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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143097
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20230928BHJP
   B23B 31/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050300
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 啓一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】北島 寿弥
(72)【発明者】
【氏名】王子 雄貴
【テーマコード(参考)】
3C011
3C032
【Fターム(参考)】
3C011BB13
3C032FF07
(57)【要約】
【課題】洗浄液のスピンドル奥部への流入を抑制しつつ、コレットチャック内部を清掃可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置は、コレットチャックを清掃する清掃ユニットを備えている。清掃ユニットは、上方に向かって立設されると共に、洗浄液を噴出する吹き出し口11eを備えたノズル11bと、ノズル11bの吹き出し口11eよりも上方に位置し、コレットチャックの清掃時にノズル11bと共にコレットチャック内に下方から挿入される規制部11c2と、を備えている。規制部11c2は、吹き出し口11eより噴出された洗浄液と当接し、洗浄液の上方への流れを規制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するロータシャフトと、前記ロータシャフトの先端部に設けられ、工具を保持するコレットチャックと、を備えたスピンドルと、
前記コレットチャックを清掃する清掃ユニットと、を備え、
前記清掃ユニットは、
上方に向かって立設されると共に、洗浄液を噴出する吹き出し口を備えたノズルと、
前記ノズルの前記吹き出し口よりも上方に位置し、前記コレットチャックの清掃時に前記ノズルと共に前記コレットチャック内に下方から挿入される規制部と、を備え、
前記規制部は、前記吹き出し口より噴出された洗浄液と当接し、前記洗浄液の上方への流れを規制する、
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記コレットチャックの内周面と摺接する可撓性部材によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記ノズルは、その先端が開口して前記吹き出し口が形成され、
前記可撓性部材は、前記吹き出し口と前記ノズルの軸線方向において対向するブラシ部である、
ことを特徴とする請求項2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コレットチャック内部に付着した切粉などを清掃するための清掃ユニットを備えた加工装置が案出されている(特許文献1及び2参照)。これら特許文献1及び2の清掃ユニットは、洗浄液や圧縮空気などを吹き出す吹き出し口を備えたノズルを備えており、このノズルをコレットチャックの内側に挿入し、上記洗浄液や圧縮空気を吹き出すことによって、コレットチャック内部に付着した切粉を清掃するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11―347881号公報
【特許文献2】特開2016-196055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コレットチャックの内側にて、洗浄液などが勢いよく噴出されると、壁部を伝って洗浄液がスピンドルの主軸の奥部まで流入してしまうことがある。すると、例えば、コレットチャックを閉じるための皿ばねのグリスを上記流入した洗浄液が洗い流してしまったりする不具合を生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、洗浄液のスピンドル奥部への流入を抑制しつつ、コレットチャック内部を清掃可能な加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、回転駆動するロータシャフトと、前記ロータシャフトの先端部に設けられ、工具を保持するコレットチャックと、を備えたスピンドルと、前記コレットチャックを清掃する清掃ユニットと、を備え、前記清掃ユニットは、上方に向かって立設されると共に、洗浄液を噴出する吹き出し口を備えたノズルと、前記ノズルの前記吹き出し口よりも上方に位置し、前記コレットチャックの清掃時に前記ノズルと共に前記コレットチャック内に下方から挿入される規制部と、を備え、前記規制部は、前記吹き出し口より噴出された洗浄液と当接し、前記洗浄液の上方への流れを規制する、ことを特徴とする加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗浄液のスピンドル奥部への流入を抑制しつつ、コレットチャック内部を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る穴明け加工装置の概略図。
図2】スピンドルの構成を説明するための断面図。
図3】清掃ユニットを説明するための模式図。
図4】本実施の形態における洗浄液の流れを示す模式図。
図5】比較例の清掃ユニットを示す模式図。
