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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142997
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】表示装置および表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20230928BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01C21/28
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050173
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰
(72)【発明者】
【氏名】森 俊也
【テーマコード(参考)】
2F129
2H199
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB38
2F129BB40
2F129BB43
2F129BB66
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE94
2F129HH14
2F129HH20
2H199DA03
2H199DA17
2H199DA27
2H199DA36
(57)【要約】
【課題】角速度センサの周囲温度による影響を抑えてユーザに対して適切な画像を表示することができる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置100は、ジャイロセンサ203の周囲温度を取得し、その周囲温度の温度範囲に関連付けられている感度を取得し、ジャイロセンサ203の角速度をその感度に応じて補正する感度補正部102と、補正された角速度に基づいて第1車両推定方位を推定する第1方位推定部103と、ジャイロセンサ203によって検出された角速度に基づいて第2車両推定方位を推定する第2方位推定部104と、車両2の位置と速度とを用いて第1車両推定方位を補正して第3車両推定方位を導出する方位補正部105と、第3車両推定方位に応じた画像を表示する表示部110と、第2車両推定方位および第3車両推定方位に基づく算出感度を用いて、上述の温度範囲の感度を更新する更新処理部106とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサによって検出された、車両に搭載されている角速度センサの周囲温度を取得し、前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記角速度センサの感度を記録媒体から取得し、前記角速度センサによって検出される角速度を、取得された前記感度に応じて補正する感度補正部と、
前記感度補正部によって補正された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第1車両推定方位として推定する第1方位推定部と、
前記角速度センサによって検出された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第2車両推定方位として推定する第2方位推定部と、
衛星測位システムにより測位される前記車両の位置と、前記車両の速度とを用いて、前記第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出する方位補正部と、
前記第3車両推定方位に応じた画像を表示する表示部と、
前記第2車両推定方位および前記第3車両推定方位に基づいて、前記角速度センサの感度を算出感度として算出し、前記温度範囲に関連付けて前記記録媒体に格納されている感度を、前記算出感度を用いて更新する更新処理部と、
を備える表示装置。
【請求項2】
前記更新処理部は、
前記車両が第1地点を通過した後に旋回して第2地点を通過したときに、前記第1地点および前記第2地点のそれぞれにおいて推定された前記第2車両推定方位の変化量と、前記第1地点および前記第2地点のそれぞれにおいて導出された前記第3車両推定方位の変化量とに基づいて、前記算出感度を算出する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記方位補正部は、
(a)前記衛星測位システムにより測位される前記車両の第1位置と、
(b)前記車両が前記第1位置から移動したときの、前記衛星測位システムにより測位される前記車両の第2位置と、
(c)前記第1位置と、前記第1位置における前記車両の方位と、前記角速度センサによって検出される角速度と、前記車両の速度とを用いたデッドレコニングに基づいて推定される、前記第2位置が測位されたときの前記車両の推定位置とに基づいて、
前記車両の方位のずれを推定し、
前記車両の方位のずれにしたがって前記第1車両推定方位を補正する、
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記方位補正部は、
前記第1位置と前記第2位置とを結ぶ直線と、前記第1位置と前記推定位置とを結ぶ直線とのなす角度を、前記車両の方位のずれとして推定する、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記記録媒体には、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられている感度を示す感度テーブルが格納されてあり、
前記感度補正部は、
前記感度テーブルにおいて、前記温度センサによって検出された前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記感度を、前記記録媒体から取得し、
取得された前記感度を前記角速度の補正に用いる、
請求項1~4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記記録媒体には、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられている感度と前記感度の信頼度とを示す感度テーブルが格納されてあり、
前記感度補正部は、
前記感度テーブルにおいて、前記温度センサによって検出された前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている信頼度である判定対象信頼度が、閾値以上か否かを判定し、
前記判定対象信頼度が前記閾値以上の場合には、
前記判定対象信頼度を有する感度を前記記録媒体から取得し、取得された前記感度を前記角速度の補正に用い、
前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、
代替感度を導出し、前記代替感度を前記角速度の補正に用いる、
請求項1~4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記感度補正部は、
前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、
前記判定対象信頼度を有する感度である低信頼感度と、前記閾値以上の信頼度を有する感度である高信頼感度とを前記記録媒体から取得し、
前記低信頼感度および前記高信頼感度のそれぞれの信頼度に基づく重みを用いた前記低信頼感度および前記高信頼感度の加重平均によって、前記代替感度を導出する、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記感度補正部は、
前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、
それぞれ前記閾値以上の信頼度を有する感度である第1感度および第2感度を前記記録媒体から取得し、
前記第1感度および前記第2感度と、前記第1感度および前記第2感度のそれぞれに関連付けられている温度範囲と、前記判定対象信頼度に関連付けられている温度範囲とに基づく、感度の外挿、内挿または線形補間によって、前記代替感度を導出する、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記感度補正部は、
前記判定対象信頼度が、前記閾値未満であって、かつ、前記感度テーブルに示されている他の信頼度よりも高い場合には、
前記判定対象信頼度を有する感度を前記代替感度として用いる、
請求項6~8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記更新処理部は、
前記感度テーブルに示されている感度を、前記算出感度を用いて更新するときには、前記感度テーブルに示されている前記感度の信頼度をさらに更新する、
請求項6~9の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記更新処理部は、
前記感度の信頼度の更新では、
前記算出感度が算出されたときの前記車両の走行状態を示す走行データに応じて、前記感度の信頼度を更新する、
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記更新処理部は、
前記走行データによって示される前記車両の旋回の角度が大きいほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新する、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記更新処理部は、
前記走行データによって示される2つの直線区間のそれぞれの距離が長いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新し、
前記2つの直線区間は、前記車両が旋回したときの前および後のそれぞれの時点で前記車両が直進走行した区間である、
請求項11または12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記更新処理部は、
前記走行データによって示される前記車両の走行時間が短いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新する、
請求項11~13の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
前記更新処理部は、
前記走行データによって示される前記車両の停車時間が長いほど、および、前記車両の停車回数が多いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新する、
請求項11~14の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項16】
前記更新処理部は、
前記車両のエンジンが始動するときに、前記エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、前記感度テーブルに示されている各信頼度を大きく下げる、
請求項6~15の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項17】
前記更新処理部は、
前記感度テーブルにおいて前記温度範囲に関連付けられている感度を更新するときには、
前記走行データに基づいて前記算出感度の信頼度を算出信頼度として導出し、
前記感度テーブルにおいて前記温度範囲に関連付けられている信頼度と前記算出信頼度とに基づく重みを用いた前記感度と前記算出感度との加重平均によって、更新後の感度を導出する、
請求項11~15の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項18】
前記表示部は、
前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、
前記画像の出力を禁止する、
請求項6~17の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項19】
前記表示部は、
前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、
前記画像の表示態様を変更し、変更された表示態様の前記画像を出力する、
請求項6~17の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項20】
コンピュータが画像を表示する表示方法であって、
温度センサによって検出された、車両に搭載されている角速度センサの周囲温度を取得し、前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記角速度センサの感度を記録媒体から取得し、前記角速度センサによって検出される角速度を、取得された前記感度に応じて補正し、
前記感度に応じて補正された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第1車両推定方位として推定し、
前記角速度センサによって検出された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第2車両推定方位として推定し、
衛星測位システムにより測位される前記車両の位置と、前記車両の速度とを用いて、前記第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出し、
前記第3車両推定方位に応じた画像を表示部に表示させ、
