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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142967
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/22 20160101AFI20230928BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02P21/22
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050122
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 佑理
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA04
5H505AA06
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG02
5H505GG04
5H505GG06
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ12
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ22
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505JJ26
5H505KK06
5H505LL14
5H505LL22
5H505LL24
5H505MM16
(57)【要約】
【課題】モータを安定して精度よく制御すること。
【解決手段】
本発明の一形態に係るモータ制御装置は、モータのベクトル制御を行うモータ制御装置であって、駆動部と、電流検出部と、電流変換部と、電流近似部と、制御部とを具備する。前記駆動部は、前記ベクトル制御の制御指令値に基づいて前記モータを駆動する。前記電流検出部は、前記モータに流れるモータ電流を単一のシャント抵抗を用いて検出する。前記電流変換部は、前記モータ電流を前記ベクトル制御に用いる電流成分に変換する。前記電流近似部は、前記ベクトル制御の制御周期ごとに、前記電流成分に基づいて前記電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて前記電流成分の近似値を算出する。前記制御部は、前記制御周期ごとに、前記近似値に基づいて前記制御指令値を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのベクトル制御を行うモータ制御装置であって、
前記ベクトル制御の制御指令値に基づいて前記モータを駆動する駆動部と、
前記モータに流れるモータ電流を単一のシャント抵抗を用いて検出する電流検出部と、
前記モータ電流を前記ベクトル制御に用いる電流成分に変換する電流変換部と、
前記ベクトル制御の制御周期ごとに、前記電流成分に基づいて前記電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて前記電流成分の近似値を算出する電流近似部と、
前記制御周期ごとに、前記近似値に基づいて前記制御指令値を算出する制御部と
を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置であって、
前記駆動部は、前記制御指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM生成部と、前記PWM信号に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部とを有し、
前記制御周期は、前記PWM信号のキャリア周期を基準として設定される
モータ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ制御装置であって、
前記制御周期は、前記キャリア周期の1倍から5倍までの範囲で設定される
モータ制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータ制御装置であって、
前記電流検出部は、前記モータ電流を前記キャリア周期ごとに検出する
モータ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ制御装置であって、
前記PWM生成部は、前記モータ電流を検出可能となるように、前記PWM信号のパルス位置を調整し、
前記電流検出部は、前記パルス位置に応じたタイミングで前記モータ電流を検出する
モータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のモータ制御装置であって、
前記近似線は、前記電流成分を用いて最小二乗法により算出された回帰直線である
モータ制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載のモータ制御装置であって、
前記電流近似部は、前記制御周期よりも長い期間における前記電流成分に基づいて、前記近似線を算出する
モータ制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか1項に記載のモータ制御装置であって、
前記電流変換部は、前記モータ電流をd軸電流及びq軸電流に変換し、
前記電流近似部は、前記d軸電流の検出値に基づいて、前記d軸電流の近似線と前記d軸電流の近似値とを算出し、前記q軸電流の検出値に基づいて、前記q軸電流の近似線と前記q軸電流の近似値とを算出する
モータ制御装置。
【請求項9】
請求項1から9のうちいずれか1項に記載のモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置は、空気調和機に搭載されたファンを駆動するファンモータ、又は空気調和器に搭載されたコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御する
モータ制御装置。
【請求項10】
請求項10に記載のモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置は、空気調和機に搭載されたファンを駆動するファンモータを制御し、
前記制御周期は、前記空気調和機に搭載されたコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するための周期に設定される
モータ制御装置。
【請求項11】
ベクトル制御の制御指令値に基づいてモータを駆動し、
前記モータに流れるモータ電流を単一のシャント抵抗を用いて検出し、
前記モータ電流を前記ベクトル制御に用いる電流成分に変換し、
前記ベクトル制御の制御周期ごとに、前記電流成分に基づいて前記電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて前記電流成分の近似値を算出し、
前記制御周期ごとに、前記近似値に基づいて前記制御指令値を算出する
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのベクトル制御を行うモータ制御装置及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのベクトル制御では、モータのd軸電流及びq軸電流を制御対象として、各電流値をそれぞれ設定することでモータの回転が制御される。例えばd軸電流及びq軸電流の目標値に応じて、U相、V相、及びW相についての電圧指令値が設定され、各電圧指令値に応じて各相に対応するPWM(Pulse Width Modulation)信号が生成される。これらのPWM信号によりインバータのスイッチング制御が行われ、インバータからは各相に電圧指令値に応じた電圧が印加される。この結果、各相には印加された電圧に対応する電流が流れる。これらの電流をモータに供給することで、モータの回転が制御される。
【0003】
近年では、モータの回転位置等を検出するセンサを設けずにモータを制御するセンサレスベクトル制御が開発されている。この方法では、モータに流れる電流を検出し、その検出値を用いてモータのd軸電流及びq軸電流の目標値が設定される。
【0004】
モータに流れる電流を検出する方式として、1シャント抵抗を用いた電流検出方式が挙げられる。例えばインバータに接続された1つのシャント抵抗に流れる電流を適切なタイミングで検出することで、U相、V相、及びW相に流れる電流が検出される。この方式では、電流の検出器が1つだけでよいため、装置の簡素化を図ることが可能である。
【0005】
なお、1シャント抵抗を用いた電流検出方式では、各相のPWM信号の状態によっては、必要な電流検出ができない場合がある。例えば、3相全てがON又はOFFである場合には、電流を検出することができない。逆に、1相又は2相がONである場合には、対応する相の電流を検出することが可能となる。このため、1シャント抵抗を用いて電流を検出する場合には、目的の電流を検出できるようにPWM信号のパルスを調整するパルスシフト処理が実行される。
【0006】
例えば、特許文献1には、PWM信号のパルス幅(デューティ設定値)に基づいて、各相のパルスを配置するパルスシフト処理について記載されている。この処理では、U相、V相、及びW相が、デューティ設定値の大きさの順に、最大相、中間相、及び最小相に設定される。そして、中間相を基準として、最大相のパルスの位相を進め、最小相のパルスの位相を遅らせる処理が行われる。これにより、例えば最大相だけがONの期間や、最大相及び中間層がONである期間を意図的に作り出すことが可能となり、各相の電流を個別に検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-279141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に3相交流で駆動するモータには、U相、V相、及びW相のそれぞれに、120°ずつ位相がずれた交流電圧が入力される。この3相交流電圧では、最も高い電圧を持つ最大相と、中間の電圧を持つ中間相と、最も低い電圧を持つ最小相とが60°の間隔で順次入れ替わる。このため、この3相交流電圧を生成するためのPWM信号でも、60°の間隔で各相のPWMパルスの幅の大小関係が入れ替わることになる。
