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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143112
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20230928BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20230928BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16F15/04 D
F16F1/36 K
F16F7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050318
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】青沼 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 敦士
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA05
3J048AC01
3J048AC05
3J048BA05
3J048BD08
3J048BE11
3J048DA01
3J048EA36
3J059BA73
3J059BC07
3J059BD01
3J059CB06
3J059DA06
3J059DA26
3J059GA01
3J066AA24
3J066AA26
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD05
3J066BE01
3J066CB06
(57)【要約】
【課題】制振機能を向上した制振装置を提供する。
【解決手段】制振装置10は、第1部材および第2部材の一方に固定する固定部材20と、制振機能を発揮する制振部材と、を備える。固定部材は、制振部材が載置される台座部と、台座部から立設する壁部と、を有する。制振部材は、振動時に第1部材および第2部材の他方から荷重を受けて振動方向に変形して振動を減衰する粘弾性体と、壁部に摺動する摺動面を有する摺動部材と、を有する。摺動部材は振動方向の粘弾性体の変形によって壁部に押し付けられつつ、振動方向に移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材および第2部材の間に介在して前記第1部材に対する前記第2部材の振動を抑制する制振装置であって、
前記第1部材および前記第2部材の一方に固定する固定部材と、
制振機能を発揮する制振部材と、を備え、
前記固定部材は、
前記制振部材が載置される台座部と、
前記台座部から立設する壁部と、を有し、
前記制振部材は、
振動時に前記第1部材および前記第2部材の他方から荷重を受けて振動方向に変形して振動を減衰する粘弾性体と、
前記壁部に摺動する摺動面を有する摺動部材と、を有し、
前記摺動部材は、前記振動方向の前記粘弾性体の変形によって前記壁部に押し付けられつつ、前記振動方向に移動することを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記摺動部材は、前記振動方向および前記振動方向に直交する方向に対して傾斜して前記粘弾性体に係合するテーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記振動方向に直交する方向に見て前記摺動面および前記テーパ面は重なる位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記壁部は、円筒状に形成され、
前記粘弾性体は、円柱状または円筒状に形成されて、前記壁部に挿入され、
前記摺動部材は、スリットを有するC字状リングであり、前記粘弾性体を環囲することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
前記摺動部材は、前記スリットの逆側の位置で前記摺動面を切り欠くように形成される凹部を有することを特徴とする請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記台座部は、中央に貫通孔を有し、
前記粘弾性体は、前記貫通孔に連通する連通孔を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制振装置。
【請求項7】
前記摺動面は、前記振動方向に離間して一対形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制振装置。
【請求項8】
