(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143153
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】EV車両の稼働状況監視システム、EV車両の稼働状況監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050379
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】594013044
【氏名又は名称】株式会社データ・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】田野 通保
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】EV車両メーカ固有のCANやOBD等の情報によらずに、多様性のある処理が可能なEV車両の稼働状況監視システム、EV車両の稼働状況監視プログラムを提供する。
【解決手段】EV車両の稼働状況監視システムは、EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得手段と、前記EV車の走行距離を示す距離情報を取得する走行距離取得手段と、前記画像取得手段により取得されたバッテリー画像と前記走行距離取得手段により取得された距離情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記距離情報との対応関係を算出する第1算出手段と、前記第1算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得手段と、
前記EV車の走行距離を示す距離情報を取得する走行距離取得手段と、
前記画像取得手段により取得されたバッテリー画像と前記走行距離取得手段により取得された距離情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記距離情報との対応関係を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定手段とを備えること
を特徴とするEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項2】
前記画像取得手段は、前記距離情報を含む走行距離画像を取得し、
前記走行距離取得手段は、前記画像取得手段により取得された走行距離画像に基づいて、前記距離情報を取得すること
を特徴とする請求項1に記載のEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項3】
EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得手段と、
前記電池の充電時間を示す充電時間情報を取得する時間取得手段と、
前記画像取得手段により取得されたバッテリー画像と前記時間取得手段により取得された充電時間情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記充電時間情報との対応関係を算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定手段とを備えること
を特徴とするEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項4】
前記画像取得手段は、前記充電時間情報を含む充電時間画像を取得し、
前記時間取得手段は、前記画像取得手段により取得された充電時間画像に基づいて、前記充電時間情報を取得すること
を特徴とする請求項3に記載のEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項5】
前記推定手段は、前記第2算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の充電の種類を分類し、分類した前記種類に基づいて、前記電池の負荷を推定すること
を特徴とする請求項3に記載のEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項6】
前記推定手段は、前記EV車に関する車体情報を取得し、取得した前記車体情報と前記対応関係とに基づいて、前記電池の負荷を推定すること
を特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のEV車両の稼働状況監視システム。
【請求項7】
EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得ステップと、
前記EV車の走行距離を示す距離情報を取得する走行距離取得ステップと、
前記画像取得ステップにより取得されたバッテリー画像と前記走行距離取得ステップにより取得された距離情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記距離情報との対応関係を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップにより算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とするEV車両の稼働状況監視プログラム。
【請求項8】
EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得ステップと、
前記電池の充電時間を示す充電時間情報を取得する時間取得ステップと、
前記画像取得ステップにより取得されたバッテリー画像と前記時間取得ステップにより取得された充電時間情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記充電時間情報との対応関係を算出する第2算出ステップと、
前記第2算出ステップにより算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定ステップとをコンピュータに実行させること
