(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143243
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】不織布製造用支持体
(51)【国際特許分類】
D04H 1/495 20120101AFI20230928BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230928BHJP
D03D 3/04 20060101ALI20230928BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20230928BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
D04H1/495
D03D1/00 Z
D03D3/04
D03D15/37
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050512
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(72)【発明者】
【氏名】荒薦 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】竹下 椋
【テーマコード(参考)】
4L047
4L048
【Fターム(参考)】
4L047AA12
4L047AA14
4L047AA28
4L047BA04
4L047BB01
4L047BB09
4L047CA09
4L048AA34
4L048AA37
4L048AB10
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA00
4L048DA24
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】不織布の横方向(CD方向)に延びる少なくとも二種類の模様の異なる帯状部が、不織布の縦方向(MD方向)に繰り返し規則的に配置された横縞模様を有する不織布を製造することが可能な、不織布製造用支持体を提供する。
【解決手段】不織布の製造中に繊維ウェブを載置する、経糸と緯糸を織成してなる不織布製造用支持体であって、少なくとも二種類の織組織Aおよび織組織Bを含み、前記織組織Aおよび前記織組織Bは、前記緯糸が延びる方向に沿って延びる帯状部であり、前記経糸が延びる方向に沿って前記織組織Aおよび前記織組織Bが規則的に繰り返し形成されている、不織布製造用支持体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の製造中に繊維ウェブを載置する、経糸と緯糸を織成してなる不織布製造用支持体であって、
少なくとも二種類の織組織Aおよび織組織Bを含み、
前記織組織Aおよび前記織組織Bは、前記緯糸が延びる方向に沿って延びる帯状部であり、
前記経糸が延びる方向に沿って前記織組織Aおよび前記織組織Bが規則的に繰り返し形成されている、
不織布製造用支持体。
【請求項2】
前記織組織Aを構成する緯糸aと、前記織組織Bを構成する緯糸bの直径が異なっていて、前記織組織Aと前記織組織Bとの境界にて、前記緯糸aと前記緯糸bとが隣り合っている、請求項1に記載の不織布製造用支持体。
【請求項3】
前記織組織Aの表面が、前記織組織Bの表面よりも、0.1mm以上3.0mm以下高い位置にある、請求項1または2に記載の不織布製造用支持体。
【請求項4】
前記経糸、前記緯糸a、および前記緯糸bがそれぞれ、直径0.3mm以上1.2mm以下のモノフィラメント、または断面が扁平形状を有し、当該断面に外接する矩形が0.2mm以上0.8mm以下の短辺および0.3mm以上1.2mm以下の長辺を有し、長辺/短辺比が1.2以上である、モノフィラメントである、請求項1から3のいずれかに記載の不織布製造用支持体。
【請求項5】
前記織組織Aが、緯糸の浮き数が2以上であり、経糸の浮き数が1である、ヨコ綾織組織であり、前記織組織Bが平織組織である、請求項1から4のいずれかに記載の不織布製造用支持体。
【請求項6】
前記緯糸aが前記緯糸bよりも太い、請求項1から5のいずれかに記載の不織布製造用支持体。
【請求項7】
前記織組織Aおよび前記織組織Bの境界にて、前記緯糸aおよび前記緯糸bを含む、連続する2以上の緯糸の上で、前記経糸が浮いているナックルN1が形成されている、請求項1から6のいずれかに記載の不織布製造用支持体。
【請求項8】
前記織組織Aから見て、前記ナックルN1が形成されている側とは反対の側の前記織組織Bとの境界にて、経糸が、前記緯糸aおよび前記緯糸bを含む連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN2が形成されており、前記ナックルN2のいずれか一方の側に隣り合って、経糸が連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN3が形成されている、請求項1から7のいずれかに記載の不織布製造用支持体。
【請求項9】
前記織組織Aが、緯糸の浮き数が2以上16以下、経糸の浮き数が2以上16以下である綾織組織であり、前記織組織Bが平織組織であり、前記緯糸aの直径が前記緯糸bの直径よりも大きい、請求項1から8のいずれか1項に記載の不織布製造用支持体。
【請求項10】
高圧流体流により繊維同士を交絡させる際に用いる、請求項1から9のいずれか1項に記載の不織布製造用支持体。
【請求項11】
スパンボンド法により不織布を製造する際に用いる、請求項1から9のいずれか1項に記載の不織布製造用支持体。
【請求項12】
繊維ウェブを作製すること、
前記繊維ウェブを請求項1から10のいずれか1項に記載の不織布製造用支持体に載置した状態で、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を結合および/または交絡させる処理に付すること
を含む、不織布の製造方法。
【請求項13】
合成樹脂を溶融紡糸して得たフィラメントを、前記合成樹脂が溶融または軟化している間に、請求項1から9または請求項11のいずれか1項に記載の不織布製造用支持体に堆積させることを含む、不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布製造の際に繊維ウェブを載置し、繊維同士を一体化させる間に当該繊維ウェブに模様を付することを可能にする不織布製造用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布を製造する際に、繊維ウェブを載置する不織布製造用支持体(以下、単に「支持体」と呼ぶことがある)を適宜選択することにより、支持体の構成に対応した模様を有する不織布を得る方法は既に提案されている。例えば、繊維ウェブに高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させて不織布を製造する場合に、模様を不織布に形成することが可能な支持体に繊維ウェブを載置し、当該繊維ウェブの一部を再配列させて、ストライプ模様を形成することも提案されている(特許文献1)。また、抄造物に凹凸マークを付与する工業用織物として、所定の3種類の模様領域群を有する工業用織物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-287158号公報
