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▶ 株式会社ファンケルの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143224
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20230928BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/891
A61Q19/00
A61Q1/08
A61Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050487
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真遊
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC372
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD171
4C083AD172
4C083AD392
4C083AD432
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC01
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC13
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】グリチルレチン酸ステアリルの析出を抑えた油性化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(D)を含有し、(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))が0.25以上である油性化粧料。
(A)グリチルレチン酸ステアリル
(B)架橋型メチルポリシロキサン
(C)フェニル変性シリコーンオイル
(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサン
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含有し、(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))が0.25以上である油性化粧料。
(A)グリチルレチン酸ステアリル
(B)架橋型メチルポリシロキサン
(C)フェニル変性シリコーンオイル
(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサン
【請求項2】
(A)を0.01質量%以上1.0質量%以下含む請求項1に記載の油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルレチン酸ステアリルを含む油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
グリチルレチン酸ステアリルは、グリチルレチン酸のヒドロキシル基にステアリン酸がエステル結合した化合物である。グリチルレチン酸ステアリルは、抗炎症作用、抗アレルギー作用等を有する化合物であり、皮膚外用剤や化粧料に使用されている。グリチルレチン酸ステアリルは、脂溶性であるがその溶解性は低く、化粧料として使用するには大量の油剤に溶解する必要があるため、化粧料にはベタツキが生じてしまう。油剤の量を減らせば、ベタツキは軽減できるが、グリチルレチン酸ステアリルが経時で析出してしまう場合がある。また、シリコーン系の油剤はベタツキが少ないが、シリコーン油にはグリチルレチン酸ステアリルが溶解しにくく、溶解したとしても経時で析出してしまう場合がある。
特許文献1、2には、エステル油を用いることでグリチルレチン酸ステアリルの経時での析出を抑え、さらにO/W型とすることでベタツキを抑えた乳化組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-173727号公報
【特許文献2】特開2013-173728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、グリチルレチン酸ステアリルの析出を抑えた油性化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.下記(A)~(D)を含有し、(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))が0.25以上である油性化粧料。
(A)グリチルレチン酸ステアリル
(B)架橋型メチルポリシロキサン
(C)フェニル変性シリコーンオイル
(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサン
2.(A)を0.01質量%以上1.0質量%以下含む1.に記載の油性化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油性化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルの経時での析出を抑えることができ、安定性に優れている。本発明の油性化粧料は、シリコーン油を含むため、油性化粧料でありながらもベタツキが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の油性化粧料は、(A)グリチルレチン酸ステアリル、(B)架橋型メチルポリシロキサン、(C)フェニル変性シリコーンオイル、(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサンを含有し、(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))が0.25以上である。
【0008】
・油性化粧料
本発明における油性化粧料とは、液状、半固形状又は固形状の油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする化粧料であり、化粧料全体に対して10質量%以下で水、多価アルコール等の水性成分を含むことができる。
【0009】
(A)グリチルレチン酸ステアリル
グリチルレチン酸ステアリルは、グリチルレチン酸のヒドロキシル基に、ステアリン酸をエステル結合させた化合物である。グリチルレチン酸は、マメ科カンゾウ属(Glycyrrhiza Glabra)などの植物から得ることができるグリチルリチン酸を加水分解することによって得られる。
(A)成分の油性化粧料全体に対する配合量は、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0010】
(B)架橋型メチルポリシロキサン
架橋型メチルポリシロキサンは、メチルポリシロキサンが三次元架橋された架橋構造を有する常温で固体の化合物であり、液状油中で膨潤する。架橋型メチルポリシロキサンは、例えば、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等の側鎖にフェニル基やアルキル基を有するものや、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等のポリエーテル変性のものなど、通常化粧料に用いられているものであれば特に制限なく、また、1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中で、安定性の観点から、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーが好ましい。
【0011】
(B)成分の油性化粧料全体に対する配合量は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましく、また、25質量%以下がより好ましく、23質量%以下がさらに好ましい。