を特徴とするEV車両の稼働状況監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EV車両の稼働状況監視システム、EV車両の稼働状況監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高価なEV(Electric Vehicle)車両が中古車市場では値崩れを起こしている。これはEV車に搭載された電池の適正な残存価値が分からないことが原因となっている。このため、例えば特許文献1に示すような電池の適正な残存価値を把握するための技術が注目されている。
【0003】
特許文献1では、電気的移動性の世界に関与するすべての他の当事者に有利なように、旅行中に必要な充電の操作の効果的な計画を可能にする電動車両の充電の制御および管理のためのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、バッテリーの適正な残存価値を把握するためには、従来のGPS位置情報又は車両運転挙動管理システム等の車載管理システムに加え、電池残電圧、急速充電回数、及び普通充電回数等のバッテリーに関連する情報が必要とされている。
【0006】
これらの情報を取得するために、CAN(Controller Area Network)やOBD(On-board diagnostics)等のEV車に取り付けられたECU(Electrical Control Unit)が利用されている。
【0007】
また、これらのCANやOBDは、メーカの固有のものである場合が多く、メーカの固有のCANやOBDは、互換性に乏しく、多様性のある処理ができない。このため、EV車両メーカ固有のCANやOBD等の情報によらずにEV車両の稼働状況を監視することが必要とされる。
【0008】
また、EV車に搭載される電池は、車種により異なるため、メーカの固有のCANやOBDを用いて情報を分析することは困難である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている電動車両の充電の制御および管理のためのシステムでは、CANやOBD等の情報によらずにEV車両の稼働状況を監視すること想定していない。このため、互換性に乏しく、多様性のある処理ができないという問題点があった。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するために導出されたものであり、その目的とするところは、EV車両メーカ固有のCANやOBD等の情報によらずに、多様性のある処理が可能なEV車両の稼働状況監視システム、EV車両の稼働状況監視プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得手段と、前記EV車の走行距離を示す距離情報を取得する走行距離取得手段と、前記画像取得手段により取得されたバッテリー画像と前記走行距離取得手段により取得された距離情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記距離情報との対応関係を算出する第1算出手段と、前記第1算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、第1発明において、前記画像取得手段は、前記距離情報を含む走行距離画像を取得し、前記走行距離取得手段は、前記画像取得手段により取得された走行距離画像に基づいて、前記距離情報を取得することを特徴とする。
【0013】
第3発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得手段と、前記電池の充電時間を示す充電時間情報を取得する時間取得手段と、前記画像取得手段により取得されたバッテリー画像と前記時間取得手段により取得された充電時間情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記充電時間情報との対応関係を算出する第2算出手段と、前記第2算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、第3発明において、前記画像取得手段は、前記充電時間情報を含む充電時間画像を取得し、前記時間取得手段は、前記画像取得手段により取得された充電時間画像に基づいて、前記充電時間情報を取得することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、第3発明において、前記推定手段は、前記第2算出手段により算出された対応関係に基づいて、前記電池の充電の種類を分類し、分類した前記種類に基づいて、前記電池の負荷を推定することを特徴とする。
【0016】
第6発明に係るEV車両の稼働状況監視システムは、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記推定手段は、前記EV車に関する車体情報を取得し、取得した前記車体情報と前記対応関係とに基づいて、前記電池の負荷を推定することを特徴とする。
【0017】
第7発明に係るEV車両の稼働状況監視プログラムは、EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得ステップと、前記EV車の走行距離を示す距離情報を取得する走行距離取得ステップと、前記画像取得ステップにより取得されたバッテリー画像と前記走行距離取得ステップにより取得された距離情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記距離情報との対応関係を算出する第1算出ステップと、前記第1算出ステップにより算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
