストは例示的なものであり、本開示の範囲内で、何らかの他の方法で拡張、編集又は変更することができることに留意されたい。
【0092】
上記例示的リストでは、前後カテゴリに9つのパラメータが存在し、垂直カテゴリに5つのパラメータが存在し、また、横方向カテゴリに4つのパラメータが存在している。次いで、上記カテゴリの各々自体は、歯槽、底及びアーキテクチャの3つのタイプを有している。さらに、特定の空間位置又は関係を表すことはできないが、後続する計算に使用される8つの被演繹パラメータが存在している。これらのパラメータは、さらに、正常又は異常としてラベルを振ることも可能である。
【0093】
正常パラメータは、前後不調和との正の関係、すなわちそれらの値に関して、
等級III<等級I<等級II
を有しており、等級I値は、上歯、下歯及び顎の間の正常な関係、すなわち平衡が取れた咬合を示しており、等級II値は、下第1臼歯が上第1臼歯に対して後方に位置していることを示しており、等級III値は、下第1臼歯が上第1臼歯に対して前方に位置していることを示している。
【0094】
異常パラメータは、前後不調和との負の関係、すなわちそれらの咬合関係値に関して、
等級II<等級I<等級III
を有している。
【0095】
本開示の実施形態は、解釈のために使用することができ、また、治療計画立案のための手引きとして使用することができる可能状態のセットを計算するために解析エンジンを使用することができる。図27~38は、解析エンジン動作及び編成、並びに解析エンジンによって生成されたテキスト結果、表結果及び図形結果のうちのいくつかの様々な態様を示したものである。コンピュータ、ワークステーション又はホストプロセッサは、必要なタスク及び機能を達成する一組のプログラム済み命令に従って解析エンジンとして構成され得ることに留意されたい。
【0096】
本開示の実施形態によれば、解析エンジンは、図27に示されているように3層ネットワーク2700としてモデル化することができる。このモデルでは、行及び列ノード入力は、行及び列入力信号に基づいて二進出力を提供する一組の比較器2702へ導かれるものと見なすことができる。1つの出力セル2704は、図に示されているように可能入力状態のセット毎に起動される。図に示されている例では、入力層1 2710には、上で列挙した26個のパラメータのうちの1つが供給され、また、入力層2 2720には、26個のパラメータのうちの別の1つが供給される。出力層2730は9個のセルを含み、それらの各々は、2つの入力が特定の基準に合致すると、すなわちそれらの値が特定の範囲内である場合、1つの可能解析を表す。
【0097】
本開示の実施形態によれば、解析エンジンは13個のネットワークを有している。これらは、図27に示されているネットワークと同様の独立したネットワーク、及び図28に示されている結合されたネットワーク2800及び2810を含む。
【0098】
図29に示されているアルゴリズムは、図27の例に示されているネットワークなどの独立した解析ネットワークの動作を記述している。ここでは、値x及びyは入力パラメータ値であり、mはネットワークインデックスを表し、D(i、j)は出力セルである。列値に対する「ベクトルcを評価する」ステップ及び行値に対する「ベクトルrを評価する」ステップは、入力値がどの評価基準と一致するかをチェックして決定する。例えば以下の式では、
【数1】
である場合、c=[true,false,false]である。
【0099】
図28の結合されたネットワークは、2つの他のネットワークからの結果を結合し、また、図30のアルゴリズムによって記述されているように動作することができる。この場合も、値x及びyは入力値であり、mはネットワークインデックスを表し、D(i、j)は出力セルである。列値に対する「ベクトルcを評価する」ステップ及び行値に対する「ベクトルrを評価する」ステップは、入力値がどの評価基準と一致するかをチェックして決定する。
【0100】
より広義の態様では、図27を参照して説明した独立したネットワークモデル、又は図28を参照して説明した結合されたネットワークモデルを使用したネットワークの総合的配置によれば、解析は、開業医に報告することができる、あるいは治療計画立案のために使用することができる有用な結果を提供するために、様々なメトリックスの調査、比較及び結合を実施することができる。
【0101】
