(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143089
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050286
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜令
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 智基
(72)【発明者】
【氏名】吉原 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優真
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】ユーザが所望する部材を組み合わせた作品の重心の位置の判定結果に応じた情報を提示する。
【解決手段】複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得する取得部131と、前記設計データが示す前記作品の重心を特定する重心特定部132と、前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定する判定部133と、前記判定部133の判定結果に応じて表示内容を制御する表示制御部134と、を有するデータ処理装置1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得する取得部と、
前記設計データが示す前記作品の重心を特定する重心特定部と、
前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて表示内容を制御する表示制御部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
(1)部材と、部材の形状と、部材の重量と、を関連付けた部材データと、(2)部材を配置枠に当て嵌めることで作品を構成するテンプレートデータであって、作品と、該作品を構成する部材の相対的な位置を決定するための前記配置枠と、を関連付けた前記テンプレートデータを記憶する記憶部と、
作品と、該作品を構成する複数の部材と、を該複数の部材それぞれを配置する配置枠と、の選択を受け付ける受付部と、をさらに有し、
前記取得部は、選択された各部材と各部材を配置する配置枠とに基づいて、各部材の位置を決定し、各部材の形状及び重量と、決定した各部材の位置と、を含む前記設計データを取得する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記受付部は、作品に配置される部材の位置を調整する操作を受け付け、
前記取得部は、前記受付部が受け付けた前記操作の操作量に応じて操作対象の部材の位置を決定し、決定した該部材の位置にさらに基づいて生成された前記設計データを取得し、
前記表示制御部は、前記判定部が前記設計データに基づいて判定した判定結果に応じて表示内容を制御する、
請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記設計データが示す前記作品の底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置するかをさらに判定し、
前記表示制御部は受け付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を追従させて前記作品のデザインを示す画像を表示し、前記判定部が底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置すると判定した場合、前記受付部が受付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を一時的に追従させない、
請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置するかをさらに判定し、
前記表示制御部は、判定結果に応じて表示態様が異なる画像を前記作品の画像における前記重心の位置に重畳して表示させる、
請求項2又は3に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、選択された部材が有する平坦な面のいずれかが底面となるよう各部材の位置を決定し、選択された各部材の形状及び重量と決定した各部材の位置とを含む設計データを取得する、
請求項2から5のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、選択された複数の部材をそれぞれ異なる前記配置枠に当てはめてなる複数の設計データそれぞれにおける前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定し、
前記表示制御部は、前記判定部が前記なす角が前記所定の角度より小さいと判定した設計データにかかる作品を選択可能に表示させる、
請求項2から6のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記記憶部は、部材の価格をさらに関連付けた前記部材データをさらに記憶し、
前記表示制御部は、前記部材データに基づいて選択された部材の価格を表示する、