第8発明に係るEV車両の稼働状況監視プログラムは、EV車に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像を取得する画像取得ステップと、前記電池の充電時間を示す充電時間情報を取得する時間取得ステップと、前記画像取得ステップにより取得されたバッテリー画像と前記時間取得ステップにより取得された充電時間情報とに基づいて、前記バッテリー情報と前記充電時間情報との対応関係を算出する第2算出ステップと、前記第2算出ステップにより算出された対応関係に基づいて、前記電池の負荷を推定する推定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明~第8発明によれば、バッテリー画像と距離情報とに基づいて、対応関係を算出し、算出された対応関係に基づいて、電池の負荷を推定する。これにより、例えばユーザのスマートフォン、又はEV車に搭載されたカメラ等により撮像されたEV車の各種計測機器の画像をサーバに送信し、サーバで画像解析を行い、バッテリー情報等の各種情報を取得することが可能であるため、EVEV車両メーカ固有のCANやOBD等の情報によらずに、多様性のある処理が可能となる。
【0020】
特に、第2発明によれば、走行距離画像に基づいて、距離情報を取得する。これにより、走行距離を示すEV車の測定機器から距離情報を取得することが可能となる。
【0021】
特に、第4発明によれば、充電時間画像に基づいて、充電時間情報を取得する。これにより、充電時間を示すEV車の測定機器から充電時間情報を取得することが可能となる。
【0022】
特に、第5発明によれば、対応関係に基づいて、電池の充電の種類を分類し、分類した種類に基づいて、電池の負荷を推定する。これにより、例えば対応関係から電池の充電を普通充電又は急速充電等の充電の種類に分類することが可能となる。このため、より精度よく電池の負荷を推定することができる。
【0023】
特に、第6発明によれば、車体情報と対応関係とに基づいて、電池の負荷を推定する。これにより、これにより、EV車の車種等の車体情報を考慮して、電池の負荷を推定することが可能となる。このため、より精度よく電池の負荷を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態における稼働状況監視システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施形態における稼働状況監視装置の構成の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、本実施形態における稼働状況監視装置の機能の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における稼働状況監視システムの動作のフローチャートの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、バッテリー画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、走行距離に対する電池残量に対応関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、充電時間に対する電池残量に対応関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、対応関係及び車体情報と電池負荷との対応表を示す図である。
【
図8】
図8は、対応関係と電池負荷との連関性を示す図である。
【
図9】
図9は、対応関係及び車体情報と電池負荷との連関性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した実施形態における稼働状況監視システムの一例について、図面を用いて説明する。
【0026】
図1は、稼働状況監視システム100の構成の一例を示す模式図である。稼働状況監視システム100は、例えば
図1に示すように、稼働状況監視装置1と、サーバ3と、EV車2と、充電器5とが公共通信網4を介して接続される。
【0027】
稼働状況監視装置1は、EV車2の電池の負荷を推定する装置である。稼働状況監視装置1は、EV車2、充電器5及びサーバ3から出力された各種情報に基づいて、それぞれ処理を行う。稼働状況監視装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器が用いられるほか、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、IoT(Internet of Things)デバイス等の電子機器、Raspberry Pi(登録商標)等のシングルボードコンピュータが用いられてもよい。また、稼働状況監視1は、EV車2又は充電器5に内蔵されてもよい。
【0028】
次に
図2を参照して、本実施形態における稼働状況監視装置1の一例を説明する。
図2(a)は、本実施形態における稼働状況監視装置1の構成の一例を示す模式図であり、
図2(b)は、本実施形態における稼働状況監視装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0029】
稼働状況監視装置1は、例えば
図2(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。CPU101と、ROM102と、RAM103と、保存部104と、I/F105~107とは、内部バス110により接続される。
【0030】
CPU101は、稼働状況監視装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、各種情報が保存される。保存部104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(Solid State Drive)やSDカード、miniSDカード等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば稼働状況監視装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0031】