前記第2車両推定方位および前記第3車両推定方位に基づいて、前記角速度センサの感度を算出感度として算出し、前記温度範囲に関連付けて前記記録媒体に格納されている感度を、前記算出感度を用いて更新する、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像を表示するための表示装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透光性を有する板状の表示媒体に、画像を表す光を投射してその表示媒体に光を反射させることにより、その表示媒体越しの背景をユーザに見せながら、その画像を虚像としてユーザに視認させる表示装置が提案されている。このような表示装置は、実際の背景の中に、その背景に関連する画像を表示することができる。特に、自動車関連の分野などでは、運転時に速度や各種の警告を示す画像をウィンドシールドの前方に虚像として表示する、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)が開発されている。
【0003】
このような表示装置を用いると、ユーザである運転手は、前方の外界を見ながら、視線を大きく動かすことなく、運転に関する画像を見ることができるため、より安全に運転を行うことができる。具体的には、このような表示装置は、車両をナビゲーションするための誘導表示を行う。つまり、表示装置は、車両を目的地に誘導するための方法(誘導方向とも呼ばれる)を指し示す三角形などの画像を路面に重畳する。
【0004】
このような三角形の画像を正しく表示するためには、車両が向いている方位を正確に把握する必要がある。特許文献1のナビゲーション装置は、車両の正確な方位を把握するために、角速度センサによって検出される角速度を用いて車両の方位を算出し、角速度センサ以外のセンサなどによる検出結果に基づいてその方位を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-172575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のナビゲーション装置である表示装置では、角速度センサの周囲温度によって、ユーザに対して適切な画像を表示することができない場合があるという課題がある。
【0007】
そこで、本開示は、角速度センサの周囲温度による影響を抑えてユーザに対して適切な画像を表示することができる表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る表示装置は、温度センサによって検出された、車両に搭載されている角速度センサの周囲温度を取得し、前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記角速度センサの感度を記録媒体から取得し、前記角速度センサによって検出される角速度を、取得された前記感度に応じて補正する感度補正部と、前記感度補正部によって補正された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第1車両推定方位として推定する第1方位推定部と、前記角速度センサによって検出された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第2車両推定方位として推定する第2方位推定部と、衛星測位システムにより測位される前記車両の位置と、前記車両の速度とを用いて、前記第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出する方位補正部と、前記第3車両推定方位に応じた画像を表示する表示部と、前記第2車両推定方位および前記第3車両推定方位に基づいて、前記角速度センサの感度を算出感度として算出し、前記温度範囲に関連付けて前記記録媒体に格納されている感度を、前記算出感度を用いて更新する更新処理部と、を備える。
【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の表示装置は、角速度センサの周囲温度による影響を抑えてユーザに対して適切な画像を表示することができる。
【0011】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態における表示装置の使用例を示す図である。
図2図2は、実施の形態における表示装置を備えた車両の内部の一例を示す図である。
図3図3は、画像表示の課題の一例を説明するための図である。
図4図4は、実施の形態における表示装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態における感度の算出を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態における感度テーブルの更新の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態における方位補正部による方位の補正を説明するための図である。
図8図8は、実施の形態における表示装置の全体的な処理を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態における感度テーブル更新処理の概略的な処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施の形態における走行履歴データの生成更新処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施の形態における感度履歴データの生成更新処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施の形態における感度テーブルを用いた表示処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、実施の形態における感度補正処理の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態の変形例1における感度テーブルの更新の一例を示す図である。
図15図15は、実施の形態の変形例1における感度テーブルの更新の他の例を示す図である。
図16図16は、実施の形態の変形例2における感度テーブルの一例を示す図である。
図17図17は、実施の形態の変形例2における代替感度の導出の一例を示す図である。
図18図18は、実施の形態の変形例2における感度補正処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、温度センサによって検出された、車両に搭載されている角速度センサの周囲温度を取得し、前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記角速度センサの感度を記録媒体から取得し、前記角速度センサによって検出される角速度を、取得された前記感度に応じて補正する感度補正部と、前記感度補正部によって補正された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第1車両推定方位として推定する第1方位推定部と、前記角速度センサによって検出された前記角速度に基づいて、前記車両が向いている方位を第2車両推定方位として推定する第2方位推定部と、衛星測位システムにより測位される前記車両の位置と、前記車両の速度とを用いて、前記第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出する方位補正部と、前記第3車両推定方位に応じた画像を表示する表示部と、前記第2車両推定方位および前記第3車両推定方位に基づいて、前記角速度センサの感度を算出感度として算出し、前記温度範囲に関連付けて前記記録媒体に格納されている感度を、前記算出感度を用いて更新する更新処理部と、を備える。
【0014】
これにより、角速度センサの周囲温度に応じた感度によって角速度が補正され、その補正された角速度を用いて第3車両推定方位が導出される。具体的な例では、あるタイミングまでの衛星測位システムにより測位された車両の位置の履歴と、そのときまでの車両の速度の履歴とを用いて第1車両推定方位を補正すれば、そのタイミングにおける車両の正確な向きとして第3車両推定方位を導出することができる。つまり、それらの履歴が得られる期間が経過するタイミングごとに、正確な第3車両推定方位を導出することができる。ここで、その期間内では、角速度センサによって検出される角速度は、周囲温度の変化によって変動する場合がある。しかし、上述のように、その角速度は、角速度センサの周囲温度に応じた感度によって補正されるため、そのような周囲温度の変化による角速度センサの変動を抑えることができる。したがって、上述のような場合であっても、車両の正確な向きとして第3車両推定方位を導出することができる。つまり、その周囲温度が変化するような環境であっても、適切な第3車両推定方位を導出することができ、その結果、角速度センサの周囲温度による影響を抑えてユーザに対して適切な画像を表示することができる。さらに、温度範囲に関連付けて記録媒体に格納されている感度は、第2車両推定方位と第3車両推定方位とに基づいて算出される算出感度を用いて更新される。したがって、角速度センサが経年劣化するような場合であっても、その感度を適切な値に維持することができる。その結果、第3車両推定方位の精度を維持して、ユーザに対して適切な画像を表示することができる。
【0015】
また、前記更新処理部は、前記車両が第1地点を通過した後に旋回して第2地点を通過したときに、前記第1地点および前記第2地点のそれぞれにおいて推定された前記第2車両推定方位の変化量と、前記第1地点および前記第2地点のそれぞれにおいて導出された前記第3車両推定方位の変化量とに基づいて、前記算出感度を算出してもよい。
【0016】
これにより、車両が旋回したときの変化量に基づいて算出感度が算出されるため、つまり、車両の向きが大きく変わるときに算出感度が算出されるため、その算出感度の精度を高めることができる。その結果、温度範囲に関連付けられる感度の更新を適切に行うことができる。
【0017】
また、前記方位補正部は、(a)前記衛星測位システムにより測位される前記車両の第1位置と、(b)前記車両が前記第1位置から移動したときの、前記衛星測位システムにより測位される前記車両の第2位置と、(c)前記第1位置と、前記第1位置における前記車両の方位と、前記角速度センサによって検出される角速度と、前記車両の速度とを用いたデッドレコニングに基づいて推定される、前記第2位置が測位されたときの前記車両の推定位置とに基づいて、前記車両の方位のずれを推定し、前記車両の方位のずれにしたがって前記第1車両推定方位を補正してもよい。例えば、前記方位補正部は、前記第1位置と前記第2位置とを結ぶ直線と、前記第1位置と前記推定位置とを結ぶ直線とのなす角度を、前記車両の方位のずれとして推定してもよい。
【0018】
これにより、第1位置と第2位置とから衛星測位システムによる走行軌跡が得られ、第1位置と推定位置とからデッドレコニングによる走行軌跡が得られる。そして、それらの走行軌跡に基づいて車両の方位のずれが推定され、その方位のずれにしたがって第1車両推定方位が補正される。したがって、その方位のずれを抑制することができ、正確な車両の向きとして第3車両推定方位を導出することができる。
【0019】
また、前記記録媒体には、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられている感度を示す感度テーブルが格納されてあり、前記感度補正部は、前記感度テーブルにおいて、前記温度センサによって検出された前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている前記感度を、前記記録媒体から取得し、取得された前記感度を前記角速度の補正に用いてもよい。
【0020】
これにより、温度範囲ごとに、その温度範囲に応じた角速度センサの感度を示す感度テーブルを用いた角速度の補正が行われる。したがって、その温度範囲の数が多いほど角速度を緻密に補正することができ、さらに、幅広い周囲温度に対して角速度の補正を行うことができる。
【0021】
また、前記記録媒体には、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられている感度と前記感度の信頼度とを示す感度テーブルが格納されてあり、前記感度補正部は、前記感度テーブルにおいて、前記温度センサによって検出された前記周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている信頼度である判定対象信頼度が、閾値以上か否かを判定し、前記判定対象信頼度が前記閾値以上の場合には、前記判定対象信頼度を有する感度を前記記録媒体から取得し、取得された前記感度を前記角速度の補正に用い、前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、代替感度を導出し、前記代替感度を前記角速度の補正に用いてもよい。
【0022】
これにより、感度の信頼度に応じた適応的な処理を行うことができる。つまり、判定対象信頼度が低い場合には、その判定対象信頼度を有する感度の代わりに、代替感度を用いて角速度の補正が行われるため、信頼されていない感度に基づく補正を抑えて、適切な補正が行える可能性を高めることができる。
【0023】
また、前記感度補正部は、前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、前記判定対象信頼度を有する感度である低信頼感度と、前記閾値以上の信頼度を有する感度である高信頼感度とを前記記録媒体から取得し、前記低信頼感度および前記高信頼感度のそれぞれの信頼度に基づく重みを用いた前記低信頼感度および前記高信頼感度の加重平均によって、前記代替感度を導出してもよい。
【0024】
これにより、判定対象信頼度が低い場合には、高信頼感度を用いることによって、その判定対象信頼度を有する低信頼感度よりも高い信頼度を有する代替感度が導出される可能性を高めることができる。したがって、このような代替感度を角速度の補正に用いることによって、適切な補正が行える可能性を高めることができる。
【0025】
また、前記感度補正部は、前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、それぞれ前記閾値以上の信頼度を有する感度である第1感度および第2感度を前記記録媒体から取得し、前記第1感度および前記第2感度と、前記第1感度および前記第2感度のそれぞれに関連付けられている温度範囲と、前記判定対象信頼度に関連付けられている温度範囲とに基づく、感度の外挿、内挿または線形補間によって、前記代替感度を導出してもよい。
