(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143265
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20230928BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20230928BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20230928BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230928BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230928BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C09K11/08 A
C01B25/08 A ZNM
C09K11/08 G
C09K11/70
B82Y40/00
B82Y20/00
C09K11/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050547
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂上 知
(72)【発明者】
【氏名】中對 一博
(72)【発明者】
【氏名】杉矢 正
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CC07
4H001CC13
4H001CF01
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA30
4H001XA34
4H001XA49
(57)【要約】
【課題】光安定性に優れた量子ドットを工業的に有利な方法で製造する方法を提供すること。
【解決手段】量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を溶解できる有機溶媒を用いて、量子ドットを洗浄する洗浄工程と、洗浄した量子ドットの分散液に特定のホスフィン化合物である配位子を添加して量子ドットの表面を配位子で保護する表面保護工程とを含む量子ドットの製造方法を提供するものである。前記洗浄工程における有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、2-プロパノール及びアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を溶解できる有機溶媒を用いて、量子ドットを洗浄する洗浄工程と、
洗浄した量子ドットの分散液に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるリン化合物からなる配位子を添加して量子ドットの表面を配位子で保護する表面保護工程とを含む量子ドットの製造方法。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
1、R
2及びR
3は同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。)
【化2】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。R
8が複数存在する場合、それらは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。Aは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基又はチオアルコキシレン基を示す。nは0~3の整数を示す。)
【請求項2】
前記量子ドットを含む分散液が、コアに少なくともリン源とインジウム源との反応により得られたInP系量子ドットを有し、シェルにInP系以外の被覆化合物を有するコアシェル構造の量子ドットの分散液である請求項1に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程における有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、2-プロパノール及びアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程における洗浄が、分散液に有機溶媒を加えて撹拌後、遠心分離により固液分離して洗浄した量子ドットを得る請求項1~3の何れか一項に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項5】
前記表面保護工程における洗浄した量子ドットを含む分散液が、脂肪族炭化水素からなる溶媒中に洗浄した量子ドットを分散したものである請求項1~4の何れか一項に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項6】
前記表面保護工程におけるリン化合物からなる配位子が、トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスファイト、ビス(ジアルキルホスフィン)及びビス(ジアルキルホスファイト)からなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1~5の何れか一項に記載の量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光材料として量子ドット(quantum dots)の開発が進んでいる。代表的な量子ドットとして、優れた発光特性などからCdSe、CdTe、CdS等のカドミウム系量子ドットの開発が進められている。また、カドミウムは毒性及び環境負荷が高いことからInP、CuInS2、ZnTeSe等のカドミウムフリーの量子ドットの開発が期待されている。
【0003】
