(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143206
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】飲料サーバー
(51)【国際特許分類】
B67D 1/04 20060101AFI20230928BHJP
B67D 1/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B67D1/04 C
B67D1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050462
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚明
(72)【発明者】
【氏名】成田 秀一
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB02
3E082CC01
3E082EE02
3E082FF03
(57)【要約】
【課題】洗浄時に廃棄する飲料の量を減らせると共に、フロスティミストを安定して生じさせることができる飲料サーバーを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る飲料サーバーにおいて、カランは、一方向にスライドして飲料注出部を開放することによって飲料注出部から飲料を注出させ、一方向の逆方向にスライドして発泡体注出部を開放することにより発泡体注出部から発泡体を注出させるスライド弁30を有する。スライド弁30は、飲料が流入する飲料流入口31cと、飲料流入口31cから流入した飲料から泡を生成し、泡を発泡体注出部に流出させる複数の発泡体流出口35と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を注出する飲料注出部、及び前記飲料の泡を注出する発泡体注出部を有するカランと、
前記カランが取り付けられた筐体と、
を備え、
前記筐体の内部において前記飲料は0.15MPa以下の押圧によって加圧されて前記カランに供給され、
前記カランは、一方向にスライドして前記飲料注出部を開放することによって前記飲料注出部から前記飲料を注出させ、前記一方向の逆方向にスライドして前記発泡体注出部を開放することにより前記発泡体注出部から前記泡を注出させるスライド弁を有し、
前記スライド弁は、
前記飲料が流入する飲料流入口と、
前記飲料流入口から流入した前記飲料から前記泡を生成し、前記泡を前記発泡体注出部に流出させる複数の発泡体流出口と、を有する、
飲料サーバー。
【請求項2】
前記スライド弁は、少なくとも3個の発泡体流出口を有し、
前記少なくとも3個の発泡体流出口は、1本の直線上に並ばない位置に配置されている、
請求項1に記載の飲料サーバー。
【請求項3】
前記飲料にガスを供給して前記押圧を行うガス供給装置を備え、
前記ガス供給装置による前記ガスの前記押圧が0.10MPa以上且つ0.12MPa以下である、
請求項1又は2に記載の飲料サーバー。
【請求項4】
前記発泡体流出口の直径が0.5mm以上且つ0.6mm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料サーバー。
【請求項5】
前記飲料が収容されている樽と、
前記樽及び前記カランを互いに接続する飲料供給経路と、
を備え、
前記樽及び前記飲料供給経路が前記筐体の内部において冷却されており、冷却された前記樽に収容された飲料が前記飲料供給経路を介して前記カランに供給される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料サーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飲料の発泡体を注出する飲料サーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から飲料サーバーとしては種々のものが知られている。特許第6583979号公報には、飲料注出装置の飲料注出コック、弁棒及び飲料ディスペンサが記載されている。飲料注出装置は、飲料注出コックが取り付けられた箱状の飲料ディスペンサと、樽である飲料移送容器と、炭酸ガスボンベとを備える。
【0003】
飲料注出コックは、飲料ディスペンサに取り付けられるハウジングと、ハウジングの内部に配置された弁本体と、弁本体の内部に配置された弁棒と、弁棒をスライドさせる可動部とを備える。弁本体は、弁棒を収容する孔と、孔の端部に配置された弁座と、飲料の泡を吐出する泡付け口とを有する。弁棒は、弁本体の孔の中にスライド可能に配置される。
【0004】
弁棒は、弁本体の弁座と共に第1弁を構成する弁体と第1シールとを有する。第1弁は、ビール等の飲料の注出を制御するための弁である。可動部は、第1シールに対向する第2シールを有する。第2シールは、第1シールと共に第2弁を構成する。第2弁は、飲料の泡の供給(泡付け)を制御するための弁である。
【0005】
弁棒は、弁体を貫通して延びた第1流路と、第1シールから第1流路まで延びた1又は複数の第2流路とを有する。可動部が右方向に移動すると、弁棒が右方向に移動することによって弁座と弁体との間に隙間が形成され、当該隙間から飲料が飲料注出コックの外部に注出される。可動部が左方向に移動すると、弁棒の第1シールと可動部の第2シールとの間に隙間が形成され、当該隙間を飲料が通ることによって飲料が泡状になる。
【0006】
泡状となった飲料は泡付け口を介して飲料注出コックの外部に注出される。樽である飲料移送容器は、飲料ディスペンサの外部に設けられており、飲料ディスペンサから延び出すホースを介して飲料ディスペンサに飲料が供給される。飲料は、飲料ディスペンサの内部において冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
