(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143114
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 19/08 20060101AFI20230928BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20230928BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F02B19/08 A
F02B19/12 B
F02P13/00 302B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050321
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣也
(72)【発明者】
【氏名】林 伸治
【テーマコード(参考)】
3G019
3G023
【Fターム(参考)】
3G019AA09
3G019KA16
3G023AA01
3G023AA07
3G023AD02
3G023AD22
3G023AD25
3G023AD28
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つの燃料流入連通路と少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路とから噴射される火炎流を主室の周方向に均等に噴射させることができるエンジンを提供する。
【解決手段】エンジンの隔壁は、シリンダの周方向において副室の中心に向かって真っ直ぐに設けられ、主室から前記副室に通じる、少なくとも1つの燃料流入連通路と、前記シリンダの周方向において前記副室の中心に向かう方向に対して傾いて設けられ、前記主室から前記副室に通じる、少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路と、を含み、前記2つ以上のスワール流生成連通路のうち、前記燃料流入連通路を起点として前記副室内に生成されるガスの周方向の流れにおいて上流側となるスワール流生成連通路よりも下流側となるスワール流生成連通路のほうが前記副室の中心に向かう方向に対して傾く角度が小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
前記ピストンが往復動するシリンダが設けられたシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに固定され、前記ピストンとの間に主室を形成するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの前記主室側に設けられ、前記主室内に副室を形成する隔壁と、
前記主室内に燃料を噴射する噴射ノズルと、
前記副室内に設置された点火プラグと、
を備え、
前記隔壁は、
前記シリンダの周方向において前記副室の中心に向かって真っ直ぐに設けられ、前記主室から前記副室に通じる、少なくとも1つの燃料流入連通路と、
前記シリンダの周方向において前記副室の中心に向かう方向に対して傾いて設けられ、前記主室から前記副室に通じる、少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路と、
を含み、
前記少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路のうち、前記燃料流入連通路を起点として前記副室内に生成されるガスの周方向の流れにおいて上流側となるスワール流生成連通路よりも下流側となるスワール流生成連通路のほうが前記副室の中心に向かう方向に対して傾く角度が小さい、
エンジン。
【請求項2】
前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが最小流路断面積が大きい、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが副室側開口が大きい、
請求項1又は2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記2以上のスワール流生成連通路のそれぞれの流路断面積は、前記主室側開口から前記副室開口に向けて拡大し、
前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが前記流路断面積の拡大比率が大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記隔壁には、
前記2以上のスワール流生成連通路が通じる副室先端部と、
前記副室先端部よりも前記シリンダヘッド側に設けられた副室基部と、
前記副室先端部と前記副室基部との間に設けられた段差面と、
が設けられ、
前記副室先端部の最大断面積は、前記副室基部の最小断面積よりも小さい、
