(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143192
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、情報処理装置、情報処理方法及び学習モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20230928BHJP
A61B 17/135 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61B5/026 120
A61B17/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050438
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】日置 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井坂 吉伸
【テーマコード(参考)】
4C017
4C160
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB02
4C017AC28
4C017AD01
4C017BD06
4C160DD06
4C160DD33
4C160DD35
(57)【要約】
【課題】止血器具のバルーンの空気を自動で抜く場合に、血腫や出血の発生を検知することができるコンピュータプログラム、情報処理装置、情報処理方法及び学習モデル生成方法を提供する。
【解決手段】コンピュータプログラムは、コンピュータに、止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、第1の状態で穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて穿刺部位の基準色を設定し、第2の状態で穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、複数の光源の光量を取得し、取得した光量に応じて複数の光源の光量を制御する、処理を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、
前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、
取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、
前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、
穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得し、
取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
コンピュータに、
穿刺部位画像を入力した場合に、穿刺部位の領域情報及び前記領域情報の識別確度を出力する第2学習モデルに、前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を入力して、前記穿刺部位の領域情報及び識別確度を取得し、
取得した識別確度に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、
設定した基準色を前記第1学習モデルに入力する、
処理を実行させる請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
コンピュータに、
前記複数の光源の光量を変動させて、前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を前記第2学習モデルに入力し、前記第2学習モデルが出力する識別確度が所定閾値以上である場合の前記穿刺部位の色を基準色に設定する、
処理を実行させる請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
コンピュータに、
前記複数の光源の光量を制御して、前記穿刺部位を撮影した第3穿刺部位画像を取得し、
取得した第3穿刺部位画像に基づいて血腫又は出血の有無を判定する、
処理を実行させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
止血器具が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、前記穿刺部位の基準色、及び複数の光源の光量を含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力するように第1学習モデルを生成する、
学習モデル生成方法。
【請求項6】
止血器具が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、及び前記穿刺部位の領域情報を含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像を入力した場合に、穿刺部位の領域情報及び前記領域情報の識別確度を出力するように第2学習モデルを生成する、
学習モデル生成方法。
【請求項7】
止血器具が装着された穿刺部位に対して光を照射する複数の光源の光量を制御する制御部と、
前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得する第1取得部と、
取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定する設定部と、
前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得する第2取得部と、
穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得する光量取得部と
を備え、
前記制御部は、
