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特開2023-143099減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143099
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/20 20160101AFI20230928BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20230928BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20230928BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F03D13/20
F03D80/00
F03D1/06 A
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050303
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 利之
(72)【発明者】
【氏名】加古 裕之
(72)【発明者】
【氏名】白石 恭章
(72)【発明者】
【氏名】福田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】林 義之
(72)【発明者】
【氏名】横山 博昭
(72)【発明者】
【氏名】有木 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】保久村 永人
【テーマコード(参考)】
3H178
3J048
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB42
3H178BB77
3H178CC23
3H178DD68X
3H178DD70X
3J048AA06
3J048AC04
3J048AD05
3J048AD12
3J048CB11
3J048DA06
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】大規模な改造を行うことなく、風車本体に減衰を付加することができる風力発電用風車及び風力発電用風車の設計方法を提供する。
【解決手段】風力を受けるブレード111bを含むロータ111、及び、ロータ111が頂部に設置されたタワー113を有している風車本体110と、水底142から立設するとともにタワー113の側方に位置する複数のレグ部121を有しているジャケット120と、ジャケット120とタワー113とを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰ダンパ130と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、
減衰システムと、
を備え、
前記減衰システムは、
水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、
前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、
を有している風力発電用風車。
【請求項2】
前記レグ部は、前記水底から立設し、
前記タワーは、下端が前記水底から離間し、
前記ジャケットは、前記タワーを支持する風車支持部を有し、
前記減衰機構は、水面より上方で前記ジャケットと前記タワーとを接続している請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項3】
前記レグ部は、前記水底から立設し、
前記タワーは、前記水底から立設し、
前記減衰機構は、水面より上方で前記ジャケットと前記タワーとを接続している請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項4】
前記ロータの直径は、160m以上とされ、
前記ロータの回転中心の高さは、前記水面から150m以上とされている請求項3に記載の風力発電用風車。
【請求項5】
前記減衰機構は、前記水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲に設けられている請求項2から4のいずれかに記載の風力発電用風車。
【請求項6】
前記水底から前記ロータの回転中心までの高さをHhとしたとき、
前記減衰機構は、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲に設けられている請求項2から5のいずれかに記載の風力発電用風車。
【請求項7】
前記レグ部は、前記地面から立設し、
前記タワーは、前記地面から立設し、
前記ロータの直径をDr、前記地面から前記ロータの回転中心までの高さをHh、前記減衰機構の高さをHdとしたとき、
Hhは、0.72Dr以上とされ、
Hdは、前記地面から0.20Hh以上とされている請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項8】
Hhは、1.2Dr以上とされている請求項7に記載の風力発電用風車。
【請求項9】
前記タワーの基礎部分と前記レグ部の基礎部分とは、互いに接続されている請求項7又は8に記載の風力発電用風車。
【請求項10】
前記減衰機構は、水平方向に沿った所定平面内に複数設けられている請求項1から9のいずれかに記載の風力発電用風車。
【請求項11】
前記所定平面は、高さ方向に異なる複数の位置に設定されている請求項10に記載の風力発電用風車。
【請求項12】
風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、
減衰システムと、
を備え、
前記減衰システムは、
水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、
前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、
を有している風力発電用風車の設計方法であって、
前記水底又は前記地面から前記ロータの回転中心までの高さをHh、前記減衰機構の設置高さをHd、前記減衰機構の減衰係数をC、前記風力発電用風車の減衰定数をhとしたとき、
Hdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する風力発電用風車の設計方法。
【請求項13】
前記レグ部は、前記水底から立設し、
前記タワーは、下端が前記水底から離間し、
前記ジャケットは、前記タワーを支持する風車支持部を有し、
水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する請求項12に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項14】
前記レグ部は、前記水底から立設し、
前記タワーは、前記水底から立設し、
前記ロータの直径は、160m以上とされ、