図31Aは、特定の患者のための、上記26個のパラメータのリストに基づく、主として歯の咬合異常に対する数値及びそれらの解釈としての例示的パラメータを列挙したものである。図31B図31C及び図31Dは、特定の患者のための、本出願の例示的実施形態の中で与えられた合計63個のパラメータのリストに基づく、顎骨顔面非対称性に対する数値及びそれらの解釈としての例示的パラメータを列挙したものである。図32Aは、特定の例に対する例示的作表結果3200を咬合解析特性及びアーチ角特性と共に示したものである。図32Aの例では、列は、下歯突出、正常切歯関係又は上歯突出状態を示している。行は、咬合等級及びアーチ角状態を表している。図32Aが示しているように、強調を使用して、異常状態又は特定の重要な他の状態を示す情報の表示の効果を高めることができる。図32Aの例における特定の患者の場合、解析は、結果として、等級III咬合特性の下歯突出状態を示している。この結果を使用して、重大性及び開業医の判断に基づいて治療計画を推し進めることができる。
【0102】
図32Bは、別の例に対する例示的作表結果3200を、上記リストからパラメータ3及び4を使用した上切歯及び下切歯のトルクの解析と共に示したものである。
【0103】
図32Cは、別の例に対する例示的作表結果3200を、パラメータ(5)及び(21)として上で示した計算されたパラメータを使用した複後退又は複突出の評価と共に示したものである。
【0104】
図32Dは、特定の患者の頭部計測解析に対する結果の例示的要約リストを示したものである。示されているリストは、上で列挙したパラメータ1~26に対して取得された解析指示を参照している。図32Dの特定の例では、本明細書において説明されているようにして誘導された生物測定学パラメータ及び歯列情報を使用したパラメータ比較に対する13個の結果が存在している。実際には追加結果又はもっと少ない結果を提供することも可能である。図32Eは、後で示される(図35)セル3294を有する表3292を使用した表リストに報告されている状態のうちの1つに対する詳細なリストを示したものである。
【0105】
生物測定学計算からの結果情報は、様々な異なるフォーマットで開業医に提供することができる。図31A~32Eに示されている表情報などの表情報は、表スプレッドシート配置における表示及びさらなる計算と両立するコンマ区切り値(CSV)形態などのファイル形態で提供することができ、あるいはテキストメッセージを提供することによってなどの他の形態で指示することも可能である。別法として、図26に示されている図形表示などの図形表示を出力として提供することも可能であり、測定され、計算されたパラメータが、上歯突出、下歯突出及び他の状態などの異常生物測定学関係を示す特徴に対する表示の強度又は色の効果を高めることなどによって特定の結果が強調される。
【0106】
計算された生物測定学パラメータは、関連するパラメータが相俟って処理され、患者母集団から収集された統計的情報に対して比較することができる結果を提供する解析シーケンスに使用することができる。次に、比較を使用して様々な特徴間の異常関係を指示することができる。この関係情報は、異なるパラメータが特定の患者の事例において互いに影響を及ぼす様子を示す補助となり、また、結果として得られる、治療計画立案を導くために使用される情報を提供することができる。
【0107】
図1に戻ると、メモリ132を使用して、患者の母集団から収集された頭部計測情報の統計的データベースを記憶することができる。歯及び関連する支持構造に関する寸法情報を提供する生物測定学データの様々な項目を、このデータに基づく咬合及び頭の部分と口の相互関係に関する追加情報と共に患者母集団から記憶し、解析することができる。解析結果自体を記憶し、個々の患者の治療のための著しい量の有用な情報をもたらすことができる所定の値のデータベースを提供することも可能である。本開示の実施形態によれば、図31A及び図31Bに列挙されたパラメータデータは、患者毎に計算され、記憶され、また、数百人の患者又は少なくとも統計的に重要な患者のグループに対して記憶することができる。記憶される情報は、正常又は異常と見なされる範囲を決定し、また、修正の必要性を決定するために有用な情報を含む。次に、個々の患者の事例では、患者からの生物測定学データと、データベースから計算された記憶されている値との間の比較は、効果的な治療計画のための方針の提供を補助することができる。
