(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142992
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】組成物およびこれを含むカプセル剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/683 20060101AFI20230928BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230928BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230928BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230928BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230928BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20230928BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20230928BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230928BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K31/683
A61K9/48
A61K47/24
A61K47/44
A23L5/00 C
A23L33/115
A23D9/013
A61K9/08
A61P1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050167
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】大川原 正喜
(72)【発明者】
【氏名】天野 匡晃
(72)【発明者】
【氏名】黒野 昌洋
【テーマコード(参考)】
4B018
4B026
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD14
4B018MD45
4B026DC05
4B026DL02
4B026DX01
4B035LC06
4B035LE07
4B035LG04
4B035LG12
4B035LP35
4C076AA14
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC21
4C076DD46
4C076DD46A
4C076DD63
4C076EE52
4C076EE52A
4C076FF01
4C076FF11
4C076FF17
4C076FF43
4C076FF63
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カプセル剤等の製剤化に適した粘度を有する、エーテル型グリセロリン脂質を含有する組成物を提供する。
【解決手段】エーテル型グリセロリン脂質と、エステル型グリセロリン脂質と、を含む、組成物。前記エーテル型グリセロリン脂質が、プラズマローゲンを含み、前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリンを含み、前記ホスファチジルコリンの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~80質量%である、前記組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル型グリセロリン脂質と、エステル型グリセロリン脂質と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記エーテル型グリセロリン脂質が、プラズマローゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エーテル型グリセロリン脂質が、ホヤ由来プラズマローゲンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリンを含み、
前記ホスファチジルコリンの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~80質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルエタノールアミンを含み、
前記ホスファチジルエタノールアミンの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、5~40質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルイノシトールを含み、
前記ホスファチジルイノシトールの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、30質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステル型グリセロリン脂質が、15~22質量%のホスファチジルコリンと、25~32質量%のホスファチジルエタノールアミンと、18~25質量%のホスファチジルイノシトールと、を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記エステル型グリセロリン脂質の含有量が、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、1~100質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
食用油脂をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記食用油脂の含有量が、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、100~200質量部である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
粘度が、15000cps未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含む内容物と、
前記内容物を内包する皮膜と、
を含む、カプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物およびこれを含むカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は、構造中にリン酸エステル結合を有する脂質の総称である。リン脂質は、例えば、生体内では脂質二重層を形成して細胞膜の主要な構成成分となり、シグナル伝達に関与している。その他、リン脂質は、医薬品、食品等の分野において、界面活性剤等としても使用されている。
【0003】
リン脂質には、グリセリンを主要骨格とするグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを主要骨格とするスフィンゴリン脂質とに大きく分類される。この際、グリセロリン脂質は、さらにエーテル型グリセロリン脂質およびエステル型グリセロリン脂質に分類される。