【0009】
例えば特許文献1のように、パルスの幅を基準にパルスの位置を設定するパルスシフト処理では、各相のパルスの幅の大小関係が入れ替わると、各相のパルスの位置が入れ替えられる。この場合、パルスの位置を入れ替える前後で、パルスの立ち上がりのタイミングに差が生じるため、電流の検出値が影響をうけてしまう(例えば検出される電流値が急激に変化する)ことがある。
この他にも、電流を検出するタイミングを変化させた場合や、モータに係る負荷の状況等に応じて、電流の検出値が急激に変化するといった事態が起こり得る。
【0010】
このように、急激に変化した検出値をフィードバックした場合、制御対象である電流値が振動するハンチング現象等が発生する可能性がある。この結果、ベクトル制御の精度が低下するだけでなく、モータの制御が安定しなくなる。このため、モータを安定して精度よく制御する技術が求められている。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、モータを安定して精度よく制御することが可能なモータ制御装置及びモータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係るモータ制御装置は、モータのベクトル制御を行うモータ制御装置であって、駆動部と、電流検出部と、電流変換部と、電流近似部と、制御部とを具備する。
前記駆動部は、前記ベクトル制御の制御指令値に基づいて前記モータを駆動する。
前記電流検出部は、前記モータに流れるモータ電流を単一のシャント抵抗を用いて検出する。
前記電流変換部は、前記モータ電流を前記ベクトル制御に用いる電流成分に変換する。
前記電流近似部は、前記ベクトル制御の制御周期ごとに、前記電流成分に基づいて前記電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて前記電流成分の近似値を算出する。
前記制御部は、前記制御周期ごとに、前記近似値に基づいて前記制御指令値を算出する。
【0013】
このモータ制御装置では、ベクトル制御の制御周期ごとに、1シャント抵抗電流検出の結果を用いてベクトル制御に用いる電流成分の近似線が算出される。この近似線を用いて算出した近似値により、ベクトル制御の制御指令値が算出される。近似線を用いることで、電流の検出値が急激に変化した場合でも、フィードバックする値を安定させることができるため、モータを安定して精度よく制御することが可能となる。
【0014】
前記駆動部は、前記制御指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM生成部と、前記PWM信号に基づいて前記モータに電力を供給する電力供給部とを有してもよい。この場合、前記制御周期は、前記PWM信号のキャリア周期を基準として設定されてもよい。
【0015】
前記制御周期は、前記キャリア周期の1倍から5倍までの範囲で設定されてもよい。
【0016】
前記電流検出部は、前記モータ電流を前記キャリア周期ごとに検出してもよい。
【0017】
前記PWM生成部は、前記モータ電流を検出可能となるように、前記PWM信号のパルス位置を調整してもよい。この場合、前記電流検出部は、前記パルス位置に応じたタイミングで前記モータ電流を検出してもよい。
【0018】
前記近似線は、前記電流成分を用いて最小二乗法により算出された回帰直線であってもよい。
【0019】
前記電流近似部は、前記制御周期よりも長い期間における前記電流成分に基づいて、前記近似線を算出してもよい。
【0020】
前記電流変換部は、前記モータ電流をd軸電流及びq軸電流に変換してもよい。この場合、前記電流近似部は、前記d軸電流の検出値に基づいて、前記d軸電流の近似線と前記d軸電流の近似値とを算出し、前記q軸電流の検出値に基づいて、前記q軸電流の近似線と前記q軸電流の近似値とを算出してもよい。
【0021】
前記モータ制御装置は、空気調和機に搭載されたファンを駆動するファンモータ、又は空気調和器に搭載されたコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御してもよい。
【0022】
前記モータ制御装置は、空気調和機に搭載されたファンを駆動するファンモータを制御してもよい。この場合、前記制御周期は、前記空気調和機に搭載されたコンプレッサを駆動するコンプレッサモータを制御するための周期に設定されてもよい。
【0023】
本発明の一形態に係るモータ制御方法は、ベクトル制御の制御指令値に基づいてモータを駆動することを含む。
前記モータに流れるモータ電流を単一のシャント抵抗を用いて検出する。
前記モータ電流を前記ベクトル制御に用いる電流成分に変換する。
前記ベクトル制御の制御周期ごとに、前記電流成分に基づいて前記電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて前記電流成分の近似値を算出する。
前記制御周期ごとに、前記近似値に基づいて前記制御指令値を算出する。
【0024】
本発明によれば、モータを安定して精度よく制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係るモータ制御装置を搭載した空気調和機の構成例を示す模式図である。
図2】モータ制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】モータの座標軸の定義を示す模式図である。
図4】IPM及び電流検出回路の構成例を示す模式的な回路図である。
図5】パルスシフトについて説明するための模式図である。
図6】モータ電流の波形とPWMパルスとの関係を示す模式的なグラフである。
図7】パルスシフトに伴うモータ電流の変化の一例を示す模式図である。
図8】モータ制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】近似線及び近似値の算出処理の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
[空気調和機]
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置を搭載した空気調和機の構成例を示す模式図である。図1に示すように、空気調和機100は、室内機1と、室外機2とを有する。
室内機1は、建造物内の室内空間等に設置して用いられる。室内機1は、室内熱交換器10と、室内送風機11とを有する。
室外機2は、室内機1が設置された建造物の屋外等に設置して用いられ、冷媒を循環させる冷媒配管を介して室内機1と接続される。室外機2は、室外熱交換器20と、圧縮機21と、減圧器(膨張弁)22と、流路切替器(四方弁)23と、ファン24と、モータ25と、モータ制御装置30とを有する。
【0028】
例えば、暖房運転時には、室外機2の圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒(ガス冷媒)が流路切替器23を介して室内機1の室内熱交換器10に流入する。室内熱交換器10(凝縮器)で空気と熱交換した高圧の冷媒は、凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機2の減圧器22を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり室外熱交換器20へ流入する。室外熱交換器20(蒸発器)で外気と熱交換した冷媒は気化する。その後、低圧の冷媒は、流路切替器23を介して圧縮機21に吸入される。
【0029】
また例えば、冷房運転時には、室外機2の圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒が流路切替器23を介して室外熱交換器20に流入する。室外熱交換器20(凝縮器)で外気と熱交換した高圧のガス冷媒は凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機2の減圧器22を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内機1の室内熱交換器10へ流入する。室内熱交換器10(蒸発器)では空気と熱交換した冷媒は気化する。その後、低圧のガス冷媒は、流路切替器23を介して圧縮機21に吸入される。
【0030】
ファン24は、例えば羽根車の回転に応じて気流を生成するプロペラファンであり、モータ25の回転子に固定されて図示しない吹き出し口に向けて配置される。
モータ25は、空気調和機100に搭載されたファン24を駆動する。モータ25は、回転子(ロータ)に永久磁石を使用し、固定子に巻線を配置した永久磁石同期モータ(PM同期モータ)である。モータ25にはU相、V相、及びW相の3相の巻線が設けられ、各相の巻線には駆動回路31から出力された交流電圧が印加される。モータ25の具体的な構成は限定されず、任意の形式の永久磁石モータが用いられてよい。
【0031】
モータ25がファン24を回転させることで、室外空気は室外熱交換器20を通過し冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室外機2から吹き出される。室外熱交換器20を通過する気流の流量は、ファン24の回転数、すなわちモータ25の回転数に応じて調整される。
本実施形態では、モータ25は、ファンモータに相当する。以下では、モータ制御装置30によりモータ25が制御される構成について説明する。なお、モータ25は圧縮機21を駆動するコンプレッサモータでもよく、モータ制御装置30はコンプレッサモータの制御装置でもよい。
【0032】
モータ制御装置30は、電源3から供給される電力をもとにモータ25を回転させ、モータ25の回転動作を制御する装置である。