取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する、
情報処理装置。
【請求項8】
止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、
前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、
取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、
前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、
穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得し、
取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、情報処理装置、情報処理方法及び学習モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手技後、カテーテル挿入部(穿刺部)を止血する必要がある。そのような場合、穿刺部を圧迫する止血器具を使用し、穿刺部の止血を行う。例えば、患者の穿刺部を止血するため、穿刺部にバルーンを配置し、バルーンに空気を注入することで、穿刺部を圧迫する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カテーテル手技後に穿刺部を止血する場合、患者は、止血器具で穿刺部位を圧迫した状態で、カテーテル室(手術室)を出て病棟に戻り、止血器具を装着したまま数時間を過ごす。その間、病棟の看護師は、患者の止血状態を都度確認し、バルーンの空気を少しずつ抜く処理を行う。場合によっては1人の看護師が複数の患者を管理する必要があり負担が大きい。
【0005】
看護師の負担を軽減するために自動でバルーンの空気を抜くシステムが考えられるが、自動で空気を抜く場合には、患者の状態によっては、穿刺部位に血腫や出血が発生する可能性があり、それらを検知する機構が必要である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、止血器具のバルーンの空気を自動で抜く場合に、血腫や出血の発生を検知することができるコンピュータプログラム、情報処理装置、情報処理方法及び学習モデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、コンピュータプログラムは、コンピュータに、止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得し、取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、止血器具のバルーンの空気を自動で抜く場合に、血腫や出血の発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】止血器具を腕に装着した状態を示す図である。
【
図4】カメラユニットの装着状態の一例を示す図である。
【
図5】比較例として1個の光源を用いた場合の穿刺部位の様子を示す図である。
【
図6】本実施形態の場合の穿刺部位の様子を示す図である。
【
図7】第2学習モデルを生成するための訓練データの一例を示す図である。
【
図8】第2学習モデルの生成方法の一例を示す図である。
【
図9】第1学習モデルを生成するための訓練データの一例を示す図である。
【
図10】第1学習モデルの生成方法の一例を示す図である。
【
図11】情報処理装置による光源の光量の調整方法の一例を示す図である。
【
図12】情報処理装置の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の情報処理システムの構成の一例を示す図である。情報処理システムは、情報処理装置50を備える。情報処理システムは、情報処理装置50に加えて、カメラユニット10、止血器具20、及び圧力制御装置80を備えてもよい。カメラユニット10は、カメラユニット10全体を制御するコントローラ11、カメラ12、光源13、14などを備える。コントローラ11は、カメラユニット10と情報処理装置50との間の通信機能、カメラ12の動作制御、光源13、14の光量の検出機能や光量の制御機能などを有する。カメラユニット10は、後述のように、止血器具20に着脱可能に装着することができる。光源13、14は、例えば、白色LEDで構成することができる。
【0011】
図2は止血器具20の構成の一例を示す図である。止血器具20は、帯体21、チューブ22、バルーン23、湾曲支持板24、面ファスナ25、26などを備える。帯体21は、可撓性を有する帯状の部材であり、穿刺部位を覆うようにして腕(手首など)に巻き付けられる。面ファスナ25、26は、お互いが接合するようにして帯体21が腕に装着される。帯体21、及びバルーン23は、腕に装着された状態で、穿刺部位を覆う部分が、実質的に透明、あるいは、高い光透過性を有する。これにより、止血器具20の外側から穿刺部位を目視することができ、また、カメラユニット10により穿刺部位を撮影することができる。
【0012】
湾曲支持板24は、バルーン23を外面側から穿刺部位に対して位置決めして押える部材である。湾曲支持板24も、実質的に透明か、高い光透過性を有する。湾曲支持板24は、透明性を備える材料であれば特に限定されない。
【0013】
バルーン23は、流体(例えば、空気など)が注入されることにより拡張し、穿刺部位を押圧して圧迫する可撓性を有する袋状の部材である。バルーン23は、湾曲支持板24の湾曲した面に位置するように、帯体に固定されている。
【0014】
チューブ22は、バルーン23への空気の注入、バルーン23からの空気の排出に用いられる可撓性を有する管である。チューブ22は、一方の端部がバルーン23に接続され、その内腔がバルーン23の内部に連通する。チューブ22は、他方の端部が、接続機構91を介して圧力制御装置80の配管に接続される。なお、
