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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143237
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/135 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A61B17/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050505
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 翔成
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD33
4C160DD35
4C160MM22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の使い方を実現し易い止血器具を提供する。
【解決手段】止血器具は、穿刺部位を覆うように構成される支持部材2と、穿刺部位を圧迫するように構成され、支持部材2に保持される押圧部材3と、支持部材2を穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材4を有し、ベルト部材4は、患者の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部4aと、第1ベルト部4aと異なる位置で、押圧部材3を挟んで対向する位置で支持部材2から延在する第2ベルト部4b、第3ベルト部4cを有し、支持部材2は、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3と、各領域間に位置する変形領域R4を有し、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3は、ベルト部材4よりも硬質な材料で形成され、変形領域R4は、押圧部材3側に第2領域R2、第3領域R3を変位させるように折り曲げ可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材と、
前記穿刺部位を圧迫するように構成され、前記支持部材に保持される押圧部材と、
前記支持部材を前記穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材と、を有し、
前記ベルト部材は、前記支持部材から延在して前記患者の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部と、前記第1ベルト部と異なる位置で前記支持部材から延在するように構成される第2ベルト部と、前記第2ベルト部と前記押圧部材を挟んで対向する位置で前記支持部材から延在するように構成される第3ベルト部と、を有し、
前記支持部材は、前記押圧部材が位置する第1領域と、前記第1領域と前記第2ベルト部との間に位置するように構成される第2領域と、前記第1領域と前記第3ベルト部との間に位置するように構成される第3領域と、前記第1領域と前記第2領域及び前記第3領域の夫々の間に位置する変形領域と、を有し、
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域は、前記ベルト部材よりも硬質な材料で形成され、前記変形領域は、前記押圧部材側に前記第2領域及び前記第3領域を変位させるように折り曲げ可能である、止血器具。
【請求項2】
前記第1ベルト部は、隣り合う前記変形領域の間に位置するように構成される、請求項1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記第1ベルト部は、隣り合う前記変形領域の間で、前記支持部材に対して着脱可能に構成され、
前記第1ベルト部は、前記支持部材に対する配置を前記第1領域から前記第2領域又は前記第3領域に向かう側に変更可能に構成される、請求項1又は2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記変形領域を一体に有するプレート部材を有し、
前記変形領域は、溝によって形成される、請求項1~3の何れか1項に記載の止血器具。
【請求項5】
前記支持部材は、隣り合う前記変形領域の間の幅が第1ベルト部側から基端側に向かって狭くなるように構成されており、
前記第1領域は、前記第1ベルト部の側の辺が、その対辺よりも長い、請求項1~4の何れか1項に記載の止血器具。
【請求項6】
前記支持部材は、前記第1ベルト部を着脱可能な着脱部を有し、