請求項2から7のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
コンピュータに実行させる、
複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得するステップと、
前記設計データが示す前記作品の重心を特定するステップと、
前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定するステップと、
前記判定するステップの判定結果に応じて表示内容を制御するステップと、
を有するデータ処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得するステップと、
前記設計データが示す前記作品の重心を特定するステップと、
前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定するステップと、
前記判定するステップの判定結果に応じて表示内容を制御するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不用品を使用して作品を制作する活動、いわゆるアップサイクル活動の需要が高まりつつある。特許文献1には、物品を出品する販売者及び購入者の間における電子商取引を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザはこのような方法で物品を購入するだけでなく、さらに、購入した物品を部材として自由に組み合わせた作品を購入したい需要がある。しかし、何の制限もなく物品を組み合わせて作品を制作した場合には例えば、作品の重心の位置によっては、作品が安定して直立できない等の問題が生じうる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ユーザが所望する部材を組み合わせた作品の重心の位置の判定結果に応じた情報を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のデータ処理装置においては、複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得する取得部と、前記設計データが示す前記作品の重心を特定する重心特定部と、前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて表示内容を制御する表示制御部と、を有する。
【0007】
(1)部材と、部材の形状と、部材の重量と、を関連付けた部材データと、(2)部材を配置枠に当て嵌めることで作品を構成するテンプレートデータであって、作品と、該作品を構成する部材の相対的な位置を決定するための前記配置枠と、を関連付けた前記テンプレートデータを記憶する記憶部と、作品と、該作品を構成する複数の部材と、を該複数の部材それぞれを配置する配置枠と、の選択を受け付ける受付部と、をさらに有し、前記取得部は、選択された各部材と各部材を配置する配置枠とに基づいて、各部材の位置を決定し、各部材の形状及び重量と、決定した各部材の位置と、を含む前記設計データを取得してもよい。
【0008】
前記受付部は、作品に配置される部材の位置を調整する操作を受け付け、前記取得部は、前記受付部が受け付けた前記操作の操作量に応じて操作対象の部材の位置を決定し、決定した該部材の位置にさらに基づいて生成された前記設計データを取得し、前記表示制御部は、前記判定部が前記設計データに基づいて判定した判定結果に応じて表示内容を制御してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記設計データが示す前記作品の底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置するかをさらに判定し、前記表示制御部は受け付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を追従させて前記作品のデザインを示す画像を表示し、前記判定部が底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置すると判定した場合、前記受付部が受付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を一時的に追従させないよう構成されてもよい。
【0010】
前記判定部は、底面の中心を含む鉛直方向の直線上に前記作品の重心が位置するかをさらに判定し、前記表示制御部は、判定結果に応じて表示態様が異なる画像を前記作品の画像における前記重心の位置に重畳して表示させてもよい。
【0011】
前記取得部は、選択された部材が有する平坦な面のいずれかが底面となるよう各部材の位置を決定し、選択された各部材の形状及び重量と決定した各部材の位置とを含む設計データを取得してもよい。
【0012】
前記判定部は、選択された複数の部材をそれぞれ異なる前記配置枠に当てはめてなる複数の設計データそれぞれにおける前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定し、前記表示制御部は、前記判定部が前記なす角が前記所定の角度より小さいと判定した設計データにかかる作品を選択可能に表示させてもよい。
