(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142978
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ノイズ低減装置
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230928BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20230928BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20230928BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230928BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20230928BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20230928BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H01F17/06 K
H01F27/00 S
H01F27/06 101
H01F27/26 130W
H01F27/29 125
H03H7/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050141
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 侑也
【テーマコード(参考)】
5E070
5E321
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AA05
5E070AB01
5E070BA15
5E070CA07
5E070DA03
5E070DB04
5E070DB06
5E070EA02
5E321AA14
5E321AA32
5E321CC16
5E321GG09
5J024AA01
5J024DA01
5J024DA26
5J024DA32
5J024EA01
5J024EA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分割された磁性体コアにおいて、高いノイズ抑制効果を発揮するノイズ低減装置を提供する。
【解決手段】ノイズ低減装置100において、ケース4は、環状の磁性体を開環状に分割した形状を有する第1分割コア1及び第2分割コア2を、組み合わされた環状状態で収容する。導電部材3は、環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2が有する挿通孔を挿通し、ケース4の外に両端部が延び出す。金属端子7は、基板6に実装されるコンデンサC1、C2と接続する第1接続部72、73と、グランド電位を持つグランド部材と接続する第2接続部74、75と、を有する。リード端子8、9は、導電部材3とコンデンサC1、C2とを接続する。金属端子7は、金属端子7がケース4に固定された状態で、ケース内に収容された環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2を互いに接近する方向に押圧する押圧部76を更に有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ低減装置であって、
環状の磁性体を開環状に分割した形状を有する第1分割コア及び第2分割コアと、
前記第1分割コア及び前記第2分割コアを、組み合わされた環状状態で収容するケースと、
前記環状状態の前記第1分割コア及び前記第2分割コアが有する挿通孔を挿通し、前記ケースの外に両端部が延び出す導電部材と、
コンデンサが実装される基板と、
前記コンデンサと接続する第1接続部と、グランド電位を持つグランド部材と接続する第2接続部と、を有する金属端子と、
前記導電部材と前記コンデンサとを接続するリード端子と、
を備え、
前記金属端子は、前記金属端子が前記ケースに固定された状態で、前記ケース内に収容された前記環状状態の前記第1分割コア及び前記第2分割コアを互いに接近する方向に押圧する押圧部を更に有する、ノイズ低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズ低減装置であって、
前記ケースは、開口部を有し、
絶縁材料により構成され、前記開口部を閉塞する蓋を更に備え、
前記押圧部は、前記蓋を介して前記環状状態の前記第1分割コア及び前記第2分割コアを押圧する、ノイズ低減装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のノイズ低減装置であって、