前記着脱部は、前記第1ベルト部を択一的に着脱可能な第1部分と第2部分を区別する標識を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の止血器具。
【請求項7】
前記第1ベルト部は、前記支持部材に着脱可能な着脱端部を有し、前記着脱端部において幅が拡大する、請求項1~6の何れか1項に記載の止血器具。
【請求項8】
前記第1領域の中央に前記押圧部材が位置する、請求項1~7の何れか1項に記載の止血器具。
【請求項9】
前記押圧部材はバルーンで構成され、
前記止血器具は、前記バルーンに気体を導入するように構成されるインフレーションポートを有し、
前記インフレーションポートは、隣り合う前記変形領域の間の間隔の中央に位置する、請求項1~8の何れか1項に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に形成される穿刺部位を止血するために用いられる止血器具が知られている(例えば特許文献1参照)。このような止血器具は、患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材と、穿刺部位を圧迫するように構成され、支持部材に保持される押圧部材と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-502220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の止血器具では、支持部材に対する押圧部材の位置関係が一定であるため、例えば、左手の穿刺部位を止血するための左手用止血器具と右手の穿刺部位を止血するための右手用止血器具の2種類を用意する必要があり、その結果、管理が煩雑になったり、使用時に取り違えるリスクがあったりする課題があった。このため、例えば左右両用などの、複数の使い方を実現し易い止血器具を提供できれば望ましい。
【0005】
そこで本開示は、複数の使い方を実現し易い止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様として、止血器具は、患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材と、前記穿刺部位を圧迫するように構成され、前記支持部材に保持される押圧部材と、前記支持部材を前記穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材と、を有し、前記ベルト部材は、前記支持部材から延在して前記患者の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部と、前記第1ベルト部と異なる位置で前記支持部材から延在するように構成される第2ベルト部と、前記第2ベルト部と前記押圧部材を挟んで対向する位置で前記支持部材から延在するように構成される第3ベルト部と、を有し、前記支持部材は、前記押圧部材が位置する第1領域と、前記第1領域と前記第2ベルト部との間に位置するように構成される第2領域と、前記第1領域と前記第3ベルト部との間に位置するように構成される第3領域と、前記第1領域と前記第2領域及び前記第3領域の夫々の間に位置する変形領域と、を有し、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域は、前記ベルト部材よりも硬質な材料で形成され、前記変形領域は、前記押圧部材側に前記第2領域及び前記第3領域を変位させるように折り曲げ可能である、止血器具である。
【0007】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記第1ベルト部は、隣り合う前記変形領域の間に位置するように構成される、止血器具である。
【0008】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記第1ベルト部は、隣り合う前記変形領域の間で、前記支持部材に対して着脱可能に構成され、前記第1ベルト部は、前記支持部材に対する配置を前記第1領域から前記第2領域又は前記第3領域に向かう側に変更可能に構成される、止血器具である。
【0009】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記支持部材は、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域及び前記変形領域を一体に有するプレート部材を有し、前記変形領域は、溝によって形成される、止血器具である。
【0010】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記支持部材は、隣り合う前記変形領域の間の幅が第1ベルト部側から基端側に向かって狭くなるように構成されており、前記第1領域は、前記第1ベルト部の側の辺が、その対辺よりも長い、止血器具である。