【特許文献2】特許第4188209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、不織布の横方向(CD方向)に延びる少なくとも二種類の模様の異なる帯状部が、不織布の縦方向(MD方向)に繰り返し規則的に配置された横縞模様を有する不織布を製造することが可能な、不織布製造用支持体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、不織布の製造中に繊維ウェブを載置する、経糸と緯糸を織成してなる不織布製造用支持体であって、
少なくとも二種類の織組織Aおよび織組織Bを含み、
前記織組織Aおよび前記織組織Bは、前記緯糸が延びる方向に沿って延びる帯状部であり、
前記経糸が延びる方向に沿って前記織組織Aおよび前記織組織Bが規則的に繰り返し形成されている、
不織布製造用支持体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の支持体は、織組織Aに由来する模様が形成された領域と、織組織Bに由来する模様が形成された領域とが、不織布の縦方向に交互ないしは規則的に配置された、新規な意匠性を有する不織布の製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図1の支持体を用いて製造した不織布の一例に相当する実施例1で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図4】
図2の支持体を用いて製造した不織布の一例に相当する実施例2で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図6】
図5の支持体を用いて製造した不織布の一例に相当する実施例3で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図7】実施例4で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図8】実施例5で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図9】実施例6で製造した不織布の表面を示す写真である。
【
図10】本実施形態の支持体の一例において、織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差を求める方法を示す側断面写真である。
【
図11】本実施形態の支持体の一例において、織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差を求める方法を示す側断面写真である。
【
図12】本実施形態の支持体の一例において、織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差を求める方法を示す側断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記特許文献1で開示された不織布においては、縞状模様を構成する列ないしは模様部が、不織布のMD方向(縦方向)に延び、CD方向(横方向)に沿って二以上の異なる模様の領域が規則的に配置されている(以下、このような縞状模様を便宜的に「縦ストライプ」と呼ぶ)。特許文献1では、例えば杉綾織りのネットに繊維ウェブを載置し、水流の噴射条件をCD方向において規則的に変化させることで、当該支持体に対応した模様を有する列を形成して、縦ストライプを得ている。具体的には、水流を噴射するノズルにおいて一部のオリフィスを規則的に塞いで、水流交絡処理を実施することにより、支持体に対応する模様を有する列を、間隔をあけて形成する方法が開示されている。
【0009】
特許文献2は、特定の二種類の模様領域と、平織組織からなる模様領域とを有する工業用織物を用いて、特定の二種類の模様領域が、平織組織に対応して形成される部分から見てそれぞれ凹部および凸部を抄造物に形成することを提案している。すなわち、特許文献2では、抄造物において、比較的広い範囲で凹部および凸部が形成されて、例えば凹部または凸部が文字として現われることを可能にする工業用織物が提案されている。
【0010】
本発明者は、従来の不織布では得られなかったストライプ模様を得るために、高圧流体交絡法またはスパンボンド法等で不織布を製造する際に繊維ウェブを載置する支持体の構成に着目し、当該支持体をストライプ模様の形成に適した構成とすることを検討した。その結果、支持体を少なくとも二つの異なる織組織を含むものとし、かつ当該二つの異なる織組織が支持体の経糸が延びる方向(一般には不織布製造中に支持体が進行する方向)に沿って交互に配置されるように構成した支持体を案出するに至った。かかる支持体によれば、新規な意匠性を有する不織布を、通常の高圧流体流交絡処理条件やスパンボンド条件を採用しても製造することができる。以下、本実施形態の不織布製造用支持体の構成を説明する。
【0011】
本実施形態の支持体は、経糸と緯糸を織成してなる支持体であり、少なくとも二種類の織組織Aおよび織組織Bを含み、織組織Aおよび織組織Bが、緯糸が延びる方向(一般には不織布製造中に支持体が進行する方向と直交する方向、以下「CD方向」とも呼ぶ)に沿って延びる帯状部であり、経糸が延びる方向(一般には、不織布製造中に支持体が進行する方向、以下「MD方向」とも呼ぶ)に沿って、織組織Aおよび織組織Bが規則的に繰り返し形成されているものである。織組織Aおよび織組織Bは、支持体のCD方向の幅全体にわたって延びているか、製造される不織布のCD方向の幅全体にわたって延びている。この支持体の上に繊維ウェブを載置し、繊維同士を一体化させる処理に付することで、またはこの支持体の上に溶融または軟化した状態にある繊維を堆積させることで、各織組織によって決定される模様(無模様を含む)を有する領域が形成される。
【0012】