具体的には、モータ制御装置30は、モータ25のベクトル制御を行う。ベクトル制御では、モータ25の固定子に設けられた巻線に流す電流を、モータ25の回転子に磁束を発生させる電流成分(d軸電流)と、回転子にトルクを発生する電流成分(q軸電流)とに分けて、それぞれの電流成分が独立に制御される。なお、本実施形態では、モータ制御装置30がモータ25としてファンモータのベクトル制御を行う場合について説明するが、他のモータのベクトル制御に本技術を適用することも可能である。
図1に示すように、モータ制御装置30は、駆動回路31と、演算回路32と、電流検出回路33と、DC検出回路34とを有する。
【0033】
駆動回路31は、モータ25を駆動するインバータ駆動回路である。駆動回路31は、電源3から供給された直流電圧を3相の交流電圧として出力し、モータ25の各相に印加する。
駆動回路31は、ベクトル制御の制御指令値に基づいてモータ25を駆動する。ここで制御指令値とは、モータ25を制御するためパラメータの指令値である。例えば、モータ25のU相、V相、W相の各相に供給する電圧値についての指令値が制御指令値として駆動回路31に入力される。駆動回路31は、制御指令値が示す電圧を各相に印加する。この電圧に応じてモータ25の各相に電流が流れることでモータ25が駆動する。
また駆動回路31では、モータ25に印加する電圧は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号を用いて制御される。また制御指令値は、PWM信号の幅(Duty)を指定するDuty指令値となる。
【0034】
演算回路32は、モータ25の制御に必要な演算処理を行う回路である。演算回路32は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を搭載したコンピュータを用いて構成される。
演算回路32には、電流検出回路33及びDC検出回路34の検出値や、空気調和機100の室内機1から送信されたコマンドや設定値等が入力される。こられの入力に応じて、モータ25のベクトル制御を行うための制御指令値が算出される。ここでは、モータ25の各相に供給する電圧値を表すDuty指令値が算出される。
【0035】
電流検出回路33は、モータ25に流れるモータ電流を単一のシャント抵抗35を用いて検出する回路である。電流検出回路33の検出結果は、演算回路32に出力される。
ここでモータ電流とは、モータ25を駆動する駆動電流であり、モータ25の巻線に流れる電流である。本実施形態では、U相、V相、及びW相の各相の巻線に流れるU相電流、V相電流、及びW相電流が、モータ電流として検出される。
【0036】
図1に示すように、シャント抵抗35は、駆動回路31(より詳しくは、図4に示すIPM41のGND側配線61)とGNDとの間に接続される。また電流検出回路33は、シャント抵抗35にかかる電圧を増幅する増幅回路や増幅回路の出力をAD変換するADコンバータ等を用いて構成される。
電流検出回路33により増幅された電圧及びシャント抵抗35の抵抗値からシャント抵抗35に流れる電流が検出される。このシャント抵抗35に流れる電流がモータ電流となる。シャント抵抗35を用いてモータ電流を検出する方法については、後に詳しく説明する。
本実施形態では、電流検出回路33とシャント抵抗35とにより電流検出部が構成される。
【0037】
DC検出回路34は、電源3の電圧値を検出する回路である。すなわち、DC検出回路34は、モータ25に給電する直流電圧を検出する。DC検出回路34の検出結果は、演算回路32に出力される。
例えば、電源3に供給される外部電源の電圧や負荷の変動等により電源3の電圧値が変化する場合があり得る。このような場合、演算回路32ではDC検出回路34の検出結果を用いて制御指令値が調整される。これにより電源3の電圧が変化してもモータ25を安定して駆動することが可能である。
【0038】
[モータ制御装置]
図2は、モータ制御装置30の構成例を示すブロック図である。図3は、モータ25の座標軸の定義を示す模式図である。以下では、図2及び図3を参照して、モータ制御装置30の各部の詳細な構成について説明する。
【0039】
まず以下の説明に使用する座標軸について説明する。図3にはモータ25の回転子に設けられた永久磁石5が模式的に図示されている。永久磁石5はモータ25の回転軸(Z軸)と直交するように配置される。ここで、永久磁石5のN極の方向(N極側が+方向)をd軸とし、d軸と直交する軸をq軸とする。なおd軸方向に磁束を発生させるd軸電流は、回転子に磁束を発生させる電流成分となる。またq軸方向に磁束を発生させるq軸電流は、モータ25の回転子にトルクを発生する電流成分となる。
またθeが電気角で表した回転子の推定位置(U軸を基準とした推定角度)であり、ωeが電気角で表した回転子の推定角速度であるものとする。また、Z軸はd軸とq軸との双方に直交する仮想軸であるものとする。
【0040】
図2に示すように、モータ制御装置30は、上記した駆動回路31、演算回路32、及び電流検出回路33を有する。また演算回路32は、機能ブロックとして、3相-2相変換器36、電流近似部37、モータ位置検出部38、及び電圧指令生成部39を有する。演算回路32の各機能ブロックは、専用のIC等を用いて構成されてもよい。
なお図2では、DC検出回路34の図示が省略されている。
【0041】
駆動回路31は、固定座標系(UVW座標系)における電圧指令ベクトル(Vu,Vv,Vw)、すなわちU相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vwを電圧指令生成部39(2相-3相変換器56)から受け、モータ25を駆動するための直流電圧Vdcを電源3から受ける。本実施形態では、U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vwは、ベクトル制御の制御指令値である。
また駆動回路31は、U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vw、及び直流電圧Vdcに応じて、3相の交流電圧をU相、V相、W相の各相の巻線を介してモータ25へ供給することにより、モータ25を駆動する。
具体的には、駆動回路31は、PWM変調器40及びインテリジェントパワーモジュール(IPM)41を有する。
【0042】
PWM変調器40は、電圧指令生成部39から受けた制御指令値(U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vw)をそれぞれPWM信号に変換してIPM41へ供給する。例えば各指令値に応じたパルス幅が設定されたPWM信号が生成される。本実施形態では、PWM変調器40は、制御指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM生成部に相当する。
【0043】
IPM41は、複数のスイッチング素子(図4参照)を有し、PWM信号をPWM変調器40から受け、PWM信号に従って複数のスイッチング素子を所定のタイミングでスイッチング動作させることで電力変換動作を行い、生成された3相の交流電圧をモータ25へ供給することにより、モータ25を駆動する。本実施形態では、IPM41は、PWM信号に基づいてモータ25に電力を供給する電力供給部に相当する。
【0044】
電流検出回路33は、単一のシャント抵抗35を用いて、U相、V相、及びW相の各相の巻線に流れるモータ電流(U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iw)を検出する。電流検出回路33は、各相の電流値をAD変換してデジタルコンピュータで制御可能な信号としてモータ位置検出部38へ供給する。
【0045】
後述するように、単一のシャント抵抗35を用いた電流検出では、検出のタイミングによって、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwのうちのいずれかの電流値が検出される。検出される電流値の種類は、検出時のPWM信号の状態で決まる。電流検出回路33では、例えば検出のタイミング等を適宜制御することで、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwのうち少なくとも2つの電流値を検出する。検出された2つの電流値をもとに、残りの電流値を算出することが可能である。
【0046】
次に演算回路32の各機能ブロックについて説明する。
3相-2相変換器(u,v,w/d-q)36は、U相電流iu、W相電流iw、V相電流ivのうち、2つの電流値を電流検出回路33から受け、それらの電流値をもとに残りの相の電流値を算出する。また3相-2相変換器36は、回転子の推定位置(電気回転角度θe)を積分器44から受け、固定座標系(UVW座標系)における電流ベクトル(iu,iv,iw)を回転座標系(d-q座標系)における電流ベクトル(id,iq)へ変換する。回転座標系(d-q座標系)は、図3に示す互いに交差するd軸とq軸とを有する。
【0047】
なお、電流ベクトル(id,iq)における各成分は、検出された電流ベクトル(iu,iv,iw)から変換されたものなので、検出値と見做すことができる。以下では、単にd軸電流id、q軸電流iqと記載する。
ベクトル制御では、例えばd軸電流id、q軸電流iqを対象としてフィードバック制御が行われる。従って、d軸電流id、q軸電流iqは、ベクトル制御に用いる電流成分となる。このように、3相-2相変換器36は、モータ電流をベクトル制御に用いる電流成分に変換する。本実施形態では、3相-2相変換器36は、電流変換部に相当する。
3相-2相変換器36は、モータ電流を変換した電流成分(d軸電流id及びq軸電流iq)を電流近似部37へ出力する。
【0048】
電流近似部37は、ベクトル制御の制御周期Tごとに、電流成分に基づいて電流成分の近似線を算出し、当該近似線に基づいて電流成分の近似値を算出する。具体的には、電流近似部37は、3相-2相変換器36により変換された電流成分を図示しない電流成分記憶部に記憶し、制御周期Tごとに、電流成分記憶部に記憶された電流成分の値に基づいて近似線を算出する。