【0011】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記支持部材は、前記第1ベルト部を着脱可能な着脱部を有し、前記着脱部は、前記第1ベルト部を択一的に着脱可能な第1部分と第2部分を区別する標識を有する、止血器具である。
【0012】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記第1ベルト部は、前記支持部材に着脱可能な着脱端部を有し、前記着脱端部において幅が拡大する、止血器具である。
【0013】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記第1領域の中央に前記押圧部材が位置する、止血器具である。
【0014】
本開示の一実施形態として、止血器具は、前記押圧部材はバルーンで構成され、前記止血器具は、前記バルーンに気体を導入するように構成されるインフレーションポートを有し、前記インフレーションポートは、隣り合う前記変形領域の間の間隔の中央に位置する、止血器具である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、複数の使い方を実現し易い止血器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】参考例に係る止血器具を示す下面図である。
図2図1に示す止血器具の上面図である。
図3図1に示す止血器具を右手に装着した時の状態を示す外観図である。
図4図3とは別の角度から見た時の状態を示す外観図である。
図5図1に示す止血器具を左手に装着した時の状態を示す外観図である。
図6図5とは別の角度から見た時の状態を示す外観図である。
図7】一実施形態に係る止血器具を示す下面図である。
図8図7に示す止血器具の上面図である。
図9図8のA-A断面図である。
図10図9に示す状態から変形領域を折り曲げた時の状態を示す。
図11図7に示す止血器具を右手に装着する時の状態を示す外観図である。
図12図7に示す止血器具を左手に装着する時の状態を示す外観図である。
図13図7に示す止血器具の第1領域の形状を説明するための説明図である。
図14図7に示す止血器具の各部の寸法を説明するための説明図である。
図15図7に示す止血器具の変形例を示す下面図である。
図16図7に示す止血器具の変形例を示す下面図である。
図17図7に示す止血器具の変形例を示す下面図である。
図18図7に示す止血器具の変形例を示す下面図である。
図19図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
図20図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
図21図20に示す着脱部の変形例を示す上面図である。
図22図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
図23図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
図24図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
図25図7に示す止血器具の変形例を示す下面図である。
図26図7に示す止血器具の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に例示説明する。
【0018】
まず参考例に係る止血器具1について図1図6を参照して説明する。図1図2に示すように、参考例に係る止血器具1は、患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材2と、穿刺部位を圧迫するように構成され、支持部材2に保持される押圧部材3と、支持部材2を穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材4と、を有する。
【0019】
支持部材2は、可視光に対する透光性を有するプレート部材5と、プレート部材5の外周縁部に沿って全周に亘って設けられる縁部6と、を有する。プレート部材5は、縁部6とベルト部材4よりも硬い材質からなる。支持部材2の裏面2aには押圧部材3が保持される。押圧部材3はバルーン7で構成され、止血器具1はバルーン7に気体を導入するように構成されるインフレーションポート8を有する。バルーン7は、例えばシリンジ等の気体を送出する部材をインフレーションポート8に接続し、インフレーションポート8を介してバルーン7に気体を導入することにより、膨張し、穿刺部位を圧迫することができる。インフレーションポート8は、支持部材2(プレート部材5)の表面2bに一体に連なる。また、インフレーションポート8は、プレート部材5から表面側に突出する。支持部材2は患者の手の甲に裏面2aが対向するように配置される。