【0004】
近年、エーテル型グリセロリン脂質の1種であるプラズマローゲンが注目されている。例えば、特許文献1には、プラズマローゲンが脳神経細胞新生効果を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラズマローゲン等のエーテル型グリセロリン脂質を使用してカプセル剤等を調製しようとする場合、製剤化に適した粘度に調整することが難しい場合があった。また、粘度調整のために食用油脂等を添加すると、エーテル型グリセロリン脂質に由来する沈殿物が生じる結果、分散均一性が不十分となる場合があった。
【0007】
このような状況において、製剤化に適した粘度および分散均一性に優れるエーテル型グリセロリン脂質を含む組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、以下の態様を含む。
【0009】
[1]エーテル型グリセロリン脂質と、エステル型グリセロリン脂質と、を含む、組成物。
[2]前記エーテル型グリセロリン脂質が、プラズマローゲンを含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記エーテル型グリセロリン脂質が、ホヤ由来プラズマローゲンを含む、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリンを含み、
前記ホスファチジルコリンの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~80質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルエタノールアミンを含み、
前記ホスファチジルエタノールアミンの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、5~40質量%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルイノシトールを含み、
前記ホスファチジルイノシトールの含有量が、前記エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、30質量%以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記エステル型グリセロリン脂質が、15~22質量%のホスファチジルコリンと、25~32質量%のホスファチジルエタノールアミンと、18~25質量%のホスファチジルイノシトールと、を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記エステル型グリセロリン脂質の含有量が、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、1~100質量部である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]食用油脂をさらに含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]前記食用油脂の含有量が、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、100~200質量部である、上記[9]に記載の組成物。
[11]粘度が、15000cps未満である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の組成物を含む内容物と、
前記内容物を内包する皮膜と、
を含む、カプセル剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製剤化に適した粘度および分散均一性に優れる組成物等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0012】
1 組成物
本発明に係る組成物は、エーテル型グリセロリン脂質と、エステル型グリセロリン脂質と、を含む。前記組成物は、エーテル型グリセロリン脂質およびエステル型グリセロリン脂質を含めば特に限定されず、生理活性物質、食用油脂、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0013】
本発明に係る組成物は、製剤化に適した粘度および分散均一性に優れる。これにより、エーテル型グリセロリン脂質を含むカプセル剤等を好適に製造することができる。
【0014】
以下、本発明の組成物の各構成について詳細に説明する。
【0015】
[エーテル型グリセロリン脂質]
エーテル型グリセロリン脂質は、例えば、生理活性成分としての機能、界面活性剤等としての機能等を有する。なお、前記生理活性成分としての機能としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、多発性硬化症等の神経変性疾患;点状軟骨異形成症;ツェルベーガースペクトラム疾患;慢性閉塞性肺疾患(COPD);動脈硬化;肝機能障害;脂質異常症等の疾患の治療または予防作用、記憶力の維持が挙げられる。
【0016】
エーテル型グリセロリン脂質は、グリセリンを主要骨格とし、グリセリンの1つまたは2つの水酸基が、アルコールとエーテル結合を形成しているリン脂質である。エーテル型グリセロリン脂質は、例えば、下記一般式(1)~(3)で表される。なお、一般式(1)はsn-1位にエーテル結合を1つ有し、一般式(2)はsn-2位にエーテル結合を1つ有し、一般式(3)はsn-1位およびsn-2位にエーテル結合を2つ有している。
【0017】
【0018】
上記式(1)および(2)中、R1は、それぞれ独立して、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸に由来する基である。前記飽和脂肪酸としては、特に制限されないが、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、前記不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸等の1つの二重結合を有する不飽和脂肪酸;リノール酸等の2つの二重結合を有する不飽和脂肪酸;リノレン酸等の3つの二重結合を有する不飽和脂肪酸;アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の4つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸が挙げられる。これらのうち、前記飽和脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸であることが好ましい。また、前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸であることが好ましい。
【0019】
