(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143019
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050205
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 拓朗
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FA09
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC02
3F343GD04
3F343JB02
3F343JB16
3F343JB17
3F343JB23
3F343KB03
3F343KB12
3F343KB17
3F343LA04
3F343LA14
3F343LC08
3F343LC11
(57)【要約】
【課題】搬送対象物を1つずつ保持して搬送することが可能である搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送対象物100を搬送する装置1であって、吸着部10と、搬送対象物100を載置する載置台40を有し、吸着部10は、吸着部10を鉛直方向に移動させる移動機構30を有しており、吸着部10が載置台40に接近した状態において、吸着部10の吸着面20と載置台40の上面部41とが互いに重なり合う重複領域A1を有し、重複領域A1において、載置台40の上面部41と搬送対象物100との間に空隙50を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する装置であって、
吸着部と、前記搬送対象物を載置する載置台を有し、
前記吸着部は、前記吸着部を鉛直方向に移動させる移動機構を有しており、
前記吸着部が前記載置台に接近した状態において、前記吸着部の吸着面と前記載置台の上面部とが互いに重なり合う重複領域を有し、
前記重複領域において、前記載置台の前記上面部と前記搬送対象物との間に空隙を有している搬送装置。
【請求項2】
前記載置台は、前記上面部を含む底面部を有しており、
前記空隙は、前記載置台の前記底面部に設けられた貫通孔である請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記上面部を含む底面部を有しており、
前記空隙は、前記載置台の前記底面部に設けられた有底の溝である請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送対象物は、前記搬送対象物の厚み方向に気体が通過する部分を有しており、
前記載置台の前記上面部に垂直な方向から見た前記空隙の面積は、前記吸着部の前記搬送対象物との接触部の面積の25%以上90%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記吸着部は、第1吸着部および第2吸着部を有し、
前記空隙は、前記第1吸着部の吸着面に位置する部分の第1空隙と、前記第2吸着部の吸着面に位置する部分の第2空隙と、を有しており、
前記第1吸着部と前記搬送対象物との接触面積は、前記第2吸着部と前記搬送対象物との接触面積よりも大きい請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記吸着部は、第1吸着部および第2吸着部を有し、
前記空隙は、前記第1吸着部の吸着面に位置する部分の第1空隙と、前記第2吸着部の吸着面に位置する部分の第2空隙と、を有しており、
前記第1吸着部の吸着面の外接円の中心と前記第1空隙の外接円の中心との距離は、前記第2吸着部の吸着面の外接円の中心と前記第2空隙の外接円の中心との距離よりも小さい請求項1~5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療器具や薬剤等の物品を包装する際に、使用説明書等の添付文書が物品の包装体に同封されることがある。また、例えば、ガラス板や金属板、フィルム等の物品を梱包する際に、物品を保護するための合紙として各物品間に紙やフィルム等を挟み込むことがある。
【0003】
近年、物品の包装や梱包において、添付文書や合紙といった薄板状物等の搬送対象物を所定の位置まで搬送する作業を自動化することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙片の外形よりも内側に突出する複数の支持爪上に複数の紙片を積層した状態で保持するマガジンラックと、該マガジンラックに保持されている紙片のうち、最下位にある紙片の下面側に吸着して下方へ引き出す引出装置とを備えた紙片の繰出装置において、前記引出装置によって引き出される紙片の上面側へエアを吹きつけるエア吐出装置を設けたことを特徴とする紙片の繰出装置が記載されている。特許文献2には、薄板状製品を積み重ねる際に、薄板状製品間に挿入して用いられる合紙を供給する合紙供給装置であって、積み重ねられた合紙群の最も上の合紙を、上側から吸着パッドで吸着して上側に持ち上げ、吸着した状態で合紙を搬送して、これを供給するもので、吸着パッドを、合紙の長手方向に並べて2個ないし2列設け、これらを一体として上下方向移動および、所定の位置への位置移動を行うもので、且つ、前記2個の吸着パッドの少なくとも1個、あるいは2列の吸着パッドの少なくとも1列を、上下方向に振動させる振動手段を備えていることを特徴とする合紙供給装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-310334号公報