ここで近似線とは、時間(位相)の経過とともに変化する電流成分を近似的に表す線である。近似線は、直線でもよいし、曲線でもよい。例えば近似線として回帰直線が用いられる。また例えば、指数近似曲線、累乗近似曲線、対数近似曲線等が用いられてもよい。この他、任意の関数を利用した近似線が用いられてよい。
これらの近似線は、例えば電流成分の変化傾向や、近似線の算出に用いるデータ区間等に応じて適切なものを選択すればよい。本実施形態では、後述するように、最小二乗法により算出された回帰直線が用いられる。
【0049】
またベクトル制御の制御周期Tは、制御指令値を用いてモータ25の制御を行う周期である。電流近似部37では、制御周期Tごとに、電流成分の近似線及び近似値が算出される。
本実施形態では、制御周期Tは、上記したPWM変調器40により生成されるPWM信号のキャリア周期を基準として設定される。PWM信号は、1つのキャリアに設定するパルス幅を変調した信号である。従って、PWM信号のキャリア周期は、モータ25に供給する電圧を調整する最小の時間単位となる。
制御周期Tは、キャリア周期の整数倍に設定される。例えばキャリア周期の数倍の期間が制御周期Tとして設定される。この場合、キャリア周期に近い周期で、近似線を使った制御が行われるため、高精度な制御を安定して実現することが可能となる。
【0050】
例えば、電流近似部37は、3相-2相変換器36から受けたd軸電流idをd軸電流データとして逐次記憶し、d軸電流idの近似線である近似線λdを算出し、近似線λdからd軸電流idの近似値であるd軸電流近似値id'を算出する。
また電流近似部37は、3相-2相変換器36から受けたq軸電流iqをq軸電流データとして逐次記憶し、q軸電流iqの近似線である近似線λqを算出し、近似線λqからq軸電流iqの近似値であるq軸電流近似値iq'を算出する。
電流近似部37は、電流成分の近似値(d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq')をモータ位置検出部38及び電圧指令生成部39にそれぞれ出力する。
【0051】
モータ位置検出部38は、電流成分の近似値(d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq')を電流近似部37から受け、モータ25の回転子の電気回転角度θe、推定角速度ωe、及び機械角速度ωmを算出する。以下で説明する電気回転角度θe、推定角速度ωe、機械角速度ωmは、電流成分の近似値から算出した推定値である。
図2に示すように、モータ位置検出部38は、軸誤差演算処理部42、PLL制御器43、積分器44、ローパスフィルタ45、及び変換器46を含む。
【0052】
軸誤差演算処理部42は、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'を電流近似部37から受け、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを電圧指令生成部39から受け、d軸電流近似値id'、q軸電流近似値iq'、d軸電圧指令値Vd、及びq軸電圧指令値Vqに応じて、回転子の実際の位置と推定位置とのズレである軸誤差Δθを求め、PLL制御器43へ出力する。
【0053】
PLL制御器43は、軸誤差Δθに応じて、直前に推定した推定角速度ωeを修正する。PLL制御器43は、修正された推定角速度ωeを積分器44、ローパスフィルタ45、及び非干渉化制御器53へ出力する。PLL制御器43は、積分器及び比例器を有するPI制御器を用いて実現される。
【0054】
積分器44は、推定角速度ωeを積分することにより、固定座標系(UVW座標系)における回転子の推定位置として電気回転角度θeを算出し、3相-2相変換器36及び電圧指令生成部39へそれぞれ出力する。
【0055】
ローパスフィルタ45は、修正ノイズが多い場合にその修正ノイズを除去するため、推定角速度ωeに対してローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ45は、処理後の推定角速度ωeを変換器46へ出力する。
【0056】
変換器46は、固定座標系(UVW座標系)における推定角速度ωeを極対数Pn(Pnをモータ極対数とする)で割る(極対数の逆数1/Pnをかける)ことにより、機械角で表したロータの機械角速度ωmを求め、電圧指令生成部39へ出力する。
【0057】
電圧指令生成部39は、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'を電流近似部37から受け、電気回転角度θe及び機械角速度ωmをモータ位置検出部38から受け、d軸電流指令値id及び機械角速度指令値ωmを外部(例えば、図示しない上位のコントローラ)から受け、d軸電流近似値id'、q軸電流近似値iq'、電気回転角度θe、機械角速度ωm、d軸電流指令値id、及び機械角速度指令値ωmに応じて、制御指令値(U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vw)を生成する。
【0058】
電圧指令生成部39は、減算器47、速度制御器48、減算器49、減算器50、d軸電流制御器51、q軸電流制御器52、非干渉化制御器53、減算器54、加算器55、及び2相-3相変換器(d-q/u,v,w)56を備える。
【0059】
減算器47は、機械角速度指令値ωmを外部から受け、推定値である機械角速度ωmをモータ位置検出部38から受け、機械角速度指令値ωmから機械角速度ωmを減算し、減算結果を角速度差分として速度制御器48へ出力する。
【0060】
速度制御器48は、例えば、積分器及び比例器を有し、角速度差分に応じて、積分器及び比例器を用いてq軸電流指令値iqを生成する。
【0061】
減算器49は、d軸電流指令値idを外部から受け、d軸電流近似値id'を電流近似部37から受け、d軸電流指令値idからd軸電流近似値id'を減算し、その減算結果をd軸電流制御器51へ出力する。
【0062】
減算器50は、q軸電流指令値iqを速度制御器48から受け、q軸電流近似値iq'を電流近似部37から受け、q軸電流指令値iqからq軸電流近似値iq'を減算し、その減算結果をq軸電流制御器52へ出力する。
【0063】
d軸電流制御器51は、例えば、積分器及び比例器を有し、減算器49からの出力に応じて、積分器及び比例器を用いてd軸電圧指令値Vd**を生成する。
【0064】
q軸電流制御器52は、例えば、積分器及び比例器を有し、減算器50からの出力に応じて、積分器及び比例器を用いてq軸電圧指令値Vq**を生成する。
【0065】
非干渉化制御器53は、q軸電圧指令値Vq**とd軸電圧指令値Vd**とを非干渉化する。具体的には、非干渉化制御器53は、d軸電流近似値id'を電流近似部37から受け、推定角速度ωeをPLL制御器43から受け、d軸電流近似値id'に応じて、q軸電圧指令値Vq**を非干渉化するための非干渉化補正値Vqaを求め、非干渉化補正値Vqaを加算器55へ出力する。また、非干渉化制御器53は、q軸電流近似値iq'を電流近似部37から受け、推定角速度ωeをPLL制御器43から受け、q軸電流近似値iq'に応じて、d軸電圧指令値Vd**を非干渉化するための非干渉化補正値Vdaを求め、非干渉化補正値Vdaを減算器54へ出力する。
【0066】
減算器54は、d軸電圧指令値Vd**をd軸電流制御器51から受け、非干渉化補正値Vdaを非干渉化制御器53から受け、d軸電圧指令値Vd**から非干渉化補正値Vdaを減算し、その減算結果を非干渉化後のd軸電圧指令値Vdとして2相-3相変換器56及び軸誤差演算処理部42に出力する。
【0067】
加算器55は、q軸電圧指令値Vq**をq軸電流制御器52から受け、非干渉化補正値Vqaを非干渉化制御器53から受け、q軸電圧指令値Vq**と非干渉化補正値Vqaとを加算し、その加算結果を非干渉化後のq軸電圧指令値Vqとして2相-3相変換器56及び軸誤差演算処理部42に出力する。
【0068】
2相-3相変換器(d-q/u,v,w)56は、d軸電圧指令値Vdを減算器54から受け、q軸電圧指令値Vqを加算器55から受け、電気回転角度θeを積分器44から受け、例えば、電気回転角度θeに応じて、回転座標系(d-q座標系)における電圧指令ベクトル(Vd,Vq)を固定座標系(UVW座標系)における電圧指令ベクトル(Vu,Vv,Vw)へ変換する。
【0069】
このように、本実施形態では、電流近似部37により算出された近似値(d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq')をもとに、モータ位置検出部38及び電圧指令生成部39により、制御指令値である電圧指令ベクトル(Vu,Vv,Vw)が算出される。この処理は、ベクトル制御の制御周期Tで実行される。すなわち、モータ位置検出部38及び電圧指令生成部39は、ベクトル制御の制御周期Tごとに、近似値に基づいて制御指令値を算出する。本実施形態では、モータ位置検出部38及び電圧指令生成部39が共動することで、制御部が実現される。
【0070】
[1シャント抵抗電流検出]
図4は、IPM41及び電流検出回路33の構成例を示す模式的な回路図である。
IPM41は、電源側配線60と、GND側配線61と、U相用スイッチ部62uと、V相用スイッチ部62vと、W相用スイッチ部62wとを有する。電源側配線60は、電源3の出力端子に接続される。GND側配線61は、シャント抵抗35を介してGNDに接続される。
モータ25は、U相巻線63uと、V相巻線63vと、W相巻線63wとを有する。各巻線の一端は中性点64に接続され、他端は各スイッチ部に接続される。
シャント抵抗35は、GND側配線61とGNDとの間に接続される。
電流検出回路33は、シャント抵抗35の両端に接続され、シャント抵抗35に発生する電圧を検出することでシャント抵抗35を流れる電流を検出する。
【0071】
まずIPM41の回路構成について説明する。