【0020】
ベルト部材4は、支持部材2の縁部6から延在して患者の手の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部4aと、第1ベルト部4aと異なる位置で支持部材2の縁部6から延在するように構成される第2ベルト部4bと、第2ベルト部4bと押圧部材3を挟んで対向する位置で支持部材2の縁部6から延在するように構成される第3ベルト部4cと、を有する。
【0021】
より具体的には、第1ベルト部4aは、右手の親指と人差し指との間に配置されるように構成され、第2ベルト部4bは、支持部材2から親指側に延びるように構成され、第3ベルト部4c材4は、支持部材2から小指側に延びるように構成される。第2ベルト部4bは、第3ベルト部4cよりも長い。第2ベルト部4bの裏面は、第3ベルト部4cの表面に設けられる面ファスナーのオス面(第3ベルトオス面9)に着脱可能なメス面で構成される。第1ベルト部4aの裏面は、第2ベルト部4bの表面に設けられる面ファスナーのオス面(第2ベルトオス面10)に着脱可能なメス面で構成される。
【0022】
押圧部材3は、プレート部材5の裏面上に親指側に寄せて配置され、遠位橈骨動脈への穿刺部位を圧迫可能に構成される。
【0023】
第2ベルト部4bを右手首に巻き回して第3ベルトオス面9に装着し、その後に第1ベルト部4aを親指と人差し指との間に通して巻き回し、第2ベルトオス面10に装着することにより、図3図4に示すように、遠位橈骨動脈への穿刺部位に支持部材2を固定することができる。そして、バルーン7を膨らませ、穿刺部位を圧迫して止血することができる。
【0024】
次に、この参考例の右手用の止血器具1を左手の遠位橈骨動脈への穿刺部位を止血するために用いる場合を考える。止血器具1を左手に装着した場合、図5図6に示すようになり、この場合、いくつかの問題点が明らかになる。1つ目の問題点は、押圧部材3を穿刺部位上に配置すると、支持部材2のプレート部材5が手首から親指側に飛び出し、手首と支持部材2との間に大きな隙間が形成されるため、止血器具1を手首に緩みなく固定することができないことである。2つ目の問題点は、第1ベルト部4aが親指と人差し指との間からずれた位置にくるため、親指と人差し指との間に配置することができないことである。そして3つ目の問題点として、第2ベルトオス面10が短いため、たとえ第1ベルトを親指と人差し指との間を通して巻き回したとしても、第2ベルト部4bに固定できないことがある。
【0025】
上記のような止血器具1を右手だけでなく左手でも使用し易くするためには、或いは手に限らず、例えば足に対して、右側にも左側にも使用し易くするためには、上記のような3つの問題点のうち少なくとも1つを解決できる手段を有する必要がある。そこで、本開示の一実施形態に係る止血器具1は、そのような解決手段を含む。
【0026】
図7図8に示すように、本開示の一実施形態に係る止血器具1は、患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材2と、穿刺部位を圧迫するように構成され、支持部材2に保持される押圧部材3と、支持部材2を穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材4と、を有する。
【0027】
ベルト部材4は、支持部材2から延在して患者の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部4aと、第1ベルト部4aと異なる位置で支持部材2から延在するように構成される第2ベルト部4bと、第2ベルト部4bと押圧部材3を挟んで対向する位置で支持部材2から延在するように構成される第3ベルト部4cと、を有する。
【0028】
支持部材2は、押圧部材3が位置する第1領域R1と、第1領域R1と第2ベルト部4bとの間に位置するように構成される第2領域R2と、第1領域R1と第3ベルト部4cとの間に位置するように構成される第3領域R3と、第1領域R1と第2領域R2及び第3領域R3の夫々の間に位置する変形領域R4と、を有する。
【0029】
第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3は、ベルト部材4よりも硬質な材料で形成され、変形領域R4は、図9図10に示すように、押圧部材3側に第2領域R2及び第3領域R3を変位(回動)させるように折り曲げ可能である。
【0030】
