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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143234
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】マイクロカプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/10 20060101AFI20230928BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B01J13/10
C11B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050502
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】清水 優佑
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀俊
【テーマコード(参考)】
4G005
4H059
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005AB14
4G005BA07
4G005BB03
4G005BB13
4G005BB15
4G005DA05W
4G005DB01X
4G005DB06Y
4G005DB14Y
4G005DB16Y
4G005DB25W
4G005EA02
4G005EA03
4G005EA05
4G005EA06
4G005EA07
4H059BC10
4H059BC23
4H059CA54
4H059DA09
4H059EA36
(57)【要約】
【課題】壁材が強固で、平均粒子径が小さく、耐熱性が高いマイクロカプセルの提供。
【解決手段】マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、無機化合物と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、油性成分を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルであって、
前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、無機化合物と、を含んで構成され、
前記マイクロカプセルは、油性成分を内包し、
前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記無機化合物の平均粒子径が1μm以下である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記油性成分が香料である、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記架橋剤がトランスグルタミナーゼである、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、を混合することにより、乳化液(1)を作製する工程と、
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、無機化合物と、前記乳化液(1)と、を混合することにより、混合液(a1)を作製する工程と、
前記混合液(a1)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製する工程と、
前記混合液(b1)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、
冷却後の前記混合液(b1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
水の存在下で、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、を混合することにより、乳化液(2)を作製する工程と、
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a2)を作製する工程と、
前記混合液(a2)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b2)を作製する工程と、
前記混合液(b2)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、
冷却後の前記混合液(b2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記混合液(a1)を作製する工程、又は前記混合液(a2)を作製する工程において、前記ゼラチンと、前記第1アニオン性高分子と、前記第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部当り、前記無機化合物の配合量を3~13質量部とする、請求項5又は6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、壁材が、目的とする成分を芯物質として内包することにより構成されている。
マイクロカプセルの製造方法には、コアセルベーション法を適用したものがある。さらに、コアセルベーション法には、1種のみの高分子で壁材を構成する単純コアセルベーション法と、2種以上の高分子で壁材を構成する複合コアセルベーション法がある。複合コアセルベーション法では、アニオン性高分子とカチオン性高分子で壁材を構成する。複合コアセルベーション法は、壁材が強固なマイクロカプセルを製造するのに適している。
【0003】
複合コアセルベーション法を適用してマイクロカプセルを製造する場合には、通常、芯物質を内包した壁材に架橋剤を作用させて、壁材の構成成分同士を架橋することによって、マイクロカプセルの強度を向上させる。しかし、ここまでの工程で、マイクロカプセルや、その形成過程にある壁材の構成成分の、凝集又は合一によって、最終的に得られるマイクロカプセルの粒子径が大きくなり易い。このような粒子径が大きいマイクロカプセルは、例えば、目視で容易に視認可能であることによって、用途が限定されてしまうことがある。
【0004】
一方、壁材に無機化合物を含ませることで、マイクロカプセルの特性を向上させる手法が知られている(特許文献1参照)。例えば、無機化合物を含む壁材を備えたマイクロカプセルでは、その耐熱性の向上が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-174043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されているマイクロカプセルは、その壁材中に無機化合物を含んでいるが、このマイクロカプセルは、単純コアセルベーション法で得られたものであり、しかもその粒子径が大きい。そして、複合コアセルベーション法で得られたマイクロカプセルで、その粒子径が小さく、耐熱性に優れたものは、これまで知られていない。
【0007】
本発明は、壁材が強固で、平均粒子径が小さく、耐熱性が高いマイクロカプセルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、無機化合物と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、油性成分を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である、マイクロカプセル。
[2].前記無機化合物の平均粒子径が1μm以下である、[1]に記載のマイクロカプセル。
[3].前記油性成分が香料である、[1]又は[2]に記載のマイクロカプセル。
[4].前記架橋剤がトランスグルタミナーゼである、[1]~[3]のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【0009】
[5].水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、を混合することにより、乳化液(1)を作製する工程と、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、無機化合物と、前記乳化液(1)と、を混合することにより、混合液(a1)を作製する工程と、前記混合液(a1)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製する工程と、前記混合液(b1)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、冷却後の前記混合液(b1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
[6].水の存在下で、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、を混合することにより、乳化液(2)を作製する工程と、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a2)を作製する工程と、前記混合液(a2)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b2)を作製する工程と、前記混合液(b2)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程と、冷却後の前記混合液(b2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する工程と、を有する、マイクロカプセルの製造方法。
[7].前記混合液(a1)を作製する工程、又は前記混合液(a2)を作製する工程において、前記ゼラチンと、前記第1アニオン性高分子と、前記第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部当り、前記無機化合物の配合量を3~13質量部とする、[5]又は[6]に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁材が強固で、平均粒子径が小さく、耐熱性が高いマイクロカプセルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<マイクロカプセル>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、架橋剤と、無機化合物と、を含んで構成され、前記マイクロカプセルは、油性成分を内包し、前記マイクロカプセルの平均粒子径が30μm以下である。
【0012】
本実施形態のマイクロカプセルは、複合コアセルベーション法で製造でき、その壁材は強固である。
また、本実施形態のマイクロカプセルの平均粒子径は、小さい。
また、本実施形態のマイクロカプセルは、無機化合物を含んで構成されており、その耐熱性が高い。このように耐熱性が高いマイクロカプセルは、水の共存下で加熱されても、通常より長時間安定であり、水の共存下で使用されるマイクロカプセルとして好適である。
【0013】
本実施形態のマイクロカプセルは、壁材によって芯物質が内包されて構成されている。
前記マイクロカプセルは、後述するように、複合コアセルベーション法を適用することで、製造できる。
前記ゼラチン、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、前記マイクロカプセルの壁材の構成成分(本明細書においては、「壁材成分」と略記することがある)であり、複合コアセルベーション法によって、壁材を構成する。
【0014】
◎壁材、壁材成分
前記壁材は、上記のとおり、前記ゼラチン、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子によって、構成されており、前記架橋剤は、壁材の強固な構造の維持に寄与している。
【0015】
<ゼラチン>
前記ゼラチンは、前記第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子とともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
壁材を構成しているゼラチンは、その分子中にカチオン部を有するカチオン性高分子である。
【0016】
ゼラチンとしては、通常のもの、例えば、動物の骨、皮膚等に由来するものを使用できる。
ゼラチンの分子量は、例えば、20000~9000000であってもよい。
【0017】
ゼラチンは、カチオン性及びアニオン性のいずれにもなり得る両性の高分子であるため、後述するように、酸の作用によってカチオン化させて用いる。
【0018】
前記マイクロカプセルを構成するゼラチンの由来は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0019】
<第1アニオン性高分子>
前記第1アニオン性高分子は、その分子中にアニオン部を有する高分子であり、ゼラチンとともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
【0020】
第1アニオン性高分子は、アニオン性基を有する高分子であれば、特に限定されない。
第1アニオン性高分子としては、例えば、酸基が解離(アニオン化)した基を有する高分子が挙げられる。
第1アニオン性高分子として、より具体的には、例えば、カルボキシ基(-C(=O)-OH)が解離(アニオン化)した基、すなわちカルボキシラートアニオン(-C(=O)-O)を有する高分子;スルホ基(-SOH)が解離(アニオン化)した基(-SO )を有する高分子等が挙げられる。
1分子の第1アニオン性高分子においては、一部又は全てのアニオン性基が、カチオンとともに塩を形成していてもよい。
【0021】
第1アニオン性高分子において、アニオン性基(アニオン化した基)と塩を形成しているカチオンは、金属イオンであることが好ましく、前記金属イオンは、1価金属イオンと、価数が2以上の金属イオン(多価金属イオン)と、のいずれであってもよいが、1価金属イオンであることが好ましい。
【0022】
前記1価金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、リチウムイオン(Li)等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。
前記多価金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0023】
第1アニオン性高分子としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン(例えば、ιカラギーナン(イオタカラギーナン)、κカラギーナン(カッパカラギーナン)、λカラギーナン(ラムダカラギーナン))、エチレン無水マレイン酸共重合体の開環物、キサンタンガム、ペクチン等が挙げられる。
前記エチレン無水マレイン酸共重合体の開環物とは、エチレン無水マレイン酸共重合体中の、無水マレイン酸から誘導された構成単位において、酸無水物部位が加水分解により開環したとみなせるものを意味する。
【0024】
第1アニオン性高分子の分子量は、特に限定されず、例えば、20000~50000000であってもよい。
第1アニオン性高分子の分子量は、第1アニオン性高分子の種類によって異なっていてもよい。
例えば、アラビアガムの分子量は200000~2000000であってもよく、アルギン酸ナトリウムの分子量は40000~4000000であってもよく、カルボキシメチルセルロースナトリウムの分子量は20000~400000であってもよく、キサンタンガムの分子量は2000000~50000000であってもよく、ペクチンの分子量は50000~360000であってもよい。
【0025】
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第1アニオン性高分子の含有量は、100~300質量部であることが好ましく、例えば、100~270質量部、100~240質量部、100~210質量部、及び100~180質量部のいずれかであってもよいし、140~300質量部、180~300質量部、及び220~300質量部のいずれかであってもよいし、140~270質量部、及び180~240質量部のいずれかであってもよい。第1アニオン性高分子の前記含有量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第1アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
【0026】
<第2アニオン性高分子>
前記第2アニオン性高分子も、第1アニオン性高分子と同様に、その分子中にアニオン部を有する高分子であり、ゼラチンとともに、マイクロカプセルの壁材成分となっている。
【0027】
第2アニオン性高分子は、アニオン性基を有する高分子であり、かつ、第1アニオン性高分子とは異なる種類であれば、特に限定されない。
【0028】
本実施形態において、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の種類が互いに異なるということは、第1アニオン性高分子のアニオン部を有する高分子部位と、第2アニオン性高分子のアニオン部を有する高分子部位と、が組成の点で互いに相違することを意味し、これら高分子部位の一方が、他方が有していない構成単位を有していることが好ましい。