I/F105は、公共通信網4を介して各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、稼働状況監視装置1を利用するユーザ等は、入力部108を介して、各種情報又は稼働状況監視装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された推定結果等の各種情報、または稼働状況監視装置1の処理状況等を出力する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0032】
保存部104は、各種情報が記憶されるほか、各種処理に用いるアルゴリズム及びモデル等が記憶される。表示部109は、各種情報を表示する。
【0033】
図2(b)は、稼働状況監視装置1の機能の一例を示す模式図である。稼働状況監視装置1は、取得部11と、処理部12と、算出部13と、記憶部14と、出力部15と、推定部16とを備える。なお、
図2(b)に示した取得部11と、処理部12と、算出部13と、記憶部14と、出力部15と、推定部16とは、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に保存されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能により制御されてもよい。
【0034】
取得部11は、EV車2に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像、EV車2の走行距離を示す距離情報、又は電池の充電時間を示す充電時間情報等の各種情報を取得する。また、取得部11は、EV車2に関する車両情報を取得してもよい。取得部11は、例えば公共通信網4を介して、サーバ3から各種情報を取得してもよい。
【0035】
処理部12は、取得部11により取得された画像の画像解析を行う。処理部12は、例えば取得部11により取得されたバッテリー画像を画像解析し、バッテリー情報を取得する。
【0036】
算出部13は、取得部11及び処理部12により取得された各種情報の対応関係を算出する。算出部13は、例えば処理部12により取得されたバッテリー情報と、取得部11により取得された距離情報との対応関係を算出する。
【0037】
記憶部14は、保存部104に保存された各種情報を必要に応じて取り出す。記憶部14は、取得部11と、処理部12と、算出部13とにより取得又は出力された各種情報を、保存部104に保存する。
【0038】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、I/F107を介して表示部109に結果を送信する。
【0039】
推定部16は、算出部13により算出された対応関係に基づいて、電池の負荷を推定する。
【0040】
サーバ3は、稼働状況監視装置1、EV車2、及び充電器5から送信された各種データを記憶する記憶媒体である。また、サーバ3は、必要に応じて記憶した各種データを稼働状況監視装置1、EV車2、及び充電器5に送信する。サーバ3は、例えば稼働状況監視装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば稼働状況監視装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。また、サーバ3は、稼働状況監視システムを利用するユーザが、スマートフォン等で撮像した各種画像を記憶してもよい。
【0041】
公共通信網4は、例えば稼働状況監視装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。公共通信網4は、一部がいわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、公共通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信技術で実現してもよい。
【0042】
EV車2は、電池から供給される電力を動力とする電動車両である。EV車2は、例えばハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電離自動車、クリーンディーゼル車等を含む。また、EV車2は、EV車2の状態を測定する各種測定機器を備える。また、EV車2は、例えば稼働状況監視装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば稼働状況監視装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。
【0043】
充電器5は、EV車2の電池を充電する機器である。充電器5は、EV車2の充電の状態を測定する各種測定機器を備える。例えばまた、充電器5は、例えば稼働状況監視装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば稼働状況監視装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。
【0044】
次に、本実施形態における稼働状況監視システム100の動作の一例について説明する。
図3は、本実施形態における稼働状況監視システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ステップS110において、取得部11は、各種画像を取得する。取得部11は、例えばEV車2に搭載された電池の残量を示すバッテリー情報を含むバッテリー画像、距離情報を含む走行距離画像、充電時間情報を含む充電時間画像等の各種画像を取得する。バッテリー情報は、EV車2の電池の残量を示す情報であり、例えば電池の充電率等であってもよい。距離情報は、EV車2の走行距離を示す情報である。充電時間情報は、EV車2の電池の充電時間を示す画像である。バッテリー画像は、
図4に示すように、EV車2に搭載された電池の残量を示す電池測定器21等のバッテリー情報を含む画像である。走行距離画像は、EV車2の走行距離を示す走行距離測定器22等の距離情報を含む画像である。充電時間画像は、例えば充電器5に搭載された充電時間を示すタイマーの画像等であってもよい。また、ステップS110において、バッテリー情報を含む複数の情報を含む画像を取得してもよい。例えば、