量子ドットの品質向上を目的とする特性としては、量子収率や発光ピークの半値全幅(Full Width at Half Maximum、以下FWHMともいう)といった発光特性が重要であるが、発光特性以外にも、保存安定性、温度安定性、光安定性といった安定性に係る特性があり、量子ドットの製品化に向けては発光特性と共に重要な因子となる。
【0004】
量子ドットの品質劣化の一因としては、量子ドット表面に存在する欠陥が影響を及ぼしているものと考えられている。この欠陥を保護することにより、発光特性や安定性を向上させることができるが、この保護の一形態として、配位子で量子ドット表面を修飾する方法がある。例えば特許文献1では、半導体ナノ結晶(量子ドット)の表面と、金属前駆体と相互作用する極性ヘッド基、いわゆる配位子として硫酸塩、スルホネート、スルフィネート、リン酸塩、ホスファイト、ホスフィン等を挙げ、これらが半導体ナノ結晶の表面と配位結合することにより表面保護を図ることが記載されている。特許文献2には、成長する量子ドットを安定させるために配位性溶媒を用いることを開示しており、該配位性溶媒としてアルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、アルキルホスフィン酸等の配位子を例示している。また、特許文献3では、硫黄系化合物やリン系化合物等からなる配位子が、光や熱により量子ドット表面から脱離すると、量子ドットに水分や酸素が付着しやすくなるので、量子ドットが劣化してしまうことが記載されており、これを防ぐために、量子ドットを含む光波長変換組成物中にホスファイト系化合物を含ませることにより、該ホスファイト系化合物が配位子を代替する機能を発揮するとの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2009/065010号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2012/021643号パンフレット
【特許文献3】特開2017-165860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで量子ドットの合成過程では、上記した配位子の他に、量子ドットの原料となる元素を含有した化合物や反応溶媒などを用いるが、反応系内では未反応物質や反応副生物などの不純物が生じる。これらの不純物は量子ドットの品質を劣化させるために除去する必要があり、一般的には不純物が溶解するような有機溶媒を反応系に加えて量子ドットと溶媒とを分離する、いわゆる量子ドットを洗浄する方法が取られる。しかしながら、洗浄を経た量子ドットであっても発光の強度や持続性の低下が観察されることがあり、製品化の上では、これを改善することが必要であった。
【0007】
従って本発明の目的は、光安定性に優れた量子ドットを工業的に有利な方法で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、洗浄を経た量子ドットは、洗浄前の量子ドットと比べて、その表面に修飾している配位子の量が少なく、その原因として、量子ドットを洗浄することにより配位子が脱離してしまい、量子ドット表面に欠陥が生じるため、量子ドットの品質特性、特に光安定性に係る特性が低下してしまうことを見出した。特に、S、Se、Te等の16族元素に配位している配位子の脱離が顕著であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち本発明は、量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を溶解できる有機溶媒を用いて量子ドットを洗浄する洗浄工程と、洗浄した量子ドットの分散液に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される配位子を添加して量子ドットの表面を配位子で保護する表面保護工程とを含むことを特徴とする量子ドットの製造方法を提供するものである。
【0010】
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
1、R
2及びR
3は同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。)
【0011】
【化2】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。R
8が複数存在する場合、それらは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。Aは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基又はチオアルコキシレン基を示す。nは0~3の整数を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光安定性に優れた量子ドットを工業的に有利な方法で製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図2】実施例1で得られた量子ドット分散液の長時間光安定性試験の測定結果である。
【
図3】実施例2で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図4】実施例3で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図5】実施例4で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図6】実施例5で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図7】比較例1で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図8】比較例2で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図9】比較例3で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【