【0029】
第2アニオン性高分子としては、先に説明した第1アニオン性高分子と同様のものが挙げられる。
【0030】
第2アニオン性高分子の分子量は、先に説明した第2アニオン性高分子の分子量と同様であってよい。
【0031】
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第2アニオン性高分子の含有量は、1~20質量部であることが好ましく、例えば、1~17質量部、1~14質量部、1~11質量部、及び1~8質量部のいずれかであってもよいし、4~20質量部、7~20質量部、及び10~20質量部のいずれかであってもよいし、4~17質量部、及び7~14質量部のいずれかであってもよい。第2アニオン性高分子の前記含有量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
【0032】
前記マイクロカプセルが含む(換言すると、壁材成分を構成する)第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、合計で2種のみであってもよいし、3種以上であってもよく、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の組み合わせ、並びに比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0033】
本実施形態においては、例えば、前記マイクロカプセルが、アニオン性高分子を合計で2種のみ含む場合には、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が多い方のアニオン性高分子を、第1アニオン性高分子とし、含有量(質量部)が少ない方のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。
【0034】
一方、前記マイクロカプセルが、アニオン性高分子を合計で3種以上含む場合には、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が最も多いアニオン性高分子Xについて、アニオン性高分子の総含有量(質量部)に対する、前記アニオン性高分子Xの含有量(質量部)の割合([アニオン性高分子Xの含有量(質量部)]/[アニオン性高分子の総含有量(質量部)]×100)を算出したとき、その算出値が50質量%以上であるか、又は50質量%未満であるかによって、アニオン性高分子の分類が異なる。ここで、「アニオン性高分子の総含有量(質量部)」とは、マイクロカプセルが含むすべてのアニオン性高分子の含有量であり、個々のアニオン性高分子の含有量の合計値である。
【0035】
前記算出値が50質量%以上である場合には、アニオン性高分子Xを第1アニオン性高分子とし、それ以外のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。
これに対して、前記算出値が50質量%未満である場合には、アニオン性高分子の種類ごとに、アニオン性高分子の含有量(質量部)を、その値が大きい方から順に合算することにより合計値(質量部)を求め、アニオン性高分子の総含有量(質量部)に対する、前記合計値の割合([アニオン性高分子の含有量を、その値が大きい方から順に合算して求められた合計値(質量部)]/[アニオン性高分子の総含有量(質量部)]×100)が50質量%以上となる最少の種類のアニオン性高分子を、第1アニオン性高分子とする。そして、それ以外のアニオン性高分子を、第2アニオン性高分子とする。ただし、マイクロカプセルにおける含有量(質量部)が互いに同じである複数種のアニオン性高分子は、同格に扱う。
例えば、アニオン性高分子Xを40質量部含み、アニオン性高分子Xを30質量部含み、アニオン性高分子Xを20質量部含み、アニオン性高分子Xを10質量部含む場合には、アニオン性高分子X及びXを第1アニオン性高分子とし、アニオン性高分子X及びXを第2アニオン性高分子とする。また、例えば、アニオン性高分子Xを35質量部含み、アニオン性高分子Xを25質量部含み、アニオン性高分子Xを25質量部含み、アニオン性高分子Xを15質量部含む場合には、アニオン性高分子X、X及びXを第1アニオン性高分子とし、アニオン性高分子Xを第2アニオン性高分子とする。この場合、アニオン性高分子X及びXを同格に扱い、これらの一方を第1アニオン性高分子とし、他方を第2アニオン性高分子とすることはしない。
【0036】
前記マイクロカプセルは、例えば、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を、ともに1種のみ含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子を1種のみ含み、第2アニオン性高分子を2種以上含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子を2種以上含み、第2アニオン性高分子を1種のみ含んでいてもよいし、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を、ともに2種以上含んでいてもよい。
【0037】
後述するマイクロカプセルの製造方法において、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の使用のタイミングは重要である。この点も含めて、マイクロカプセルの製造方法については、後ほど詳しく説明する。
【0038】
前記マイクロカプセルにおいて、第1アニオン性高分子の含有量100質量部に対する、第2アニオン性高分子の含有量は、0.5~10質量部であることが好ましく、例えば、0.5~8質量部、0.5~6質量部、及び0.5~4質量部のいずれかであってもよいし、1~10質量部、3~10質量部、及び5~10質量部のいずれかであってもよいし、1~8質量部、及び3~6質量部のいずれかであってもよい。前記含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの壁材がより強固になる。
【0039】
前記マイクロカプセルにおいて、ゼラチンの含有量100質量部に対する、第1アニオン性高分子と第2アニオン性高分子の合計含有量は、30~300質量部あることが好ましく、例えば、30~270質量部、30~240質量部、30~210質量部、及び30~180質量部のいずれかであってもよいし、70~300質量部、110~300質量部、及び150~300質量部のいずれかであってもよいし、70~270質量部、110~240質量部、150~210質量部、及び150~180質量部のいずれかであってもよい。前記合計含有量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記合計含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの壁材がより強固になる。
【0040】
前記マイクロカプセルは、その壁材成分として、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子という、少なくとも2種のアニオン性高分子を含んでいることにより、その平均粒子径が小さく、マイクロカプセルの壁材が強固になる。例えば、マイクロカプセルが、壁材成分として、アニオン性高分子を1種のみ含んでいる場合には、マイクロカプセル自体の凝集又は合一が生じたり、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一が生じたりすることがある。このような場合、マイクロカプセルがきれいに形成されないか、又は形成されたとしても、粒子径が顕著に大きくなってしまう。
【0041】
<架橋剤>
前記架橋剤は、マイクロカプセル中で、壁材成分同士を結び付けることに寄与していると推測される。より具体的には、架橋剤は、1分子の壁材成分中の異なる部位同士の間に介在して、これら部位同士を水素結合又は電気的引力により連結させているか、又は、2分子の壁材成分同士の間に介在して、これら2分子同士を水素結合又は電気的引力により連結させていると推測される。
【0042】
架橋剤は、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよいが、有機化合物であることが好ましい。
有機化合物である架橋剤としては、例えば、タンニン酸、カテキン、クロロゲン酸、没食子酸、キナ酸、カフェ酸等のポリフェノール類;トランスグルタミナーゼ等の酵素が挙げられる。
前記ポリフェノール類は、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する、換言すると、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格等の芳香族環を有し、かつ、前記芳香族環の環骨格を構成している炭素原子に直接結合している、2個以上の水酸基(-OH)を有する成分である。
架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等を用いることもできるが、これらは毒性が強い成分であり、望ましくない。これに対して、前記ポリフェノール類及び酵素は、いずれも生体に対する安全性が高い。
【0043】
前記マイクロカプセルを構成する架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0044】
架橋剤のうち、特に好ましいものとしては、例えば、生体に対する安全性が高く、かつ、マイクロカプセルの耐熱性を向上させる効果がより高い点では、トランスグルタミナーゼが挙げられる。
【0045】
前記マイクロカプセルにおいて、架橋剤の含有量は、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計含有量100質量部に対して、10~80質量部であることが好ましく、例えば、10~60質量部、10~40質量部、及び10~20質量部のいずれであってもよいし、20~80質量部、40~80質量部、及び60~80質量部のいずれであってもよいし、20~60質量部であってもよい。架橋剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの壁材がより強固になる。架橋剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
【0046】
<無機化合物>
前記無機化合物は、前記架橋剤に該当しない成分であり、マイクロカプセルの耐熱性を向上させる。また、無機化合物の種類によっては、その無機化合物に由来する耐熱性以外の特性を、マイクロカプセルに付与できる場合がある。
本明細書において、「無機化合物」とは、特に断りのない限り、このように架橋剤に該当せず、マイクロカプセルの耐熱性を向上させる無機成分を意味する。
マイクロカプセルは無機化合物を含むが、無機化合物は、壁材と相互作用して、壁材中に取り込まれていると推測される。
【0047】
前記無機化合物としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物等が挙げられる。
前記金属塩としては、例えば、タルク(別名:含水珪酸マグネシウム、MgSi10(OH))等のケイ酸塩;炭酸カルシウム(CaCO)等の炭酸塩(金属炭酸塩);硫酸バリウム(BaSO)等の硫酸塩(金属硫酸塩)等が挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(別名:アルミナ、Al);酸化チタン(TiO);酸化ジルコニウム(ZrO);酸化鉄(II)(別名:第一酸化鉄、FeO)、酸化二鉄(III)鉄(II)(別名:四酸化三鉄、Fe)、酸化鉄(III)(別名:三酸化二鉄、Fe)等の鉄酸化物等が挙げられる。
前記金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))等が挙げられる。
【0048】
前記無機化合物の平均粒子径は、特に限定されないが、1μm以下であることが好ましく、例えば、0.8μm以下であってもよい。無機化合物の平均粒子径が、このような範囲であることで、前記マイクロカプセルの耐熱性がより高くなり、前記マイクロカプセルの平均粒子径がより小さくなる。
前記無機化合物の平均粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、平均粒子径が0.1μm以上である無機化合物は、より容易に入手できる。
一実施形態において、前記無機化合物の平均粒子径は、例えば、0.1~1μm、及び0.1~0.8μmのいずれかであってもよい。ただしこれは、無機化合物の平均粒子径の一例である。
【0049】
本明細書において、「平均粒子径」とは、無機化合物の場合に限らず、特に断りのない限り、粒子について、粒度分布計を用いて測定された、体積粒度分布の中位径を意味する。
【0050】
前記マイクロカプセルを構成する前記無機化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0051】
後述するマイクロカプセルの製造方法において、無機化合物の使用のタイミングは重要である。この点も含めて、マイクロカプセルの製造方法については、後ほど詳しく説明する。
【0052】
前記マイクロカプセルにおいて、前記無機化合物の配合量は、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部に対して、例えば、2~17質量部であってもよいが、3~13質量部であることが好ましく、4~9質量部、3~6質量部、及び6~13質量部のいずれかであってもよい。
【0053】
<ゼラチン以外のカチオン性高分子>
前記マイクロカプセル中の壁材は、本発明の効果を損なわない範囲において、ゼラチン以外のカチオン性高分子(本明細書においては、「他のカチオン性高分子」と称することがある)を含んで構成されていてもよい。
【0054】
前記他のカチオン性高分子は、特に限定されない。
前記他のカチオン性高分子としては、例えば、キトサン、カゼイン、ポリエチレンイミン、カチオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0055】
前記マイクロカプセルを構成する、前記他のカチオン性高分子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0056】
前記マイクロカプセルにおいて、前記他のカチオン性高分子の含有量は、ゼラチンの含有量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であること(すなわち、マイクロカプセルが前記他のカチオン性高分子を含まないこと)が特に好ましい。他のカチオン性高分子の前記含有量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの平均粒子径がより小さくなり、マイクロカプセルの壁材がより強固になり、マイクロカプセルの安定性がより向上する。
【0057】
◎油性成分
前記油性成分は、本実施形態のマイクロカプセルにおける芯物質である。
本実施形態において、「油性成分」とは、「SP値(溶解パラメータ)が7.0~11.0(cal/cm1/2である成分」を意味する。
【0058】
前記油性成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
油性成分は、常温でオイル状であるものが好ましい。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0059】
前記油性成分としては、例えば、動物性油、植物性油、鉱物性油等が挙げられる。
前記植物性油としては、例えば、ハッカ精油、ラベンダー精油、パーム油、パーム核油、大豆油、菜種油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、コーン油、ごま油、ひまし油、アマニ油、ピーナッツオイル、オリーブオイル等が挙げられる。
ラベンダー精油は、例えば、酢酸リナリル及びリナロールを主たる構成成分とし、他に、cis-β-オシメン、trns-β-オシメン、テルピネン-4-オール、酢酸ラバンデュリル、3-オクタノン、3-酢酸オクタニル等の微量成分を含む。
【0060】
前記油性成分としては、その機能の観点からは、例えば、香料、防虫剤、殺虫剤、昆虫忌避剤、化粧材、消臭剤、医薬、殺菌剤、洗剤用の柔軟剤、その他の化学反応剤等が挙げられる。前記化学反応剤とは、特定の化学物質と反応することにより、この化学物質の作用を阻害し、かつ、香料、防虫剤、殺虫剤、昆虫忌避剤、化粧材、消臭剤、医薬、殺菌剤、及び前記柔軟剤のいずれにも該当しない成分である。
【0061】
前記マイクロカプセルを構成する(換言すると、前記壁材に内包されている)前記油性成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0062】
前記油性成分のうち、特に好ましいものとしては、例えば、香料が挙げられる。
【0063】
