(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142989
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】生体情報測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230928BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230928BHJP
A61B 5/0507 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/11 110
A61B5/0507
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050164
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌太
(72)【発明者】
【氏名】梶 雄登
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB31
4C038VC20
4C117XB06
4C117XE28
4C117XE29
4C117XE41
4C117XE52
4C127AA02
4C127AA10
(57)【要約】
【課題】プライバシーを保護しつつ、簡易な構成で、対象者の行動と生体情報とを正確に結びつけることができる、生体情報測定システムを提供する。
【解決手段】本発明の生体情報測定システム(1)は、対象者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、居室(2)に設置されたマイク(3)と、居室に設置された非接触のバイタルセンサ(4)と、バイタルセンサの信号に基づいて、対象者が居室内の所定エリアに侵入したか否かを判定する侵入判定手段(11)と、マイクにより検出された音に基づいて、所定エリア内の対象者が静止状態か否かを判定する静止判定手段(12)と、静止判定手段により静止状態と判定された期間に、バイタルセンサから得られた信号に基づいて対象者の静止時生体情報を測定する第1測定手段(13)と、測定された生体情報を記憶する記憶手段(20)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体情報を測定する生体情報測定システムであって、
居室に設置されたマイクと、
前記居室に設置された非接触のバイタルセンサと、
前記バイタルセンサの信号に基づいて、対象者が前記居室内の所定エリアに侵入したか否かを判定する侵入判定手段と、
前記マイクにより検出された音に基づいて、前記所定エリア内の対象者が静止状態か否かを判定する静止判定手段と、
前記静止判定手段により静止状態と判定された静止期間に、前記バイタルセンサから得られた信号に基づいて対象者の生体情報を測定する第1測定手段と、
前記第1測定手段により測定された生体情報を、静止時の生体情報として記憶する記憶手段とを備える、生体情報測定システム。
【請求項2】
前記所定エリアは座位領域を含み、
前記静止期間は、前記座位領域内の対象者が静止状態である安静期間を含み、
前記記憶手段は、前記安静期間内の生体情報のうち前後所定の時間分のデータを除いた生体情報を、安静時の生体情報として記憶する、請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項3】
前記所定エリアは就寝領域を含み、
前記静止期間は、前記就寝領域内の対象者が就寝状態である就寝期間を含み、
前記記憶手段は、前記マイクにより検出された音を、就寝時の生体情報と関連付けて記憶する、請求項1または2に記載の生体情報測定システム。
【請求項4】
前記所定エリアに対象者が侵入したことに応じて前記マイクを起動する起動制御手段をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項5】
前記マイクにより検出された音に基づいて、対象者の所定の動作の有無を判定する動作判定手段と、
前記動作判定手段により所定の動作が判定された期間内に、前記バイタルセンサから得られた信号に基づいて対象者の生体情報を測定する第2測定手段とをさらに備え、
前記記億手段は、前記第2測定手段により測定された生体情報を、前記動作判定手段で判定された動作内容と関連づけて記憶する、請求項1~4のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、対象者の生体情報を非接触で測定することのできる生体情報測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の一日の生体情報を記録するものとして、たとえば
図2(b)に示す手法が知られている。従来の手法では、バイタルセンサ(たとえば非接触センサ)が対象者の生体情報を常時計測しており、生体情報と、対象者自身が記録した行動メモとを照合させる必要があった。
【0003】
しかしながら、従来の生体情報記録方法では、対象者の行動記録メモが必要であり、記録し忘れた場合、生体情報と行動とを結びつけることができなかった。
【0004】