図4に示すように、バッテリー情報を示す電池測定器21と、EV車2の距離情報を示す走行距離測定器22とが含まれる画像を取得してもよい。
【0046】
また、ステップS110において、画像を介することなく、距離情報又は充電時間情報を取得してもよい。かかる場合、例えばEV車2に搭載された各種測定器から公共通信網4を介して、EV車2の速度、距離、位置、加速度、燃費等に関する各種情報を受信してもよい。
【0047】
また、ステップS110において、EV車2に関する車体情報を取得してもよい。車体情報は、例えばEV車2の車種、稼働年数等を示す情報である。ステップS110において、例えばサーバ3から公共通信網4を介して、車体情報を取得してもよい。また、例えば入力部108を介して、ユーザから車体情報を取得してもよい。
【0048】
次に、ステップS120において、ステップS110により取得した各種画像を画像解析し、各種画情報を取得する。ステップS120において、例えばステップS110により取得したバッテリー画像を画像解析し、バッテリー情報を取得してもよい。また、ステップS120において、例えばステップS110により取得した走行距離画像を画像解析し、距離情報を取得してもよい。また、ステップS120において、例えばステップS110により取得した充電時間画像を画像解析し、充電時間情報を取得してもよい。また、ステップS120において、画像解析は周知のいかなる技術を利用するようにしてもよい。また、ステップS120において、ステップS110によりバッテリー情報を含む複数の情報を含む画像を取得した場合、この画像から画像解析を用いて、バッテリー情報を含む複数の情報を取得してもよい。かかる場合、例えばバッテリー情報を示す電池測定器21と、EV車2の距離情報を示す走行距離測定器22とが含まれる画像を取得した場合、この画像から画像解析を用いて、バッテリー情報と距離情報とを取得してもよい。
【0049】
次に、ステップS130において、ステップS110及びステップS120により取得した各種情報に基づいて対応関係を算出する。対応関係は、例えば
図5に示すように、走行距離に対する電池残量を示すグラフであってもよい。また、対応関係は、例えば
図6に示すような、充電時間に対する電池残量を示すグラフであってもよい。また、対応関係は、これらのグラフの傾きであってもよい。
【0050】
また、バッテリー情報と充電時間情報との対応関係は、
図6に示すようなグラフの傾きから算出した充電の種類であってもよい。かかる場合、1時間当たりの充電電力量から、充電の種類を算出してもよい。例えば総電力量が40kWhの電池を搭載したEV車2において、電池残量が90%まで充電した場合、
図6のグラフAのように、1時間当たりの充電した電力量が、3~6kWhであれば充電の種類は普通充電とし、
図6のグラフBのように、1時間当たりの1時間当たりの充電した電力量が、20~250kWhであれば充電の種類は急速充電としてもよい。また、バッテリー情報と充電時間情報との対応関係は、充電の種類毎の回数であってもよい。かかる場合、バッテリー情報と充電時間情報との対応関係は、急速充電又は普通充電のそれぞれの回数であってもよい。
【0051】
ステップS130において、例えばステップS110及びステップS120により取得したバッテリー情報と、距離情報とから、バッテリー情報と距離情報との対応を示す対応関係を算出してもよい。また、ステップS130において、例えばステップS110及びステップS120により取得したバッテリー情報と、充電時間情報とから、バッテリー情報と充電時間情報との対応を示す対応関係を算出してもよい。
【0052】
次に、ステップS140において、ステップS130において算出した対応関係に基づいて、EV車2の電池の負荷を推定する。電池の負荷は、例えば電池負荷の程度を示す値であってもよい。かかる場合、例えば
図7に示すような、対応関係と電池負荷との関係を示す対応表を参照し、ステップS130において算出した対応関係に紐づく電池負荷を推定してもよい。また、ステップS140において、ステップS130において算出した対応関係と、ステップS110において取得した車体情報とに基づいて、
図7に示すような対応表を参照し、電池の負荷を推定してもよい。
【0053】
また、対応表は、
図8に示すように、参照用対応関係を含む入力データと電池負荷を含む出力データとの関係を示す学習済みモデルであってもよい。学習済みモデルは、予め取得された参照用対応関係を含む入力データと電池負荷を含む出力データとからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用対応関係とし、出力を電池負荷として、機械学習により生成された学習済みモデルであってもよい。かかる場合、参照用対応関係は、学習データの入力データとして用いられる対応関係であり、対応関係と同じデータ形式のものを用いてもよい。
【0054】
学習済みモデルの生成方法として、例えばニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて、学習済みモデルを生成してもよい。学習済みモデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network)等のニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて生成されるほか、任意のモデルが用いられてもよい。
【0055】
かかる場合、学習済みモデルには、入力データと出力データとの間における連関度を有する連関性が記憶される。連関度は、入力データと出力データとの繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど各データの繋がりが強いと判断することができる。連関度は、例えば百分率等の3値以上又は3段階以上で示されるほか、2値又は2段階で示されてもよい。
【0056】