前記マイクロカプセルにおいて、前記油性成分の含有量は、ゼラチンの含有量100質量部に対して、400~1200質量部であることが好ましく、例えば、400~1000質量部、及び400~800質量部のいずれかであってもよいし、600~1200質量部、及び800~1200質量部のいずれかであってもよいし、600~1000質量部であってもよい。油性成分(芯物質)の前記含有量がこのような範囲であるマイクロカプセルは、品質がより良好で、より容易に製造できる。
【0064】
前記マイクロカプセルにおいては、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子は、生体に対する安全性が高いため、架橋剤と、無機化合物としても、生体に対する安全性が高い成分を選択し、油性成分として生体に対して使用する成分を選択することで、マイクロカプセルを、生体に対して使用するのに適したものとすることができる。
【0065】
前記マイクロカプセルは、その耐熱性が高いため、例えば、水中での使用に適している。
【0066】
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、30μm以下であり、28μm以下であることが好ましく、例えば、27μm以下、26μm以下、及び25μm以下のいずれかであってもよい。このように平均粒子径が小さいマイクロカプセルは、目視での視認が容易である、洗浄により除き難い等の、平均粒子径が大きい場合の不具合を示さないため、その用途が限定されてしまうことがない。
【0067】
前記マイクロカプセルの平均粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、平均粒子径が好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であるマイクロカプセルは、より容易に製造できる。
【0068】
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記マイクロカプセルの平均粒子径は、1~30μm、2~28μm、3~27μm、3~26μm、及び3~25μm以下のいずれかであってもよい。ただし、これらは、マイクロカプセルの平均粒子径の一例である。
【0069】
前記マイクロカプセルは、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、を含み、さらに、架橋剤と、無機化合物と、を含んで構成され、耐熱性に優れるため、経時と共に、内包された油性成分を徐々に外部に放出する徐放性を有するものとすることが可能である。このようなマイクロカプセルは、芯物質としての油性成分の作用を、長期に渡って持続させることができる。
【0070】
前記マイクロカプセルは、以下で説明するように、複合コアセルベーション法を適用することで、製造できる。このように製造した本実施形態のマイクロカプセルは、単純コアセルベーション法を適用することで製造したマイクロカプセルよりも、壁材が強固である。
【0071】
<<マイクロカプセルの製造方法>>
◎製造方法(1)
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法は、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、を混合することにより、乳化液(1)を作製する工程(本明細書においては、「乳化工程(1)」と称することがある)と、
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、無機化合物と、前記乳化液(1)と、を混合することにより、混合液(a1)を作製する工程(本明細書においては、「乳化液混合工程(1)」と称することがある)と、
前記混合液(a1)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製する工程(本明細書においては、「酸性化工程(1)」と称することがある)と、
前記混合液(b1)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程(本明細書においては、「冷却工程(1)」と称することがある)と、
冷却後の前記混合液(b1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する工程(本明細書においては、「架橋剤混合工程(1)」と称することがある)と、を有する(本明細書においては、この製造方法を「製造方法(1)」と称することがある)。
【0072】
製造方法(1)は、複合コアセルベーション法を適用したマイクロカプセルの製造方法であり、この方法により、上述の本発明のマイクロカプセルを良好に製造できる。
【0073】
<乳化工程(1)>
前記乳化工程(1)においては、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、を混合することにより、乳化液(1)を作製する。
前記乳化液(1)は、ゼラチンと、水と、油性成分と、を含有する。
【0074】
乳化工程(1)で用いる前記ゼラチン及び油性成分は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0075】
乳化工程(1)で用いるゼラチン及び油性成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0076】
乳化工程(1)においては、例えば、ゼラチンと、水と、油性成分と、を配合してもよいし、ゼラチン水溶液と、油性成分と、を配合してもよい。ゼラチン水溶液を配合する場合には、ゼラチン水溶液中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
【0077】
乳化工程(1)においては、ゼラチンと、水と、油性成分と、を配合する順序は、特に限定されず、ゼラチン水溶液と、油性成分と、別途必要に応じて水と、を配合する順序も、特に限定されない。
【0078】
乳化工程(1)においては、ゼラチン水溶液と、油性成分と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い乳化液(1)を作製できる。
【0079】
乳化工程(1)で用いる前記ゼラチン水溶液のゼラチンの濃度は、2~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
【0080】
本実施形態において、「ゼラチン水溶液のゼラチンの濃度」とは、「ゼラチン水溶液における、ゼラチン水溶液の総質量(質量部)に対する、ゼラチンの含有量(質量部)の割合」を意味する。ここでは、ゼラチンを例に挙げて説明したが、他の成分の水溶液又は分散液の濃度も、同様である。
【0081】
乳化工程(1)で用いる水と、前記ゼラチン水溶液は、いずれも加熱してもよい。水又はゼラチン水溶液を加熱することで、均一性がより高い乳化液(1)を作製できる。
水とゼラチン水溶液の加熱温度は、40~75℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱の効果がより顕著に得られる。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、ゼラチン又は油性成分の変質など、加熱による弊害を抑制する効果がより高くなる。
【0082】
前記ゼラチン水溶液と油性成分を配合する場合には、ゼラチン水溶液に油性成分を添加してもよいし、油性成分にゼラチン水溶液を添加してもよい。ゼラチン水溶液に油性成分を添加する場合には、油性成分をゼラチン水溶液に一括添加してもよいし、分割添加又は滴下してもよい。油性成分にゼラチン水溶液を添加する場合には、ゼラチン水溶液を油性成分に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
【0083】
乳化工程(1)において、水の使用量は、ゼラチンの使用量に対して10~30質量倍であることが好ましく、15~25質量倍であることがより好ましい。水の前記使用量が前記下限値以上であることで、均一性がより高い乳化液(1)を作製できるなど、水を使用したことによる効果が、より高くなる。水の前記使用量が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
ここで、水の使用量とは、ゼラチンと、水と、油性成分と、を配合する場合には、この水の量であり、ゼラチン水溶液と、油性成分と、を配合し、別途水を配合しない場合には、ゼラチン水溶液中の水の量であり、ゼラチン水溶液と、油性成分と、別途水と、を配合する場合には、ゼラチン水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
【0084】
乳化工程(1)において、油性成分の使用量は、ゼラチンの使用量に対して4~12質量倍であることが好ましく、例えば、4~10質量倍、及び4~8質量倍のいずれかであってもよいし、6~12質量倍、及び8~12質量倍のいずれかであってもよいし、6~10質量倍であってもよい。油性成分の前記使用量がこのような範囲であることで、品質がより良好なマイクロカプセルをより容易に製造できる。
【0085】
乳化工程(1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、水と、油性成分と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(11)」と称することがある)を混合してもよい。
【0086】
前記他の成分(11)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化工程(1)で用いる他の成分(11)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0087】
乳化工程(1)において、前記他の成分(11)の使用量は、特に限定されず、他の成分(11)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化工程(1)において、ゼラチンと、水と、油性成分と、の合計使用量に対する、他の成分(11)の使用量の割合([他の成分(11)の使用量]/([ゼラチンの使用量]+[水の使用量]+[油性成分の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、先に説明したとおりである。
【0088】
乳化工程(1)においては、水の存在下での、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、の混合は、15~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、18~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
【0089】
水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子又は撹拌翼等の撹拌手段を回転させることで、これら成分を混合する方法が挙げられる。
撹拌手段の撹拌速度は、例えば、1000~7000rpm、及び2000~4000rpmのいずれかであってもよいが、これらに限定されない。例えば、ゼラチンの使用量が、5~15gである場合、このような撹拌速度は、特に好適である。ただし、ゼラチンの使用量は、これに限定されない。また、このような撹拌速度は、本工程のうち、少なくとも、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、をすべて配合後に、適用することが好ましい。
【0090】
乳化工程(1)においては、ゼラチン又はゼラチン水溶液と、油性成分と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(11)と、のいずれかの成分に対して、残りの成分を添加するときに、添加対象であるいずれかの成分を撹拌しながら、残りの成分を添加してもよいし、添加対象であるいずれかの成分を撹拌せずに、残りの成分を添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0091】
乳化工程(1)においては、すべての成分(ゼラチン又はゼラチン水溶液と、油性成分と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(11))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0092】
乳化工程(1)においては、例えば、加熱したゼラチン水溶液に、油性成分を単独で添加することにより、乳化液(1)を作製することが好ましく、加熱したゼラチン水溶液に、常温(室温下)の油性成分を単独で添加することにより、乳化液(1)を作製してもよい。
【0093】
<乳化液混合工程(1)>
前記乳化液混合工程(1)においては、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、乳化液(1)と、を混合することにより、混合液(a1)を作製する。
前記混合液(a1)は、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、ゼラチンと、水と、油性成分と、を含有する。
【0094】
乳化液混合工程(1)において、第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子及び無機化合物を併用することにより、以降の工程で、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一が抑制される。
【0095】
乳化液混合工程(1)で用いる第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子及び無機化合物は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0096】
乳化液混合工程(1)で用いる第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子及び無機化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の分類方法は、先に説明したとおりである。
【0097】
乳化液混合工程(1)においては、例えば、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、乳化液(1)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、乳化液(1)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、無機化合物と、乳化液(1)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、無機化合物と、乳化液(1)と、を配合してもよい。
また、乳化液混合工程(1)においては、無機化合物を第1アニオン性高分子水溶液と混合して得られた分散液(11)、又は無機化合物を第2アニオン性高分子水溶液と混合して得られた分散液(12)を用いてもよい。すなわち、乳化液混合工程(1)においては、前記分散液(11)と、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、必要に応じて水と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子又はその水溶液と、前記分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、必要に応じて水と、を配合してもよいし、前記分散液(11)と、前記分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、必要に応じて水と、を配合してもよい。
第1アニオン性高分子水溶液、第2アニオン性高分子水溶液、分散液(11)又は分散液(12)を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中、第2アニオン性高分子水溶液中、分散液(11)中又は分散液(12)中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
【0098】
乳化液混合工程(1)においては、第1アニオン性高分子、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
【0099】
乳化液混合工程(1)においては、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い混合液(a1)を作製できる。
【0100】
乳化液混合工程(1)で用いる第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)の第1アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
【0101】
乳化液混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)の第2アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