そこで、対象者の行動を自動で記録するものとして、特許文献1(特表2021-510100号公報)の測定装置などが知られている。特許文献1の測定装置は、対象者の生体情報を計測する、バイタルセンサなどの第1の測定部と、対象者の体の動きを測定する、カメラなどの第2の測定部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1はカメラで取得した画像データを用いるため、プライバシーの確保が困難である。また、対象者のバイタルデータを正確に取得するのに、その都度センサを所定の位置および向きに設定しなおす必要があり、構成が複雑である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、プライバシーを保護しつつ、簡易な構成で、対象者の行動と生体情報とを正確に結びつけることができる、生体情報測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態に係る生体情報測定システムは、対象者の生体情報を測定するものであって、居室に設置されたマイクと、居室に設置された非接触のバイタルセンサと、バイタルセンサの信号に基づいて、対象者が居室内の所定エリアに侵入したか否かを判定する侵入判定手段と、マイクにより検出された音に基づいて、所定エリア内の対象者が静止状態か否かを判定する静止判定手段と、静止判定手段により静止状態と判定された静止期間に、バイタルセンサから得られた信号に基づいて対象者の生体情報を測定する第1測定手段と、第1測定手段により測定された生体情報を、静止時の生体情報として記憶する記憶手段とを備える。
【0009】
好ましくは、所定エリアは座位領域を含み、静止期間は、座位領域内の対象者が静止状態である安静期間を含み、記憶手段は、安静期間内の生体情報のうち前後所定の時間分のデータを除いた生体情報を、安静時の生体情報として記憶する。
【0010】
好ましくは、所定エリアは就寝領域を含み、静止期間は、就寝領域内の対象者が就寝状態である就寝期間を含み、記憶手段は、マイクにより検出された音を、就寝時の生体情報と関連付けて記憶する。
【0011】
好ましくは、所定エリアに対象者が侵入したことに応じてマイクを起動する起動制御手段をさらに含む。
【0012】
好ましくは、マイクにより検出された音に基づいて、対象者の所定の動作の有無を判定する動作判定手段と、動作判定手段により所定の動作が判定された期間内に、バイタルセンサから得られた信号に基づいて対象者の生体情報を測定する第2測定手段とをさらに備え、記億手段は、第2測定手段により測定された生体情報を、動作判定手段で判定された動作内容と関連づけて記憶する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プライバシーを保護しつつ、簡易な構成で、対象者の行動と生体情報とを正確に結びつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係る生体情報測定システムを表す図であり、(a)は模式図を表したものであり、(b)は制御手段のブロック図を表したものである。
【
図2】対象者の生体情報と行動との関係を示す説明図であり、(a)は本実施の形態に係る生体情報測定システムを表す説明図であり、(b)は従来の生体情報測定システムを表す説明図である。
【
図3】本実施の形態1に係る生体情報測定システムを示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態2に係る生体情報測定システムを示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態3に係る生体情報測定システムを表す図であり、(a)は模式図を表したものであり、(b)は制御手段のブロック図を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態の生体情報測定システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
<実施の形態1>
(構成について)
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る生体情報測定システム1(以下の説明において、単に「測定システム」ともいう)の構成について説明する。
【0017】
本実施の形態に係る生体情報測定システム1は、対象者の生体情報を測定するために、居室2に設置されたマイク3と、居室2に設置された非接触のバイタルセンサ4と、マイク3およびバイタルセンサ4と電気的に接続され、生体情報の測定処理を行う制御部10と、測定された生体情報を記憶する生体情報記憶部20とを備える。
【0018】
居室2は、たとえば高齢者向け住宅の一室であり、対象者専用の居住スペースである。居室2には、典型的には、テレビ5、椅子6、ベッド7が設けられている。
図1(a)を参照して、テレビ5の前方領域に椅子6が配置されており、椅子6を含む領域(以下「座位領域」という)A1が検知範囲となるように、マイク3およびバイタルセンサ4が設けられている。本実施の形態では、座位領域A1の近傍に、マイク3およびバイタルセンサ4が1つずつ設けられている。
【0019】
なお、
