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特開2023-143107供試魚試験支援システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143107
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】供試魚試験支援システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230928BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N33/48 N
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050313
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤原 尚美
(72)【発明者】
【氏名】豊久 志朗
(72)【発明者】
【氏名】眞野 文宏
【テーマコード(参考)】
2G045
5L049
【Fターム(参考)】
2G045AA29
2G045CB19
2G045JA01
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】供試魚に与える負担を極力小さくして迅速に個体を識別しながら正確な供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】供試魚試験支援システム1において、サーバ10は、複数の供試魚Fについて個体識別情報に関連付けて試験実績情報を格納する情報データベース16と、処置の実施に先立って複数の供試魚Fのうちの当該処置の対象となる対象供試魚Fを特定して、当該対象供試魚Fの個体識別情報を情報データベース16から抽出して利用者に提示する対象供試魚特定手段11と、特定された対象供試魚Fに実施された処置実施結果を当該対象供試魚Fの試験実績情報として情報データベース16に格納する試験実績情報更新手段13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の供試魚夫々に対して所定の処置を行う供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システムであって、
複数の供試魚について個体識別情報に関連付けて試験実績情報を格納する情報データベースと、
前記処置の実施に先立って前記複数の供試魚のうちの当該処置の対象となる対象供試魚を特定して、当該対象供試魚の個体識別情報を前記情報データベースから抽出して利用者に提示する対象供試魚特定手段と、
前記対象供試魚特定手段で特定された前記対象供試魚に実施された処置実施結果を当該対象供試魚の試験実績情報として前記情報データベースに格納する試験実績情報更新手段と、を備えた供試魚試験支援システム。
【請求項2】
前記情報データベースが、複数の供試魚について個体識別情報に関連付けて試験計画情報を格納し、
前記対象供試魚特定手段で特定された前記対象供試魚の試験計画情報を前記情報データベースから抽出して利用者に提示する試験計画情報提示手段を備えた請求項1に記載の供試魚試験支援システム。
【請求項3】
前記個体識別情報が、供試魚の外観、重量、性別の少なくとも1つに関する供試魚特徴情報を含むと共に、
前記対象供試魚の供試魚特徴情報を取得する供試魚特徴情報取得手段を備え、
前記対象供試魚特定手段が、供試魚特徴情報取得手段により取得した供試魚特徴情報と前記情報データベースに格納された前記複数の供試魚夫々の個体識別情報に含まれる供試魚特徴情報とを比較して、前記対象供試魚を特定する請求項1又は2に記載の供試魚試験支援システム。
【請求項4】
前記処置が、前記対象供試魚を保持具に誘導して保持させる誘導保持操作を行って当該保持具により保持した対象供試魚に対して被験物質を投与する形態で行われる処置であり、
前記誘導保持操作の実行を検知する誘導保持操作検知手段を備える請求項1~3の何れか1項に記載の供試魚試験支援システム。
【請求項5】
前記保持具から試験後水槽への対象供試魚の投入を前記処置の実施完了として検知する処置完了検知手段を備える請求項1~4の何れか1項に記載の供試魚試験支援システム。
【請求項6】
前記対象供試魚特定手段が、前記対象供試魚となる複数の供試魚の夫々を一括で特定するものとして構成されている請求項1~5の何れか1項に記載の供試魚試験支援システム。