【0102】
乳化液混合工程(1)で用いる分散液(11)の無機化合物の濃度は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.3~1.2質量%であることがより好ましい。
【0103】
乳化液混合工程(1)で用いる分散液(12)の無機化合物の濃度は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.3~1.2質量%であることがより好ましい。
【0104】
乳化液混合工程(1)(混合液(a1)を作製する工程)において、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部当り、無機化合物の配合量(本明細書においては、「換算配合量」と称することがある)を、2~17質量部としてもよいが、3~13質量部とすることが好ましく、4~9質量部、3~6質量部、及び6~13質量部のいずれかとしてもよい。無機化合物の前記配合量(換算配合量)が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの耐熱性がより高くなる。無機化合物の前記配合量(換算配合量)が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの形成性がより良好となる。
【0105】
乳化液混合工程(1)で用いる水と、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)は、いずれも加熱してもよい。水、第1アニオン性高分子水溶液、分散液(11)、第2アニオン性高分子水溶液、又は分散液(12)を加熱することで、均一性がより高い混合液(a1)を作製できる。
水と、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、の加熱温度は、40~75℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱の効果がより顕著に得られる。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、第1アニオン性高分子水溶液、分散液(11)、第2アニオン性高分子水溶液、分散液(12)、ゼラチン又は油性成分の変質など、加熱による弊害を抑制する効果がより高くなる。
【0106】
第1アニオン性高分子水溶液、分散液(11)、第2アニオン性高分子水溶液、又は分散液(12)を配合する場合には、これら水溶液又は分散液に配合対象物を添加してもよいし、配合対象物にこれら水溶液又は分散液を添加してもよい。第1アニオン性高分子水溶液、分散液(11)、第2アニオン性高分子水溶液、又は分散液(12)に配合対象物を添加する場合には、配合対象物をこれら水溶液又は分散液に一括添加してもよいし、分割添加若しくは滴下してもよい。配合対象物に第1アニオン性高分子水溶液、分散液(11)、第2アニオン性高分子水溶液、又は分散液(12)を添加する場合には、これら水溶液又は分散液を配合対象物に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
【0107】
乳化液混合工程(1)において、水の使用量は、第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子及び無機化合物の合計使用量に対して、10~30質量倍であることが好ましく、15~25質量倍であることがより好ましい。水の前記使用量が前記下限値以上であることで、均一性がより高い混合液(a1)を作製できるなど、水を使用したことによる効果が、より高くなる。水の前記使用量が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
【0108】
ここで、水の使用量とは、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、乳化液(1)と、を配合する場合には、この水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子と、乳化液(1)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は分散液(11)中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子と、乳化液(1)と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は分散液(11)中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第2アニオン性高分子水溶液中又は分散液(12)中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途水と、を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液中又は分散液(12)中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は分散液(11)中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中又は分散液(12)中の水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は分散液(11)中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中又は分散液(11)中の水と、これらとは別途配合する水と、の合計量である。
【0109】
乳化液混合工程(1)において、第1アニオン性高分子の使用量は、乳化液(1)中のゼラチンの量に対して、1~3質量倍であることが好ましく、例えば、1~2.7質量倍、1~2.4質量倍、1~2.1質量倍、及び1~1.8質量倍のいずれかであってもよいし、1.4~3質量倍、1.8~3質量倍、及び2.2~3質量倍のいずれかであってもよいし、1.4~2.7質量倍、及び1.8~2.4質量倍のいずれかであってもよい。第1アニオン性高分子の使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第1アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
【0110】
乳化液混合工程(1)において、第2アニオン性高分子の使用量は、乳化液(1)中のゼラチンの量に対して、0.01~0.2質量倍であることが好ましく、例えば、0.01~0.17質量倍、0.01~0.14質量倍、0.01~0.11質量倍、及び0.01~0.08質量倍のいずれかであってもよいし、0.04~0.2質量倍、0.07~0.2質量倍、及び0.1~0.2質量倍のいずれかであってもよいし、0.04~0.17質量倍、及び0.07~0.14質量倍のいずれかであってもよい。第2アニオン性高分子の使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
【0111】
乳化液混合工程(1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(12)」と称することがある)を混合してもよい。
【0112】
前記他の成分(12)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化液混合工程(1)で用いる他の成分(12)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0113】
乳化液混合工程(1)において、前記他の成分(12)の使用量は、特に限定されず、他の成分(12)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化液混合工程(1)において、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、乳化液(1)と、の合計使用量に対する、他の成分(12)の使用量の割合([他の成分(12)の使用量]/([第1アニオン性高分子の使用量]+[第2アニオン性高分子の使用量]+[無機化合物の使用量]+[水の使用量]+[乳化液(1)の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、先に説明したとおりである。
【0114】
乳化液混合工程(1)においては、水の存在下での、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、乳化液(1)と、必要に応じて他の成分(12)と、の混合は、20~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、20~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
【0115】
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、乳化液(1)と、必要に応じて他の成分(12)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程(1)において、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0116】
乳化液混合工程(1)においては、第1アニオン性高分子、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(12)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0117】
乳化液混合工程(1)においては、すべての成分(第1アニオン性高分子、第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)と、第2アニオン性高分子、第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)と、乳化液(1)と、別途必要に応じて無機化合物と、別途必要に応じて水と、必要に応じて他の成分(12))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0118】
乳化液混合工程(1)においては、例えば、加熱した第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)に、乳化液(1)を単独で添加し、次いで、得られたものに、常温の第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)を添加することにより、混合液(a1)を作製することが好ましい。そして、加熱した第1アニオン性高分子水溶液又は分散液(11)に、25℃以上の乳化液(1)を単独で添加し、次いで、得られたものに、常温の第2アニオン性高分子水溶液又は分散液(12)を添加することにより、混合液(a)を作製してもよい。
【0119】
<酸性化工程(1)>
前記酸性化工程(1)においては、前記混合液(a1)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製する。
混合液(a1)中のゼラチンは、カチオン性基を有していないために、カチオン性高分子とは見做せない状態にあるか、又は、カチオン性基を有していても、その数が少なく、カチオン性高分子としての性質を十分に有していない状態にある。
これに対して、混合液(b1)中のゼラチンは、酸の作用によって、カチオン性基の数が十分に多く、カチオン性高分子としての性質を十分に有している状態であり、明らかにカチオン性高分子である。
すなわち、混合液(b1)は、ゼラチン(カチオン性高分子)と、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分と、を含有する。
【0120】
酸性化工程(1)で用いる前記酸は、特に限定されず、例えば、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)等が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、クエン酸(HOOCCHC(COOH)(OH)CHCOOH)、酢酸(CHCOOH)等が挙げられる。
【0121】
酸性化工程(1)で用いる酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0122】
酸性化工程(1)においては、酸を単独で添加してもよいし、酸を水溶液として添加してもよい。酸水溶液を用いることで、pHが調節された混合液(b1)の作製が、より容易となる。
【0123】
酸性化工程(1)で用いる前記酸水溶液の酸の濃度は、酸の種類に応じて適宜調節できるが、10~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0124】
前記酸水溶液と混合液(a1)を配合する場合には、混合液(a1)に酸水溶液を添加することが好ましく、酸水溶液を混合液(a1)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
酸を水溶液として添加しない場合には、混合液(a1)に酸を添加することが好ましく、酸を混合液(a1)に一括添加してもよいし、滴下又は分割添加してもよい。
【0125】
酸性化工程(1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、油性成分と、酸と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(13)」と称することがある)を混合してもよい。
【0126】
前記他の成分(13)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、水であってもよい。すなわち、酸性化工程(1)においては、酸を単独で添加する場合と、酸を水溶液として添加する場合と、のいずれであるかによらず、他の成分(13)として別途水を添加してもよい。本明細書においては、他の成分(13)としての水を「水(13)」と称することがある。
【0127】
水(13)を用いる場合には、例えば、混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、を混合することにより、酸性の混合液(b01)を作製し、次いで、酸性の混合液(b01)と水(13)を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製できる。
また、水(13)を用いる場合には、例えば、混合液(a1)と水(13)を混合することにより、混合液(a1)を希釈し、次いで、この希釈した混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、を混合することにより、酸性の混合液(b1)を作製できる。
【0128】
酸性化工程(1)で用いる他の成分(13)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0129】
酸性化工程(1)において、前記他の成分(13)の使用量は、特に限定されず、他の成分(13)の種類に応じて適宜調節できる。
例えば、他の成分(13)が水以外の成分である場合、酸性化工程(1)において、混合液(a1)と、酸と、の合計使用量に対する、他の成分(13)の使用量の割合([他の成分(13)の使用量]/([混合液(a1)の使用量]+[酸の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、酸の使用量とは、酸を水溶液として添加しない場合には、この酸の量であり、酸を水溶液として添加する場合には、酸水溶液中の酸の量である。
【0130】
一方、他の成分(13)が水である場合、酸性化工程(1)において、混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、の合計使用量に対する、水(13)の使用量の割合([水(13)の使用量]/([混合液(a1)の使用量]+[酸又は酸水溶液の使用量])×100)は、10~100質量%であることが好ましく、例えば、20~90質量%、30~80質量%、及び40~70質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、水を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、水の過剰使用が抑制される。
ここで、酸の使用量とは、上記と同じである。
【0131】
酸性化工程(1)においては、混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(13)と、を混合する場合、これらの混合は、30~75℃の温度条件下で行うことが好ましく、40~60℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
例えば、水(13)を用いる場合には、このような温度に調節(加熱)した水(13)を混合することが好ましい。
【0132】