図1(a)には、便宜上、ベッド7を含む領域(以下「就寝領域」という)A2の近傍にも、マイク3およびバイタルセンサ4が設けられているが、本実施の形態では必須ではなく、これらについては実施の形態2において説明する。制御部10Aも同様である。
【0020】
マイク3は、たとえば居室2の天井や壁の上部に設置される。マイク3により検出された音は、制御部10に送信される。
【0021】
本実施の形態のバイタルセンサ4は、たとえばミリ波センサやマイクロ波センサであり、非接触で生体検知を行う。バイタルセンサ4により検知された信号は、制御部10に送信される。制御部10は、バイタルセンサ4が検知した信号に基づいて、対象者の生体情報を測定(演算)する。生体情報は、典型的には血圧であるものとするが、血圧に限定されず、心拍、呼吸数、体温、心電図などであってもよい。
【0022】
バイタルセンサ4は、座位領域A1内への対象者の侵入/退出を検知する人感センサとしても機能する。すなわち、座位領域A1は、バイタルセンサ4の検知範囲によって規定される領域である。
【0023】
バイタルセンサ4により、対象者とは非接触で血圧を測定可能であるので、従来のような接触式バイタルセンサを装着することによる不快感をなくすことができる。
【0024】
図1(b)をさらに参照して、本実施の形態に係る制御部10について説明する。
図1(b)は、本実施の形態の制御部10の機能構成を示すブロック図である。制御部10は、侵入判定部11と、静止判定部12と、測定部13と、記録処理部14と、起動制御部15とを含む。なお、制御部10は、プロセッサおよびメモリを含む情報処理装置であり、各構成11~15の機能は、典型的にはプロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。
【0025】
侵入判定部11は、バイタルセンサ4の信号に基づいて、対象者が居室2内の座位領域A1に侵入したか否かを判定する。具体的には、侵入判定部11は、座位領域A1内に対象者が侵入したことによるバイタルセンサ4の信号の変化に基づいて判定する。
【0026】
静止判定部12は、マイク3により検出された音に基づいて、座位領域A1内の対象者が静止状態か否かを判定する。検出する音は、典型的には対象者の足音であり、足音が検出される間は動作状態、足音が検出されない間は静止状態と判断する。すなわち、対象者が座位領域A1に侵入後、椅子6に着座した状態を静止状態(安静状態)と判定する。
【0027】
第1測定部13は、静止状態と判定された静止期間(安静期間)に、バイタルセンサ4から得られた信号に基づいて対象者の生体情報を測定する。第1測定部13は、たとえばバイタルセンサ4から得られた波形値を血圧に変換する処理を実行する。本実施の形態の第1測定部13は、対象者が安静期間中の生体情報を測定する。
【0028】
記録処理部14は、第1測定部13により測定された測定値を、安静時の血圧データとして生体情報記憶部20に記録する処理を実行する。
【0029】
記録処理部14は、
図2(a)に示すように、静止状態の生体情報のうち前後所定の時間分のデータを除いた生体情報を生体情報記憶部20に記録することが望ましい。具体的には、静止判定部12の信号に基づいて、「静止状態」であると判定した期間のうち、たとえば前後1分間のデータを切り捨てる。これにより、正確な安静時の生体情報を取得することができる。
【0030】
起動制御部15は、座位領域A1に対象者が侵入したことに応じてマイク3を起動する。起動制御部15は、侵入判定部11の結果に基づいて、マイク3にON指示を送信する。これにより、マイク3を常時起動しておく必要がなく、省エネ効果を見込むことができる。また、座位領域A1外におけるプライバシーも確保することができる。
【0031】
生体情報記憶部20は、対象者の生体情報(血圧データ)を記憶する記憶装置であり、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置(図示せず)であってもよいし、クラウドサーバ(図示せず)により実現されていてもよい。
【0032】
(生体情報取得方法)
図2を参照して、本実施の形態に係る生体情報測定システム1のバイタルセンサ4と、マイク3と、対象者の行動との関係について説明する。
図2は、対象者の生体情報と行動との関係を示す説明図であり、(a)は本実施の形態に係る生体情報測定システムを表す説明図であり、(b)は従来の生体情報測定システムを表す説明図である。
【0033】
図2(b)を参照して、従来の測定システムでは、対象者の生体情報をバイタルセンサによって常時測定しており、対象者の行動の特定は対象者自身が記録した行動記録メモの記載に基づいていた。この場合、生体情報と行動記録メモに記載の時分とを照合する必要があり、各行動における生体情報の確認作業が煩雑であった。また、行動記録メモを記入し忘れる場合もあり、生体情報と行動とを正確に結びつけることができなかった。
【0034】
これに対し本実施の形態の測定システム1は、
図2(a)を参照して、バイタルセンサ4とマイク3との組み合わせにより、対象者の行動を自動で取得するため、即座に生体情報と行動とを結びつけることができる。また、測定システム1は、自動で対象者の行動を把握できるため、対象者が行動メモを記録し忘れることにより、生体情報と行動とを結びつけることができなくなる、という事態を防止できる。なお、
図2(a)の詳細については後述する。