前記ロータの回転中心の高さは、水面から150m以上とされ、
前記水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する請求項12に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項15】
前記レグ部は、前記地面から立設し、
前記タワーは、前記地面から立設し、
前記ロータの直径をDrとしたとき、Hhは、0.72Dr以上とされ、
前記地面から0.20Hh以上の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する請求項12に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項16】
Cの数値を設定した場合において、Hdをパラメータとしたhを求めて、hが最大となるHdを決定する請求項13又は14に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項17】
Cの数値を設定した場合において、前記水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdをパラメータとしたhを求めて、hが最大となるHdを決定する請求項16に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項18】
Cの数値を設定した場合において、前記地面から0.20Hh以上の範囲でHdをパラメータとしたhを求めて、hが最大となるHdを決定する請求項15に記載の風力発電用風車の設計方法。
【請求項19】
風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体に取り付けられる減衰システムであって、
水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、
前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、
を有している減衰システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば風力発電用の風車においては、地震、波、風等による振動応答を低減することが好ましい。振動応答を低減することで、構造部材の断面積の低減が可能となり製造・建設コストの低減につながり,また疲労荷重の低減が期待できる。とりわけ、地震動が卓越する地域においては、振動応答を低減する意義が大きい。
【0003】
また、風車のタワーの振動特性において固有振動数とロータ回転数の関係は極めて基本的な制約条件となるため、地震応答に伴いタワーの剛性を大きくするのは難しい場合も予想される。
【0004】
この場合において、振動応答を低減するために、風車に制振装置を設置することが考えられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5594696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにタワーの内部に制振装置を設置する場合、タワーの内部の空間の制約により装置の寸法、形状、重量等に制限が課される可能性がある。
【0007】
また、タワーは、比較的に地震動が小さい地域(欧州や米国等)で標準設計されることが多く、タワーに大規模な改装を行わずに減衰を付加できることが好ましい。更には、既設の風車に対して後付けで減衰を付加できることが好ましい。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大規模な改造を行うことなく、風車本体に減衰を付加することができる風力発電用風車及び風力発電用風車の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示の減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムは、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る減衰システムを備えている風力発電用風車は、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、減衰システムと、を備え、前記減衰システムは、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、を有している。
【0010】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法は、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、減衰システムと、を備え、前記減衰システムは、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、を有している風力発電用風車の設計方法であって、前記水底又は前記地面から前記ロータの回転中心までの高さをHh、前記減衰機構の設置高さをHd、前記減衰機構の減衰係数をC、前記風力発電用風車の減衰定数をhとしたとき、Hdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する。
【0011】
また、本開示の一態様に係る減衰システムは、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体に取り付けられる減衰システムであって、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、を有している。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、大規模な改造を行うことなく、風車本体に減衰を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る風力発電用風車の側面図である。
図2図1に示す切断線II-IIにおける横断面図である。
図3】比較例に係る風力発電用風車の側面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(1次振動モード)。
図6】本開示の第1実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(2次振動モード)。
図7】本開示の第1実施形態の変形例1に係る風力発電用風車の側面図である。
図8】本開示の第1実施形態の変形例2に係る風力発電用風車の側面図である。
図9】本開示の第1実施形態の変形例3に係る風力発電用風車の側面図である。
図10】本開示の第1実施形態の変形例4に係る風力発電用風車の側面図である。
図11】本開示の第1実施形態の変形例5に係る風力発電用風車の側面図である。
図12】本開示の第1実施形態の変形例6に係る風力発電用風車の側面図である。
図13】本開示の第1実施形態の変形例6に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である。