【0108】
歯科矯正及び関連する技術の技術者には周知であるように、測定された様々な生物測定学パラメータと、様々な患者に対して計算された生物測定学パラメータとの間の関係は場合によっては複雑であり、したがって修正アクションの必要性を適切に評価するためには複数の変数を計算し、比較しなければならない。図27及び図28に関連して単純な形態で説明した解析エンジンは、異なる対のパラメータの間を比較し、一連の二進出力値を提供している。しかしながら実際にはもっと複雑な処理を実施して、状態の範囲及び患者母集団の中に見られる値を考慮することができる。
【0109】
測定された、あるいは計算された特定の生物測定学パラメータ及び結果を強調することにより、患者のための治療計画の開発を導くことができる有用なデータを提供する。
【0110】
図33は、解析結果に基づく推奨メッセージ170及び推奨に関連する患者解剖学の強調特徴を有する結果3200のシステム表示を示したものである。図34は、解析結果3200の図形描写を有するシステム表示108を示したものである。異なる角度で配置された、注釈が付けられた3Dビュー(例えば308a~308d)が、推奨メッセージ170及びコントロール166と共に示されている。
【0111】
本開示による特定の例示的方法及び/又は装置実施形態は、非対称性顔面/歯解剖学的構造の評価を補助するために使用することができる客観的メトリックス及び表示されたデータの必要性に対処することができる。有利には、例示的方法及び/又は装置実施形態は、開業医による評価に適した複数のフォーマットで表示される、測定され、解析された結果を提示する。
【0112】
図35は、本開示の実施形態による、顎骨顔面非対称性評価のための例示的テキスト報告書を示したものである。この報告書は、システムから入手することができる一組の評価表(T1~T19)を列挙したものであり、セル入力(行及び列インデックスを有するC、すなわちC(行、列)によって表されている)は、図31BのパラメータP1~P15などの獲得されたパラメータ間の関係に関連する計算に基づいて編成された顎骨顔面/歯構造非対称性特性評価コメントを提供している。例示的評価表3292は図32Eに描写されており、4つの行及び4つの列を有している。
【0113】
一実施形態では、例示的評価表(例えば19個の評価表)毎に、一度に1つのセル3294のみを起動することができ、起動されたセル内容は、赤のフォントで表示されることなどによって強調される。例示的表3292では、起動されたセルはC(2、2)(3294)であり、内容「0」は、切歯及び臼歯上側/下側偏位の特性に対して非対称性が見出されないことを示している。
【0114】
例示的評価表を速やかに参照するために、本開示のシステムは、表番号(Tn)、パラメータ番号(Pk、j)、セルインデックス(Cs、t)及び評価表T1~T19からの実際の評価コメントに関する情報を提供するチェックリスト型簡易要約ページ(例えば図35)を生成する。このタイプのテキスト報告書から得られる情報は、場合によっては開業医にとって役に立てることができ、特定の患者のための治療計画の開発に有用であり得る少なくともいくつかの客観的メトリックスを提供し、あるいは治療経過を評価する。開業医にとってさらに有利なことは、患者の総合的状態評価を対象とした蓄積付加評価であり得る。これは、とりわけ、非対称性顔面/歯解剖学構造又は患者に対する関係を決定するために利用される状態基準点の数及びそれらの間の関係が極めて多くのビュー志向性及び3D志向性治療条件を必要とし、基礎をなしている原因が可変である状況であり得る。
【0115】
一例示的非対称性決定表実施形態では、19個の評価表には、数百の基準点及びそれらの間の数百の関係を含めることができる。