支持体においては、例えば、織組織Aと織組織Bとが、経糸の延びる方向(MD方向)に沿ってA-B-A-B・・・の順に配置されている。よって、この支持体の織組織AおよびBによって不織布に形成される領域をそれぞれ第1領域および第2領域とすると、不織布においては、MD方向に沿って第1-第2領域-第1領域-第2領域・・・の順に二つの領域が形成され、MD方向と直交するCD方向に沿って第1領域および第2領域が延びる横縞模様(すなわち、横ストライプ)が形成される。更に、織組織Cを加えMD方向に沿ってA-B-C-A-B-C・・・の順に配置することも可能である。織組織としては、平織、綾織、朱子織、杉綾織などが挙げられ、例えば、織組織Aを2/2綾織とし、織組織Bを平織とし、織組織Cを3/1綾織としてよい。3以上の織組織を組み込んだ支持体によれば、得られる不織布において、表面性が異なる多数の領域で横縞模様を形成できる。また、例示した織組織は、不規則な組織、例えば崩し綾のような織組織であってよい。不規則な組織とすることにより、経糸が緯糸の上を通過して浮いている部分が分散され、この浮いた経糸に起因して形成される開口部または凹部が分散されることとなり、独特の意匠を不織布に付与し得る。また、不規則な織組織を有する支持体は、これを用いた不織布製造において、支持体の寸法安定性、支持体の走行時の蛇行(片寄)の防止、およびシワの発生の防止を向上させ得る傾向にある。
【0013】
本実施形態の支持体においては、織組織Aを構成する緯糸aと、織組織Bを構成する緯糸bの直径が異なっていて、織組織Aと織組織Bとの境界にて、緯糸aと緯糸bとが隣り合っていてよい。また、本実施形態の支持体においては、織組織Aの表面が、織組織Bの表面よりも、例えば0.1mm以上3.0mm以下高い位置、特に0.5mm以上2.5mm以下高い位置、より特には0.8mm以上2.0mm以下高い位置にあってよい。これらの構成のいずれか又は両方の構成を有する支持体によって、不織布において、第1領域と第2領域の境界に幅の狭い第3領域を形成し得ることがある。
【0014】
織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差は、支持体をMD方向の側面または側断面を観察し、織組織Aの最も高い位置(通常は、織組織Aおよび織組織B間の境界において経糸が浮いている箇所)と、織組織Bの最も高い位置)との差とする。側断面を観察するために支持体を切断する場合、切断箇所によっては、側断面には織組織の最も高い位置が表れにくいことがある。この場合、撮影された側断面よりも奥側で最も高い位置となっている箇所を求めるか、支持体を異なる数か所で切断して異なる切断面を観察して、各組織の最も高い位置間の距離を求める。但し、側断面の奥側に組織の表面が斜視的に撮影されているときは、奥側に位置する経糸および緯糸は表面の高さを求めるにあたり無視するものとする。支持体の織組織によっては、緯糸が最も高い位置となることもあり、経糸が最も高い位置となることもある。
【0015】
支持体の側断面から織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差を求める方法を
図10~
図12に示す。
図10は後述する
図1に示す織組織の支持体に相当する。
図10においては、織組織Bの表面にて最も高い位置を通過し、支持体を載置した台の表面と平行な線LB、および織組織Aの表面にて最も高い位置(符号a1で示す緯糸の表面の最も高い位置)を通過し、支持体を載置した台の表面と平行な線LAが引かれている。LA-LB間の距離(支持体を載置した台の表面に垂直な方向における間隔)が織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差に相当する。
【0016】
図11は後述する
図2に示す織組織の支持体に相当し、
図12は後述する
図5に示す織組織の支持体に相当する。
図10と同様、これらの図において、LBは織組織Bの表面の最も高い位置を通過し、支持体を載置した台の表面と平行な線であり、LAは織組織Aの表面の最も高い位置(最も高い位置にある経糸の表面)を通過し、支持体合を載置した台の表面と平行な線である。
図11においては、側断面の奥側に織組織Bの表面が斜視的に表れているが、これはLBを求めるにあたり無視している。
【0017】
上記構成の支持体においては、二つの組織の境界において、段差が形成されており、ならびに/または他の部分よりも広い緯糸間の隙間が形成される傾向にある。この段差または隙間部分にて、繊維ウェブが、織組織AおよびB上の繊維ウェブとは異なる条件で水流の作用受け、および/または水流交絡処理中の吸気(サクション)の影響を受ける。その結果、第1および第2領域のいずれとも模様の異なる第3領域が、幅狭の領域として形成されることがある。
【0018】
また、織組織Aと織組織Bの境界においては、緯糸の直径が変化すること、および織組織が変化すること等の理由により、経糸の浮きの状態が、織組織Aおよび織組織Bにおける経糸の浮き部とは異なる部分(「ナックル」と呼ぶ)が形成され、このナックルにより得られる不織布の第3領域に開口部を形成すると考えられる。また、境界においては、緯糸が例えば蛇行するなどして、他の部分と異なる状態となることがあり、このことも第3領域が形成される要因となり、ならびに/または第3領域における模様を決定すると考えられる。
【0019】
本実施形態の支持体は、織組織Aとしての綾織部と織組織Bとしての平織部がMD方向に沿って交互に形成されたものであってよい。そのような支持体においては、緯糸aの直径が、緯糸bの直径よりも大きくてよい。以下、そのような支持体の例を、織組織を示しながら説明する。
【0020】
織組織Aである綾織部は、例えば、緯糸の浮き数が2以上であり、経糸の浮き数が1である、ヨコ綾織組織であってよい。
図1は、1/7のヨコ綾織部である織組織Aと、平織部である織組織Bとが形成された支持体の組織図であり、
図2は、1/3のヨコ崩し綾織部である織組織Aと、平織部である織組織Bとが形成された支持体の組織図である。組織図において、着色した部分は緯糸の上に浮いている経糸である。なお、
図1および
図2、ならびに後述する
図5は、織組織Aおよび織組織Bの繰り返しを模式的に示し、図面に示された各組織を構成する経糸および緯糸の数等は例示的なものである。また、これらの図面に示された支持体で製造される不織布の例を
図3、
図4および
図6に示しているが、これらの不織布の製造で実際に使用した支持体において各領域の経糸および緯糸の数等は、図示したものとは異なることがある。
【0021】
図1の支持体において、二つの組織の境界においては、経糸の浮き部分によりナックルaが形成されている。
図1において、ナックルaは、経糸が緯糸aおよびbの上で浮いている。他の部分において、経糸は1本の緯糸の上に浮いており、ナックルaは他の部分とは異なる状態の経糸の浮きにより形成されていることがわかる。
この支持体を用いて製造される不織布は、
図3に示すような模様を有し、綾織部(織組織A)により付与された斜線模様を有する第1領域と、平織部(織組織B)より形成された、開口部ないしは凹部が千鳥上に配置された第2領域を有する。また、第3領域として、開口部が比較的明瞭に形成されたステッチ状の領域が、第1領域→第3領域→第2領域の順となるように規則的に形成されている。この不織布は、後述する実施例1で製造した不織布に相当し、