【請求項7】
コンピュータシステムにより実行されて当該コンピュータシステムを請求項1に記載の供試魚試験支援システムとして機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の供試魚夫々に対して所定の処置を行う供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼブラフィッシュが実験対象動物として非常に注目されている。ゼブラフィッシュのような比較的小さな供試魚を対象とし、当該供試魚に対して被験物質を投与する供試魚試験では、他の哺乳類動物などを対象とする試験とは異なり、供試魚全体をスポンジなどの保持具により挟み込んで保持し、当該保持された供試魚に対して経口投与等により被験物質が投与される。そして、このような供試魚試験において供試魚を保持具で保持するにあたり、供試魚に対するダメージを最小限に抑えて、つまり、体表面などに損傷を与えず、火傷の症状を引き起こすこともなく、できるだけ優しく供試魚を保持することが重要な課題となる。更に、供試魚を保持するまでの過程に関しても、供試魚に与えるダメージを極力抑制する必要がある。
そこで、本発明者らは、供試魚に対するダメージを極力抑制して、供試魚を所定の姿勢で確実に保持するための供試魚処置設備を提案している(例えば、非特許文献1を参照。)。かかる供試魚処置設備を用いることで、対象供試魚を保持具に誘導して保持させる誘導保持操作を行って当該保持具により保持した対象供試魚に対して被験物質を投与する形態で供試魚試験を実施することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Naomi Fujiwara,Shinichi Nonaka,Yukiko Yanoue,Masao Tomiki,Miki Nishi,Shiro Toyohisa,Osamu Saika,Improvement of a fish holding device for oral administration to zebrafish,Fundamental Toxicological Sciences,[online],2021 Volume8 Issue6 Pages183-187,インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fts/8/6/8_183/_article>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような供試魚試験は、一般的に複数の供試魚に対して実施され、供試魚によって被験物質の種類や投与量を異ならせる場合がある。よって、複数の供試魚のうちの一つを捕獲し、その捕獲した供試魚に対して予め計画された被験物質を予め計画された投与量で正確に投与するためには、その捕獲した供試魚の個体を正確かつ迅速に識別して計画を確認する必要があるが、その識別や確認に時間や手間がかかりすぎると、供試魚の負担が大きくなり、その結果、被験物質の投与以外の影響が大きくなって信頼性が高い試験結果を得ることができない虞がある。
また、従来の供試魚試験において、供試魚の個体の識別は、供試魚の鰭にタグを取り付けたり魚体に入れ墨を入れるなどを行う場合があるが、このような方法では供試魚に甚大な負担を与えてしまい望ましくない。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、供試魚に対して所定の処置を行う供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システムにおいて、供試魚に与える負担を極力小さくして迅速に個体を識別しながら正確な供試魚試験の実施を支援することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、複数の供試魚夫々に対して所定の処置を行う供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システムであって、
複数の供試魚について個体識別情報に関連付けて試験実績情報を格納する情報データベースと、
前記処置の実施に先立って前記複数の供試魚のうちの当該処置の対象となる対象供試魚を特定して、当該対象供試魚の個体識別情報を前記情報データベースから抽出して利用者に提示する対象供試魚特定手段と、