【特許文献2】特開2000-177864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2の装置では、紙片やフィルム等の搬送対象物が積み重ねられた状態で装置に供給されているが、搬送対象物を1つずつ保持して搬送させる際に、複数の搬送対象物を保持してしまい、製品の不良や搬送トラブルが発生することがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送対象物を1つずつ保持して搬送することが可能である搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた搬送装置は、搬送対象物を搬送する装置であって、吸着部と、搬送対象物を載置する載置台を有し、吸着部は、吸着部を鉛直方向に移動させる移動機構を有しており、吸着部が載置台に接近した状態において、吸着部の吸着面と載置台の上面部とが互いに重なり合う重複領域を有し、重複領域において、載置台の上面部と搬送対象物との間に空隙を有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の搬送装置において、載置台は、上面部を含む底面部を有しており、空隙は、載置台の前記底面部に設けられた貫通孔であることが好ましい。
【0010】
本発明の搬送装置において、載置台は、上面部を含む底面部を有しており、空隙は、載置台の底面部に設けられた有底の溝であることが好ましい。
【0011】
本発明の搬送装置において、搬送対象物は、搬送対象物の厚み方向に気体が通過する部分を有しており、載置台の上面部に垂直な方向から見た空隙の面積は、吸着部の搬送対象物との接触部の面積の25%以上90%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の搬送装置において、吸着部は、第1吸着部および第2吸着部を有し、空隙は、第1吸着部の吸着面に位置する部分の第1空隙と、第2吸着部の吸着面に位置する部分の第2空隙と、を有しており、第1吸着部と搬送対象物との接触面積は、第2吸着部と搬送対象物との接触面積よりも大きいことが好ましい。
【0013】
本発明の搬送装置において、吸着部は、第1吸着部および第2吸着部を有し、空隙は、第1吸着部の吸着面に位置する部分の第1空隙と、第2吸着部の吸着面に位置する部分の第2空隙と、を有しており、第1吸着部の吸着面の外接円の中心と第1空隙の外接円の中心との距離は、第2吸着部の吸着面の外接円の中心と第2空隙の外接円の中心との距離よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の搬送装置によれば、吸着部が載置台に接近した状態において吸着部の吸着面と載置台の上面部とが互いに重なり合う重複領域を有し、重複領域において載置台の上面部と搬送対象物との間に空隙を有していることにより、吸着部が載置台に載置されている搬送対象物を吸着する際における、吸着部が搬送対象物を吸引する圧力を、空隙を通じて逃がすことができる。その結果、吸着部の吸引圧力が載置台の上面部に影響を及ぼして搬送対象物を載置台から引き上げにくくなることや、吸着部が意図せず複数の搬送対象物を吸着してしまうことが起こりにくくなり、搬送対象物を1つずつ保持して搬送しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態における搬送装置の模式図(一部断面図)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態における搬送装置1の模式図である。
図1に示すように、本発明の搬送装置1は、搬送対象物100を搬送する装置1であって、吸着部10と、搬送対象物100を載置する載置台40を有し、吸着部10は、吸着部10を鉛直方向に移動させる移動機構30を有しており、吸着部10が載置台40に接近した状態において、吸着部10の吸着面20と載置台40の上面部41とが互いに重なり合う重複領域A1を有し、重複領域A1において、載置台40の上面部41と搬送対象物100との間に空隙50を有している。
【0018】
搬送装置1は、搬送対象物100を所定の位置に搬送する装置である。搬送対象物100としては、例えば、紙、フィルム、シート、樹脂板や金属板といった薄板状物等が挙げられる。中でも、搬送対象物100は、紙であることが好ましい。紙は、厚み方向にある程度の通気性を有するものであるため、空気を吸引することによって吸着部10が搬送対象物100を保持して搬送する装置1を用いると、紙が複数重なった状態で吸着部10に吸着されてしまい、搬送トラブルが起こりやすいものである。本発明の搬送装置作動方法であれば、搬送対象物100が通気性を有する紙であっても、搬送対象物100を1つずつ保持して搬送することが行いやすくなる。なお、搬送対象物100の紙としては、折り加工が施されていない紙片であってもよく、折り加工の施されている紙片や、冊子状の紙片であってもよい。
【0019】
載置台40は、搬送対象物100を載置するものである。載置台40は、上面部41を有しており、上面部41に搬送対象物100が載置される。
【0020】
載置台40を構成する材料としては、金属、合成樹脂、ゴム、木材等が挙げられる。中でも、載置台40を構成する材料は、金属であることが好ましい。載置台40を構成する材料が金属であることにより、載置台40の耐久性が高まる。
【0021】