図1に示すような支持体に載置した繊維ウェブに、高圧流体流としての水流を噴射して繊維同士を交絡させる方法で製造したものである。
【0022】
図3の不織布においては、一つの第2領域から見て、図の下方の側の第1領域との境界にのみ第3領域が形成されている。第3領域は、支持体を進行させながら水流を繊維ウェブに噴射する際に、支持体の低い位置(織組織B)にある繊維ウェブから、高い位置(織組織A)にある繊維ウェブに向かって、水流が順次噴射されて形成される部分である。進行するにつれて、低い位置から高い位置に跨って延びる繊維ウェブは、水流をしっかりと受け止めて水流の作用を受けやすく、段差におけるナックル等を不織布に反映させやすいと考えられる。一方、高い位置(織組織A)にある繊維ウェブから、低い位置(織組織B)にある繊維ウェブの順に水流が噴射される、もう一方の段差では、高い位置から低い位置に跨って延びる繊維ウェブの上を水流の一部が「流れ落ちて」、繊維ウェブにしっかりと受け止められず、交絡の度合いが弱くなると考えられる。その結果、開口部および/または凹部が形成されにくく、明瞭な模様を有する第3領域が形成されず、
図3のような不織布が得られると考えられる。
【0023】
図2の支持体においては、ナックルaは1本の緯糸の上で浮いている経糸である。ナックルaは、経糸が太い緯糸aの上を通過する部分であるが、ナックルaの進行方向の前後にて経糸は細い緯糸bの上を通過している。そのため、ナックルaの近辺では緯糸の配置(特に緯糸間の間隔)が、他の組織における緯糸の配置と異なり、そのためにナックルaが第3領域において特徴的な開口部および/または開口部を形成すると考えられる。
【0024】
この支持体を用いて製造される不織布は、
図4に示すような模様を有し、綾織部(織組織A)により付与された開口部が規則的に配置された第1領域と、平織部(織組織B)より形成された、開口部ないしは凹部が千鳥状に配置された第2領域を有する。また、第3領域として、開口部が明瞭に形成されたステッチ状の領域が、図の上から下に向かって第1領域→第3領域→第2領域の順となるように規則的に形成されている。この不織布は、後述する実施例2で製造した不織布に相当し、
図2に示すような支持体に載置した繊維ウェブに、高圧流体流としての水流を噴射して繊維同士を交絡させる方法で製造したものである。
図4に示す不織布の第1領域においては、織組織Aにおいて経糸が浮いている部分に対応する位置に比較的明瞭な開口部が形成される。これは、織組織Aが1/3ヨコ崩し綾組織であり、経糸の浮き部における湾曲が、例えば
図1の支持体の織組織Aにおけるそれよりも強くて、浮き部がより隆起していることによると考えられる。また、
図2の支持体の織組織Aにおいては、浮いている経糸により連続した斜めの線が形成されないため、得られた不織布の第1領域には斜線模様が形成されにくい。
【0025】
図4に示す不織布もまた、第1領域→第3領域→第2領域が繰り返し形成された構成を有し、一つの第2領域から見て、図の下方の側の第1領域との境界にのみ第3領域が形成されている。このように第3領域が形成されている理由は、上記
図3を参照して説明した理由と同じであると考えられる。
【0026】
本実施形態の支持体において、織組織Aは、経糸の浮き数が1であるものに限定されず、経糸の浮き数が2以上である綾織部であってよい。経糸の浮き数の上限は、例えば16であってよく、特に10であってよい。このとき、緯糸の浮き数は、例えば2以上16以下であってよく、特に2以上10以下であってよい。例えば、本実施形態の支持体は、
図5の組織図に示すように、2/2の綾織部である織組織Aと、平織部である織組織Bとが形成されたものであってよい。
【0027】
経糸の浮き数が2以上である綾織部は、平織部との境界において特徴的なナックルを形成する。
図5に示すように、綾織部の平織部の一方の境界には、前記緯糸aおよび前記緯糸bを含む、連続する3以上の緯糸の上で浮いているナックルN1が形成されている。このナックルN1は縦方向に長いため、縦長の開口部を第1領域と第2領域との境界に形成する傾向にある。
【0028】
また、
図5に示す支持体においては、ナックルN1が形成されている側の境界とは反対側の境界において、経糸が緯糸aおよび緯糸bを含む連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN2が形成されており、ナックルN2の一方の側に隣り合って、経糸が連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN3が形成されている。ナックルN2およびN3は近接して形成されているため、得られる不織布においては、近接した二つの開口部または二つの開口部がつながって一つのより大きな開口部が形成された領域が、第1領域と第2領域との間で形成される。
【0029】
図5の支持体のように、織組織において、経糸の浮き数(経糸が連続してその上に位置する緯糸の数)と緯糸の浮き数(緯糸が連続してその上に位置する経糸の数)が同じであると、両方の主表面にて経糸および緯糸の浮き数が同じとなる。そのような支持体は、繊維ウェブを載置する面を主表面のいずれとしても、略同じ模様の不織布の製造を可能とする。但し、綾織組織の部分では、経糸が形成する斜めの線の向きが二つの主表面の間で鏡像対象となり、得られる不織布において形成される斜線の向きが反対となる。
【0030】
図5に示す支持体を用いて製造した不織布の例を
図6に示す。
図6の不織布は、実施例3で製造した不織布に相当し、
図5に示すような支持体に載置した繊維ウェブに、高圧流体流としての水流を噴射して繊維同士を交絡させる方法で製造したものである。この不織布は、ナックルN1が形成された境界が先に水流に噴射されるように、すなわち
図5において、組織図の右側に示した矢印を進行方向として、水流交絡処理を実施して作製した。
図6の不織布において、第1領域は、開口部が形成された斜線と開口部が形成されていない斜線とが交互に配置された斜線模様を有する。開口部は、
図5の綾織部において、経糸が浮いている部分に対応し、綾織部にて二本の緯糸の上で浮いている経糸が隣り合っているため、比較的明瞭な開口部が不織布に形成されている。
【0031】