前記対象供試魚特定手段で特定された前記対象供試魚に実施された処置実施結果を当該対象供試魚の試験実績情報として前記情報データベースに格納する試験実績情報更新手段と、を備えた点にある。
また、本発明に係るコンピュータプログラムの特徴構成は、コンピュータシステムにより実行されて当該コンピュータシステムを本発明に係る供試魚試験支援システムとして機能させる点にある。
【0006】
本構成によれば、上記情報データベースが、複数の供試魚夫々の試験実績情報を当該供試魚の個体識別情報に関連付けて格納しているので、それらの情報を適宜抜き出して確認することができる。そして、水槽から捕獲された対象供試魚に対する被験物質投与の実施に先立って、上記対象供試魚特定手段により、迅速に対象供試魚が特定されて、その個体識別情報が情報データベースから自動的に抽出され、当該対象供試魚に対する被験物質投与を行う利用者に提示される。よって、利用者は、提示された個体識別情報を参照しながらその個体識別情報が示す対象供試魚に対して予め計画された内容で所定の処置を行うことができる。そして、そのように実施された処置実施結果は上記試験実績情報更新手段により試験実績情報として情報データベースに格納されるので、当該情報データベースから複数の供試魚夫々の試験実績情報を適宜抜き出して検証することができる。
従って、本発明により、供試魚に対して所定の処置を行う供試魚試験の実施を支援する供試魚試験支援システムにおいて、供試魚に与える負担を極力小さくして迅速に個体を識別しながら正確な供試魚試験の実施を支援することができる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記情報データベースが、複数の供試魚について個体識別情報に関連付けて試験計画情報を格納し、
前記対象供試魚特定手段で特定された前記対象供試魚の試験計画情報を前記情報データベースから抽出して利用者に提示する試験計画情報提示手段を備えた点にある。
【0008】
本構成によれば、上記情報データベースが、上述した試験実績情報に加えて、複数の供試魚夫々の試験計画情報を当該供試魚の個体識別情報に関連付けて格納しているので、それらの情報を適宜抜き出して確認することができる。そして、上記試験計画情報提示手段により、上記対象供試魚特定手段により特定された対象供試魚の試験計画情報が情報データベースから自動的に抽出されて、当該対象供試魚に対する被験物質投与を行う利用者に提示される。よって、利用者は、提示された試験計画情報を参照することで、対象供試魚に対して予め計画された試験計画情報を正確且つ迅速に知ることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記個体識別情報が、前記個体識別情報が、供試魚の外観、重量、性別の少なくとも1つに関する供試魚特徴情報を含むと共に、
前記対象供試魚の供試魚特徴情報を取得する供試魚特徴情報取得手段を備え、
前記対象供試魚特定手段が、供試魚特徴情報取得手段により取得した供試魚特徴情報と前記情報データベースに格納された前記複数の供試魚夫々の個体識別情報に含まれる供試魚特徴情報とを比較して、前記対象供試魚を特定する点にある。
【0010】
本構成によれば、複数の供試魚夫々の外観、重量、性別の少なくとも1つに関する供試魚特徴情報を個体識別情報として予め上記情報データベースに格納しておくことができる。そして、上記供試魚特徴情報取得手段により所定の処置が施される対象供試魚の供試魚特徴情報を自動的に取得して、上記対象供試魚特定手段により、その取得した供試魚特徴構成を情報データベースに格納された複数の供試魚夫々の個体識別情報に含まれる供試魚特徴情報と照合する形態で、対象供試魚を正確かつ迅速に特定することができる。
更に、上記供試魚特徴情報としては、供試魚の体形や顔の形や目の位置や柄などの外観に関する外観情報とすることができる。この場合、水槽から捕獲した対象供試魚の外観を撮像する撮像手段を設け、上記対象供試魚特定手段により、その撮像画像データから上記外観情報を得て情報データベースに格納された複数の供試魚夫々の外観情報と比較する形態で、対象供試魚を特定することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記処置が、前記対象供試魚を保持具に誘導して保持させる誘導保持操作を行って当該保持具により保持した対象供試魚に対して被験物質を投与する形態で行われる処置であり、