【0026】
これにより、判定対象信頼度が低い場合には、高い信頼度を有する第1感度および第2感度と、各温度範囲に対する感度の線形性などとを利用して、その判定対象信頼度を有する感度よりも高い信頼度を有する代替感度が導出される可能性を高めることができる。したがって、このような代替感度を角速度の補正に用いることによって、適切な補正が行える可能性を高めることができる。
【0027】
また、前記感度補正部は、前記判定対象信頼度が、前記閾値未満であって、かつ、前記感度テーブルに示されている他の信頼度よりも高い場合には、前記判定対象信頼度を有する感度を前記代替感度として用いてもよい。
【0028】
これにより、判定対象信頼度が低く、感度テーブルに示されている例えば他の全ての信頼度がその判定対象信頼度よりもさらに低い場合には、その判定対象信頼度を有する感度がそのまま代替感度として用いられる。したがって、感度テーブルに示されている他の信頼度を用いることによって、より信頼されない感度を導出し、そのような感度を用いて角速度を補正してしまうことを抑制することができる。
【0029】
また、前記更新処理部は、前記感度テーブルに示されている感度を、前記算出感度を用いて更新するときには、前記感度テーブルに示されている前記感度の信頼度をさらに更新してもよい。
【0030】
これにより、感度テーブルに示される感度と、その感度の信頼度とを適切な状態に維持することができる。
【0031】
また、前記更新処理部は、前記感度の信頼度の更新では、前記算出感度が算出されたときの前記車両の走行状態を示す走行データに応じて、前記感度の信頼度を更新してもよい。
【0032】
車両の走行状態に応じて算出感度の精度が異なるため、感度テーブルに示されている感度の信頼度が、走行データに応じて更新されることによって、その算出感度の精度をその信頼度に反映してその信頼度を適切に更新することができる。
【0033】
また、前記更新処理部は、前記走行データによって示される前記車両の旋回の角度が大きいほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。
【0034】
車両の旋回の角度が大きいほど算出感度の精度が高まるため、その角度が大きいほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0035】
また、前記更新処理部は、前記走行データによって示される2つの直線区間のそれぞれの距離が長いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新し、前記2つの直線区間は、前記車両が旋回したときの前および後のそれぞれの時点で前記車両が直進走行した区間であってもよい。
【0036】
2つの直線区間のそれぞれの距離が長いほど算出感度の精度が高まるため、それらの距離が長いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0037】
また、前記更新処理部は、前記走行データによって示される前記車両の走行時間が短いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。
【0038】
例えば、車両が停車しているときには、角速度センサのオフセット補正に用いられるオフセット値が決定される。したがって、停車後の走行時間が短いほど、オフセット値のずれが生じ難い。その結果、走行時間が短いほど算出感度の精度が高まるため、走行時間が短いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0039】
また、前記更新処理部は、前記走行データによって示される前記車両の停車時間が長いほど、および、前記車両の停車回数が多いほど、前記感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。
【0040】
上述のように、車両が停車しているときには、角速度センサのオフセット補正に用いられるオフセット値が決定される。したがって、停車時間が長いほど、および、車両の停車回数が多いほど、オフセット値のずれが生じ難い。その結果、停車時間が長いほど、算出感度の精度が高まるため、停車時間が長いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。同様に、車両の停車回数が多いほど、算出感度の精度が高まるため、停車回数が多いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0041】
また、前記更新処理部は、前記車両のエンジンが始動するときに、前記エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、前記感度テーブルに示されている各信頼度を大きく下げてもよい。
【0042】
エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、角速度センサの感度は、その停止前の感度から大きく変化している可能性が高い。したがって、エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、感度テーブルに示されている各信頼度を大きく下げることによって、それらの信頼度を適切に管理することができる。
【0043】
また、前記更新処理部は、前記感度テーブルにおいて前記温度範囲に関連付けられている感度を更新するときには、前記走行データに基づいて前記算出感度の信頼度を算出信頼度として導出し、前記感度テーブルにおいて前記温度範囲に関連付けられている信頼度と前記算出信頼度とに基づく重みを用いた前記感度と前記算出感度との加重平均によって、更新後の感度を導出してもよい。
【0044】
これにより、算出感度の信頼度と、感度テーブルに示される感度の信頼度とを用いて、その感度を適切に更新することができる。
【0045】
また、前記表示部は、前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、前記画像の出力を禁止してもよい。
【0046】
これにより、判定対象信頼度が低い場合には、そのような判定対象信頼度を有する感度に基づく画像の出力が禁止されるため、不適切な画像の表示を抑制することができる。
【0047】
また、前記表示部は、前記判定対象信頼度が前記閾値未満の場合には、前記画像の表示態様を変更し、変更された表示態様の前記画像を出力してもよい。
【0048】
これにより、判定対象信頼度が低い場合には、画像の表示態様が変更されるため、例えば、AR(Augmented Reality)用の表示態様を非AR用の表示態様に変更することができ、その結果、AR用の表示態様による不適切な画像の表示を抑制することができる。
【0049】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0050】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0051】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0052】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における表示装置の使用例を示す図である。
【0053】
本実施の形態における表示装置100は、例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)として構成され、車両2に搭載されている。具体的な一例では、表示装置100は、車両2のダッシュボード2bに内蔵されている。
【0054】
このような表示装置100は、画像である表示物10を示す映像光を車両2のウィンドシールド2aに投射する。その結果、この映像光は、ウィンドシールド2aに反射し、例えば車両2の運転手であるユーザ1に向かう。これにより、ユーザ1は、ウィンドシールド2a越しに表示物10を虚像として視認する。つまり、表示装置100は、表示物10を虚像としてユーザ1に視認させる。なお、このように表示物10を虚像としてユーザ1に視認させることは、以下、表示物10の表示とも称され、その映像光を投射する動作は、表示物10を表示する動作と同義である。また、ウィンドシールド2aは、表示媒体の一例である。本実施の形態では、表示媒体はウィンドシールド2aであるが、車両2にコンバイナが備えられている場合には、表示装置100は、表示媒体としてそのコンバイナに映像光を投射してもよい。
【0055】
ウィンドシールド2aは、透光性を有する板状の表示媒体である。したがって、表示装置100は、そのウィンドシールド2a越しの路面などの背景をユーザ1に見せながら、その表示物10を虚像としてユーザ1に視認させる。つまり、AR(Augmented Reality)によって、実際の背景の中に表示物10を表示することができる。
【0056】
また、表示物10は、一方向を指し示す形状の画像であって、具体的な一例では、三角形の画像である。なお、この一方向は、三角形の先端の向きであって、誘導方向とも称される。この表示物10の誘導方向は、車両2を目的地に誘導するための方向である。
【0057】
したがって、このような表示装置100を用いると、ユーザ1である運転手は、前方の外界を見ながら、視線を大きく動かすことなく、表示物10を見ることができるため、より安全に誘導方向を把握して車両2を運転することができる。
【0058】
図2は、本実施の形態における表示装置100を備えた車両2の内部の一例を示す図である。
【0059】
表示装置100は、ダッシュボード2b内に隠された状態で、映像光をウィンドシールド2aに投射する。表示装置100による映像光の投射によって、ウィンドシールド2aにおける表示範囲d1内に表示物10が虚像として現れる。
【0060】
図3は、画像表示の課題の一例を説明するための図である。
【0061】
本実施の形態における表示装置100の比較対象である表示装置は、表示装置100と同様にHUDとして構成されて車両3に備えられる。そして、この表示装置は、三角形の画像である表示物11を示す映像光を車両3のウィンドシールドに投射することによって、その表示物11を虚像としてユーザに視認させる。つまり、ウィンドシールドにおける表示範囲d2内に表示物11が虚像として現れる。言い換えれば、表示装置は、表示範囲d2に表示物11を表示する。
【0062】
ここで、表示装置100の比較対象である表示装置は、車両3に搭載されている角速度センサによって検出される角速度を用いて、車両3の向きを車両推定方位として推定する。そして、表示装置は、その車両推定方位を基準に誘導方向を決定し、その誘導方向を指し示す表示物11を描画し、その描画された表示物11を表示する。ここで、角速度センサの角速度に対する感度は、その角速度センサの周囲温度に応じて変動する。
【0063】
例えば、図3に示すように、車両3は、時刻t1から時刻t4の間、誘導経路に沿って走行する。誘導経路は、車両3に搭載されたナビゲーション装置によって導出された、車両3を目的地まで誘導するための経路である。
【0064】
時刻t1では、表示装置は、誘導経路に沿う方位を車両推定方位として推定する。したがって、表示装置は、その誘導経路に沿う向きを指し示す表示物11を表示範囲d2に表示する。そして、車両3は、時刻t1の後、右に旋回する。ここで、角速度センサの周囲温度の変化によって、角速度センサの角速度に対する感度が変動すれば、車両3の旋回後の時刻t2では、表示装置は、誘導経路に沿う向きからずれた向きを指し示す表示物11を表示してしまう。具体的には、表示装置は、車両3から見て誘導経路に沿う向きから左に傾いた方位を車両推定方位として推定してしまう可能性がある。そのため、表示装置は、車両3から見て誘導経路に沿う向きから右にずれた向きを指し示す表示物11を表示してしまう。つまり、表示物11の重畳ずれが発生してしまう。
【0065】
一方、表示装置は、車両3が時刻t2からさらに走行し続けて、車両3の走行距離が所定の距離に達すると、例えば衛星測位システムによって測位される車両3の位置の軌跡などを用いることによって、その車両推定方位のずれを抑えることができる。その結果、時刻t3では、表示装置は、誘導経路に沿う方位を車両推定方位として推定することができる。したがって、表示装置は、その誘導経路に沿う向きを指し示す表示物11を表示範囲d2に表示することできる。
【0066】
しかし、その後に上述と同様に、角速度センサの感度が変動すると、車両3がさらに右に旋回した後の時刻t4では、再び、表示物11が指し示す向きにずれが生じてしまう。つまり、表示装置は、車両3から見て誘導経路に沿う向きから左に傾いた方位を車両推定方位として推定し、その結果、車両3から見て誘導経路に沿う向きから右にずれた向きを指し示す表示物11を表示してしまう。つまり、表示物11の重畳ずれが発生してしまう。
【0067】
本実施の形態における表示装置100は、上述のような表示装置とは異なり、表示物10が指し示す向きのずれを抑制することができる。つまり、表示装置100は、角速度センサによって検出される角速度に対してその角速度センサの周囲温度に応じた感度補正を行うことによって、角速度センサの周囲温度の影響を抑えて適切な向きを指し示す表示物10を表示することができる。
【0068】
図4は、本実施の形態における表示装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0069】
表示装置100は、オフセット補正部101、感度補正部102、第1方位推定部103、第2方位推定部104、方位補正部105、更新処理部106、感度テーブル格納部107、データ格納部108、描画部109、および表示部110を備える。また、このような表示装置100は、車速出力部201、衛星測位システム202、ジャイロセンサ203、温度センサ204、およびナビゲーション部205からの信号または情報を取得する。そして、表示装置100は、これらの信号または情報に基づいて、車両推定方位を推定し、その車両推定方位に基づく向きを指し示す表示物10を表示する。