混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(13)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程(1)において、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0133】
酸性化工程(1)においては、混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(13)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0134】
酸性化工程(1)においては、すべての成分(混合液(a1)と、酸又は酸水溶液と、必要に応じて他の成分(13))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、例えば、1~10分であってもよい。
【0135】
酸性化工程(1)においては、例えば、酸水溶液を混合液(a1)に添加又は滴下することにより、酸性の混合液(b1)を作製することが好ましく、酸水溶液を混合液(a1)に滴下することにより、酸性の混合液(b1)を作製することがより好ましい。
水(13)を用いる場合には、水(13)を対象物に添加又は滴下することにより、酸性の混合液(b1)を作製することが好ましい。
【0136】
酸性化工程(1)の開始時から終了時までに、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、を含有する液体が示すpHの最小値は、2~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。前記pHの最小値が前記上限値以下であることで、ゼラチンが第1アニオン性高分子、第2アニオン性高分子及び無機化合物とともにより安定して壁材を構成する。前記pHの最小値が前記下限値以上であることで、前記液体の過度なpH低下が避けられる。
前記液体は、例えば、混合液(b1)であってもよいし、混合液(b1)を得る前の途中の段階の混合液であってもよい。
【0137】
<冷却工程(1)>
前記冷却工程においては、前記混合液(b1)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する。
混合液(b1)を冷却することにより、混合液(b1)中において、油性成分を内包した壁材の析出が促進される。
【0138】
冷却時の混合液(b1)の温度は、0~10℃であることが好ましく、2~9℃であることがより好ましい。前記温度が前記上限値以下であることで、混合液(b1)の冷却効果がより顕著に得られる。前記温度が前記下限値以上であることで、混合液(b1)の過剰な冷却が抑制される。
【0139】
混合液(b1)の冷却速度は、特に限定されないが、0.2~2.0℃/minであることが好ましく、0.3~1.0℃/minであることがより好ましい。前記冷却速度がこのような範囲であることで、混合液(b1)の冷却効果がより顕著に得られる。
【0140】
<架橋剤混合工程(1)>
前記架橋剤混合工程(1)においては、冷却後の前記混合液(b1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する。
本工程を行うことにより、目的とする、平均粒子径が小さく、耐熱性が高いマイクロカプセルが、水分散体として得られる。
前記水分散体(1)中においては、架橋剤の作用により、壁材成分同士が結び付けられ、壁材が強固なマイクロカプセルが形成される。このときの架橋剤の作用は、先に説明したとおりである。
すなわち、水分散体(1)は、目的とするマイクロカプセルを含有する。
【0141】
架橋剤混合工程(1)で用いる架橋剤は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0142】
架橋剤混合工程(1)で用いる架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0143】
架橋剤混合工程(1)においては、架橋剤の種類にもよるが、架橋剤を単独で配合してもよいし、水溶液として配合してもよい。架橋剤水溶液を用いることで、構造がより安定したマイクロカプセルが得られることがある。
【0144】
架橋剤水溶液と混合液(b1)を配合する場合には、混合液(b1)に架橋剤水溶液を添加することが好ましく、架橋剤水溶液を混合液(b1)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
架橋剤を水溶液として添加しない場合には、混合液(b1)に架橋剤を添加することが好ましく、架橋剤を混合液(b1)に一括添加してもよいし、分割添加してもよい。
【0145】
架橋剤混合工程(1)において、架橋剤の使用量は、混合液(b1)中のゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計量に対して、0.1~0.8質量倍であることが好ましく、例えば、0.1~0.6質量倍、0.1~0.4質量倍、及び0.1~0.2質量倍のいずれであってもよいし、0.2~0.8質量倍、0.4~0.8質量倍、及び0.6~0.8質量倍のいずれであってもよいし、0.2~0.6質量倍であってもよい。架橋剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの壁材が、より強固になる。架橋剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
【0146】
架橋剤混合工程(1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、油性成分と、酸と、架橋剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(14)」と称することがある)を混合してもよい。
【0147】
前記他の成分(14)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
架橋剤混合工程(1)で用いる他の成分(14)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0148】
前記他の成分(14)としては、例えば、水が挙げられる。
【0149】
架橋剤混合工程(1)において、前記他の成分(14)の使用量は、特に限定されず、他の成分(14)の種類に応じて適宜調節できる。
【0150】
前記他の成分(14)が水以外の成分である場合、通常は、架橋剤混合工程(1)において、前記混合液(b1)と、架橋剤と、の合計使用量に対する、他の成分(14)の使用量の割合([他の成分(14)の使用量]/([混合液(b1)の使用量]+[架橋剤の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
【0151】
架橋剤混合工程(1)においては、混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14)と、を混合する場合、これらの混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。このような温度で混合することにより、構造がより安定したマイクロカプセルが得られる。
架橋剤混合工程(1)での、この混合時の温度範囲は、例えば、前記冷却工程での混合液(b1)の温度範囲と一致してもよいし、一致しなくてもよい。
【0152】
混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程(1)において、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0153】
架橋剤混合工程(1)においては、混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0154】
架橋剤混合工程(1)においては、すべての成分(混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1分~15時間であることが好ましく、例えば、1~10分であってもよいし、1~15時間であってもよく、例えば、架橋剤の種類に応じて適宜選択できる。
【0155】
架橋剤混合工程(1)においては、すべての成分(混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14))を配合後に、得られた配合物を撹拌するときの配合物の温度は、15℃以上であることが好ましく、例えば、15~35℃であってもよい。
このような温度で前記配合物を撹拌する時間は、例えば、1~5時間であってもよい。
【0156】
架橋剤がトランスグルタミナーゼ等の酵素である場合には、架橋剤混合工程(1)においては、すべての成分(混合液(b1)と、架橋剤又は架橋剤水溶液と、必要に応じて他の成分(14))を配合後に、得られた配合物の温度を35~75℃として、撹拌することが好ましい。このようにすることで、余剰の酵素を失活させることができる。
このような温度で前記配合物を撹拌する時間は、例えば、5~30分であってもよい。
【0157】
<他の工程(1)>
製造方法(1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の乳化工程(1)と、乳化液混合工程(1)と、酸性化工程(1)と、冷却工程(1)と、架橋剤混合工程(1)と、のいずれにも該当しない、他の工程(1)を有していてもよい。
他の工程(1)の種類と、他の工程(1)の数と、他の工程(1)を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0158】
[塩基混合工程(1)]
前記他の工程(1)としては、例えば、冷却工程(1)と、架橋剤混合工程(1)と、の間で、冷却後の前記混合液(b1)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c1)を作製する工程(本明細書においては、「塩基混合工程(1)」と称することがある)が挙げられる。
すなわち、製造方法(1)は、冷却工程(1)と、
冷却後の前記混合液(b1)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c1)を作製する塩基混合工程(1)と、
前記混合液(c1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する架橋剤混合工程(1)と、を有していてもよい。
架橋剤がトランスグルタミナーゼ等の酵素である場合に、塩基混合工程(1)を行い、混合液(b1)のpHを前記酵素の活性が高くなる範囲(例えば、至適pHを含む範囲)に調節して、混合液(c1)とすることにより、続く架橋剤混合工程(1)において、架橋剤の作用をより向上させることができる。
【0159】
塩基混合工程(1)で得られる、混合液(c1)のpHは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、4~6.8であることが好ましく、架橋剤がトランスグルタミナーゼ等の酵素である場合には、5~6.5であることが好ましい。
【0160】
塩基混合工程(1)で用いる前記塩基は、特に限定されず、例えば、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよい。
前記無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸リチウム(LiCO)等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)等のアルカリ金属の炭酸水素塩等が挙げられる。
前記有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン((CHCHN)等のアルキルアミン等が挙げられる。
【0161】
塩基混合工程(1)で用いる塩基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0162】
塩基混合工程(1)においては、塩基を単独で配合してもよいし、塩基を水溶液として配合してもよい。塩基水溶液を用いることで、pHが調節された混合液(c1)を、より容易に作製できる。
【0163】
塩基混合工程(1)で用いる前記塩基水溶液の塩基の濃度は、塩基の種類に応じて適宜調節できるが、10~40質量%であることが好ましく、20~30質量%であることがより好ましい。
【0164】
前記塩基水溶液と混合液(b1)を配合する場合には、混合液(b1)に塩基水溶液を添加することが好ましく、塩基水溶液を混合液(b1)に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
塩基を水溶液として添加しない場合には、混合液(b1)に塩基を添加することが好ましく、塩基を混合液(b1)に一括添加してもよいし、滴下又は分割添加してもよい。
【0165】
塩基混合工程(1)において、混合液(b1)と、塩基又は塩基水溶液と、の混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
【0166】
混合液(b1)と、塩基又は塩基水溶液と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程(1)において、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0167】
塩基混合工程(1)においては、混合液(b1)と、塩基又は塩基水溶液と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0168】
塩基混合工程(1)においては、すべての成分(混合液(b1)と、塩基又は塩基水溶液)を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、例えば、10~60分であってよい。前記時間が前記下限値以上であることで、塩基を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記時間が前記上限値以下であることで、塩基混合工程(1)の所要時間が過剰に長くなることが避けられる。
【0169】
このように、すべての成分を配合後に得られた配合物を撹拌するときには、前記配合物の撹拌を、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
【0170】
塩基混合工程(1)においては、例えば、塩基水溶液を混合液(b1)に添加又は滴下することにより、混合液(c1)を作製することが好ましく、塩基水溶液を混合液(b1)に滴下することにより、混合液(c1)を作製することがより好ましい。
塩基水溶液の混合液(b1)への添加又は滴下は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。
【0171】
製造方法(1)においては、塩基混合工程(1)を行う場合、架橋剤混合工程(1)は、冷却後の混合液(b1)に代えて、混合液(c1)を用いる点以外は、先に説明した架橋剤混合工程(1)と同じであってよい。
【0172】
[追加混合工程(1)]
前記他の工程(1)としては、例えば、冷却工程(1)と、架橋剤混合工程(1)と、の間で、冷却後の前記混合液(b1)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d1)を作製する工程(本明細書においては、「追加混合工程(1)」と称することがある)が挙げられる。このように、製造方法(1)においては、冷却後の混合液(b1)に、第2アニオン性高分子を追加混合してもよい。
すなわち、製造方法(1)は、冷却工程(1)と、
冷却後の前記混合液(b1)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d1)を作製する追加混合工程(1)と、
前記混合液(d1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する架橋剤混合工程(1)と、を有していてもよい。
追加混合工程(1)を行うことにより、以降の工程において、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、がともに高度に抑制され、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られることがある。
【0173】
混合液(d1)は、ゼラチン(カチオン性高分子)と、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分、を含有する。
【0174】
追加混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0175】
追加混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子は、乳化液混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子と、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0176】