前記誘導保持操作の実行を検知する誘導保持操作検知手段を備える点にある。
【0012】
本構成によれば、供試魚に対するダメージを極力抑制して、供試魚を所定の姿勢で確実に保持するための供試魚処置設備を用い、対象供試魚を保持具に誘導して保持させる誘導保持操作を行って当該保持具により保持した対象供試魚に対して所定の処置を行う形態で供試魚試験を実施する場合において、その誘導保持操作を上記誘導保持操作検知手段により検知することができる。更に、この誘導保持操作検知手段で誘導保持操作を検知した結果を試験実績情報として情報データベースに格納すれば、利用者は、例えば過去に供試魚に対する誘導保持操作の実施累積回数などを確認して、供試魚の負担等を的確に認識することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記保持具から試験後水槽への対象供試魚の投入を前記処置の実施完了として検知する処置完了検知手段を備える点にある。
【0014】
本構成によれば、上記処置完了検知手段を備えることで、保持具に保持された対象供試魚に対する所定の処置の実施完了した際に、それに続く対象供試魚の試験後水槽への投入を、当該処置の実施完了として検知することができる。更に、この処置の実施完了の検知と共に、利用者から処置の実施状況等を示す情報を試験実績情報として情報データベースに格納すれば、利用者は、例えば過去に供試魚に対して実施された処置の実施状況等を確認して、供試魚の状況等を的確に認識することができる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記対象供試魚特定手段が、前記対象供試魚となる複数の供試魚の夫々を一括で特定するものとして構成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、上記対象供試魚特定手段により、対象供試魚となる複数の供試魚の夫々が一括で特定され、その複数の供試魚夫々の個体識別情報が情報データベースから自動的に抽出され、利用者に提示される。よって、利用者は、後に対象供試魚とされて被験物質の投与が行われる予定の複数の供試魚の夫々の個別識別情報を事前に把握することができ、例えば、当該複数の供試魚に、非常によく似ていて互いに識別できない供試魚が混じっている、又は、被験物質の投与対象ではない供試魚が誤って混じっているという場合などに、そのような供試魚を被験物質の投与前の段階で予め除外するなどの対応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】供試魚試験設備に対して設置された供試魚試験支援システムの概略構成を示す図
図2】供試魚試験の実施の流れと当該試験に対して供試魚試験支援システムが実行する処理の流れとを示すフローチャート
図3】保持具に保持された供試魚に対する経口投与の実施状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の供試魚試験支援システム(以下「本支援システム」と呼ぶ。)1は、複数の供試魚の夫々に対して所定の処置として被験物質を経口投与する被験物質経口投与を行うための試験設備20に付設され、当該被験物質投与を行う供試魚試験の実施を支援するためのシステムとして構成されている。
尚、本実施形態では、所定の処置として供試魚に対して被験物質の経口投与を行う例を説明するが、本発明において適用可能な所定の処置は、このような経口投与に限るものではなく、供試魚への注射により被験物質を当該供試魚に投与する非経口投与や供試魚に対する各種生体観察や採血などのような種々の処置に適用することができる。
【0019】
〔供試魚試験・試験設備〕
まず、供試魚試験及びそれを実施するための試験設備20の概要を、図1及び図3に基づいて説明する。尚、図1の下方には、試験設備20を用いた供試魚試験の実施の状態を示しており、その図において白抜き矢印は対象供試魚Fの移送状態を示している。また、図3には、保持具28に保持された供試魚に対する経口投与の実施状態を示している。
【0020】
供試魚試験は、ゼブラフィッシュなどのような生体実験用の比較的小さな供試魚Fを試験対象として、当該試験対象とした対象供試魚Fに対して予め計画された所定の被験物質を予め計画された所定の投与量で直接経口投与する試験である。
そして、図3に示すように、詳細については後述する誘導保持操作の実行により保持具28の保持用溝部28aに保持された対象供試魚Fは、口あるいは頭のみが保持用溝部28aから先端側へ突出する状態となり、その状態の対象供試魚Fに対してシリンジ40から被験物質が直接経口投与される。