図14】本開示の第1実施形態の変形例6に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(1次振動モード)。
図15】本開示の第1実施形態の変形例6に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(2次振動モード)。
図16】減衰ダンパの配置の例を示した図表である。
図17】減衰ダンパの配置の例を示した図表である。
図18】減衰ダンパの減衰係数Cと風力発電用風車の減衰定数hとの関係を示したグラフの一例である。
図19】本開示の第2実施形態に係る風力発電用風車の側面図である。
図20】本開示の第2実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である。
図21】本開示の第2実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(2次振動モード)。
図22】本開示の第2実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である(3次振動モード)。
図23】本開示の第3実施形態に係る風力発電用風車の側面図である。
図24】本開示の第3実施形態に係る風力発電用風車の振動モデルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態に係る減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムについて、図1から図18を参照して説明する。
【0015】
[風車の構成について]
図1に示すように、風力発電用風車100(以下、単に「風車100」という。)は、風車本体110及び減衰システムを備えている。
また、減衰システムは、ジャケット120及び減衰機構を有している。
減衰機構としては、減衰ダンパ130等のエネルギを吸収することができる機構や機器が例示される。なお、ここで言う「減衰機構」とは、TMD(Tuned Mass Damper)等の制振装置を含まない。
【0016】
風車本体110は、ロータ111、ロータ111が回転可能に取り付けられたナセル112及びナセル112が頂部に設けられたタワー113を有している。
【0017】
ロータ111は、風力によって回転する部分であり、ハブ111a及び複数枚のブレード111bを有している。
ロータ111は、例えば回転軸が水平方向に延びたプロペラ型とされている。
【0018】
ハブ111aは、ロータ111の回転中心となる部分であり、回転軸に対する周方向に複数枚のブレード111bが取り付けられている。
ハブ111aには、図示しないシャフトが接続されており、ハブ111aの回転力を伝達することができる。
ブレード111bは、風力を受ける部分であり、ハブ111aを中心にして半径方向の外側に向かって延びている。
【0019】
ナセル112は、ハブ111aに接続されたシャフト(図示せず)を回転可能に支持するとともに発電を行う部分である。
ナセル112には、発電機等の発電に必要な機器が収容されている。
【0020】
タワー113は、ナセル112を支持する部分であり、鉛直方向に延びている。
タワー113の頂部には、ロータ111が取り付けられたナセル112が取り付けられている。
タワー113の下端は、水底142から切り離されている。つまり、風車本体110は、直接的に水底142に対して着床・自立しておらず、ジャケット120(後述)を介して水底142に対して着床・自立している。言い換えれば、風車100は、ジャケット基礎式の洋上風車とされている。
【0021】
ジャケット120は、タワー113(風車本体110)を支持する部分であり、複数本のレグ部121及び風車支持部122を有している。
【0022】
レグ部121は、水底142から空中145に向かって立設する部材とされており、下端側の部分が地盤141に打ち込まれ、上端側の部分がタワー113の側方に位置している。
レグ部121の高さ方向の寸法は、減衰ダンパ130(後述)を設ける位置によって決定される。
図2に示すように、複数のレグ部121は、タワー113の周方向に等角度間隔で設けられている。図2の場合、4本のレグ部121がタワー113の周囲に設けられ、平面視したときの形状が正方形等の四角形をなしている(各レグ部121は、四角形の頂点に位置している)。
【0023】
図1に示すように、風車支持部122は、一のレグ部121と他のレグ部121との間において水平方向に架け渡されるとともに各レグ部121に剛に接続された部材である。
風車支持部122は、水底142から離間した位置に設けられている。図1の場合、風車支持部122は、水中143に位置しているが、空中145に位置していてもよい。
風車支持部122には、タワー113の下端が剛に接続されている。つまり、タワー113(風車本体110)の鉛直方向の荷重は、風車支持部122を介してレグ部121によって支持されていることになる。
【0024】
以上のように構成されたジャケット120によって、風車本体110が、間接的に水底142に対して着床・自立することになる。
【0025】
なお、図2に示すように、タワー113の周方向に隣り合うレグ部121間において水平方向に架け渡されるとともに各レグ部121に剛に接続された連結部材123(風車支持部122と異なる部材)を設けてもよい。これによって、ジャケット120の剛性を向上させることができる。
【0026】
図1及び図2に示すように、減衰ダンパ130は、タワー113とジャケット120との間で水平方向に作用する減衰機能を発揮する部分である。つまり、タワー113(風車本体110)の水平方向の荷重は、減衰ダンパ130によって減衰が付加されつつジャケット120によって支持されていることになる。
減衰ダンパ130としては、オイルダンパや鋼材ダンパが例示される。ただし、エネルギを吸収することができる機構や機器であればこれに限定されない。
【0027】
減衰ダンパ130は、タワー113とジャケット120とを水平方向に接続するように設けられている。
具体的には、図2に示すように、減衰ダンパ130は、ジャケット120が有する連結部材123とタワー113に設けられた接続部113aとを接続するように設けられている。
ここで、接続部113aは、タワー113の外周面から張り出した部分である。接続部113aは、タワー113と一体的に形成された部分でもよいし、タワー113と別体とされた部材がタワー113に接続されてもよい。
【0028】
図1及び図2に示すように、減衰ダンパ130は、水平方向に拡がる所定平面内に複数設けられることが好ましい。これによって、減衰ダンパ130ひとつ当たりの大型化を回避しつつ、全体として十分な減衰性能を確保することができる。
【0029】
ここで、風車100は、例えば、図3の比較例に示すようなジャケット基礎式の既存の風車400に対して改造を施すことで建設してもよい。
具体的には、風車本体410のタワー413の下端に延長部113b(図1参照)を剛に接続して、レグ部121に風車支持部122(図1参照)を取り付ける。