図9図10に示す実施形態では、支持部材2は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び変形領域R4を一体に有するプレート部材5を有し、変形領域R4は、溝11によって形成される。プレート部材5は、可視光に対する透光性を有する。押圧部材3は、プレート部材5の第1領域R1の裏面上に位置し保持される。押圧部材3は底面視で第1領域R1の中央に位置する。
【0031】
説明の便宜上、支持部材2の表面2bを上面ともいい、支持部材2の裏面2aを下面ともいう。また、上面視で第2ベルト部4bから第3ベルト部4cに向かう方向を右側ともいい、その反対側を左側ともいい、支持部材2から第1ベルト部4aに向かう方向を前側ともいう。
【0032】
押圧部材3はバルーン7で構成され、止血器具1は、バルーン7に気体を導入するように構成されるインフレーションポート8を有し、インフレーションポート8は、隣り合う変形領域R4の間の左右方向の間隔の中央に位置する。バルーン7は、例えばシリンジ等の気体を送出する部材をインフレーションポート8に接続し、インフレーションポート8を介してバルーン7に気体を導入することにより、膨張し、穿刺部位を圧迫することができる。インフレーションポート8は、支持部材2(プレート部材5)の第1領域R1の表面2bに一体に連なる。また、インフレーションポート8は、支持部材2(プレート部材5)の第1領域R1から表面2b側に突出する。
【0033】
図8に示すように、第1ベルト部4aは、隣り合う変形領域の(延長線の)間に位置するように構成される。そのため、第1ベルト部4aは、図8の平面視で、押圧部材3から遠ざかる方向に第1領域R1から延在している。また、第1ベルト部4aは、隣り合う変形領域R4の間で支持部材2に対して着脱可能(図7図8中の2点鎖線参照)に構成されており、支持部材2に対する配置を第1領域R1から第2領域R2又は第3領域R3に向かう側に(つまり左右方向に)変更可能に構成される。より具体的には、支持部材2は、第1ベルト部4aを着脱可能な着脱部12を有し、第1ベルト部4aは、着脱部12への装着位置を変更することにより、支持部材2に対する配置を第1領域R1から第2領域R2又は第3領域R3に向かう側に変更可能である。着脱部12は面ファスナーのオス面で構成される。第1ベルト部4aは、支持部材2の着脱部12に着脱可能な着脱端部13を有する。
【0034】
第2ベルト部4bは、第3ベルト部4cよりも左右方向に長い。また第2ベルト部4bの裏面は、第3ベルト部4cの表面に設けられる面ファスナーのオス面(第3ベルトオス面9)に着脱可能なメス面で構成される。第1ベルト部4aの裏面は、第2ベルト部4bの表面に設けられる面ファスナーのオス面(第2ベルトオス面10)に着脱可能なメス面で構成される。第2ベルトオス面10は、第2ベルト部4bのほぼ全長に亘って設けられる。
【0035】
止血器具1は、本実施形態では右手及び左手の甲に形成される遠位橈骨動脈への穿刺部位の止血用に構成される。図11に示すように、止血器具1を右手に対して用いる場合、第1ベルト部4aの着脱端部13を着脱部12に対して上面視で右側に寄せて装着することにより、止血器具1は、押圧部材3を穿刺部位上に配置した状態で、第1ベルト部4aを親指と人差し指との間に適切に配置でき、穿刺部位に対して押圧部材3を位置ずれしないように固定できる。そのため、止血器具1は、押圧部材3で右手に位置する穿刺部位を好適に圧迫することができる。なおこの時、支持部材2は患者の手の甲に裏面2aが対向するように配置される。第2ベルト部4bを手首に巻く際に、上面視で左側の変形領域R4が手首に沿って折れ曲がることができるので、手首にフィットするように第2ベルト部4bを巻き回して第3ベルトに固定することができる。また、止血器具1は、第1ベルト部4aが隣り合う変形領域R4の間に位置するように構成されるため、変形領域R4の折れ曲がりによる変形が第1ベルト部4aに伝達することを防止できる。
【0036】
一方、図12に示すように、止血器具1を左手に対して用いる場合、第1ベルト部4aの着脱端部13を着脱部12に対して上面視で左側に寄せて装着することにより、止血器具1は、押圧部材3を穿刺部位上に配置した状態で、第1ベルト部4aを親指と人差し指との間に適切に配置でき、穿刺部位に対して押圧部材3を位置ずれしないように固定できる。そのため、止血器具1は、押圧部材3で左手に位置する穿刺部位を好適に圧迫することができる。なおこの時も、支持部材2は患者の手の甲に裏面2aが対向するように配置される。第3ベルト部4cを手首に巻く際に、上面視で右側の変形領域R4が手首に沿って折れ曲がることで、手首にフィットするように第3ベルト部4cを巻き回して第2ベルトに固定することができる。また、止血器具1は、第1ベルト部4aが隣り合う変形領域R4の間に位置するように構成されるため、変形領域R4の折れ曲がりによる変形が第1ベルト部4aに伝達することを防止できる。さらに、第2ベルトオス面10が第2ベルトのほぼ全長に亘って長く設けられることにより、手に巻き回した第1ベルト部4aを第2ベルトオス面10に固定することができる。したがって、本実施形態の止血器具1によれば、右手の穿刺部位も左手の穿刺部位も良好に止血することができる。