【0013】
前記記憶部は、部材の価格をさらに関連付けた前記部材データをさらに記憶し、前記表示制御部は、前記部材データに基づいて選択された部材の価格を表示してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様のデータ処理方法においては、コンピュータに実行させる、複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得するステップと、前記設計データが示す前記作品の重心を特定するステップと、前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定するステップと、前記判定するステップの判定結果に応じて表示内容を制御するステップと、を有する。
【0015】
本発明の第3の態様のプログラムにおいては、コンピュータに、複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、前記作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得するステップと、前記設計データが示す前記作品の重心を特定するステップと、前記設計データが示す前記作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に前記重心から下した垂線と、前記底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる前記所定の方向へ前記作品を回転させた場合の前記なす角それぞれが前記所定の角度より小さいかを判定するステップと、前記判定するステップの判定結果に応じて表示内容を制御するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザが所望する部材を組み合わせた作品の重心の位置の判定結果に応じた情報を提示することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態にかかるデータ処理システムSの概要を説明する図である。
【
図2】データ処理装置1の構成を示すブロック図である。
【
図3】取得部131が取得する設計データの一例を示す図である。
【
図4】データ処理装置1における判定処理の概要を説明する図である。
【
図5】記憶部12が記憶する部材データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】記憶部12が記憶するテンプレートデータの一例を示す図である。
【
図7】表示制御部134が表示させる画面の一例を示す図である。
【
図8】データ処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[データ処理システムSの概要]
図1は、実施形態にかかるデータ処理システムSの概要を説明する図である。データ処理システムSは、ユーザが不要となった物品を部材として流通させ、流通する素材を組み合わせて制作した作品を売買する取引をするためのシステムである。データ処理システムSは、データ処理装置1及び情報端末2を有する。データ処理システムSにおいて流通する部材は例えば、使用済みの椅子、机、ベッドなどの家具、容器、装飾品等である。
【0019】
データ処理装置1はユーザが提供する部材を管理し、部材の選択と作品の制作の依頼とを受け付ける装置である。データ処理装置1は、例えばサーバである。データ処理装置1は、部材を組み合わせて制作する作品が安定して直立するか否かを判定し、判定結果に応じて例えば、作品を購入するための画面を表示したり、作品の設計をやり直すための画面を表示したりする。
【0020】
情報端末2は、ユーザが使用するスマートフォン、タブレット又はパーソナルコンピュータである。
【0021】
データ処理システムSにおける処理について説明する。データ処理装置1は、情報端末2から作品と作品を構成する部材との選択を受け付ける(
図1における(1))。データ処理装置1は、選択された作品と部材とに基づいて設計データを取得する(
図1における(2))。設計データは、作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含むデータである。データ処理装置1は、設計データに基づいて作品の重心を特定する(
図1における(3))。データ処理装置1は、作品が安定して直立するか否かを判定する(
図1における(4))。具体的には、データ処理装置1は、作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に重心から下した垂線と、底面の法線と、がなす角が所定の角度より小さいかを判定する。データ処理装置1は、判定結果に応じた内容を表示するための表示制御情報を情報端末2に送信する(
図1における(5))。
【0022】
なお、所定の方向は、作品を直立した状態から作品を倒すように回転させる方向であり、水平面と平行な直線を回転軸として回転する方向である。所定の角度は、安全基準に基づいて定められる角度である。所定の角度は、作品を直立した状態からその角度傾けた場合に、作品が重力による回転モーメントにより直立状態に戻ることを担保すべき角度である。
【0023】