U相用スイッチ部62uは、第1スイッチ素子65uと、第2スイッチ素子66uと、第1ダイオード67uと、第2ダイオード68uとを有する。第1スイッチ素子65u及び第2スイッチ素子66uはこの順番で電源側配線60とGND側配線61との間に接続される。また第1ダイオード67u及び第2ダイオード68uはこの順番で電源側配線60とGND側配線61との間に接続される。U相巻線63uの中性点64と反対側の端子は、第1スイッチ素子65u及び第2スイッチ素子66uの接続点と、第1ダイオード素子67u及び第2ダイオード素子68uの接続点とに接続される。
【0072】
V相用スイッチ部62vは、第1スイッチ素子65vと、第2スイッチ素子66vと、第1ダイオード67vと、第2ダイオード68vとを有する。V相用スイッチ部62vは、U相用スイッチ部62uと同様に構成され、各スイッチ素子の接続点及び各ダイオードの接続点がV相巻線63vの中性点64と反対側の端子に接続される。
またW相用スイッチ部62wは、第1スイッチ素子65wと、第2スイッチ素子66wと、第1ダイオード67wと、第2ダイオード68wとを有する。W相用スイッチ部62wは、U相用スイッチ部62u(V相用スイッチ部62v)と同様に構成され、各スイッチ素子の接続点及び各ダイオードの接続点がW相巻線63wの中性点64と反対側の端子に接続される。
【0073】
各スイッチ部62u、62v、62wを構成するスイッチ素子は、PWM変調器40から出力されるPWM信号に基づいてON/OFFが制御される。なお第1スイッチ素子(65u、65v、65w)及び第2スイッチ素子(66u、66v、66w)は、基本的には排他的に制御される。すなわち、上下アームは相補型なので、下アームは上アームの反転状態をとる。以下では、第1スイッチ素子がONであり第2スイッチ素子がOFFである状態を「1」と記載し、第1スイッチ素子がOFFであり第2スイッチ素子がONである状態を「0」と記載して、各スイッチ部の状態を表す。例えばU相、V相、W相の各スイッチ部のスイッチ状態を(u,v,w)と記載する。ここでu,v,wは、0又は1の値をとる。
【0074】
例えばスイッチ状態が(1,0,0)である場合、U相に接続する第1スイッチ素子65uがONであり、第2スイッチ素子66uがOFFである。またV相(W相)に接続する第1スイッチ素子65v(65w)がOFFであり、第2スイッチ素子66u(66w)がONである。
この場合、U相巻線63uが電源3と中性点64との間に接続され、V相巻線63v及びW相巻線63wが中性点64とGNDとの間に接続される。この場合、シャント抵抗35を流れる電流は、U相巻線63uを流れる正のU相電流iuとなる。
IPM41では、このようなスイッチ状態(u,v,w)がPWM信号により切り替えられてモータ25に印加する電圧が制御される。
【0075】
次に単一のシャント抵抗35を用いた電流検出(以下では、1シャント抵抗電流検出と記載する)について説明する。
1シャント抵抗電流検出では、IPM41のスイッチ状態(u,v,w)に応じてシャント抵抗35を流れる電流の種類及び向きが変化する。3相ごとに(0,1)の状態が考えられるため、スイッチ状態は全部で8通りである。各スイッチ状態において検出可能な電流は以下のとおりである。
【0076】
スイッチ状態#1:(0,0,0):モータ電流の検出はできない。
スイッチ状態#2:(1,0,0):正のU相電流(iu)
スイッチ状態#3:(1,1,0):負のW相電流(-iw)
スイッチ状態#4:(0,1,0):正のV相電流(iv)
スイッチ状態#5:(0,1,1):負のU相電流(-iu)
スイッチ状態#6:(0,0,1):正のW相電流(iw)
スイッチ状態#7:(1,0,1):負のV相電流(-iv)
スイッチ状態#8:(1,1,1):モータ電流の検出はできない。
【0077】
例えば電源3側に接続された第1スイッチ素子は、PWM信号がHighレベルである時にONとなるように構成され、逆にGND側に接続された第2スイッチ素子は、PWM信号がHighレベルである時にOFFとなるように構成される。この場合、各相に入力されるPWM信号がHighレベルである場合、各相のスイッチ状態は「1」となり、PWM信号がLowレベルである場合、各相のスイッチ状態は「0」となる。
従って、電流検出回路33で検出可能な電流は、各相に入力されるPWM信号の状態によって決定される。
【0078】
ここでPWM信号のキャリア周期と同じパルス幅を100%として、電流検出に必要な最小パルス幅をX%とする。この場合、モータ電流(U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iw)を検出する為には、各相に入力される3つのPWM信号が次の2つの条件を満たす必要がある。
条件1:スイッチ状態#1及び#8を除くスイッチ状態がX%以上発生する。
条件2:条件1を満たし、異なる電流に対応した2種類のスイッチ状態が電流検出周期中に発生する。
ここで電流検出周期とは、PWM信号のキャリア周期である。すなわち、一つのキャリア周期の中で、X%以上のパルス幅を持つパルスにより、2種類以上の電流を検出可能な状態が実現される必要がある。
このような条件を満たしたPWM信号を生成する方法としてパルスシフトと呼ばれる方法が用いられる。
【0079】
[パルスシフト]
図5は、パルスシフトについて説明するための模式図である。
パルスシフトは、電圧指令ベクトル(Vu,Vv,Vw)に基づいてPWM信号を生成するPWM変調器40により実行される。なお電圧指令ベクトルは、例えば各相に入力されるPWM信号のパルス幅を設定するためのDuty指令値である。
【0080】
図5Aには、上から順番にU相用スイッチ部62u、V相用スイッチ部62v、W相用スイッチ部62wに供給されるPWM信号6u、PWM信号6v、PWM信号6wが模式的に図示されている。ここでは、1キャリア周期ΔT分のPWM信号が、キャリア周期ΔTの中心時刻に対して対称となるように配置される。またPWM信号6u、6v、6wのパルス幅(Duty指令値)はこの順番で小さくなっている。
【0081】
例えば、PWM信号6u、6v、6wが全てLowレベルである期間τ1及びτ7は、スイッチ状態#1(0,0,0)となる。またPWM信号6uだけがHighレベルである期間τ2及びτ6は、スイッチ状態#2(1,0,0)となる。またPWM信号6u、6vがHighレベルである期間τ3及びτ5は、スイッチ状態#3(1,1,0)となる。またPWM信号6u、6v、6wが全てHighレベルである期間τ4は、スイッチ状態#8(1,1,1)となる。
【0082】
図5Aに示すパターンでは、τ1、τ4、及びτ7では、電流の検出ができない。またτ2及びτ6では、その幅がX%以上であれば正のU相電流(iu)が検出可能である。またτ3及びτ5では、その幅がX%以上であれば負のW相電流(-iw)が検出可能である。
【0083】
なお、τ2、τ3、τ5、τ6の幅がX%よりも小さい場合には、電流の検出ができない。例えば、PWM信号6u、6v、6wのパルス幅が略同様な場合等には、図5Aに示すようなパルス配置では、電流を検出できなくなる可能性がある。
そこで、パルスシフトでは、PWM信号の特性を利用して、パルス幅及びパルス配置が変更される。
【0084】
例えばPWM信号の特性の一つに同値加減算の等価性がある.これはPWM信号の全相に同じ値を足しても,或いは全相から同じ値を引いても出力される平均電圧は変わらないというものである。
【0085】
図5Bには、図5Aに示す各PWM信号6から同じ価だけパルス幅を小さくした信号が図示されている。このようにパルス幅が同じ価だけ小さくなったPWM信号6u、6v、6wも、図5Aに示すPWM信号と同等の信号として扱うことが可能である。もちろん、パルス幅が同じ価だけ大きくなった信号を用いることも可能である。
【0086】
またPWM信号の特性の一つとして1キャリア周期内でパルス発生タイミングを任意に変化させても出力電圧は変化しないという特性がある。すなわち、キャリア周期内であれば、各相のパルス位置(例えばパルスの立ち上がるタイミング)を自由に設定することが可能である。なおパルスの立ち下がるタイミングは、パルス幅を設定することで自動的に決まる。
【0087】
図5Cでは、図5Bに示す各PWM信号のパルス位置を変更した信号が図示されている。ここでは、各PWM信号のパルス幅に応じて配置が変更されている。例えば、パルス幅が最も短いPWM信号6wはキャリア周期の開始時に立ち上がるように配置され、パルス幅が最も長いPWM信号6uはキャリア周期の終了時に立ち下がるように配置される。残りのPWM信号6vは、例えば他のPWM信号とできるだけ重複しないように配置される。
このようにパルス位置がシフトされたPWM信号6u、6v、6wも、図5A及び図5Bに示すPWM信号と同等の信号として扱うことが可能である。
【0088】
このようにパルスシフトの処理では、モータ電流(U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iw)を検出可能となるように、PWM信号のパルス位置が調整される。すなわち、1キャリア周期において2種類の電流を検出可能な状態がX%以上の期間発生するように、パルス位置が調整される。
パルス位置を調整する方法は限定されず、例えば上記した条件1及び2を満たすように、パルス位置を調整可能な任意の方法が用いられてよい。
【0089】
[パルスシフトに伴うモータ電流の波形変化]
図6は、モータ電流の波形とPWMパルスとの関係を示す模式的なグラフである。図7は、パルスシフトに伴うモータ電流の変化の一例を示す模式図である。
上記したパルスシフトを行う場合、電流検出のタイミングの差によって、検出されるモータ電流(iu,iv,iw)に歪が生じる場合がある。この結果、d軸電流id及びq軸電流iqが変動することが考えられる。以下では、図6及び図7を参照して、パルスシフトに伴うモータ電流の波形変化について説明する。
【0090】
図6Aは、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwのグラフである。グラフの縦軸は電流であり、横軸は時間である。このグラフでは、電気回転角度θeの回転周期(以下では、電気角周期Teと記載する)で振動する電流波形が示されている。図6Aに示すように、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwは、120°ずつ位相がずれた交流電流となる。