図10】比較例4で得られた量子ドット分散液の光安定性試験の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を溶解できる有機溶媒を用いて量子ドットを洗浄する洗浄工程と、洗浄した量子ドットの分散液に配位子を添加して量子ドットの表面を配位子で保護する表面保護工程とを含むことを特徴とする量子ドットの製造方法である。以下、本発明の量子ドットの製造方法の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
本発明で使用する量子ドットを含む分散液は、溶媒中に量子ドットが分散してなるものである。溶媒中の量子ドットの分散量は、分散液の保存安定性の観点や、量子ドット分散樹脂あるいは量子ドット固体ニート膜を首尾よく形成できる観点から、0.1質量%以上50質量%以下、特に1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。該量子ドットは、量子ドットを構成する元素からなる原料化合物を溶媒中で反応させて得られたものであっても良く、市販の量子ドットを溶媒中に分散したものであっても良い。以下、量子ドットを構成する元素からなる原料化合物を溶媒中で反応させて量子ドットを含む分散液を得る場合の反応工程について説明する。
【0016】
<反応工程>
本発明における反応工程は、液中に量子ドットが分散している量子ドット分散液を調製する工程である。前記量子ドットとしては、CdSe、CdTe、CdS等のカドミウム系量子ドットや、InP、CuInS、ZnTeSe等のカドミウムフリー量子ドット等が挙げられる。本発明においては、コア材料の表面にシェル材料が形成されたコアシェル構造の量子ドットであることが好ましく、コアに少なくともリン源とインジウム源との反応により得られたInP系量子ドットを有し、シェルにInP系以外の被覆化合物を有するコアシェル構造の量子ドットであることが特に好ましい。また、前記分散液は、非極性有機溶媒であることが好ましい。以下にコアにInP系量子ドット、シェルにInP系以外の被覆化合物を有する量子ドットに係る態様について詳細に説明する。
【0017】
(リン源)
本発明における反応工程で使用するリン源として、採用する化学合成法に合わせて種々のものを用いることができ、例えば、シリルホスフィン化合物及びアミノホスフィン化合物等のホスフィン誘導体、ホスフィンガス等が挙げられる。量子ドットを得やすい観点や入手容易性、得られる量子ドットの粒径分布制御の観点から、下記一般式(a)で表されるシリルホスフィン化合物であることが好ましい。リン源として用いるシリルホスフィン化合物は3級、つまり、リン原子に3つのシリル基が結合した化合物である。
【0018】
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を示す。)
【0019】
前記一般式(a)中のRで表される炭素原子数1以上5以下のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、n-アミル基、iso-アミル基、tert-アミル基等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(a)中のRで表される炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、iso-プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、iso-ブチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、トリメチルフェニル基等が挙げられる。
【0021】
これらのアルキル基及びアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、アルキル基の置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等が挙げられ、アリール基の置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。アリール基がアルキル基やアルコキシ基で置換されていた場合、アリール基の炭素原子数に、これらアルキル基やアルコキシ基の炭素原子数を含めることとする。
【0022】
前記一般式(a)における複数のRは同一であっても異なっていてもよい。また、前記一般式(a)中に3つ存在するシリル基(-SiR3)も、同一であってもよく、異なっていてもよい。前記一般式(a)で表されるシリルホスフィン化合物としては、Rが炭素原子数1以上4以下のアルキル基又は無置換若しくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基に置換されたフェニル基であるものが、合成反応時のリン源としてインジウム源などの他の分子との反応性に優れる点から好ましく、とりわけトリメチルシリル基が好ましい。
【0023】
(インジウム源)
前記InP量子ドットの製造で使用するインジウム源として、採用する化学合成法に合わせて種々のものを用いることができる。量子ドットを得やすい観点や入手容易性、得られる量子ドットの粒径分布制御の観点から、有機カルボン酸インジウムが好適であり、例えば、酢酸インジウム、ギ酸インジウム、プロピオン酸インジウム、酪酸インジウム、吉草酸インジウム、カプロン酸インジウム、エナント酸インジウム、カプリル酸インジウム、ペラルゴン酸インジウム、カプリン酸インジウム、ラウリン酸インジウム、ミリスチン酸インジウム、パルミチン酸インジウム、マルガリン酸インジウム、ステアリン酸インジウム、オレイン酸インジウム、2-エチルヘキサン酸インジウムなどの飽和脂肪族インジウムカルボキシレート;オレイン酸インジウム、リノール酸インジウムなどの不飽和インジウムカルボキシレートなどが挙げられる。特に入手容易性、粒径分布制御の観点から、酢酸インジウム、ラウリル酸インジウム、ミリスチン酸インジウム、パルミチン酸インジウム、ステアリン酸インジウム、オレイン酸インジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、炭素原子数12以上18以下の高級カルボン酸のインジウム塩を用いることが最も好ましい。