【0070】
車速出力部201は、例えば車両2に備えられ、車両2の速度である車速を示す車速情報を出力する。このような車速出力部201は、例えばECU(Electronic Control Unit)によって実現されている。
【0071】
衛星測位システム202は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)またはGPS(Global Positioning System)などである。例えば、衛星測位システム202に備えられる、衛星から送信された信号を受信する受信機などは、車両2に備えられている。このような衛星測位システム202は、車両2の位置および方位を測位し、その位置を示す位置情報と、車両2の方位を示す方位情報とを表示装置100に出力する。
【0072】
ジャイロセンサ203は、角速度センサの一例であって、車両2のヨー角の角速度を検出し、その検出された角速度を示す角速度信号を出力する。
【0073】
温度センサ204は、例えばサーミスタなどとして構成され、ジャイロセンサ203の周囲の温度を周囲温度として検出し、その検出された周囲温度を示す温度信号を出力する。
【0074】
ナビゲーション部205は、例えば衛星測位システム202から上述の位置情報などを取得し、地図データを用いて、車両2が目的地に到達するため経路を探索し、その探索された経路である誘導経路と、車両2の位置とを示す経路情報を出力する。
【0075】
オフセット補正部101は、ジャイロセンサ203から角速度信号を取得し、その角速度信号に対してオフセット補正を行う。例えば、オフセット補正部101は、角速度信号によって示される角速度からオフセット値を減算することによって、オフセット補正を行う。そして、オフセット補正部101は、そのオフセット補正が行われた角速度信号を感度補正部102および第2方位推定部104に出力する。例えば、オフセット補正部101は、車両2が停止しているときにジャイロセンサ203から出力される角速度信号によって示される角速度をオフセット値として扱う。具体的には、オフセット補正部101は、車速出力部201から出力される車速情報に基づいて、過去3秒間の車速が0であり、車両2の加速度の変化量が閾値以下である否かを判定する。なお、オフセット補正部101は、車両2に搭載されている加速度センサからその車両2の加速度を取得してもよい。そして、オフセット補正部101は、車速が0であり、加速度の変化量が閾値以下であると判定すると、つまり、車両2が停止していると判定し、その過去3秒間にジャイロセンサ203からの出力された角速度信号によって示される角速度の平均値を、オフセット値として扱う。
【0076】
感度補正部102は、オフセット補正が行われた角速度信号をオフセット補正部101から取得する。そして、感度補正部102は、その角速度信号によって示される角速度、すなわちオフセット補正が行われた角速度に対して感度補正を行う。この感度補正では、感度補正部102は、温度センサ204から温度信号を取得する。さらに、感度補正部102は、その温度信号によって示される周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている感度を、感度テーブル格納部107から取得する。そして、感度補正部102は、角速度をその感度に応じて補正する。例えば、感度補正部102は、角速度にその感度を乗算することによって、その角速度を補正する。感度補正部102は、感度補正が行われた角速度を示す角速度信号を第1方位推定部103に出力する。
【0077】
つまり、本実施の形態における感度補正部102は、温度センサ204によって検出された、車両2に搭載されているジャイロセンサ203の周囲温度を取得し、その周囲温度を含む温度範囲に関連付けられているジャイロセンサ203の感度を感度テーブル格納部107から取得し、ジャイロセンサ203によって検出されてオフセット補正された角速度を、取得された感度に応じて補正する。
【0078】
第1方位推定部103は、感度補正部102から角速度信号を取得する。この角速度信号は、オフセット補正および感度補正が行われた角速度を示す。第1方位推定部103は、その角速度の積算によって、車両2が向いている方位を第1車両推定方位として推定する。なお、その角速度の積算は、角速度の時間積分である。第1方位推定部103は、その第1車両推定方位を示す第1方位推定情報を方位補正部105に出力する。
【0079】
このように、本実施の形態における第1方位推定部103は、感度補正部102によって補正された角速度に基づいて、車両2が向いている方位を第1車両推定方位として推定する。
【0080】
第2方位推定部104は、オフセット補正部101から角速度信号を取得する。この角速度信号は、感度補正が行われていない角速度を示す。第2方位推定部104は、オフセット補正が行われて感度補正が行われていない角速度の積算によって、車両2が向いている方位を第2車両推定方位として推定する。第2方位推定部104は、その第2車両推定方位を示す第2方位推定情報を更新処理部106に出力する。
【0081】
このように、本実施の形態における第2方位推定部104は、ジャイロセンサ203によって検出されて感度補正が行われていない角速度に基づいて、車両2が向いている方位を第2車両推定方位として推定する。
【0082】
方位補正部105は、第1方位推定部103から第1方位推定情報を取得し、その第1方位推定情報によって示される第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出する。具体的には、方位補正部105は、第1車両推定方位を初期方位に対する相対的な方位に補正することによって、第3車両推定方位を導出する。この初期方位は、例えば、衛星測位システム202から出力される方位情報によって示される車両2の方位である。この方位には誤差が含まれている。つまり、方位のずれがある。そこで、方位補正部105は、予め定められた条件が満たされるタイミングごとに、方位のずれを推定して、そのずれが減少されるように初期方位を更新する。そして、方位補正部105は、導出された第3車両推定方位を示す第3方位推定情報を更新処理部106および描画部109に出力する。
【0083】
方位補正部105は、上述のように、方位のずれを推定する。具体的には、方位補正部105は、第1方位推定情報だけでなく、車速出力部201から車速情報を取得し、衛星測位システム202から位置情報および方位情報を取得する。方位補正部105は、第1方位推定情報によって示される第1車両推定方位と、例えば方位情報によって示される初期方位と、車速情報によって示される車速とを用いたデッドレコニングを行う。方位補正部105は、このデッドレコニングによって車両2の走行軌跡を導出する。さらに、方位補正部105は、位置情報によって示される車両2の位置に基づいて、車両2の走行軌跡を導出する。方位補正部105は、これらの走行軌跡のずれに基づいて、上述の方位のずれを推定する。そして、方位補正部105は、その方位のずれを初期方位に反映させることによって、例えば、初期方位に対して方位のずれを加算または減算することによって、初期方位を更新し、第1車両推定方位をその初期方位に対する相対的な方位に補正する。これにより、第3車両推定方位が導出される。
【0084】
なお、方位のずれの推定は、その推定の精度を高めるために、例えば、車両2が所定の距離以上走行するという条件が満たされるタイミングごとに、実行される。したがって、車両2が所定の距離以上走行していない場合には、直前に推定された方位のずれに基づいて第3車両推定方位が導出される。
【0085】
このように、本実施の形態における方位補正部105は、衛星測位システム202により測位される車両2の位置と、車両2の速度とを少なくとも用いて、第1車両推定方位を補正することによって、第3車両推定方位を導出する。
【0086】
更新処理部106は、温度センサ204から温度信号を取得し、第2方位推定部104から第2方位推定情報を取得し、方位補正部105から第3方位推定情報を取得する。つまり、更新処理部106は、ジャイロセンサ203の周囲温度と、その周囲温度において推定または導出された第2車両推定方位および第3車両推定方位とを取得する。そして、更新処理部106は、これらの周囲温度、第2車両推定方位および第3車両推定方位を用いて、感度テーブル格納部107に格納されている感度テーブルを更新する。感度テーブルは、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられているジャイロセンサ203の感度を示す。
【0087】
具体的には、更新処理部106は、まず、走行履歴データを生成または更新する。走行履歴データは、例えば、複数のタイミングのそれぞれで得られた第2車両推定方位、第3車両推定方位、および周囲温度を関連付けて示す。さらに、更新処理部106は、その生成または更新された走行履歴データに基づいて、各周囲温度に対応するジャイロセンサ203の感度を算出する。つまり、更新処理部106は、走行履歴データに示される、実質的に同一の周囲温度に関連付けられている2つの第2車両推定方位と2つの第3車両推定方位とに基づいて、ジャイロセンサ203の感度を算出する。なお、実質的に同一の周囲温度とは、同一の周囲温度であってもよく、数パーセントの誤差範囲に収まる周囲温度であってもよく、予め定められた範囲に収まる周囲温度であってもよく、上述の複数の温度範囲のうちの同一の温度範囲に収まる周囲温度であってもよい。
【0088】
そして、更新処理部106は、検出された周囲温度ごとに、その周囲温度に対して算出されたジャイロセンサ203の感度を示す感度履歴データを生成または更新する。更新処理部106は、感度テーブルを更新するときには、その感度履歴データに示されている同じ温度範囲にある各温度に関連付けられている感度の平均値を算出する。そして、更新処理部106は、感度テーブルにおいて上述の温度範囲に関連付けられている感度を、その算出された平均値に置き換えることによって、その感度を更新する。言い換えれば、更新処理部106は、感度に対してキャリブレーションを行う。
【0089】
このように、本実施の形態における更新処理部106は、第2方位推定部104によって推定される第2車両推定方位と、方位補正部105によって導出される第3車両推定方位とに基づいて、ジャイロセンサ203の感度を算出感度として算出し、温度範囲に関連付けて感度テーブル格納部107に格納されている感度を、その算出感度を用いて更新する。なお、その温度範囲は、第2車両推定方位および第3車両推定方位が推定または導出されたときに温度センサ204によって検出された周囲温度を含む温度範囲である。
【0090】
感度テーブル格納部107は、上述の感度テーブルを格納するための記録媒体である。データ格納部108は、感度テーブルを更新するための走行履歴データおよび感度履歴データを格納するための記録媒体である。これらの記録媒体は、ハードディスクドライブ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、または半導体メモリなどである。なお、このような記録媒体は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0091】
描画部109は、方位補正部105から第3方位推定情報を取得し、その第3方位推定情報によって示される第3車両推定方位に基づく向きを指し示す表示物10を生成する。すなわち、描画部109は、その表示物10を描画する。描画部109は、表示物10を描画する場合には、ナビゲーション部205から経路情報を取得する。そして、描画部109は、その経路情報に基づいて、車両2の位置における誘導経路に沿う方位を特定し、第3車両推定方位から誘導経路に沿う方位に傾いた形状の表示物10、つまり第3車両推定方位から誘導経路側の向きを指し示す表示物10を描画する。描画部109は、このように描画された表示物10を示す画像信号を表示部110に出力する。
【0092】
表示部110は、描画部109から画像信号を取得し、その画像信号にしたがって表示物10を表示する。例えば、表示部110は、光源および光学系を備え、表示物10がユーザ1に視認されるように、その表示物10を示す映像光を生成する。そして、表示部110は、その映像光をウィンドシールド2aに投射する。その結果、表示物10がユーザ1によって視認される。つまり、表示部110は、表示物10を示す映像光をウィンドシールド2aに投射することによって、ウィンドシールド2aでその映像光を車両2内のユーザ1側に向けて反射させ、ウィンドシールド2a越しにその表示物10を虚像としてユーザ1に視認させる。
【0093】
このように、本実施の形態における表示部110は、第3車両推定方位に応じた画像である表示物10を表示する。
【0094】
図5は、感度の算出を説明するための図である。
【0095】
更新処理部106は、例えば図5に示す走行履歴データ108aを生成または更新する。具体的には、更新処理部106は、上述のように、ジャイロセンサ203の周囲温度と、その周囲温度において推定または導出された第2車両推定方位および第3車両推定方位とを取得する。さらに、更新処理部106は、衛星測位システム202から位置情報を取得する。更新処理部106は、その位置情報によって示される位置と、その位置において検出された周囲温度と、その周囲温度において推定または導出された第2車両推定方位および第3車両推定方位とを、車両2がその位置を走行した時刻に関連付ける。これにより、走行データが生成される。更新処理部106は、走行履歴データ108aがデータ格納部108に格納されていなければ、その走行データを走行履歴データ108aとして生成してデータ格納部108に格納する。一方、走行履歴データ108aがデータ格納部108に格納されていれば、更新処理部106は、最新の走行データを、既に格納されている走行履歴データ108aに追加することによって、その走行履歴データ108aを更新する。