追加混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0177】
[乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量(質量部)]:[追加混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量(質量部)]の質量比は、75:25~25:75であることが好ましく、例えば、68:32~32:68、61:39~39:61、及び55:45~45:55のいずれかであってもよい。前記質量比がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られる。
【0178】
追加混合工程(1)と乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の合計使用量(追加混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)は、ゼラチンの使用量に対して、0.03~0.4質量倍であることが好ましい。前記合計使用量がこのような範囲であることで、壁材の構成に寄与しない第2アニオン性高分子又はゼラチンの量を低減できる。
【0179】
乳化液混合工程(1)における第1アニオン性高分子の使用量は、追加混合工程(1)と乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の合計使用量(追加混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)に対して、40~60質量倍であることが好ましい。前記使用量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記使用量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの耐熱性がより高くなる。
【0180】
乳化液混合工程(1)における第1アニオン性高分子の使用量と、追加混合工程(1)と乳化液混合工程における第2アニオン性高分子の合計使用量と、の合計量(乳化液混合工程(1)における第1アニオン性高分子の使用量と、追加混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、乳化液混合工程(1)における第2アニオン性高分子の使用量と、の合計量)は、ゼラチンの使用量に対して、0.5~3.5質量倍であることが好ましい。前記合計量が前記下限値以上であることで、マイクロカプセルの収率がより向上する。前記合計量が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの耐熱性がより高くなる。
【0181】
追加混合工程(1)においては、例えば、第2アニオン性高分子と、冷却後の混合液(b1)と、を配合してもよいし、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、を配合してもよい。そして、第2アニオン性高分子を単独で配合する場合と、第2アニオン性高分子を水溶液として配合する場合と、のいずであるかによらず、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
【0182】
追加混合工程(1)においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
【0183】
追加混合工程(1)においては、第2アニオン性高分子水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い混合液(d1)を作製できる。
【0184】
追加混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子水溶液の第2アニオン性高分子の濃度は、3~20質量%であることが好ましく、5~12質量%であることがより好ましい。
【0185】
第2アニオン性高分子水溶液を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加してもよいし、配合対象物に第2アニオン性高分子水溶液を添加してもよい。第2アニオン性高分子水溶液に配合対象物を添加する場合には、配合対象物を第2アニオン性高分子水溶液に一括添加してもよいし、分割添加若しくは滴下してもよい。配合対象物に第2アニオン性高分子水溶液を添加する場合には、第2アニオン性高分子水溶液を配合対象物に一括添加してもよいし、滴下してもよい。
【0186】
追加混合工程(1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分と、酸と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(15)」と称することがある)を混合してもよい。
【0187】
前記他の成分(15)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
追加混合工程(1)で用いる他の成分(15)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0188】
追加混合工程(1)において、前記他の成分(15)の使用量は、特に限定されず、他の成分(15)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、追加混合工程(1)において、第2アニオン性高分子と、冷却後の混合液(b1)と、の合計使用量に対する、他の成分(15)の使用量の割合([他の成分(15)の使用量]/([第2アニオン性高分子の使用量]+[冷却後の混合液(b1)の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
【0189】
追加混合工程(1)は、冷却工程(1)に次いで、直ちに連続して行ってもよい。その場合には、追加混合工程(1)開始時の混合液(b1)の温度は、冷却工程(1)終了時の混合液(b1)の温度と同じである。
【0190】
追加混合工程(1)においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、必要に応じて他の成分(15)と、の混合は、0~10℃の温度条件下で行うことが好ましく、2~9℃の温度条件下で行うことがより好ましい。追加混合工程(1)での、この混合時の温度範囲は、冷却工程(1)での混合液(b1)の温度範囲と一致してもよいし、一致しなくてもよい。
【0191】
第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、必要に応じて他の成分(15)と、を混合する方法は、特に限定されず、上述の乳化工程(1)において、水の存在下で、ゼラチンと、油性成分と、必要に応じて他の成分(11)と、を混合する方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0192】
追加混合工程(1)においては、第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、必要に応じて他の成分(15)と、のいずれかの添加対象物に対して、残りのものを添加するときに、添加対象物を撹拌しながら、残りのものを添加してもよいし、添加対象物を撹拌せずに、残りのものを添加することによって、すべての成分を配合した後に、この配合物を撹拌してもよい。
【0193】
追加混合工程(1)においては、すべての成分(第2アニオン性高分子又はその水溶液と、冷却後の混合液(b1)と、必要に応じて他の成分(15))を配合後に、得られた配合物を撹拌する時間は、1~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0194】
追加混合工程(1)においては、例えば、冷却後の混合液(b1)に、第2アニオン性高分子水溶液を添加又は滴下することにより、混合液(d1)を作製することが好ましい。
【0195】
製造方法(1)においては、追加混合工程(1)を行う場合、架橋剤混合工程(1)は、冷却後の混合液(b1)に代えて、混合液(d1)を用いる点以外は、先に説明した架橋剤混合工程(1)と同じであってよい。
【0196】
製造方法(1)は、塩基混合工程(1)及び追加混合工程(1)をともに有する場合、追加混合工程(1)及び塩基混合工程(1)をこの順に有することが好ましい。このように、追加混合工程(1)を行ってから、塩基混合工程(1)を行うことで、これらの工程を行うことによって得られる効果、すなわち、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、がともに高度に抑制される効果と、架橋剤の作用がより向上する効果が、最も顕著に得られる。
すなわち、好ましい製造方法(1)の一例としては、冷却工程(1)と、
冷却後の前記混合液(b1)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d1)を作製する追加混合工程(1)と、
前記混合液(d1)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c1)を作製する塩基混合工程(1)と、
前記混合液(c1)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(1)を作製する架橋剤混合工程(1)と、を有する製造方法が挙げられる。
【0197】
製造方法(1)においては、追加混合工程(1)及び塩基混合工程(1)をこの順で行う場合、追加混合工程(1)は、先に説明したとおりに行うことができ、塩基混合工程(1)は、冷却後の混合液(b1)に代えて、混合液(d1)を用いる点以外は、先に説明した塩基混合工程(1)と同じであってよく、架橋剤混合工程(1)は、冷却後の混合液(b1)に代えて、混合液(c1)を用いる点以外は、先に説明した架橋剤混合工程(1)と同じであってよい。
【0198】
製造方法(1)によって得られたマイクロカプセルは、そのまま水分散体として用いてもよいし、公知の後処理、精製等を行って得られた水分散体を、そのまま用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行った後、分散媒を除去することにより、マイクロカプセルの単体として用いてもよい。
前記マイクロカプセルは、いずれの状態であっても(特に、分散媒を除去した後の単体であっても)、その壁材が強固で、平均粒子径が小さく、耐熱性が高い。
【0199】
◎製造方法(2)
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルの製造方法は、水の存在下で、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、を混合することにより、乳化液(2)を作製する工程(本明細書においては、「乳化工程(2)」と称することがある)と、
水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液と、を混合することにより、混合液(a2)を作製する工程(本明細書においては、「乳化液混合工程(2)」と称することがある)と、
前記混合液(a2)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b2)を作製する工程(本明細書においては、「酸性化工程(2)」と称することがある)と、
前記混合液(b2)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する工程(本明細書においては、「冷却工程(2)」と称することがある)と、
冷却後の前記混合液(b2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する工程(本明細書においては、「架橋剤混合工程(2)」と称することがある)と、を有する(本明細書においては、この製造方法を「製造方法(2)」と称することがある)。
【0200】
製造方法(2)も、複合コアセルベーション法を適用したマイクロカプセルの製造方法であり、この方法により、上述の本発明のマイクロカプセルを良好に製造できる。
製造方法(2)は、無機化合物の配合対象物が異なる点を除けば、製造方法(1)と同じである。
【0201】
<乳化工程(2)>
前記乳化工程(2)においては、水の存在下で、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、を混合することにより、乳化液(2)を作製する。
前記乳化液(2)は、ゼラチンと、水と、無機化合物と、油性成分と、を含有する。
【0202】
乳化工程(2)で用いる前記ゼラチン、無機化合物及び油性成分は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0203】
乳化工程(2)で用いるゼラチン、無機化合物及び油性成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0204】
乳化工程(2)においては、例えば、ゼラチンと、水と、無機化合物と、油性成分と、を配合してもよいし、ゼラチン水溶液と、無機化合物と、油性成分と、を配合してもよい。
また、乳化工程(2)においては、無機化合物をゼラチン水溶液と混合して得られた分散液(21)を用いてもよい。すなわち、乳化工程(2)においては、前記分散液(21)と、油性成分と、を配合してもよい。
ゼラチン水溶液又は分散液(21)を配合する場合には、ゼラチン水溶液中又は分散液(21)中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
【0205】
乳化工程(2)においては、ゼラチン、ゼラチン水溶液又は分散液(21)と、油性成分と、必要に応じて無機化合物と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
【0206】
乳化工程(2)においては、ゼラチン水溶液又は分散液(21)と、油性成分と、別途必要に応じて無機化合物と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い乳化液(2)を作製できる。
【0207】
乳化工程(2)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、水と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(21)」と称することがある)を混合してもよい。
【0208】
前記他の成分(21)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化工程(2)で用いる他の成分((21))は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0209】
乳化工程(2)において、前記他の成分(21)の使用量は、特に限定されず、他の成分(21)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化工程(2)において、ゼラチンと、無機化合物と、油性成分と、水と、の合計使用量に対する、他の成分(21)の使用量の割合([他の成分(21)の使用量]/([ゼラチンの使用量]+[無機化合物の使用量]+[油性成分の使用量]+[水の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
ここで、水の使用量とは、ゼラチンと、水と、無機化合物と、油性成分と、を配合する場合には、この水の量であり、ゼラチン水溶液又は分散液(21)と、油性成分と、必要に応じて無機化合物を配合し、別途水を配合しない場合には、ゼラチン水溶液中又は分散液(21)中の水の量であり、ゼラチン水溶液又は分散液(21)と、油性成分と、必要に応じて無機化合物を配合し、別途水と、を配合する場合には、ゼラチン水溶液中又は分散液(21)中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
【0210】
乳化工程(2)は、ゼラチン水溶液に代えて分散液(21)を用い得る点と、無機化合物を用い得る点、を除けば、乳化工程(1)と同じである。
乳化工程(2)において分散液(21)を用いる態様は、乳化工程(1)においてゼラチン水溶液を用いる態様と同じであってよい。
乳化工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0211】
<乳化液混合工程(2)>
前記乳化液混合工程(2)においては、水の存在下で、第1アニオン性高分子と、前記第1アニオン性高分子とは異なる種類の第2アニオン性高分子と、前記乳化液(2)と、を混合することにより、混合液(a2)を作製する。
前記混合液(a2)は、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、ゼラチンと、水と、油性成分と、を含有する。
【0212】
乳化液混合工程(2)において、第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子を併用することにより、以降の工程で、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一が抑制される。