【0030】
図1に示すように、減衰ダンパ130を設置する範囲は、構造上の理由から設定される範囲Rs及び/又は設計上の理由から設定される範囲Rdを考慮して決定される。
具体的には、範囲Rsは、海水暴露の影響を低減する観点から水面144の上方10mの位置以上、かつ、ロータ111との干渉を回避する観点からロータ111の下端の下方5m(好ましくは7m、更に好ましくは10m)の位置以下とされる。
また、ロータ111の回転中心の水底142からの高さ(ハブ高さ)をHhとしたとき、範囲Rdは、水底142から0.15×Hh[m]以上、かつ、0.45×Hh[m]以下とされる。このような範囲Rdを設定することで、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0031】
以上のように構成された風車100において、減衰ダンパ130は、以下のように機能する。
【0032】
図4には、図1に示されている風車100の振動モデルの例が示されている。なお、振動モデルに記載されている円は質量を表している。
この振動モデルにおいて、範囲R1は、風車本体110とジャケット120とが剛に接続された部分を示している。また、範囲R2は、風車本体110とジャケット120とが剛に接続されていない部分(すなわち、減衰ダンパ130を介して風車本体110とジャケット120とが接続されている部分及び風車本体110とジャケット120とが接続されていない部分)を示している。
【0033】
このとき、範囲R1における風車本体110とジャケット120とは、一体化された構造とみなすことができる。
一方で、範囲R2における風車本体110とジャケット120とは、別体の構造であり互いに異なる振動特性を有している。
【0034】
図5には、風車100が1次振動モードで振動している状態の振動モデルの例が示されている。また、図6には、風車100が2次振動モードで振動している状態の振動モデルの例が示されている。
図5及び図6に示すように、いずれの振動モードにおいても、減衰ダンパ130が範囲R2に設けられていれば、範囲R2における風車本体110とジャケット120との振動応答の差を利用して減衰ダンパ130で振動エネルギを吸収することができる。すなわち、風車本体110に減衰を付加することができる。
【0035】
なお、減衰ダンパ130は、速度変化が大きいほど減衰機能を発揮することになる。
このため、同じ振動モードにおいては、例えば振幅の腹となるタワー113の部分、あるいは振幅の腹に近いタワー113の部分に対応した位置に減衰ダンパ130を設けることで、効率的に風車本体110に減衰を付加することができる。
【0036】
また、振幅が大きくなる位置は振動モードによって異なるため、所定の同じ位置に減衰ダンパ130を設けた場合、例えば1次振動モードよりも2次振動モードに対して効率的に減衰を付加できるということがあり得る。
具体的には、図5及び図6の例に示すように、所定の同じ位置に減衰ダンパ130を設けた場合、その所定位置においては1次振動モードの振幅よりも2次振動モードの振幅の方が大きいので、2次振動モードに対して効率的に減衰を付加することができる。また、3次振動モードに対しても効率的に減衰を付加することができる(図22の例も参照)。
【0037】
[変形例1]
図1に示した形態は、図3の形態を基礎として、風車本体410のタワー413の下端を下方に向かって延長したような形態であり、風車支持部122が水面144よりも下にあった。
これに対して、図7に示すように、図3の形態を基礎として、タワー413の下端の位置は変更せずに、レグ部121の上端を上方に向かって延長したような形態を採ってもよい。このとき、風車支持部122を水面144よりも上に配置する。
【0038】
[変形例2]
図8に示すように、図3の形態を基礎として、風車本体410のタワー413の下端を下方に向かって延長して、レグ部121の上端を上方に向かって延長したような形態を採ってもよい。このとき、風車支持部122を水面144よりも下に配置する。
【0039】
[変形例3]
図9に示すように、図3の形態を基礎として、風車本体410のタワー413を上方に持ち上げつつタワー413の下端を下方に向かって延長して、レグ部121の上端を上方に向かって延長したような形態を採ってもよい。このとき、風車支持部122を水面144よりも上に配置する。
これによって、ロータ111のブレード111bの下端とジャケット120のレグ部121との間隔を確保することができる。
【0040】
[変形例4]
図10に示すように、図3の形態を基礎として、風車本体410のタワー413を上方に持ち上げつつタワー413の下端を下方に向かって延長して、レグ部121の上端を上方に向かって延長したような形態を採ってもよい。このとき、風車支持部122を水面144よりも下に配置する。
これによって、ロータ111のブレード111bの下端とジャケット120のレグ部121との間隔を確保することができる。
【0041】
[変形例5]
図11に示すように、図3の形態を基礎として、風車本体410のタワー413の下端を下方に向かって延長して、風車支持部122を水底142に接するよう配置してもよい。
なお、風車支持部122の直下に基礎は設置されていない。また、風車支持部122がレグ部121に取り付けられていることに変わりはない。
これによって、風車本体110の鉛直方向の荷重が、風車支持部122を介してレグ部121及び水底142によって支持されることになる。このとき、水底142にも荷重を負担させることで、風車支持部122の大型化を回避することができる。
なお、風車支持部122の下部に、地盤141に埋め込まれる基礎部分を設けてもよい。
【0042】
[変形例6]
図1に示した形態では、複数の減衰ダンパ130(減衰ダンパ130のセット)は1つの所定平面内に設置されていたが、図12に示すように、減衰ダンパ130が設置される平面を高さ方向に異なる複数の位置に設定してもよい。すなわち、減衰ダンパ130のセットを複数段にわたって設置してもよい。
【0043】
図13には、図12に示されている風車100の振動モデルの例が示されている。また、図14には、風車100が1次振動モードで振動している状態の振動モデルの例が示されている。また、図15には、風車100が2次振動モードで振動している状態の振動モデルの例が示されている。
【0044】
例えば、図14の例に示すように、上方に設置された減衰ダンパ130のセットは、2次振動モードよりも1次振動モードに対して効率的に減衰を付加できる。
一方で、例えば、図15に示しように、下方に設置された減衰ダンパ130のセットは、1次振動モードよりも2次振動モードに対して効率的に減衰を付加できる。
このように、減衰ダンパ130が設置される平面を高さ方向に異なる複数の位置に設定することで、腹の位置が高さ方向に異なる複数の振動モードに対して効率的に減衰を付加できる。
【0045】