【0096】
次に、更新処理部106は、その走行履歴データ108aを用いてジャイロセンサ203の感度を算出する。例えば、更新処理部106は、走行履歴データ108aから、実質的に同一の周囲温度に関連付けられている2つの第2車両推定方位および2つの第3車両推定方位を検索する。具体的な一例では、周囲温度「T01」と周囲温度「T02」とが実質的に同一の温度である場合、更新処理部106は、第2車両推定方位「ψ201」および「ψ202」と、第3車両推定方位「ψ301」および「ψ302」とを見つけ出す。次に、更新処理部106は、第3車両推定方位「ψ301」および「ψ302」の変化量「ψ302-ψ301」を算出する。同様に、更新処理部106は、第2車両推定方位「ψ201」および「ψ202」の変化量「ψ202-ψ201」を算出する。そして、更新処理部106は、第3車両推定方位の変化量「ψ302-ψ301」を、第2車両推定方位の変化量「ψ202-ψ201」で除算することによって、ジャイロセンサ203の感度を算出する。
【0097】
ここで、更新処理部106は、走行履歴データ108aにおいて、車両2が旋回した前後に走行した位置に関連付けられている第2車両推定方位および第3車両推定方位を、感度の算出に用いてもよい。例えば、車両2は、時刻「t03」に第1地点を走行した後に、右に旋回し、時刻「t04」に第2地点を走行する。このとき、走行履歴データ108aにおいて第2車両推定方位および第3車両推定方位が時刻「t03」から「t04」の間で凡そ90°程度変化している。また、時刻「t03」での周囲温度「T03」と、時刻「t04」での周囲温度「T04」とは実質的に同一であって、時刻「t03」から「t04」の間では周囲温度は変化していない。この場合、更新処理部106は、時刻「t03」に関連付けられている第2車両推定方位「ψ203」および第3車両推定方位「ψ303」と、時刻「t04」に関連付けられている第2車両推定方位「ψ204」および第3車両推定方位「ψ304」とを、感度の算出に用いる。
【0098】
このように、更新処理部106は、車両2が第1地点を通過した後に旋回して第2地点を通過したときに、その第1地点および第2地点のそれぞれにおいて推定された第2車両推定方位の変化量と、第1地点および第2地点のそれぞれにおいて導出された第3車両推定方位の変化量とに基づいて、算出感度を算出する。これにより、車両2が旋回したときの変化量に基づいて算出感度が算出されるため、つまり、車両2の向きが大きく変わるときに算出感度が算出されるため、その算出感度の精度を高めることができる。その結果、感度テーブル格納部107(すなわち感度テーブル)において温度範囲に関連付けられる感度の更新を適切に行うことができる。
【0099】
ここで、例えば、更新処理部106は、第2車両推定方位および第3車両推定方位のそれぞれの変化量が大きいほど、その変化量に対応する第2車両推定方位および第3車両推定方位を優先的に感度の算出に用いてもよい。つまり、更新処理部106は、旋回の角度が大きいほど、その旋回の前後に車両2が走行した2つの位置にそれぞれ関連付けられている第2車両推定方位および第3車両推定方位を優先的に感度の算出に用いてもよい。また、更新処理部106は、その旋回の前後における車両2の走行が直進走行に近く、そのときの走行距離が長いほど、その旋回の前後に車両2が走行した2つの位置にそれぞれ関連付けられている第2車両推定方位および第3車両推定方位を優先的に感度の算出に用いてもよい。これにより、算出感度の精度をより高めることができる。なお、更新処理部106は、第2車両推定方位または第3車両推定方位の変動が小さいほど、車両2の走行が直進走行に近いと判断してもよく、衛星測位システム202から逐次出力される位置情報によって示される位置に基づいて、車両2の走行距離を導出してもよい。
【0100】
なお、図5に示す走行履歴データ108aに含まれる走行データは、さらに、第1車両推定方位を示していてもよく、走行距離を示していてもよい。また、走行データは、少なくとも第2車両推定方位および第3車両推定方位と周囲温度とを示していればよく、時刻および位置を示していなくてもよい。
【0101】
図6は、実施の形態における感度テーブルの更新の一例を示す図である。
【0102】
更新処理部106は、図5に示すように、走行履歴データ108aを用いて周囲温度に対応するジャイロセンサ203の感度を算出すると、その感度をその周囲温度に関連付ける。そして、更新処理部106は、図6に示すように、その関連付けられた感度および周囲温度を示す感度履歴データ108bを生成する。つまり、データ格納部108に感度履歴データ108bが未だ格納されていなければ、更新処理部106は、その関連付けられた感度および周囲温度を示す感度履歴データ108bを生成して、その感度履歴データ108bをデータ格納部108に格納する。一方、データ格納部108に感度履歴データ108bが既に格納されていれば、更新処理部106は、その関連付けられた感度および周囲温度をその感度履歴データ108bに追加する。これにより、感度履歴データ108bが更新される。なお、図6に示す感度履歴データ108bは、感度(すなわち算出感度)を「Gn0、Gn1、Gn2」などによって示している。
【0103】
更新処理部106は、この感度履歴データ108bによって示される感度の平均値を算出することによって、図6に示す感度テーブル107aを更新する。例えば、感度テーブル107aには、予め複数の温度範囲と、その複数の温度範囲のそれぞれに対する感度の初期値とが示されている。複数の温度範囲のそれぞれは、例えば図6に示すように、「-40~-30℃」、「-30~-20℃」、「-20~-10℃」などである。初期値は、予め定められた感度(例えば1)であってもよく、直前に算出された感度であってもよい。なお、図6に示す複数の温度範囲は一例であって、本開示における温度範囲はその例に限らず、どのようなものであってもよい。また、数値aおよびbを用いて表記される温度範囲「a~b℃」は、a℃以上b℃未満、あるいは、a℃よりも高くb℃以下を意味していてもよい。
【0104】
更新処理部106は、その複数の温度範囲のそれぞれについて、感度履歴データ108bにおいてその温度範囲にある1以上の周囲温度に関連付けられている感度の平均値を算出する。そして、更新処理部106は、複数の温度範囲のそれぞれについて、感度テーブル107aにおいてその温度範囲に関連付けられている感度を、その温度範囲に対して算出された平均値に置き換えることによって、感度テーブル107aを更新する。また、更新処理部106は、感度履歴データ108bに、新たな周囲温度と感度との組み合わせが追加されるたびに、感度テーブル107aによって示される、その周囲温度を含む温度範囲の感度を上述のように更新してもよい。なお、図6に示す感度テーブル107aは、感度(すなわち算出感度の平均値)を「G0、G1、G2」などによって示している。
【0105】
感度補正部102は、このような感度テーブル107aにおいて、温度センサ204によって検出された周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている感度を、感度テーブル格納部107から取得し、取得された感度を角速度の補正(すなわち感度補正)に用いる。これにより、温度範囲ごとに、その温度範囲に応じたジャイロセンサ203の感度を示す感度テーブル107aを用いた角速度の補正が行われる。したがって、その温度範囲の数が多いほど角速度を緻密に補正することができ、さらに、幅広い周囲温度に対して角速度の補正を行うことができる。
【0106】
図7は、方位補正部105による方位の補正を説明するための図である。具体的には、図7は、XY座標系によって定義される水平面上の車両2の走行軌跡の一例を模式的に示している。車両2は、例えば、この水平面上において左下側(すなわちXY座標の原点側)から、右上側(すなわちX軸方向およびY軸方向のプラス側)に移動する。図7における実線は、車両2の実際の走行軌跡を示す。この実際の走行履歴は、方位補正部105などによって認識されないが、衛星測位システム202による走行軌跡およびデッドレコニングによる走行軌跡との比較のために図示されている。図7における破線は、衛星測位システム202による走行軌跡を示し、図7における一点鎖線は、デッドレコニングによる走行軌跡を示す。
【0107】
方位補正部105は、衛星測位システム202から随時出力される位置情報を取得し、それらの位置情報によって示される位置に基づいて、位置A1から位置A2に至るまでの衛星測位システム202による走行軌跡を特定する。さらに、方位補正部105は、第1方位推定部103から随時出力される第1方位推定情報を取得し、車速出力部201から随時出力される車速情報を取得する。そして、方位補正部105は、位置A1を起点として用いたデッドレコニングを行う。つまり、方位補正部105は、位置A1と、位置A1が測位されたときの初期方位と、第1方位推定情報によって示される第1車両推定方位と、車速情報によって示される車速とに基づくデッドレコニングを行う。これにより、位置A1から位置B1に至るまでのデッドレコニングによる走行軌跡が特定される。なお、位置B1は、位置A2が測位されたときの、デッドレコニングにより推定される位置である。
【0108】
次に、方位補正部105は、位置A1と位置A2とを結ぶ直線と、位置A1と位置B1とを結ぶ直線とのなす角度を、方位のずれとして推定する。そして、方位補正部105は、初期方位に対してそのずれ(すなわち上述のなす角度)を加算または減算することによって、その初期方位を更新し、第1車両推定方位をその初期方位に対する相対的な方位に補正する。この補正によって、第3車両推定方位が導出される。
【0109】
このように、本実施の形態における方位補正部105は、車両2の方位のずれを推定し、その車両2の方位のずれにしたがって第1車両推定方位を補正する。つまり、方位補正部105は、(a)衛星測位システム202により測位される車両2の第1位置と、(b)車両2が第1位置から移動したときの、衛星測位システム202により測位される車両2の第2位置と、(c)その第1位置と、第1位置における車両2の方位(すなわち初期方位)と、ジャイロセンサ203によって検出される角速度と、車両2の速度とを用いたデッドレコニングに基づいて推定される、第2位置が測位されたときの車両2の推定位置とに基づいて、車両2の方位のずれを推定する。また、方位補正部105は、第1位置と第2位置とを結ぶ直線と、その第1位置と推定位置とを結ぶ直線とのなす角度を、車両2の方位のずれとして推定する。これにより、第1位置と第2位置とから衛星測位システム202による走行軌跡が得られ、第1位置と推定位置とからデッドレコニングによる走行軌跡が得られる。そして、それらの走行軌跡に基づいて車両2の方位のずれが推定され、その方位のずれにしたがって第1車両推定方位が補正される。したがって、その方位のずれを抑制することができ、正確な車両2の向きとして第3車両推定方位を導出することができる。
【0110】
図8は、表示装置100の全体的な処理を示すフローチャートである。
【0111】
表示装置100は、感度テーブル更新処理(ステップS100)と、感度テーブル107aを用いた表示処理(ステップS200)とを実行する。感度テーブル更新処理は、感度テーブル格納部107に格納されている感度テーブル107aを更新する処理である。感度テーブル107aを用いた表示処理は、オフセット補正された角速度を、その感度テーブル107aに示されている感度を用いてさらに補正し、その補正後の角速度に基づいて、表示物10を表示する処理である。このような感度テーブル更新処理と、感度テーブル107aを用いた表示処理とは、並列に実行されてもよく、直列に実行されてもよい。
【0112】
図9は、感度テーブル更新処理の概略的な処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図9のフローチャートは、図8のステップS100の処理を詳細に示す。
【0113】
まず、更新処理部106は、走行履歴データ108aの生成または更新を行う(ステップS110)。つまり、走行履歴データ108aの生成更新処理が行われる。次に、更新処理部106は、その走行履歴データ108aを用いて感度履歴データ108bの生成または更新を行う(ステップS120)。つまり、感度履歴データ108bの生成更新処理が行われる。
【0114】
次に、更新処理部106は、ステップS120の処理において感度履歴データ108bに新たな感度が周囲温度に関連付けて追加されると、感度テーブル107aからその周囲温度を含む温度範囲を特定する。そして、更新処理部106は、感度履歴データ108bにおいてその温度範囲にある各周囲温度に関連付けられている感度の平均値を算出する(ステップS131)。次に、更新処理部106は、感度テーブル107aにおいて、その温度範囲に対して算出された平均値をその温度範囲に関連付けることによって、その感度テーブル107aを更新する(ステップS132)。なお、感度テーブル107aにおいてその温度範囲に既に感度が関連付けられていれば、更新処理部106は、その既存の感度を上述の平均値に置き換える。
【0115】
そして、更新処理部106は、車両2の走行が継続しているか否かを判定する(ステップS133)。ここで、更新処理部106は、走行が継続していると判定すると(ステップS133のYES)、ステップS110からの処理を繰り返し実行する。一方、更新処理部106は、走行が継続していないと判定すると(ステップS133のNO)、感度テーブル更新処理を終了する。
【0116】
図10は、走行履歴データ108aの生成更新処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図10のフローチャートは、図9のステップS110の処理を詳細に示す。
【0117】