【0213】
乳化液混合工程(2)で用いる第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、先に説明したものであり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0214】
乳化液混合工程(2)で用いる第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
第1アニオン性高分子及び第2アニオン性高分子の分類方法は、先に説明したとおりである。
【0215】
乳化液混合工程(2)においては、例えば、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、乳化液(2)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、乳化液(2)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、を配合してもよいし、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、を配合してもよい。
第1アニオン性高分子水溶液又は第2アニオン性高分子水溶液を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中又は第2アニオン性高分子水溶液中の水以外に、別途、水を配合してもよいし、配合しなくてもよい。
【0216】
乳化液混合工程(2)においては、第1アニオン性高分子又は第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子又は第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、必要に応じて水と、を配合する順序は、特に限定されない。
【0217】
乳化液混合工程(2)においては、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、別途必要に応じて水と、を配合することが好ましい。このようにすることで、均一性がより高い混合液(a2)を作製できる。
【0218】
乳化液混合工程(2)で用いる第1アニオン性高分子水溶液の第1アニオン性高分子の濃度は、乳化液混合工程(1)で用いる第1アニオン性高分子水溶液の第1アニオン性高分子の濃度と同じであってもよい。
乳化液混合工程(2)で用いる第2アニオン性高分子水溶液の第2アニオン性高分子の濃度は、乳化液混合工程(1)で用いる第2アニオン性高分子水溶液の第2アニオン性高分子の濃度と同じであってもよい。
【0219】
乳化液混合工程(2)(混合液(a2)を作製する工程)において、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部当り、無機化合物の配合量(製造方法(2)の場合も、本明細書においては、「換算配合量」と称することがある)を、2~17質量部としてもよいが、3~13質量部とすることが好ましく、4~9質量部、3~6質量部、及び6~13質量部のいずれかとしてもよい。無機化合物の前記配合量(換算配合量)が前記下限値以上であることで、前記マイクロカプセルの耐熱性がより高くなる。無機化合物の前記配合量(換算配合量)が前記上限値以下であることで、マイクロカプセルの形成性がより良好となる。
【0220】
乳化液混合工程(2)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分と、のいずれにも該当しない他の成分(すなわち、前記他の成分(12))を混合してもよい。
【0221】
前記他の成分(12)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
乳化液混合工程(2)で用いる他の成分(12)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0222】
乳化液混合工程(2)において、前記他の成分(12)の使用量は、特に限定されず、他の成分(12)の種類に応じて適宜調節できる。
通常は、乳化液混合工程(2)において、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、乳化液(2)と、の合計使用量に対する、他の成分(12)の使用量の割合([他の成分(12)の使用量]/([第1アニオン性高分子の使用量]+[第2アニオン性高分子の使用量]+[水の使用量]+[乳化液(2)の使用量])×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、平均粒子径がより小さく、耐熱性がより高いマイクロカプセルが得られる。
【0223】
ここで、水の使用量とは、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、水と、乳化液(2)と、を配合する場合には、この水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、乳化液(2)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子と、乳化液(2)と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水の量である。
また、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、別途水と、を配合する場合には、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、これとは別途配合する水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、を配合し、別途水を配合しない場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、の合計量である。
また、第1アニオン性高分子水溶液と、第2アニオン性高分子水溶液と、乳化液(2)と、別途水と、を配合する場合には、第1アニオン性高分子水溶液中の水と、第2アニオン性高分子水溶液中の水と、これらとは別途配合する水と、の合計量である。
【0224】
乳化液混合工程(2)は、乳化液(1)に代えて乳化液(2)を用いる点と、無機化合物を用いない点、を除けば、乳化液混合工程(1)と同じである。
乳化液混合工程(2)において乳化液(2)を用いる態様は、乳化液混合工程(1)において乳化液(1)を用いる態様と同じであってよい。
乳化液混合工程(2)において、第1アニオン性高分子又はその水溶液を用いる態様は、乳化液混合工程(1)において、第1アニオン性高分子又はその水溶液を用いる態様と同じであってよい。
乳化液混合工程(2)において、第2アニオン性高分子又はその水溶液を用いる態様は、乳化液混合工程(1)において、第2アニオン性高分子又はその水溶液を用いる態様と同じであってよい。
乳化液混合工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0225】
<酸性化工程(2)>
前記酸性化工程(2)においては、前記混合液(a2)と、酸と、を混合することにより、酸性の混合液(b2)を作製する。
酸性化工程(2)において用いる酸は、酸性化工程(1)において用いる酸と同じである。
酸性化工程(2)は、混合液(a1)に代えて混合液(a2)を用いる点以外は、酸性化工程(1)と同じであってよい。
酸性化工程(2)において、混合液(a2)及び酸を用いる態様は、それぞれ、酸性化工程(1)において、混合液(a1)及び酸を用いる態様と同じであってよい。
酸性化工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0226】
<冷却工程(2)>
前記冷却工程(2)においては、前記混合液(b2)を、その温度が10℃以下となるまで冷却する。
混合液(b2)を冷却することにより、混合液(b2)中において、油性成分を内包した壁材の析出が促進される。
【0227】
冷却工程(2)は、混合液(b1)に代えて混合液(b2)を用いる点を除けば、冷却工程(1)と同じである。
冷却工程(2)において混合液(b2)を用いる態様は、冷却工程(1)において混合液(b1)を用いる態様と同じであってよい。
冷却工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0228】
<架橋剤混合工程(2)>
前記架橋剤混合工程(2)においては、冷却後の前記混合液(b2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する。
本工程を行うことにより、目的とする、平均粒子径が小さく、耐熱性が高いマイクロカプセルが、水分散体として得られる。
前記水分散体(2)中においては、架橋剤の作用により、壁材成分同士が結び付けられ、壁材が強固なマイクロカプセルが形成される。このときの架橋剤の作用は、先に説明したとおりである。
すなわち、水分散体(2)は、目的とするマイクロカプセルを含有する。
【0229】
架橋剤混合工程(2)は、混合液(b1)に代えて混合液(b2)を用いる点を除けば、架橋剤混合工程(1)と同じである。
架橋剤混合工程(2)において混合液(b2)を用いる態様は、架橋剤混合工程(1)において混合液(b1)を用いる態様と同じであってよい。
架橋剤混合工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0230】
<他の工程(2)>
製造方法(2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の乳化工程(2)と、乳化液混合工程(2)と、酸性化工程(2)と、冷却工程(2)と、架橋剤混合工程(2)と、のいずれにも該当しない、他の工程(2)を有していてもよい。
他の工程(2)の種類と、他の工程(2)の数と、他の工程(2)を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0231】
[塩基混合工程(2)]
前記他の工程(2)としては、例えば、冷却工程(2)と、架橋剤混合工程(2)と、の間で、冷却後の前記混合液(b2)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c2)を作製する工程(本明細書においては、「塩基混合工程(2)」と称することがある)が挙げられる。
すなわち、製造方法(2)は、冷却工程(2)と、
冷却後の前記混合液(b2)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c2)を作製する塩基混合工程(2)と、
前記混合液(c2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する架橋剤混合工程(2)と、を有していてもよい。
架橋剤がトランスグルタミナーゼ等の酵素である場合に、塩基混合工程(2)を行い、混合液(b2)のpHを前記酵素の活性が高くなる範囲(例えば、至適pHを含む範囲)に調節して、混合液(c2)とすることにより、続く架橋剤混合工程(2)において、架橋剤の作用をより向上させることができる。
【0232】
塩基混合工程(2)は、混合液(b1)に代えて混合液(b2)を用いる点を除けば、塩基混合工程(1)と同じである。
塩基混合工程(2)において用いる塩基は、塩基混合工程(1)において用いる塩基と同じであってよい。
塩基混合工程(2)において混合液(b2)及び塩基を用いる態様は、それぞれ、塩基混合工程(1)において混合液(b1)及び塩基を用いる態様と同じであってよい。
塩基混合工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0233】
[追加混合工程(2)]
前記他の工程(2)としては、例えば、冷却工程(2)と、架橋剤混合工程(2)と、の間で、冷却後の前記混合液(b2)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d2)を作製する工程(本明細書においては、「追加混合工程(2)」と称することがある)が挙げられる。このように、製造方法(2)においては、冷却後の混合液(b2)に、第2アニオン性高分子を追加混合してもよい。
すなわち、製造方法(2)は、冷却工程(2)と、
冷却後の前記混合液(b2)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d2)を作製する追加混合工程(2)と、
前記混合液(d2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する架橋剤混合工程(2)と、を有していてもよい。
追加混合工程(2)を行うことにより、以降の工程において、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、がともに高度に抑制され、平均粒子径がより小さいマイクロカプセルが得られることがある。
【0234】
混合液(d2)は、ゼラチン(カチオン性高分子)と、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、無機化合物と、水と、油性成分、を含有する。
【0235】
追加混合工程(2)は、混合液(b1)に代えて混合液(b2)を用いる点を除けば、追加混合工程(1)と同じである。
追加混合工程(2)において用いる第2アニオン性高分子は、追加混合工程(1)において用いる第2アニオン性高分子と同じであってよい。
追加混合工程(2)において混合液(b2)及び第2アニオン性高分子を用いる態様は、それぞれ、追加混合工程(1)において混合液(b1)及び第2アニオン性高分子を用いる態様と同じであってよい。
追加混合工程(2)については、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0236】
製造方法(2)は、塩基混合工程(2)及び追加混合工程(2)をともに有する場合、追加混合工程(2)及び塩基混合工程(2)をこの順に有することが好ましい。このように、追加混合工程(2)を行ってから、塩基混合工程(2)を行うことで、これらの工程を行うことによって得られる効果、すなわち、マイクロカプセル自体の凝集又は合一と、マイクロカプセルの形成過程にある壁材成分の凝集又は合一と、がともに高度に抑制される効果と、架橋剤の作用がより向上する効果が、最も顕著に得られる。
すなわち、好ましい製造方法(2)の一例としては、冷却工程(2)と、
冷却後の前記混合液(b2)と、前記第2アニオン性高分子と、を混合することにより、混合液(d2)を作製する追加混合工程(2)と、
前記混合液(d2)と、塩基と、を混合することにより、pHが調節された混合液(c2)を作製する塩基混合工程(2)と、
前記混合液(c2)と、架橋剤と、を混合することにより、マイクロカプセルの水分散体(2)を作製する架橋剤混合工程(2)と、を有する製造方法が挙げられる。
【0237】
製造方法(2)においては、追加混合工程(2)及び塩基混合工程(2)をこの順で行う場合、追加混合工程(2)は、先に説明したとおりに行うことができ、塩基混合工程(2)は、冷却後の混合液(b2)に代えて、混合液(d2)を用いる点以外は、先に説明した塩基混合工程(2)と同じであってよく、架橋剤混合工程(2)は、冷却後の混合液(b2)に代えて、混合液(c2)を用いる点以外は、先に説明した架橋剤混合工程(2)と同じであってよい。
【0238】
製造方法(2)によって得られたマイクロカプセルは、そのまま水分散体として用いてもよいし、公知の後処理、精製等を行って得られた水分散体を、そのまま用いてもよいし、必要に応じて公知の後処理、精製等を行った後、分散媒を除去することにより、マイクロカプセルの単体として用いてもよい。
前記マイクロカプセルは、いずれの状態であっても(特に、分散媒を除去した後の単体であっても)、その壁材が強固で、平均粒子径が小さく、耐熱性が高い。
【0239】
製造方法(1)及び製造方法(2)においては、いずれも、マイクロカプセルの製造の際に、壁材の形成時に無機化合物を配合するのであり、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、がすべて共存する状態となるよりも前の段階で、無機化合物をこれらの一部に配合する。この点で、製造方法(1)及び製造方法(2)は、共通点を有する。
【実施例0240】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0241】
[実施例1]
<<マイクロカプセルの製造>>
ゼラチン(新田ゼラチン社製「TypeAゼラチン」)(6g)を蒸留水(122g)に添加し、50℃で加熱して溶解させることにより、濃度が4.7質量%であるゼラチン水溶液を調製した。
アラビアガム(ナカライテスク社製、第1アニオン性高分子に相当)(10g)を蒸留水(118g)に添加し、50℃で加熱して溶解させることにより、濃度が7.8質量%であるアラビアガム水溶液を調製した。さらに、このアラビアガム水溶液を50℃で加熱したまま、ここへタルク(日本タルク社製「ナノエースD600」、平均粒子径0.7μm、無機化合物に相当)(0.8g)を添加し、分散させ、分散液(1)を調製した。
カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬社製、第2アニオン性高分子に相当)(0.2g)を蒸留水(1.8g)に溶解させ、濃度が10質量%であるカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を調製した。
【0242】
上記で得られたゼラチン水溶液の全量(128g)を50℃で加熱したまま、ここへ常温のハッカ精油(Sin社製、油性成分に相当)(50g)を添加し、乳化機を用いて、撹拌速度3000rpmで、室温下で5分撹拌することにより、乳化液(1)を作製した(乳化工程(1))。
上記で得られた分散液(1)の全量(128.8g)を50℃で加熱したまま、ここへ前記乳化液(1)の全量(178g)を添加し、乳化機を用いて、撹拌速度350rpmで、室温下で撹拌した。
ここへ、さらに、上記で得られた、常温のカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液の全量(2g)を添加し、室温下で2分撹拌することにより、混合液(a1)を作製した(乳化液混合工程(1))。
【0243】
次いで、50℃の条件下で、混合液(a1)を撹拌しながら、ここへ、常温の、濃度が50質量%であるクエン酸(富士フィルム和光純薬社製)の水溶液を滴下し、撹拌して、混合液(a1)のpHを3.8に調節することにより、酸性の混合液(b1)を作製した(酸性化工程(1))。
次いで、冷却速度0.5℃/minで、得られた混合液(b1)を撹拌しながら、その温度が10℃以下となるまで冷却した(冷却工程(1))。
次いで、混合液(b1)を、その温度を10℃以下に維持し、撹拌しながら、ここへ、濃度が24質量%である水酸化ナトリウム(関東化学社製)の水溶液を滴下して、混合液(b1)のpHを6.0に調節し、混合液(c1)を得た(塩基混合工程(1))。
得られた混合液(c1)の温度を10℃以下に維持しながら、ここへ、トランスグルタミナーゼ(味の素社製「アクティバTG-S」、架橋剤に相当)(5g)を添加し、添加後の溶液の温度を20℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を一晩撹拌した(架橋剤混合工程(1))。さらに、この溶液の温度を30℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を4時間撹拌した。さらに、この溶液の温度を70℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を15分撹拌することで、余剰のトランスグルタミナーゼを失活させた。
以上により、ゼラチンと、アラビアガムと、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、トランスグルタミナーゼと、タルクと、を含んで構成され、芯物質としてハッカ精油を内包するマイクロカプセルを、水分散体(水分散体(1))として得た。
【0244】
<<マイクロカプセルの評価>>
<マイクロカプセルの形成性の評価>
ワイヤーバーを用いて、上記で得られた製造直後のマイクロカプセルの水分散体を上質紙上に塗工し、オーブンを用いて、105℃で2.5分乾燥させた。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製「JSM-6700F」)を用いて、上記で得られた乾燥物の撮像データを取得した。
別途、後述する比較例1で得られたマイクロカプセルの水分散体についても、同様に乾燥させ、得られた乾燥物の撮像データを取得した。
これら撮像データから、本実施例で得られた乾燥物中のマイクロカプセルを、真球性(真の球状に近い度合い)と、凹みの割合(凹みが認められるマイクロカプセルの数の割合)と、の観点で、比較例1で得られた乾燥物中のマイクロカプセルと比較し、下記基準に従って、マイクロカプセルが正常に形成されている度合い、すなわち、マイクロカプセルの形成性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:真球性と凹みの割合の両方で差が認められず、マイクロカプセルの形成性が良好である。
B:真球性と凹みの割合の、少なくとも一方で差が認められ、マイクロカプセルの形成性が不良である。
【0245】
<マイクロカプセルでの無機化合物の含有性の評価>
上記で取得した撮像データから、マイクロカプセルの表面におけるタルク(板状粒子)の有無を確認し、下記基準に従って、マイクロカプセルが無機化合物を含んで構成されている度合い、すなわち、マイクロカプセルでの無機化合物の含有性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:マイクロカプセルの表面に多数の板状粒子が付着しており、マイクロカプセルでの無機化合物の含有性が良好である。
B:マイクロカプセルの表面に板状粒子が付着していないか、又は少数の板状粒子が付着しているに過ぎず、マイクロカプセルでの無機化合物の含有性が不良である。
【0246】
<マイクロカプセルの耐熱性の評価>
上述のマイクロカプセルの形成性の評価時と同じ方法で、製造直後のマイクロカプセルの水分散体を乾燥させ、乾燥物のSEMによる撮像データを取得した。
別途、上記で得られたマイクロカプセルの水分散体を、50℃で加熱しながら、ミックスローターを用いて撹拌し続けた。そして、水分散体の一部を取り出し、上質紙上に塗工し、オーブンを用いて、105℃で2.5分乾燥させた。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製「JSM-6700F」)を用いて、上記で得られた乾燥物の撮像データを取得した。
上記で得られた、製造直後のマイクロカプセルの水分散体の乾燥物、すなわち、加熱撹拌を行っていない水分散体の乾燥物(以下、「初期乾燥物」と称することがある)の撮像データと、加熱撹拌後の水分散体の乾燥物(以下、「加熱撹拌後乾燥物」と称することがある)の撮像データと、を比較して、加熱撹拌後乾燥物中の、凹み又はそれ以外の形状異常(以下、これらを包括して、「形状異常」と称することがある)が認められるマイクロカプセルの数N(個)と、初期乾燥物中の、凹み又はそれ以外の形状異常が認められるマイクロカプセルの数N(個)から、下記式により、これらの形状異常が認められるマイクロカプセルの数の増加率R(%)を算出し、下記基準に従って、マイクロカプセルの耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
(%)=(N-N)/N×100
[評価基準]
A:凹み又はそれ以外の形状異常が認められるマイクロカプセルの数が、増加していないか、又は極めてわずかしか増加していない。
B:凹み又はそれ以外の形状異常が認められるマイクロカプセルの数が、Aの場合よりも増加しているが、増加率Rが30%未満である。
C:凹み又はそれ以外の形状異常が認められるマイクロカプセルの数が、Bの場合よりも増加しており、増加率Rが30%以上である。
【0247】
<マイクロカプセルの平均粒子径の測定>
上述のマイクロカプセルの耐熱性の評価時に取得した、前記初期乾燥物の撮像データから、マイクロカプセルの平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0248】
<<マイクロカプセルの製造及び評価>>
[実施例2]
タルクの配合量を0.8gに代えて1.25gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表1に示す。なお、表1には、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、の合計配合量100質量部当りの、無機化合物の配合量(換算配合量)を、「無機化合物の換算配合量(g)」の欄に示している。
【0249】
[実施例3]
タルクの配合量を0.8gに代えて2.5gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表1に示す。
【0250】
[実施例4]
タルクの配合量を0.8gに代えて0.4gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表1に示す。
【0251】
[参考例1]
タルクの配合量を0.8gに代えて5gとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表1に示す。
【0252】
[比較例1]
タルクを配合しなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表2に示す。
【0253】
[参考例2]
<<マイクロカプセルの製造>>
実施例1の場合と同じ方法で、濃度が4.7質量%であるゼラチン水溶液と、濃度が7.8質量%であるアラビアガム水溶液と、濃度が10質量%であるカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を調製した。
【0254】
上記で得られたゼラチン水溶液の全量(128g)を50℃で加熱したまま、ここへ常温のハッカ精油(Sin社製、油性成分に相当)(50g)を添加し、乳化機を用いて、撹拌速度3000rpmで、室温下で5分撹拌することにより、乳化液(1)を作製した。
上記で得られた50℃のアラビアガム水溶液の全量(128g)に、この50℃の乳化液(1)の全量(178g)を添加し、乳化機を用いて、撹拌速度350rpmで、室温下で撹拌した。
ここへ、さらに、上記で得られた、50℃に加熱したカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液の全量(2g)を添加し、室温下で2分撹拌することにより、混合液(r1)を作製した。
【0255】
次いで、50℃の条件下で、混合液(r1)を撹拌しながら、ここへ、室温下の、濃度が50質量%であるクエン酸(富士フィルム和光純薬社製)の水溶液を滴下し、撹拌して、混合液(r1)のpHを3.8に調節することにより、酸性の混合液(r2)を作製した。
次いで、冷却速度0.5℃/minで、得られた混合液(r2)を撹拌しながら、その温度が10℃以下となるまで冷却した。
次いで、混合液(r2)を、その温度を10℃以下に維持し、撹拌しながら、ここへ、タルク(日本タルク社製「ナノエースD600」、平均粒子径0.7μm、無機化合物に相当)(2.5g)を添加し、混合して、混合液(r3)を得た。
次いで、得られた混合液(r3)に、濃度が24質量%である水酸化ナトリウム(関東化学社製)の水溶液を滴下して、前記混合液(r3)のpHを6.0に調節し、混合液(r4)を得た。
得られた混合液(r4)の温度を10℃以下に維持しながら、ここへ、トランスグルタミナーゼ(味の素社製「アクティバTG-S」、架橋剤に相当)(5g)を添加し、添加後の溶液の温度を20℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を一晩撹拌した。さらに、この溶液の温度を30℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を4時間撹拌した。さらに、この溶液の温度を70℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を15分撹拌することで、余剰のトランスグルタミナーゼを失活させた。
以上により、ゼラチンと、アラビアガムと、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、トランスグルタミナーゼと、を含んで構成され、さらにタルクが配合され、芯物質としてハッカ精油を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。
【0256】
<<マイクロカプセルの評価>>
上記で得られたマイクロカプセルについて、実施例1の場合と同じ方法で評価を試みた。結果を表2に示す。
【0257】
[参考例3]
<<マイクロカプセルの製造>>
参考例1の場合と同じ方法で、混合液(r2)を冷却した。
次いで、混合液(r2)を、その温度を10℃以下に維持し、撹拌しながら、ここへ、濃度が24質量%である水酸化ナトリウム(関東化学社製)の水溶液を滴下して、混合液(r2)のpHを6.0に調節し、混合液(r5)を得た。
得られた混合液(r5)の温度を10℃以下に維持しながら、ここへ、トランスグルタミナーゼ(味の素社製「アクティバTG-S」、架橋剤に相当)(5g)を添加し、添加後の溶液の温度を20℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を一晩撹拌した。さらに、この溶液の温度を30℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を4時間撹拌した。さらに、この溶液の温度を70℃まで昇温し、この温度を維持しながら、この溶液を15分撹拌することで、余剰のトランスグルタミナーゼを失活させた。
次いで、この溶液に、タルク(日本タルク社製「ナノエースD600」、平均粒子径0.7μm、無機化合物に相当)(4.7g)を添加し、混合した。
以上により、ゼラチンと、アラビアガムと、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、トランスグルタミナーゼと、を含んで構成され、さらにタルクが配合され、芯物質としてハッカ精油を内包するマイクロカプセルを、水分散体として得た。
【0258】
<<マイクロカプセルの評価>>
上記で得られたマイクロカプセルについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0259】
[参考例4]
タルクの配合量を4.7gに代えて2.35gとした点以外は、参考例3の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表2に示す。
【0260】
【表1】
【0261】
【表2】
【0262】
上記結果から明らかなように、実施例1~4においては、マイクロカプセルの形成性が良好であり、複合コアセルベーション法によって、壁材が強固なマイクロカプセルが得られた。
また、実施例1~4においては、マイクロカプセルの平均粒子径が27.2μm以下(24.7~27.2μm)であり、十分に小さかった。
また、実施例1~4においては、マイクロカプセルを50℃で1週間加熱撹拌しても、形状異常が認められるマイクロカプセルの数の増加率Rが低く、これら実施例においては、マイクロカプセルの耐熱性が高かった。これら実施例においては、マイクロカプセルでの無機化合物の含有性が良好であり、マイクロカプセルの耐熱性が高いことと整合していた。特に、実施例1~2においては、マイクロカプセルを50℃で2週間以上加熱撹拌しても、増加率Rが抑制されており、マイクロカプセルの耐熱性が極めて高かった。
【0263】
実施例1~4においては、マイクロカプセルの製造の際に、壁材の形成時に無機化合物を配合していた。より具体的には、ゼラチンと、第1アニオン性高分子と、第2アニオン性高分子と、がすべて共存する状態となるよりも前の段階で、無機化合物をこれらの一部に配合していた。
実施例1~4においては、無機化合物の換算配合量が2.5~15.4質量部であり、なかでも実施例1~2においては、前記無機化合物の換算配合量が4.9~7.7質量部であった。
【0264】
これに対して、比較例1においては、マイクロカプセルの形成性が良好であり、複合コアセルベーション法によって、壁材が強固なマイクロカプセルが得られたが、マイクロカプセルの耐熱性が、実施例1~4よりも劣っていた。
比較例1においては、無機化合物が未配合であった。
【0265】
参考例1においては、マイクロカプセルの形成性が不良であり、マイクロカプセルを正常に形成できなかった。そこで、参考例1においては、マイクロカプセルの形成性以外の評価を行わなかった。
参考例1においては、前記無機化合物の換算配合量が30.9質量部であり、過剰であった。
【0266】
参考例2においては、マイクロカプセルの形成性が不良であり、さらに、マイクロカプセルの平均粒子径が大きかった。
参考例2においては、マイクロカプセルの製造の際に、壁材の形成後でかつ架橋前(架橋剤の配合前)に、無機化合物を配合しており、無機化合物が壁材の表層又はその近傍に偏在した結果、架橋が阻害されたと推測された。
参考例2においては、マイクロカプセルの耐熱性を評価しなかった。
【0267】
参考例3~4においては、マイクロカプセルを50℃で1週間加熱撹拌した段階で、形状異常が認められるマイクロカプセルの数の増加率Rが高く、これら参考例においては、マイクロカプセルの耐熱性が低かった。
参考例3~4においては、マイクロカプセルの製造の際に、架橋剤の失活後に、無機化合物を配合しており、無機化合物が壁材の表層側の外部に偏在した結果、無機化合物がその機能を発揮できなかったと推測された。
【産業上の利用可能性】
【0268】
本発明は、平均粒子径が小さいことが要求されるマイクロカプセルとして利用可能であり、特に、水の共存下で使用されるマイクロカプセルとして好適である。