R1は、具体的には炭素数5~30の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5~30のアルキル基、炭素数5~30のアルケニル基、または炭素数5~30のシクロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数5~30のアルキル基または炭素数5~30のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数12~20のアルキル基または炭素数12~25のアルケニル基である。なお、本明細書において、「アルケニル基」には、二重結合を2以上有するもの(ジエン、トリエン、テトラエン、ペンタエン、ヘキサエン等)が含まれる。
【0020】
炭素数5~30のアルキル基としては、特に制限されないが、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基が挙げられる。
【0021】
また、炭素数5~30のアルケニル基としては、特に制限されないが、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基、ヘキサコセニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、ヘプタジエニル基、オクタジエニル基、ノナジエニル基、デカジエニル基、ドデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、エイコサジエニル基、ドコサジエニル基、テトラコサジエニル基、ヘキサコサジエニル基、ペンタトリエニル基、ヘキサトリエニル基、ヘプタトリエニル基、オクタトリエニル基、ノナトリエニル基、デカトリエニル基、ドデカトリエニル基、テトラデカトリエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘキサデカトリエニル基、ヘプタデカトリエニル基、オクタデカトリエニル基、エイコサトリエニル基、ドコサトリエニル基、テトラコサトリエニル基、ヘキサコサトリエニル基、ペンタテトラエニル基、ヘキサテトラエニル基、ヘプタテトラエニル基、オクタテトラエニル基、ノナテトラエニル基、デカテトラエニル基、ドデカテトラエニル基、テトラデカテトラエニル基、ペンタデカテトラエニル基、ヘキサデカテトラエニル基、ヘプタデカテトラエニル基、オクタデカテトラエニル基、エイコサテトラエニル基、ドコサテトラエニル基、テトラコサテトラエニル基、ヘキサコサテトラエニル基、ヘキサペンタエニル基、ヘプタペンタエニル基、オクタペンタエニル基、ノナペンタエニル基、デカペンタエニル基、ドデカペンタエニル基、テトラデカペンタエニル基、ペンタデカペンタエニル基、ヘキサデカペンタエニル基、ヘプタデカペンタエニル基、オクタデカペンタエニル基、ノナデカペンタエニル基、エイコサペンタエニル基、ドコサペンタエニル基、テトラコサペンタエニル基、ヘキサコサペンタエニル基、ヘプタヘキサエニル基、オクタヘキサエニル基、ノナヘキサエニル基、デカヘキサエニル基、ドデカヘキサエニル基、テトラデカヘキサエニル基、ペンタデカヘキサエニル基、ヘキサデカヘキサエニル基、ヘプタデカヘキサエニル基、オクタデカヘキサエニル基、ノナデカヘキサエニル基、エイコサヘキサエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基、ドコサヘキサエニル基、テトラコサヘキサエニル基、ヘキサコサヘキサエニル基等が挙げられる。
【0022】
また、炭素数5~30のシクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロエイコシル基、シクロドコシル基、シクロテトラコシル基、シクロヘキサコシル基等が挙げられる。
【0023】
なお、R1がパルミチン酸に由来する場合はペンタデシル基であり、ステアリン酸に由来する場合はヘプタデシル基であり、オレイン酸に由来する場合はヘプタデセニル基であり、リノール酸に由来する場合はヘプタデカトリエニル基であり、エイコサペンタエン酸に由来する場合はノナデシルペンタエニル基であり、ドコサヘキサエン酸に由来する場合はヘンエイコサヘキサエニル基である。
【0024】
sn-1位のR1は炭素数5~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数12~20のアルキル基であることがより好ましく、ペンタデシル基、ヘプタデシル基であることがさらに好ましい。また、sn-2位のR1は炭素数5~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数12~25のアルケニル基であることがより好ましく、ヘプタデセニル基、ヘプタデカトリエニル基、ノナデシルペンタエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基であることがさらに好ましく、ノナデシルペンタエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基であることが特に好ましく、ヘンエイコサヘキサエニル基であることが最も好ましい。
【0025】
上記式(1)~(3)中、R2は、それぞれ独立して、炭素数5~30の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5~30のアルキル基、炭素数5~30のアルケニル基、または炭素数5~30のシクロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数5~30のアルキル基、炭素数5~30のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数12~20のアルキル基または炭素数12~20のアルケニル基である。炭素数5~30のアルキル基、炭素数5~30のアルケニル基、炭素数5~30のシクロアルキル基の具体例は、R1と同様である。この際、sn-1位のR2は炭素数5~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数12~20のアルキル基であることがより好ましく、ペンタデシル基、ヘプタデシル基であることがさらに好ましい。また、sn-2位のR2は炭素数5~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数12~25のアルケニル基であることがより好ましく、ヘプタデセニル基、ヘプタデカトリエニル基であることがさらに好ましい。
【0026】
上記式(1)~(3)中、Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトールに由来する基である。例えば、Xがコリンに由来する場合は-CH2CH2N(CH3)3
+であり、Xがエタノールアミンに由来する場合は-CH2CH2NH3
+である。Xは、-CH2CH2N(CH3)3
+、-CH2CH2NH3
+であることが好ましく、-CH2CH2NH3
+であることがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物に含まれるエーテル型グリセロリン脂質は、一般式(1)で表される化合物が好ましく、下記一般式(4)で表されるsn-1位にビニルエーテル結合を有する化合物がより好ましい。なお、本明細書において、一般式(4)で表されるエーテル型グリセロリン脂質を「プラズマローゲン」と称することがある。すなわち、好ましい一実施形態において、エーテル型グリセロリン脂質が、プラズマローゲンを含む。
【0028】
【0029】
式(4)中、R1およびXは、式(1)のR1およびXと同様である。