請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主室と、主室と隔壁により区画された副室と、隔壁に設けられ、主室と副室とを連通する複数の連通路と、副室の中心軸又は中心軸の近傍に設けられて副室内の混合気に点火を行う点火プラグとを備えたエンジンが開示されている。複数の連通路は、主室側から副室への混合気の流入と、副室側から主室側への火炎の流出のために設けられている。複数の連通路、副室の中心軸に向かう方向に対して傾斜した角度で形成され、主室からの圧縮空気によって副室内にスワール流を生成するスワール流生成連通路と、副室の中心軸に向かう方向に対してスワール流生成連通路とは異なる角度で形成され、主室側から副室に燃料を供給する燃料流入連通路とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエンジンでは、1つの燃料流入連通路は、軸方向から見て、副室の中心軸に向かう方向に配向され、複数のスワール流生成連通路は、軸方向から見て、副室の中心軸に対して同一角度で傾斜するように配向されている。このため、燃料流入連通路とスワール流生成連通路を区別することなく、隔壁の周りに等間隔に配置すると、燃料流入連通路と隣り合う一方のスワール流生成通路から噴射される火炎流が燃料流入連通路から噴射される火炎流から遠ざかる一方、燃料流入連通路と隣り合う他方のスワール流生成連通路から噴射される火炎流が燃料流入連通路から噴射される火炎流に近づき、主室の周方向に火炎流を均等に噴射することができない。また、スワール流生成連通路の数が多いと、燃料流入連通路とスワール流生成連通路とが干渉するので、主室の周方向に火炎流が均等に噴射されるように燃料流入連通路とスワール流生成連通路を隔壁の周りに配置することができない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、少なくとも1つの燃料流入連通路と少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路とから噴射される火炎流を主室の周方向に均等に噴射させることができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、ピストンと、前記ピストンが往復動するシリンダが設けられたシリンダブロックと、前記シリンダブロックに固定され、前記ピストンとの間に主室を形成するシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの前記主室側に設けられ、前記主室内に副室を形成する隔壁と、前記主室内に燃料を噴射する噴射ノズルと、前記副室内に設置された点火プラグと、を備え、前記隔壁は、前記シリンダの周方向において前記副室の中心に向かって真っ直ぐに設けられ、前記主室から前記副室に通じる、少なくとも1つの燃料流入連通路と、前記シリンダの周方向において前記副室の中心に向かう方向に対して傾いて設けられ、前記主室から前記副室に通じる、少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路と、を含み、前記2つ以上のスワール流生成連通路のうち、前記燃料流入連通路を起点として前記副室内に生成されるガスの周方向の流れにおいて上流側となるスワール流生成連通路よりも下流側となるスワール流生成連通路のほうが前記副室の中心に向かう方向に対して傾く角度が小さい。
【0007】
上記(1)の構成によれば、燃料流入連通路を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れにおいて上流側となるスワール流生成連通路よりも下流側となるスワール流生成連通路のほうが副室の中心に向かう方向に対して傾く角度が小さいので、下流側となるスワール流生成連通路を燃料流入連通路に近づけて配置することができる。これにより、少なくとも1つの燃料流入連通路と少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路とから噴射される火炎流を主室の周方向に均等に噴射させることができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが最小流路断面積が大きい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、燃料流入連通路を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れにおいて下流側となるスワール流生成連通路よりも上流側となるスワール流生成連通路のほうが最小流路断面積が大きいので、下流側となるスワール流生成連通路の有効径に上流側となるスワール流生成連通路の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いに上流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いを近づけることができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが副室側開口が大きい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、燃料流入連通路を起点として副室内に流れるガスの周方向の流れにおいて下流側となるスワール流生成連通路よりも上流側となるスワール流生成連通路のほうが副室側開口が大きいので、下流側となるスワール流生成連通路の有効径に上流側となるスワール流生成連通路の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いに上流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いを近づけることができる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか一つの構成において、前記2以上のスワール流生成連通路のそれぞれの流路断面積は、前記主室側開口から前記副室側開口に向けて拡大し、前記下流側となるスワール流生成連通路よりも前記上流側となるスワール流生成連通路のほうが前記流路断面積の拡大比率が大きい