図2に例示した止血器具20は、一例であって、止血器具20は、
図2の構成に限定されない。
【0015】
接続機構91は、止血器具20のチューブ22と圧力制御装置80の配管とを接続するための機構であれば、適宜の機構を用いることができる。接続機構91は、チューブ22を容易に着脱可能とする。
【0016】
圧力制御装置80は、圧力制御部81、通信部82、操作部83、記憶部84、及びエア注入・排出部85を備える。
【0017】
エア注入・排出部85は、減圧弁86、圧力センサ87、加圧弁88、ポンプ89、及びエアタンク90などを備える。エアタンク90は、気密性を有する容器である。エアタンク90には、加圧された空気が蓄えられる。ポンプ89は、加圧した空気を生成し、エアタンク90内に供給する。エアタンク90とポンプ89とは配管により接続される。加圧弁88は、エアタンク90からチューブ22に繋がる配管の通路を開閉して、エアタンク90からバルーン23に注入する空気を調整する弁である。減圧弁86は、エアタンク90からチューブ22に繋がる配管から分岐し、一部の空気をバルーン23から外部に排出することにより、バルーン23及びバルーン23に連通する配管内の気圧を減圧する。圧力センサ87は、バルーン23およびチューブ22に連通する配管内の気圧を検出するためのセンサである。
【0018】
圧力制御部81は、エア注入・排出部85の各部の動作を制御する。圧力制御部81は、エア注入・排出部85を通じて、バルーン23を加圧するとともに減圧する。また、圧力制御部81は、圧力制御装置80全体を制御する。圧力制御部81は、タイマーを内蔵し、止血器具20の止血開始(バルーン23の加圧開始)からの時間を計測する。圧力制御部81は、穿刺部位に最初に加える圧力(初期加圧の圧力)、及び穿刺部位に加える圧力を時間とともに減圧する割合を含む止血パラメータを記憶する。また、圧力制御部81は、情報処理装置50の制御部51からの指令に基づいて、バルーン23の加圧・減圧を制御する。
【0019】
通信部82は、通信モジュールを備え、情報処理装置50との間の通信機能を備える。
【0020】
操作部83は、表示パネル、キーボード、ボタンなどを備え、看護師などの医療従事者からの操作を受け付けることができる。操作部83を操作することにより、バルーン23の初期加圧の圧力、止血パラメータなどを設定できる。また、バルーン23の圧力を表示してもよい。
【0021】
記憶部84は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、所要の情報を記憶することができる。記憶部84は、患者情報、患者用の止血パラメータ、止血器具20を用いて行った止血の経過情報等を記憶してもよい。
【0022】
図3は止血器具20を腕に装着した状態を示す図である。符号Pは穿刺部位を示す。本明細書において、穿刺部位は、カテーテル挿入部位、あるいはシースイントロデューサを抜去した後の止血すべき部位、及び当該部位の周辺箇所(例えば、血腫や出血が発生し得る箇所)を含むものとする。
図3に示すように、止血器具20は、空気が注入され加圧されたバルーン23を穿刺部位Pに押圧することにより、圧迫止血する。
【0023】
図4はカメラユニット10の装着状態の一例を示す図である。カメラユニット10は、腕に装着された止血器具20の所定位置に着脱可能に装着できるように構成されている。カメラユニット10を止血器具20に装着した状態において、カメラ12は、バルーン23などを介して穿刺部位Pを撮影することができる。カメラ12の周辺には、光源13、14が配置されている。
図4の例では、カメラ12を間にして光源13、14が対向配置され、各光源13、14は、穿刺部位Pをその両側から照らしている。なお、光源の数は、2個に限定されるものではなく、3個以上備える構成でもよい。
【0024】
図5は比較例として1個の光源を用いた場合の穿刺部位の様子を示す図である。
図5Aは、カメラの正面から光源の光を照射した場合の様子を模式的に示す。なお、カメラは中心(穿刺部位Pの真上)にある。
図5Aの場合、光源の光が止血器具20(バルーン23)に反射して穿刺部位Pが識別しにくくなる可能性がある。
図5B及び
図5Cは、光源の光を側面から照射した場合の様子を模式的に示す。
図5B及び
図5Cの場合、光源の光を片側からのみ照射するので、穿刺部位Pの近傍にバルーン23等の影が映る可能性がある。
【0025】
図6は本実施形態の場合の穿刺部位の様子を示す図である。本実施形態では、穿刺部位Pに対して、穿刺部位Pの両側に配置される2個の光源13、14から光を照射するので、不要な反射や影の発生を抑制できる。
【0026】
情報処理装置50は、情報処理装置50全体を制御する制御部51、通信部52、メモリ53、画像処理部54、光量制御部57、記憶部58、及び記録媒体読取部62を備える。画像処理部54は、基準色設定部55、及び血腫・出血判定部56を備える。記憶部58は、コンピュータプログラム59、第1学習モデル60、及び第2学習モデル61を記憶する。コンピュータプログラム59を記録した記録媒体Mは、記録媒体読取部62によって読み取ることができる。なお、コンピュータプログラム59は、通信部52を介して、外部の装置からダウンロードして記憶部58に格納してもよい。
【0027】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などで構成することができる。また、制御部51は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)等で構成してもよい。制御部51は、コンピュータプログラム59で定められた処理を実行することができる。すなわち、制御部51による処理は、コンピュータプログラム59による処理でもある。
【0028】