データ処理装置1がこのように構成されることで、ユーザが所望する部材から構成される作品が安定して直立するかどうかを判断できる情報を提示することができる。
【0024】
[データ処理装置1の構成]
図2は、データ処理装置1の構成を示すブロック図である。データ処理装置1は、通信部11、記憶部12及び制御部13を有する。制御部13は、取得部131、重心特定部132、判定部133、表示制御部134及び受付部135を有する。通信部11は、ネットワークを介して他の装置とデータの送受信をするための通信インターフェースである。
【0025】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。
【0026】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、重心特定部132、判定部133、表示制御部134及び受付部135として機能する。
【0027】
取得部131は、複数の部材を結合して構成される作品に関するデータであって、作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データを取得する。
図3は、取得部131が取得する設計データの一例を示す図である。
図3(a)に示す設計データにおいては作品Wを構成する複数の部材の「部材ID(Identification)」、「位置」、「姿勢」、「形状」および「重量」が関連付けられている。「位置」は、一例として部材の基準点が位置する座標データである。基準点は、一例として部材の重心である。一例として、「姿勢」は、部材の姿勢を表現する回転行列である。「形状」は、部材の形状を示す3次元データである。部材の形状は、例えば点群データやポリゴンデータで示される。「重量」は一例として、部材の重量をキログラム単位で示すデータである。部材データはそれぞれの部材の重心の位置をさらに関連付けていてもよい。
図3(b)は、設計データが示す作品Wの構成を示す模式的に示す図である。
【0028】
重心特定部132は、設計データが示す作品の重心を特定する。重心特定部132は、設計データにおけるそれぞれの部材の位置、姿勢、形状および重量に基づいてそれぞれの部材の重心の位置を特定する。一例として、重心特定部132は、部材の質量が一様に分布しているものとしてそれぞれの部材の重心を特定してもよい。また、部材データに重心の位置が関連付けられている場合、重心特定部132は、部材データに関連付けられた重心の位置を取得する。そして、それぞれの部材の重心の位置と、部材の重量と、の加重平均を算出することにより作品の重心を特定する。
【0029】
判定部133は、特定した作品の重心が所定の条件を満たすか否かを判定する。所定の条件は、設計データが示す作品の底面の一部が水平面に接するように所定の方向へ回転させた場合の回転軸に重心から下した垂線と、底面の法線と、がなす角であって、複数の異なる所定の方向へ作品を回転させた場合のなす角それぞれが所定の角度より小さいことである。
図4は、データ処理装置1における判定処理の概要を説明する図である。まず、判定部133は、作品を回転させる回転方向Dを決定する。回転方向Dは、一例として、水平方向に平行な所定の方向の直線を回転軸として右ねじが回る方向に回転させた場合に回転する方向である。一例として、判定部133は、水平方向に引いた一本の直線を基準として、所定の角度ずつ水平方向に時計回りに回転させてなる複数の直線それぞれを回転軸として、複数の回転方向Dを決定する。所定の角度は例えば、10度、15度、30度、60度等である。
【0030】
そして、判定部133は、作品の底面S1の一部が水平面S2に接する状態から作品を回転方向Dに回転させた場合に作品が回転する回転軸Aに作品の重心Gから下した垂線L1を決定する。なお、判定部133は、設計データが示す部材の形状、位置及び姿勢に基づいて、鉛直方向において作品の最も下方に位置する水平方向に平行な面を底面S1として特定する。
【0031】
そして、判定部133は、作品の底面S1の法線L2を決定する。そして、垂線L1と法線L2とがなす角Θを特定する。なす角Θは垂線L1を基準として、回転方向を正とし、回転方向の反対を負とする。そして、なす角Θが所定の角度以下である場合、判定部133は、作品が安定して直立しないと判定する。所定の角度は使用状態において安定して直立するための検査基準に基づいて定められる角度であり、例えば6度である。
【0032】
なお、なす角Θは、作品が直立している状態からその角度以上作品を傾けたときに重力による回転モーメントが作品を転倒させる方向に作用する角度(以下、転倒角度という場合がある)を示している。なす角Θが所定の角度より大きい場合は、作品を直立した状態から所定の角度傾けた場合でも重力による回転モーメントが作品を直立する状態に戻す方向に働くため、安定して直立することを判定することができる。
【0033】
表示制御部134は、判定部133の判定結果に応じて表示内容を制御する。一例として、なす角Θは所定の角度より大きいと判定部133が判定した場合、表示制御部134は、作品を購入するかを選択するための画面を情報端末3に表示させるよう制御してもよい。また、なす角Θは所定の角度より小さいと判定部133が判定した場合、表示制御部134は、作品の設計をやり直すことを促す画面を情報端末3に表示させるよう制御してもよい。