【0030】
式(4)中、R3は、炭素数3~28の炭化水素基であり、好ましくは炭素数3~28のアルキル基、炭素数3~28のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素数3~28のアルキル基、炭素数3~28のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数10~18のアルキル基、または炭素数10~18のアルケニル基である。
【0031】
炭素数3~28のアルキル基としては、特に制限されないが、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基が挙げられる。
【0032】
また、炭素数3~28のアルケニル基としては、特に制限されないが、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基、ヘキサコセニル基、プロパジエニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、ヘプタジエニル基、オクタジエニル基、ノナジエニル基、デカジエニル基、ドデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、エイコサジエニル基、ドコサジエニル基、テトラコサジエニル基、ヘキサコサジエニル基、プロパトリエニル基、ブタトリエニル基、ペンタトリエニル基、ヘキサトリエニル基、ヘプタトリエニル基、オクタトリエニル基、ノナトリエニル基、デカトリエニル基、ドデカトリエニル基、テトラデカトリエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘキサデカトリエニル基、ヘプタデカトリエニル基、オクタデカトリエニル基、エイコサトリエニル基、ドコサトリエニル基、テトラコサトリエニル基、ヘキサコサトリエニル基、プロパテトラエニル基、ブタテトラエニル基、ペンタテトラエニル基、ヘキサテトラエニル基、ヘプタテトラエニル基、オクタテトラエニル基、ノナテトラエニル基、デカテトラエニル基、ドデカテトラエニル基、テトラデカテトラエニル基、ペンタデカテトラエニル基、ヘキサデカテトラエニル基、ヘプタデカテトラエニル基、オクタデカテトラエニル基、エイコサテトラエニル基、ドコサテトラエニル基、テトラコサテトラエニル基、ヘキサコサテトラエニル基等が挙げられる。
【0033】
R3は、炭素数3~28のアルキル基であることが好ましく、炭素数10~18のアルキル基であることが好ましく、テトラデシル基、へキサデシル基、へキサデセニル基、へキサデカトリエニル基であることがより好ましく、テトラデシル基、ヘキサデシル基であることがさらに好ましくヘキサデシル基であることが特に好ましい。
【0034】
式(4)中、R1は、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカトリエニル基、ノナデシルペンタエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基であることが好ましく、ヘプタデシル基、ノナデシルペンタエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基であることがより好ましく、ノナデシルペンタエニル基、ヘンエイコサヘキサエニル基であることがさらに好ましく、ヘンエイコサヘキサエニル基であることが特に好ましい。また、R3は、テトラデシル基、へキサデシル基、へキサデセニル基、へキサデカトリエニル基であることが好ましく、へキサデシル基であることがより好ましい。Xは、-CH2CH2N(CH3)3
+、-CH2CH2NH3
+であることが好ましく、-CH2CH2NH3
+であることがより好ましい。好ましい一実施形態において、R1はヘンエイコサヘキサエニル基であり、R3はヘキサデシル基であり、Xは-CH2CH2NH3
+である。
【0035】
本明細書において、エーテル型プラズマローゲンには、下記一般式(5)~(6)で表されるエステル加水分解物;下記一般式(7)~(9)で表されるリン酸エステル加水分解物;下記一般式(10)~(11)で表されるエステルおよびリン酸エステル加水分解物が含まれうる。
【0036】
【0037】
式(5)~(11)中、R1、R2、およびXは、式(1)および(2)のR1、R2、およびXと同様である。
【0038】
上述したエーテル型グリセロリン脂質は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
エーテル型グリセロリン脂質は、例えば、鶏、牛、豚、馬、羊、鹿、らくだ、アヒル等の哺乳類;ホヤ、ウニ、エビ、サザエ、カキ、ホタテ等の魚介類;Acidamino coccaceae等の細菌等から抽出等を行うことで得ることができる。このうち、エーテル型グリセロリン脂質は、sn-2位にエイコサペンタエン酸に由来する基およびドコサヘキサエン酸に由来する基を多く含有する観点から、魚介類由来プラズマローゲンを含むことが好ましく、sn-2位にドコサヘキサエン酸に由来する基を多く含有する観点から、ホヤ由来プラズマローゲンを含むことがより好ましい。
【0040】
エーテル型グリセロリン脂質の含有量は、組成物の全質量に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.01~15質量%であることがより好ましく、0.01~10質量%であることがさらに好ましく、0.01~5質量%であることがよりさらに好ましく、0.01~2.5質量%であることが特に好ましい。なお、組成物が、エーテル型グリセロリン脂質を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
[エステル型グリセロリン脂質]
エステル型グリセロリン脂質は、例えば、エーテル型グリセロリン脂質を含む組成物の粘度を調整する機能、沈殿物の生成抑制機能、気泡発生抑制機能等を有する。
【0042】
エステル型グリセロリン脂質は、グリセリンを主要骨格とし、グリセリンの2つの水酸基が脂肪酸とエステル結合を形成しているリン脂質である。エステル型グリセロリン脂質は、例えば、下記一般式(12)で表される。
【0043】
【0044】
式(12)中、R1およびXは、式(1)および(2)のR1、およびXと同様である。この際、sn-1位のR1は炭素数5~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数12~20のアルキル基であることがより好ましく、ペンタデシル基、ヘプタデシル基であることがさらに好ましい。また、sn-2位のR1は炭素数5~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数12~20のアルケニル基であることがより好ましく、ヘプタデセニル基、ヘプタデカトリエニル基であることがさらに好ましい。
【0045】
上述のうち、エステル型グリセロリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジルセリンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルイノシトールからなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0046】