前記摺動部材は、前記粘弾性体を前記振動方向に直交する方向に挟むように一対設けられ、前記振動方向の前記粘弾性体の変形によって前記壁部に押し当てられることを特徴とする請求項1または2に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を減衰する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハッチバック、ワゴン、バン等の自動車には、後部の荷室を開閉するためのバックドアが備えられている。このバックドアの縁部が荷室開口の周縁部にゴム状のストッパ等を介して当接して、バックドアが荷室開口を閉じている。しかし、走行時やアイドリング中の振動等により、バックドアが車体と共振して不快音が生じる場合がある。
【0003】
特許文献1には、挿通孔を有する台座部と台座部に立設する壁部とを有する固定部と、挿通孔に挿通され、進退可能に設けられるピストンと、ピストンに環囲してピストンの進退に応じて壁部に摺動する摺動リングと、を備える制振装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2021-075311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、摺動リングが壁部に摺動することで制振機能を発揮しているが、制振効果をより向上することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、制振機能を向上した制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、第1部材および第2部材の間に介在して第1部材に対する第2部材の振動を抑制する制振装置であって、第1部材および第2部材の一方に固定する固定部材と、制振機能を発揮する制振部材と、を備える。固定部材は、制振部材が載置される台座部と、台座部から立設する壁部と、を有する。制振部材は、振動時に第1部材および第2部材の他方から荷重を受けて振動方向に変形して振動を減衰する粘弾性体と、壁部に摺動する摺動面を有する摺動部材と、を有する。摺動部材は振動方向の粘弾性体の変形によって壁部に押し付けられつつ、振動方向に移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制振機能を向上した制振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例の制振装置の斜視図である。
図2】第1実施例の制振装置の分解図である。
図3】第1実施例の制振装置の断面図である。
図4】第1実施例の摺動部材の斜視図である。
図5】第2実施例の制振装置の分解図である。
図6】第2実施例の制振装置の断面図である。
図7】第3実施例の制振装置の断面図である。
図8】第4実施例の制振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、第1実施例の制振装置10の斜視図である。図1(a)は斜め上方から見た制振装置10であり、図1(b)は斜め下方から見た制振装置10である。制振装置10は、車両のドアおよびバックドア等の開閉体に固定され、開閉体を閉じた状態で、車体側のパネルに当接する。制振装置10は、開閉体を閉じたときの衝撃を吸収し、開閉体を閉じた状態での開閉体の振動を抑え、開閉体の共振により不快音が発生することを抑える。
【0011】
なお、制振装置10は、車体側のパネル等の固定体に固定されて、開閉体に当接する態様であってあってもよい。つまり、制振装置10は、開閉体および固定体の一方に固定され、開閉体および固定体の他方に当接可能である。また、制振装置10は、開閉体に固定される態様に限られず、固定体に設けられてよい。いずれにしても、制振装置10は、第1部材および第2部材に介在して第1部材に対する第2部材の振動を抑制する。第1部材および第2部材の一方が開閉体であり、他方が固定体である。
【0012】
制振装置10は、第1部材および第2部材の一方に固定する固定部材20と、第1部材および第2部材の他方に当接可能なカバー22とを備える。固定部材20は、例えば、車両のドアに設けられた取付孔に挿入されて固定される。
【0013】
図2は、制振装置10の分解図である。また、図3は、制振装置10の断面図である。制振装置10は、固定部材20、カバー22および制振部材23を備える。制振部材23は、粘弾性体24および摺動部材26を有し、制振機能を発揮する。
【0014】
カバー22は、ゴム材料でカップ状に形成され、制振部材23を覆う。カバー22は、固定部材20に取り付けられる。
【0015】