【0034】
データ処理装置1がこのように構成されることで、ユーザが所望する部材を組み合わせた作品が安定して直立するかどうかを判断できる情報を提示することができる。
【0035】
ところで、データ処理装置1が作品と部材との選択をユーザから受け付けることで、ユーザは所望の作品の制作することができる。
【0036】
記憶部12は、部材と、部材の形状と、部材の重量と、を関連付けた部材データを記憶する。
図5は、記憶部12が記憶する部材データのデータ構造の一例を示す図である。
図5に示す部材データにおいては、「部材ID」、「形状」、「重量」及び「価格」が関連付けられている。「部材ID」は部材を識別するIDである。「形状」は部材の形状を示す。「価格」は、部材それぞれの価格である。部材データにおいては、部材の寸法が関連付けられていてもよい。
【0037】
記憶部12は、部材を配置枠に当て嵌めることで作品を構成するテンプレートデータであって、作品と、該作品を構成する部材の相対的な位置を決定するための配置枠と、を関連付けたテンプレートデータを記憶する。
図6は、記憶部12が記憶するテンプレートデータの一例を示す図である。
図6に示すテンプレートデータにおいては、作品と、作品を構成するための複数の部材を配置する配置枠の相対的な位置関係が関連付けられている。
図6に示すテンプレートデータにおいては、最も下方の配置枠P6の底面のz座標を0として、隣り合う配置枠同士の天面のz座標と、底面のz座標とが接するように部材同士の位置が定まることが示されている。
【0038】
受付部135は、作品と、該作品を構成する複数の部材と、を該複数の部材それぞれを配置する配置枠と、の選択を受け付ける。表示制御部134は、作品を選択するための画面を情報端末2に表示させる。そして、受付部135は、作品を選択するための操作を受付け、選択された作品に対応するテンプレートデータを取得する。そして、表示制御部134は、作品を構成する部材を選択するための画面を情報端末2に表示させる。受付部135は、部材を選択するための操作を受付け、選択された部材の部材データを取得する。受付部135は、さらにそれぞれの部材を配置する姿勢の選択操作を受付けてもよい。
【0039】
取得部131は、選択された各部材と各部材を配置する配置枠とに基づいて、部材の位置を決定し、各部材の形状及び重量と、決定した各部材の位置と、を含む設計データを取得する。受付部135は、一例として、ユーザから選択された部材をどこに配置するかを示す操作を受付ける。そして、取得部131は、それぞれの部材が配置される配置枠と、それぞれの部材の形状に基づいて、それぞれの部材が配置される位置を決定する。そして、取得部131は、部材の位置、形状、重量と取得した部材データに基づいて設計データを生成する。取得部131は、部材の姿勢にさらに基づいてそれぞれの部材が配置される位置を決定してもよい。
【0040】
具体例として、取得部131は、
図6に示すテンプレートデータにおいては、それぞれの部材の基準点のX座標及びY座標が配置枠の中心と一致し、かつ、部材の形状が示す領域のZ座標の下端が配置枠の底面のZ座標と一致するように部材を配置する。
【0041】
ところで、データ処理装置1が、部材が配置される位置を調整できるように構成されることで、ユーザの希望に沿った作品を制作させることが可能となる。
【0042】
受付部135は、作品に配置される部材の位置を調整する操作を受け付ける。
図7は、表示制御部134が表示させる画面の一例を示す図である。
図7に示す画面は、部材が配置される位置又は姿勢を調整するための操作画面である。
図7における操作画面においては、重心特定部132が特定した重心を表示するオブジェクトO1が表示されている。オブジェクトO1は、一例として重心を起点とする作品の重心にかかる重力の方向を示す矢印である。
図7においては、操作画面を2次元で示しているが、奥行きを含めた3次元における位置又は姿勢を調整できるよう操作画面が構成される。
図7に示す画面おいては、画面上の位置と設計データにおける部材を配置する空間における位置とが対応付けられている。
【0043】
部材の位置又は姿勢を調整する操作の一例として、ユーザは、配置を調整したい部材を選択し、ドラッグすることで部材の位置又は姿勢を調整することができる。より具体的には、
図7に示す例においては、部材B2が選択されており、表示制御部134は、ユーザのドラッグ操作に応じて、部材B2の位置を移動させ、又は、部材B2の姿勢を回転させて表示させる。
図7に示すように表示制御部134は、位置又は姿勢を調整する部材をハイライトして表示させてもよい。
【0044】
そして、取得部131は、受付部135が受け付けた操作に応じて操作対象の部材の位置又は姿勢を決定し、決定した部材の位にさらに基づいて生成された設計データを取得する。取得部131は、部材の位置が調整された場合、受け付けた操作に応じて決定された画面上の部材の位置に設計データにいて対応する位置を操作対象の部材の位置として決定する。取得部131は、部材の姿勢が調整された場合、ユーザに決定された部材の姿勢を操作対象の部材の姿勢として決定する。そして、取得部131は、決定した操作対象の部材の位置又は姿勢にさらに基づいて設計データを生成する。そして、表示制御部134は、判定部133が設計データに基づいて判定した判定結果に応じて表示内容を制御する。