飲料サーバーから飲料を注出して一定時間が経過すると、発泡性飲料の泡と液体との境界部分にフロスティミストと称される微細気泡含有層が形成されることがある。フロスティミストはジョッキ等の飲料容器に注出された発泡性飲料が飲用されるときに刺激され、きめ細かい泡が多く再生されると考えられている。
【0009】
ところで、冷蔵庫の内部に樽が配置される飲料サーバーが知られている。この種の飲料サーバーは、常温の飲料を冷却する冷却装置を備えた瞬間冷却式サーバーと比較して飲料の温度が低いので、飲料に供給されるガスの圧力を0.15MPa以下にすることが求められることがある。飲料に供給されるガスの圧力が0.15MPa以下である場合、飲料の注出時に前述したフロスティミストを安定して生じさせることができないという現状がある。
【0010】
本開示は、飲料に供給されるガスの圧力が低い場合でもフロスティミストを安定して生じさせることができる飲料サーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る飲料サーバーは、飲料を注出する飲料注出部、及び飲料の泡を注出する発泡体注出部を有するカランと、カランが取り付けられた筐体と、を備える。筐体の内部において飲料は0.15MPa以下の押圧によって加圧されてカランに供給される。カランは、一方向にスライドして飲料注出部を開放することによって飲料注出部から飲料を注出させ、一方向の逆方向にスライドして発泡体注出部を開放することにより発泡体注出部から泡を注出させるスライド弁を有する。スライド弁は、飲料が流入する飲料流入口と、飲料流入口から流入した飲料から泡を生成し、泡を発泡体注出部に流出させる複数の発泡体流出口と、を有する。
【0012】
この飲料サーバーでは、飲料が0.15MPa以下の押圧によって加圧される。この飲料サーバーでは、筐体に取り付けられたカランが飲料注出部と発泡体注出部とを有し、カランに0.15MPa以下の圧力を受けた飲料が供給される。カランはスライド弁を有する。スライド弁は、一方向にスライドして飲料注出部から飲料を注出させ、一方向の逆方向にスライドして発泡体注出部から発泡体を注出させる。スライド弁は、飲料流入口を介して流入した飲料から発泡体を生成し、生成した発泡体を流出させる複数の発泡体流出口を有する。スライド弁が複数の発泡体流出口を有することにより、飲料に供給されるガスの圧力が0.15MPa以下であっても、前述したフロスティミストを安定して生じさせることができる。すなわち、飲料に供給されるガスの圧力が低い場合であってもフロスティミストを安定して生じさせることができる。
【0013】
スライド弁は、少なくとも3個の発泡体流出口を有してもよい。少なくとも3個の発泡体流出口は、1本の直線上に並ばない位置に配置されていてもよい。この場合、スライド弁における発泡体流出口が配置される領域を小さくできるので、スライド弁のコンパクト化に寄与する。
【0014】
飲料サーバーは、飲料にガスを供給して押圧を行うガス供給装置を備えてもよく、ガス供給装置によるガスの押圧が0.10MPa以上且つ0.12MPa以下であってもよい。この場合、ガスの圧力が0.10MPa以上であることにより、フロスティミストをより安定して生じさせることができる。ガスの圧力が0.12MPa以下であることにより、飲料サーバーにおけるガス圧を適正圧力に維持することができる。例えば、ガスが炭酸ガスである場合には、飲料に溶け込む炭酸の量を適正に維持できる。そして、ガスの圧力が0.12MPa以下であってもフロスティミストを安定して生じさせることができる。
【0015】
発泡体流出口の直径が0.5mm以上且つ0.6mm以下であってもよい。この場合、発泡体流出口の直径が0.5mm以上であることにより、発泡体流出口における目詰まりを抑制できる。発泡体流出口の直径が0.6mm以下であることにより、フロスティミストをより高頻度で生じさせることができる。
【0016】
飲料サーバーは、飲料が収容されている樽と、樽及びカランを互いに接続する飲料供給経路と、を備えてもよい。樽及び飲料供給経路が筐体の内部において冷却されており、冷却された樽に収容された飲料が飲料供給経路を介してカランに供給されてもよい。この場合、飲料サーバーでは、樽、及び樽からカランに飲料を供給する飲料供給経路が筐体の内部において冷却されている。よって、予め冷却された樽から飲料供給経路を介してカランに飲料が供給され、瞬間冷却式サーバーに設けられるビール冷却コイル及び水槽を不要とすることができるので、飲料の冷却装置を簡易にすることができる。飲料サーバーの水による洗浄時には、飲料供給経路を洗浄すればよいので、水による洗浄時に廃棄する飲料を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、飲料に供給されるガスの圧力が低い場合でもフロスティミストを安定して生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る飲料サーバーを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る飲料サーバーの扉が開放された状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る飲料サーバーの内部構造を示す模式的な断面図である。
【
図4】実施形態に係る飲料サーバーのカランを示す断面図である。
【
図5】フロスティミストが生成された発泡性飲料を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態に係るカランのスライド弁を示す断面図である。
【
図7】実施形態に係るカランの発泡体流出口を示す正面図である。
【
図8】変形例に係るカランの発泡体流出口を示す正面図である。
【
図9】(a)は、実施例に係る飲料サーバーから注出された飲料を示す写真である。(b)は、比較例に係る飲料サーバーから注出された飲料を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る飲料サーバーの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る飲料サーバー1を示す斜視図である。飲料サーバー1は、例えば、飲食店に設けられる装置であって顧客の注文等に応じてカラン10のレバー11を操作することによって飲料を注出可能となっている。飲料は、例えば、発泡性飲料D(