【0024】
(リン源とインジウム源との反応)
前記InP量子ドットの化学合成法としては、例えば、ゾルゲル法(コロイド法)、ホットソープ法、逆ミセル法、ソルボサーマル法、分子プレカーサ法、水熱合成法、又は、フラックス法等が挙げられる。本発明におけるInP量子ドットの製造方法は、リン源とインジウム源とを混合して、20℃以上150℃以下の温度で反応させてInP量子ドット前駆体を得た後、200℃以上350℃以下の温度で反応させてInP系量子ドットを得るものであることが好ましい。
【0025】
(InP量子ドット前駆体の製造方法)
InP量子ドット前駆体は、リン源とインジウム源との反応により得られる数nmから数十nmの粒径を有するナノ粒子であるInP量子ドットを細分化したクラスターであり、溶媒中で優れた安定性を示す特定の構成原子数、例えば数個から数百の原子数からなるものである。InP量子ドット前駆体は、数十から数百の原子数からなるマジックサイズクラスターであってもよく、それよりも原子数の小さなものであってもよい。上記の通りInP量子ドット前駆体は、溶媒中で優れた安定性を示すことができるため、これを用いることで粒径分布の狭い量子ドットを得やすい利点がある。本発明においてInP量子ドット前駆体におけるInPとはIn及びPを含むことを意味し、In及びPがモル比1:1であることまでを要しない。InP量子ドット前駆体は通常In及びPからなるものであるが、その最外殻に位置するIn又はP原子に、原料であるリン源又はインジウム源に由来する配位子が結合していてもよい。そのような配位子としては、例えばインジウム源が有機カルボン酸のインジウム塩である場合の有機カルボン酸残基、添加物として用いるアルキルホスフィン等が挙げられる。
【0026】
反応時におけるリン源及びインジウム源の混合モル比は、首尾よくInP量子ドット前駆体を得る観点から、P:Inが1:0.5以上10以下であることが好ましく、1:1以上5以下であることがより好ましい。
【0027】
リン源とインジウム源との反応は、有機溶媒中で行うことが反応性、安定性の観点から好ましい。有機溶媒としては、リン源、インジウム源等の安定性の点から非極性溶媒が挙げられ、反応性、安定性の点で脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド等の溶媒が好ましく挙げられる。脂肪族炭化水素としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカンが挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素としては、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等が挙げられる。トリアルキルホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリデシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリドデシルホスフィン等が挙げられる。トリアルキルホスフィンオキシドとしては、トリエチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリドデシルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0028】
溶媒は、使用前に脱水しておくことが、リン源及びインジウム源の分解及びそれによる不純物の生成を防止する観点から好ましい。当該溶媒中の水分量は、質量基準で20ppm以下であることが好ましい。また、溶媒は使用前に脱気し、酸素を除去しておくことも好ましい。脱気は反応器内を減圧状態にしたり、不活性雰囲気へ置換したりする等の任意の方法にて可能である。
【0029】
リン源及びインジウム源を混合した反応液におけるリン源、インジウム源の各濃度は、例えば反応液100gに対して、リン原子基準のリン源の濃度、及び、インジウム原子基準のインジウム源の濃度がそれぞれ0.1mmol以上10mmol以下の範囲であることが、反応性や安定性の点で好ましく、0.1mmol以上3mmol以上の範囲であることがより好ましい。
【0030】
リン源及びインジウム源を混合する方法としては、リン源及びインジウム源をそれぞれ有機溶媒に溶解させ、リン源を有機溶媒に溶解させた溶液と、インジウム源を有機溶媒に溶解させた溶液とを混合することが、InP量子ドット前駆体を生成しやすい点で好ましい。リン源を溶解させる溶媒と、インジウム源を溶解させる溶媒は、同じものを用いてもよく、異なっていてもよい。
【0031】
この場合、リン源を有機溶媒に溶解させた溶液におけるリン源のリン原子基準の濃度は20mmol/L以上2000mmol/L以下の範囲であることが、反応性や安定性の点で好ましく、80mmol/L以上750mmol以下の範囲であることがより好ましい。またインジウム源を有機溶媒に溶解させた溶液におけるインジウム原子基準の濃度は0.1mmol/L以上20mmol/L以下の範囲であることが、反応性や安定性の点で好ましく、0.2mmol/L以上10mmol/L以下の範囲であることがより好ましい。
【0032】
リン源及びインジウム源を含む反応液には、配位子となり得る添加剤を加えることが、得られるInP量子ドット前駆体及びInP系量子ドットの品質が改善する点で好ましい。本発明者らは、配位子となり得る添加剤がInに配位するか或いは反応場の極性を変化させることが、InP量子ドット前駆体及びInP系量子ドットの品質に影響するものと考えている。そのような添加剤としてはホスフィン誘導体、アミン誘導体、ホスホン酸等が挙げられる。
【0033】