【0037】
なお、本実施形態の構成は、手に限らず、足などに対する左右両用の止血器具1にも応用することができる。
【0038】
図13に示すように、本実施形態では、隣り合う変形領域R4の間の幅が第1ベルト部4a側から基端側に向かって狭くなるように構成される。そのため、第1領域R1は、第1ベルト部4aの側の辺の長さL1が、その対辺の長さL2よりも長い。図13の実施形態では、第1ベルト部4aの側の辺の長さL1が、その対辺の長さL2よりも長く構成される台形形状である。したがって、上述したように右手及び左手の手首に装着する際に、親指の付け根側から手首側にかけての手の甲の形状によりフィットするように変形領域R4を折り曲げることができる。したがって、手首に対するベルト部材4の緩みを抑制することができる。例えば、第1ベルト部4aの側の辺の長さL1を押圧部材3の左右方向の幅W1(図14参照)の2.0倍程度とし、その対辺の長さL2を押圧部材3の左右方向の幅W1の1.5倍程度とすることができる。
【0039】
図14に示すように、着脱部12(オス面)の左右方向の幅W2は、押圧部材3の左右方向の幅W1よりも大きいことが好ましい。これにより、術者が右手又は左手に位置する穿刺部位に対して止血器具1を装着する際、左右方向に第1ベルト部4aの配置位置を適切に調整することができる。例えば、着脱部12(オス面)の左右方向の幅W2は、押圧部材3の左右方向の幅W1の1.5倍から2.0倍(例えば4.5~6.0cm)であることがより好ましい。また、着脱部12での第1ベルト部4aの固定を安定させる観点から、着脱部12の左右方向の幅W2は、第1領域R1における第1ベルト部4aの側の辺の長さL1以下であることが好ましい。
【0040】
第1ベルト部4aの幅W3は、第1領域R1における第1ベルト部4aの側の辺の長さL1の半分(1/2)以上であることが好ましい。このような構成によれば、第1ベルト部4aを固定した際に、押圧部材3の中心線上に第1ベルト部4aの少なくとも一部を位置させることができる。これにより、止血器具1を装着した際、第1ベルト部4aの巻き付ける力が第1領域R1を介して押圧部材3に適切に伝達されるため、穿刺部位に押圧部材3を適切に固定できる。その結果、穿刺部位に対する押圧部材3の位置ずれを抑制することができる。
【0041】
第1ベルト部4aは、着脱端部13において幅W3が拡大することが好ましい。このような構成によれば、着脱端部13と着脱部12との固着強度を高め、使用時に外れにくくすることができる。
【0042】
インフレーションポート8は、隣り合う変形領域R4の間の間隔の中央に位置する(つまり、インフレーションポート8から右側の変形領域R4までの左右方向の距離と、インフレーションポート8から左側の変形領域R4までの左右方向の距離とが等しい)ことが好ましい。このような構成によれば、変形領域R4の折り曲げ変形に対するインフレーションポート8による影響を抑制し、容易な折り曲げ変形を実現し易くすることができる。
【0043】
押圧部材3(バルーン7)は底面視で第1領域R1の中央に位置することが好ましい。このような構成によれば、上述のように右手及び左手に使用した際に止血効果を右手と左手とで同等にし易くすることができる。
【0044】
止血器具1を上述のように右手及び左手に使用する場合、第2ベルトオス面10の長さは、例えば12~18cmとすることが好ましい。また、第2ベルト部4bの長さは、一般人の手首の太さで、手首の外周長の2/3以上であることが好ましい。このような構成によれば、上述のように左手に使用した場合でも第2ベルト部4bの長さが十分であり、止血器具1を左手に装着可能とすることができる。
【0045】
変形領域R4を形成する溝11は、連続した溝11であることが好ましい。しかし、図15に示すように、変形領域R4を断続した溝11で構成してもよい。このような構成によれば、溝11(変形領域R4)の視認性を向上することができる。なお、溝11は、図9図10に示すように表面2b側と裏面2a側の両方に設けてもよいし、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0046】
変形領域R4を溝11で構成することによれば、簡単な構成によって変形領域R4を意図した位置で容易に折り曲げることを可能にできる。また、プレート部材5を曲げた際に材質により多少白く濁ったとしても、溝11により白く濁る範囲を小さくし、視認性を維持する効果を得ることができる。
【0047】