図6の不織布は、ナックルN1を含む境界部に対応して形成された第3領域と、ナックルN2およびN3を含む境界部に対応して形成された第4領域とを有し、4つの領域は第1領域→第3領域→第2領域→第4領域の順に繰り返し形成されている。第3および第4領域はいずれも、第1領域と第2領域と異なる模様を有し、第1領域と第2領域との境界を強調している。ナックルN1は、3本の緯糸の上で浮いていて長いために、第3領域の開口部を第1領域に形成された開口部より大きくし、また、第1領域の開口部で形成される斜線の向きが第3領域にて変更された外観を与えている。ナックルN2は、織組織AおよびBの境界にて、織組織Aを構成する緯糸および織組織Bを構成する緯糸の上を通過しているために、その織組織B側にて経糸がより低い位置に達してから、織組織Bの緯糸の下を通過する。そのことが第4領域の模様を他の領域とは異なるものにしていると考えられる。さらに、織組織Aおよび織組織Bの境界では、緯糸の間隔が織組織Aおよび織組織Bにおけるそれよりも広くなる傾向にあり、そのことも第3領域および第4領域の模様を他の領域とは異なるものにしていると考えられる。
【0032】
図6の不織布では、第2領域から見て、図の上方および下方それぞれの側の境界に、第1領域および第2領域とは異なる模様を有する領域が形成されている。ナックルN2およびN3では経糸が2本の緯糸の上で浮いているため、比較的大きいものである。そのため、高い位置から低い位置に跨る繊維ウェブに水流が順次作用する場合でも、ナックルの影響を受けやすく、
図1および2の支持体(進行方向の後側の織組織の境界のナックルでは経糸の浮き数が1)と比較して、より鮮明な模様が形成されたと考えられる。
【0033】
図示した支持体は一例であり、織組織AおよびBはそれぞれ図示した織組織以外のものであってよい。また、各織組織のMD方向の幅、緯糸aおよびbの直径、ならびに経糸の直径も、不織布において所望の模様が得られるように適宜選択される。
【0034】
支持体において、織組織AおよびBのMD方向の寸法が、得られる不織布において形成される第1および第2領域のMD方向の寸法(すなわち、第1および第2領域が繰り返し形成される方向をX方向としたときに、X方向の寸法)を決定する。本実施形態において、織組織AのMD方向の寸法は、2mm以上200mm以下であってよく、特に3mm以上100mm以下、より特には5mm以上50mm以下、さらに特には7mm以上30mm以下、さらにより特には10mm以上25mm以下であってよい。同様に、織組織BのMD方向の寸法は、2mm以上200mm以下であってよく、特に3mm以上100mm以下、より特には5mm以上50mm以下、さらに特には7mm以上30mm以下、さらにより特には10mm以上25mm以下であってよい。織組織AのMD方向の寸法は、織組織BのMD方向の寸法と同じであってよく、異なっていてよい。また、一つの支持体において、MD方向の寸法の異なる織組織Aが複数存在していてよく、ならびに/あるいはMD方向の寸法の異なる織組織Bが複数存在していてよい。
【0035】
支持体を構成する経糸および緯糸は、例えば、直径0.3mm以上1.2mm以下のフィラメントであってよい。緯糸の直径は、例えば0.5mm以上1.2mm以下、特に0.9mm以上1.0mm以下、より特には0.65mm以上0.95mm以下であってよい。緯糸aと緯糸bは、その直径が互いに異なるものであってよい。その場合、緯糸aと緯糸bの直径の差は、例えば0.1mm以上0.8mm以下、特に0.2mm以上0.7mm以下、より特には0.3mm以上0.6mm以下であってよい。緯糸aと緯糸bの直径の差が大きいほど、形成される不織布において第3領域および第4領域における模様をより鮮明なものとし得る傾向にあるが、大きすぎると織組織Aと織組織Bとの境界付近にて、織組織Bと繊維ウェブが接触せず(隙間が大きく)、却って明瞭な模様を形成できない場合がある。なお、支持体を構成する経糸は、織組織AおよびBにおいて共通し、その太さは織組織AおよびBにおいて同じである。
【0036】
経糸および緯糸の直径は糸(例えばフィラメント)の横断面(長さ方向に垂直に切断して得られる断面)において、断面の任意の二点を結ぶ線分のうち最も長い線分の長さとする。横断面形状が楕円形、多角形、ビーンズ形、勾玉形または星形等であるものについても、直径はこの方法で求められる。ただし、後述するとおり、断面が扁平形状(角が丸くなっている矩形を含む)であるフィラメントについては、当該断面に外接する矩形の短辺および長辺の寸法によって、その太さを表す指標とする。
【0037】
支持体を構成する経糸および緯糸は、その断面が扁平形状を有し、当該断面に外接する矩形が0.2mm以上0.8mm以下の短辺および0.3mm以上1.2mm以下の長辺を有するモノフィラメントであってよい。外接矩形の短辺は特に0.4mm以上0.6mm以下、長辺は特に0.7mm以上0.9mm以下であってよい。ここで、「扁平形状」とは、矩形(長方形)、長楕円、および角の丸い矩形等のような一方向の寸法が大きいものであって、上記の方法で求めた直径のみによってはその寸法および形状を概念することが難しいものをいう。断面が完全な矩形である場合には当該矩形の短辺および長辺が上記範囲の寸法を有することとなる。外接矩形の長辺の寸法と短辺の寸法の比(長辺/短辺比)は、例えば、1.2以上、特に1.3以上3以下、より特には1.4以上2以下であってよい。
【0038】
本実施形態において、支持体を構成する経糸は扁平形状のものであることが好ましい。扁平形状の経糸を用いると、断面が円形の経糸を用いる場合と比較して、支持体のMD方向のしなやかさ及び寸法安定性を向上させやすいことによる。また、扁平形状の経糸を用いると、経糸と繊維ウェブとの接触面積が大きくなり、ナックルを含む経糸が浮いている部分により形成される開口部の面積がより大きくなる傾向にある。また、特に経糸が角の丸い矩形断面を有するものである場合には、支持体の耐屈曲性が向上する傾向にある。
【0039】
支持体を構成する経糸および緯糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリフェニレンサルファイド等から選択される、1または複数の材料で形成されていてよい。
また、経糸および緯糸はモノフィラメント以外の形態のものであってよく、例えばマルチフィラメントまたはスパンヤーンの形態のものであってよい。マルチフィラメント等の場合、糸の太さを表す指標として直径に代えて繊度を用い、繊度が互いに異なる緯糸aおよび緯糸bを用いてよい。
【0040】
本実施形態の支持体の織密度は、経糸については例えば6本/inch以上123本/inch以下、特に10本/inch以上80本/inch以下、より特には20本/inch以上40本/inch以下であってよい。緯糸の織密度は、例えば6本/inch以上123本/inch以下、特に8本/inch以上60本/inch以下、より特には10本/inch以上20本/inch以下であってよい。織密度が高いほど、ナックルを含む経糸が浮いている部分によって不織布により鮮明な模様を付与しやすくなるが、織密度が高すぎるとナックルを含む経糸が浮いている部分の平滑度が上がり、却って模様の明瞭さが低下することがある。
【0041】