図5参照)である。発泡性飲料Dは、例えば、炭酸ガス等のガス含有発酵酒を含んでおり、飲料容器Cに注出されたときに飲料Lの上に泡Bの層が形成される泡立ち特性と、形成された泡Bが一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0021】
発泡性飲料Dは、例えば、EBC(European Brewery Convention:欧州醸造協会)法によるNIBEM値が50秒以上となる飲料である。NIBEM値は飲料の泡持ち特性を示す指標値である。発泡性飲料Dはビールテイスト飲料であってもよい。ビールテイスト飲料は、ビールのような味わいを奏する飲料、及び、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を含む。アルコール度数が1%以上であるビールテイスト飲料は、ビールテイストアルコール飲料とも称される。
【0022】
ビールテイスト飲料は、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒、ノンアルコールビール、リキュール(例えば、酒税法上「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)等の麦芽発酵飲料、及び、原料として麦又は麦芽を使用しないビールテイスト飲料(例えば、酒税法上「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)を含んでいる。なお、発泡性飲料Dは、ビールテイスト飲料ではない飲料であってもよい。以下では、飲料Lがビール液であり、発泡性飲料Dがビールである例について説明する。
【0023】
飲料サーバー1は、カラン10が取り付けられた筐体2を有する。一例として、筐体2は、高さ方向である第1方向D1、奥行方向である第2方向D2、及び、飲料サーバー1の使用者が飲料サーバー1の前に位置するときの左右方向である第3方向D3に延びる箱状を呈する。例えば、筐体2は冷蔵庫である。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、互いに交差しており、一例として、互いに直交している。
【0024】
以下では、飲料サーバー1から見て飲料サーバー1の使用者に向けられる方向を前、前側、前方、手前又は手前側とし、その反対方向を後、後側、後方、奥又は奥側として説明する。しかしながら、これらの方向は便宜上のものであって部品の取付位置等を限定するものではない。
【0025】
例えば、筐体2は、床面等の載置面Sに載置される第1筐体3と、第1筐体3の上方に位置する第2筐体4とを含む。例えば、第1筐体3の第1方向D1への長さ(高さ)は第2筐体4の第1方向D1への長さより長く、第1筐体3の第2方向D2への長さは第2筐体4の第2方向D2への長さより長い。一例として、第1筐体3の第3方向D3への長さ(幅)は、第2筐体4の第3方向D3への長さと同程度である。
【0026】
例えば、第1筐体3は、第1方向D1及び第3方向D3の双方に延在する前面3bと、第1方向D1及び第2方向D2の双方に延在する側面3cと、第1方向D1の一方側(鉛直上方)に向けられる上面3dと、上面3dとは反対側を向く下面3fとを有する。一例として、第1筐体3は、下面3fの複数の隅部のそれぞれから突出する複数の脚部3gを有する。複数の脚部3gが載置面Sに接することによって、下面3fは載置面Sから離隔している。
【0027】
第1筐体3は、前面3bを構成する扉3hを有する。扉3hは、前面3bの第3方向D3の一方側(一例として右側)において第1方向D1に延在するヒンジ3jを中心として開閉自在とされている。一例として、第1筐体3は、前面3bに第1筐体3の内部温度を表示するインジケータ3kを有していてもよい。飲料サーバー1の使用者がインジケータ3kを視認することによって第1筐体3の内部温度を把握することができる。一例として、インジケータ3kは前面3bの左上に設けられている。
【0028】
例えば、第2筐体4は、第1方向D1及び第3方向D3の双方に延在する前部4bと、第1方向D1及び第2方向D2の双方に延在する側部4cと、第1方向D1の一方側(鉛直上方)に向けられる上部4dとを有する。例えば、飲料サーバー1のカラン10は、第2筐体4の前部4bに取り付けられている。
【0029】
例えば、第2筐体4の側部4cには、第2筐体4の内外を連通する通気孔4fが形成されている。一例として、第2筐体4は複数の通気孔4fを有し、各通気孔4fは第2方向D2に沿って延在している。第2筐体4の前部4bの下方には、第1筐体3の上面3dが延在している。
【0030】
すなわち、第1筐体3は、第2筐体4の前部4bの下端から前方に延びる上面3dを有する。上面3dには、例えば、前述した飲料容器Cを置くことが可能とされている。
【0031】
図2は、飲料サーバー1の内部構造を示す斜視図である。
図3は、飲料サーバー1の内部構造を模式的に示す飲料サーバー1の断面図である。
図2及び
図3に示されるように、第1筐体3の内部、及び第2筐体4の内部は、互いに連通している。飲料サーバー1は、樽5を収容可能な内部空間1bを有する。
【0032】
一例として、飲料サーバー1は、樽5が格納される筐体2を有する樽格納式サーバー(空冷式サーバー)である。樽5は飲料(例えばビール)が詰められた容器である。第1筐体3の扉3hを開放することによって飲料サーバー1の内部に収容された樽5は視認可能とされている。
【0033】
飲料サーバー1は、樽5の他、ボンベ6と、ボンベ6に取り付けられた減圧弁7と、樽5に取り付けられたヘッド8とを有する。ボンベ6は、飲料にガス(気体)を供給して押圧を行うガス供給装置の一例である。例えば、減圧弁7は、樽5の内部の圧力(ガス圧)を適正に保持するための装置である。ヘッド8は樽5の上端に取り付けられている。ボンベ6は、例えば、筐体2の外部に配置される。しかしながら、ボンベ6は筐体2の内部に配置されてもよく、ボンベ6の配置位置は特に限定されない。