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、燃料流入連通路を起点として副室内に流れるガスの周方向の流れにおいて下流側となるスワール流生成連通路よりも上流側となるスワール流生成連通路のほうが流路断面積の拡大比率が大きいので、下流側となるスワール流生成連通路の有効径に上流側となるスワール流生成連通路の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いに上流側となるスワール流生成連通路から噴射される火炎流の勢いを近づけることができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記隔壁には、前記2以上のスワール流生成連通路が通じる副室先端部と、前記副室先端部よりも前記シリンダヘッド側に設けられた副室基部と、前記副室先端部と前記副室基部との間に設けられた段差面と、が設けられ、前記副室先端部の最大断面積は、前記副室基部の最小断面積よりも小さい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、副室先端部の最大断面積を副室基部の最小断面積よりも小さくすることで、副室先端部に強いスワール流を生成することができる。また、副室基部で点火された火炎流は段差面で剥離することで、2つ以上のスワール流生成連通路から同時に火炎流を噴出するようにできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、少なくとも1つの燃料流入連通路と少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路とから噴射される火炎流を主室の周方向に均等に噴射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示したシリンダ及び隔壁を概念的に示す側断面図である。
【
図3】
図1に示したシリンダ及び隔壁を概念的に示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
[実施形態1]
[エンジンの全体構成]
図1は、実施形態に係るエンジン1の全体構成を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、実施形態に係るエンジン1は、ピストン10、シリンダブロック12、シリンダヘッド14、隔壁16、噴射ノズル18及び点火プラグ20を備えている。シリンダブロック12には、ピストン10が往復動するシリンダ22が設けられている。シリンダヘッド14は、シリンダブロック12に固定され、ピストン10との間に主室(燃焼室)24を形成している。シリンダヘッド14には、吸気ポート26及び排気ポート28が設けられている。吸気ポート26及び排気ポート28は、例えば、1つの主室24に対して2つずつ設けられているが、これに限定されるものではない。吸気ポート26には、吸気ポート26を開閉する吸気バルブ30が設けられ、排気ポート28には、排気ポート28を開閉する排気バルブ32が設けられている。例えば、吸気ポート26には、燃料を噴射する噴射ノズル34(以下「ポートインジェクタ34」という)が設けられているが、ポートインジェクタ34は必須ではない。隔壁16は、シリンダヘッド14の主室側に設けられ、主室内に副室(予備燃焼室)36を形成している。噴射ノズル18は、主室内に燃料を噴射する噴射ノズル18(以下「ダイレクトインジェクタ18」という)である。点火プラグ20は、副室内に設置され、副室内に流入した混合気に点火可能である。
【0020】
[エンジン1の全体動作]
実施形態に係るエンジン1は、吸気バルブ30が吸気ポート26を開放するとともにピストン10が下降する吸気行程において、ポートインジェクタ34が燃料を噴射する。これにより、吸気ポート26から主室24に混合気が供給される。実施形態に係るエンジン1では、主室内の混合気は理論空燃比よりも薄いリーン混合気となる。
【0021】
吸気バルブ30が吸気ポート26を閉鎖するとともにピストン10が上昇する圧縮行程において、ダイレクトインジェクタ18が燃料を噴射する。これにより、ダイレクトインジェクタ18から噴射された燃料は主室内の混合気とともに副室36に供給される。そして、副室内の混合気は点火プラグ20によって点火される。実施形態に係るエンジン1では、副室内の混合気は理論空燃比と同等の空燃比の混合気となる。
【0022】
ピストン10を下降させる膨張行程において、点火プラグ20によって点火された副室内の混合気は、火炎流となって主室内に噴射され、主室内の混合気を燃焼させる。
【0023】
排気バルブ32が排気ポート28を開放するとともにピストン10が上昇する排気行程において、主室内の燃焼ガスが排出される。これら、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことにより、エンジン1は運転される。なお、実施形態に係るエンジン1では、ポートインジェクタ34が吸気行程において燃料を噴射しているが、排気行程において燃料を噴射するようにしても良い。この場合にも、主室24へは吸気行程において、燃料が供給されることとなる。
【0024】
[隔壁の詳細]
図2は、
図1に示したシリンダ22及び隔壁16を概念的に示す側断面図であり、
図3は、
図1に示したシリンダ22及び隔壁16を概念的に示す平断面図である。
図2に示すように、隔壁16は、円柱と半球とが組み合わされたような形状の外形を有している。隔壁16の円柱側の端部にはフランジ38が設けられ、このフランジ38によって隔壁16がシリンダヘッド14の主室側に固定される。これにより、隔壁16の円柱側がシリンダヘッド14に固定される基端部側となり、半球側がピストン側に位置する先端部側となる。