本明細書において、エステル型グリセロリン脂質には、下記一般式(13)~(15)で表されるエステル加水分解物;下記一般式(16)で表されるリン酸エステル加水分解物;下記一般式(17)~(19)で表されるエステルおよびリン酸エステル加水分解物が含まれうる。なお、一般式(14)で表されるエステル加水分解物を「リゾエステル型グリセロリン脂質」といい、一般式(16)で表されるリン酸エステル加水分解物を「ホスファチジン酸」といい、一般式(18)で表されるエステルおよびリン酸エステル加水分解物を「リゾホスファチジン酸」という。
【0047】
【0048】
式(13)~(19)中、R1およびXは、式(12)のR1、およびXと同様である。
【0049】
上述したエステル型グリセロリン脂質は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)を含む場合、ホスファチジルコリンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~80質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましく、15~22質量%であることが特に好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)を含む場合、ホスファチジルコリンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~60質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましく、24~32質量%であることが特に好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)を含む場合、ホスファチジルコリンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、30~90質量%であることが好ましく、45~85質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましく、65~75質量%であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「エステル型グリセロリン脂質の全質量」には、一般式(13)~(19)で表されるエステル型グリセロリン脂質のエステルおよび/またはリン酸エステル加水分解物が含まれる。
【0051】
エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む場合、ホスファチジルエタノールアミンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、5~40質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましく、25~32質量%であることがさらに好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む場合、ホスファチジルエタノールアミンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~28質量%であることがさらに好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む場合、ホスファチジルエタノールアミンの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、1~40質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましく、10~15質量%であることが特に好ましい。
【0052】
エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルイノシトール(PI)を含む場合、ホスファチジルイノシトールの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましく、18~25質量%であることが特に好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルイノシトール(PI)を含む場合、ホスファチジルイノシトールの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、3~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~25質量%であることがさらに好ましく、12~20質量%であることが特に好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質が、ホスファチジルイノシトール(PI)を含む場合、ホスファチジルイノシトールの含有量は、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0.001~5質量%であることがさらに好ましく、0.01~1質量%であることが特に好ましい。
【0053】
エステル型グリセロリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルイノシトール(PI)を含むことが好ましく、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、10~30質量%のホスファチジルコリンと、20~40質量%のホスファチジルエタノールアミンと、10~30質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがより好ましく、15~22質量%のホスファチジルコリンと、25~32質量%のホスファチジルエタノールアミンと、18~25質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがさらに好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルイノシトール(PI)を含むことが好ましく、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、20~40質量%のホスファチジルコリンと、15~35質量%のホスファチジルエタノールアミンと、10~25質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがより好ましく、24~32質量%のホスファチジルコリンと、20~28質量%のホスファチジルエタノールアミンと、12~20質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがさらに好ましい。また、一実施形態において、エステル型グリセロリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルイノシトール(PI)を含むことが好ましく、エステル型グリセロリン脂質の全質量に対して、60~80質量%のホスファチジルコリンと、15~20質量%のホスファチジルエタノールアミンと、0.001~5質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがより好ましく、65~75質量%のホスファチジルコリンと、10~15質量%のホスファチジルエタノールアミンと、0.01~1質量%のホスファチジルイノシトールと、を含むことがさらに好ましい。