【0034】
ボンベ6は、例えば、ガス(例えば炭酸ガス)が高圧で充填された容器であって、樽5の内部の飲料をカラン10に押し出す機能を有すると共に、樽5の内部に含まれる炭酸ガスの量を適正に維持する機能を有する。例えば、ボンベ6の内部において、炭酸ガスは、液体の状態で充填されている。ボンベ6は、例えば、ボンベ6の内部の炭酸ガスの量を表示する残量表示計を備える。この残量表示計が設けられることにより、ボンベ6の内部の炭酸ガスの量が視認可能とされている。
【0035】
減圧弁7及びヘッド8は、例えば、炭酸ガスホース8bによって互いに接続されている。炭酸ガスホース8bは、例えば、第1筐体3の側面3cに形成された貫通孔3pを第3方向D3に貫通しており、減圧弁7からヘッド8まで延在している。ヘッド8は、例えば、ボンベ6の内部の炭酸ガスを減圧弁7及び炭酸ガスホース8bを介して樽5の内部に送り込むと共に、樽5の内部の飲料をカラン10に押し出す機能を有する。
【0036】
筐体2の内部に樽5が配置される飲料サーバー1では、瞬間冷却式サーバーよりも炭酸ガスの圧力が小さい。例えば、瞬間冷却式サーバーにおける炭酸ガスの圧力が0.25MPa以上且つ0.35MPa以下であるのに対し、飲料サーバー1における炭酸ガスの圧力は0.10MPa以上且つ0.15MPa以下である。また、飲料サーバー1における炭酸ガスの圧力は0.10MPa以上且つ0.12MPa以下であってもよい。
【0037】
飲料サーバー1は、飲料サーバー1の内部空間1bにおいてヘッド8及びカラン10を互いに接続する飲料供給経路9を有する。一例として、飲料供給経路9はホースである。カラン10は飲料供給経路9を介してヘッド8に接続されており、樽5からヘッド8及び飲料供給経路9を介してカラン10に飲料が送り出される。例えば、樽5は内部空間1bを画成する飲料サーバー1の底面1cに配置され、内部空間1bにおいてヘッド8から上方に飲料供給経路9が延び出している。
【0038】
ヘッド8から上方に延び出す飲料供給経路9は第2筐体4の前部4bまで延在している。例えば、第2筐体4は、前部4bを第2方向D2に貫通する貫通孔4gを有する。一例として、飲料供給経路9は、貫通孔4gに通されており、貫通孔4gに通された状態でカラン10に接続されている。樽5、ヘッド8及び飲料供給経路9は、飲料サーバー1の内部空間1bにおいて冷却装置20によって冷却されている。
【0039】
一例として、冷却装置20は、飲料サーバー1の上側且つ後側に配置されている。例えば、冷却装置20は、内部空間1bとの隔壁21を有する。隔壁21は、第2筐体4の上部4dの内側に位置する下面1dから下方に延在する第1壁部21bと、内部空間1bを画成する飲料サーバー1の後面1fから前方に延在する第2壁部21cと、第1壁部21bの下端、及び第2壁部21cの前端を互いに連結する第3壁部21dとを有する。
【0040】
例えば、第3壁部21dは、第1方向D1及び第2方向D2の双方に対して傾斜しており、前方且つ斜め下方に向けられている。第3壁部21dには後述する冷却ファン22から冷風Wを内部空間1bに供給する開口21gが形成されており、開口21gには飲料供給経路9が対向している。従って、樽5からカラン10に向かう飲料が通る飲料供給経路9を一層効率よく冷却させることが可能である。
【0041】
冷却装置20は、隔壁21から見て内部空間1bとは反対側の部分に冷却ファン22及び冷凍サイクル装置23を備える。冷凍サイクル装置23は、冷媒を圧縮し通気孔4fからの排熱で冷媒を冷却凝縮し、開口21gで冷媒を膨張及び蒸発させて冷風Wを生成する。冷凍サイクル装置23によって生成された冷風Wは、冷却ファン22により第3壁部21dの開口21gを介して内部空間1bに供給される。冷風Wによって内部空間1bに配置された樽5、ヘッド8及び飲料供給経路9が冷却され、冷却された飲料がカラン10に供給される。
【0042】
図4は、一例としてのカラン10を示す断面図である。
図3及び
図4に示されるように、カラン10は、例えば、筐体2に対してカラン10を取り付けるための取付部16に取り付けられる。取付部16には飲料供給経路9が挿入されている。この場合、取付部16を介して筐体2にカラン10(後述するカラン本体12)が取り付けられ、取付部16を介してカラン10が飲料供給経路9に接続される。
【0043】
カラン10は、一例として、取付部16にねじ込まれる雄ネジ16bを有し、雄ネジ16bが取付部16にねじ込まれることによってカラン10が取付部16を介して筐体2に取り付けられる。しかしながら、カラン10を筐体2に取り付けるための構成は取付部16に限られず適宜変更可能である。
【0044】
カラン10は、例えば、手で握って移動操作が可能なレバー11と、レバー11の操作によって飲料L(液体、一例としてビール液)の流路を開閉するスライド弁30と、スライド弁30を内部でスライド可能とするカラン本体12と、カラン本体12の内部でスライド弁30と共に移動するスライドピン15とを備える。カラン本体12は、カラン本体12から斜め下方に延在する飲料注出部13及び発泡体注出部14を有する。
【0045】
レバー11は、棒状に形成されており、カラン本体12から上方に延びている。レバー11の長手方向の端部11aは、カラン本体12の上面に形成された孔部12aと、スライドピン15の孔部15aとに上方から入り込んでいる。レバー11は、手前側(
図4の紙面の左側)、及び奥側(
図4の紙面の右側)の両方に揺動可能となっている。
【0046】
カラン本体12は、例えば、金属によって構成されている。しかしながら、カラン本体12の材料は特に限定されない。カラン本体12は、第2方向D2に沿って延びる筒状を呈する。カラン本体12の途中部分から、飲料注出部13及び発泡体注出部14のそれぞれが枝分かれしている。カラン本体12は、後端に流入部12bを有し、流入部12bから飲料Lがカラン本体12の内部に入り込む。
【0047】