この例示的非対称性決定表実施形態では、表は、T1:非対称一致切歯及び臼歯上側/下側偏位、T2:アーチ回転、T3:上側/下側アーチ右回転及び上側又は下側アーチレスポンシビリティ、T4:上切歯横方向偏位との非対称一致切歯上側/下側偏位、上/下切歯横方向偏位における上側又は下側アーチの応答、T5:前方基底横方向偏位との非対称一致切歯上側/下側偏位、上/下切歯横方向偏位における上側又は下側アーチ前方偏位の応答、T6:上臼歯横方向偏位との非対称一致切歯上/下臼歯偏位、上臼歯又は下臼歯横方向偏位の応答、T7:下臼歯横方向偏位との非対称一致切歯上/下臼歯偏位、T8:非対称一致基本骨上側/下側偏位、T9:前方上顎骨偏位との非対称一致基本骨上側/下側前方関係、T10:前方下顎骨偏位との非対称一致基本骨上側/下側前方関係、T11:前方基底横方向偏位との非対称一致切歯上側/下側偏位、T12:上顎アーチ回転との垂直方向非対称性比較L/R臼歯高度差、T13:下顎骨アーチ回転との非対称性比較L/R臼歯高度差、T14:垂直方向非対称性比較基本骨R/L後方差(上顎及び下顎骨)、T15:頤点レベルにおける垂直方向非対称性比較L/R差(上顎骨-顔面面積及びグローバル顔面を測定する)、T16:下側との前後非対称性比較R/L上/下臼歯前後差、T17:下側との前後非対称性比較R/L上/下臼歯前後関係差、T18:下側との前後非対称性比較L/R上側底横方向標識前後差、T19:R/Lグローバル半側顔面との前後非対称一致下顎骨水平方向分岐を含む。
【0116】
本出願によるこのような複雑な非対称顔面/歯解剖学的構造又は関係決定では、患者の総合的状態評価を対象とした任意選択の蓄積付加評価が好ましく使用されている。いくつかの実施形態では、例示的蓄積付加又は総合診断コメントは、非対称前後方向(APコメント又はS1)、非対称垂直方向(VTコメント又はS2)及び非対称横方向(TRANSコメント又はS3)を含むことができる。さらに、1つ以上のS1、S2及びS3又は組合せを使用することによって最も高いレベルの評価スコアを使用することも可能であり、それにより非対称グローバルスコアを決定することができる(非対称グローバル決定)。例えば例示的非対称グローバルスコアは、いくつかの限られたカテゴリ(例えば正常、限られた評価、提案される詳細評価)に分解される要約(例えば総合等級I、II、III)であってもよく、あるいは支配的な非対称性状態(例えばS1、S2、S3)によって表し/特性化することができる。
【0117】
図35に示されているように、例示的テキスト報告書は、S1前後方向「合成」非対称コメント、S2垂直方向合成非対称コメント、及びS3横方向合成非対称コメントを同じく提示する。
【0118】
「合成」という専門用語は、本出願においては、個々の方向における一対の表から誘導されている。特定の例示的実施形態では、「合成」という専門用語は、個々の評価タイプ(例えば頭骨の実質的(例えば>50%)な部分を含むか、あるいは表すAP、V、Trans)からの複数の表の組合せ、又は個々の方向における一対の表から決定することができる。
【0119】
例えばS1合成コメントは、表17及び表19から誘導される。誘導は、最初にスコアを表17及び表19のセルの各々に割り当てる。例示的スコア割当ては以下のように説明される。
表17の場合、C(1、3)=-2;C(1、2)=C(2、3)=-1;C(2、1)=C(3、2)=1;C(3、1)=2;他のセルには値0が割り当てられる。
表19の場合、C(1、1)=-2;C(1、2)=C(2、1)=-1;C(2、3)=C(3、2)=1;C(3、3)=2;他のセルには値0が割り当てられる。
S1合成コメントの誘導は、表17及び表19からのスコアを追加することによって組合せスコアを評価する。
【0120】
例えば表17のC(1、3)が起動され、また、表19のC(1、1)が起動されると、組合せスコアは、表17のC(1、3)のスコアと表19のC(1、1)のスコアの合計になる。表17のC(1、3)には値-2が割り当てられ、また、表19のC(1、1)には値-2が割り当てられるため、したがって組合せスコアは-4である。S1に対する可能な組合せスコア値は、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3及び4であることは明らかである。
【0121】
例示的S1合成コメントは、以下で要約される組合せスコア値に基づくことができる。
組合せスコア=-4又は3の場合、S1合成コメント=強い左前後過剰
組合せスコア=-2の場合、S1合成コメント=左前後過剰傾向
組合せスコア=2の場合、S1合成コメント=右前後過剰傾向
組合せスコア=4又は3の場合、S1合成コメント=強い右前後過剰
組合せスコア=0の場合、コメントなし
同様の合成コメント誘導が垂直方向及び横方向に適用される。
【0122】
図35に戻ると、例示的テキスト報告書は、S1=強い右前後過剰、S2=なし、及びS3=左上偏位傾向を表示している。
【0123】