これまでの説明では、図2に示すように、減衰ダンパ130でジャケット120の連結部材123とタワー113に設けられた接続部113aとを接続していたが、例えば、減衰ダンパ130でジャケット120のレグ部121とタワー113とを接続してもよいし、ジャケット120の連結部材123とタワー113とを接続してもよい。
その他、例えば図16の図表に示すように、ジャケット120のレグ部121及び/又は連結部材123とタワー113(接続部113aを含む)とが接続された形態であればよい。
また、例えば図17の図表に示すように、3本のレグ部121をタワー113の周囲に設けて、平面視したときの形状を三角形としてもよい(各レグ部121は、三角形の頂点に位置している)。
【0046】
[風車の設計方法について]
次に、減衰ダンパ130の減衰係数C及び減衰ダンパ130の設置高さHdを決定する方法について説明する。
なお、減衰ダンパ130の設置高さHdとは、水底142からの減衰ダンパ130までの高さのことである。
【0047】
まず、減衰係数Cを決定するにあたって、上記の範囲Rs及び範囲Rdを満足する範囲で、設置高さHdの初期値を所定の値に設定する。
その後、減衰係数Cをパラメータとした複素固有値解析を実施して、図18に示すように、横軸に減衰ダンパ130の減衰係数C、縦軸に風車100の減衰定数hをとったグラフを複数の振動モードごとに作成する。図18に示すグラフの場合、1次振動モードから3次振動モードまでの解析を実施している。ここで、減衰定数hは、風車100の減衰性能を評価する値であり、数値が大きいほど振動応答が低減することを示す。
その後、所定の減衰定数h(設計上要求された減衰定数h)をとる減衰係数CAをグラフから読み取り、その値を減衰ダンパ130の減衰係数Cとする。設計上要求された減衰定数hは、例えば1%以上20%以下、好ましくは5%以上15%以下、更に好ましくは5%以上10%以下とされる。
【0048】
減衰係数Cを決定したら、次に、設置高さHdをパラメータとした複素固有値解析を実施する。なお、設置高さHdは、範囲Rs及び範囲Rdを満足する値であることは言うまでもない。
これによって、決定された減衰係数Cにおいて最も減衰を付加できる設置高さHdを決定することができる。すなわち、最適な減衰ダンパ130の設置高さHdを決定することができる。
【0049】
ここで、減衰定数hの目安を1%以上20%以下とした理由は、以下の通りである。
すなわち、1%未満の減衰定数hを目安としても振動応答の低減効果は大きくなく、20%を超える減衰定数hを目安としても振動応答を低減する効果が比例的に向上する訳ではなく、減衰定数hを1%以上20%以下とすることが効率的だからである。更には、減衰定数hを大きくした場合、要求される減衰係数Cも大きくなるが、減衰係数Cが大きくなり過ぎることで、これを満足する減衰ダンパ130が、極端に大型化する、実現できない可能性がある、あるいは実現できたとしても製造コストが増大するからである。
つまり、減衰定数hを1%以上20%以下とするのは,風車100へ付加される減衰性能並びに減衰ダンパ130の製造成立性、配置成立性及び製造コスト等を総合的に判断した場合に、効率的な範囲であるためである。また、減衰定数hを5%以上15%以下、5%以上10%以下としていくことで、更に効率が向上する。
【0050】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
風力を受けるブレード111bを含むロータ111、及び、ロータ111が頂部に設置されるとともに下端が水底142から離間したタワー113を有している風車本体110と、減衰システムと、を備え、減衰システムは、水底142から立設するとともにタワー113の側方に位置する複数のレグ部121、及び、複数のレグ部121と接続されるとともにタワー113を支持する風車支持部122を有しているジャケット120と、風車支持部122及び水面144よりも上方でジャケット120とタワー113とを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰ダンパ130を有しているので、風車本体110の振動応答とジャケット120の振動応答との差を利用して、減衰ダンパ130でエネルギを吸収することができる。これによって、風車本体110に大規模な改造を行うことなく、風車本体110に減衰を付加することができる。
【0051】
また、減衰ダンパ130を、水面144の上方10mの位置からロータ111の下端の下方5mの位置までの範囲に設けることで、海水暴露の影響を低減しつつ減衰ダンパ130とロータ111との干渉を回避することができる。
【0052】
また、水底142からロータ111の回転中心までの高さをHhとしたとき、減衰ダンパ130は、水底142から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲に設けられているので、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0053】
また、風車本体110に減衰を付加することで、設計地震動が大きい地点・地域に風車100を建設することができるようになる。
【0054】
また、風車本体110に減衰を付加することで、風車本体110の剛性を必要以上に大きくする必要がなくなり、風車本体110や基礎のサイズ及び重量を低減することができ、製造/建設コストの低減や工期の短縮を図ることができる。
【0055】
また、減衰ダンパ130はタワー113の外部に接続されているため、タワー113の内部にTMD等の制振装置を設置した場合と比較して、風車本体110のサイズや重量の増大を抑制することができる。
【0056】
また、オイルダンパを使用した場合、パッシブ制御が可能となり、アクチュエータ等によるアクティブ制御が不要となる。
【0057】
また、特性の異なる減衰ダンパ130と取り替えることで、風車100としての減衰性能を変更することができる。
【0058】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態に係る減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムについて、図19から図22を参照して説明する。
本実施形態は、第1実施形態に対してタワー213の基礎の形態が異なり、その他の点においては共通とされている。このため、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を以下の説明及び/又は図中に付すのみとする。
【0059】
[風車の構成について]
図19に示すように、タワー213は、下端側の部分が地盤241に打ち込まれている。つまり、風車本体210は、直接的に水底242に対して着床・自立している。言い換えれば、風車200は、モノパイル基礎式の洋上風車とされている。
なお、図20には、図19に示されている風車200の振動モデルの例が示されている。
【0060】
風車本体210は、ロータ211の直径Drが160m以上とされ、ロータ211の回転中心の水底242からの高さ(ハブ高さHh)が水面244から150m以上とされている。また、水深は、例えば30mとされている。