図2に示すように、隔壁16は、その内部に円柱と半球とが組み合わされたような形状の副室36を有している。そして、副室36の円柱側はシリンダヘッド側に位置する副室基部40を構成し、半球側はピストン側に位置する副室先端部42を構成する。
【0025】
隔壁16は、その先端部側に主室24から副室36(副室先端部42)に通じる燃料流入連通路44とスワール流生成連通路46を有している。
【0026】
図3に示すように、燃料流入連通路44は、少なくとも1つ以上であって、シリンダ22の周方向においてダイレクトインジェクタ側に設けられている。燃料流入連通路44は、好ましくは、シリンダ22の周方向においてダイレクトインジェクタ18の噴射範囲RG、より好ましくは、シリンダ22の周方向においてダイレクトインジェクタ18の噴射方向と正対する位置に設けられている。燃料流入連通路44がシリンダ22の周方向においてダイレクトインジェクタ18の噴射方向と正対する位置に設けられている場合に、燃料流入連通路44はダイレクトインジェクタ18の噴射方向の延長線上に設けられ、副室36の中心に向かって真っ直ぐに延びている。
図2に示すように、燃料流入連通路44は、エンジン1の圧縮行程においてダイレクトインジェクタ18から噴射された燃料FEが燃料流入連通路44に流入するように、副室36の内側(中心)に向かうにつれてシリンダヘッド14に近づくように傾いて設けられ、より好ましくは、ダイレクトインジェクタ18の噴射方向に沿って設けられている。燃料流入連通路44は、少なくとも1つであるが、1つに限られるものではなく、2つ以上であってもよい。
【0027】
図3に示すように、スワール流生成連通路46は、少なくとも2つ以上であって、シリンダ22の周方向において燃料流入連通路44と異なる位置に設けられている。スワール流生成連通路は、シリンダの周方向において副室36の中心に向かう方向に対して傾いて設けられている。
図2に示すように、スワール流生成連通路46は、水平方向又は水平方向に対して傾いて設けられている。スワール流生成連通路46は、好ましくは、エンジン1の圧縮行程において主室内の混合気が副室内に流入するように、副室36の内側に向かうにつれてシリンダヘッド14に近づくように傾いて設けられている。スワール流生成連通路46は、例えば、7つであるが、2つ以上であれば、7つに限られるものではない。
【0028】
図3に示すように、2つ以上のスワール流生成連通路46の副室側開口46aを通る断面において、隔壁16の副室側壁面16aは円形状である。尚、
図3においてスワール流生成連通路46は概略的に示されており、水平方向に設けられるものとして示されているが、上述したように、これに限定されるものではなく、副室36の内側に向かうにつれてシリンダヘッド14に近づくように傾いて設けられているものであってもよい。
【0029】
2つ以上のスワール流生成連通路46のうち、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて上流側となるスワール流生成連通路46よりも下流側となるスワール流生成連通路46のほうが副室中心に向かう方向に対して傾く角度が小さい。
【0030】
図3に示す例では、隔壁16は7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)を有するが、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて上流側から下流側(46p→46q→46r→46s→46t→46u→46v)に向けて漸次副室中心に向かう方向に対して傾く角度が小さくなる(θ1>θ2>θ3>θ4>θ5>θ6>θ7)。
【0031】
[エンジン1の動作]
上述した実施形態1に係るエンジン1では、エンジン1の圧縮行程においてダイレクトインジェクタ18から噴射された燃料が隔壁16の主室側壁面16bに衝突し、燃料流入連通路44の主室側開口44bの周りに燃料を多く含んだ混合気が生成される。そして、エンジン1の圧縮行程において主室24から副室36に混合気が供給される。燃料流入連通路44から燃料が濃い混合気が供給され、スワール流生成連通路46から供給された混合気は副室内を旋回することによってスワール流を生成する。このスワール流によって燃料が濃い混合気も旋回することになるが、ダイレクトインジェクタ18からの燃料噴射が終了した後も混合気がスワール流生成連通路46を通り副室内に供給されるので、後から副室内に供給された燃料の薄い混合気が副室内(外周側)を旋回することで、先に副室内に供給された燃料が濃い混合気が副室の中心側に集まる。これにより、燃料の濃い混合気の周りに燃料の薄い混合気のスワール流の流れを形成することができる(成層化)。
【0032】
次に、エンジン1の圧縮行程において点火プラグ20が副室内の燃料の濃い混合気に点火する。すると、副室内の混合気は火炎流FFとなって燃料流入連通路44及びスワール流生成連通路46を通り主室内に噴射され、主室内の混合気を燃焼させる。
【0033】
[効果]
上述した実施形態1に係るエンジン1によれば、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて上流側となるスワール流生成連通路46よりも下流側となるスワール流生成連通路46のほうが副室36の中心に向かう方向に対して傾く角度が小さいので、下流側となるスワール流生成連通路46(46v)を燃料流入連通路44に近づけて配置することができる。これにより、少なくとも1つの燃料流入連通路44と少なくとも2つ以上のスワール流生成連通路46とから噴射される火炎流FFを主室24の周方向に均等に噴射させることができる。