【0054】
エステル型グリセロリン脂質は、鶏卵、大豆、菜種、牛肉等から抽出等を行うことで得ることができる。このように得られるエステル型グリセロリン脂質は、レシチンとも呼ばれることがあり、通常、エステル型グリセロリン脂質を主成分とする混合物である。なお、レシチンとしては、大豆レシチン、卵黄レシチンが好ましく、大豆レシチンがより好ましい。レシチンに含まれるエステル型グリセロリン脂質の組成は、例えば、原料選定、抽出方法、精製方法等により適宜調整することができる。
【0055】
エステル型グリセロリン脂質は、市販品を使用してもよい。当該市販新品としては、特に制限されないが、JレシチンCL(株式会社J-オイルミルズ製)、SLP-PIパウダー、SLP-PC70、SLP-ホワイト(辻製油株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
エステル型グリセロリン脂質の含有量は、組成物の全質量に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、0.1~25質量%であることがより好ましく、0.1~12.5質量%であることがさらに好ましい。なお、組成物が、エステル型グリセロリン脂質を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
また、エステル型グリセロリン脂質の含有量は、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、好ましくは0.1~500質量部、より好ましくは0.5~300質量部、さらに好ましくは0.8~200質量部、よりさらに好ましくは0.9~150質量部、特に好ましくは1~100質量部であり、1~75質量部、1~30質量部、1~20質量部、1~10質量部であってもよい。エステル型グリセロリン脂質の含有量が0.1質量部以上であると、組成物の粘度を好適なものに調整できる、沈殿物の生成を抑制できる等の観点から好ましい。一方、エステル型グリセロリン脂質の含有量が500質量部以下であると、気泡発生を抑制できる等の観点から好ましい。
【0058】
[生理活性物質]
本発明の好ましい態様の組成物において、プラズマローゲン等のエーテル型グリセロリン脂質は、上述のとおり有効成分として、または界面活性剤等の添加剤として使用されうる。本発明の好ましい態様の組成物において、エーテル型グリセロリン脂質を有効成分として使用する場合、当該組成物は生理活性物質をさらに含んでもよい。また、本発明の好ましい態様の組成物において、エーテル型グリセロリン脂質を界面活性剤等の添加剤として使用する場合、当該組成物は生理活性物質を含むことが好ましい。
【0059】
本発明の組成物に含まれてもよい生理活性物質は、特に制限されず、公知のものを使用することができる。生理活性物質の具体例としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等が挙げられる。この際、生理活性物質は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物における生理活性物質の含有量は、組成物の全質量に対して、0.01~50質量%であることが好ましく、0.03~50質量%であることがより好ましい。
【0060】
[食用油脂]
本発明の組成物は食用油脂を含んでいてもよい。食用油脂は、例えば、組成物の粘度を調整する機能、組成物中の成分を分散させる機能等を有する。
【0061】
食用油脂としては、特に制限されないが、動植物性油、中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。
【0062】
前記動植物性油としては、オリーブ油、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、シソ油、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ハッカ油、ヒマシ油、綿実油、ヤシ油、ラッカセイ油、魚油、卵黄油、牛脂、豚脂、ミツロウ、サラシミツロウ、カルナバロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0063】
前記中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、特に制限されないが、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。中鎖脂肪酸トリグリセリドの市販品としては、ココナードRK(トリカプリル酸グリセリル)ココナードMT(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)、ココナードML(トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリル(花王株式会社製);O.D.O(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)(日清オイリオグループ株式会社製)等が挙げられる。なお、本明細書において、「中鎖脂肪酸」とは、炭素数5~12の飽和脂肪酸、炭素数5~12の不飽和脂肪酸であり、好ましくは炭素数8~10の飽和脂肪酸、炭素数8~10の不飽和脂肪酸を意味する。また、「中鎖脂肪酸トリグリセリド」とは、グリセリンに2または3つの中鎖脂肪酸がエステル結合したものを意味する。一実施形態において、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、ココナッツ、パーム等の種子の核を圧搾して得られる不揮発性の油性化合物の混合物である。
【0064】
上述の食用油脂は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
食用油脂の含有量は、組成物の全質量に対して、25~99質量%であることが好ましく、50~99質量%であることがより好ましい。なお、組成物が、食用油脂を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0066】
また、食用油脂の含有量は、前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して、10~300質量部であることが好ましく、100~250質量部であることがより好ましく、130~225質量部であることがさらに好ましく、160~220質量部であることが特に好ましく、180~210質量部、190~200質量部、190~199.5質量部であってもよい。食用油脂の含有量が前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して10質量部以上であると、気泡発生を抑制できる等の観点から好ましい。一方、食用油脂の含有量が前記エーテル型グリセロリン脂質の1質量部に対して300質量部以下であると、組成物の粘度を好適なものに調整できる、沈殿物の生成を抑制できる等の観点から好ましい。
【0067】
[添加剤]