以下では、各タイミングにおいて、電流値が最大となる相を最大相と記載し、電流値が最小となる相を最小相と記載し、最大相と最小相との間の電流値となる相を中間相と記載する。最大相、最小相、及び中間相は、60°周期で入れ替わる。
【0091】
また図6Aには、電流値が最小となる相(最小相)の入れ替わりがあった時間範囲70aが点線の領域により図示されている。時間範囲70aでは、最小相がU相電流iuからV相電流ivに入れ替わる。
また図6Aには、電流値が最大となる相(最大相)の入れ替わりがあった時間範囲70bとが一点鎖線の領域により図示されている。時間範囲70bでは、最大相がW相電流iwからU相電流iuに入れ替わる。
【0092】
なお、各相に流れるモータ電流(U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iw)の電流値、すなわち各相の巻線に印加する電圧は、PWM信号6u、6v、6wのパルス幅に対応している。ここでは、モータ電流の電流値が大きいほどPWM信号のパルス幅が大きくなる。従って、最大相、中間相、最小相では、各相に供給されるPWM信号のパルス幅がこの順番で小さくなる。
【0093】
図6Bは、時間範囲70aにおける各相のPWM信号6u、6v、6wの波形を示すグラフである。ここでは、最小相が入れ替わるタイミングtaがわかるように時間範囲70aを拡大している。
例えばタイミングtaの直前までは、PWM信号6uのパルス幅が最小であるが、タイミングtaの直後には、PWM信号6vのパルス幅が最小となる。すなわちタイミングtaを境にして、最小相であったPWM信号6uは中間相となり、中間相であったPWM信号6vは最小相となる。
【0094】
上記したパルスシフトでは、例えば図5Cを参照して説明したように、各相のPWM信号6u、6v、6wのパルス幅を基準として各々のパルス位置が調整される。その一例として、ここでは、最小相、中間層、最大相の順番でパルスが立ち上がるようにパルス位置が調整される。例えば、タイミングtaの直前までは、キャリア周期内においてPWM信号6uが最初に立ち上がり、次にPWM信号6vが立ち上がるという順番である。一方で、タイミングtaの直後からは、キャリア周期内においてPWM信号6vが最初に立ち上がり、次にPWM信号6uが立ち上がるという順番に変更される。
同様に、最大相が入れ替わるタイミングtbにおいても、パルス位置の相対的な位置関係の変化が発生する。
【0095】
図6Cは、時間範囲70bにおける各相のPWM信号6u、6v、6wの波形を示すグラフである。ここでは、最大相が入れ替わるタイミングtbがわかるように時間範囲70bを拡大している。
例えばタイミングtbの直前までは、PWM信号6wのパルス幅が最大であるが、タイミングtbの直後には、PWM信号6uのパルス幅が最大となる。すなわちタイミングtbを境にして、最大相であったPWM信号6wは中間相となり、中間相であったPWM信号6uは最大相となる。
ここで、図6Bと同様のパルスシフトが行われる。この場合、タイミングtbの直前までは、キャリア周期内においてPWM信号6uの後でPWM信号6wが立ち上がるという順番でパルス位置が設定される。一方で、タイミングtbの直後からは、PWM信号6wの後でPWM信号6uが立ち上がるという順番に変更される。
【0096】
このように、最小相及び最大相が入れ替わるタイミングでは、図6Aに示すようにモータ電流の電流値が急激に変化し、電流波形にがたつきが見られる。
この理由として、電流値の最大相または最小相が入れ替わるタイミングでは、パルスシフトによりPWM信号のパルス位置が瞬間的に変動し、モータ電流に不連続点が生じるといった点が挙げられる。この点について、図7を参照して詳しく説明する。
【0097】
図7の上側のグラフは、PWM信号6u、6v、6wの波形を示すグラフである。また図7の下側のグラフは、PWM信号6uに応じて変化するU相電流iuを示すグラフである。
図7では、タイミングtcを境にして、最大相がW相電流iwからU相電流iuに入れ替わる。この場合、タイミングtcを境に、キャリア周期ΔT内においてPWM信号6uの後でPWM信号6wが立ち上がるという順番が、PWM信号6wの後でPWM信号6uが立ち上がるという順番に変更される。
【0098】
また図7には、キャリア周期ごとに行われる電流検出のタイミングt0、t1、t2、及びt3が矢印を用いて図示されている。このうち、タイミングt1は、最大相の入れ替わりタイミングtcの直前のキャリア周期での電流検出タイミングであり、タイミングt2は、タイミングtcの直後のキャリア周期での電流検出タイミングである。またタイミングt0及びt3は、比較用のタイミングである。タイミングt0、t1、t2、及びt3では、スイッチ状態#7(1,0,1)であり-ivが検出される。
【0099】
モータ電流は、PWM信号6がON(Highレベル)になると流れ、OFF(Lowレベル)になると止まる。例えばU相電流iuに着目すると、U相電流iuの電流値は、図7の下側のグラフに示すように、三角形状で上下するのこぎり型の波形となる。なお、この波形の立ち上がりと立ち下がりの傾きは等しくなる。
最大相及び最小相の入れ替わりが発生すると、パルスシフトにより、パルスの立ち上がりの順番が入れ替えられ、PWM信号がONとなるタイミング(パルスの立ち上がりのタイミング)が変化する。
【0100】
PWM信号がONとなるタイミングが変動すると、その変動に応じて各検出タイミングで検出される電流値が上下する可能性がある。例えば、図7ではt0とt1におけるU相電流iuの電流値の差Δiu0、及び、t2とt3におけるU相電流iuの電流値の差Δiu2はほとんどないが、t1とt2との間では、パルスシフトにより電流値が変動し、タイミングtcを境にして比較的大きな電流値の差Δiu1が発生する。この電流値の差Δiu1が不連続点となり、図6Aで説明したがたつきとして表れる。
【0101】
この他にも、1シャント抵抗電流検出では、パルスシフトによってPWM信号に応じた電流波形等が変化する場合には、検出される電流値に不連続点が発生することが考えられる。また各種のノイズや外乱等によっても、瞬間的に電流値が大きく変化し、不連続点が発生する可能性もある。
例えば、実際に検出した電流値をそのままフィードバックする方式では、上記したような不連続点が発生し電流値が急激に変化した場合、電流値が振動するハンチング現象等が発生し、モータ25の制御が不安定になる可能性がある。
【0102】
また1シャント抵抗電流検出に用いられるシャント抵抗35の抵抗値は比較的小さい。このため、電流値が小さい低回転数域では、シャント抵抗35に発生する電圧も小さく、結果として電流の検出精度が粗くなる。このように精度の低い電流値をフィードバックした場合には、モータ25の制御が不安定になる可能性がある。
【0103】
[モータ制御装置の動作]
このような電流値の急激な変化による影響を抑制するため、本実施形態では、近似線から算出した近似値を用いたベクトル制御が行われる。
ベクトル制御の基本的な流れは、PWM信号の各キャリアでモータ電流(iu,iv,iw)を検出し、検出した電流を電流成分(id,iq)に変換し、電流成分を集めたデータから一定の周期(制御周期T)で近似線(λd,λq)を生成し、近似線から近似値(id',iq')を算出して制御指令値にフィードバックするというものである。
【0104】
例えば実際の電流値が急激に変化するような場合であっても、近似線から算出した近似値は、実際の電流値よりも変化が緩やかである。このため、近似線から算出した近似値をフィードバックすることで、実際の電流値の急激な変化による影響を十分に抑制することが可能となる。これにより、ハンチング現象等の発生を回避することが可能となる。
また低回転域のように、電流値の検出精度が低い場合であっても、近似線から算出された近似値を用いることで、フィードバックする値のばらつきを低減することが可能となる。
この結果、モータを安定して精度よく制御することが可能となる。
【0105】
また本実施形態では、近似線として、電流成分を用いて最小二乗法により算出された回帰直線が用いられる。回帰直線を用いることで、電流成分の近似値を精度よく安定して算出することが可能となる。
以下では、d軸電流idの近似線λdを回帰直線λdと記載し、q軸電流iqの近似線λqを回帰直線λqと記載する。
【0106】
図8は、モータ制御装置30の動作の一例を示すフローチャートである。図9は、近似線及び近似値の算出処理の一例を示す模式図である。以下では、図8及び図9を参照して、モータ制御装置30によるベクトル制御の流れについて説明する。
【0107】
図9には、連続する制御周期(0)、制御周期(1)、及び制御周期(2)が帯状の領域により模式的に図示されている。各制御周期は、キャリア周期ΔTを基準に設定される。またキャリアを表す三角波のグラフと、制御周期(1)において検出されたd軸電流id及びq軸電流iqをプロットしたグラフとが模式的に図示されている。
制御周期の長さTは、キャリア周期ΔTの整数倍であり、ここではT=4×ΔTに設定されている。もちろん制御周期Tの値はこれに限定されるわけではない。
またd軸電流id及びq軸電流iqのグラフの横軸は、角度θを用いて表している。θは、電気回転角度θeに対応する。
【0108】
図8に示すように、まずベクトル制御の制御指令値に基づいてモータ25が駆動される(ステップ101)。例えば直前の制御周期でモータ位置検出部38及び電圧指令生成部39により算出された制御指令値が駆動回路31のPWM変調器40に入力される。ここで制御指令値は、U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vwである。
PWM変調器40により、各制御指令値に応じたPWM信号6u、6v、6wが生成されIPM41に入力される。このとき、図5等を参照して説明したパルスシフトにより各PWM信号のパルス位置が適宜調整される。