まず、更新処理部106は、車両2の走行距離を初期化する(ステップS111)。例えば、更新処理部106は、走行距離を0に設定する。そして、更新処理部106は、車両2の走行距離が閾値以上に達したか否かを判定する(ステップS112)。例えば、更新処理部106は、走行距離を示す情報を表示装置100の外部の機器から取得してもよく、衛星測位システム202から出力される位置情報に基づいて走行距離を特定してもよい。また、走行距離の閾値は、例えば10mである。ここで、走行距離が閾値以上に達していないと判定すると(ステップS112のNO)、更新処理部106は、ステップS112の処理を繰り返し実行する。
【0118】
一方、走行距離が閾値以上に達したと判定すると(ステップS112のYES)、更新処理部106は、第2方位推定部104から第2方位推定情報を取得し、方位補正部105から第3方位推定情報を取得し、温度センサ204から温度信号を取得する。つまり、更新処理部106は、その第2方位推定情報によって示される第2車両推定方位と、第3方位推定情報によって示される第3車両推定方位と、温度信号によって示される周囲温度とを含む走行データを取得する(ステップS113)。このとき、更新処理部106は、衛星測位システム202から位置情報を取得し、その位置情報によって示される車両2の位置を走行データに含めてもよい。さらに、更新処理部106は、第2車両推定方位などが取得された時刻も走行データに含めてもよい。
【0119】
そして、更新処理部106は、データ格納部108に格納されている走行履歴データ108aにその走行データを追加することによって、走行履歴データ108aを更新する(ステップS114)。なお、更新処理部106は、データ格納部108に走行履歴データ108aが格納されていなければ、その走行データを走行履歴データ108aとして生成してデータ格納部108に格納する。
【0120】
図11は、感度履歴データ108bの生成更新処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図11のフローチャートは、図9のステップS120の処理を詳細に示す。
【0121】
まず、更新処理部106は、ステップS110で更新された走行履歴データ108aから、それぞれ実質的に同一の周囲温度を含む2つの走行データを取得する。このとき、更新処理部106は、例えば、車両2の旋回前後に得られているという所定の条件を満たす2つの走行データを取得する。言い換えれば、図5に示すように、走行データに位置が含まれている場合には、更新処理部106は、実質的に同一の周囲温度に関連付けられている、所定の条件を満たす2地点を選択する(ステップS121)。
【0122】
次に、更新処理部106は、走行履歴データ108aに示されている、その2地点のそれぞれの第2車両推定方位と第3車両推定方位とに基づいて、上述の周囲温度に対するジャイロセンサ203の感度を算出する(ステップS122)。
【0123】
そして、更新処理部106は、データ格納部108に格納されている感度履歴データ108bに、ステップS122で算出された感度を周囲温度に関連付けて追加することによって、感度履歴データ108bを更新する(ステップS123)。なお、更新処理部106は、データ格納部108に感度履歴データ108bが格納されていなければ、その算出された感度と周囲温度とを含むデータを感度履歴データ108bとして生成してデータ格納部108に格納する。
【0124】
図12は、感度テーブル107aを用いた表示処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図12のフローチャートは、図8のステップS200の処理を詳細に示す。
【0125】
まず、オフセット補正部101は、ジャイロセンサ203から角速度信号を取得し(ステップS201)、感度補正部102は、温度センサ204から温度信号を取得する(ステップS202)。次に、オフセット補正部101は、ステップS201で取得された角速度信号によって示される角速度に対してオフセット補正を行う(ステップS203)。そして、感度補正部102は、ステップS203においてオフセット補正が行われた角速度に対して、感度テーブル格納部107に格納されている感度テーブル107aを用いた感度補正を行う(ステップS210)。このとき、ステップS202によって取得された温度信号によって示されるジャイロセンサ203の周囲温度が感度補正に用いられる。つまり、ステップS210では、周囲温度を用いた感度補正処理が行われる。
【0126】
次に、第1方位推定部103は、第1車両推定方位を算出する。つまり、第1方位推定部103は、ステップS210における感度補正処理によって感度補正された角速度を積算することによって、第1車両推定方位を算出する(ステップS221)。そして、方位補正部105は、衛星測位システム202によって測位された車両2の位置と、車速出力部201から出力される車速情報によって示される車速とを用いて、ステップS221で算出された第1車両推定方位を補正する(ステップS222)。このステップS222での補正によって、第3車両推定方位が導出または算出される。
【0127】
次に、描画部109は、ナビゲーション部205から出力される経路情報と、ステップS222で算出された第3車両推定方位とを用いてARコンテンツである表示物10を描画する。表示部110は、その表示物10を示す映像光をウィンドシールド2aに投射することによって、その表示物10を表示する(ステップS223)。
【0128】
そして、表示装置100は、車両2の走行が継続しているか否かを判定する(ステップS224)。ここで、表示装置100は、走行が継続していると判定すると(ステップS224のYES)、ステップS201からの処理を繰り返し実行する。一方、表示装置100は、走行が継続していないと判定すると(ステップS224のNO)、感度テーブル107aを用いた表示処理を終了する。
【0129】
図13は、感度補正処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図13のフローチャートは、図12のステップS210の処理を詳細に示す。
【0130】
まず、感度補正部102は、感度テーブル格納部107に格納されている感度テーブル107aを参照する(ステップS211)。次に、感度補正部102は、図12のステップS202で取得された温度信号によって示されるジャイロセンサ203の周囲温度を把握し、感度テーブル107aにおいてその周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている感度を取得する(ステップS212)。つまり、感度補正部102は、温度センサ204によって検出された周囲温度に関連付けられている感度を、感度テーブル107aから読み出す。
【0131】
そして、感度補正部102は、図12のステップS203においてオフセット補正が行われた角速度に対して、ステップS212で取得された感度を乗算することによって、感度補正された角速度を算出する(ステップS213)。
【0132】
以上のように、本実施の形態では、ジャイロセンサ203の周囲温度に応じた感度によって角速度が補正され、その補正された角速度を用いて第3車両推定方位が導出される。具体的な例では、あるタイミングまでの衛星測位システムにより測位された車両2の位置の履歴と、そのときまでの車両2の速度の履歴とを用いて第1車両推定方位を補正すれば、そのタイミングにおける車両2の正確な向きとして第3車両推定方位を導出することができる。つまり、それらの履歴が得られる期間が経過するタイミングごとに、正確な第3車両推定方位を導出することができる。ここで、その期間内では、ジャイロセンサ203によって検出される角速度は、周囲温度の変化によって変動する場合がある。しかし、上述のように、その角速度は、ジャイロセンサ203の周囲温度に応じた感度によって補正されるため、そのような周囲温度の変化によるジャイロセンサ203の変動を抑えることができる。したがって、上述のような場合であっても、車両2の正確な向きとして第3車両推定方位を導出することができる。つまり、その周囲温度が変化するような環境であっても、適切な第3車両推定方位を導出することができ、その結果、ジャイロセンサ203の周囲温度による影響を抑えてユーザ1に対して適切な表示物10を表示することができる。さらに、温度範囲に関連付けて感度テーブル格納部107に格納されている感度は、第2車両推定方位と第3車両推定方位とに基づいて算出される算出感度を用いて更新される。したがって、ジャイロセンサ203が経年劣化するような場合であっても、その感度を適切な値に維持することができる。その結果、第3車両推定方位の精度を維持して、ユーザ1に対して適切な表示物10を表示することができる。
【0133】
(変形例1)
上記実施の形態では、初期状態の感度テーブル107aの各温度範囲には、例えば1を示す値が感度の初期値として予め関連付けられていてもよい。一方、初期状態の感度テーブル107aの各温度範囲には感度が関連付けられていなくてもよい。そして、走行履歴データ108aに追加される走行データの数が多くなるほど、感度テーブル107aにおいて感度に関連付けられる温度範囲が多くなる。しかし、感度テーブル107aにおいて感度に関連付けられていない温度範囲が多ければ、感度補正を十分に実行することが難しい。そこで、本変形例における更新処理部106は、このような感度テーブル107aに対して感度を補間する。つまり、更新処理部106は、感度テーブル107aにおける感度が未だに関連付けられていない温度範囲に対して、走行履歴データ108aを用いることなく感度を関連付ける。
【0134】
図14は、本変形例における感度テーブル107aの更新の一例を示す図である。
【0135】
例えば、感度テーブル107aは、温度範囲「10~20℃」に関連付けられた感度「G5」と、温度範囲「20~30℃」に関連付けられた感度「G6」とを示す。そして、感度テーブル107aの他の温度範囲には感度が示されていない。
【0136】
このような場合、更新処理部106は、線形補間または外挿によって、他の温度範囲に対応する感度を導出してもよい。例えば、感度「G5」および「G6」がそれぞれ「0.8」および「0.9」である場合、更新処理部106は、温度範囲「0~10℃」に対応する感度として「0.7」を導出し、温度範囲「30~40℃」に対応する感度として「1.0」を導出する。そして、更新処理部106は、このように導出された感度を温度範囲に関連付けて感度テーブル107aに書き込む。これにより感度が補間される。
【0137】
また、図14に示す感度テーブル107aでは、感度の補間に外挿が用いられるが、内挿が用いられてもよい。例えば、感度テーブル107aにおいて、温度範囲「-10~0℃」に感度「G3」が関連付けられている。このような場合、更新処理部106は、温度範囲「-10~0℃」およびその感度「G3」と、温度範囲「10~20℃」およびその感度「G5」とを用いた線形補間または内挿によって、温度範囲「0~10℃」に対応する感度「G4」を導出する。そして、更新処理部106は、その感度「G4」を温度範囲「0~10℃」に関連付けて感度テーブル107aに書き込む。このような内挿によっても感度が補間される。
【0138】
図15は、本変形例における感度テーブル107aの更新の他の例を示す図である。
【0139】
例えば、感度テーブル107aは、図14に示す例と同様、温度範囲「10~20℃」に関連付けられた感度「G5」と、温度範囲「20~30℃」に関連付けられた感度「G6」とを示す。そして、感度テーブル107aの他の温度範囲には感度が示されていない。
【0140】
このような場合、更新処理部106は、他の1以上の車両4において用いられている感度テーブル107bを例えばインターネットなどの通信ネットワークを介して各車両4から取得する。そして、更新処理部106は、それらの感度テーブル107bを用いて、車両2の感度テーブル107aの感度を補間する。なお、各車両4は、表示装置100を備え、その表示装置100の更新処理部106は、通信ネットワークを介して感度テーブル107bをクラウドサーバに送信する。クラウドサーバは、それらの車両4の感度テーブル107bを蓄積する。そして、車両2に搭載されている表示装置100の更新処理部106は、クラウドサーバに感度テーブル107bの送信を要求する。
【0141】
具体的には、車両2の更新処理部106は、第1条件および第2条件を満たす車両4の感度テーブル107bの送信を要求する。第1条件は、感度テーブル107aにおいて感度に関連付けられていない温度範囲に対して、感度が示されているという条件である。第2条件は、感度テーブル107aにおいて感度に関連付けられている温度範囲と同一の温度範囲に対して、感度テーブル107aの感度に最も近い感度が示されているという条件である。そして、車両2の更新処理部106は、クラウドサーバからそれらの条件を満たす感度テーブル107bを取得すると、その感度テーブル107bによって示される感度を感度テーブル107aに書き写す。つまり、更新処理部106は、感度テーブル107aにおいて感度が関連付けられていない温度範囲と同一の温度範囲を、感度テーブル107bから見つけ出す。そして、更新処理部106は、感度テーブル107bにおいてその温度範囲に関連付けられている感度を、車両2の感度テーブル107aにおけるその温度範囲に関連付ける。これにより、車両2の感度テーブル107aに感度が補間される。
【0142】
(変形例2)
上記実施の形態および変形例1における感度テーブル107aでは、温度範囲に感度が関連付けられている。本変形例における感度テーブルでは、感度だけでなく、その感度の信頼度も温度範囲に関連付けられている。
【0143】
図16は、本変形例における感度テーブルの一例を示す図である。
【0144】
本変形例における感度テーブル107cは、例えば図16に示すように、各温度範囲に対して感度と、その感度の信頼度とが関連付けられている。例えば、温度範囲「0~10℃」に対して、感度「G4」と、その感度「G4」の信頼度「T4」とが関連付けられている。つまり、本変形例では、感度テーブル格納部107には、互いに異なる複数の温度範囲のそれぞれに関連付けられている感度とその感度の信頼度とを示す感度テーブル107cが格納されている。