本発明の組成物は添加剤を含んでいてもよい。本発明の組成物に含まれる添加剤は、特に制限されないが、賦形剤、湿潤剤、増粘剤、保存剤、安定化剤、コーティング剤、pH調整剤、香料等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
[組成物の物性]
本発明に係る組成物の粘度は、15000cps未満であることが好ましく、14000cps未満であることがより好ましく、13000cps未満であることがさらに好ましく、12000cps未満であることがよりさらに好ましく、11000cps未満であることがさらに好ましく、10000cps未満であることがよりさらに好ましく、9000cps未満であることがよりさらに好ましく、8000cps未満であることが特に好ましい。また、本発明に係る組成物の粘度は500cps以上であることが好ましく、750cps以上であることがより好ましく、1000cps以上であることがさらに好ましく、2000cps以上であることがさらに好ましく、3000cps以上であることが特に好ましい。本発明に係る組成物の粘度は、500cps以上15000cps未満であることが好ましく、750cps以上12000cps未満であることがより好ましく、1000cps以上8000cps未満であることがさらに好ましい。組成物の粘度が15000cp未満であると、流動性等の観点から製剤化に好適である。なお、本明細書において、「粘度」は実施例に記載の方法で測定される。
【0069】
本発明に係る組成物中の沈殿物の割合は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.2質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましく、0.08質量%未満であることがよりさらに好ましく、0.05質量%未満であることが特に好ましい。また、本発明に係る組成物中の沈殿物の割合の下限は、特に制限されないが、0.001質量%以上、0.003質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上でありうる。本発明に係る組成物中の沈殿物の割合は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.001質量%以上0.2質量%未満であることがより好ましく、0.005質量%以上0.1質量%未満であることがさらに好ましく、0.01質量%以上0.08質量%未満であることが特に好ましい。組成物中の沈殿物の割合が0.3%未満であると、組成物に含まれる成分が均一に分散されうることから好ましい。
なお、本明細書において、「沈殿物」とは、析出したエーテル型グリセロリン脂質を主要成分として含む沈殿物を意味する。この際、当該沈殿物は、沈殿物の全質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上のエーテル型グリセロリン脂質を含む。前記沈殿物は、エーテル型グリセロリン脂質の原料由来の成分、例えば、油分、タンパク質、金属等がさらに含まれうる。また、本明細書において、「沈殿物の割合」は実施例に記載の方法で測定される。
【0070】
本発明の好ましい組成物は気泡が生じにくい。
本発明に係る組成物のバブリングにより発生する気泡の割合は、0.6質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましく、0.3質量%未満であることがさらに好ましく、0.2質量%未満であることがよりさらに好ましく、0.1質量%未満であることが特に好ましい。本発明に係る組成物のバブリングにより発生する気泡の割合の下限は、特に制限されないが、0.001質量%以上、0.003質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上でありうる。本発明に係る組成物のバブリングにより発生する気泡の割合は、0.6質量%未満であることが好ましく、0.001質量%以上0.5質量%未満であることがより好ましく、0.005質量%以上0.2質量%未満であることがさらに好ましく、0.01質量%以上0.1質量%未満であることが特に好ましい。組成物のバブリングにより発生する気泡の割合が0.6質量%未満であると、組成物中で気泡が生じにくく、カプセル内容物中での気泡の発生を防止することができることから好ましい。なお、本明細書において、「バブリングにより発生する気泡の割合」は実施例に記載の方法で測定される。
【0071】
2.カプセル剤
本発明の一形態によればカプセル剤が提供される。前記カプセル剤は、上述の組成物を含む内容物と、前記内容物を内包する皮膜と、を含む。なお、前記カプセル剤は、軟カプセル剤、硬カプセル剤、シームレスカプセル剤等が挙げられる。
【0072】
[内容物]
本発明のカプセル剤を構成する内容物は、本発明の組成物を含む。
【0073】
内容物の含有量は、カプセル剤全質量に対して、30~90質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましい。
【0074】
[皮膜]
本発明のカプセル剤を構成する皮膜は、特に制限されないが、ゲル化剤、添加剤を含むことが好ましい。
【0075】
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、特に制限されないが、ゼラチン、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアガム、プルラン、ウェランガム、キサンタンガム、ジェランガム、トラガントガム、ペクチン、グルコマンナン、デンプン、ポリデキストロース、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、難消化性デキストリン、グアーガム、サイリウムシードガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、カゼイン等が挙げられる。これらのゲル化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
(添加剤)
前記皮膜は、添加剤を含んでいてもよい。当該添加剤としては、特に制限されないが、可塑剤、着色剤、甘味料、香料、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
皮膜の含有量は、カプセル剤全質量に対して、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。
【0078】
3.他の製剤
本発明の一形態によれば、カプセル以外の製剤が提供される。前記カプセル以外の製剤としては、特に制限されないが、錠剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤等が挙げられる。この際、使用される添加剤は、前記製剤の種類に応じて適宜選択される。
【0079】
4.製造方法
本発明の組成物は、エーテル型グリセロリン脂質およびエステル型グリセロリン脂質を混合して製造でき、好ましくは、食用油脂にエーテル型グリセロリン脂質およびエステル型グリセロリン脂質からなる群から選ばれる1以上を溶解させて製造できる。
【0080】
5.用途