前記第2接続部は、前記第2接続部に設けられた貫通孔と、前記ケースに設けられた取付孔と、に留め具の軸部が通され、かつ、前記軸部が前記グランド部材に固定された際に、前記留め具の頭部と前記ケースとの間に挟持されるように構成され、
前記押圧部は、前記第2接続部が前記頭部と前記ケースとの間に挟持された際に、弾性変形し、当該弾性変形の反力により前記環状状態の前記第1分割コア及び前記第2分割コアを押圧する、ノイズ低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズ低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器から導電バーを介して出力される出力電圧や出力信号に混入する電子機器の動作周波数のノイズを抑制するノイズ低減装置が知られている。
特許文献1には、磁性体コアが有する貫通孔に導電バーを貫通させて構成され、樹脂でモールドされたチョークコイルと、基板に実装されるコンデンサと、が一体化され、導電バーを伝搬するノイズを低減させるように構成されたノイズフィルタモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したチョークコイルには、分割されて形成される一対の磁性体を組み合わせて環状に構成される磁性体コアが用いられる場合がある。このように分割された磁性体コアは、環状に組み合わされたときに接近した状態を維持できずに隙間が大きく開くと、ノイズ抑制効果が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、分割された磁性体コアにおいて、高いノイズ抑制効果を発揮することができるノイズ低減装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ノイズ低減装置であって、第1分割コアと、第2分割コアと、ケースと、導電部材と、基板と、金属端子と、リード端子と、を備える。第1分割コア及び第2分割コアは、環状の磁性体を開環状に分割した形状を有する。ケースは、第1分割コア及び第2分割コアを、組み合わされた環状状態で収容する。導電部材は、環状状態の第1分割コア及び第2分割コアが有する挿通孔を挿通し、ケースの外に両端部が延び出す。基板は、コンデンサが実装される。金属端子は、コンデンサと接続する第1接続部と、グランド電位を持つグランド部材と接続する第2接続部と、を有する。リード端子は、導電部材とコンデンサとを接続する。金属端子は、金属端子がケースに固定された状態で、ケース内に収容された環状状態の第1分割コア及び第2分割コアを互いに接近する方向に押圧する押圧部を更に有する。
【0007】
このような構成では、環状状態の第1分割コア及び第2分割コアが、ケースに固定された金属端子の押圧部により、互いに接近する方向に押圧された状態でケース内に収容される。このため、分割された第1分割コア及び第2分割コアとの間の隙間が大きく開くことを抑制することができる。すなわち、第1分割コア及び第2分割コアは、それらが接近して組み合わさった状態が維持されやすい。したがって、分割された第1分割コア及び第2分割コアを組み合わせた磁性体コアによる高いノイズ抑制効果を発揮することができる。また、金属端子が、押圧部に加え、コンデンサに接続する第1接続部及びグランド部材と接続する第2接続部を有する。このため、金属端子とは別の新たな部品によって押圧部の機能を発揮させる場合と比較して、部品点数を抑えることができる。
【0008】
本開示の一態様では、ケースは、開口部を有してもよい。また、ノイズ低減装置は、蓋を更に備えてもよい。蓋は、絶縁材料により構成され、開口部を閉塞する。押圧部は、蓋を介して環状状態の第1分割コア及び第2分割コアを押圧してもよい。このような構成によれば、金属端子と第1分割コア及び第2分割コアとが蓋によって絶縁された状態で、第1分割コア及び第2分割コアを押圧部によって押圧することができる。
【0009】
本開示の一態様では、第2接続部は、第2接続部に設けられた貫通孔と、ケースに設けられた取付孔と、に留め具の軸部が通され、かつ、留め具の軸部がグランド部材に固定された際に、留め具の頭部とケースとの間に挟持されるように構成されてもよい。押圧部は、第2接続部が留め具の頭部とケースとの間に挟持された際に、弾性変形し、当該弾性変形の反力により環状状態の第1分割コア及び第2分割コアを押圧してもよい。このような構成では、第2接続部をケースと共にグランド部材に留め具で固定することによって、押圧部が弾性変形し、当該弾性変形の反力により第1分割コア及び第2分割コアを押圧する。このため、留め具によって金属端子をケースと共にグランド部材に固定しつつ、金属端子の押圧部が第1分割コア及び第2分割コアを押圧する荷重を高めることができる。これにより、第1分割コア及び第2分割コアとの間の隙間が大きく開くことを好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ノイズ低減装置が電子機器に接続される状態を模式的に示す図である。