前記ホスフィン誘導体としては、1級以上3級以下のアルキルホスフィンであることが好ましく、分子中のアルキル基が炭素原子数2以上18以下の直鎖状のものが好ましく挙げられる。分子中のアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。アルキル基が炭素原子数2以上18以下の直鎖状であるアルキルホスフィンとしては、具体的には、モノエチルホスフィン、モノブチルホスフィン、モノデシルホスフィン、モノヘキシルホスフィン、モノオクチルホスフィン、モノドデシルホスフィン、モノヘキサデシルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジデシルホスフィン、ジヘキシルホスフィン、ジオクチルホスフィン、ジドデシルホスフィン、ジヘキサデシルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリデシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリドデシルホスフィン、トリヘキサデシルホスフィンが挙げられる。中でも、得られるInP量子ドット前駆体及びInP系量子ドットの品質向上の点で、分子中のアルキル基の炭素原子数が4以上12以下のものが特に好ましく、トリアルキルホスフィンであるものが好ましく、トリオクチルホスフィンが最も好ましい。
【0034】
前記アミン誘導体としては、1級以上3級以下のアルキルアミンであることが好ましく、分子中のアルキル基が炭素原子数2以上18以下の直鎖状アルキルアミン、及び炭素原子数6以上12以下の芳香族アルキルアミンが好ましく挙げられる。分子中のアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。アルキル基が炭素原子数2以上18以下の直鎖状であるアルキルアミンとしては、具体的には、モノエチルアミン、モノブチルアミン、モノデシルアミン、モノヘキシルアミン、モノオクチルアミン、モノドデシルアミン、モノヘキサデシルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジデシルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジドデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリデシルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、トリヘキサデシルアミンが挙げられる。アルキル基が炭素原子数6以上12以下の芳香族アルキルアミンとしては、具体的には、アニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、モノベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ナフチルアミン、ジナフチルアミン、トリナフチルアミンが挙げられる。また、前記ホスホン酸としては、分子中のアルキル基が炭素原子数2以上18以下の直鎖状のアルキル基を有するモノアルキルホスホン酸であることが好ましい。
【0035】
リン源及びインジウム源を含む反応液における配位子となり得る添加剤の添加量は、1molのInに対し、0.2mol以上であることが、配位子となり得る添加剤を添加することによる、InP量子ドット前駆体及びInP系量子ドットの品質向上効果を高める点で好ましい。配位子となり得る添加剤の添加量は、1molのInに対し、20mol以下であることが、品質向上効果の点で好ましい。これらの点から、配位子となり得る添加剤の添加量は、1molのInに対し、0.5mol以上15mol以下であることがより好ましい。
【0036】
配位子となり得る添加剤の反応液への添加のタイミングは、配位子となり得る添加剤をインジウム源と混合させて混合液とし、この混合液をリン源と混合してもよいし、配位子となり得る添加剤をリン源と混合させて混合液とし、この混合液をインジウム源と混合してもよいし、配位子となり得る添加剤をリン源及びインジウム源の混合液と混合させてもよい。
【0037】
リン源を有機溶媒に溶解させた溶液と、インジウム源を有機溶媒に溶解させた溶液とは、混合前に後述する好ましい反応温度又はそれよりも低温又は高温に予備的に加熱してもよく、混合後に、後述する好ましい反応温度に加熱してもよい。予備的な加熱温度として、反応温度の±10℃以内であり且つ20℃以上の温度であることが反応性、安定性の観点から好ましく、反応温度の±5℃以内であり且つ30℃以上の温度であることがより好ましい。
【0038】
反応性、安定性の観点からリン源とインジウム源との反応温度は、20℃以上150℃以下が好ましく、40℃以上120℃以下がより好ましい。反応性、安定性の観点から前記反応温度における反応時間は0.5分以上180分以下が好ましく、1分以上80分以下がより好ましい。
以上の工程により、InP量子ドット前駆体を含む反応液が得られる。
【0039】
反応液中にInP量子ドット前駆体が生成していることは、例えば紫外線-可視光吸収スペクトル(UV-VISスペクトル)を測定することにより確認できる。In源及びP源を反応させた反応液において、InP量子ドット前駆体が形成されている場合、UV-VISスペクトルにおいて300nm以上460nm以下の範囲にピーク又はショルダーが観察される。ショルダーはピークほど明確に尖端形状を有していないが、明らかに変曲点を有するものをいう。ショルダーが観察される場合、300nm以上460nm以下、特に310nm以上420nm以下の範囲に一つ、又は二つ以上の変曲点を有することが好ましい。UV-VISスペクトルは、0℃以上40℃以下で測定されることが好ましい。サンプル液は、反応液をヘキサン等の溶媒で希釈して調整する。測定時におけるサンプル液中のIn量及びP量は、サンプル液100gに対して、リン原子及びインジウム原子でそれぞれ0.01mmol以上1mmol以下の範囲であることが好ましく、0.02mmol以上0.3mmol以下の範囲であることがより好ましい。反応液の溶媒としては、インジウム源及びリン源との反応に好適に使用できる溶媒として後述するものが挙げられる。後述するように、溶媒中のInP量子ドット前駆体を200℃以上350℃以下に加熱することでInP量子ドットに成長すると、通常、反応液のUV-VISスペクトルは400nm以上650nm以下の範囲にピークが観察されるが、加熱する前の反応液は400nm以上650nm以下の範囲にピークが観察されない。