搬送対象物100は、搬送対象物100の厚み方向に複数積み重ねられた状態であることが好ましい。具体的には、載置台40の上面部41に複数の搬送対象物100が積層された状態であることが好ましい。複数の搬送対象物100が積み重ねられた状態であることにより、搬送装置1によって搬送対象物100を搬送する効率を高めることが可能となる。
【0022】
図1に示すように、搬送装置1は、吸着部10を有している。搬送装置1は、吸着部10を搬送対象物100に吸着させることによって、搬送対象物100を保持することが可能となる。
【0023】
吸着部10は、吸引することによって搬送対象物100を吸着することが好ましい。つまり、吸着部10は、吸引孔を有していることが好ましい。吸着部10が有している吸引孔の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0024】
移動機構30は、吸着部10を鉛直方向に移動させる。移動機構30は、吸着部10を鉛直方向に移動させるだけでなく、水平方向にも移動させてもよい。つまり、移動機構30は、吸着部10を鉛直方向および水平方向に移動させてもよい。
【0025】
図1に示すように、重複領域A1は、吸着部10が載置台40に接近した状態において、吸着部10の吸着面20と載置台40の上面部41とが互いに重なり合う領域である。重複領域A1において、載置台40の上面部41と搬送対象物100との間に空隙50を有している。
【0026】
搬送対象物100への吸着部10の吸着のために、吸着部10が搬送対象物100を吸引すると、吸着部10の吸引圧力が搬送対象物100に伝わる。搬送対象物100の厚みが薄い場合や、載置台40に積層して載置されている搬送対象物100の数が少ない場合等では、吸着部10の吸引圧力が搬送対象物100の下側面にまで達し、搬送対象物100の下側にある載置台40の上面部41や、搬送対象物100の下側に載置されている別の搬送対象物100を吸着部10が吸引してしまい、搬送対象物100を1つずつ搬送できないことがある。重複領域A1において、空隙50を有していることにより、吸着部10の吸引圧力を、空隙50を通じて逃がすことができるため、吸着部10が1つの搬送対象物100を吸着して搬送しやすい搬送装置1とすることができる。
【0027】
1つの重複領域A1における空隙50の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。なお、載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の形状は、空隙50の深さ方向に垂直な断面における空隙50の断面形状と言い換えることができる。中でも、載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の形状は、円形であることが好ましい。空隙50の形状が円形であることにより、吸着部10の吸引圧力が空隙50の外縁の一部に集中しにくく、吸着部10の吸引圧力によって空隙50の上方に位置している搬送対象物100にシワや傷が入りにくくすることができる。
【0028】
図1に示すように、載置台40は、上面部41を含む底面部42を有しており、空隙50は、載置台40の底面部42に設けられた貫通孔であることが好ましい。
図1において、空隙50の1つである第1空隙51を載置台40の底面部42に設けられた貫通孔として図示している。空隙50が、載置台40の底面部42に設けられた貫通孔であることにより、吸着部10の吸引圧力を逃がしやすく、吸着部10が搬送対象物100を1つずつ保持して搬送しやすくなる。
【0029】
また、
図1に示すように、載置台40は、上面部41を含む底面部42を有しており、空隙50は、載置台40の底面部42に設けられた有底の溝であることも好ましい。
図1において、空隙50の1つである第2空隙52を載置台40の底面部42に設けられた有底の溝として図示している。空隙50が、載置台40の底面部42に設けられた有底の溝であることにより、吸着部10の吸引圧力を逃がしつつ、空隙50の外縁に圧力が集中しにくいため、空隙50の上方に位置している搬送対象物100にシワや傷を入りにくくすることができる。
【0030】
搬送対象物100は、搬送対象物100の厚み方向に気体が通過する部分を有しており、載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の面積は、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積の25%以上90%以下であることが好ましい。なお、載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の面積は、空隙50の深さ方向に垂直な断面における空隙50の断面形状の面積と言い換えることができる。載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の面積が、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積の25%以上90%以下であることにより、空隙50を通じて吸着部10の吸引圧力を十分に逃がしつつ、搬送対象物100に過度な圧力が加わりにくくして搬送対象物100にシワや傷が入りにくく、かつ、搬送対象物100を1つずつ吸着部10によって保持しやすくなる。
【0031】