【
図5】
図4のV―V断面において、留め具によって金属端子がケースと共にグランド部材に固定された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1及び
図2に示すノイズ低減装置100は、例えば、電子部品200と、電子部品200から電気が伝送される伝送部品201と、にケーブル101,102を介して接続され、後述する導電部材3を流れるノイズ電流を低減させる装置である。ノイズ低減装置100は、グランド電位を持つグランド部材300と電気的につながっている。グランド部材300は、例えば、車両を構成するボディ部品などの金属部品であってもよい。なお、ノイズ低減装置100は、例えば、電子部品200に変えて、電源装置(一例として、車載用のスイッチング電源)に接続されてもよい。スイッチング電源に接続された場合、スイッチング動作による電圧変動と電流変動とに起因して発生する出力端子へ伝搬するノイズを低減させてもよい。また、ノイズ低減装置100は、特開2018-19512号公報に記載されているように、金属筐体内にスイッチング電源とともに収容されていてもよい。
【0012】
図2~
図5に示すように、ノイズ低減装置100は、第1分割コア1と、第2分割コア2と、導電部材3と、ケース4と、蓋5と、基板6と、金属端子7と、第1リード端子8と、第2リード端子9と、を備える。以下の説明では、上下方向、左右方向及び前後方向を用いて各部の構成を表現するが、あくまでも説明の便宜上の表現であり、それらの方向が、ノイズ低減装置100の取り付け態様や使用態様を限定するものではない。
【0013】
図3及び
図5に示す第1分割コア1及び第2分割コア2は、例えば、フェライト等の磁性体材料により構成される。第1分割コア1及び第2分割コア2は、環状の磁性体を開環状に分割した形状を有する。本実施形態では、第1分割コア1及び第2分割コア2は、環状の磁性体をその中心軸を含む仮想平面で2つに等分割された形状であり、それぞれU字状の形状を有する。なお、第1分割コア及び第2分割コアの形状はこれに限定されるものではなく、例えば、一方の分割コアがU字状の形状を有し、他方の分割コアがI字状の形状を有してもよい。
【0014】
本実施形態では、第1分割コア1及び第2分割コア2は、互いに当接して組み合わされることで、
図5に示すように環状となる。以下の説明では、このような状態を、環状状態と記載する。なお、第1分割コア1及び第2分割コア2は、ノイズ抑制効果はわずかに低下してしまうが、磁気飽和を抑制する観点から、第1分割コア1と第2分割コア2との間にギャップを設けるために、当接する部分に他の部材が挟まれて配置されていてもよい。環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2は、後述する導電部材3が挿通可能な挿通孔11を有する。
【0015】
導電部材3は、環状状態の第1分割コア1と第2分割コア2の中心軸に沿う方向、すなわち前後方向に長さを有する平板状の部材である。導電部材3は、例えば、銅や炭素鋼等の金属材料により構成される。導電部材3は、電子部品200及び伝送部品201に接続する。
図3に示すように、導電部材3の長さ方向における両端部のうち、第1端部31には電子部品200に接続するための第1貫通孔311が設けられており、第1端部31とは反対側の第2端部32には伝送部品201に接続するための第2貫通孔321が設けられている。
【0016】
第1端部31及び第2端部32の間の部分である挿通部33は、長さ方向に直交する幅方向、すなわち左右方向の長さが、第1貫通孔311の周辺部及び第2貫通孔321の周辺部よりもやや狭く構成されている。挿通部33は、環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2の挿通孔11を挿通する部分である。すなわち、挿通部33の前方側に位置する第1貫通孔311の周辺部、及び、挿通部33の後方側に位置する第2貫通孔321の周辺部は、挿通部33よりも幅が広く構成されている。これにより、第1端部31及び第2端部32が後述するケース4に設けられる切欠き431,441からそれぞれケース4の外に延び出した状態で、挿通部33がケース4内に配置された場合に、挿通部33が前後方向に移動してケース4から抜ける落ちることが抑制される。
【0017】