織組織Aが綾織部である場合、モノフィラメントの直径、経糸密度および緯糸密度に加えて、綾織部において、経糸が緯糸の上に浮く数、および/または緯糸の下に沈む数によっても、得られる不織布の第1領域における斜線模様の形態が変化する。綾織組織は、経糸が緯糸の上に浮く場所が隣り合うもの、または隣り合わないもののいずれかで構成されており、経糸が浮いている部分を直線でつないだ時、すべての浮いている部分を含んだ状態で斜めに延びる直線を描ける場合、
図3および
図6に示すような斜線模様の第1領域が得られる。当該直線を描けない場合、
図4のような開口部または凹部の配置の規則性が低い模様を有する第1領域が得られる。
【0042】
織組織Bが平織部である場合、組織を構成するモノフィラメントの直径によって、第2領域に形成される開口部の寸法が変化し、モノフィラメントの直径が大きいほど、開口部の面積が大きくなる傾向にある。また、平織部の緯糸密度および経糸密度によって、開口部間、開口部-凹部間または凹部間の間隔が変化し、緯糸密度および/または経糸密度が大きくなるほど、前記間隔は狭くなる傾向にある。
【0043】
支持体において、織組織AおよびBはともに平織部であってよい。その場合、二つの織組織は、緯糸の直径を変える、および/または緯糸の密度を変えることで、互いに異なるものとすることができる。また、織組織AおよびBはともに綾織部であってよい。その場合、二つの織組織は、経糸が緯糸の上に浮く本数を変える、緯糸の下に沈む数を変える、緯糸の直径を変える等から選択される一つの方法を用いて、互いに異なるものとすることができる。
【0044】
織組織Bが目の細かい平織部(例えば80メッシュ以上100メッシュ以下)であると、当該組織に対応して無模様の第2領域が形成される。この場合、織組織Aは模様の形成が可能な組織、例えば綾織部であってよく、あるいは直径の大きなフィラメントからなる平織部であってよい。
【0045】
本実施形態の支持体は、経糸および緯糸を用いて、織組織Aおよび織組織Bが規則的に繰り返し形成されるように、通常の方法で織成することにより製造される。織成後、好ましくは、支持体に張力をMD方向(経糸が延びる方向)もしくはCD方向(緯糸が延びる方向)に加えながら加熱処理を実施するヒートセット加工が施される。ヒートセット加工を実施することで、寸法安定性を付与する。張力は例えば1kg/cm以上20kg/cm以下が望ましい。また、温度は例えば80℃以上250℃以下が望ましい。
【0046】
本実施形態の支持体は、高圧流体流(特に水流)を繊維ウェブに噴射することにより、繊維を再配列させるとともに、交絡させて繊維を一体化させる方法で用いるのに適しており、この方法で製造した不織布の例は上記において説明したとおりである。
【0047】
本実施形態の支持体はまた、スパンボンド法による不織布製造において用いるのに適している。スパンボンド法は、溶融紡糸した繊維を支持体の上で開繊および堆積させて繊維ウェブを作製した後、繊維ウェブを、繊維同士を結合させる処理(例えばエンボス処理)に付して不織布を製造する方法である。本実施形態の支持体は、溶融紡糸した繊維を堆積して繊維ウェブを作製する際に用いる支持体として好ましく用いられる。溶融紡糸した繊維が支持体にて堆積される際、繊維は溶融または軟化した状態にあるため、支持体の有する模様が繊維ウェブに反映されやすく、これが不織布においても維持されるからである。
なお、スパンボンド法においては、高圧流体流交絡法とは異なり、不織布製造中、外力により繊維が再配列されることがない。そのため、スパンボンド法で製造される不織布において開口部は形成されにくいが、支持体の経糸が浮いている部分(ナックルを含む)等の凹凸をより反映して、凹凸が鮮明なものとして現われる傾向にある。
【0048】
あるいは、本実施形態の支持体は、繊維ウェブを載置し、繊維ウェブを構成する繊維同士を繊維それ自体により、または接着剤により結合させる際に用いてよい。
【0049】
支持体は、横方向(支持体の進行方向と直交する方向)と平行な方向の端部をつなぎ合わせた無端状のものであってよく、あるいは矩形状のものであってよい。矩形状の支持体を用いる場合には、別の無端状の支持体の上に矩形状の本実施形態の支持体を敷き詰めて当該別の支持体に固定して用いてよく、それにより連続的な不織布製造が可能となる。
【実施例0050】
本実施形態の支持体および当該支持体を用いて製造される不織布を、実施例により説明する。
【0051】
(実施例1)
支持体1として、織組織Aが1/7綾織部であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置したされた織物を作製した。支持体1においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸に配し、緯糸aとして直径0.9mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体1の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体1において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は25本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は15mm、織組織BのMD方向の寸法は8mmであった。支持体1において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも1.5mm高い位置にあった。
【0052】
織組織Aの表面と織組織Bの表面の高さの差は、支持体のMD方向断面を、画像解析処理装置(ハイロックス社製KH-3000)を用いて撮影し、上記において説明した方法で求めた。
【0053】
支持体1を用いて、以下の手順で不織布を製造した。
レーヨン80質量%とPP/PE20質量%を混合し、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約40g/m2であった。
[第1水流交絡処理(全体交絡処理)]
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りネット上に、上述の繊維ウェブを載置した。繊維ウェブを速度4m/minで進行させながら、繊維ウェブの表面に水圧1.0MPaの柱状水流を噴射し、続いて繊維ウェブの裏面に水圧1.5MPaの柱状水流を噴射した。水流の噴射には、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられているノズルを使用した。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmであった。
【0054】
[第2水流交絡処理(縞状模様形成処理)]