【0035】
(生体情報測定システムの動作)
図1(b)、
図2(a)および
図3を参照して、本実施の形態の生体情報測定システム1の動作について説明する。
図3は、本実施の形態の生体情報測定システム1の動作を示すフローチャートである。
【0036】
本処理の開始時、マイク3はオフであり、バイタルセンサ4は常時オンである(ステップS10)。制御部10は、居室2に設置されたバイタルセンサ4からの信号(波形信号)を常時入力し、侵入判定部11において対象者が座位領域A1に侵入したか否かを判定する(ステップS11)。
【0037】
対象者が侵入したと判定された場合に(ステップS11にてYES)、ステップS12に進む。一方、対象者なしと判定された場合には(ステップS11にてNO)、座位領域A1への対象者の侵入を検知するまで待機する。
【0038】
ステップS12において、居室2に設置されたマイク3を起動する。具体的には、侵入判定部11の判定に基づいて、起動制御部15がマイク3にON指示を送信する。
【0039】
制御部10は、マイク3からの信号(音信号)を入力し、静止判定部12において対象者が座位領域A1で静止状態にあるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、対象者の「パタパタパタ・・・」という足音を検知できるか否かで判定する。
【0040】
足音が停止したと判定された場合(ステップS14にてYES)、対象者が座位領域A1にある椅子6に着座した状態にあると判断し、ステップS15に進む。一方、足音が継続して検知される場合(ステップS14にてNO)、足音が停止したと判断されるまで待機する。
【0041】
ステップS15において、第1測定部13は、バイタルセンサ4からの信号を取得し、血圧を連続測定(演算)する。測定された血圧データは、たとえば内部メモリ時系別に一時記憶される。生体情報(血圧)の測定は、マイク3からの信号に基づいた足音が再度検知されるまで継続され(ステップS16にてYES)、足音が検知されることに応じて(ステップS16にてNO)、ステップS17に進む。
【0042】
ステップS17では、記録処理部14が、ステップS15で取得した血圧データの前後所定の時間(たとえば1分間)分のデータを切り捨てる処理を行う。
【0043】
ステップS17で処理された血圧データは、生体情報記憶部20に、対象者の安静時の生体情報(血圧)として保存される(ステップS18)。これにより、生体情報測定システム1の一連の処理が終了する。対象者が居室2にいる間は、本処理を繰り返す。
【0044】
上述の測定処理により、生体情報記憶部20には、対象者の識別IDに対応付けて、安静時の血圧データが日時情報とともに記憶される。
【0045】
本実施の形態の生体情報測定システム1によれば、対象者へ負担をかけることなく日常時にかつ継続的に安静時の血圧を測定することができる。また、生体情報記憶部20には、対象者の安静状態の血圧の履歴情報が保存されるので、対象者の健康管理を適切に行うことができる。
【0046】
<実施の形態2>
実施の形態1では、安静時の血圧データを測定し、記憶するものについて説明した。実施の形態2では、安静時に加え、睡眠時の血圧データを測定し、記憶することができる。本実施の形態の測定システム1Aでは、居室2内の「就寝領域」A2が検知範囲となるように、就寝領域A2近傍にマイク3およびバイタルセンサ4を設け、このマイク3およびバイタルセンサ4が制御部10Aと電気的に接続する。
【0047】
理解を容易にするため、睡眠時の測定処理は、上述の制御部10とは別の制御部10Aにおいて実行されるものとするが、制御部10と、制御部10Aとは、共通の情報処理装置により実現されてもよい。
【0048】
図1(b)を参照して、制御部10Aは、制御部10と同様の機能構成を有している。制御部10Aの処理については、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
図1(b)および
図4を参照して、実施の形態2に係る生体情報測定システム1Aの動作について説明する。
図4は、本実施の形態の生体情報測定システム1Aの動作を示すフローチャートである。
【0050】
本処理の開始時、マイク3はオフであり、バイタルセンサ4は常時オンである(ステップS20)。制御部10Aは、就寝領域A2の近傍に設置されたバイタルセンサ4からの信号(波形信号)を常時入力し、侵入判定部11において対象者が就寝領域A2に侵入したか否かを判定する(ステップS21)。
【0051】
対象者が侵入したと判定された場合に(ステップS21にてYES)、ステップS22に進む。ステップS22において、就寝領域A2近傍に設置されたマイク3を起動する。制御部10Aは、マイク3からの信号(音信号)を入力し、静止判定部12において対象者が就寝状態にあるか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、対象者の布団を掛ける際のシーツ音がなくなったか、いびき、寝息が聞こえるようになったかなどを検知できるか否かで判定する。
【0052】