【0040】
また、反応液中にInP量子ドット前駆体が生成していることは、UV-VISスペクトルに替えて、例えば反応液が黄緑色~黄色になっていることでも確認できる。この色の確認は目視によるものでよい。例えば、InPマジックサイズクラスターを含む反応液は黄色であり、In及びPからなり、マジックサイズクラスターよりも原子数が少ない前駆体を含む反応液は淡黄色であることが一般的である。
【0041】
(InP系量子ドットの製造方法)
InP系量子ドットは、少なくともIn及びPを含有し、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有する半導体ナノ粒子を指す。量子閉じ込め効果とは、物質の大きさがボーア半径程度となると、その中の電子が自由に運動できなくなり、このような状態においては電子のエネルギーが任意でなく特定の値しか取り得なくなることである。量子ドット(半導体ナノ粒子)の粒径は、一般的に数nm~数十nmの範囲にある。ただし上記量子ドットの説明に該当するもののうち、量子ドット前駆体に該当するものは本発明において、量子ドットの範疇に含めない。
【0042】
前記のInP量子ドット前駆体を含む反応液は、反応終了後の時点で、好ましくは20℃以上150℃以下、より好ましくは40℃以上120℃以下の温度であるが、この温度を維持したまま、或いは室温まで冷却したものを用いることができる。
【0043】
前記のInP量子ドット前駆体を含む反応液は、そのまま加熱するか、又は加熱した溶媒と混合することによりInP系量子ドットを得ることができる。前記のInP量子ドット前駆体を含む反応液をそのまま加熱する場合は、粒径制御の観点から好ましくは200℃以上350℃以下、更に好ましくは220℃以上330℃以下の温度で加熱することにより、InP系量子ドットを得ることができる。加熱の際の昇温速度は1℃/分以上50℃/分以下であることが時間効率及び粒径制御の点で好ましく、2℃/分以上40℃/分以下であることがより好ましい。また、粒径制御の観点から、当該温度における加熱時間は0.5分以上180分以下が好ましく、1分以上60分以下がより好ましい。
【0044】
前記のInP量子ドット前駆体を含む反応液を加熱した溶媒と混合する場合、いわゆるホットインジェクション法によりInP系量子ドットを得る場合は、粒径制御の観点から好ましくは200℃以上350℃以下、更に好ましくは220℃以上330℃以下の温度に加熱しておいた有機溶媒中に、InP量子ドット前駆体を含む反応液を急速に加えることにより、InP系量子ドットを得ることができる。前記有機溶媒としては、前記したリン源とインジウム源との反応で使用した有機溶媒と同じものを使用することができる。InP量子ドット前駆体を含む反応液と有機溶媒との混合は、200℃以上350℃以下、更には220℃以上330℃以下の温度に維持したまま、10分以下、更には0.1分以上8分以下で保持することが、粒径制御の観点から好ましい。
【0045】
溶媒中のInP量子ドット前駆体の安定性は熱力学的であり、InP量子ドット前駆体は加熱に反応する特性を有する。例えば、溶媒中のInP量子ドット前駆体は、好ましくは200℃以上350℃以下、更に好ましくは220℃以上330℃以下に加熱した場合、InP量子ドットに成長しうる。このことは、加熱後の反応液をUV-VISスペクトルの測定に供すると、長波長側へピークシフトが観察されることから確認できる。例えばIn及びP以外に量子ドットを構成する他の元素を添加せずに溶媒中のInP量子ドット前駆体を好ましくは200℃以上350℃以下、更に好ましくは220℃以上330℃以下に加熱した場合、UV-VISスペクトルにおいて、400nm以上600nm以下の範囲にピークが観察される。InP量子ドットにおけるInPとはIn及びPを含有することを意味し、In及びPのモル比が1:1であることまでを要しない。InP量子ドット前駆体を好ましくは200℃以上350℃以下、更に好ましくは220℃以上330℃以下に加熱して得られたInP量子ドットを含む液のUV-VISスペクトルは、目的とする色を得るためのInP量子ドット前駆体にもよるが、300nm以上800nm以下の範囲のうち、最も低エネルギー側の吸収ピークが400nm以上600nm以下の範囲に観察されることが好ましい。
【0046】
また、反応液中にInP量子ドットが生成していることは、例えば反応液が黄色~赤色になっていることでも確認できる。この色の確認は目視によるものでよい。
【0047】
上記のInP量子ドット前駆体を加熱した後の反応液のUV-VISスペクトルや反応液の色の記載は、典型的には、In及びP以外に量子ドットを構成する他の元素を添加せずに加熱した場合を指す。しかしながら、上述したように、本発明はInP量子ドット前駆体にそのような化合物を添加して加熱する場合を何ら排除するものではない。
本発明においては、In及びP以外の他の構成元素を含まない量子ドット、並びにIn及びP以外の他の構成元素を含む量子ドットを総称して「InP系量子ドット」という。
【0048】
本発明の製造方法により製造されるInP系量子ドットは、InとPに加えて、リンとインジウム以外の元素Mを有する複合化合物からなる量子ドット(InとPとMの複合量子ドットともいう)であってもよい。元素Mとしては、Be、Mg、Ca、Mn、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、N、As、Sb、Biの群から選ばれる少なくとも一種であることが、量子収率向上の観点から好ましい。元素Mを含むInP系量子ドットの代表例としては、例えば、InGaP、InZnP、InAlP、InGaAlP、InNP、InAsP、InPSb、InPBi等が挙げられる。元素Mを含むInP系量子ドットを得るためには、InP量子ドット前駆体を含む液を加熱する際に元素Mを含む化合物を含む液を反応液へ添加してもよいし、元素Mを含む化合物を含む液を加熱する際にInP量子ドット前駆体を含む液を反応液へ添加してもよい。元素Mを含む化合物とは、元素MがBe、Mg、Ca、Mn、Cu、Zn、Cd、B、Al、Gaにおいては、元素Mの塩化物、臭化物、ヨウ化物の形態、炭素原子数12以上18以下の高級カルボン酸塩の形態であり、高級カルボン酸塩の形態である場合、反応に用いるカルボン酸インジウムのカルボン酸と同じでも良いし、異なっていても良い。元素MがN、As、Sb、Biにおいては、元素Mに3つのシリル基又はアミノ基が結合した形態の化合物を好適に用いることができる。