【0061】
この場合において、減衰ダンパ230を設置する範囲は、構造上の理由から設定される範囲Rs及び/又は設計上の理由から設定される範囲Rdを考慮して決定される。
具体的には、範囲Rsは、海水暴露の影響を低減する観点から水面244の上方10mの位置以上、かつ、ロータ211との干渉を回避する観点からロータ211の下端の下方5m(好ましくは7m、更に好ましくは10m)の位置以下とされる。
また、範囲Rdは、水底242から0.15×Hh[m]以上、かつ、0.45×Hh[m]以下とされる。このような範囲Rdを設定することで、特に2次振動モード(図21参照)及び3次振動モード(図22参照)に対して有効な減衰を付加することができる。なぜなら、ハブ高さHhが水面から150m以上の位置にある風車本体210においては、2次振動モード及び3次振動モードの振幅の腹となる位置が範囲Rdに存在する傾向にあるからである。
【0062】
[風車の設計方法について]
次に、減衰ダンパ230の減衰係数C及び減衰ダンパ230の設置高さHdを決定する方法について説明する。
なお、減衰ダンパ230の設置高さHdとは、水底242からの減衰ダンパ230までの高さのことである。
【0063】
まず、減衰係数Cを決定するにあたって、上記の範囲Rs及び範囲Rdを満足する範囲で、設置高さHdの初期値を設定する。
その後、減衰係数Cをパラメータとした複素固有値解析を実施して、図18に示すように、横軸に減衰ダンパ230の減衰係数C、縦軸に風車200の減衰定数hをとったグラフを複数の振動モードごとに作成する。図18に示すグラフの場合、1次振動モードから3次振動モードまでの解析を実施している。ここで、減衰定数hは、風車200の減衰性能を評価する値であり、数値が大きいほど振動応答が低減することを示す。
その後、設計上要求された減衰定数hをとる減衰係数CAをグラフから読み取り、その値を減衰ダンパ230の減衰係数Cとする。設計上要求された減衰定数hは、例えば1%以上20%以下、好ましくは5%以上15%以下、更に好ましくは5%以上10%以下とされる(第1実施形態と同様の理由)。
【0064】
減衰係数Cを決定したら、次に、設置高さHdをパラメータとした複素固有値解析を実施する。なお、設置高さHdは、範囲Rs及び範囲Rdを満足する値であることは言うまでもない。
これによって、決定された減衰係数Cにおいて最も減衰を付加できる設置高さHdを決定することができる。すなわち、最適な減衰ダンパ230の設置高さHdを決定することができる。
【0065】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
ロータ211の直径Drは160m以上とされ、ハブ高さHhは水面244から150m以上とされているので、減衰ダンパ230を設置することができる水面244よりも上方のタワー213の部分(範囲)を大きく確保することができる。このため、腹の位置が高さ方向に異なる複数の振動モードに対応するように、高さ方向の位置が異なる複数の減衰ダンパ230を設置しやすくなる。
【0066】
また、減衰ダンパ230を、水面244の上方10mの位置からロータ211の下端の下方5mの位置までの範囲に設けることで、海水暴露の影響を低減しつつ減衰ダンパ230とロータ211との干渉を回避することができる。
【0067】
また、減衰ダンパ230を、水底242から0.15×Hh[m]以上、かつ、0.45×Hh[m]以下の範囲に設けることで、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0068】
[第3実施形態]
以下、本開示の第3実施形態に係る減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムについて、図18図23及び図24を参照して説明する。
本実施形態は、第1実施形態に対してタワー313の基礎の形態が異なり、その他の点においては共通とされている。このため、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を以下の説明及び/又は図中に付すのみとする。
【0069】
[風車の構成について]
図23に示すように、タワー313は、下端側の部分(基礎部分313c)が地盤341に埋め込まれている。また、風車本体310は、直接的に地面342に対して着床・自立している。言い換えれば、風車300は、陸上風車とされている。
なお、図24には、図23に示されている風車300の振動モデルの例が示されている。
【0070】
風車本体310は、ロータ311の直径Drに対して、ロータ311の回転中心の高さ(ハブ高さHh)が地面342から0.72×Dr[m]以上とされている。
【0071】
この場合において、減衰ダンパ330の設置高さHdの下限は、地面342から0.20×Hh[m]以上とされている。
なお、減衰ダンパ330の設置高さHdの上限は、ロータ311との干渉を回避できる位置や風車300のメンテナンス性を考慮した位置とされている。具体例としては、減衰ダンパ330の設置高さHdの上限は、ロータ311の下端の下方数m(例えば、下端から5m、好ましくは7m、更に好ましくは10m)の位置とされている。
【0072】
ジャケット320のレグ部321は、下端側の部分(基礎部分321c)が地盤341に埋め込まれている。
ここで、レグ部321の基礎部分321cは、タワー313の基礎部分313cと一体化している。具体的には、レグ部321の基礎部分321cは、基礎連結部313dを介してタワー313の基礎部分313cと連結されることで一体化している。
【0073】
[風車の設計方法について]
次に、減衰ダンパ330の減衰係数C及び減衰ダンパ330の設置高さHdを決定する方法について説明する。
なお、減衰ダンパ330の設置高さHdとは、地面342からの減衰ダンパ330までの高さのことである。
【0074】
まず、減衰係数Cを決定するにあたって、地面342から0.20×Hh[m]以上の範囲で、設置高さHdの初期値を所定の値に設定する。
その後、減衰係数Cをパラメータとした複素固有値解析を実施して、図18に示すように、横軸に減衰ダンパ330の減衰係数C、縦軸に風車300の減衰定数hをとったグラフを複数の振動モードごとに作成する。図18に示すグラフの場合、1次振動モードから3次振動モードまでの解析を実施している。ここで、減衰定数hは、風車300の減衰性能を評価する値であり、数値が大きいほど振動応答が低減することを示す。
その後、設計上要求された減衰定数hをとる減衰係数CAをグラフから読み取り、その値を減衰ダンパ330の減衰係数Cとする。設計上要求された減衰定数hは、例えば1%以上20%以下、好ましくは5%以上15%以下、更に好ましくは5%以上10%以下とされる(第1実施形態と同様の理由)。
【0075】
減衰係数Cを決定したら、次に、設置高さHdをパラメータとした複素固有値解析を実施する。なお、設置高さHdは、地面342から0.20×Hh[m]以上の範囲であることは言うまでもない。