極めて稀な事例では、合成コメントは3つのすべての方向に出現し、あるいはコメントは、さらに拡張された診断及び/又は治療を促すことができる合成コメントの何らかのタイプの混合を提示する。
【0124】
さらに、本出願による選択された例示的方法及び/又は装置実施形態は、患者の顎骨顔面/歯構造の非対称性特性の速やかな視覚評価を提供することも同じく可能である。
【0125】
図36は、オペレータによって選択された標識、基準マーク414(図5を参照されたい)を使用してプロットされた正面図に対する患者の顎骨顔面/歯構造特徴を示すプロットすなわちグラフである。表示されているこのタイプのプロットは、この例示的患者のための客観的な方式で明らかに非対称性(左対右)を示している。
【0126】
同様に、図37は矢状ビューのプロットすなわちグラフであり、基準マーク414は、非対称性の別の客観的指標として、患者の顔の左側及び右側がどれほど重畳しているかを示している。
【0127】
図38は、上側の顎平面704及び下側の顎平面702の矢状ビューで、患者の咬合の顕著な不適切整列の速やかな視覚評価を提供するプロットすなわちグラフである。顎平面704は誘導された上顎マーク814に基づいて計算され、下顎平面702は誘導された下顎マーク814に基づいて計算される。誘導されたマーク814は、図4に示されているセグメント化された歯304に基づいて計算され、歯の位置を示している。図38に示されている例は、ハイパーダイバージェントパターンを使用して患者のための例示的視覚キューを描写している。
【0128】
本明細書においては、患者の顎骨顔面非対称性の3D頭部計測解析のためのコンピュータ実行方法が説明されている。方法は、少なくとも第1の2Dビューからの患者の頭部のコンピュータ断層撮影走査から復元体積画像データを獲得し、表示する。オペレータ命令は、表示された少なくとも第1の2Dビュー上に少なくとも1つの基準マークを位置決めし、表示する。次に患者の口内の1つ以上の歯列要素がセグメント化される。方法は、少なくとも1つの基準マーク及び1つ以上のセグメント化された歯列要素からのデータに従って、患者のための頭部計測パラメータを計算して表示し、また、計算された頭部計測パラメータを使用して、顎骨顔面非対称性を示す1つ以上の結果を計算する。方法は、次に、顎骨顔面非対称性を示す計算結果を示すために図形又はテキスト表示を起動する。
【0129】
本明細書における例示的実施形態と無矛盾で、コンピュータプログラムは、記憶されている、電子メモリからアクセスされる画像データ上で3D生物測定学解析を実施する命令を使用することができる。画像処理技術の技術者には認識され得るように、画像化システムを動作させ、また、本出願の例示的実施形態における画像データを探針し、獲得するためのコンピュータプログラムは、本明細書において説明されている、パーソナルコンピュータ又はワークステーションなどの制御論理プロセッサとして動作する適切な汎用コンピュータシステムによって利用され得る。しかしながら、多くの他のタイプのコンピュータシステムを使用して、例えばネットワーク化されたプロセッサの配置を含む、本発明のコンピュータプログラムを実行することも可能である。例示的方法実施形態を実施するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。この媒体は、例えば、ハードドライブなどの磁気ディスク又は取外し可能デバイスあるいは磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ又は機械可読光符号化などの光記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はリードオンリメモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶デバイス、又は任意の他の物理デバイス、あるいはコンピュータプログラムを記憶するために使用される媒体を含むことができる。例示的方法実施形態を実施するためのコンピュータプログラムは、インターネット又は他のネットワークあるいは通信媒体によって画像プロセッサに接続されるコンピュータ可読記憶媒体上に記憶することも可能である。当業者は、さらに、このようなコンピュータプログラム製品の等価物は、ハードウェアの中で構築することも可能であることを容易に認識するであろう。
【0130】