載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の面積は、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積の25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。空隙50の面積と、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、吸着部10の吸引圧力を空隙50が十分に逃がしやすくなる。また、載置台40の上面部41に垂直な方向から見た空隙50の面積は、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積の90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。空隙50の面積と、吸着部10の搬送対象物100との接触部の面積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、空隙50の外縁に強い圧力が加わりにくくなり、搬送対象物100にシワや傷が生じにくくすることができる。
【0032】
搬送対象物100を、搬送対象物100の厚み方向に気体が通過する部分を有する構成とするには、例えば、搬送対象物100に貫通孔を設けること、搬送対象物100を構成する材料を通気性の高い材料とすること等が挙げられる。
【0033】
図1に示すように、吸着部10は、第1吸着部11および第2吸着部12を有し、空隙50は、第1吸着部11の吸着面21に位置する部分の第1空隙51と、第2吸着部12の吸着面22に位置する部分の第2空隙52と、を有しており、第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積は、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積よりも大きいことが好ましい。第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積が、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積よりも大きいことにより、第1吸着部11の吸着面21と載置台40の上面部41とが互いに重なり合う重複領域A1における第1空隙51の大きさが、第2吸着部12の吸着面22と載置台40の上面部41とが互いに重なり合う重複領域A1における第2空隙52の大きさよりも小さいこととなる。そのため、第1吸着部11の吸引によって第1吸着部11の吸着面21、搬送対象物100、および載置台40の上面部41との間に生じる応力が、第2吸着部12の吸引によって第2吸着部12の吸着面22、搬送対象物100、および載置台40の上面部41との間に生じる応力よりも大きくなり、第2吸着部12の方が第1吸着部11よりも先に搬送対象物100を上方に引き上げることが可能となる。第2吸着部12の方が第1吸着部11よりも先に搬送対象物100を上方に引き上げることにより、搬送対象物100の少なくとも一部が屈曲してたわんだ状態となり、搬送対象物100の下側に空気が入り込みやすくなる。その結果、静電気等によって搬送対象物100の下側面に付着している他物を離しやすくすることができ、搬送対象物100を第1吸着部11および第2吸着部12によって1つずつ持ち上げやすくすることができる。
【0034】
第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積は、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積と、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積を、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積よりも十分に大きくすることができ、第1吸着部11による搬送対象物100の一部を引き上げるタイミングと、第2吸着部12による搬送対象物100の一部を引き上げるタイミングと、に差を付けることができ、搬送対象物100の少なくとも一部をたわませやすくなる。また、第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積は、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積の10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。第1吸着部11と搬送対象物100との接触面積と、第2吸着部12と搬送対象物100との接触面積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第1吸着部11と第2吸着部12の両方において、吸引圧力を十分に逃がすことが可能となる。
【0035】
吸着部10は、第1吸着部11および第2吸着部12を有し、空隙50は、第1吸着部11の吸着面21に位置する部分の第1空隙51と、第2吸着部12の吸着面22に位置する部分の第2空隙52と、を有しており、第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心との距離は、第2吸着部12の吸着面22の外接円の中心と第2空隙52の外接円の中心との距離よりも小さいことが好ましい。つまり、第1吸着部11の吸着面21の方が、第2吸着部12の吸着面22よりも、空隙50との中心位置が近いことが好ましい。第1吸着部11の吸着面21の外接円は、第1吸着部11の吸着面21に垂直な方向から見た吸着面21の外縁に接する最小の円であり、第2吸着部12の吸着面22の外接円は、第2吸着部12の吸着面22に垂直な方向から見た吸着面22の外縁に接する最小の円である。また、第1空隙51の外接円は、第1空隙51の深さ方向から見た第1空隙51の外縁に接する最小の円であり、第2空隙52の外接円は、第2空隙52の深さ方向から見た第2空隙52の外縁に接する最小の円である。