例えば連関性は、複数の入力データ、対、複数の出力データの間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば複数の入力データ、及び複数の出力データに基づいて最適化された関数を用いた分類器を示す。なお、連関性は、例えば各データの間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えばデータベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。連関性は、例えば複数の入力データと、複数の出力データとの間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、
図8の「参照用対応関係A」~「参照用対応関係C」のそれぞれの入力データに対し、「電池負荷A」~「電池負荷C」の複数の出力データとの関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの出力データに対して、複数の入力データを紐づけることができる。これにより、入力データに対して多角的な出力データの選択を実現することができる。
【0057】
連関性は、例えば各出力データと、各入力データとをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、入力データに含まれる「参照用対応関係A」は、出力データに含まれる「電池負荷A」との間の連関度AA「73%」を示し、入力データに含まれる「参照用対応関係B」との間の連関度AB「12%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。例えば、「参照用対応関係A」という入力データと「電池負荷B」との連関度が「92%」であり、「参照用対応関係A」という入力データと、「電池負荷C」という出力データとの連関度が「5%」である場合、「参照用対応関係A」という入力データと「電池負荷C」との繋がりよりも「参照用対応関係A」という入力データと「電池負荷B」との繋がりが強いことを示す。
【0058】
このような
図8に示す3段階以上の連関度を予め取得しておく。つまり実際の推定解の判別を行う上で、入力データと、出力データの何れが採用、評価されたか、過去のデータセットを蓄積しておき、これらを分析、解析することで
図8に示す連関度を作り上げておく。
【0059】
例えば、過去において「参照用対応関係A」という入力データに対して、電池負荷Bが最も適合性が高いと判断され、評価されたものとする。このようなデータセットを集めて分析することにより、入力データと出力データとの連関度が強くなる。
【0060】
この分析、解析は人工知能により行うようにしてもよい。かかる場合には、例えば入力された入力データが「参照用対応関係A」である場合に、過去のデータセットに基づいて、電池負荷Bが推定される事例が多い場合には、この「参照用対応関係A」と電池負荷Bとにつながる連関度をより高く設定する。
【0061】
また、この連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。
【0062】
また、学習済みモデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0063】
また、学習済みモデルは、
図9に示すように、参照用車体情報と参照用対応関係とを含む入力データを学習データとして用いてもよい。かかる場合、参照用車体情報は、学習データの入力データとして用いられる車体情報であり、車体情報と同じデータ形式のものを用いてもよい。
【0064】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たに入力データから電池の負荷の推定を行うこととなる。かかる場合には、ステップS130において算出した対応関係に対する出力データを新たに取得する。新たに取得した入力データに基づいて、これに見合う電池負荷を推定する。推定の際には、例えば予め取得した
図8に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得した入力データが「参照用対応関係A」と同一かこれに類似するものである場合には、連関度を介して「電池負荷A」との間の連関度AA「73%」、「電池負荷B」との間の連関度AB「12%」で関連付けられている。この場合には、連関度の最も高い「電池負荷A」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「電池負荷B」を最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0065】
このような連関度を参照することにより、入力データが、出力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができるため、入力データがいかなる出力データに該当するものであるのかを精度良く判別することができる。これによって3段階以上の関係を用いて、入力データと出力データを紐づけることが可能となるので、入力データにより適した出力データを選択することができる。また、学習済みモデルは、入力された入力データと、選択された出力データを学習データとして、強化学習を行ってもよい。
【0066】
これにより、本実施形態における稼働状況監視システム100の動作が終了する。これにより、EV車両メーカ固有のCANやOBD等の情報によらずに、多様性のある処理が可能となる。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 :稼働状況監視装置
2 :EV車
3 :サーバ
4 :公共通信網
5 :充電器
10 :筐体
11 :取得部
12 :処理部
13 :算出部
14 :記憶部
15 :出力部
16 :推定部
21 :電池測定器
22 :走行距離測定器
100 :稼働状況監視システム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部
109 :表示部
110 :内部バス