図6】比較例における洗浄液の流れを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る加工装置としての穴明け加工装置について、図面に基づいて説明をする。なお、以下の説明において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とは、加工対象を平面視で視た際の状態を基準とする。
【0010】
<穴明け加工装置の概略構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る加工装置1は、加工対象としてのプリント基板Wに穴明け加工を行う穴明け加工装置であり、基台2と、X軸方向に移動可能に基台2に支持された加工テーブル3と、加工テーブル3上に載置されたプリント基板Wに穴明け加工を行うスピンドル5と、を備えている。スピンドル5は、加工テーブル3を跨ぐ形で基台2に据え付けられた門型コラム6に、クロススライド7を介して支持されている。具体的には、クロススライド7は、門型コラム6の垂直面にY軸方向に移動可能に取り付けられている。また、スピンドル5は、クロススライド7に対してZ軸方向に移動可能に取り付けられている。更に、加工テーブル3上には、供給用ツールポスト8、排出用ツールポスト9、新しいドリルと古いドリルとが区別して収納されるドリルカセット10、清掃ユニット11などが設けられている。
【0011】
また、加工装置1は、穴明け加工に際して使用される種々の制御プログラムが記憶された記憶部及びCPUなどの演算部を備えた制御部12を備えている。加工装置1は、プリント基板Wに穴明けを行うに際し、上記制御部12によって、加工テーブル3をX軸方向に移動させる駆動装置(不図示)及びクロススライド7をY軸方向に移動させる駆動装置(不図示)を制御して、スピンドル5のドリル13を位置に位置決めし、この状態でスピンドル5をZ軸方向に移動させる駆動装置(不図示)を制御して、スピンドル5を下降させてプリント基板Wに穴明けを行う。
【0012】
また、スピンドル5のドリル13を交換する場合、同様に加工テーブル3及びスピンドル5の位置を制御して、排出用ツールポスト9でドリル13を取り外し、スピンドル5に取り付けられたサブチャック15を用いて供給用ツールポスト8に新しいドリルを供給し、この供給用ツールポスト8に用意された新しいドリルをスピンドル5に取り付ける。
【0013】
<スピンドルの構成>
ついで、スピンドル5の構成について、工具の保持するコレットチャック51周りの構成を中心に説明をする。スピンドル5は、図2に示すように、主軸としてのロータシャフト52と、ロータシャフト52を回転駆動させるための不図示のコイルと、を備えており、コイルに駆動電流が供給されることによって、ロータシャフト52が回転駆動するように構成されている。
【0014】
また、ロータシャフト52は、中空状に設けられており、その先端部にドリル13を保持するためのコレットチャック51が設けられている。具体的には、ロータシャフト52の先端部であるノーズ52aには、コレットチャック(コレット)51を挿入するための開口部52a1が回転軸線Oに沿って形成されており、この開口部52a1は皿ばね収容空間52bと連通している。また、ノーズ52aの内周面は、回転軸線Oに沿ってロータシャフト52の先端から遠ざかる方向(以下、第1方向という)、すなわち、皿ばね収容空間52bに向かうにつれて、開口部52a1の内径が小さくなるように傾斜した雌型のテーパ面52a2となっている。
【0015】
上記コレットチャック51は、中心部に工具を挿入する穴51aが形成された筒状の部材に放射状に切り込み(スリット)を入れて形成されており、上記切込みが入れられたチャック部51bと、チャック部51bから第1方向に連続したロッド部51cと、を備えている。チャック部51bは、工具を保持する保持部となっており、その外周面は上記ロータシャフト52のテーパ面52a2と同一の角度を有する雄形のテーパ面51b1となっている。また、ロッド部51cは、コレットチャック51がロータシャフト52に挿入された状態において、皿ばね収容空間52bに位置しており、その端部にはガイドブッシュ51dが取り付けられている。皿ばね収容空間52dは底付き穴として形成されており、当該皿ばね収容空間52bの底部52b1と、ガイドブッシュ51dとの間には、皿ばね53が縮設されている。この皿ばね53の付勢力によって、コレットチャック51は第1方向(図2上方)に付勢されて引き上げられ、テーパ面51b1がロータシャフト52のテーパ面52a2と係合して締め付けられ、チャック部51bが内径方向に弾性変形してドリル13のシャンクが保持される。なお、テーパ面51b1が形成された上記チャック部51bの外周面には、テーパ面51b1の一部が切り欠かれた切り欠き部51b2が形成されている。
【0016】
<清掃ユニットの構成>
ついで、上記清掃ユニット11の構成について説明をする。清掃ユニット11は、図3に示すように、加工テーブル3に支持された台座11aと、台座11aから上方に向かって立設されたノズル11bと、ノズル11bの先端に取り付けられたブラシ11cと、を備えている。台座11a及びノズル11b及びの内部には、それぞれエア及び洗浄剤が通る流路11dが形成されており、ノズル11bの先端(上端)には、流路11dと連通するエア及び洗浄剤の吹き出し口11eが形成されている。
【0017】