【0049】
本発明におけるInP系量子ドットは、量子収率を高める目的で、表面処理剤等で表面処理されていてもよい。InP系量子ドットの表面を表面処理することにより、InP系量子ドット表面の欠陥等が保護され、量子収率の向上が図れる。また、この表面処理に連続して、後述するシェル形成を行うことで、得られる量子ドットの発光スペクトルのFWHM及び対称性の向上を図ることもできる。好適な表面処理剤としては、金属カルボン酸塩、金属カルバミン酸塩、金属ハロゲン化物、金属チオカルボン酸塩、金属アセチルアセトナート塩及びこれらの水和物等の金属含有化合物、ハロゲン化アルカノイル化合物、第4級アンモニウム化合物のハロゲン化物、第4級ホスホニウム化合物のハロゲン化物、ハロゲン化アリール化合物及びハロゲン化第3級炭化水素化合物等のハロゲン含有化合物、カルボン酸、カルバミン酸、チオカルボン酸、ホスホン酸及びスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。これらのうち、より量子収率の向上が図れる観点から、金属カルボン酸塩、金属カルバミン酸塩又は金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0050】
前記金属カルボン酸塩は、無置換又はハロゲン原子等に置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状で飽和又は不飽和結合を含む炭素原子数1以上24以下のアルキル基を有していてもよく、分子中に複数のカルボン酸を有していてもよい。また、金属カルボン酸塩の金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Ce、Sm等を挙げることができる。これらのうち、金属カルボン酸塩の金属は、InP系量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、Zn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属カルボン酸塩としては、酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛及び安息香酸亜鉛等が挙げられる。
【0051】
前記金属カルバミン酸塩の金属としては、InP系量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、前記した金属のうちZn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属カルバミン酸塩としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛及びN-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
【0052】
前記金属ハロゲン化物の金属としては、InP系量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、前記した金属のうちZn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属ハロゲン化物としては、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
【0053】
InP系量子ドットを表面処理する方法としては、例えば、上記したInP系量子ドットを含む反応液に表面処理剤を加えることで行うことができる。InP系量子ドットを含む反応液に表面処理剤を加えるときの温度は、粒径制御や量子収率向上の観点から、好ましくは0℃以上350℃以下、更に好ましくは20℃以上250℃以下であり、処理時間は、好ましくは1分以上600分以下、更に好ましくは5分以上240分以下である。また、表面処理剤の添加量は、表面処理剤の種類にもよるが、InP系量子ドットを含む反応液に対して、0.001g/L以上1000g/L以下が好ましく、0.1g/L以上500g/L以下がより好ましい。
【0054】
前記表面処理剤の添加方法としては、反応液に表面処理剤を直接添加する方法、表面処理剤を溶媒に溶解又は分散した状態で反応液に添加する方法が挙げられる。表面処理剤を溶媒に溶解又は分散した状態で反応液に添加する方法で添加する場合の溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、フェノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1-デセン、1-オクタデセン、トリエチルアミン、オレイルアミン、トリn-オクチルアミン、トリn-オクチルホスフィン及び水等を使用することができる。
【0055】
(コアシェル構造の量子ドットの製造)
本発明の製造方法により得られる量子ドットは、前記InP系量子ドットをコアとし、当該コアを被覆化合物で覆ったコアシェル構造を有するものである。コアの表面に、コアに比して広いバンドギャップをもつ第二の無機材料(シェル層)を成長させることにより、コア表面の欠陥等が保護され、電荷の再結合による無幅射失活が抑制され、量子収率や安定性を向上させることができる。好適な被覆化合物としては、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTe、ZnSeTe、ZnTeS、ZnO、ZnOS、ZnSeO、ZnTeO、GaP、GaNが挙げられる。本発明においては、被覆化合物が少なくとも亜鉛源との反応により得られるものであることが好ましい。