制振部材23の粘弾性体24は、円筒状に形成され、例えば、エチレンプロピレンジエンゴムと4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体で形成されることが好ましい。もちろん、粘弾性体24は、別の粘弾性材料で形成されてもよい。また、粘弾性体24は円筒状に限らず、円柱状に形成されてもよい。
【0016】
粘弾性体24の外周面には、押圧面35および環状窪み部36が形成される。環状窪み部36は、粘弾性体24の外周面の略中央にて窪んだ円筒面として形成され、摺動部材26と嵌合する。押圧面35は、環状窪み部36の軸方向の上下端に傾斜して形成される。粘弾性体24は、軸方向に貫通した連通孔37を有する。軸方向は粘弾性体24および摺動部材26の中心軸に平行であり、径方向は軸方向に直交する。
【0017】
摺動部材26は、粘弾性体24よりも硬質の材料で形成され、固定部材20と同じ硬さであってよい。摺動部材26について図4を参照しつつ説明する。
【0018】
図4は、摺動部材26の斜視図である。摺動部材26は、摺動面30、スリット32、テーパ面33および凹部34を有する。摺動部材26は、C字状リングであり、粘弾性体24を環囲する。スリット32によって、摺動部材26は拡開可能となり、粘弾性体24に装着容易になる。
【0019】
摺動面30は、摺動部材26の外周に周方向に亘って形成され、軸方向の上下に離間して一対形成される。つまり、一対の摺動面30の間が窪んで形成される。一対の摺動面30によって壁部44に接触した状態が安定する。
【0020】
テーパ面33は、軸方向および径方向に傾斜して粘弾性体24の押圧面35に係合する。テーパ面33により、粘弾性体24から軸方向および径方向の力を受けることができる。
【0021】
凹部34は、スリット32の逆側の位置で摺動面30を切り欠くように形成される。
これにより、凹部34の位置が撓みやすくなって摺動部材26が拡開されやすくなり、粘弾性体24に容易に取り付けることができる。
【0022】
図2および図3に戻る。固定部材20は、取付部38、台座部42、壁部44、フランジ部46および貫通孔48を有する。取付部38は、固定部材20の下部に位置し、筒状に形成されて楕円形の断面を有する。取付部38は、側面に一対の弾性爪部40を有する。弾性爪部40は、撓み可能であり、例えば、車両のドアに設けられた取付孔の縁に係止する。なお、ドアへの固定方法は、弾性爪部40の形状に限られず、パネルに固定できれば他の形状であってよい。例えば、台座部42の下面をパネルに接着や溶着してもよい。
【0023】
台座部42は、円板状に形成され、制振部材23が載置される。壁部44は、台座部42から立設し、円筒状に形成される。なお、壁部44は、円筒状に限らず、複数の壁が周方向に離間して環状に配置された形状であってもよい。
【0024】
フランジ部46は、台座部42の外周縁に形成され、取付部38および壁部44よりも径方向外向きに張り出す。フランジ部46は、カバー22を留めることができる。貫通孔48は、台座部42の中央に貫通して形成される。
【0025】
カバー22は、図3に示すように、抜け止め部50および係合部52を有する。係合部52は、環状に形成され、固定部材20のフランジ部46に係合し、カバー22を固定部材20に連結する。
【0026】
抜け止め部50は、カバー22の内側の中央に柱状に形成され、先端が膨出している。抜け止め部50は、固定部材20の貫通孔48に引っ掛かり、固定部材20の抜け止めとして機能する。なお、カバー22は、抜け止め部50を有しなくてもよく、係合部52のみで固定部材20に取り付けられてよい。
【0027】
摺動部材26は、粘弾性体24の環状窪み部36に嵌まるように環囲し、摺動面30を径方向外側に張り出させている。粘弾性体24および摺動部材26からなる制振部材23は、壁部44の内側に挿入され、一対の摺動面30が壁部44の内周面に当接する。制振部材23が台座部42に載置されている。摺動面30が軸方向に離間して一対形成されることで、摺動部材26が壁部44に摺動する際に摺動面30の当接が安定する。また、摺動面30が周方向に亘って形成されるため、壁部44に周方向に亘って当接し、軸ブレが生じても当接を維持できる。図3に示す上側の摺動面30の一部は、壁部44から上方に出ている。車両ドアが閉じられた際に粘弾性体24が縮んで摺動面30の全てが壁部44の内側に入り込む。
【0028】
図3に示すように、粘弾性体24の連通孔37は、固定部材20の貫通孔48と連通する。これにより、粘弾性体24が伸縮した場合に、連通孔37内の空気を貫通孔48から通過させることができる。つまり、連通孔37および貫通孔48は通気口として機能する。粘弾性体24が撓んだ際の内側の逃げ空間として連通孔37が機能し、粘弾性体24を撓みやすくできる。