本出願の文脈における「コンピュータアクセス可能メモリ」と等価である「メモリ」という用語は、任意のタイプの一時的、又は例えば、画像データを記憶し、また、画像データ上で動作するために使用され、また、データベースを含むコンピュータシステムにアクセスすることができる、より耐久性のあるデータ記憶作業領域を意味し得ることに留意されたい。メモリは、例えば磁気記憶装置又は光記憶装置などの長期間記憶媒体を使用した不揮発性メモリであってもよい。別法としては、メモリは、マイクロプロセッサ又は他の制御論理プロセッサデバイスによって一時的バッファ又は作業領域として使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)などの電子回路を使用した、性質がより揮発性のメモリであってもよい。例えば表示データは、典型的には、表示デバイスと直接結合され、また、表示されるデータを提供するために必要に応じて周期的にリフレッシュされる一時的記憶バッファに記憶される。この一時的記憶バッファも、その用語が本出願の中で使用されている場合、同じくあるタイプのメモリと見なされる。また、メモリは、計算及び他の処理の中間結果及び最終結果を実行して記憶するためのデータ作業領域として同じく使用される。コンピュータアクセス可能メモリは、揮発性、不揮発性、又は揮発性タイプと不揮発性タイプの混成結合であってもよい。
【0131】
本出願のコンピュータプログラム製品は、周知の様々な画像操作アルゴリズム及びプロセスを活用することができることは理解されよう。このようなアルゴリズム及びシステムの追加態様、及び画像を製作し、さもなければ画像を処理し、あるいは本出願のコンピュータプログラム製品例示的実施形態と協同するためのハードウェア及び/又はソフトウェアは、本明細書においては特には示されておらず、あるいは説明されておらず、また、当技術で知られているこのようなアルゴリズム、システム、ハードウェア、構成要素及び要素から選択することができる。
【0132】
本出願による特定の例示的方法及び/又は装置実施形態によれば、開業医は、客観的メトリックス及び/又は表示されたデータを利用して非対称性顔面/歯解剖学的構造の評価を補助することができる。有利には、例示的方法及び/又は装置実施形態は、開業医による評価に適した、連続するより上位のフォーマットで表示される、複数の等級別すなわち階層化された測定結果及び解析結果を提供することができる。本開示の実施形態は、歯画像化装置を使用して例証されているが、他のタイプの診断画像化のために、また、他の解剖学のために同様の原理を適用することができる。本出願による例示的実施形態は、本明細書において説明されている様々な特徴を含むことができる(個別に、あるいは組み合わせて)。
【0133】
本発明について、1つ以上の実施態様を参照して例証したが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく、例証された例に代替及び/又は変形を加えることができる。さらに、本発明の特定の特徴は、いくつかの実施態様/実施形態のうちの1つのみに関して開示することも可能であったが、このような特徴は、任意の所与の機能又は特定の機能にとって望ましく、かつ有利であり得る他の実施態様/実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせることが可能である。「~のうちの少なくとも1つ」という用語は、列挙されている項目のうちの1つ以上を選択することができることを意味するべく使用されている。「約」という用語は、列挙されている値は、変更によって例証されている実施形態に対するプロセス又は構造に従わない結果にならない限り、いく分か変更することが可能であることを示している。最後に、「例示的」は、その説明が例として使用されており、その説明が理想的であることを暗に意味しているのではないことを示している。本発明の他の実施形態については、本明細書を考察し、また、本明細書において開示されている本発明を実践することによって当業者には明らかであろう。本明細書及び例は、例示的なものとしてのみ考察されることが意図されており、本発明の真の範囲及び趣旨は、少なくとも以下の特許請求の範囲によって示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図31C
図31D
図32A
図32B
図32C
図32D
図32E
図33
図34
図35
図36
図37
図38