図16に示すように、変形領域R4は、溝11に限らず、別体に形成した第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3を連結するヒンジ部材14で構成してもよい。このような構成によっても、変形領域R4を折り曲げ易くすることができる。
【0048】
図17に示すように、変形領域R4は、第1領域R1と第2領域R2及び第3領域R3の夫々とを連ねる柔軟な部材15(例えば、布や、塩化ビニルなどの樹脂材など)で構成してもよい。このような構成によっても、変形領域R4を折り曲げ易くすることができる。
【0049】
図18に示すように、変形領域R4の夫々は、完全に切り離された切れ部16と、切れ部16の前後方向の両側に設けられる溝部17とで構成してもよい。切れ部16の形状は曲線状や折れ線状などとすることができるので、このような構成によれば、大きい押圧部材3を用いる場合に切れ部16の縁ぎりぎりまで押圧部材3を配置できるなどの効果を得ることができる。
【0050】
図18等に示すように、支持部材2は、プレート部材5の外周縁部に沿って全周に亘って設けられる縁部6を有することが好ましい。このような構成によれば、縁部6を柔軟な部材15で構成することで、支持部材2の外周縁部が手に食い込みにくくすることができ、その結果、痛みを抑制することができる。また、縁部6を有することで、プレート部材5の一体性を維持し易くすることができる。なお、縁部6はプレート部材5と同等又はプレート部材5よりも高い剛性を有する構成としてもよい。縁部6を有する構成とする場合、変形領域R4を、曲げることで破断可能な溝11で構成してもよい。
【0051】
図19に示すように、支持部材2は、縁部6を有さず、プレート部材5を直接ベルト部材4に連ねる構成としてもよい。
【0052】
図20に示すように、着脱部12は、第1ベルト部4aを択一的に着脱可能な第1部分12aと第2部分12bを区別する標識18を有する。標識18は、例えば、図20に示すような切り込みで構成できる。切り込みの大きさは適宜設定できる。また、切り込みの形状は図示するようなV字に限らず、U字状であってもよい。また、切り込みに代えて、図21に示すような線状の印刷や、線状融着跡や、文字などで構成してもよい。標識18によれば、貼り付け位置の区分けを使用者に認識させ易くすることができる。
【0053】
図22に示すように、面ファスナーに代えてホックを用いてもよい。すなわち、着脱部12をホックの穴19aで構成し、着脱端部13をホックの爪19bで構成してもよい。逆に、着脱部12をホックの爪19bで構成し、着脱端部13をホックの穴19aで構成してもよい。
【0054】
図23に示すように、面ファスナーに代えてボタン20aを用いてもよい。すなわち、着脱部12をボタン20aで構成し、着脱端部13をスリット20bで構成してもよい。逆に、着脱部12をスリット20bで構成し、着脱端部13をボタン20aで構成してもよい。
【0055】
図24に示すように、第1ベルト部4aは、2本のベルト部材4から構成されていてもよい。図24の変形例では、第1ベルト部4aは、第2領域R2側に位置する第1の第1ベルト部4aと、第3領域R3側に位置する第2の第1ベルト部4aと、を有する。この場合、第1ベルト部4aは2本とも支持部材2に一体に(着脱不能に)設けてもよい。このような構成によれば、術者が右手又は左手の穿刺部位に対して止血器具1を装着する際、術者が第1ベルト部4aの着脱端部13を着脱部12に装着する手間を軽減できる。また、第1ベルト部4aの紛失を抑制することができる。
【0056】
図25に示すように、止血器具1が、インフレーションポート8に代えて、一端がバルーン7に連なるインフレーションチューブ21と、インフレーションチューブ21の他端に連なるインフレーションバルーン22と、を有する構成としてもよい。このような構成によれば、変形領域R4の折り曲げ変形への影響を抑制し、容易な折り曲げ変形をし易くすることができる。なおこの場合、バルーン7は、インフレーションバルーン22に設けられる図示しないコネクタにシリンジ等の気体送出器具を接続し、気体をインフレーションチューブ21を通してバルーン7に送ることによって膨張し、穿刺部位を圧迫することができる。インフレーションバルーン22は、バルーン7において損傷等による気体の漏出が起きた場合にインフレーションバルーン22が縮むことによって異常を知らせることができる。
【0057】
図26に示すように、第2ベルト部4bを支持部材2に対して着脱可能に構成してもよい。また、第3ベルト部4cを支持部材2に対して着脱可能に構成してもよい。このような構成によれば、術者は患者に合わせて第2ベルト部4bと第3ベルト部4cの長さを簡単に調整することができる。なお、着脱機構としては、前述したような面ファスナーや、ホック、ボタン20aなどを利用することができる。
【0058】