【0029】
制振装置10の動作について説明する。固定部材20が車両ドアに固定され、車両ドアが閉じられると、粘弾性体24がカバー22を介して車体から軸方向に力を受けて縮む。車両が走行する際の車両ドアと車体の振動によって粘弾性体24が軸方向に伸縮する。つまり、粘弾性体24は、振動時に第1部材および第2部材の他方から荷重を受けて振動方向に変形する。粘弾性体24は、振動によって軸方向に伸縮するように変形することで振動を減衰することができる。なお、振動方向は、抜け止め部50が貫通孔48にガイドされて軸方向と平行になり、振動方向に直交する方向は径方向と平行になる。
【0030】
粘弾性体24は、軸方向に変形することで、摺動部材26を軸方向に変位させる。また、粘弾性体24が縮むと膨らむように変形し、摺動部材26の押圧面35が摺動部材26のテーパ面33を軸方向および径方向に交差する方向(図中矢印方向)に押す。これによって、摺動部材26は、粘弾性体24の軸方向の変形によって壁部44に押し付けられつつ、軸方向に移動する。そのため摺動面30が壁部44に摺動して、振動を摩擦によって減衰することができる。粘弾性体24の変形によって摺動部材26を壁部44に押し付けることで、摩擦力を高め制振効果を向上できる。また、経時的に摺動部材26が摩耗しても粘弾性体24の押し付けによって摺動を安定させることができる。
【0031】
図3に示すように径方向に沿って見て摺動面30およびテーパ面33は重なる位置に設けられる。これによりテーパ面33が粘弾性体24から受けた荷重を摺動面30に伝えやすい。
【0032】
図5は、第2実施例の制振装置の分解図である。また、図6は、第2実施例の制振装置100の断面図である。第2実施例の制振装置100は、図3に示す制振装置10と比べて、バネ部材60によって摺動部材126を壁部44に押し付ける点で主に異なる。固定部材20は、第1実施例の制振装置10と同じである。
【0033】
制振装置100は、固定部材20、カバー22、粘弾性体124、摺動部材126、バネ部材60および収容部材62を備える。粘弾性体124、摺動部材126、バネ部材60および収容部材62は、制振部材123として機能する。バネ部材60は、コイルバネであって、円筒状の収容部材62に収容される。収容部材62は、両端に一対の切欠部62aをそれぞれ有する。
【0034】
粘弾性体124は、収容孔部136、押圧面135および抜け止め部150を有する。収容孔部136は、側方に貫通し、バネ部材60および収容部材62を挿入可能である。押圧面135は、収容孔部136の開口縁に傾斜して形成され、軸方向に離れて一対形成される。抜け止め部150は、粘弾性体124の下端に膨出して形成され、固定部材20の貫通孔48に引っ掛かる。
【0035】
摺動部材126は、バネ部材60の両端にそれぞれ設けられる。摺動部材126は、摺動面130、バネ支持部132およびテーパ面133を有する。摺動面130は、球面状に形成される。バネ支持部132は、摺動面130の裏側に突起状に形成される。バネ支持部132は、バネ部材60の端末に入り込む。テーパ面133は、軸方向に離れて一対形成され、軸方向および径方向に対して傾斜する。
【0036】
図6に示すように、粘弾性体124の押圧面135が、摺動部材126のテーパ面133に当接している。粘弾性体124が軸方向に伸縮して変形すると、一対の摺動部材126は、互いに逆方向に押されて壁部44に押し付けられつつ、軸方向に移動する。これにより、摺動面130が壁部44に摺動する。また、摺動部材126が、バネ部材60によって壁部44に向かって押し付けられているため、壁部44への摺動が経時的にも安定する。
【0037】
図7は、第3実施例の制振装置200の断面図である。第3実施例の制振装置200は、図6に示す第2実施例の制振装置100と比べて、粘弾性体が軸方向に離間して一対設けられる点が主に異なる。
【0038】
制振装置200は、固定部材20、カバー22、第1粘弾性体224a、第2粘弾性体224b、摺動部材226およびバネ部材60を備える。第1粘弾性体224a、第2粘弾性体224b、摺動部材226およびバネ部材60は、制振部材223として機能する。
【0039】
第1粘弾性体224aは、有底円筒状に形成される。第1粘弾性体224aは、押圧面235aおよび抜け止め部250を有する。押圧面235aは、第1粘弾性体224aの上端の外縁に位置し、軸方向および径方向に対して傾斜する。抜け止め部250は、第1粘弾性体224aの下端に形成され、貫通孔48の縁に引っ掛かり、第1粘弾性体224aを固定部材20に連結する。
【0040】