【0034】
[実施形態2]
実施形態2に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作は、実施形態1に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作と同じである。
【0035】
[隔壁の詳細]
図4は、実施形態2に係る隔壁16の断面図であり、上述した実施形態1に係る隔壁16の平断面図(
図3)に対応する。
【0036】
隔壁16の外形及び副室36の形状は、上述した実施形態1に係る隔壁16の外形及び副室36の形状と同じである。また、隔壁16に設けられた燃料流入連通路44の構成も同じである。
【0037】
図4に示すように、2つ以上のスワール流生成連通路46のうち、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが流路断面積A1~A7が大きい。
【0038】
図4に示す例では、隔壁16は7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)を有するが、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側から上流側(46v→46u→46t→46s→46r→46q→46p)に向けて漸次最小流路断面積A1~A7が大きくなる(A7<A6<A5<A4<A3<A2<A1)。
【0039】
例えば、
図4に示すように、7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)の流路径D1~D7が一定の場合には、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側から上流側(46v→46u→46t→46s→46r→46q→46p)に向けて漸次流路径D1~D7が大きくなる(D7<D6<D5<D4<D3<D2<D1)。その他のスワール流生成連通路46の構成は、実施形態1に係るスワール流生成連通路46の構成と同じである。また、上述した実施形態2に係るエンジン1の動作は、上述した実施形態1に係るエンジン1の動作と同じである。
【0040】
[効果]
上述した実施形態2に係るエンジン1によれば、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが最小流路断面積A1~A7が大きいので、下流側となるスワール流生成連通路46の有効径に上流側となるスワール流生成連通路46の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いに上流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いを近づけることができる。
【0041】
[実施形態3]
実施形態3に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作は、実施形態1に係るエンジンの全体構成及びエンジン1の全体動作と同じである。
【0042】
[隔壁の詳細]
図5は、実施形態2に係る隔壁16の断面図であり、上述した実施形態1に係る隔壁16の平断面図(
図3)に対応する。
【0043】
隔壁16の外形及び副室36の形状は、上述した実施形態1に係る隔壁16の外形及び副室36の形状と同じである。また、隔壁16に設けられた燃料流入連通路44の構成も同じである。
【0044】
図5に示すように、2つ以上のスワール流生成連通路46のうち、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが副室側開口46aが大きい。
【0045】
図5に示す例では、隔壁16は7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)を有するが、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側から上流側(46v→46u→46t→46s→46r→46q→46p)に向けて副室側開口46aが漸次大きくなる(B7<B6<B5<B4<B3<B2<B1)。
【0046】
例えば、
図5に示すように、7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)は、燃料流入連通路44を基点として副室36に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側から上流側に向けて漸次副室側開口46aの上流側の曲率半径が漸次大きくなる(r7<r6<r6<r5<r6<r7)。その他のスワール流生成連通路46の構成は、実施形態1に係るスワール流生成連通路46の構成と同じである。また、上述した実施形態3に係るエンジン1の動作は、上述した実施形態1に係るエンジン1の動作と同じである。
【0047】
[効果]
上述した実施形態3に係るエンジン1によれば、燃料流入連通路44を起点として副室内に流れるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが副室側開口46aが大きいので、下流側となるスワール流生成連通路46の有効径に上流側となるスワール流生成連通路46の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いに上流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いを近づけることができる。