IPM41によりPWM信号6u、6v、6wに応じた電圧がモータ25のU相巻線63u、V相巻線63v、W相巻線63wに供給され、モータが駆動される。
【0109】
次に、1シャント抵抗電流検出によりモータ電流が検出される(ステップ102)。ここでは、電流検出回路33により、モータ電流がキャリア周期ΔTごとに検出される。具体的には、1つのキャリア周期ΔTの間に、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwのうち、2つの相の電流が検出され、3相-2相変換器36に入力される。なお残りの相の電流値は、3相-2相変換器36において2つの相の電流値から適宜算出される。
キャリア周期ΔTごとにモータ電流を検出することで、例えばモータ電流を十分に短い時間間隔で検出することが可能となり、回帰直線の精度を高めることが可能となる。
【0110】
図9に示すPWM信号のキャリアのグラフには、電流検出のタイミングが丸印を用いて模式的に図示されている。このタイミングは、例えばU相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwが全て算出されるタイミング(例えば3相-2相変換器36によって3相全ての電流値が算出されるタイミング)を表している。実際には、2相分の電流が先に検出される。
【0111】
2相分の電流検出のタイミングは、目的とする電流を検出可能となるように、PWM信号のパルス位置に合わせて設定される。具体的には、パルスシフトによって調整されたパルス位置に合わせて電流検出のタイミングが設定される。このように、電流検出回路33は、PWM信号のパルス位置に応じたタイミングでモータ電流を検出する。これにより、例えば1つのキャリア周期の間に、2種類の電流値を確実に検出することが可能となる。
【0112】
また図9に示すように、本実施形態では、キャリア周期の後半で、電流が検出される。逆に言えば、キャリア周期の後半で電流を検出することが可能なようなパルスシフトが行われる。これにより、例えばキャリア周期の前半で電流を検出する場合にくらべ、電流を検出してから制御をかけるまでの時間(電流を検出してから指令値を更新するまでの時間)を短くすることができるため、高精度なモータ制御が可能となる。
【0113】
次に、3相-2相変換器36により、モータ電流(U相電流iu、V相電流iv、W相電流iw)がd軸電流id及びq軸電流iqに変換される(ステップ103)。まず、電流検出回路33により検出された2相分の電流から、残りの相の電流が算出される。そして3相分の電流(iu、iv、iw)に対してdq変換が行われ、d軸電流id及びq軸電流iqが算出される。d軸電流idはd軸電流データとして記憶され、d軸電流iqはq軸電流データとして記憶される。
【0114】
次に、制御指令値を更新する制御タイミングであるか否かが判定される(ステップ104)。例えば前回の制御を行ったタイミング以降のキャリアの数がカウントされ、キャリアの数が所定数M以上となった場合には、制御タイミングであると判定される。
具体的には、制御周期Tは、キャリア周期ΔTの1倍から5倍までの範囲で設定される。このような範囲に制御周期を設定することで、キャリア単位で設定される各相の電圧(電流)を頻繁に制御することが可能となる。この結果、十分な精度で安定した制御を実現することが可能となる。
【0115】
ここでは、制御周期Tは、図1に示すファン24を回転させるモータ25(ファンモータ)を制御する周期である。この制御周期Tは、圧縮機21(コンプレッサ)の制御周期と合わせてもよい。すなわち、制御周期Tは、空気調和機100に搭載された圧縮機21を駆動するコンプレッサモータを制御するための周期に設定されてもよい。
【0116】
例えば、キャリアの数が所定数Mよりも小さく、制御タイミングではないと判定された場合(ステップ104のNo)、ステップ102及びステップ103の処理が再度実行され、新たにd軸電流id及びq軸電流iqが記憶される。
図9に示す例では、制御周期Tがキャリア周期の4倍(M=4)に設定される。従って、制御周期(1)では、4回分のd軸電流(id(n-3)、id(n-2)、id(n-1)、id(n))が算出され記憶される。また、4回分のq軸電流(iq(n-3)、iq(n-2)、iq(n-1)、iq(n))が算出され記憶される。
ここで、nは、d軸電流データ(q軸電流データ)に記憶されたデータの総数であり、最新のデータ点を表すインデックスである。
【0117】
キャリアの数が所定数M以上となり、制御タイミングであると判定された場合(ステップ104のYes)、d軸電流データ及びq軸電流データを用いて、d軸電流idの回帰直線λdとq軸電流iqの回帰直線λqとが算出される(ステップ105)。上記したように、本実施形態では、d軸電流データ(q軸電流データ)に最小二乗法を適用して回帰直線λd(回帰直線λq)が算出される。
【0118】
回帰直線λdは、例えば以下に示す(1)式により算出される。
【0119】
【数1】
・・・(1)
【0120】
(1)式に示すように、回帰直線λdは傾きがaで切片がbとなる線形な方程式となる。また(1)式は角度θにおけるd軸電流近似値id'を表している。
傾きa及び切片bは最小二乗法により算出されるパラメータであり、以下の式を用いて表される。
【0121】
【数2】
・・・(2)
【0122】
Nは、回帰計算を行う区間範囲(図9ではN=4)である。区間範囲は、回帰計算に用いるデータの範囲であるとも言える。
nは、d軸電流データ(q軸電流データ)内のデータの総数であり、制御タイミングにおける最新のデータ点を表している。
id(j)は、j番目のキャリアで算出されたd軸電流idの値である。またiq(j)は、j番目のキャリアで算出されたq軸電流iqの値である。
θ(j)は、j番目のキャリアにおけるd軸電流id及びq軸電流iqの検出角度(検出タイミング)を表している。ここでは、キャリアが切り替わるタイミング(キャリアの境界)をθ(j)に設定している。
Avg(id)、Avg(iq)、及びAvg(θ)は、回帰計算を行う区間範囲におけるd軸電流id、q軸電流iq、及び角度θの平均値である(式(5)参照)。
ωe1は、制御周期(1)における推定角速度であり、例えば制御周期(1)の直前の制御周期(0)に図2に示すPLL制御器43により算出される。
【0123】
同様に回帰直線λqは、例えば以下に示す(3)式により算出される。
【0124】
【数3】
・・・(3)
【0125】
(3)式に示すように、回帰直線λqは傾きがcで切片がdとなる線形な方程式となる。また(3)式は角度θにおけるq軸電流近似値iq'を表している。
傾きc及び切片dは最小二乗法により算出されるパラメータであり、以下の式を用いて表される。
【0126】
【数4】
・・・(4)
【0127】
また、Avg(id)、Avg(iq)、及びAvg(θ)は、以下の式により算出される。
【0128】
【数5】
・・・(5)
【0129】
電流近似部37では、上記した(2)式に従ってd軸電流の回帰直線λdの傾きa及び切片bが算出される。また、(4)式に従ってq軸電流の回帰直線λqの傾きc及び切片dが算出される。
図9には、制御周期(1)において、連続する4つのキャリア(N=4)で検出されたd軸電流(id(n-3)、id(n-2)、id(n-1)、id(n))から算出されたd軸電流の回帰直線λdと、q軸電流(id(n-3)、id(n-2)、id(n-1)、id(n))から算出されたq軸電流の回帰直線λqとが太線の矢印により模式的に図示されている。
【0130】
なお、回帰直線λd及びλqを計算する範囲(回帰計算の区間範囲N)は、任意に設定することが可能である。
例えば図9では、ベクトル制御の制御周期Tと同様の範囲が区間範囲Nに設定される。すなわち、制御周期Tに含まれるキャリア数Mが区間範囲Nに設定されN=Mとなっている。これにより、例えば前回のフィードバック制御の後のd軸電流id及びq軸電流iqの値を反映した回帰直線を算出することが可能となり、短時間での電流の変化に十分に対応することが可能となる。この結果、高精度なモータ制御を実現することが可能となる。
【0131】
また、制御周期Tをコンプレッサモータの制御周期に合わせた場合、回帰計算の区間範囲Nは、コンプレッサモータの制御周期と一致する。これにより、回帰計算等を含むファンモータの制御や、コンプレッサモータの制御を共通の周期で行うことが可能となり、周期の違いによる演算負荷の集中等を回避することが可能となる。
【0132】
また、制御周期Tよりも長い期間における電流成分(d軸電流id及びq軸電流iq)に基づいて、回帰直線λd及びλqを算出してもよい。例えば、区間範囲Nを電気角周期に合わせてもよい。この場合、例えば電気角が1回転する間のd軸電流id及びq軸電流iqを検出して記憶し、そのデータを用いて各回帰直線λd及びλqが算出される。これにより、比較的長い電流成分の傾向を反映した近似線を算出することが可能となる。この結果、例えばモータ25に発生する振動等の長周期の外乱の影響を排したフィードバック制御を実現することが可能となる。
【0133】
この他、区間範囲Nを設定する方法は限定されない。例えば電気角周期の2倍や、電気角周期の1/2といった区間範囲Nが設定されてもよい。また他の周期等を基準にして区間範囲Nが設定されてもよい。
【0134】
次に、回帰直線λd及びλqから、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'が算出される(ステップ106)。
d軸電流近似値id'は、(1)式の角度θを設定することで算出される。またq軸電流近似値iq'は、(3)式の角度θを設定することで算出される。
角度θは、回帰直線λd及びλqにおける横軸を表すパラメータでありd軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'をとるタイミングに対応する。角度θを設定することは、例えば制御に用いる電流を読み取るタイミングを設定することに対応する。角度θは任意に設定することが可能であり、例えば未来の電流値を推定するように設定することや、や過去の電流値を推定するように設定することが可能である。