第2粘弾性体224bは、円筒状に形成される。第2粘弾性体224bは、軸方向および径方向に対して傾斜する押圧面235bを有する。押圧面235bは、第2粘弾性体224bの下端の外縁に位置する。
【0041】
摺動部材226は、半柱状に形成され、一対の摺動部材226は、半柱を組み合わせて円柱状をなすように構成される。一対の摺動部材226は、バネ部材60の両端を収容するように配置され、バネ部材60から径方向に付勢される。摺動部材226は、摺動面230、収容孔部232およびテーパ面233を有する。収容孔部232は、円筒状に形成され、バネ部材60の一端を収容する。摺動面230は、摺動部材226の外周面に位置し、バネ部材60によって壁部44に押し付けられる。テーパ面233は、摺動部材226の上下に一対形成され、周状に形成され、軸方向および径方向に対して傾斜する。
【0042】
第1粘弾性体224aおよび第2粘弾性体224bは、振動時に第1部材および第2部材の他方から荷重を受けて軸方向にそれぞれ変形する。これにより、押圧面235a,235bがテーパ面233を押し、摺動面230が壁部44に押し付けられつつ、壁部44に摺動する。
【0043】
図8は、第4実施例の制振装置300の断面図である。第4実施例の制振装置300は、図7に示す第3実施例の制振装置200と比べて、テーパ面333の位置が主に異なる。制振装置300は、固定部材20、カバー22、第1粘弾性体324a、第2粘弾性体324b、摺動部材326およびバネ部材60を備える。第1粘弾性体324a、第2粘弾性体324b、摺動部材326およびバネ部材60は、制振部材323として機能する。
【0044】
第1粘弾性体324aは、有底円筒状に形成される。第1粘弾性体324aは、押圧面335aおよび抜け止め部350を有する。押圧面335aは、第1粘弾性体324aの中央部分から上方に突出するように一対形成され、軸方向および径方向に対して傾斜する。抜け止め部350は、第1粘弾性体324aの下端に形成され、貫通孔48の縁に引っ掛かり、第1粘弾性体324aを固定部材20に連結する。
【0045】
第2粘弾性体324bは、円筒状に形成される。第2粘弾性体324bは、軸方向および径方向に対して傾斜する押圧面335bを有する。押圧面335bは、第2粘弾性体324bの中央部分から下方に突出するように一対形成される。
【0046】
摺動部材326は、半柱状に形成され、一対の摺動部材326は、半柱を組み合わせて円柱状をなすように構成される。一対の摺動部材326は、バネ部材60の両端を収容するように配置され、バネ部材60から径方向に付勢される。摺動部材326は、摺動面330、収容孔部332およびテーパ面333を有する。摺動面330は、摺動部材326の外周面に位置し、バネ部材60によって壁部44に押し付けられる。収容孔部332は、円筒状に形成され、バネ部材60の一端を収容する。テーパ面333は、軸方向および径方向に対して傾斜する。
【0047】
テーパ面333は、一対の摺動部材326が対向する内縁に直線状に形成される。テーパ面333は、摺動部材326の上下に一対形成され、軸方向および径方向に対して傾斜する。
【0048】
摺動部材326は、第1粘弾性体324aおよび第2粘弾性体324bを径方向に挟むように一対設けられ、第1粘弾性体324aおよび第2粘弾性体324bの軸方向の変形によって壁部44に押し当てられる。すなわち、第1粘弾性体324aに一対の摺動部材326が載置され、一対の摺動部材326に第2粘弾性体324bが載置される。
【0049】
一対の押圧面335aおよび一対の押圧面335bが一対の摺動部材326の間に入り込んでテーパ面333に係合する。これにより、摺動部材326が第1粘弾性体324aおよび第2粘弾性体324bの軸方向の変形によって壁部44に押し付けられつつ、軸方向に移動し、摺動面330が壁部44に摺動する。振動時に押圧面335a,335bが一対の摺動部材326の入り込むように作用するため、一対の摺動部材326が離間する方向(径方向)に押され、摺動部材326が壁部44に強く押し付けられる。
【0050】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0051】
10 制振装置、 20 固定部材、 22 カバー、 23 制振部材、 24 粘弾性体、 26 摺動部材、 30 摺動面、 32 スリット、 33 テーパ面、 34 凹部、 35 押圧面、 36 環状窪み部、 37 連通孔、 38 取付部、 40 弾性爪部、 42 台座部、 44 壁部、 46 フランジ部、 48 貫通孔、 50 抜け止め部、 52 係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8