例えば、流入部12bは、カラン本体12の後端において拡径された筒状部とされている。一例として、流入部12bは、雄ネジ16bの内側に設けられる。流入部12bの前側には、スライド弁30が着座する弁座部12c、及び弁座部12cの前方に位置する内壁部12dが設けられている。
【0048】
弁座部12cは、流入部12bから徐々に曲線状に縮径しており、弁座部12cの前端から前方に内壁部12dが延びている。内壁部12dとスライド弁30との間には空間が形成され、当該空間が飲料Lの流路Rを構成する。飲料Lの流路Rは、流入部12b、弁座部12c及び内壁部12d、並びにスライド弁30を含んでおり、更に飲料注出部13を含んでいる。
【0049】
飲料注出部13は、例えば、発泡体注出部14の後側に設けられる。一例として、飲料注出部13及び発泡体注出部14は、カラン本体12から前側且つ斜め下方に直線状に延びている。飲料注出部13は、発泡体注出部14の後側において、発泡体注出部14よりも長く下方に延び出している。
【0050】
スライドピン15は、例えば、カラン本体12の内部において、スライド弁30の前側に配置されている。スライドピン15は移動部15cを有し、スライド弁30はカラン本体12の内部に位置する筒状部30bと、筒状部30bの前端において筒状部30bを塞ぐように筒状部30bにネジ固定された有底筒状の固定部30dと、移動部15c及び固定部30dの間で伸縮するコイルバネ30eとを備えている。コイルバネ30eの一端は移動部15cに当接しており、コイルバネ30eの他端は固定部30dに当接している。
【0051】
スライドピン15の孔部15aは、例えば、移動部15cに形成されており、孔部15aにレバー11の端部11aが入り込んでいる。これにより、レバー11を手前に引くと移動部15c及びスライド弁30が後方に移動し、レバー11を後方に押すと移動部15cが前方に移動する。移動部15cは、前方に移動するときは単独で移動し、後方に移動するときはスライド弁30と共に移動する。移動部15cは、コイルバネ30eによって後方に付勢されている。
【0052】
スライド弁30は、カラン本体12の内部において前後にスライドし、このスライドによって流路Rを開閉する。より具体的には、スライド弁30は、一方向(後方)にスライドすることによって流路Rを開放する。
【0053】
例えば、スライド弁30は弁体部31を有する。弁体部31は、スライド弁30の後端から前方に向かうに従って拡径する部位である。飲料注出部13の上側且つ後側には前述した弁座部12cが位置する。弁体部31が弁座部12cに着座することによって流路Rが閉塞し、弁体部31が弁座部12cから離隔することによって流路Rが開放される。
【0054】
ところで、筐体2の内部に樽5が配置される樽格納式サーバーである飲料サーバー1では、瞬間冷却式サーバーよりも炭酸ガスの圧力が小さい。炭酸ガスの圧力が小さい樽格納式サーバーでは、
図5に例示されるフロスティミストFが安定して形成されないという現状がある。
【0055】
フロスティミストFは、飲料Lと泡Bとの境界部分に生成される粒状気泡層である。すなわち、フロスティミストFは、飲料Lと泡Bとの境界部分に現れる霧状の層である。フロスティミストFは、発泡性飲料Dが飲料容器Cに注出されるときに飲料Lに炭酸ガスの圧力が加えられることによって発生する。従って、炭酸ガスの圧力が小さい樽格納式サーバーでは、瞬間冷却式サーバーと比較して、フロスティミストFが発生しにくい。
【0056】
フロスティミストFは、発泡性飲料Dが飲用されたときに泡Bを再生する。従って、フロスティミストFからは、きめ細かい泡Bの泡持ちを良好にする効果が得られる。具体的には、発泡性飲料Dが飲用されると、フロスティミストFが飲料L、泡B又は飲料容器Cに接触して刺激されることにより、フロスティミストFから新たな泡Bが再生する。フロスティミストFが鮮明に現れてフロスティミストFが増えると泡Bの再生量が増加する。
【0057】
以上のように、フロスティミストFが多く生成される場合には、きめ細かい泡Bが多く再生される。本実施形態に係る飲料サーバー1は、炭酸ガスの圧力が比較的小さい樽格納式サーバーであるが、スライド弁30に工夫を凝らすことによって安定したフロスティミストFを生じさせることが可能である。以下では、スライド弁30の詳細について説明する。
【0058】
図6は、スライド弁30を拡大した断面図である。
図4及び
図6に示されるように、スライド弁30は、前述した弁体部31と、弁体部31から筒状(一例として円筒状)に延びる筒部32と、筒部32の弁体部31とは反対側に位置する拡径部33とを備える。拡径部33は、例えば、段付き円筒状を呈する。スライド弁30が延びる方向は、筒部32の軸線Aが延びる方向であって、本実施形態では軸線Aが延びる方向と前後方向(第2方向D2)とは互いに一致する。
【0059】
弁体部31は、軸線Aに対して傾斜するテーパ面31aと、テーパ面31aの筒部32側に位置する当接部31bとを有する。例えば、当接部31bの表面は湾曲面である。一例として、当接部31bはゴムパッキンである。テーパ面31aは、スライド弁30の長手方向の端部から離隔するに従ってスライド弁30の径が大きくなるように拡径している。このテーパ面31aによって、弁体部31を通る飲料Lの流れをスムーズにすることができる。
【0060】
当接部31bは、スライド弁30が前方にスライドするときに弁座部12cに当接して流路Rを閉塞し、スライド弁30が後方にスライドするときに弁座部12cから離れて流路Rを開放する。例えば、当接部31bはゴム材料によって構成されているので、当接部31bによって流路Rを確実にシールすることが可能である。例えば、スライド弁30の当接部31b以外の部分は、金属製とされており、一例として、ステンレス製である。
【0061】
筒部32は、弁体部31から離隔するに従って筒部32が縮径するように傾斜する傾斜面32aと、傾斜面32aから拡径部33に向かって延在する外面32bと、外面32b及び拡径部33の間に位置する湾曲面32cとを有する。外面32bの最大外径は、カラン本体12の内壁部12dの内径よりも小さい。
【0062】