【0045】
なお、部材を移動させることにより、それぞれの部材の形状が占める領域が重複する場合がある。たとえば、
図7に示す位置から部材B2を回転させると、部材B2が占める領域と部材B1又はB3が占める領域とが重複する場合がある。このような場合、部材の形状が重複していることを示すアラートを表示してもよいし、それぞれの部材の位置が重複しないようにそれぞれの部材の位置座標を重複を解消する方向に重複している領域分ずらして調整するよう受付部135が構成されてもよい。
【0046】
このように部材が配置される位置を調整する操作を受付部135が受け付けるように構成されることで、ユーザの希望に沿った作品を制作させることが可能となる。
【0047】
ユーザが部材の位置又は姿勢を調整する操作をしている際に、作品が安定しやすい位置に部材があることがわかるように表示画面が構成されるとユーザの操作性がよい。そこで、部材の位置又は姿勢を調整する操作において、作品の重心の位置が作品の中心に位置する場合に、ユーザの操作に表示画像を追従させないようにするようデータ処理装置1が構成されてもよい。
【0048】
表示制御部134は、受け付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を追従させて作品のデザインを示す画像を表示する。
図7に示す操作画面において、表示制御部134は、ユーザのドラッグ操作に部材を表示する位置が追従するように表示する画面を制御する。すなわち、表示制御部134は、受け付けた操作の量に応じて部材を表示する表示位置を決定し、操作対象の部材を決定した表示位置に表示させる。
【0049】
判定部133は、設計データが示す作品の底面の中心を含む鉛直方向の直線上に作品の重心が位置するかをさらに判定する。判定部133は、決定した表示位置に対応する設計データにおける操作対象の部材の位置を決定する。そして、判定部133は、算出した作品の重心の位置が直線L3上(以下、所定の位置という場合がある)に位置するかを判定する。直線L3は、作品の底面の中心を通る鉛直方向の直線である。換言すると、判定部133は、作品の重心を示すX座標及びY座標が作品の中心を示す所定の座標と一致するか否かを判定する。
【0050】
表示制御部134は、判定部133が底面の中心を含む鉛直方向の直線上に作品の重心が位置すると判定した場合、受付部135が受付けた位置を調整する操作に部材の表示位置を一時的に追従させないよう制御する。表示制御部134は、算出した作品の重心の位置が直線L3上にある場合、一時的に部材を示す画像を、受付けた操作に関わらず、算出した作品の重心の位置が直線L3上に位置すると判定した位置上に表示させる。操作の追従をしない時間は、ユーザが画面に変化があることを認識するために必要な時間に基づいて定められ、例えば、0.5秒、1秒等である。
【0051】
なお、判定部133は、操作対象の部材が選択されたタイミングで、操作対象の部材を移動させたときに作品の重心の位置が直線L3上となるような当該部材の位置を算出してもよい。そして、判定部133は、操作対象の部材が当該位置に配置されるよう操作された場合に、部材の表示位置を操作に追従させないように制御してもよい。
【0052】
また、安定して直立する位置に作品の重心が位置している場合、表示態様が異なる画像を表示させるようデータ処理装置1が構成されてもよい。
【0053】
表示制御部134は、判定部133の判定結果に応じて表示態様が異なる画像を作品の画像における重心の位置に重畳して表示させてもよい。具体的には、表示制御部134は、作品の重心が所定の位置にあると判定した場合と、そうではない場合と、で例えば色や大きさが異なる画像を表示させる。表示制御部134は、判定部133が作品の重心が所定の位置にあると判定した場合に、重心の位置を示す画像を点滅又は明滅させてもよい。
【0054】
表示制御部134が、このように構成されることで、ユーザが安定して直立する作品を設計しやすいユーザインターフェースを提供することができる。
【0055】
ところで、データ処理装置1が、平坦な面が作品の底面となるように部材の配置が決定されることで、ユーザは安定する作品を設計しやすくなる。
【0056】
取得部131は、選択された部材が有する平坦な面のいずれかが底面となるよう部材の配置を決定し、受付部135が受け付けた選択された各部材の形状及び重量と、決定した各部材の位置とを含む設計データを取得する。この場合、記憶部12が記憶する部材データにおいては、平坦な面を底面とするために部材が取るべき姿勢(以下、所定の姿勢という場合がある。)が関連づけられている。そして、取得部131は、選択された部材が有する面のうちいずれの面を底面とするかを決定する。すなわち、取得部131は、選択された部材に関連付けられた所定の姿勢のうちいずれの姿勢をとった場合の平坦な面を底面とするかを決定する。そして、取得部131は、決定した面が底面となるように最も下に配置される部材とその姿勢を決定する。そして、取得部131は、決定した部材以外の部材が配置される配置枠を決定し、設計データを生成する。
【0057】