【0021】
シリンジ40の針部40aの先端には、可撓性のチューブである経口ゾンデ41が接続されている。そして、その経口ゾンデ41が、対象供試魚Fの口腔に挿入されて、シリンジ40に封入された被験物質が針部40a及び経口ゾンデ41を通じて、対象供試魚Fの胃内に供給される。この際、対象供試魚Fの鰓は、保持用溝部28aで挟持されて塞がれた状態となる。従って、直接経口投与された被験物質が鰓から対象供試魚Fの体外へ漏れることが防止されて、被験物質の略全量が対象供試魚Fに摂取されることになる。尚、被験物質は、液状のものに限らず、ゼリー状やペースト状や固形のものであってもよく、また、被験物質を餌に混入したもの、被験物質を微小なカプセルに封じたもの、又は試験物質をコーティングしたものを、水などに分散液に分散させた状態で対象供試魚Fに直接経口投与しても構わない。
【0022】
図1に示すように、試験設備20には、対象供試魚Fを保持具28に誘導して当該保持具28に形成された保持用溝部28aに保持させる誘導保持操作を行うための誘導装置26が設けられている。
この誘導装置26は、漏斗状の投入部26aから排出部26cに亘って下方へ傾斜して延びる傾斜誘導路26bを有する。投入部26aに対象供試魚Fが水と一緒に投入され、当該投入部26aに投入された対象供試魚Fが水と一緒に傾斜誘導路26bを通じて排出部26cに誘導され、当該排出部26cに誘導された対象供試魚Fが水と一緒に保持具28の保持用溝部28aに排出されて、図3に示すように、当該保持用溝部28aに対象供試魚Fが保持される。
【0023】
誘導装置26の排出部26cに取り付けられた保持具28の前後には、保持用溝部28aの前後を封鎖する封鎖具29が夫々設置されている。そして、保持具28は封鎖具29と共に、全体が平面視で矩形に形成され、柔軟性、透水性、および、保水性を有する材料、例えば、スポンジで構成されている。
誘導装置26の投入部26aには、対象供試魚Fが当該投入部26aを通過したときに信号を出力する近接センサ27が設けられている。
【0024】
試験設備20は、上記保持具28及び上記誘導装置26を他の設備構成と共に一体化して構成されている。即ち、試験設備20には、誘導装置26の投入部26aへの投入前の対象供試魚Fを収容する試験前水槽21と、保持具28による保持から開放された対象供試魚Fを収容する試験後水槽30とが設けられている。
【0025】
更に、試験前水槽21と誘導装置26の投入部26aとの近傍には、試験前水槽21から取り出した対象供試魚Fを、投入部26aに投入する前に一時的に収容する例えば透明のビーカなどの計量水槽22が設けられている。
この計量水槽22は、計量装置24に載置されており、この計量装置24は、計量水槽22に収容された対象供試魚Fの重量測定などを行って、その測定結果を出力する。
更に、計量水槽22に収容されている対象供試魚Fの外観を撮像するカメラ25が設置されている。カメラ25は、対象供試魚Fの外観を撮像して、その撮像して得られた画像データを出力する。
【0026】
〔供試魚試験支援システム〕
次に、上述したような試験設備20に付設される本支援システム1の詳細構成について、図1,2に基づいて説明する。
【0027】
本支援システム1は、利用者に対して各種情報を表示する形態で提示するディスプレイ18や、利用者からの各種情報の入力操作を受け付ける入力操作部19を備えると共に、詳細については後述するが、各種情報を格納する情報データベース16、供試魚特徴情報取得手段X、誘導保持操作検知手段Y、処置完了検知手段Z、及びこれらにアクセス可能で各種機能部として機能するコンピュータシステムであるサーバ10を備えて構成されている。そして、そのサーバ10が本発明に係る所定のコンピュータプログラムを実行することにより、後述する対象供試魚特定手段11、試験計画情報提示手段12、試験実績情報更新手段13として機能する。尚、本発明に係るコンピュータプログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体やインターネット等のデータ伝送媒体を介して、本支援システム1をハードウェア的に構成するコンピュータシステムがアクセス可能な記録装置内にインストールされて実用に供される。