通信部52は、通信モジュールを備え、圧力制御装置80、及びカメラユニット10との間の通信機能を有する。通信部52は、コントローラ11を介して、カメラ12で撮影した穿刺部位の画像(穿刺部位画像)を取得できる。また、通信部52は、コントローラ11に対して、光源13、14の光量を制御するための制御信号を出力する。また、通信部52は、圧力制御装置80に対して、止血器具20のバルーン23の圧力を制御する制御信号を出力する。
【0029】
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。コンピュータプログラム59をメモリ53に展開して、制御部51がコンピュータプログラム59を実行することができる。
【0030】
制御部51は、止血器具20が装着された穿刺部位に対して光源13、14の光を照射する。制御部51は、穿刺部位が第1の状態において、穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて穿刺部位の基準色を設定する。第1の状態とは、例えば、穿刺部位に止血器具20を装着した状態で加圧前、加圧途中、または加圧完了後であって、止血器具20の減圧前の状態を含む。基準色は、第1の状態における穿刺部位の色である。
【0031】
次に、制御部51は、止血中に定期的に穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、穿刺部位の色が基準色に合うように光源13、14の光量を調整する。具体的には、光量制御部57は、制御部51の指令に基づいて、光源13、14の光量を制御する制御信号をカメラユニット10へ出力する。第2穿刺部位画像は、第1の状態より後の第2の状態において、穿刺部位を撮影した画像であって、光源13、14の光量を制御するために用いられる画像である。第2の状態とは、例えば、止血器具20の減圧時、減圧途中、減圧完了後の状態、減圧の有無に関わらず血腫や出血が発生した状態を含む。
【0032】
基準色の設定は、画像処理部54で行ってもよく、あるいは、第2学習モデル61を用いてもよい。画像処理部54で行う場合、基準色設定部55は、穿刺部位が第1の状態での場合において、穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて穿刺部位の基準色を設定してもよい。
【0033】
次に、第2学習モデル61を用いて基準色を設定する方法について説明する。
【0034】
図7は第2学習モデル61を生成するための訓練データの一例を示す図である。止血器具20が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、及び当該穿刺部位の領域情報を含む訓練データを収集する。領域情報は、穿刺部位の位置と範囲を含む。
図7に示すように、具体的には、光源13、14の光量を変化させた状態、穿刺部位やその近傍に存在する影の有無や影の程度を変化させた状態、及び肌の色が異なる複数の患者に止血器具20を装着した状態などの種々の状態において穿刺部位を撮影した穿刺部位画像を収集するとともに、それぞれの穿刺部位画像に対応する教師データとして、穿刺部位をアノテーションしたアノテーション画像を収集する。
図7の例では、穿刺部位画像G1、…、Gnそれぞれに対応するアノテーション画像A1、…、Anを示す。
【0035】
図8は第2学習モデル61の生成方法の一例を示す図である。制御部51は、止血器具20が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、及び当該穿刺部位の領域情報を含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像を入力した場合に、穿刺部位の領域情報及び当該領域情報の識別確度を出力するように第2学習モデル61を生成する。具体的には、穿刺部位画像を第2学習モデル61に入力した場合に、第2学習モデル61が出力する穿刺部位の領域情報が、教師データの穿刺部位の領域情報に近づくように、第2学習モデル61のパラメータを調整する。第2学習モデル61は、例えば、U-Net、GAN(Generative Adversarial Network)、またはSegNet等で構成することができる。
【0036】
制御部51は、穿刺部位が第1の状態において、穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を第2学習モデル61に入力し、第2学習モデル61が出力する穿刺部位の領域情報及び識別確度を取得する。制御部51は、第1穿刺部位画像の中で、取得した穿刺部位の領域情報で示す領域の色を基準色として設定することができる。
【0037】
また、制御部51は、取得した識別確度に基づいて穿刺部位の基準色を設定してもよい。具体的には、制御部51は、光源13、14の光量を変動させて、穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を第2学習モデル61に入力し、第2学習モデル61が出力する識別確度が所定閾値以上である場合の穿刺部位の領域情報で示す領域の色を基準色として設定してもよい。
【0038】
次に、第1学習モデル60を用いて光源13、14の光量を調整する方法について説明する。
【0039】
図9は第1学習モデル60を生成するための訓練データの一例を示す図である。止血器具20が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、穿刺部位の基準色、及び光源13、14の光量を含む訓練データを収集する。
図9に示すように、具体的には、光源13、14の光量を変化させた状態、穿刺部位やその近傍に存在する影の有無や影の程度を変化させた状態、及び穿刺部位の範囲と色を変化させた状態などの種々の状態において穿刺部位を撮影した穿刺部位画像を収集するとともに、それぞれの穿刺部位画像に対応する教師データとして、特定の影がなく、穿刺部位の色が基準色となるような光源13、14の光量を収集する。特定の影とは、穿刺部位全体が一様に暗いわけではなく、穿刺部位のある特定の部分(穿刺部位の一部)のみ暗い状態の影である。