一実施形態において、上述のカプセル剤、他の製剤は、医薬品、医薬部外品、食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等の用途に使用することができる。
【実施例0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
[原料]
SLP-PIパウダー(PE・PI分別レシチン)、SLP-ホワイト(高純度粉末レシチン)、およびSLP-PC70(PC分別レシチン)を準備した。具体的な組成を下記表1に示す。
【0083】
【0084】
なお、ホスファチジルコリン(PC)のsn-1位はパルミチン酸に由来するものであり、sn-2位はオレイン酸に由来するものである。ホスファチジルエタノールアミン(PE)のsn-1位はパルミチン酸に由来するものであり、sn-2位はオレイン酸に由来するものである。ホスファチジルイノシトール(PI)のsn-1位はステアリン酸に由来するものであり、sn-2位はアラキドン酸に由来するものである。
【0085】
[実施例1]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)であるO.D.O(日清オイリオグループ株式会社製)189質量部に、SLP-PIパウダー(PE・PI分別レシチン)10質量部を室温(25℃)で溶解し、ホヤ由来プラズマローゲンオイル(1質量%、日本薬品株式会社製)100質量部(プラズマローゲンとしての添加量:1質量部)を添加することで組成物を製造した。なお、前記プラズマローゲンオイルに含まれるプラズマローゲンは、一般式(4)において、R1はドコサヘキサエン酸に由来する基(ヘンエイコサヘキサエニル基)であり、R3はヘキサデシル基であり、Xは-CH2CH2NH3
+で表される化合物である。
【0086】
[実施例2]
SLP-PIパウダーに代えて、SLP-ホワイト(高純度粉末レシチン)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0087】
[実施例3]
SLP-PIパウダーに代えて、SLP-PC70(PC分別レシチン)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0088】
[実施例4]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の添加量を198質量部に、SLP-PIパウダーの添加量を1質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0089】
[実施例5]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の添加量を174質量部に、SLP-PIパウダーの添加量を25質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0090】
[実施例6]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の添加量を149質量部に、SLP-PIパウダーの添加量を50質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した。
【0091】
[実施例7]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の添加量を99質量部に、SLP-PIパウダーの添加量を100質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物を製造した
【0092】
[比較例1]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)199質量部に、ホヤ由来プラズマローゲンオイル(1質量%)100質量部(プラズマローゲンとしての添加量:1質量部)を添加し、室温(25℃)で溶解することで組成物を製造した。
【0093】
[比較例2]
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)179質量部に、ホヤ由来プラズマローゲンオイル(1質量%)100質量部(プラズマローゲンとしての添加量:1質量部)、およびワックスである精製ミツロウSS(横関油脂工業株式会社製)20質量部を添加し、60℃で溶解することで組成物を製造した。
【0094】
実施例1~7および比較例1~2で製造した組成物の組成を下記表2に示す。
【0095】
【0096】
[評価]
実施例1~7および比較例1~2で製造した組成物について、各種評価を行った。
【0097】
(粘度評価)
25℃の環境下、組成物60mLをトールビーカー(100mL容量)に移し、BROOKFIELD DV-E VISCOMETERを用いて、スピード12rpm、スピンドルLV-2(62)の条件で粘度(25℃)を測定し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表3に示す。
【0098】
A:8000cps未満
B:8000cps以上15000cps未満
C:15000cps以上
【0099】
(沈殿評価)
25℃の環境下、組成物13mLを遠沈管(15mL容量)に移し、その質量を精密に量り、試料質量とした。次いで、1000×gで10分間第1の遠心分離を行い、上澄み液を除いた。再度、1000×gで10分間第2の遠心分離を行い、上澄み液を除いた後、遠沈管に中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)2mLを添加して沈殿物を洗浄した。さらに1000×gで10分間第1の遠心分離を行い、上澄み液を除き、その質量を精密に量り、沈殿物質量とした。組成物中の沈殿物の割合を以下の式で算出した。
【0100】
沈殿物の割合(質量%)= 沈殿物質量/試料質量× 100
【0101】
沈殿物の割合から、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表3に示す。
【0102】
A:0.2質量%未満
B:0.2質量%以上0.3質量%未満
C:0.3質量%以上
【0103】
(気泡評価)
25℃の環境下、気泡が入らないように組成物を20mLメスフラスコに精密に量り、質量(g/20mL)を測定した。
組成物に空気を1L/minで10分間バブリングし、組成物に空気を混合させた。バブリング後の組成物を20mLメスフラスコに精密に量り、質量(g/20mL)を測定した。
バブリング後の組成物の気泡の割合を以下の式で算出した。
【0104】
気泡の割合(質量%)=(バブリング前の質量-バブリング後の質量)/バブリング後の質量×100
【0105】
気泡の割合から、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表3に示す。
【0106】
A:0.2質量%未満
B:0.2質量%以上0.6質量%未満
C:0.6質量%以上
【0107】
【0108】
表3の結果から、実施例1~7で製造した組成物は、粘度が低く、沈殿物が少ないことから、製剤化に適した粘度および分散均一性に優れていた。これに対して、比較例1で製造した組成物は沈殿物の割合が高く分散均一性が悪く、比較例2で製造した組成物は粘度が高すぎるため、製剤化が難しいことが分かった。