これによって、決定された減衰係数Cにおいて最も減衰を付加できる設置高さHdを決定することができる。すなわち、最適な減衰ダンパ330の設置高さHdを決定することができる。
【0076】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
ハブ高さHhを0.72×Dr[m]以上として、減衰ダンパ330の設置高さHdを地面から0.20×Hh[m]以上とすることで、2次振動モード及び3次振動モード(図22の例も参照)に対して有効な減衰を付加することができる。
【0077】
また、ハブ高さHhが1.2×Dr[m]以上とされたハイタワー風車では、空中343の高い位置で風力を受けることができるため発電効率の向上が見込めるが、このようなハイタワー風車において、地面342から0.20×Hh[m]以上の位置に減衰ダンパ330を設置することで、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0078】
また、タワー313の基礎部分313cとレグ部321の基礎部分321cとが、地盤341の中で一体化している場合、振動時に生じる転倒モーメントに抗いやすくなる。
【0079】
以上の通り説明した各実施形態に係る減衰システムを備えている風車、その設計方法及び減衰システムは、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係る風力発電用風車(100,200,300)は、風力を受けるブレード(111b,211b,311b)を含むロータ(111,211,311)、及び、該ロータが頂部に設置されたタワー(113,213,313)を有している風車本体(110,210,310)と、減衰システムと、を備え、前記減衰システムは、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部(121,221,321)を有しているジャケット(120,220,320)と、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構(130,230,330)と、を有している。
【0080】
本態様に係る風力発電用風車によれば、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、減衰システムと、を備え、減衰システムは、水底又は地面から立設するとともにタワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、ジャケットとタワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構を有しているので、風車本体の振動応答とジャケットの振動応答との差を利用して、減衰機構でエネルギを吸収することができる。これによって、風車本体に大規模な改造を行うことなく、風車本体に減衰を付加することができる。
また、風車本体に減衰を付加することで、設計地震動が大きい地点・地域に風力発電用風車を建設することができるようになる。
また、風車本体に減衰を付加することで、風車本体の剛性を必要以上に大きくする必要がなくなり、風車本体や基礎のサイズ及び重量を低減することができ、製造/建設コストの低減や工期の短縮を図ることができる。
また、減衰機構はタワーの外部に接続されているため、タワー内部に制振装置を設置した場合と比較して、風車本体のサイズや重量の増大を抑制することができる。
また、例えば減衰機構をオイルダンパとした場合、パッシブ制御が可能となり、アクチュエータ等によるアクティブ制御が不要となる。
また、特性の異なる減衰機構と取り替えることで、風力発電用風車としての減衰性能を変更することができる。
減衰機構としては、オイルダンパや鋼材ダンパが例示される。
【0081】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車(100)において、前記レグ部(121)は、前記水底から立設し、前記タワーは、下端が前記水底から離間し、前記ジャケットは、前記タワーを支持する風車支持部を有し、前記減衰機構は、水面より上方で前記ジャケットと前記タワーとを接続している。
【0082】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車(200)において、前記レグ部(221)は、前記水底から立設し、前記タワーは、前記水底から立設し、前記減衰機構は、水面より上方で前記ジャケットと前記タワーとを接続している。
【0083】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車(200)において、前記ロータの直径は、160m以上とされ、前記ロータの回転中心の高さは、水面から150m以上とされている。
【0084】
本態様に係る風力発電用風車によれば、ロータの直径は、160m以上とされ、ロータの回転中心の高さは、水面から150m以上とされているので、減衰機構を設置することができる水面よりも上方のタワーの部分(範囲)を大きく確保することができる。このため、腹の位置が高さ方向に異なる複数の振動モードに対応するように、高さ方向の位置が異なる複数の減衰機構を設置しやすくなる。
【0085】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車において、前記減衰機構は、水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲に設けられている。
【0086】
本態様に係る風力発電用風車によれば、減衰機構は、水面の上方10mの位置からロータの下端の下方5mの位置までの範囲に設けられているので、海水暴露の影響を低減しつつロータとの干渉を回避することができる。
【0087】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車において、前記水底から前記ロータの回転中心までの高さをHhとしたとき、前記減衰機構は、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲に設けられている。
【0088】
本態様に係る風力発電用風車によれば、水底からロータの回転中心までの高さをHhとしたとき、減衰機構は、水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲に設けられているので、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0089】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車(300)において、前記レグ部(321)は、前記地面から立設し、前記タワー(313)は、前記地面から立設し、前記ロータの直径をDr、前記地面から前記ロータの回転中心までの高さをHh、前記減衰機構の高さをHdとしたとき、Hhは、0.72Dr以上とされ、Hdは、前記地面から0.20Hh以上とされている。
【0090】