【0145】
例えば、その感度テーブル107cの初期状態では、各温度範囲に対して、予め定められた感度の初期値と、予め定められた信頼度の初期値とが関連付けられていてもよい。そして、更新処理部106は、感度テーブル107cの感度を更新するときには、その感度の信頼度も更新する。つまり、更新処理部106は、感度テーブル107cに示されている感度を、算出感度を用いて更新するときには、感度テーブル107cに示されているその感度の信頼度をさらに更新する。これにより、感度テーブル107cに示される感度と、その感度の信頼度とを適切な状態に維持することができる。
【0146】
具体的な一例では、更新処理部106は、感度の信頼度の更新では、算出感度が算出されたときの車両2の走行状態を示す走行データに応じて、その感度の信頼度を更新する。車両2の走行状態に応じて算出感度の精度が異なるため、感度テーブル107cに示されている感度の信頼度が、走行データに応じて更新されることによって、その算出感度の精度をその信頼度に反映してその信頼度を適切に更新することができる。
【0147】
より具体的には、更新処理部106は、その走行データによって示される車両2の旋回の角度が大きいほど、感度の信頼度を高い信頼度に更新する。例えば、図5に示す例のように、車両2は、時刻「t03」に第1地点を走行した後に、右に旋回し、時刻「t04」に第2地点を走行する。この場合、更新処理部106は、走行履歴データ108aに示されている第2車両推定方位「ψ203」および「ψ204」と、第3車両推定方位「ψ303」および「ψ304」とを用いて、ジャイロセンサ203の感度を算出感度として算出する。このとき、更新処理部106は、第2車両推定方位の変化量「ψ204-ψ203」または第3車両推定方位の変化量「ψ304-ψ303」を車両2の旋回の角度として用い、その角度が大きいほど高い信頼度を算出する。そして、更新処理部106は、感度テーブル107cにおいて、周囲温度「T03」および「T04」を含む温度範囲に関連付けられている感度の信頼度を、その算出された信頼度に置き換えることによって、その信頼度を更新する。車両2の旋回の角度が大きいほど算出感度の精度が高まるため、その角度が大きいほど信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0148】
また、更新処理部106は、走行履歴データ108aによって示される2つの直線区間のそれぞれの距離が長いほど、感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。その2つの直線区間は、車両2が旋回したときの前および後のそれぞれの時点で車両2が直進走行した区間である。なお、走行履歴データ108aは、複数の走行データからなるため、2つの直線区間はそれらの走行データによって示されていると言える。
【0149】
例えば、図5に示す例のように、車両2は、時刻「t03」に第1地点を走行した後に、右に旋回し、時刻「t04」に第2地点を走行する。この場合、更新処理部106は、走行履歴データ108aによって示される、時刻「t03」までに車両2が走行した各位置「XY03」、「XY02」、「XY01」などを特定する。そして、更新処理部106は、特定されたそれらの複数の位置のうち、位置「XY03」から直線上に沿って配列されている1以上の位置を検索する。更新処理部106は、その1以上の位置のうち、位置「XY03」から最も離れている位置と、位置「XY03」との間の距離を、車両2が旋回したときの前の時点における直線区間の距離として決定する。同様に、更新処理部106は、走行履歴データ108aによって示される、時刻「t04」以降に車両2が走行した各位置「XY04」、「XY05」、「XY06」などを特定する。そして、更新処理部106は、特定されたそれらの複数の位置のうち、位置「XY04」から直線上に沿って配列されている1以上の位置を検索する。更新処理部106は、その1以上の位置のうち、位置「XY04」から最も離れている位置と、位置「XY04」との間の距離を、車両2が旋回したときの後の時点における直線区間の距離として決定する。更新処理部106は、これらの直線区間の距離を用いて信頼度を更新する。なお、走行履歴データ108aに含まれる各走行データに、その走行データが得られるタイミングまでの直線区間の距離が直接的に示されていてもよい。2つの直線区間のそれぞれの距離が長いほど算出感度の精度が高まるため、それらの距離が長いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。なお、直線区間は、車両2が直進走行した区間、言い換えれば、車両2が走行した各位置が直線上に沿って配列されている区間であるが、その直進および直線は、厳密な直進および直線でなくてもよい。例えば、それらの位置から得られる近似直線と、各位置との間の距離が閾値以下であれば、車両2が直進走行し、各位置が直線上に沿って配列されていると解釈されてもよい。
【0150】
また、走行履歴データ108aに含まれる各走行データには、その走行データが得られるタイミングまでの車両2の走行時間が示されていてもよい。走行時間は、車両2が直近に停車していたときから車両2が継続的に走行しているときまでの時間である。このような場合、更新処理部106は、算出感度が算出されたときの走行データによって示される車両2の走行時間が短いほど、感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。例えば、車両2が停車しているときには、ジャイロセンサ203のオフセット補正に用いられるオフセット値が決定される。したがって、停車後の走行時間が短いほど、オフセット値のずれが生じ難い。その結果、走行時間が短いほど算出感度の精度が高まるため、走行時間が短いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0151】
また、走行履歴データ108aに含まれる各走行データには、停車時間と停車回数とが示されていてもよい。停車時間は、その走行データが得られるタイミングの直近に車両2が停車していた時間であってもよい。停車回数は、その走行データが得られるタイミングから前の一定期間において車両2が停車した回数であってもよい。このような場合、更新処理部106は、算出感度が算出されたときの走行データによって示される車両2の停車時間が長いほど、および、車両2の停車回数が多いほど、感度の信頼度を高い信頼度に更新してもよい。上述のように、車両2が停車しているときには、ジャイロセンサ203のオフセット補正に用いられるオフセット値が決定される。したがって、停車時間が長いほど、および、車両2の停車回数が多いほど、オフセット値のずれが生じ難い。その結果、停車時間が長いほど、算出感度の精度が高まるため、停車時間が長いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。同様に、車両の停車回数が多いほど、算出感度の精度が高まるため、停車回数が多いほど感度の信頼度を高い信頼度に更新することによって、その信頼度を適切に更新することができる。
【0152】
また、更新処理部106は、車両2のエンジンが始動するときに、そのエンジンの停止時からの経過時間が長いほど、感度テーブル107cに示されている各信頼度を大きく下げてもよい。更新処理部106は、その経過時間を示す情報を表示装置100の外部の機器から取得してもよい。例えば、更新処理部106は、各信頼度をそれぞれ同じ値だけ下げてもよく、各信頼度をそれぞれ同じ割合に下げてもよい。エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、ジャイロセンサ203の感度は、その停止前の感度から大きく変化している可能性が高い。したがって、エンジンの停止時からの経過時間が長いほど、感度テーブルに示されている各信頼度を大きく下げることによって、それらの信頼度を適切に管理することができる。
【0153】
感度補正部102は、図16に示す感度テーブル107cを用いる場合には、その感度テーブル107cに示されている信頼度を参照し、その信頼度に基づいて、角速度の感度補正に用いられる感度を決定する。つまり、感度補正部102は、感度テーブル107cにおいて、温度センサ204によって検出された周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている信頼度である判定対象信頼度が、閾値以上か否かを判定する。そして、感度補正部102は、判定対象信頼度が閾値以上の場合には、その判定対象信頼度を有する感度を感度テーブル格納部107から取得し、取得された感度を角速度の感度補正に用いる。一方、判定対象信頼度が閾値未満の場合には、感度補正部102は、代替感度を導出し、その代替感度を角速度の感度補正に用いる。これにより、感度の信頼度に応じた適応的な処理を行うことができる。つまり、判定対象信頼度が低い場合には、その判定対象信頼度を有する感度の代わりに、代替感度を用いて角速度の補正が行われるため、信頼されていない感度に基づく補正を抑えて、適切な補正が行える可能性を高めることができる。なお、上述の判定対象信頼度の閾値は、例えば0.5などであってもよい。
【0154】
図17は、本変形例における代替感度の導出の一例を示す図である。
【0155】
[1:外挿(線形補間)]
感度補正部102は、上述の判定対象信頼度が閾値未満の場合には、それぞれ閾値以上の信頼度を有する感度である第1感度および第2感度を感度テーブル格納部107から取得する。つまり、感度補正部102は、感度テーブル107cから、それぞれ閾値以上の信頼度に関連付けられている第1感度および第2感度を読み出す。そして、感度補正部102は、その第1感度および第2感度と、その第1感度および第2感度のそれぞれに関連付けられている温度範囲と、判定対象信頼度に関連付けられている温度範囲とに基づく、感度の外挿または線形補間によって、代替感度を導出する。これにより、判定対象信頼度が低い場合には、高い信頼度を有する第1感度および第2感度と、各温度範囲に対する感度の線形性などとを利用して、その判定対象信頼度を有する感度よりも高い信頼度を有する代替感度が導出される可能性を高めることができる。したがって、このような代替感度を角速度の感度補正に用いることによって、適切な補正が行える可能性を高めることができる。
【0156】
具体的な一例では、閾値は0.5である。また、現時点において温度センサ204によって検出された周囲温度を含む温度範囲は「-10~0℃」である。この場合、感度補正部102は、その温度範囲「-10~0℃」に関連付けられている信頼度である判定対象信頼度(すなわち、0.3)が、閾値「0.5」以上か否かを判定する。このとき、感度補正部102は、判定対象信頼度が閾値以上ではない、すなわち判定対象信頼度が閾値未満であると判定する。その結果、感度補正部102は、感度テーブル107cから、それぞれ閾値「0.5」以上の信頼度に関連付けられている第1感度「0.98」および第2感度「0.97」を読み出す。そして、感度補正部102は、その第1感度「0.98」および第2感度「0.97」と、その第1感度「0.98」および第2感度「0.97」のそれぞれに関連付けられている温度範囲「20~30℃」および「10~20℃」と、判定対象信頼度「0.3」に関連付けられている温度範囲「-10~0℃」とに基づく、感度の外挿または線形補間を行う。
【0157】
より具体的な一例では、感度補正部102は、まず、上述の温度範囲「20~30℃」、「10~20℃」および「-10~0℃」のそれぞれの中央値を算出する。つまり、感度補正部102は、中央値「25℃」、「15℃」および「-5℃」を算出する。そして、感度補正部102は、(第1感度「0.98」-第2感度「0.97」)/(中央値「25」-中央値「15」)×(中央値「-5℃」-中央値「15℃」)+第2感度「0.97」によって、代替感度「0.95」を導出する。この代替感度「0.95」が、温度範囲「-10~0℃」の感度「0.8」の代わりに、角速度の感度補正に用いられる。なお、図17に示す例では外挿によって代替感度が導出されるが、内挿によって代替感度が導出されてもよい。例えば、温度範囲「-20~-10℃」の感度と、その感度に対する閾値以上の信頼度とが感度テーブル107cに示されていれば、感度補正部102は、その温度範囲「-20~-10℃」とその感度と用いた内挿によって代替感度を導出する。つまり、感度補正部102は、温度範囲「-20~-10℃」およびその温度範囲の感度度と、温度範囲「10~20℃」およびその温度範囲の感度とを用いた内挿によって、温度範囲「-10~0℃」の代替感度を導出する。
【0158】
また、感度補正部102は、判定対象信頼度「0.3」に関連付けられている温度範囲「-10~0℃」に近い上位2つの温度範囲のそれぞれを、外挿、内挿または線形補間に用いられる温度範囲として選択してもよい。なお、選択される温度範囲の数は2つだけでなく、3つ以上であってもよい。
【0159】
[2:信頼度を用いた加重平均]
感度補正部102は、上述の判定対象信頼度が閾値未満の場合には、その判定対象信頼度を有する感度である低信頼感度と、閾値以上の信頼度を有する感度である高信頼感度とを感度テーブル格納部107から取得する。つまり、感度補正部102は、感度テーブル107cから低信頼感度および高信頼感度を読み出す。そして、感度補正部102は、低信頼感度および高信頼感度のそれぞれの信頼度に基づく重みを用いた低信頼感度および高信頼感度の加重平均によって、代替感度を導出する。これにより、判定対象信頼度が低い場合には、高信頼感度を用いることによって、その判定対象信頼度を有する低信頼感度よりも高い信頼度を有する代替感度が導出される可能性を高めることができる。したがって、このような代替感度を角速度の感度補正に用いることによって、適切な補正が行える可能性を高めることができる。
【0160】