ブラシ11cは、台座11aに支持されていると共に、流路11d内を通って吹き出し口11eから突出した軸部11c1と、吹き出し口11eから突出した軸部11c1に対してスパイラル状に巻きつけられたブラシ部11c2と、を備えている。このブラシ部11c2は、可撓性部材によって形成されており、コレットチャック51に保持されるドリル13のシャンクと同径もしくは、このドリルのシャンクよりも大径に形成されている。すなわち、ブラシ部11c2は、コレットチャック51の工具を挿入する穴51aと同径もしくは大径に形成されており、ノズル11bと共にコレットチャック51の穴51aに差し込まれた際に、コレットチャック51の内周面51a1(図2参照)と摺接するようになっている。なお、円形のノズル11bは、コレットチャック51の穴51aの径よりも小径に形成され、コレットチャック51の内周面51a1には接触しないようになっている。
【0018】
ついで、上記清掃ユニット11によるコレットチャック51の清掃動作について説明をする。例えば、スピンドル5のドリル13を新しいドリルに持ち換える場合、加工装置1は、古いドリルをコレットチャック51から取り外し、供給用ツールポスト8の新しいドリルをスピンドル5に取り付ける前に、加工テーブル3及びクロススライド7を移動させて、清掃ユニット11のブラシ11c及びノズル11bとコレットチャック51の穴51aとを位置合わせし、この状態でスピンドル5を下降させることによって、上記ブラシ11c及びノズル11bをコレットチャック51内に挿入する。
【0019】
図4に示すように、ブラシ11c及びノズル11bをコレットチャック51内に挿入すると、制御部12は、清掃ユニット11の駆動装置(不図示)を制御して、ノズル11bの先端から洗浄液及びエアを所定時間、ノズル先端に設けられた吹き出し口11eから噴出させる。すると、洗浄液は、図中の矢印X1にしめすように、吹き出し口11eから上方へ吹き出し、フランジ状に径方向に広がるブラシ11cのブラシ部11c2に当接する。このブラシ部11c2は、図4のB部拡大図に示すように、コレットチャック51の内周面51a1と接しており、内周面51a1との間に径方向の隙間がないため、ブラシ部11c2と当接した洗浄液は、上方への流れが規制され、このブラシ部11c2の下面部分にて洗浄液溜まりが形成される。
【0020】
そして、この洗浄液溜まりの洗浄液は、ノズル11bとコレットチャック51の内周面51a1の間の隙間から下方へ流れ、コレットチャック51の内周面51a1に付着した切粉などの異物を清掃する。また、洗浄液溜まりの洗浄液は、コレットチャック51のチャック部51bのスリットからコレットチャック51の外周面51b1とロータシャフト52の内周面52a2との間の隙間にも流入し、これらコレットチャック51とロータシャフト52との間の異物を清掃する。
【0021】
ところで、図5に示すように、清掃ユニットのノズルにブラシがついていない場合、ノズルの先端では無く、側面に洗浄液及びエアの吹き出し口を設けた場合であったとしても、図6に示すように、吹き出し口から噴出された洗浄液の上方への流れを阻害するものがない。このため、図6、特にA部拡大図に示すように、洗浄液は矢印X2のように流れ、壁面を伝って、その一部が上方へと流れ、ロータシャフト52の内部、例えば、皿ばね収容空間52bまで流れ込んでしまう虞がある。
【0022】
一方で、本実施の形態の場合、清掃ユニット11のブラシ11cがノズル11bの吹き出し口11eよりも上方かつ少なくともその下端がコレットチャック51に挿入された時点で皿ばね収容空間52bよりも下方に位置している。また、径方向に伸びたブラシ部11c2は上方に向いて開口した吹き出し口11eとノズル11bの軸線方向において対向しており、コレットチャック51の清掃時に吹き出し口11eより噴出された洗浄液と当接して洗浄液の上方への流れを規制する規制部となっている。このため、ブラシ11cのブラシ部11c2の下面で洗浄液溜まりが形成され、上方への流れを規制された洗浄液は、重力によって下方へと流れて、ロータシャフト52の奥部まで流入すること無くコレットチャック51やロータシャフト52のノーズ52aの内部を清掃することができる。
【0023】
また、皿ばね収容空間52bなどのロータシャフト52の奥部に洗浄液が流入しづらくなることにより、本実施の形態において、ドリルなどの工具の保持力をコレットチャック51に付与する付勢部材である皿ばね53のグリスを洗浄液によって洗い流してしまうことを防止することができる。このため、他の部分への影響を抑えつつ、コレットチャック51の清掃を行うことができ、コレットチャック51を適正に動作させることができるようになる。
【0024】
なお、上述した実施の形態では、ノズル11bの先端に吹き出し口11eを設けたが、これに限らず、ノズル11bの側面にも吹き出し口を設けても良い。なお、この場合、吹き出し口がコレットチャック51の内周面51a1と対向する位置に設けられると望ましい。また、コレットチャック51は、皿ばね以外の付勢部材によって工具を保持するための締付け力を得ても良く、更に、付勢部材以外にも他の締め付け機構によってチャック部を閉じる構成であっても良い。また、コレットチャック51は、ドリル以外にも種々の工具を保持することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:加工装置
5:スピンドル
11:清掃ユニット
11b:ノズル
11c2:規制部(ブラシ部)
11e:吹き出し口
51:コレットチャック
52:ロータシャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6