尚、入力操作部19としては、一般的なキーボードなどとすることができるが、音声認識を用いて利用者がハンズフリーで入力操作を行うものとして構成することもできる。
【0028】
上記供試魚特徴情報取得手段Xは、対象供試魚Fの供試魚特徴情報を取得する手段であり、計量水槽22に収容された対象供試魚Fの重量測定などを行う計量装置24や、計量水槽22に収容されている対象供試魚Fの外観を撮像するカメラ25が、当該供試魚特徴情報取得手段Xとして機能する。即ち、計量装置24は、対象供試魚Fの重量測定結果を上記供試魚特徴情報としてサーバ10に送信する。カメラ25は、対象供試魚Fの外観を撮像して得られた画像データを上記供試魚特徴情報としてサーバ10に送信する。
尚、本実施形態において、上記供試魚特徴情報を、供試魚の重量測定結果や供試魚の外観の撮像画像データとしているが、供試魚の外観、重量、性別の少なくとも1つに関するものであれば別の供試魚特徴構成を採用することができる。また、供試魚特徴情報の取得方法についても適宜変更可能である。
【0029】
誘導保持操作検知手段Yは、対象供試魚Fを誘導装置26により保持具28に誘導して保持させる誘導保持操作の実行を検知する手段であり、対象供試魚Fが誘導装置26の投入部26aを通過したときに信号を出力する近接センサ27が、当該誘導保持操作検知手段Yとして機能する。即ち、近接センサ27は、誘導装置26において投入部26aに対象供試魚Fが投入されて上記誘導保持操作が行われたことを検知して、それを認識可能な誘導保持操作検知信号をサーバ10に送信する。すると、誘導保持操作検知信号を受信したサーバ10は、例えば対象供試魚Fに対する誘導保持操作の実施累積回数等をカウントし、当該カウントされた実施累積回数等を試験実績情報として、情報データベース16に格納することができる。
尚、本実施形態では、誘導保持操作検知手段Yは、誘導装置26の投入部26aにおける対象供試魚Fの通過を近接センサ27で検知ことにより誘導保持操作の実行を検知したが、別の方法で誘導保持操作の実行を検知しても構わない。また、利用者が、入力操作部19により誘導保持操作の実行完了を入力するように構成しても構わない。
【0030】
処置完了検知手段Zは、保持具28から試験後水槽30への対象供試魚Fの投入を経口投与の実施完了として検知する手段であり、試験後水槽30における供試魚の収容数の増加を検知する画像センサ32が、当該処置完了検知手段Zとして機能する。即ち、画像センサ32は、試験後水槽30内を撮像した画像データの画像解析を行って、試験後水槽30への対象供試魚Fの投入により試験後水槽30における供試魚の収容数の増加を検知した場合に、経口投与実施完了検知信号をサーバ10に送信する。経口投与実施完了検知信号を受信したサーバ10は、例えば利用者から経口投与の実施状況の入力を促して、当該入力された実施状況を試験実績情報として、情報データベース16に格納することができる。
【0031】
情報データベース16は、複数の供試魚について個体識別情報に関連付けて試験計画情報と試験実績情報とを格納する。
個体識別情報は、供試魚毎に付された識別IDに加えて、供試魚の特徴を示す供試魚特徴情報として、供試魚の外観に関する外観情報を示す画像データや重量や性別などを含む。
試験計画情報は、供試魚に対して予め計画された被験物質の種類や投与量や投与回数などに関する情報である。
試験実績情報は、供試魚に対する被験物質の投与の成否や状況、供試魚に対して実際に投与された被験物質の種類や投与量などに関する情報である。
外観情報は、供試魚の体形や顔の形や目の位置や柄などの外観に関する情報である。例えば、顔の形状に対する目の位置、顔の先端とえらぶたの後端との位置に対する目の位置、体長或いは体高に対するえらぶたの位置、えらぶたの形状、あごの形状、体高と体長の比率、側面の縞模様の太さ、縞模様の形状、所定のひれに対する縞模様の位置などを、上記外観情報とすることができる。
【0032】
上記対象供試魚特定手段11は、複数の供試魚のうちの試験の対象となる対象供試魚Fに対する被験物質経口投与の実施に先立って、当該対象供試魚Fを特定して、当該対象供試魚Fの個体識別情報を情報データベース16から抽出して利用者に提示する手段として構成されている。更に、対象供試魚特定手段11は、被験物質経口投与に供される対象供試魚Fの供試魚特徴情報を取得し、当該取得した供試魚特徴情報と情報データベース16に格納された個体識別情報に含まれる供試魚特徴情報とを比較して、対象供試魚Fを特定するように構成されている。
【0033】
