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特開2023-142951コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法
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  • 特開-コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法 図1
  • 特開-コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法 図2
  • 特開-コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法 図3
  • 特開-コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法 図4
  • 特開-コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142951
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】コーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/02 20060101AFI20230928BHJP
   A23F 5/04 20060101ALI20230928BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A23F5/02
A23F5/04
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050100
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】522120783
【氏名又は名称】株式会社OWK
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】大和久皓平
(72)【発明者】
【氏名】相良 百合子
(72)【発明者】
【氏名】白水 泰
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB21
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC02
4B027FQ01
4B027FQ02
4B027FQ19
4B027FR10
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、コーヒー豆に短時間で適用可能なコーヒー豆加工方法を提供することにある。
【解決手段】
この課題は、コーヒー豆の加工方法であって、電解水素水生成ステップ、電解水素水によるコーヒー豆の洗浄ステップ、洗浄したコーヒー豆からチャフを除去するステップ、洗浄したコーヒー豆の乾燥ステップ、及び乾燥したコーヒー豆の焙煎ステップを含むことを特徴とするコーヒー豆加工方法により解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆の加工方法であって、電解水素水生成ステップ、電解水素水によるコーヒー豆の洗浄ステップ、洗浄したコーヒー豆からチャフを除去するステップ、洗浄したコーヒー豆の乾燥ステップ、及び乾燥したコーヒー豆の焙煎ステップを含むことを特徴とするコーヒー豆加工方法。
【請求項2】
電解水素水によるコーヒー豆の洗浄ステップが、コーヒー豆の焙煎の前に行われることを特徴とする請求項1に記載のコーヒー豆加工方法。
【請求項3】
所定の比率によってブレンドされた複数種類のコーヒー豆に対して実施されることを特徴とする請求項1または2に記載のコーヒー豆加工方法。
【請求項4】
電解水素水による洗浄によりチャフの除去が促進されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコーヒー豆加工方法。
【請求項5】
洗浄前及び洗浄後にコーヒー豆を計量するための計量装置、コーヒー豆を洗浄するための水素水を生成するための水素水生成装置、生のコーヒー豆を洗浄するための洗浄装置、洗浄されたコーヒー豆を乾燥するための乾燥設備、及び乾燥されたコーヒー豆を焙煎するための焙煎装置を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実施するためのコーヒー豆加工システム。
【請求項6】
請求項1から4に記載の方法により得られたコーヒー豆を粉砕し、その粉砕物から抽出液を得ることを特徴とするコーヒー飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎前のコーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、美味しいコーヒーを提供するためのコーヒー豆の加工方法につき水素に着目した多様な試みがなされている。例えば特許文献1は、焙煎前のコーヒー豆を所定水素濃度の水素雰囲気下に晒し、これを焙煎することにより、より良好な味わいと香りをもたらすコーヒーを得るためのコーヒー豆を提供することを試みている。