【0036】
第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心との距離が、第2吸着部12の吸着面22の外接円の中心と第2空隙52の外接円の中心との距離よりも小さいことにより、第1吸着部11の吸着面21の中心と第1空隙51の中心とが、第2吸着部12の吸着面22の中心と第2空隙52の中心よりも近くなる。そのため、第1吸着部11における吸引圧力を第1空隙51が逃がす量を、第2空隙52による第2吸着部12の吸引圧力を逃がす量よりも大きくすることができ、第1吸着部11と第2吸着部12において、吸着力に差を生じさせることができる。その結果、第2吸着部12よりも先に第1吸着部11が搬送対象物100を上方に引き上げることが可能となり、搬送対象物100へ第1吸着部11が吸着するタイミングと第2吸着部12が吸着するタイミングとをずれさせることができる。
【0037】
第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心との距離は、第2吸着部12の吸着面22の外接円の中心と第2空隙52の外接円の中心との距離の95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心との距離と、第2吸着部12の吸着面22の外接円の中心と第2空隙52の外接円の中心との距離との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心とを十分に近づけることができる。また、第1吸着部11の吸着面21の外接円の中心と第1空隙51の外接円の中心との距離と、第2吸着部12の吸着面22の外接円の中心と第2空隙52の外接円の中心との距離との比率の下限値は特に限定されないが、例えば、10%以上、15%以上、20%以上とすることができる。
【0038】
図1に示すように、さらに、搬送対象物100に気体を吹き付ける吹き付け装置60を有していることが好ましい。搬送装置1が吹き付け装置60を有していることにより、搬送対象物100に気体を吹き付けることによって、搬送対象物100の下側面に、静電気等によって搬送対象物100とは異なる他物が静電気等によって付着しにくくなる。その結果、搬送対象物100の搬送を円滑に行うことが可能な搬送装置1とすることができる。
【0039】
吹き付け装置60は、搬送対象物100の下側面に気体を吹き付けることが好ましい。搬送対象物100の下側面は、静電気等によって他物が付着しやすい。搬送対象物100の下側面に気体を吹き付けることによって搬送対象物100の下側面に気体が当たり、搬送対象物100に他物を付着しにくくすることができる。
【0040】
吹き付け装置60が搬送対象物100に吹き付ける気体としては、空気、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。中でも、搬送対象物100に吹き付ける気体は、空気であることが好ましい。搬送対象物100に吹き付ける気体が空気であることにより、搬送対象物100を傷めにくくすることができ、また、吹き付け工程において特殊な設備等を導入する必要がないため、搬送装置1のコストを低減することが可能となる。
【0041】
図1に示すように、さらに、搬搬送対象物100の静電気の除去を行う除電器70を有していることが好ましい。搬送装置1が除電器70を有していることにより、搬送対象物100の除電が行われる。その結果、静電気によって他物が搬送対象物100に付着することが起こりにくくなり、搬送対象物100の搬送を円滑に行いやすくなる。
【0042】
除電器70としては、例えば、静電気除去流体を搬送対象物100に噴射するノズル、除電ブラシ、除電紐、電極等が挙げられる。中でも、除電器70は、搬送対象物100に静電気除去流体を噴射するノズルであることが好ましい。除電器70が静電気除去流体を噴射するノズルであることにより、搬送対象物100を傷付けずに搬送対象物100の全体を除電することが行いやすくなる。
【0043】
以上のように、本発明の搬送装置は、搬送対象物を搬送する装置であって、吸着部と、搬送対象物を載置する載置台を有し、吸着部は、吸着部を鉛直方向に移動させる移動機構を有しており、吸着部が載置台に接近した状態において、吸着部の吸着面と載置台の上面部とが互いに重なり合う重複領域を有し、重複領域において、載置台の上面部と搬送対象物との間に空隙を有している。本発明の搬送装置がこのような構成であることにより、吸着部が載置台に載置されている搬送対象物を吸着する際における、吸着部が搬送対象物を吸引する圧力を、空隙を通じて逃がすことができる。その結果、吸着部の吸引圧力が載置台の上面部に影響を及ぼして搬送対象物を載置台から引き上げにくくなることや、吸着部が意図せず複数の搬送対象物を吸着してしまうことが起こりにくくなり、搬送対象物を1つずつ保持して搬送しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:搬送装置
10:吸着部
11:第1吸着部
12:第2吸着部
20:吸着面
21:第1吸着部の吸着面
22:第2吸着部の吸着面
30:移動機構
40:載置台
41:上面部
42:底面部
50:空隙
51:第1空隙
52:第2空隙
60:吹き付け装置
70:除電器
100:搬送対象物
A1:重複領域