即ち、図2に示すように、利用者は、試験前水槽21から対象供試魚Fを捕獲して計量水槽22に投入すると(ステップ#11)、入力操作部19により対象供試魚特定指令を入力する(ステップ#12)。すると、対象供試魚特定手段11は、その対象供試魚Fの供試魚特徴情報として、供試魚特徴情報取得手段Xである計量装置24で計測された対象供試魚Fの重量の計測結果や、供試魚特徴情報取得手段Xであるカメラ25で撮像して得られた対象供試魚Fの外観の画像データを自動的に取得する(ステップ#21)。
【0034】
そして、対象供試魚特定手段11は、このように取得した対象供試魚Fの供試魚特徴情報を、情報データベース16に格納された複数の供試魚夫々の個体識別情報に含まれる供試魚特徴情報と照合する形態で正確かつ迅速に対象供試魚Fを特定する(ステップ#22)。
例えば、対象供試魚特定手段11は、カメラ25で撮像して得られた画像データに含まれる対象供試魚Fの外観情報と、情報データベース16に上記供試魚特徴情報として格納された複数の供試魚夫々の画像データに含まれる外観情報とを比較する。そして、外観情報について一致点が多い供試魚を上記対象供試魚Fとして特定し、その対象供試魚Fの個体識別情報を情報データベース16から抽出し、当該抽出した対象供試魚Fの個体識別情報をディスプレイ18に表示させるなどして利用者に提示する。
【0035】
また、上記対象供試魚特定手段11は、供試魚特徴情報取得手段Xで取得した対象供試魚Fの供試魚特徴情報により、情報データベース16に当該供試魚Fの個体識別情報として格納されている供試魚特徴情報を、供試魚特徴情報取得手段Xで供試魚特徴情報を取得する毎に逐次又は所定のタイミングで定期的に更新することもできる。このことで、情報データベース16に格納されている供試魚特徴情報は逐次新しいものに更新されるので、成長や被験物質投与の影響により供試魚の外観情報が変化することに起因する特定精度の低下を最小限として、上記対象供試魚特定手段11による対象供試魚Fの特定を一層正確に行うことができる。
【0036】
一方、このステップ#22において、対象供試魚特定手段11は、供試魚特徴情報取得手段Xにより取得された供試魚特徴情報により対象供試魚Fを特定できなかった場合に、当該対象供試魚Fが情報データベース16に個体識別情報の登録がされていない新規の供試魚であると判定し、その旨を利用者に通知すると共に、利用者から当該対象供試魚Fの識別IDなどの個体識別情報の登録を受け付けることができる。
【0037】
上記試験計画情報提示手段12は、対象供試魚特定手段11で特定された対象供試魚Fの試験計画情報を情報データベース16から抽出して利用者に提示する手段として構成されている。
即ち、図2に示すように、上記ステップ#22にて対象供試魚Fが特定されると、上記試験計画情報提示手段12は、上記対象供試魚特定手段11で特定された対象供試魚Fに対して予め計画された被験物質の種類や投与量や投与回数などに関する試験計画情報を情報データベース16から抽出し(ステップ#23)、当該抽出した対象供試魚Fの試験計画情報をディスプレイ18に表示させるなどして利用者に提示する。尚、試験計画情報として提示する投与量については、予め計画された一定量でもよいが、計量装置24により計測された対象供試魚Fの重量に基づいて自動計算して決定したものとしても構わない。
【0038】
よって、利用者は、提示された試験計画情報をディスプレイ18で確認した上で(ステップ#13)、計量水槽22に収容されている対象供試魚Fを誘導装置26の投入部26aに投入する所謂誘導保持操作を実行する(ステップ#14)。すると、誘導保持操作検知手段Yである近接センサ27は、上記誘導保持操作の実行(ステップ#14)を検知して誘導保持操作検知信号をサーバ10に送信する(ステップ#23)。
そして、対象供試魚Fが保持された保持具28を誘導装置26の排出部26cから取り外して(ステップ#15)、保持具28に保持された対象供試魚Fに対して、上記確認した試験計画情報どおりに、予め計画された被験物質を予め計画された投与量で正確に投与することができる(ステップ#16)。 また、このように経口投与を行った後に、利用者は、保持具28に保持されていた対象供試魚Fを試験後水槽30に投入する(ステップ#17)。すると、処置完了検知手段Zである画像センサ32は、上記試験後水槽30への対象供試魚Fの投入(ステップ#17)を経口投与の実施完了として検知して経口投与実施完了検知信号をサーバ10に送信する(ステップ#26)。