【0003】
また、特許文献2は、液状飲食品に水素含有ガスを接触させることによって、液状飲食品の有する好ましい風味を向上させることができるとともに、好ましくない風味を低減または軽減することのできる液状飲食品の風味バランス調整方法を開示している。
【0004】
これら方法は、いずれも水素を適用するという点では共通するものの、その適用方法においては異なる。つまり特許文献1においては、密閉封止可能な容器内にコーヒー豆を入れて、その容器内を水素含有ガスで充満させ、容器を密閉封止し、所定時間処理することを行う。この方法では、コーヒー豆に水素を適用するのに、30日間といった長期間を要するものとなっている(特許文献1の段落0026など)。
【0005】
また特許文献2においては、液状飲食品、つまり植物汁、植物抽出液等に水素含有ガスを接触させる方法が開示されているが、その方法は、予め高濃度で水素を溶解させた高濃度水素水を、その他の原料液と共に混合する方法か、又は調整した原料液に直接水素ガスを吹き込む方法(いわゆるバブリング)が取られているのみであって、コーヒー豆などの固体物に対適用についてはふれられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019―176752号公報
【特許文献2】特開2017-86085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、コーヒー豆に短時間で適用可能なコーヒー豆加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、コーヒー豆の加工方法であって、電解水素水生成ステップ、電解水素水によるコーヒー豆の洗浄ステップ、洗浄したコーヒー豆からチャフを除去するステップ、洗浄したコーヒー豆の乾燥ステップ、及び乾燥したコーヒー豆の焙煎ステップを含むことを特徴とするコーヒー豆加工方法により解決される。
【0009】
別の実施形では、電解水素水によるコーヒー豆の洗浄ステップが、コーヒー豆の焙煎の前に行われる。
【0010】
別の実施形では、当該コーヒー豆加工方法は、所定の比率によってブレンドされた複数種類のコーヒー豆に対して実施されることが考えられる。
【0011】
更に別の実施形では、電解水素水による洗浄によりチャフの除去が促進されることも可能である。
【0012】
上記課題解決のため、洗浄前及び洗浄後にコーヒー豆を計量するための計量装置、コーヒー豆を洗浄するための水素水を生成するための水素水生成装置、生のコーヒー豆を洗浄するための洗浄装置、洗浄されたコーヒー豆を乾燥するための乾燥設備、及び乾燥されたコーヒー豆を焙煎するための焙煎装置を含むコーヒー豆加工システムが提案される。
【0013】
更に有利な発展型では、上述した方法により得られたコーヒー豆を粉砕し、その粉砕物から抽出液を得ることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかるコーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法及びシステムの図
図2】本発明にかかる方法の詳細図
図3】本発明にかかる方法の詳細図
図4】本発明にかかる方法の詳細図
図5】電解水素水による効果実験の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明にかかるコーヒー豆の洗浄、乾燥及び焙煎方法及び当該方法を実施するためのシステムを表す。
【0016】
[洗浄、乾燥及び焙煎システム]
図1の右図に示す通り本発明にかかるシステムは、主として計量装置、水素水生成装置、洗浄装置、乾燥設備、焙煎装置が含まれている。各装置、設備を以下順に説明する。
【0017】
計量装置は、コーヒー豆の量を計量するためのものである。これによって後述する洗浄装置によって洗浄を行うべきコーヒーの生豆の分量を正確に計量する。
【0018】
水素水生成装置は、電解水素水整水器とも称される。一般的な水道水を電気分解し電解水素水を生成するためのものである。水素水生成装置は、いわゆる一般的な水道水の蛇口に接続可能に構成されており、水素水生成装置の内部に設けられる電解槽に水道水を導入することが可能となっている。電解槽は、複数槽に分けられており、各槽の内部には例えばプラチナメッキされた電極が挿入されている。電極には、コンピューター制御されるスイッチングレギュレーターが接続されており、コンピューター制御によって電流量が制御可能に構成されている。これによって、電解槽に供給された水道水を電気的に付勢可能となっており、水道水を電気分解し水素水(電解水素水)を生成、これを吐出可能な構成となっている。
【0019】
水素水生成装置の水素水吐出部は、洗浄装置に接続されている。これによって、洗浄に適切な量の水素水を洗浄装置内に吐出可能に構成されている。
【0020】
洗浄装置としては、いわゆる一般的な家庭用洗濯機等が援用可能である。洗浄装置内には、洗浄槽、洗浄槽内にコーヒー豆を投入するための投入口、水素水生成装置から水素水を導入するための水素水導入口、洗浄後の水素水を排出するための水素水排出機構、水素水による洗浄時間を計測するためのタイマー等が設けられている。