カラン10では、傾斜面32a、外面32b及び湾曲面32cと、内壁部12dとの間が飲料Lの流路Rとされる。例えば、弁体部31は筒部32とは別体であってもよく、弁体部31が筒部32にネジ固定されていてもよい。また、筒部32に対して弁体部31を回転させることにより、筒部32から弁体部31を外せる構成になっていてもよい。
【0063】
例えば、拡径部33は、第1凸部33aと、第1凸部33aの筒部32とは反対側に位置する凹部33bと、凹部33bの第1凸部33aとは反対側に位置する第2凸部33cと、第2凸部33cから凹部33bとは反対側に突出する柱状部33dとを有する。第1凸部33aは湾曲面32cから軸線Aに沿って延在している。
【0064】
第1凸部33aは湾曲面32cの前端に位置しており、凹部33bは第1凸部33aの前側に位置している。凹部33bは、第1凸部33a及び第2凸部33cの間においてスライド弁30の径方向内側に窪んでいる。第2凸部33cは凹部33bの前側において拡径している。一例として、柱状部33dは円柱状を呈する。柱状部33dは第2凸部33cの前側に位置しており、例えば、柱状部33dの外周面には雄ネジが形成されている。
【0065】
第1凸部33aの外面はカラン本体12の内壁部12dに接触している。これにより、第1凸部33aより前側には飲料Lが進入しない構成とされている。第2凸部33cの外径は、第1凸部33aの外径と同程度であってもよい。柱状部33dの雄ネジは、筒状部30bの内面に形成された雌ネジ30fに螺合する。
【0066】
弁体部31は、飲料Lが流入する飲料流入口31cを有する。例えば、飲料流入口31cは弁体部31の端部において後側に開口している。弁体部31からはスライド弁30の軸線Aに沿って延びる飲料Lの流路Kが形成されている。流路Kは、弁体部31の内部、筒部32の内部、及び拡径部33の内部において軸線Aに沿って延在している。
【0067】
流路Kは、弁体部31の内部に形成された第1流路K1と、筒部32の内部及び拡径部33の内部に形成された第2流路K2と、第2流路K2の第1流路K1とは反対側に位置する泡形成流路K3とを有する。第1流路K1、第2流路K2及び泡形成流路K3のそれぞれは、軸線Aに沿って延在している。泡形成流路K3は第1流路K1より細く、第1流路K1は第2流路K2より細い。
【0068】
例えば、第1流路K1の長さ(軸線Aに沿った方向の長さ)は、第2流路K2の長さより短く、且つ泡形成流路K3の長さよりも長い。一例として、第1流路K1、第2流路K2及び泡形成流路K3のそれぞれは、円筒孔状を呈する。この場合、第1流路K1の内径は、第2流路K2の内径よりも小さく、且つ泡形成流路K3の内径よりも大きい。泡形成流路K3の内径は、第1流路K1の内径、及び第2流路K2の内径よりも小さい。
【0069】
例えば、第2流路K2と泡形成流路K3との間には段差部K4が形成されている。流路Kは複数の泡形成流路K3を有する。一例として、流路Kは少なくとも3個の泡形成流路K3を有する。泡形成流路K3は、飲料容器Cに注出された後にフロスティミストFを生じさせるための流路である。各泡形成流路K3は段差部K4からスライド弁30の端部まで延在している。
【0070】
各泡形成流路K3は、第2流路K2から軸線Aに沿って延在している。前述したように、泡形成流路K3は第1流路K1よりも細いので、泡形成流路K3を飲料Lが通ると当該飲料Lが泡B(発泡体)に変換される。このように泡Bはスライド弁30において生成される。
【0071】
図7は、軸線Aが延びる方向に沿って拡径部33を見たスライド弁30の正面図である。
図6及び
図7に示されるように、スライド弁30は泡形成流路K3に連通する発泡体流出口35を有する。泡形成流路K3において生成された泡Bは、発泡体流出口35からスライド弁30の外部に流出する。
【0072】
拡径部33は、スライド弁30の軸線Aが延びる方向の一端に位置する第1端面33eと、第1端面33eから拡径部33が拡径するように延在するテーパ面33fと、テーパ面33fの第1端面33eとは反対側に位置する第2端面33gとを有する。一例として、第2端面33gは円環状を呈しており、テーパ面33fは第2端面33gの内側に位置する。例えば、第1端面33eはテーパ面33fの内側に位置する。一例として、第1端面33eは円形状を呈する。
【0073】
スライド弁30は、複数の発泡体流出口35を有する。例えば、スライド弁30は少なくとも3個の発泡体流出口35を有し、少なくとも3個の発泡体流出口35は第1端面33eにおいて1本の直線上に並ばないように配置されている。具体例として、3個の発泡体流出口35は三角形状となるように配置されている。この例では、軸線Aに沿って見たときに3個の発泡体流出口35が三角形状をなすように形成されている。発泡体流出口35は、飲料容器Cに注出された後にフロスティミストFを生じさせるための開口である。
【0074】
一例として、軸線Aに沿って見たときにおける3個の発泡体流出口35がなす形状は、正三角形状である。しかしながら、当該形状は、二等辺三角形状、又は直角三角形状であってもよく、特に限定されない。発泡体流出口35の数は、3個に限られず、2個、4個、5個、6個又は7個以上であってもよい。
【0075】
例えば、軸線Aに沿って見た場合において各発泡体流出口35は円形状を呈する。例えば、発泡体流出口35の直径(内径)は、0.5mm以上且つ0.6mm以下である。しかしながら、発泡体流出口35の直径は、0.5mm未満、又は0.6mmより大きくてもよく、例えば、0.7mm、0.8mm、0.9mm又は1.0mm以上であってもよい。
【0076】
飲料Lの流路は、カラン本体12の内周面、飲料注出部13の内周面、弁体部31の外周面、及び筒部32の外周面、の間に形成される。より具体的には、飲料Lの流路は、流入部12b、弁座部12c、内壁部12d、飲料注出部13の内周面、テーパ面31a、当接部31b、傾斜面32a、外面32b、及び湾曲面32cの間に形成される。
【0077】
次に、本実施形態に係る飲料サーバー1から得られる作用効果について説明する。飲料サーバー1では、飲料が0.15MPa以下の押圧によって加圧される。