ケース4は、開口部41を有する有底筒状の部材である。ケース4は、樹脂材料により構成される。ケース4は、矩形状の底面42と、4つの矩形状の側壁43~46と、を有する。2つの側壁43,44は、底面42の前後方向における端辺から開口部41に向かう方向、すなわち上方に互いに平行に延び出す。2つの側壁45,46は、底面42の左右方向における端辺から上方に互いに平行に延び出す。ケース4は、底面42、4つの側壁43~46により囲まれた内部空間に、第1分割コア1及び第2分割コア2を環状状態で収容する。組み立て時には、ケース4の内部空間に、第1分割コア1、導電部材3及び第2分割コア2の順に収容される。
【0018】
2つの側壁43,44には、開口部41側の端辺に、開口部41から底面42に向かう方向、すなわち下方に延びる切欠き431,441がそれぞれ設けられている。導電部材3が第1分割コア1及び第2分割コア2と共にケース4に収容された状態において、導電部材3の第1端部31及び第2端部32は、当該切欠き431,441からそれぞれケース4の外に延び出す。
【0019】
2つの側壁45,46の外面には、第1保持部451,461と、係受部452,462と、取付部453,463と、がそれぞれ設けられている。第1保持部451は、突出部451aと、突出部451bと、を備える。2つの突出部451a,451bは、前後方向に間隔を空けて配置され、いずれも側壁45の外面から外側、すなわち右方に突出する。2つの突出部451a,451bのそれぞれの先端は、他方が配置される側にL字型に屈曲して折れ曲がる。2つの突出部451a,451bにより、側壁45との間に溝が形成される。
【0020】
第1保持部461は、突出部461aと、突出部461bと、を備える。2つの突出部461a,461bは、前後方向に間隔を空けて配置され、いずれも側壁46の外面から外側、すなわち左方に突出する。2つの突出部461a,461bのそれぞれの先端は、他方が配置される側にL字型に屈曲して折れ曲がる。2つの突出部461a,461bにより、側壁46との間に溝が形成される。2つの突出部451a,451b及び2つの突出部461a,461bは、2つの側壁45,46の開口部41側寄りにそれぞれ設けられる。
【0021】
係受部452は、側壁45の外面から外側、すなわち右方に突出し、2つの突出部451a,451bの間に位置するように設けられる。係受部462は、側壁46の外面から外側、すなわち左方に突出し、2つの突出部461a,461bの間に位置するように設けられる。
【0022】
取付部453は、側壁45の外面から外側、すなわち右方に突出し、側壁45の底面42側寄りに設けられる。取付部463は、側壁46の外面から外側、すなわち左方に突出し、側壁46の底面42側寄りに設けられる。取付部453,463には、開口部41から底面42に向かう方向、すなわち上下方向に貫通する取付孔454,464がそれぞれ設けられている。
【0023】
蓋5は、ケース4の開口部41を閉塞する矩形状の部材である。ここでいう閉塞するとは、開口部41の開口面積を小さくする、又は、開口部41を閉じることを意味する。本実施形態では、蓋5により開口部41は閉じられる。蓋5は、樹脂等の絶縁材料により構成される。蓋5は、第2分割コア2と当接する平面である第1の面51と、当該第1の面51の反対側の平面である第2の面52と、2つの第2保持部53,54と、を有する。
【0024】
2つの第2保持部53,54は、蓋5の前後方向における端辺にそれぞれ設けられ、第1の面51に直交し、当該第1の面51側、すなわち下方に延び出す。第2保持部53は、後述する第1リード端子8を保持する溝を有し、第2保持部54は、後述する第2リード端子9を保持する溝を有する。ケース4の開口部41を蓋5により閉塞する際に、第2保持部53がケース4の切欠き431に嵌め込まれ、第2保持部54がケース4の切欠き441に嵌め込まれる。このとき、導電部材3が挿通孔11に挿通された状態にある環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2は、ケース4の内部空間に収容された状態にある。
【0025】
基板6は、後述する金属端子7を介して蓋5の第2の面52に取り付けられる。基板6には、コンデンサC1,C2が実装される。基板6は、コンデンサC1,C2が実装される実装面61と、実装面61とは反対側の非実装面62と、実装面61及び非実装面62を貫通する四角形状の4つの接続孔63~66と、を有する。基板6は、蓋5の第2の面52と非実装面62とが対向するように配置される。
【0026】