本態様に係る風力発電用風車によれば、レグ部は、地面から立設し、タワーは、地面から立設し、ロータの直径をDr、地面からロータの回転中心までの高さをHh、減衰機構の高さをHdとしたとき、Hhは、0.72Dr以上とされ、Hdは、地面から0.20Hh以上とされているので、特に2次振動モード及び3次振動モードに対して有効な減衰を付加することができる。
【0091】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車において、Hhは、1.2Dr以上とされている。
【0092】
本態様に係る風力発電用風車によれば、Hhは、1.2Dr以上とされているので、減衰機構を設置することができるタワーの部分(範囲)を大きく確保することができる。このため、腹の位置が高さ方向に異なる複数の振動モードに対応するように、高さ方向の位置が異なる複数の減衰機構を設置しやすくなる。
【0093】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車において、前記タワーの基礎部分(313C)とレグ部の基礎部分(321c)とは、互いに接続されている。
【0094】
本態様に係る風力発電用風車によれば、タワーの基礎部分とレグ部の基礎部分とが、互いに接続されることで一体化している場合、振動時に生じる転倒モーメントに抗いやすくなる。
【0095】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車(100,200,300)において、前記減衰機構は、水平方向に沿った所定平面内に複数設けられている。
【0096】
本態様に係る風力発電用風車によれば、減衰機構は、水平方向に沿った所定平面内に複数設けられているので、減衰機構ひとつ当たりの大型化を回避しつつ、減衰システム全体として十分な減衰性能を確保することができる。
【0097】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車において、前記所定平面は、高さ方向に異なる複数の位置に設定されている。
【0098】
本態様に係る風力発電用風車によれば、所定平面は、高さ方向に異なる複数の位置に設定されているので、腹の位置が高さ方向に異なる複数の振動モードに対応することができる。例えば、上方に設けられた減衰機構のセットは主として1次振動モードに有効に作用して、下方に設けられた減衰機構のセットは主として2次振動モードや3次振動モードに有効に作用する。
【0099】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法は、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体と、減衰システムと、を備え、前記減衰システムは、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、を有している風力発電用風車の設計方法であって、前記水底から前記ロータの回転中心までの高さをHh、前記減衰機構の設置高さをHd、前記減衰機構の減衰係数をC、前記風力発電用風車の減衰定数をhとしたとき、Hdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する。
【0100】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法において、前記レグ部は、前記水底から立設し、前記タワーは、下端が前記水底から離間し、前記ジャケットは、前記タワーを支持する風車支持部を有し、水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する。
【0101】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法において、前記タワーは、前記水底から立設し、前記ロータの直径は、160m以上とされ、前記ロータの回転中心の高さは、水面から150m以上とされ、前記水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する。
【0102】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法において、前記レグ部は、前記地面から立設し、前記タワーは、前記地面から立設し、前記ロータの直径をDrとしたとき、Hhは、0.72Dr以上とされ、前記地面から0.20Hh以上の範囲でHdを所定の値に設定した場合において、Cをパラメータとしたhを求めて、所定のhとなるCを決定する。
【0103】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法は、Cの数値を設定した場合において、hが最大となるHdを決定する。
【0104】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法は、Cの数値を設定した場合において、水面の上方10mの位置から前記ロータの下端の下方5mの位置までの範囲、かつ、前記水底から0.15Hh以上0.45Hh以下の範囲でHdをパラメータとしたhを求めて、hが最大となるHdを決定する。
【0105】
また、本開示の一態様に係る風力発電用風車の設計方法は、Cの数値を設定した場合において、前記地面から0.20Hh以上の範囲でHdをパラメータとしたhを求めて、hが最大となるHdを決定する。
【0106】
また、本開示の一態様に係る減衰システムは、風力を受けるブレードを含むロータ、及び、該ロータが頂部に設置されたタワーを有している風車本体に取り付けられる減衰システムであって、水底又は地面から立設するとともに前記タワーの側方に位置する複数のレグ部を有しているジャケットと、前記ジャケットと前記タワーとを接続するとともに減衰機能を発揮する減衰機構と、を有している。
【符号の説明】
【0107】
100 風車(風力発電用風車)
110 風車本体
111 ロータ
111a ハブ
111b ブレード
112 ナセル
113 タワー
113a 接続部
113b 延長部
120 ジャケット
121 レグ部
122 風車支持部
123 連結部材
130 減衰ダンパ(減衰機構)
141 地盤
142 水底
143 水中
144 水面
145 空中
200 風車(風力発電用風車)
210 風車本体
211 ロータ
211a ハブ
211b ブレード
212 ナセル
213 タワー
220 ジャケット
221 レグ部
230 減衰ダンパ(減衰機構)
241 地盤
242 水底
243 水中
244 水面
245 空中
300 風車(風力発電用風車)
310 風車本体
311 ロータ
311a ハブ
311b ブレード
312 ナセル
313 タワー
313c 基礎部分
313d 基礎連結部
320 ジャケット
321 レグ部
321c 基礎部分
330 減衰ダンパ(減衰機構)
341 地盤
342 地面
343 空中
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