【0039】
上記試験実績情報更新手段13は、例えば上記経口投与実施完了検知信号を受信した際に、対象供試魚特定手段11で特定された前記対象供試魚Fに実施された処置実施結果を前記試験実績情報として前記情報データベース16に格納する手段として構成されている。
即ち、対象供試魚Fに対して被験物質の投与を実施した利用者は、そのように実施した処置実施結果として、投与した被験物質の種類及び投与量や対象供試魚Fの状態などの被験物質投与結果などを入力操作部19により入力する(ステップ#18)。すると、上記試験実績情報更新手段13は、このように入力された被験物質投与結果を含む処置実施結果を、上記対象供試魚特定手段11で特定された対象供試魚Fの試験実績情報として情報データベース16に格納する(ステップ#27)。よって、利用者は、情報データベース16から複数の供試魚夫々の試験実績情報を適宜抜き出して検証することができる。
また、本実施形態において、利用者による被験物質投与結果の入力を、対象供試魚Fへの経口投与が完了して、当該対象供試魚Fが試験後水槽30に投入された後に実施するように構成したが、対象供試魚Fに対する経口投与時から試験後水槽30への投入時までの期間に、利用者が被験物質投与結果の入力を行うように構成しても構わない。この場合、利用者は、保持具28やシリンジ40を把持していることから、音声認識によりハンズフリーで被験物質投与結果の入力を行うように構成することが望ましい。
【0040】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0041】
(1)本実施形態では、複数の供試魚夫々の試験計画情報を情報データベース16に格納した上で、上記試験計画情報提示手段12により当該試験計画情報を抽出して利用者へ提示する構成を採用したが、このような構成を省略することもできる。その場合、利用者は、対象供試魚特定手段11で特定されて提示された対象供試魚Fの個体識別情報から本支援システム1とは別の手段で当該対象供試魚Fの試験計画情報を確認することができる。
【0042】
(2)本実施形態では、上記対象供試魚特定手段11を、計量水槽22に収容された対象供試魚Fを個別に特定するものとして構成したが、対象供試魚Fとなる複数の供試魚の夫々を一括で特定するものとして構成しても構わない。この場合、例えば、図1に示すように、試験前水槽21に収容されている複数の供試魚の外観を撮像するカメラ35が設置される。そして、このカメラ35は、供試魚特徴情報取得手段Xとして機能して、試験前水槽21に収容されている複数の供試魚の外観を撮像して得られた画像データを上記供試魚特徴情報としてサーバ10に送信する。
すると、上記対象供試魚特定手段11は、カメラ35で撮像して得られた試験前水槽21に収容されている複数の供試魚の画像データに含まれる当該複数の供試魚夫々の外観情報と、情報データベース16に上記供試魚特徴情報として格納された複数の供試魚夫々の画像データに含まれる外観情報とを比較する。そして、外観情報について一致点が多い供試魚を、試験前水槽21に収容されている複数の供試魚として特定し、その特定した複数の供試魚夫々の個体識別情報を情報データベース16から抽出し、当該抽出した夫々の個体識別情報をディスプレイ18に表示させるなどして利用者に提示することができる。すると、利用者は、後に対象供試魚Fとされて被験物質の投与が行われる予定で試験前水槽21に収容された複数の供試魚の夫々の個別識別情報を事前に把握することができ、例えば、当該複数の供試魚に、非常によく似ていて互いに識別できない供試魚が混じっている、又は、被験物質の投与対象ではない供試魚が誤って混じっているという場合などに、そのような供試魚を試験前水槽21に収容された段階で予め除外するなどの対応を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 供試魚試験支援システム
10 サーバ(コンピュータシステム)
11 対象供試魚特定手段
12 試験計画情報提示手段
13 試験実績情報更新手段
16 情報データベース
24 計量装置(供試魚特徴情報取得手段)
25 カメラ(供試魚特徴情報取得手段)
27 近接センサ(誘導保持操作検知手段)
28 保持具
32 カメラ(処置完了検知手段)
35 カメラ(供試魚特徴情報取得手段)
F 対象供試魚
X 供試魚特徴情報取得手段
Y 誘導保持操作検知手段
Z 処置完了検知手段
図1
図2
図3