図9の例では、穿刺部位画像G1、…、Gnそれぞれに対応して、特定の影がなく穿刺部位の色が基準色となる光源13、14の光量データを示す。
【0040】
図10は第1学習モデル60の生成方法の一例を示す図である。制御部51は、止血器具20が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、穿刺部位の基準色、及び光源13、14の光量を含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、穿刺部位の色が基準色になるように、光源13、14の光量を出力するように第1学習モデル60を生成する。具体的には、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を第1学習モデル60に入力した場合に、第1学習モデル60が出力する、光源13、14の光量が、教師データである、穿刺部位画像に特定の影がなく、穿刺部位の色が基準色となる光源13、14の光量に近づくように、第1学習モデル60のパラメータを調整する。第1学習モデル60は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)で構成することができる。
【0041】
制御部51は、止血中に定期的に穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像、すなわち、第2の状態で穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得する。制御部51は、取得した第2穿刺部位画像及び設定された基準色を第1学習モデル60に入力して、第1学習モデル60が出力する、光源13、14の光量を取得する。光量制御部57は、取得した光量に応じて光源13、14の光量を制御する制御信号をカメラユニット10へ出力する。カメラユニット10のコントローラ11は、取得した制御信号に基づいて光源13、14の光量を制御する。第1学習モデル60に入力される基準色は、基準色設定部55で設定された基準色でもよく、あるいは、第2学習モデル61が出力する識別確度に基づいて設定された基準色でもよい。
【0042】
血腫・出血判定部56は、光源13、14の光量を制御して、止血中に定期的に穿刺部位を撮影した穿刺部位画像(第3穿刺部位画像)を取得し、取得した穿刺部位画像に基づいて血腫又は出血の有無を判定する。第3穿刺部位画像は、第1の状態より後の第2の状態において、穿刺部位を撮影した画像であって、血腫・出血の判定に用いられる画像である。具体的には、血腫・出血判定部56は、時系列的に取得された第3穿刺部位画像における穿刺部位の血腫又は出血の領域のサイズがどの程度大きくなっているかによって、血腫又は出血の有無を判定できる。例えば、出血の領域のサイズが変化なければ出血は止まっていると判定できる。また、出血の領域のサイズが徐々に大きくなっている場合、出血が発生していると判定できる。血腫も同様である。
【0043】
図11は情報処理装置50による光源13、14の光量の調整方法の一例を示す図である。ある撮影時の状態(第1の状態)において、患者の腕に止血器具20が装着され、穿刺部位を撮影し、穿刺部位の色を100(基準色を100と表現する)とし、自然光の強さを10とし、光源13、14それぞれの光量を5/10(50%)、5/10(50%)、特定の影はないとする。
【0044】
次に、患者が止血器具20を装着したまま場所を移動し、自然光が少なくなったとする。自然光が少なくなることによって、穿刺部位が暗くなり、穿刺部位の色が50となり、自然光の強さが2となり、光源13、14それぞれの光量を5/10(50%)、5/10(50%)のままであり、特定の影はないとする。
【0045】
穿刺部位が暗くなったので、穿刺部位を明るくするため、光源13、14の光量を増やす。その結果、穿刺部位の色が100となり、自然光の強さが2のままで、光源13、14それぞれの光量を7/10(70%)、7/10(70%)としたが、特定の影が発生したとする。
【0046】
特定の影を無くすために、光源13、14の光量を調整し、その結果、穿刺部位の色が100のまま、自然光の強さが2のままで、光源13、14それぞれの光量を6/10(60%)、8/10(80%)として、特定の影が無くなる。すなわち、光源13、14の光量を調整することで、穿刺部位の色を基準色とし、かつ穿刺部位に特定の影がない状態で穿刺部位の撮影を行うことができる。
【0047】
上述のように、止血器具20のバルーン23の空気を自動で抜く場合に、光源13、14の光量を制御して、穿刺部位の色が基準色となるとともに、穿刺部位に特定の影が発生しないようにして、カメラ12で定期的に穿刺部位を撮影するので、精度よく血腫や出血の発生を検知することができる。例えば、止血器具のバルーンの減圧時、患者の穿刺部位の止血の進行状況により、穿刺部位に血種や出血が発生する場合がある。そのため、止血器具のバルーンの減圧前で、かつ、穿刺部位に血種や出血が発生していない状態の第1穿刺部位画像から穿刺部位の基準色を設定する。そして、止血器具のバルーンを減圧した後、光源13、14の光量を制御して、穿刺部位の色が基準色となるとともに、穿刺部位に特定の影が発生しないようにして、カメラ12で定期的に穿刺部位を撮影する。それにより、穿刺部位画像から精度よく血腫や出血の発生を検知することができる。
【0048】
図12は情報処理装置50の処理手順の一例を示す図である。便宜上、処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、第1の状態で穿刺部位を撮影した穿刺部位画像(第1穿刺部位画像)を取得し(S11)、穿刺部位を識別する(S12)。制御部51は、穿刺部位の基準色を設定する(S13)。基準色の設定は、画像処理部54で行ってもよく、あるいは、第2学習モデル61を用いてもよい。
【0049】
制御部51は、止血器具20の減圧を開始し(S14)、第2の状態で穿刺部位を撮影した穿刺部位画像(第2穿刺部位画像)を取得する(S15)。制御部51は、穿刺部位の色が基準色となり、かつ穿刺部位に特定の影が発生しないように、光源13、14の光量を調整する(S16)。