また、複数の部材が選択された場合、テンプレートデータにおける配置枠に部材を当て嵌める組み合わせは無数に存在する一方、作品が安定して直立しない組み合わせも存在する。そこで、部材を配置枠に当てはめる組み合わせのうち、安定して直立する組み合わせのみを選択可能に表示させるようデータ処理装置1が構成されることで、ユーザが作品を設計するための操作性を向上させることができる。
【0058】
判定部133は、選択された複数の部材をそれぞれ異なる配置枠に当てはめてなる複数の設計データそれぞれにおける転倒角度それぞれが所定の角度より小さいかを判定する。すなわち、取得部131は、選択された部材それぞれをテンプレートデータにおける異なる配置枠に当て嵌める際に取り得る複数の組み合わせを生成し、生成した組み合わせそれぞれについての設計データを生成する。そして、重心特定部132は、生成した設計データそれぞれについて作品の重心を特定する。次に、判定部133は、特定したそれぞれの重心が所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0059】
そして、表示制御部134は、転倒角度が所定の角度より小さいと判定部133が判定した設計データにかかる作品を選択可能に表示させる。表示制御部134は、生成した全ての組み合わせにかかる設計データのうち、所定の条件を満たす設計データのみを選択可能に表示された画面を情報端末2に表示させる。
【0060】
ところで、選択した部材の価格を表示するようデータ処理装置1が構成されることで、ユーザは設計した作品を購入するかどうかを判断しやすくなる。
【0061】
表示制御部134は、部材データに基づいて選択された部材の価格を表示する。一例として、表示制御部134は、作品を構成する部材を選択するための画面において、部材それぞれの価格を情報端末2に表示させるよう制御してもよい。また、表示制御部134は、作品の購入を決定する画面において、選択された部材の合算値を表示させてもよい。この場合、部材データを参照して選択された部材それぞれの価格を取得し、選択された部材の価格を合算する。そして、表示制御部134は、合算した価格を表示させるよう制御する。
【0062】
[データ処理装置1における処理の流れ]
図8は、データ処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、作品の選択を受け付けるタイミングから開始している。受付部135は、作品の選択を受け付ける(S11)。そして、受付部135は、作品を構成する部材の選択を受け付ける(S12)。
【0063】
取得部131は、選択された部材を選択された作品のテンプレートデータにおける配置枠に配置する際に取り得る複数の部材の配置の組み合わせを生成する(S13)。重心特定部132は、生成した組み合わせにかかる設計データそれぞれにおける作品の重心を特定する(S14)。そして、判定部133は、それぞれの組み合わせにかかる設計データが所定の条件を満たすかを判定する(S15)。そして、表示制御部134は、所定の条件を満たす組み合わせにかかる作品を選択可能に表示する画面を情報端末2に表示させる(S16)。
【0064】
そして、受付部135はいずれかの作品が選択されたかを判定する(S17)。いずれの作品も選択されなかった場合(S17におけるNO)、S11に戻り、最初から処理をやり直し、いずれかの作品が選択された場合(S17におけるYES)、受付部135は、配置の選択を調整することが選択されたかを判定する(S18)。配置の選択を調整することが選択されなかった場合(S18におけるNO)、受付部135は、作品を購入するための購入処理をし(S19)、データ処理装置1は処理を終了する。
【0065】
配置の選択を調整することが選択された場合(S18におけるYES)、受付部135は、部材の位置又は姿勢を調整する操作を受け付け(S20)、受け付けた操作に応じて設計データを生成する。そして、重心特定部132は、生成した設計データに基づいて位置又は姿勢が調整された作品の重心を特定する(S21)。
【0066】
そして、判定部133は、位置又は姿勢が調整された作品の重心が所定の条件を満たすか否かを判定する(S22)。作品の重心が所定の条件を満たさない場合(S22におけるNO)、S20に戻り、再度部材の位置又は姿勢を調整する操作を受け付ける。作品の重心が所定の条件を満たす場合(S22におけるYES)、受付部135は、作品を購入するための購入処理をし(S19)、データ処理装置1は処理を終了する。
【0067】
[データ処理装置1の効果]
以上、説明したようにデータ処理装置1においては、作品を構成する各部材の形状、重量及び位置を含む設計データに基づいて、作品の重心を特定し、作品の重心が所定の条件を満たすか否かを判定し、判定結果に基づいて表示内容を制御するよう構成される。データ処理装置1がこのように構成されることで、ユーザが所望する部材を組み合わせた作品が安定して直立するかどうかを判断できる情報を提示することができるという効果を奏する。
【0068】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0070】
1 データ処理装置
2 情報端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 取得部
132 重心特定部
133 判定部
134 表示制御部
135 受付部