就寝したと判定された場合(ステップS24にてYES)、ステップS25に進む。ステップS25において、第1測定部13は、バイタルセンサ4からの信号を取得し血圧を連続測定する。また、同時にマイク3からの音を取得し、血圧データと音データとを内部メモリに蓄積する。就寝時の生体情報および音の取得は、マイク3からの信号に基づいた起床状態が検出されるまで継続する(ステップS26にてNO)。「起床検出」は、たとえば対象者が目を覚まし、ベッドから降りて歩く際の足音に基づいて検出する(ステップS26にてYES)。
【0053】
起床が検出されると、記録処理部14が、ステップS25で取得した血圧データおよび音データを関連付けて生体情報記憶部20に記録する(ステップS28)。これにより、生体情報記憶部20には、対象者の就寝時のデータ(血圧および音)が日時情報とともに保存される。これにより、生体情報測定システム1Aの一連の処理が終了する。
【0054】
本実施の形態では、安静状態の生体情報(血圧)だけでなく、就寝状態の生体情報(血圧)も記録することができる。これにより、同じ静止状態であっても、就寝時のデータを安静時のデータと比較することができ、より詳細に対象者の生体情報の特性を把握することができる。また、本実施の形態では、音も記録する。これにより、たとえば睡眠時無呼吸症候群などの睡眠時の音に基づく症状を把握することができる。
【0055】
なお、本実施の形態に係る測定システム1Aは、就寝期間、すなわち夜間の生体情報を取得するものであるため、所定の時間帯(たとえば、22時~6時の時間帯)においては、対象者が一時的に就寝領域A2から退出しても、就寝期間中の測定を中断しないよう設定されることとしてもよい。これにより、たとえば頻尿、レム睡眠行動障害などの睡眠時の動作に基づく症状を把握することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、安静期間中のデータに加え、就寝期間中のデータをさらに測定し、記録することとしたが、実施の形態2に記載の処理のみ単独で行うこととしてもよい。
【0057】
<実施の形態3>
実施の形態1,2では、静止状態(安静状態および就寝状態)における生体情報(血圧)の測定システムについて説明した。実施の形態3では、たとえばキッチンA3内における調理中の血圧など、動作時の生体情報(血圧)をさらに測定する。
【0058】
図5(a)を参照して、居室2は、典型的にはキッチンA3、洗面室A4を備える。本実施の形態では、キッチンA3が対象領域となるように、キッチンA3の近傍にマイク3およびバイタルセンサ4が設けられている。
【0059】
図5(b)に示すように、制御部10Bは、静止判定部12に代えて動作判定部12Bを備える点、および第1測定部13に代えて第2測定部13Bを備える点において、制御部10と相違する。
【0060】
動作判定部12Bは、キッチンA3に対象者が侵入したことに応じて、マイク3により検出された音に基づいて、対象者の所定の動作の有無を判定する。所定の動作は、たとえばキッチンにおける皿洗い動作、まな板を用いた調理動作などである。動作判定部12Bは、マイク3より入力された動作音の特徴量に基づいて、複数種類の動作内容を判定する。
【0061】
また、第2測定部13Bは、所定の動作が判定された期間内に、バイタルセンサ4から得られた信号に基づいて対象者の動作時生体情報を測定する。具体的には、動作判定部12Bにより動作状態であると判定された場合、動作判定部12Bは第2測定部13Bに対し、生体情報(血圧)を測定・蓄積するよう指示を送信する。
【0062】
生体情報記憶部20は、動作判定部12Bで判定された動作内容(たとえば皿洗い動作)と関連付けて、動作時生体情報を記憶する。これにより、生体情報記憶部20には、動作時と静止時の両方が記録されるので、動作時と静止時との生体情報の値を比較して、対象者の健康管理に利用することができる。
【0063】
実施の形態3において、キッチンA3における動作時生体情報を取得するとしたが、動作時生体情報を取得するエリアは洗面室A4などでもよい。たとえば洗面室A4を検知対象として、洗面室A4における歯磨き動作、洗顔動作を検出(判定)し、生体情報を測定することとしてもよい。また、座位領域A1にテーブルがある場合には、座位領域A1における食事動作を検出(判定)し、食事期間中の生体情報を測定することとしてもよい。
【0064】
また、たとえば単身者向け住宅では、居室2外の廊下を対象領域にしてもよいし、居室2内における掃除機の音などに基づいて、掃除の際の動作時生体情報をさらに取得することとしてもよい。
【0065】
(変形例)
なお、各実施の形態では、対象領域毎にマイク3、バイタルセンサ4、および制御部10,10A、10Bを設けることとしたが、各対象領域近傍に設置したマイク3およびバイタルセンサ4と1つの制御部10とを接続させてもよい。また、居室2内に1組のマイク3およびバイタルセンサ4を設けて、1組のマイク3およびバイタルセンサ4で複数の対象領域をカバーできるようにしてもよい。
【0066】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B 生体情報測定システム、2 居室、3 マイク、4 バイタルセンサ、5 テレビ、6 椅子、7 ベッド、10,10A,10B 制御部、11 侵入判定部、12 静止判定部、12B 動作判定部、13 第1測定部、13B 第2測定部、14 記録処理部、15 起動制御部、20 生体情報記憶部。