【0048】
また、燃料流入連通路44を起点として副室内に流れるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが上流側の曲率半径が大きいので、スワール流生成連通路46の内壁面からの火炎流FFの剥離が抑制され、下流側となるスワール流生成連通路46の有効径に上流側となるスワール流生成連通路46の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いに上流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いを近づけることができる。
【0049】
[実施形態4]
実施形態4に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作は、実施形態1に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作と同じである。
【0050】
[隔壁の詳細]
図6は、実施形態4に係る隔壁16の断面図であり、上述した実施形態1に係る隔壁16の平断面図(
図3)に対応する。
【0051】
隔壁16の外形及び副室36の形状は、上述した実施形態1に係る隔壁16の外形及び副室36の形状と同じである。また、隔壁16に設けられた燃料流入連通路44の構成も同じである。
【0052】
図6に示すように、2以上のスワール流生成連通路46のそれぞれの流路断面積は、主室側開口46bから副室側開口46aに向けて拡大する。そして、下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが流路断面積の拡大比率が大きい。
【0053】
図6に示す例では、隔壁16は7つのスワール流生成連通路46(46p~46v)を有するが、燃料流入連通路44を起点として副室内に生成されるガスの周方向の流れSFにおいて下流側から上流側(46v→46u→46t→46s→46r→46q→46p)に向けて流路断面積の拡大比率が漸次大きくなる。その他のスワール流生成連通路46の構成は、実施形態1に係るスワール流生成連通路46の構成と同じである。上述した実施形態2に係るエンジン1の動作は、上述した実施形態1に係るエンジン1の動作と同じである。
【0054】
[効果]
上述した実施形態4に係るエンジン1によれば、燃料流入連通路44を起点として副室内に流れるガスの周方向の流れSFにおいて下流側となるスワール流生成連通路46よりも上流側となるスワール流生成連通路46のほうが流路断面積の拡大比率が大きいので、下流側となるスワール流生成連通路46の有効径に上流側となるスワール流生成連通路46の有効径を近づけることができる。これにより、下流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いに上流側となるスワール流生成連通路46から噴射される火炎流FFの勢いを近づけることができる。
【0055】
[実施形態5]
上述した実施形態5に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作は、実施形態1に係るエンジン1の全体構成及びエンジン1の全体動作と同じである。
【0056】
[隔壁の詳細]
図7は、実施形態5に係る隔壁16の断面図であり、上述した実施形態1に係る隔壁16の側断面図(
図2)に対応する。
図7に示すように、隔壁16は、その内部に円柱と円錐台とが組み合わされたような形状の副室36を有している。そして、副室36の円柱側はシリンダヘッド側に位置する副室基部40を構成し、円錐台側はピストン側に位置する副室先端部42を構成する。そして、副室先端部42の最大断面積は副室基部40の最小断面積よりも小さく、副室基部40と副室先端部42との間には段差面48が設けられている。段差面48は、副室基部40から副室先端部42に向けて漸次窄まるように設けられているが、これに限られるものではなく、平面をなすように設けられてもよい。その他の構成は、実施形態1に係る隔壁16の構成と同じである。
【0057】
[効果]
上述した実施形態5に係るエンジン1によれば、副室先端部42の最大断面積を副室基部40の最小断面積よりも小さくすることで、副室先端部42に強いスワール流を生成することができる。また、副室基部40で点火された火炎流FFは段差面48で剥離することで、2つ以上のスワール流生成連通路46から同時に火炎流FFを噴出するようにできる。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジン
10 ピストン
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 隔壁
16a 副室側壁面
16b 主室側壁面
18 噴射ノズル(ダイレクトインジェクタ)
20 点火プラグ
22 シリンダ
24 主室
26 吸気ポート
28 排気ポート
30 吸気バルブ
32 排気バルブ
34 噴射ノズル(ポートインジェクタ)
36 副室
38 フランジ
40 副室基部
42 副室先端部
44 燃料流入連通路
44b 主室側開口
46,46p~46v スワール流生成連通路
46a 副室側開口
46b 主室側開口
48 段差面
FE 燃料
FF 火炎流
RG ダイレクトインジェクタの噴射範囲
SF 副室内に生成されるガスの周方向の流れ
θ1~θ7 スワール流生成連通路の副室中心に向かう方向に対して傾く角度
A1~A7 スワール流生成連通路の最小流路断面積