第1水流交絡処理に付した後の繊維ウェブを支持体1に載置し、繊維ウェブを速度4m/minで進行させながら、繊維ウェブの裏面に水圧1.5MPaの柱状水流を噴射した。水流の噴射には、第1水流交絡処理で用いたノズルと同じノズルを用いた。第2水流交絡処理により、
図3に示す第1領域ないし第3領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として斜線模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第3領域は、第1領域と第2領域との間にやや大きい開口部が線状に配置されてなる領域であった。
【0055】
[熱処理]
第2水流交絡処理後の不織布を、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱して、乾燥処理を実施すると同時に、PP/PEの鞘成分により繊維同士を熱接着させて実施例1の不織布を得た。
【0056】
(実施例2)
支持体2として、織組織Aが1/3崩し綾織部(崩綾・経4本1組織)であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置された織物を作製した。支持体2においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸に配し、緯糸aとして直径0.8mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体2の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体2において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は17本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は15mm、織組織BのMD方向の寸法は8mmであった。支持体2において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも1.0mm高い位置にあった。
【0057】
第2水流交絡処理で支持体2を使用したこと以外は、実施例1の製造で採用した手順と同様の手順で実施例2の不織布を得た。
第2水流交絡処理により、
図3に示す第1領域ないし第3領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として開口部が不規則に形成された模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第3領域は、第1領域と第2領域との間にやや大きい開口部が線状に配置されてなる領域であった。
【0058】
(実施例3)
支持体3として、織組織Aが2/2綾織部であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置された織物を作製した。支持体3においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸に配し、緯糸aとして直径0.9mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体3の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体3において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は17本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は20mm、織組織BのMD方向の寸法は10mmであった。支持体3において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも0.8mm高い位置にあった。
【0059】
第2水流交絡処理で支持体3を使用したこと以外は、実施例1の製造で採用した手順と同様の手順で実施例3の不織布を得た。
第2水流交絡処理により、
図6に示す第1領域ないし第4領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として斜線模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第1領域と第2領域との境界には、第3領域および第4領域が形成されていた。
【0060】
(実施例4)
支持体4として、織組織Aが1/7綾織部であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置された織物を作製した。支持体4においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸に配し、緯糸aとして直径0.9mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体4の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体4において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は25本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は15mm、織組織BのMD方向の寸法は20mmであった。支持体4において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも1.6mm高い位置にあった。
【0061】
第2水流交絡処理で支持体4を使用したこと以外は、実施例1の製造で採用した手順と同様の手順で実施例4の不織布を得た。
第2水流交絡処理により、
図10に示す第1領域ないし第3領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として斜線模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第3領域は、第1領域と第2領域との間にやや大きい開口部が線状に配置されてなる領域であった。
【0062】
(実施例5)
支持体5として、織組織Aが2/2綾織部であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置された織物を作製した。支持体5においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸に配し、緯糸aとして直径0.9mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体5の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体5において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は17本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は6mm、織組織BのMD方向の寸法は6mmであった。支持体5において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも0.6mm高い位置にあった。