本開示は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
したがって、前述した実施形態に係る止血器具1は、患者に形成される穿刺部位を覆うように構成される支持部材2と、穿刺部位を圧迫するように構成され、支持部材2に保持される押圧部材3と、支持部材2を穿刺部位に固定するように構成されるベルト部材4と、を有し、ベルト部材4は、支持部材2から延在して患者の指同士の間に配置されるように構成される第1ベルト部4aと、第1ベルト部4aと異なる位置で支持部材2から延在するように構成される第2ベルト部4bと、第2ベルト部4bと押圧部材3を挟んで対向する位置で支持部材2から延在するように構成される第3ベルト部4cと、を有し、支持部材2は、押圧部材3が位置する第1領域R1と、第1領域R1と第2ベルト部4bとの間に位置するように構成される第2領域R2と、第1領域R1と第3ベルト部4cとの間に位置するように構成される第3領域R3と、第1領域R1と第2領域R2及び第3領域R3の夫々の間に位置する変形領域R4と、を有し、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3は、ベルト部材4よりも硬質な材料で形成され、変形領域R4は、押圧部材3側に第2領域R2及び第3領域R3を変位させるように折り曲げ可能である、止血器具1である限り、種々変更可能である。
【0060】
例えば、第1ベルト部4aは、支持部材2に対して着脱可能な構成に限らず、例えば、支持部材2に対してスライド可能に構成してもよい。第1領域R1は、上面視で四角形状をなす構成に限らない。第2領域R2及び第3領域R3の形状も適宜設定できる。押圧部材3はバルーン7以外の部材で構成してもよい。
【0061】
なお、前述した実施形態に係る止血器具1は、第1ベルト部4aは、隣り合う変形領域R4の間に位置するように構成される、止血器具1であることが好ましい。
【0062】
前述した実施形態に係る止血器具1は、第1ベルト部4aは、隣り合う変形領域R4の間で、支持部材2に対して着脱可能に構成され、第1ベルト部4aは、支持部材2に対する配置を第1領域R1から第2領域R2又は第3領域R3に向かう側に変更可能に構成される、止血器具1であることが好ましい。
【0063】
前述した実施形態に係る止血器具1は、支持部材2は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び変形領域R4を一体に有するプレート部材5を有し、変形領域R4は、溝11によって形成される、止血器具1であることが好ましい。
【0064】
前述した実施形態に係る止血器具1は、支持部材2は、隣り合う変形領域R4の間の幅が第1ベルト部4a側から基端側に向かって狭くなるように構成されており、第1領域R1は、第1ベルト部4aの側の辺が、その対辺よりも長い、止血器具1であることが好ましい。
【0065】
前述した実施形態に係る止血器具1は、支持部材2は、第1ベルト部4aを着脱可能な着脱部12を有し、着脱部12は、第1ベルト部4aを択一的に着脱可能な第1部分12aと第2部分12bを区別する標識18を有する、止血器具1であることが好ましい。
【0066】
前述した実施形態に係る止血器具1は、第1ベルト部4aは、支持部材2に着脱可能な着脱端部13を有し、着脱端部13において幅が拡大する、止血器具1であることが好ましい。
【0067】
前述した実施形態に係る止血器具1は、第1領域R1の中央に押圧部材3が位置する、止血器具1であることが好ましい。
【0068】
前述した実施形態に係る止血器具1は、押圧部材3はバルーン7で構成され、止血器具1は、バルーン7に気体を導入するように構成されるインフレーションポート8を有し、インフレーションポート8は、隣り合う変形領域R4の間の間隔の中央に位置する、止血器具1であることが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 止血器具
2 支持部材
2a 裏面
2b 表面
3 押圧部材
4 ベルト部材
4a 第1ベルト部
4b 第2ベルト部
4c 第3ベルト部
5 プレート部材
6 縁部
7 バルーン
8 インフレーションポート
9 第3ベルトオス面
10 第2ベルトオス面
11 溝
12 着脱部
12a 第1部分
12b 第2部分
13 着脱端部
14 ヒンジ部材
15 柔軟な部材
16 切れ部
17 溝部
18 標識
19a ホックの穴
19b ホックの爪
20a ボタン
20b スリット
21 インフレーションチューブ
22 インフレーションバルーン
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
R4 変形領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図26