図1~
図3に示されるように、飲料サーバー1では、筐体2に取り付けられたカラン10が飲料注出部13と発泡体注出部14とを有し、カラン10に0.15MPa以下の圧力を受けた飲料が供給される。
【0078】
図4及び
図6に示されるように、カラン10はスライド弁30を有する。スライド弁30は、一方向にスライドして飲料注出部13から飲料を注出させ、一方向の逆方向にスライドして発泡体注出部14から泡Bを注出させる。スライド弁30は、飲料流入口31cを介して流入した飲料Lから泡Bを生成し、生成した泡Bを流出させる複数の発泡体流出口35を有する。
【0079】
スライド弁30が複数の発泡体流出口35を有することにより、飲料Lに供給されるガスの圧力が0.15MPa以下であっても、フロスティミストFを安定して生じさせることができる。すなわち、飲料Lに供給される炭酸ガスの圧力が低い場合であってもフロスティミストFを安定して生じさせることができる。
【0080】
前述したように、スライド弁30は、少なくとも3個の発泡体流出口35を有してもよい。少なくとも3個の発泡体流出口35は、1本の直線上に並ばない位置に配置されていてもよい。この場合、スライド弁30における発泡体流出口35が配置される領域を小さくできるので、スライド弁30のコンパクト化に寄与する。
【0081】
飲料サーバー1は、飲料Lにガス(例えば炭酸ガス)を供給するガス供給装置(例えばボンベ6)を備えてもよく、ガス供給装置によるガスの押圧が0.10MPa以上且つ0.12MPa以下であってもよい。この場合、ガスの圧力が0.10MPa以上であることにより、フロスティミストFをより安定して生じさせることができる。ガスの圧力が0.12MPa以下であることにより、飲料サーバー1におけるガス圧を適正圧力に維持することができる。例えば、ガスが炭酸ガスである場合には、飲料Lに溶け込む炭酸の量を適正に維持できる。そして、ガスの圧力が0.12MPa以下であってもフロスティミストFを安定して生じさせることができる。
【0082】
前述したように、発泡体流出口35の直径が0.5mm以上且つ0.6mm以下であってもよい。この場合、発泡体流出口35の直径が0.5mm以上であることにより、発泡体流出口35における目詰まりを抑制できる。発泡体流出口35の直径が0.6mm以下であることにより、フロスティミストFをより高頻度で生じさせることができる。
【0083】
図1~
図3に示されるように、飲料サーバー1は、飲料が収容されている樽5と、樽5及びカラン10を互いに接続する飲料供給経路9と、を備えてもよい。樽5及び飲料供給経路9が筐体2の内部において冷却されており、冷却された樽5に収容された飲料が飲料供給経路9を介してカラン10に供給されてもよい。この場合、飲料サーバー1では、樽5、及び樽5からカラン10に飲料を供給する飲料供給経路9が筐体2の内部において冷却されている。よって、予め冷却された樽5から飲料供給経路9を介してカラン10に飲料が供給され、瞬間冷却式サーバーに設けられるビール冷却コイル及び水槽を不要とすることができるので、飲料の冷却装置を簡易にすることができる。
【0084】
飲料サーバー1の水による洗浄時には、飲料供給経路9を洗浄すればよいので、水による洗浄時に廃棄する飲料を減らすことができる。より具体的には、樽格納式の飲料サーバー1では、瞬間冷却式の飲料サーバーよりも、洗浄時における飲料の廃棄量を1/8程度にすることができる。
【0085】
次に、変形例に係るスライド弁30Aについて
図8を参照しながら説明する。スライド弁30Aの一部の構成は、前述したスライド弁30の一部の構成と同一である。従って、以下では、スライド弁30と重複する構成の説明を同一の符号を付して適宜省略する。スライド弁30Aは、前述した発泡体流出口35とは異なる発泡体流出口35Aを有する。
【0086】
一例として、スライド弁30Aは3個の発泡体流出口35Aを有し、3個の発泡体流出口35Aは第1端面33eにおいて仮想直線X上に並ぶように配置されている。例えば、仮想直線Xは第3方向D3に沿って延在している。軸線Aに沿って見たときに3個の発泡体流出口35Aが直線をなすように形成されている。
【0087】
以上、変形例に係るスライド弁30Aは少なくとも3個の発泡体流出口35Aを有する。従って、前述したスライド弁30と同様、飲料Lに供給される炭酸ガスの圧力が低くても、フロスティミストFを安定して生じさせることができる。従って、変形例に係るスライド弁30Aからは前述したスライド弁30と同様の効果が得られる。
【0088】
以上、本開示に係る飲料サーバーの実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態又は変形例に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本開示は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能であり、例えば、カランの部品の構成、及び、スライド弁の部品の構成は、上記の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0089】
例えば、前述の実施形態では、孔部12a、流入部12b、弁座部12c、及び内壁部12dを備えたカラン本体12について説明した。しかしながら、カラン本体12の各部の形状、材料及び大きさは適宜変更可能である。カラン本体12の内面の形状及び大きさについても適宜変更可能である。
【0090】
また、前述の実施形態では、弁体部31、筒部32、及び拡径部33を備えたスライド弁30について説明した。しかしながら、スライド弁の各部の構成、形状、材料及び大きさは適宜変更可能である。スライド弁の外面の形状及び大きさについても適宜変更可能である。
【0091】
また、前述の実施形態では、レバー11、カラン本体12、飲料注出部13、発泡体注出部14及びスライドピン15を備えたカラン10について説明した。しかしながら、カランの各部の構成についても適宜変更可能である。更に、カラン10が取り付けられる飲料サーバーの構成も適宜変更可能である。