【0063】
第2水流交絡処理で支持体5を使用したこと以外は、実施例1の製造で採用した手順と同様の手順で実施例5の不織布を得た。
第2水流交絡処理により、
図11に示す第1領域ないし第4領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として斜線模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第1領域と第2領域との境界には、やや大きな開口部が線状に配置されてなる第3領域および第4領域が形成されていた。
【0064】
(実施例6)
支持体6として、織組織Aが2/2綾織部であり、織組織Bが平織部であり、織組織Aと織組織BとがMD方向に交互に配置された織物を作製した。支持体6においては、角の丸い矩形断面を有し、断面に外接する矩形の寸法が長辺0.88mm×短辺0.57mmであるポリエステルモノフィラメントを経糸として交互に配置し、緯糸aとして直径0.9mmのポリエステルモノフィラメント、緯糸bとして直径0.45mmのポリエステルモノフィラメントを用いた。支持体6の製造に際しては、織成が終了した後、ヒートセット加工を、MD方向に張力2kg/cmを加えながら、150℃にて実施した。支持体6において、経糸の密度は30本/inch、緯糸の密度は17本/inchであり、織組織AのMD方向の寸法は10mm、織組織BのMD方向の寸法は10mmであった。支持体6において、織組織Aの表面は織組織Bの表面よりも0.45mm高い位置にあった。
【0065】
第2水流交絡処理で支持体6を使用したこと以外は、実施例1の製造で採用した手順と同様の手順で実施例6の不織布を得た。
第2水流交絡処理により、
図12に示す第1領域ないし第3領域を有する不織布が得られた。より具体的には、各領域はCD方向に沿って延びており(すなわち、CD方向がY方向である)、第1領域として斜線模様部と、第2領域として開口部が千鳥状に配置された模様部とが、MD方向に交互に繰り返し存在していて、縞状模様を形成していた。第1領域と第2領域との境界には、やや大きな開口部が線状に配置されてなる第3領域および第4領域が形成されていた。
【0066】
本実施形態には以下の態様のものが含まれる。
(態様1)
不織布の製造中に繊維ウェブを載置する、経糸と緯糸を織成してなる不織布製造用支持体であって、
少なくとも二種類の織組織Aおよび織組織Bを含み、
前記織組織Aおよび前記織組織Bは、前記緯糸が延びる方向に沿って延びる帯状部であり、
前記経糸が延びる方向に沿って前記織組織Aおよび前記織組織Bが規則的に繰り返し形成されている、
不織布製造用支持体。
(態様2)
前記織組織Aを構成する緯糸aと、前記織組織Bを構成する緯糸bの直径が異なっていて、前記織組織Aと前記織組織Bとの境界にて、前記緯糸aと前記緯糸bとが隣り合っている、態様1の不織布製造用支持体。
(態様3)
前記織組織Aの表面が、前記織組織Bの表面よりも、0.1mm以上3.0mm以下高い位置にある、態様1または2の不織布製造用支持体。
(態様4)
前記経糸、前記緯糸a、および前記緯糸bがそれぞれ、直径0.3mm以上1.2mm以下のモノフィラメント、または断面が扁平形状を有し、当該断面に外接する矩形が0.2mm以上0.8mm以下の短辺および0.3mm以上1.2mm以下の長辺を有し、長辺/短辺比が1.2以上である、モノフィラメントである、態様1から3のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様5)
前記織組織Aが、緯糸の浮き数が2以上であり、経糸の浮き数が1である、ヨコ綾織組織であり、前記織組織Bが平織組織である、態様1から4のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様6)
前記緯糸aが前記緯糸bよりも太い、態様1から5のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様7)
前記織組織Aおよび前記織組織Bの境界にて、前記緯糸aおよび前記緯糸bを含む、連続する2以上の緯糸の上で、前記経糸が浮いているナックルN1が形成されている、態様1から6のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様8)
前記織組織Aから見て、前記ナックルN1が形成されている側とは反対の側の前記織組織Bとの境界にて、経糸が、前記緯糸aおよび前記緯糸bを含む連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN2が形成されており、前記ナックルN2のいずれか一方の側に隣り合って、経糸が連続する2以上の緯糸の上で浮いているナックルN3が形成されている、態様1から7のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様9)
前記織組織Aが、緯糸の浮き数が2以上16以下、経糸の浮き数が2以上16以下である綾織組織であり、前記織組織Bが平織組織であり、前記緯糸aの直径が前記緯糸bの直径よりも大きい、態様1から8のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様10)
高圧流体流により繊維同士を交絡させる際に用いる、態様1から9のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様11)
スパンボンド法により不織布を製造する際に用いる、態様1から9のいずれかの不織布製造用支持体。
(態様12)
繊維ウェブを作製すること、
前記繊維ウェブを態様1から10のいずれかの不織布製造用支持体に載置した状態で、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を結合および/または交絡させる処理に付すること
を含む、不織布の製造方法。
(態様13)
合成樹脂を溶融紡糸して得たフィラメントを、前記合成樹脂が溶融または軟化している間に、態様1から9のいずれかの不織布製造用支持体に堆積させることを含む、不織布の製造方法。
本開示の不織布製造用支持体は、不織布のCD方向に延びる異なる模様の帯状部がMD方向に規則的に配置された新規な縞状模様の不織布の製造を可能にし、高圧流体流交絡処理法およびスパンボンド法による不織布製造の際に用いる支持体として有用である。