第1接続孔63及び第2接続孔64は、後述する第1リード端子8及び第2リード端子9をはんだ付け等で接合するためのスルーホールである。第3接続孔65及び第4接続孔66は、後述する金属端子7をはんだ付け等で接合するためのスルーホールである。第1接続孔63は、実装面61においてコンデンサC1の電極の一方に導電パターンにより接続される。第2接続孔64は、実装面61においてコンデンサC2の電極の一方に導電パターンにより接続される。第3接続孔65は、実装面61においてコンデンサC1の電極の他方に導電パターンにより接続されるとともに、後述する金属端子7により構成されるグランド経路に接続される。第4接続孔66は、実装面61においてコンデンサC2の電極の他方に導電パターンにより接続されるとともに、後述する金属端子7により構成されるグランド経路に接続される。
【0027】
金属端子7は、例えば、銅、ニッケル及び鉄等の導電性の金属材料により構成される、板状の部材である。金属端子7は、本体部71と、2つの第1接続部72,73と、2つの第2接続部74,75と、押圧部76と、を有する。
【0028】
本体部71は、略U字状に屈曲する形状を有する部分である。本体部71は、上部713と、2つの側壁714,715と、を有する。上部713は、蓋当接面711及び蓋当接面711とは反対側の基板当接面712を有する。上部713は、左右方向に沿って延び、前後方向に間隔を空けて並ぶ2本の板により構成される。2つの側壁714,715は、上部713の左右方向における端部からそれぞれ蓋当接面711側、すなわち下方に互いに平行に延び出す。2つの側壁714,715には、係受孔716,717がそれぞれ設けられている。係受孔716は、ケース4が有する係受部452に係合する孔であり、係受孔717は、ケース4が有する係受部462に係合する孔である。本実施形態では、側壁714が第1保持部451に嵌め込まれて、係受孔716が係受部452に係合し、かつ、側壁715が第1保持部461に嵌め込まれて、係受孔717が係受部462に係合することで、金属端子7のケース4に対する位置が仮固定される。
【0029】
2つの第1接続部72,73は、上部713の前後方向における端部からそれぞれ基板当接面712側、すなわち上方に延び出す部分である。第1接続部72は、基板6に設けられる第3接続孔65に嵌合することで、コンデンサC1と接続する。第1接続部73は、基板6に設けられる第4接続孔66に嵌合することで、コンデンサC2と接続する。
【0030】
2つの第2接続部74,75は、本体部71の2つの側壁714,715と直交するように、当該2つの側壁714,715にそれぞれ接続する板状の部分である。金属端子7がケース4に仮固定された状態で、第2接続部74はケース4の取付部453の上方に重なり、第2接続部75はケース4の取付部463の上方に重なる。第2接続部74は、金属端子7がケース4に仮固定された状態で、取付部453に設けられる取付孔454に重なる第3貫通孔741を有する。第2接続部75は、金属端子7がケース4に固定された状態で、取付部463に設けられる取付孔464に重なる第4貫通孔751を有する。
【0031】
第2接続部74は、第3貫通孔741と取付孔454とにそれぞれ
図5に示すボルト等の留め具20の軸部21が通され、かつ、当該軸部21がグランド部材300に固定された際に、留め具20の頭部22とケース4との間に挟持されるように構成される。第2接続部75は、第4貫通孔751と取付孔464とにそれぞれボルト等の留め具20の軸部21が通され、かつ、当該軸部21がグランド部材300に固定された際に、留め具20の頭部22とケース4との間に挟持されるように構成される。これにより、2つの第2接続部74,75がグランド部材300と電気的につながるように、金属端子7がケース4に固定される。なお、
図2~
図4において、グランド部材300と留め具20の図示は省略する。
【0032】
押圧部76は、金属端子7がケース4に固定された状態で、ケース4内に収容された環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2を互いに接近する方向に押圧する部分である。押圧部76は、本体部71の上部713を構成する2本の板の間に設けられ、左右方向に沿って延びる板状を有する。押圧部76の左右方向における端部は、本体部71の2つの側壁714,715にそれぞれ接続する。押圧部76は、弾性変形可能に構成されている。具体的には、押圧部76は、本体部71の蓋当接面711側、すなわち下方に向かって突出する凸部761を2つ有する。2つの凸部761は、左右方向に並んで配置される。金属端子7がケース4に固定された状態では、
図5に示すように、2つの凸部761が蓋5と当接する。押圧部76は、2つの第2接続部74,75が留め具20の頭部22とケース4との間に挟持された際に、弾性変形し、当該弾性変形の反力により蓋5を介して環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2を押圧する。なお、押圧部に設けられる凸部の数は2つに限定されず、例えば、凸部は、1つ、又は、3つ以上設けられてもよい。また、例えば、押圧部は、凸部以外の形態を有していてもよい。例えば蓋5の側に向かって突出する突起や舌片状の部分であってもよい。