【0021】
本発明にかかるシステムは、乾燥設備を含んでいる。この乾燥設備は、洗浄が終了したコーヒー豆を乾燥させるためのものである。乾燥設備は、コーヒー豆を載置するための乾燥棚(メッシュ棚)、コーヒー豆に送風し乾燥を促すためのファン(扇風機、送風機)、乾燥を行う環境の湿度を低減させるための除湿機等を含んでいる。
【0022】
焙煎装置は、水素水による洗浄及び乾燥が完了したコーヒー豆を焙煎するための装置である。焙煎装置は、内部に焙煎窯、ヒーター等を有する。その内部にコーヒー豆を投入し、加熱・焙煎することができる構造となっている一般的なものである。
【0023】
[洗浄、乾燥及び焙煎方法]
以下、図2乃至4を参照しつつ、以下に本発明にかかる洗浄、乾燥及び焙煎方法を説明する。ここでは例えば、複数品種(この例では3種類)のコーヒー豆(生豆)から、いわゆるブレンドコーヒー豆を洗浄、乾燥及び焙煎する方法を説明する。
【0024】
[準備・計量工程]
準備工程においては、使用するコーヒー豆(生豆)を用意し、レシピにしたがいそれぞれ計量を行う。この例では、例えばブラジル、コロンビア、マンデリンの三種類の生豆を各500gずつ用意し計量を行う。計量を行った3種の生豆は、一つのネット(洗浄用ネット、一般的な洗濯用ネット等を援用することも可能である)等に入れられ、後の洗浄工程における洗浄にそなえる。洗浄は、同時に複数のブレンドに対して行うことも可能であるため、例えば、ネットを5袋用意し、それぞれのネットに各ブレンドに応じたコーヒー豆を入れておくことも可能である。
【0025】
[水素水生成工程]
この工程においては、水素水生成装置により水道水から電解水素水が生成される。生成された水素水は、洗浄装置に吐出・導入される。この例では、導入される水素水の量はたとえば45リットルである。
【0026】
水素水の給水が完了し、洗浄槽に水素水が溜まったらコーヒー豆(生豆)を投入する。投入されるコーヒー豆は、洗浄用ネットに入れられた状態である。
【0027】
[洗浄工程]
コーヒー豆(生豆)の洗浄は、洗浄、すすぎ、脱水等のプロセスを繰り返すことにより行われる。例えば洗浄6分、脱水2分、すすぎ3分、脱水2分、すすぎ3分、脱水2分の処理を行うことが可能である。
【0028】
[チャフ除去工程]
洗浄工程によってコーヒー豆からチャフ(コーヒー豆の薄皮)が取り除かれる。取り除かれたチャフは、図2に示すように洗浄装置内、洗浄用ネット表面等に大量に現れる。チャフ除去工程においては、これらチャフが取り除かれる。
【0029】
[乾燥工程]
チャフを取り除かれたコーヒー豆は、洗浄用ネットに入れられた状態のまま、乾燥棚上に置かれ、ここで乾燥工程にさらされる。乾燥設備は、除湿機、扇風機等を含んでおり、コーヒー豆は夏場15時間以上、冬場24以上の時間をかけて乾燥される。
【0030】
[計量工程]
このようにして乾燥された、例えばこの例では、ブラジル・コロンビア・マンデリンのコーヒー豆が、乾燥された状態で再度計量され分けられる。
【0031】
[焙煎工程]
計量されたブラジル・コロンビア・マンデリンのコーヒー豆は焙煎装置に投入され各豆に合わせた焙煎がなされる。焙煎工程は一般的な焙煎工程であり、ここでは詳述しない。焙煎後、所定の比率で各分量ずつ計量されブレンドされる。この場合、焙煎された豆が再度計量され所定の比率でブレンドされることとなる。なお、乾燥されたブラジル・コロンビア・マンデリンのコーヒー豆を所定の比率で各分量ずつ計量されブレンドされた状態で焙煎装置に投入され焙煎することも可能である。
【0032】
[電解水素水で洗浄を行う効果]
最後に図5を用いて、生のコーヒー豆を電解水素水で洗浄する効果を示す。図5上段には、それぞれ水道水、及び電解水素水を注いだ瓶に金属製のクリップを入れ約7年半が経過した状態のクリップの変化の状態を示す。水道水を注いだ瓶(写真左)に入れた金属性クリップは錆び、そのサビにより水道水が褐色に変化している様子が見て取れる。これに対して、電解水素水を注いだ瓶に入れた金属製クリップは錆びておらず、電解水素水の色も変化していない。各瓶を振って撹拌を行うと、水道水を注いだ瓶は完全に濁った状態となるが、電解水素水を注いだ瓶の方は変化がみられない。
【0033】
同様の実験を水道水を注いだカップ、及び電解水素水を注いだカップにコーヒー豆を投入して行った(図5の下段)。水道水を注ぎかき混ぜた方のカップの水の色は5分経過後においても変化がなかった。コレに対して、電解水素水を注いだ方のカップは、水素水の色が濃くなった。
【0034】
それぞれのカップを上から見たところ、水道水を注いだカップには変化が見られなかったが、電解水素水を注いだカップの方は、細かいゴミが浮いているのが見て取れた。
【0035】
これら効果と、コーヒー豆に起こる変化、ひいてはその後の焙煎後のコーヒーの味、風味、香りに起こる変化の技術的関係は現時点では定かでないが、味、風味、香りあらゆる点において、電解水素水を用いて本発明にかかる洗浄、乾燥及び焙煎を行ったコーヒー豆は著しい改善が見られた。また、珈琲を淹れて1時間、3時間、6時間、12時間、それぞれ経過したものを試飲しても美味しく飲むことができた。
図1
図2
図3
図4
図5