【0092】
また、前述の実施形態では、炭酸ガスを樽5の内部に送り込むことによって飲料を加圧する例について説明した。しかしながら、飲料を加圧する押圧に用いるガスは、炭酸ガス以外のガスであってもよい。飲料を加圧する押圧に用いるガスは、窒素ガスであってもよいし、空気であってもよく、特に限定されない。また、前述の実施形態では、ガス供給装置がボンベ6である例について説明した。しかしながら、ガス供給装置は、ボンベ6以外のものであってもよい。例えば、ガス供給装置は、ミニガスであってもよく、特に限定されない。
【0093】
また、前述の実施形態では、飲料が収容されている樽5と、樽5及びカラン10を互いに接続する飲料供給経路9とを備える飲料サーバーについて説明した。しかしながら、飲料サーバーは、樽を有しない飲料サーバーであってもよい。例えば、容器と、当該容器の口部(飲料が通る口部)に取り付けられたカランとを備えた飲料サーバーであってもよい。上記の容器は、例えば、ペットボトル、缶又は瓶である。また、グラウラー(又は水筒)に取り付けられたカランを備える飲料サーバーであってもよい。グラウラーは、飲料の持ち運びが可能な容器であって、飲料の保温が可能な容器であってもよい。この場合、樽及び飲料供給経路を不要にできる。
【0094】
(実施例)
続いて、本開示に係る飲料サーバーの実施例について説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されない。実施例では、後述する実施例1,2に係る飲料サーバー、及び比較例1,2に係る飲料サーバーのそれぞれから飲料容器Cに発泡性飲料Dを注出し、フロスティミストFが生じるか否かをカメラ撮影によって測定した。各飲料サーバーは樽格納式サーバーである。
【0095】
各飲料サーバーは前述した飲料供給経路9を有し、飲料供給経路9としてはホースを用いた。当該ホースの長さは2.5m又は3.0mとし、当該ホースの断面の内径は4.5cmとした。ボンベ6による炭酸ガスのガス圧は、0.10MPaとした。実施例1,2及び比較例1,2の仕様は以下のとおりである。
【0096】
(実施例1)
実施例1の飲料サーバーは、前述した飲料サーバー1と同様であり、3個の発泡体流出口35が三角形状をなすように形成されているスライド弁30を用いた。各発泡体流出口35の直径は0.6mmとした。
(実施例2)
実施例2の飲料サーバーは、前述した変形例に係る飲料サーバーと同様であり、3個の発泡体流出口35Aが直線状に並ぶように形成されているスライド弁30Aを用いた。各発泡体流出口35Aの直径は0.6mmとした。
(比較例1)
比較例1の飲料サーバーは、前述した飲料サーバー1と同様であるが、スライド弁30とは異なるスライド弁を用いた。比較例1のスライド弁は、1個の発泡体流出口35を有し、発泡体流出口35の直径は1.0mmとした。
(比較例2)
比較例2の飲料サーバーは、前述した飲料サーバー1と同様であるが、スライド弁30とは異なるスライド弁を用いた。比較例2のスライド弁は、1個の発泡体流出口35を有し、発泡体流出口35の直径は0.8mmとした。
【0097】
図9(a)は、実施例1に係る飲料サーバーから飲料容器に注出された発泡性飲料を示す写真である。
図9(b)は、比較例1に係る飲料サーバーから飲料容器に注出された発泡性飲料を示す写真である。
図9(a)に示されるように、三角形状をなすように配置された3個の発泡体流出口35のそれぞれの直径が0.6mmである実施例1の飲料サーバーでは、発泡性飲料を注出したときに飲料と泡との間にフロスティミストFが鮮明に現れることが分かった。これに対し、
図9(b)に示されるように、1個の発泡体流出口35の直径が1.0mmである比較例1の飲料サーバーでは、発泡性飲料を注出したときに飲料と泡との間にフロスティミストFが生じないことが分かった。
【0098】
1個の発泡体流出口35の直径が0.8mmである比較例2の飲料サーバーでは、発泡性飲料を注出したときに僅かにフロスティミストFが生じた。また、直線状に並んでいる3個の発泡体流出口35のそれぞれの直径が0.6mmである実施例2の飲料サーバーでは、実施例1と同様、フロスティミストFが鮮明に現れることが分かった。但し、実施例1及び実施例2の比較では、実施例1の方がより鮮明にフロスティミストFが現れることが分かった。
【符号の説明】
【0099】
1…飲料サーバー、1b…内部空間、1c…底面、1d…下面、1f…後面、2…筐体、3…第1筐体、3b…前面、3c…側面、3d…上面、3f…下面、3g…脚部、3h…扉、3j…ヒンジ、3k…インジケータ、3p…貫通孔、4…第2筐体、4b…前部、4c…側部、4f…通気孔、4g…貫通孔、5…樽、6…ボンベ(ガス供給装置)、7…減圧弁、8…ヘッド、8b…炭酸ガスホース、9…飲料供給経路、10…カラン、11…レバー、11a…端部、12a…孔部、12b…流入部、12c…弁座部、12d…内壁部、13…飲料注出部、14…発泡体注出部、15…スライドピン、15a…孔部、15c…移動部、16…取付部、16b…雄ネジ、20…冷却装置、21…隔壁、21b…第1壁部、21c…第2壁部、21d…第3壁部、21g…開口、22…冷却ファン、23…冷凍サイクル装置、30,30A…スライド弁、30b…筒状部、30d…固定部、30e…コイルバネ、30f…雌ネジ、31…弁体部、31a…テーパ面、31b…当接部、31c…飲料流入口、32…筒部、32a…傾斜面、32b…外面、32c…湾曲面、33…拡径部、33a…第1凸部、33b…凹部、33c…第2凸部、33d…柱状部、33e…第1端面、33f…テーパ面、33g…第2端面、35,35A…発泡体流出口、A…軸線、B…泡(発泡体)、C…飲料容器、D…発泡性飲料、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、F…フロスティミスト、K…流路、K1…第1流路、K2…第2流路、K3…泡形成流路、K4…段差部、L…飲料、R…流路、S…載置面、W…冷風、X…仮想直線。