【0033】
第1リード端子8及び第2リード端子9は、例えば、銅、ニッケル及び鉄等の導電性の金属材料により構成される、板状の部材である。
図3に示すように、第1リード端子8及び第2リード端子9は、L字状に屈曲する形状をそれぞれ有する。第1リード端子8は、導電部材3とコンデンサC1とを接続し、第2リード端子9は、導電部材3とコンデンサC2とを接続する。
【0034】
第1リード端子8は、基板6に設けられる第1接続孔63に嵌合する第3接続部81と、導電部材3の第1端部31の上方に重なる第4接続部82と、を有する。第4接続部82には、第1端部31に設けられる第1貫通孔311と重なる第5貫通孔821が設けられている。第1リード端子8は、蓋5の第2保持部53により形成される溝に嵌め込まれることで蓋5に固定される。第4接続部82は、第1リード端子8の第5貫通孔821と導電部材3の第1貫通孔311とにボルト等の留め具の軸部が通されて、軸部を下方からナットにより締め付けたり、軸部をはんだ付け等で固定したりすることで、導電部材3の第1端部31に固定される。これにより、第1リード端子8は、ケーブル101を介して電子部品200に接続される。また、第2リード端子9は、第1リード端子8と同様の形状を有する。なお、第2リード端子9における第5接続部91、第6接続部92及び第6貫通孔921は、上述した第3接続部81、第4接続部82及び第5貫通孔821にそれぞれ相当する。第5接続部91は第2接続孔64に嵌合する。第2リード端子9は、蓋5の第2保持部54に固定される。第6接続部92は第6貫通孔921と第2貫通孔321とを通る留め具を用いて第2端部32に固定される。これにより、第2リード端子9は、ケーブル102を介して伝送部品201に接続される。
【0035】
上述したように、第1分割コア1及び第2分割コア2は、金属端子7の押圧部76により押圧される構成によって、それらが接近して組み合わさった状態が維持された適切な状態でケース4内に保持される。そして、コンデンサC1,C2が実装される基板6が、第1接続部72,73によって金属端子7に固定される。これにより、第1分割コア1及び第2分割コア2により構成される環状の磁性体コアと、基板6に実装されるコンデンサC1,C2と、が一体化されたノイズ低減装置100が構成される。
【0036】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、環状状態の第1分割コア1及び第2分割コア2が、ケース4に固定された金属端子7の押圧部76により、互いに接近する方向に押圧された状態でケース4内に収容される。このため、分割された第1分割コア1及び第2分割コア2が環状に組み合わされて接近した状態を維持しやすい結果、第1分割コア1及び第2分割コア2との間の隙間が大きく開くことを抑制することができる。したがって、分割された第1分割コア1及び第2分割コア2を適切な状態で組み合わせた磁性体コアによる高いノイズ抑制効果を発揮することができる。
【0037】
また、金属端子7が、押圧部76に加え、コンデンサC1,C2に接続する2つの第1接続部72,73及びグランド部材300と電気的につながる2つの第2接続部74,75を有する。このため、金属端子7とは別の新たな部品によって押圧部76の機能を発揮させる場合と比較して、第1分割コア1及び第2分割コア2を押圧する部品と、コンデンサC1,C2のグランド経路と、が一体化されることで、部品点数を抑えることができる。
【0038】
(2b)本実施形態では、金属端子7と第1分割コア1及び第2分割コア2との間に、第1分割コア1及び第2分割コア2を収容するケース4の開口部41を閉じる絶縁材料により構成される蓋5が配置される。これにより、金属端子7と第1分割コア1及び第2分割コア2とが蓋5によって絶縁された状態で、第1分割コア1及び第2分割コア2を押圧部76によって押圧することができる。このため、例えば、押圧部76の第2分割コア2に当接する部分にのみ絶縁材料を挟み込む構成と比較して、金属端子7と第1分割コア1及び第2分割コア2との絶縁をより確実に実現するができる。
【0039】
(2c)本実施形態では、金属端子7の2つの第2接続部74,75をケース4と共にグランド部材300に留め具で固定することによって、押圧部76が弾性変形し、当該弾性変形の反力により第1分割コア1及び第2分割コア2を押圧する。このため、留め具20によって金属端子7をケース4と共にグランド部材300に固定しつつ、金属端子7の押圧部76が第1分割コア1及び第2分割コア2を押圧する荷重を高めることができる。これにより、第1分割コア1及び第2分割コア2が環状に組み合わされて接近した状態を維持しやすい結果、第1分割コア1及び第2分割コア2との間の隙間が大きく開くことをより抑制することができる。