【0012】
(C)フェニル変性シリコーンオイル、(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサン
(C)、(D)成分は、常温で液体の液状油である。
(C)フェニル変性シリコーンオイルは、シロキサン結合を有するシリコーンオイルの、側鎖の少なくとも一部がフェニル基に置換した化合物である。フェニル変性シリコーンオイルは、例えば、ジフェニルジメチコン、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、ビスフェニルプロピルジメチコン、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン等の1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、安定性の観点から、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが好ましい。
(C)成分の油性化粧料全体に対する配合量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
(D)直鎖または環状のジメチルポリシロキサンは、例えば、ジメチコン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、安定性の観点から、ジメチコンが好ましい。
(D)成分の油性化粧料全体に対する配合量は、30質量%以上85質量%以下が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、また、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明の油性化粧料は、(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))が0.25以上である。詳細なメカニズムは不明であるが、本発明の油性化粧料は、液状油中で膨潤した(B)架橋型メチルポリシロキサンが、液状油に溶解した(A)グリチルレチン酸ステアリルの析出防止に寄与していると推測される。(C)と(D)の合計に対する(B)の割合(B/(C+D))は、0.26以上であることが好ましく、0.27以上であることがより好ましい。この割合の上限は、油性化粧料としての剤形を保つことができる範囲内であれば特に限定されないが、0.35以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の油性化粧料において、(A)成分に対する(B)成分の割合(B/A)は、20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、150以上であることがよりさらに好ましい。
本発明の油性化粧料において、油性化粧料全体に対する(C)と(D)を合計した配合量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
・その他配合成分
本発明の油性化粧料は、発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内において、(A)~(D)以外の油性化粧料として用いられている任意の成分を使用することができる。例えば、固形油、半固形油、他の液状油、有機粉体、体質顔料、パール顔料、着色顔料、水、水溶性高分子、アルコール、多価アルコール、糖類、糖アルコール類、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、殺菌剤、血行促進剤、消炎剤、冷感剤、皮膚賦活剤。また、植物抽出液やその他の薬効成分を含有させることができる。
【0017】
本発明の油性化粧料の剤形としては、ゲル状、ペースト状、固形状、スティック状、液状等を挙げることができる。
【実施例0018】
表1に示す配合(数値は質量%)で(A)成分と(C)成分を混合し、80度で加熱溶解した。その後室温で徐冷し、室温まで冷めた後に、(B)成分と(D)成分を加えて、均一に混合することで油性化粧料を調製した。
・保存安定性
調製した油性化粧料40mlを、胴径40.5mm、高さ74.0mm、口内径24.7mmの透明なガラス軽量規格6K瓶に入れて蓋を締め、25℃に設定した恒温室内で保存し、定期的にサンプルを目視により下記の基準にて判定し、評価した。
〇:析出が生じず、透明なまま。
×:析出が生じた。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示したとおり、本願発明である実施例1~9は、1ヶ月間の保管中、いずれの時点においても(A)成分のグリチルレチン酸ステアリルの析出は生じず、安定性に優れていた。また、1ヶ月の保管後に、適量を手に塗布して感触を確かめたところ、いずれもベタツキが少なかった。
一方、(A)~(D)成分のいずれかを欠く比較例1~5や(B/(C+D))が0.25未満である比較例6~9では、いずれも2週間以内には析出が生じてしまい、安定性が悪かった。
【0021】
以下に、処方例を示す。
処方例に示した油性化粧料は、安定性に優れ、ベタツキも少なかった。
【0022】
「処方例1:油性コンシーラー」
成分 配合量(質量%)
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 18
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー 7
ポリメチルシルセスキオキサン 4
酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄) 1.1
タルク 2
酸化チタン 5
ペンチレングリコール 1
パーム油 0.01
チャ葉エキス 0.01
加水分解オリーブ葉エキス 0.01
アロエベラ葉エキス 0.01
サクシノイルアテロコラーゲン 0.01
ジメチコン 残余
【0023】
「処方例2:毛穴カバークリーム」
成分 配合量(質量%)
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 12
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
メチルトリメチコン 15
シクロペンタシロキサン 8
(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー 17.5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー 6
酸化チタン 0.4
酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄) 0.1
PEG-9ジメチコン 1
水 5
ペンチレングリコール 1.1
DPG 0.1
BG 0.1
ルイボスエキス 0.001
スイートピー花エキス 0.001
ジメチコン 残余
【0024】
「処方例3:リップグロス」
成分 配合量(質量%)
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 12
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー 2
ポリメチルシルセスキオキサン 1
シリカ 4.5
酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄) 0.004
酸化チタン 0.15
赤202 0.03
黄4 0.01
リンゴ酸ジイソステアリル 18
水添ポリイソブテン 9
スクワラン 7
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2
ステアリン酸イヌリン 0.5
フェノキシエタノール 0.3
ジメチコン 残余