【0050】
制御部51は、光量が調整された状態で、穿刺部位を撮影した穿刺部位画像(第3穿刺部位画像)を取得し(S17)、血腫又は出血があるか否かを判定する(S18)。血腫又は出血の有無の判定は、適宜の間隔(例えば、10秒~20秒、1分~2分、あるいは減圧時のみ等)で行えばよい。血腫又は出血のいずれか、あるいは両方がある場合(S18でYES)、制御部51は、止血器具20に対する処置を行って(S19)、ステップS15以降の処理を続ける。止血器具20に対する処置は、例えば、止血器具20の減圧を一旦停止する、あるいはバルーン23に空気を注入して、適切な加圧を行う。
【0051】
血腫、出血のいずれもない場合(S18でNO)、制御部51は、止血器具20の減圧が完了したか否かを判定し(S20)、減圧が完了していない場合(S20でNO)、ステップS15以降の処理を続け、減圧が完了した場合(S20でYES)、処理を終了する。
【0052】
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータに、止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得し、取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する、処理を実行させる。
【0053】
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータに、穿刺部位画像を入力した場合に、穿刺部位の領域情報及び前記領域情報の識別確度を出力する第2学習モデルに、前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を入力して、前記穿刺部位の領域情報及び識別確度を取得し、取得した識別確度に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、設定した基準色を前記第1学習モデルに入力する、処理を実行させる。
【0054】
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータに、前記複数の光源の光量を変動させて、前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を前記第2学習モデルに入力し、前記第2学習モデルが出力する識別確度が所定閾値以上である場合の前記穿刺部位の色を基準色に設定する、処理を実行させる。
【0055】
本実施形態のコンピュータプログラムは、コンピュータに、前記複数の光源の光量を制御して、前記穿刺部位を撮影した第3穿刺部位画像を取得し、取得した第3穿刺部位画像に基づいて血腫又は出血の有無を判定する、処理を実行させる。
【0056】
本実施形態の学習モデル生成方法は、止血器具が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、前記穿刺部位の基準色、及び複数の光源の光量を含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力するように第1学習モデルを生成する。
【0057】
本実施形態の学習モデル生成方法は、止血器具が装着された穿刺部位を撮影した穿刺部位画像、及び前記穿刺部位の領域情報を含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づいて、穿刺部位画像を入力した場合に、穿刺部位の領域情報及び前記領域情報の識別確度を出力するように第2学習モデルを生成する。
【0058】
本実施形態の情報処理装置は、止血器具が装着された穿刺部位に対して光を照射する複数の光源の光量を制御する制御部と、前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得する第1取得部と、取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定する設定部と、前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得する第2取得部と、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得する光量取得部とを備え、前記制御部は、取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する。
【0059】
本実施形態の情報処理方法は、止血器具が装着された穿刺部位に対して複数の光源の光を照射し、前記穿刺部位が第1の状態で前記穿刺部位を撮影した第1穿刺部位画像を取得し、取得した第1穿刺部位画像に基づいて前記穿刺部位の基準色を設定し、前記第1の状態より後の第2の状態で前記穿刺部位を撮影した第2穿刺部位画像を取得し、穿刺部位画像及び穿刺部位の基準色を入力した場合に、特定の影がなく、前記穿刺部位の色が基準色になるように、複数の光源の光量を出力する第1学習モデルに、取得した第2穿刺部位画像及び設定した基準色を入力して、前記複数の光源の光量を取得し、取得した光量に応じて前記複数の光源の光量を制御する。
【符号の説明】
【0060】
10 カメラユニット
11 コントローラ
12 カメラ
13、14 光源
20 止血器具
21 帯体
22 チューブ
23 バルーン
24 湾曲支持板
25、26 面ファスナ
50 情報処理装置
51 制御部
52 通信部
53 メモリ
54 画像処理部
55 基準色設定部
56 血腫・出血判定部
57 光量制御部
58 記憶部
59 コンピュータプログラム
60 第1学習モデル
61 第2学習モデル
80 圧力制御装置
81 圧力制御部
82 通信部
83 操作部
84 記憶部
85 エア注入・排出部
86 減圧弁
87 圧力センサ
88 加圧弁
89 ポンプ
90 エアタンク
91 接続機構