【0135】
図9に示す例では、角度θは、θ=θ(n)に設定される。すなわち、制御周期(1)が制御周期(2)に切り替わるタイミングでのd軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'が算出される。図9ではθ(n)でのd軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'が黒丸により模式的に図示されている。
例えば、θ(n)は、近似値の算出処理を実行する時刻よりも後の時刻である。また、θ(n)のタイミングでフィードバック制御が適用される。この場合、近似値は、未来の制御タイミングでの電流値を推定したものとなる。これにより、制御タイミングでの推定値を用いた高精度なフィードバック制御を実行することが可能となる。
【0136】
また例えば、θ(n)は、近似値の算出処理を実行する時刻よりも前の時刻であってもよい。この場合、フィードバック制御はθ(n)以降に行われ、そこで用いられる近似値は、過去の電流値を推定したものとなる。また制御周期(1)でのフィードバック制御は、例えば次の制御周期(2)になった直後に行われる。このように過去の電流を推定した近似値を用いた場合でも、適正にフィードバック制御を実行することが可能である。また実際に電流を検出してからフィードバック制御を行うまでの期間を比較的長くとることが可能である。このため、演算処理に余裕を持たせることが可能となる。
【0137】
この他、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'をとるタイミング(角度θ)を設定する方法は限定されない。上記ではキャリアが切り替わるタイミングθ(n)に設定しているが、例えばθ(n)+αやθ(n)-αに設定されてもよい。ただしαは、θ(n)に対するシフト量であり、0<α<ΔTを満たす範囲で、演算回路32の処理能力等に応じて設定される。
また例えば、θ(n-1)やθ(n+1)等が角度θとして用いられてもよい。
【0138】
このように、電流近似部37では、d軸電流idの検出値に基づいて、d軸電流idの近似線(回帰直線λd)とd軸電流近似値id'とが算出される。またq軸電流iqの検出値に基づいて、q軸電流iqの近似線(回帰直線λq)とq軸電流近似値iq'とが算出される。これにより、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'による安定したベクトル制御を実現することが可能となる。
【0139】
次に、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'から、モータの制御指令値が算出される(ステップ106)。
電流近似部37により算出されたd軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'は、モータ位置検出部38と、電圧指令生成部39に入力される。
例えばモータ位置検出部38では、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'と直前の制御周期で用いられたd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqとから、電気回転角度θeと、機械角速度ωmとが算出される。
【0140】
電圧指令生成部39では、例えば減算器49によりd軸電流指令値Idとd軸電流近似値id'との差分が算出され、減算器50によりq軸電流指令値Iqとq軸電流近似値iq'との差分が算出される。これらのd軸電流及びq軸電流についての差分は、d軸電流制御器51及びq軸電流制御器52に入力され、それぞれd軸電圧指令値Vd**及びq軸電圧指令値Vq**に変換される。
【0141】
また電圧指令生成部39では、非干渉化制御器53により、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'から非干渉化補正値Vda及びVqaが算出される。ここで、非干渉化補正値Vda及びVqaは、以下の式に従って算出される。
【0142】
【数6】
・・・(6)
【0143】
(6)式において、Ldは、モータ25のd軸インダクタンスであり、Lqは、モータ25のq軸インダクタンスである。またφは、ロータ磁束の線間実効値である。
またωeは、モータ25の推定角速度であり、例えば制御周期(1)における推定角速度ωe1が用いられる。
このように、d軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'を用いて算出された非干渉化補正値Vda及びVqaは、それぞれ減算器54及び加算器55に入力される。
【0144】
減算器54では、d軸電圧指令値Vd**から非干渉化補正値Vdaが減算されd軸電圧指令値Vdが算出される。また加算器55では、q軸電圧指令値Vq**に非干渉化補正値Vqaが加算されq軸電圧指令値Vqが算出される。
そして2相-3相変換器56により、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqが制御指令値となるU相電圧指令値Vu、V相電圧指令値Vv、W相電圧指令値Vwに変換される。これらの制御指令値は、適宜駆動回路31に出力される。
【0145】
制御指令値が算出されると、モータ25の制御を終了するか否かが判定される(ステップ108)。制御を終了する場合(ステップ108のYes)、ループ処理が終了する。また制御を継続する場合(ステップ108のNo)、ステップ101以降の処理が再度実行され、近似値を用いたベクトル制御が継続される。
【0146】
以上、本実施形態に係るモータ制御装置30では、ベクトル制御の制御周期Tごとに、1シャント抵抗電流検出の結果を用いてベクトル制御に用いる電流成分(id、iq)の近似線(λd及びλq)が算出される。この近似線を用いて算出した近似値(id'、iq')により、ベクトル制御の制御指令値(Vu、Vv、Vw)が算出される。近似線を用いることで、モータ電流(U相電流iu、V相電流iv、W相電流iw)が急激に変化した場合でも、フィードバックする値を安定させることができるため、モータ25を安定して精度よく制御することが可能となる。
【0147】
モータ制御の方法として、センサレスベクトル制御が注目されている。センサレスベクトル制御は、モータの回転位置を検出するセンサ等を設ける必要がないため、装置のコストダウンが期待できる。またセンサレスベクトル制御を実現するにあたり、電流検出の手法として1シャント抵抗電流検出が挙げられる。この手法では抵抗1つで電流が検出可能となるため、例えばホール素子等を用いた従来の電流検出法と比較して十分なコストダウンが見込める。
【0148】
一方で、1シャント抵抗電流検出では、PWM信号のパルスを調整するパルスシフトが必要となる。パルスシフトを行う場合、例えば電流検出のタイミングに差が生じるために、検出される電流値が急激に変化する可能性がある(図6及び図7参照)。また低回転数域では電流の検出精度が粗くなり、駆動が不安定になる。この結果、最悪の場合にはモータが脱調停止する可能性がある。
【0149】
本実施形態では、ベクトル制御の制御周期Tごとに、d軸電流idの回帰直線λdが算出され、回帰直線λdからd軸電流近似値id'が算出される。また制御周期Tごとに、q軸電流iqの回帰直線λqが算出され、回帰直線λqからq軸電流近似値iq'が算出される。そしてd軸電流近似値id'及びq軸電流近似値iq'をフィードバックするベクトル制御が行われる。
【0150】
このように、回帰直線λd及びλqを用いることで、例えば図6及び図7等を参照して説明したパルスシフトによる電流値の脈動(最大相や最小相の入れ替わり時の瞬間的ながたつき)の影響などが緩和される。例えば、急激に電流値を変化させるようなフィードバックが回避され、ハンチング現象等が回避される。
またファン24が低回転で駆動される場合、電流の検出精度が粗くなる可能性があるが、回帰直線λd及びλqを用いることで、フィードバックに用いる値を安定して算出することが可能となる。また、低回転時の電流に見られる高調波による脈動等も低減され、モータ駆動の安定性が向上する。
【0151】
また制御周期Tは、コンプレッサ(圧縮機21)の制御周期と同一に設定することが可能である。これにより、例えばファンモータ(モータ25)とコンプレッサモータとの制御を共用のCPUで行うことが可能となる。すなわち、モータ制御装置30の演算回路32を用いて圧縮機21のモータを制御することが可能となる。これにより演算ユニットの数を減らすことが出来るため、装置コストを抑えることが可能となる。
【0152】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0153】
例えば以上の実施形態では、モータ制御装置30が空気調和機100に搭載されたファン24を駆動するファンモータ(モータ25)を制御する例について説明したが、これに限られない。例えば、モータ制御装置30により、空気調和器100に搭載された圧縮機21を駆動するコンプレッサモータが制御されてもよい。この場合、コンプレッサモータについての1シャント抵抗電流検出が実行され、その結果がコンプレッサモータのd軸電流及びq軸電流に変換される。そして、コンプレッサモータのd軸電流及びq軸電流の各々について、近似線及び近似値が算出され、各電流の近似値がフィードバックされる。これにより、コンプレッサモータを安定して精度よく制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0154】
6u、6v、6w…PWM信号
24…ファン
25…モータ
30…モータ制御装置
31…駆動回路
32…演算回路
33…電流検出回路
35…シャント抵抗
36…3相-2相変換器
37…電流近似部
38…モータ位置検出部
39…電圧指令生成部
40…PWM変調器
41…IPM
100…空気調和機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9