【0040】
(2d)本実施形態では、押圧部76は、本体部71の上部713を構成する2本の板の間に設けられる。すなわち、金属端子7において、押圧部76は、コンデンサC1,C2と接続する2つの第1接続部72,73が設けられる本体部71の上部713とは別に設けられる。これにより、押圧部76が弾性変形した場合でも、本体部71の上部713は押圧部76の変形に追従せずに位置が固定される。このため、コンデンサC1,C2と、2つの第1接続部72,73と、の接続を安定させることができる。
【0041】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0042】
(3a)上記実施形態では、金属端子7と第1分割コア1及び第2分割コア2との間に、ケース4の開口部41を閉じる絶縁材料により構成された蓋5が配置される構成を例示した。しかし、例えば、ノイズ低減装置は、蓋を有しない構成であってもよい。ノイズ低減装置が蓋を有しない構成の場合、少なくとも押圧部76の凸部761における第2分割コア2側の面に絶縁部材が配置されてもよい。
【0043】
(3b)上記実施形態では、2つの第2接続部74,75が留め具20の頭部22とケース4との間に挟持されることで、金属端子7がケース4に固定される構成を例示したが、金属端子がケースに固定される方法はこれに限定されるものではない。例えば、金属端子は、ケースに直接固定されてもよい。この場合の固定の方法は特に限定されないが、例えば、ネジ留め、クリップ、接着、嵌合など、様々な方法を採用できる。なお、係受孔716が係受部452に係合し、かつ、係受孔717が係受部462に係合するような、上述した仮固定のみによって、金属端子がケースに直接固定されてもよい。また、例えば、金属端子とケースとがそれぞれ別個にグランド部材などの他の部材に固定された結果、金属端子とケースとの相対的な位置が変化しないように構成されていてもよい。すなわち、金属端子とケースとの相対的な位置が変化しない状態が、金属端子がケースに固定された状態である。
【0044】
(3c)ノイズ低減装置100が備える、第1分割コア1、第2分割コア2、導電部材3、ケース4、蓋5、基板6、金属端子7、第1リード端子8及び第2リード端子9の各部品の形状、各部品が有する各構成要素の形状、数及び配置等は、上記実施形態に記載した形状、数及び配置等に限定されるものではなく、他の形状、数及び配置を取り得る。
【0045】
(3d)上記実施形態では、第1分割コア1及び第2分割コア2が金属端子7の押圧部76により押圧される構成、すなわち、モールド部材によりモールドされない構成によって、適切な状態で保持される構成を例示した。しかし、例えば、金属端子7の押圧部76によって第1分割コア1及び第2分割コア2が押圧された状態で、導電部材3、第1分割コア1、第2分割コア2及び金属端子7がケース4内にモールド部材によってモールドされてもよい。このようにモールドされる場合、金属端子7の押圧部76によって第1分割コア1及び第2分割コア2が押圧された状態を更に保持しやすくすることができる。
【0046】
(3e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…第1分割コア、2…第2分割コア、3…導電部材、4…ケース、5…蓋、6…基板、7…金属端子、8…第1リード端子、9…第2リード端子、11…実素、11…挿通孔、20…留め具、21…軸部、22…頭部、31…第1端部、32…第2端部、33…挿通部、41…開口部、42…底面、43,~46,714,715…側壁、51…第1の面、52…第2の面、53,54…第2保持部、61…実装面、62…非実装面、63~66…接続孔、71…本体部、72,73…第1接続部、74,75…第2接続部、76…押圧部、81…第3接続部、82…第4接続部、91…第5接続部、92…第6接続部、100…ノイズ低減装置、101,102…ケーブル、200…電子部品、201…伝送部品、300…グランド部材、311…第1貫通孔、321…第2貫通孔、431,441…切欠き、451,461…第1保持部、451a,451b,461a,461b…突出部、452,462…係受部、453,463…取付部、454,464…取付孔、711…蓋当接面、712…基板当接面、713…上部、716,717…係受孔、741…第3貫通孔、751…第4貫通孔、761…凸部、821…第5貫通孔、921…第6貫通孔、C1,C2…コンデンサ。