具体的な一例では、上述と同様、閾値は0.5である。また、現時点において温度センサ204によって検出された周囲温度を含む温度範囲は「-10~0℃」である。この場合、感度補正部102は、その温度範囲「-10~0℃」に関連付けられている信頼度である判定対象信頼度(すなわち、0.3)が閾値「0.5」未満であると判定する。その結果、感度補正部102は、感度テーブル107cから、判定対象信頼度「0.3」を有する感度である低信頼感度「0.8」と、閾値「0.5」以上の信頼度を有する感度である高信頼感度「0.97」とを読み出す。そして、感度補正部102は、低信頼感度「0.8」および高信頼感度「0.97」のそれぞれの信頼度「0.3」および「0.8」に基づく重みを用いた低信頼感度「0.8」および高信頼感度「0.97」の加重平均によって、代替感度を導出する。つまり、感度補正部102は、(低信頼感度「0.8」×信頼度「0.3」+高信頼感度「0.97」×信頼度「0.8」)/(信頼度「0.3」+信頼度「0.8」)によって、代替感度「0.923636」を導出する。この代替感度「0.923636」が、温度範囲「-10~0℃」の感度「0.8」の代わりに、角速度の感度補正に用いられる。なお、その代替感度「0.923636」は、有効数字を考慮して「0.92」として扱われてもよい。
【0161】
また、感度補正部102は、感度テーブル107cに示されている1以上の高信頼感度のうち、判定対象信頼度「0.3」の温度範囲「-10~0℃」に最も近い温度範囲に関連付けられている高信頼感度を、加重平均に用いてもよい。
【0162】
[3:外挿(線形補間)と信頼度を用いた加重平均との組み合わせ]
感度補正部102は、外挿(線形補間)と信頼度を用いた加重平均との組み合わせによって、代替感度を導出してもよい。具体的には、感度補正部102は、まず、上述の外挿または線形補間によって、温度範囲「-10~0℃」の仮の代替感度「0.95」を導出する。さらに、感度補正部102は、その仮の代替感度「0.95」の信頼度を導出する。この信頼度の導出には、例えば、外挿または線形補間に用いられた温度範囲「10~20℃」および「20~30℃」に関連付けられている信頼度「0.8」および「0.9」が用いられる。つまり、感度補正部102は、(信頼度「0.8」+信頼度「0.9」)/2によって、仮の代替感度「0.95」の信頼度「0.85」を導出する。次に、感度補正部102は、高信頼感度「0.97」と、その高信頼感度「0.97」の信頼度「0.8」との代わりに、仮の代替感度「0.95」と、その代替感度「0.95」の信頼度「0.85」とを用いた加重平均によって、最終的な代替感度を導出する。つまり、感度補正部102は、(低信頼感度「0.8」×信頼度「0.3」+仮の代替感度「0.95」×信頼度「0.85」)/(信頼度「0.3」+信頼度「0.85」)によって、最終的な代替感度「0.91087」を導出する。この最終的な代替感度「0.91087」が、温度範囲「-10~0℃」の感度「0.8」の代わりに、角速度の感度補正に用いられる。なお、その代替感度「0.91087」は、有効数字を考慮して「0.91」として扱われてもよい。
【0163】
また、感度補正部102は、判定対象信頼度が、閾値未満であって、かつ、感度テーブル107cに示されている他の信頼度よりも高い場合には、その判定対象信頼度を有する感度を代替感度として用いてもよい。つまり、この場合には、感度補正部102は、判定対象信頼度が低くても、その判定対象信頼度を有する感度を角速度の感度補正にそのまま用いる。これにより、判定対象信頼度が低く、感度テーブル107cに示されている例えば他の全ての信頼度がその判定対象信頼度よりもさらに低い場合には、その判定対象信頼度を有する感度がそのまま代替感度として用いられる。したがって、感度テーブル107cに示されている他の信頼度を用いることによって、より信頼されない感度を導出し、そのような感度を用いて角速度を補正してしまうことを抑制することができる。
【0164】
また、本変形例における更新処理部106は、感度テーブル107cの感度を更新するときには、上述のような加重平均を用いてもよい。つまり、更新処理部106は、感度テーブル107cにおいて温度範囲に関連付けられている感度を更新するときには、走行データに基づいて算出感度の信頼度を算出信頼度として導出する。そして、更新処理部106は、感度テーブル107cにおいてその温度範囲に関連付けられている信頼度と算出信頼度とに基づく重みを用いたその感度と算出感度との加重平均によって、更新後の感度を導出する。例えば、更新処理部106は、上述の信頼度の更新と同様の方法によって、算出信頼度を導出する。また、一例として、温度範囲に関連付けられている信頼度が「T」であり、算出信頼度が「Tc」であり、その温度範囲に関連付けられている感度が「G」であり、算出感度が「Gc」である。このような場合、更新処理部106は、(G×T+Gc×Tc)/(T+Tc)のような加重平均によって、更新後の感度を導出する。これにより、算出感度の信頼度(すなわち算出信頼度)と、感度テーブル107cに示される感度の信頼度とを用いて、その感度を適切に更新することができる。このように感度テーブル107cに示されている感度が更新される場合には、その感度の信頼度「T」は、その信頼度「T」と算出信頼度「Tc」とを用いて更新されてもよい。例えば、更新処理部106は、式「1-(1-T)×(1-Tc)」によって更新後の信頼度を導出し、感度テーブル107cに示されている信頼度「T」をその更新後の信頼度に置き換えてもよい。
【0165】
なお、上述の例では、感度テーブル107cに示されている感度の信頼度が低くても、表示装置100は、代替感度を導出して表示物10を表示する。しかし、その代替感度によって角速度を補正しても適切な向きを示す表示物10を表示することが難しい場合がある。あるいは、閾値以上の信頼度を有する感度が1つでも感度テーブル107cに示されていなければ、その代替感度を導出することが困難な場合がある。このような場合、表示装置100は、表示物10を表示しなくてもよい。つまり、表示部110は、判定対象信頼度が閾値未満の場合には、表示物10である画像の出力を禁止してもよい。これにより、判定対象信頼度が低い場合には、そのような判定対象信頼度を有する感度に基づく表示物10の出力が禁止されるため、不適切な表示物10の表示を抑制することができる。なお、判定対象信頼度が閾値未満であって、かつ、車両2の旋回の角度が所定の角度を超える場合に、表示部110は、その旋回後の表示物10の出力を禁止してもよい。
【0166】
あるいは、表示部110は、判定対象信頼度が閾値未満の場合には、表示物10である画像の表示態様を変更し、変更された表示態様の画像を出力してもよい。表示物10は、上述の例では、ARコンテンツの表示態様で表示される。表示部110は、そのARコンテンツの表示態様を、非ARコンテンツの表示態様に変更する。言い換えれば、表示部110は、AR用の表示態様を非AR用の表示態様に変更する。ARコンテンツの表示態様は、三角形の画像が路面に平行な状態で、その路面から上方に所定距離だけ離れた位置に配置される表示態様である。非ARコンテンツの表示態様は、三角形の画像が路面に平行な状態にならず、その三角形と、路面を含む背景との位置関係が決められていない表示態様である。これにより、ARコンテンツの表示態様による不適切な画像の表示を抑制することができる。なお、判定対象信頼度が閾値未満であって、かつ、車両2の旋回の角度が所定の角度を超える場合に、表示部110は、その旋回後の表示物10の表示態様を変更し、変更された表示態様の表示物10を表示してもよい。
【0167】
図18は、本変形例における感度補正処理の一例を示すフローチャートである。つまり、図18のフローチャートは、図12のステップS210の処理を詳細に示す。
【0168】
まず、感度補正部102は、感度テーブル格納部107に格納されている感度テーブル107cを参照する(ステップS211)。次に、感度補正部102は、図12のステップS202で取得された温度信号によって示されるジャイロセンサ203の周囲温度を把握し、感度テーブル107cにおいてその周囲温度を含む温度範囲に関連付けられている信頼度を取得する(ステップS214)。つまり、感度補正部102は、温度センサ204によって検出された周囲温度に関連付けられている信頼度を、感度テーブル107cから読み出す。
【0169】
そして、感度補正部102は、ステップS214で取得された信頼度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS215)。この信頼度は、上述の判定対象信頼度である。ここで、感度補正部102は、その判定対象信頼度が閾値以上であると判定すると(ステップS215のYES)、感度テーブル107cにおいて、その検出された周囲温度に関連付けられている感度を取得する(ステップS212)。次に、感度補正部102は、図12のステップS203においてオフセット補正が行われた角速度に対して、ステップS212で取得された感度を乗算することによって、感度補正された角速度を算出する(ステップS217)。
【0170】
一方、感度補正部102は、ステップS215において、判定対象信頼度が閾値未満であると判定すると(ステップS215のNO)、代替感度を導出する(ステップS216)。すなわち、感度補正部102は、感度テーブル107cにおいて、閾値以上の信頼度に関連付けられている感度を用いて、検出された周囲温度に対応する感度を代替感度として導出する。そして、ステップS217では、感度補正部102は、ステップS216で導出された代替感度を角速度に乗算することによって、感度補正された角速度を算出する。
【0171】
(その他の態様)
以上、本開示の表示装置について、実施の形態およびその変形例に基づいて説明したが、本開示は、その実施の形態および変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態および変形例に施したものも本開示に含まれてもよい。
【0172】
例えば、上記実施の形態およびその変形例では、表示物10として三角形の画像が表示されるが、その表示物10の形状は、三角形に限定されることなく、矢じりの形状、矢印の形状など、どのような形状であってもよい。また、表示物10は、長尺のカーペット状で、路面に重畳するように表示されてもよい。また、表示物10は、車両2を目的地に誘導するために表示されるが、車両2の方位(すなわち第3車両推定方位)に基づいて表示されれば、他の目的または用途のために表示されてもよい。例えば、表示物10は、その車両2の方位そのものを指し示す画像であってもよい。
【0173】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。例えば、表示装置100に含まれる、感度テーブル格納部107、データ格納部108および表示部110以外の複数の構成要素が、1以上のプロセッサによって実現されていてもよい。この1以上のプロセッサは、記録媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することによって、上述の複数の構成要素のそれぞれの処理を実行する。ここで、上記実施の形態の表示装置100などを実現するソフトウェアプログラムまたはコンピュータプログラムは、例えば、図8図13および図18に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させる。
【0174】
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
【0175】
(1)上記の少なくとも1つの装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。そのRAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、上記の少なくとも1つの装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0176】
(2)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0177】
(3)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、その装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0178】
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0179】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号であるとしてもよい。
【0180】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0181】
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本開示の表示装置は、角速度センサの周囲温度による影響を抑えてユーザに対して適切な画像を表示することができるという効果を奏し、例えば、車載用のヘッドアップディスプレイなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0183】
1 ユーザ
2、3、4 車両
2a ウィンドシールド
2b ダッシュボード
10、11 表示物
100 表示装置
101 オフセット補正部
102 感度補正部
103 第1方位推定部
104 第2方位推定部
105 方位補正部
106 更新処理部
107 感度テーブル格納部
107a、107b、107c 感度テーブル
108 データ格納部
108a 走行履歴データ
108b 感度履歴データ
109 描画部
110 表示部
201 車速出力部
202 衛星測位システム
203 ジャイロセンサ
204 温度センサ
205 ナビゲーション部
d1、d2 表示範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18