【0056】
InP系量子ドットをコアとし、これを被覆化合物で覆ったコアシェル構造の量子ドットを製造する場合において、発光スペクトルのFWHM及び対称性を優れたものにする観点から、前記したコアとなるInP系量子ドットの表面処理剤とシェル形成を、連続して行うことが好ましい。この表面処理で使用する表面処理剤としては、前記したInP系量子ドットの表面処理剤と同じものを使用することができる。なお、表面処理とシェル形成を連続して行うとは、コアとなるInP系量子ドットと、表面処理剤及び被覆化合物原料を反応液に同時に存在させることで、コアとなるInP系量子ドットの表面処理を所定の温度で行った後、続けて反応液を加熱することにより被覆化合物によるシェル形成を行うものである。
【0057】
InP系量子ドットをコアとし、これを被覆化合物で被覆するコアシェル構造の量子ドットを製造する場合において、被覆の形成方法としては、表面処理を施したInP系量子ドットを含む反応液と、被覆化合物原料とを混合するか、又はInP系量子ドットを含む反応液と被覆化合物原料と表面処理剤とを混合し、200℃以上350℃以下の温度にて反応させる方法が挙げられる。或いは、被覆化合物原料の一部(例えば、Zn等の金属源等)を同様の温度に加熱して、これを他の被覆化合物原料の添加前にInP系量子ドットを含む反応液に添加混合した後に20℃以上350℃以下、更には20℃以上340℃以下に加温しておき、残りの被覆化合物原料を添加して反応させてもよい。なお、Zn等の金属源を、InP系量子ドットを含む反応液と混合するタイミングは、他の被覆化合物原料の添加前に限定されず、添加後であってもよい。
【0058】
被覆化合物原料としては、Zn等の金属源として、そのハロゲン化物又は有機カルボン酸塩を用いることが好ましい。金属ハロゲン化物としては、例えば、亜鉛源として、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。金属の有機カルボン酸塩としては、特に炭素原子数12以上18以下の長鎖脂肪酸塩を用いることが粒径制御や粒径分布制御、量子収率向上の点で好ましい。
【0059】
また、硫黄源としては、ドデカンチオール等の炭素原子数8以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状の長鎖アルカンチオールやトリオクチルホスフィンスルフィド等の炭素原子数4以上12以下のトリアルキルホスフィンスルフィド化合物が好ましく挙げられる。セレン源としてはトリオクチルホスフィンセレニド等の炭素原子数4以上12以下のトリアルキルホスフィンセレニド化合物が好ましく挙げられる。テルル源としてはトリオクチルホスフィンテルリド等の炭素原子数4以上12以下のトリアルキルホスフィンテルリド化合物が好ましく挙げられる。
【0060】
被覆化合物原料の使用量は、例えば、被覆化合物として亜鉛等の金属を用いる場合、InP系量子ドットを含む反応液中のインジウム1molに対して0.5mol以上100mol以下が好ましく、4mol以上50mol以下がより好ましい。硫黄源やセレン源としては、上記の金属量に対応する量を使用することが好ましい。
【0061】
InP系量子ドットをコアとし、これを被覆化合物で被覆してシェル層を有するコアシェル型の量子ドットとした場合、量子収率を高める目的で、表面処理剤等でコアシェル型の量子ドットの表面を処理してもよい。コアシェル型の量子ドットの表面を表面処理することにより、シェル層表面の欠陥等が保護され、量子収率の向上が図れる。好適な表面処理剤としては、金属カルボン酸塩、金属カルバミン酸塩、金属チオカルボン酸塩、金属ハロゲン化物、金属アセチルアセトナート塩及びこれらの水和物等の金属含有化合物、ハロゲン化アルカノイル化合物、第4級アンモニウム化合物のハロゲン化物、第4級ホスホニウム化合物のハロゲン化物、ハロゲン化アリール化合物及びハロゲン化第3級炭化水素化合物等のハロゲン含有化合物等が挙げられる。これらのうち、より量子収率の向上が図れる観点から、金属カルボン酸塩、金属カルバミン酸塩又は金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0062】
前記金属カルボン酸塩は、無置換又はハロゲン原子等に置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状で飽和又は不飽和結合を含む炭素原子数1以上24以下のアルキル基を有していてもよく、分子中に複数のカルボン酸を有していてもよい。また、金属カルボン酸塩の金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Ce、Sm等を挙げることができる。これらのうち、金属カルボン酸塩の金属は、コアシェル型の量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、Zn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属カルボン酸塩としては、酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛及び安息香酸亜鉛等が挙げられる。
【0063】
前記金属カルバミン酸塩の金属としては、コアシェル型の量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、前記した金属のうちZn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属カルバミン酸塩としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛及びN-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
【0064】
前記金属ハロゲン化物の金属としては、InP系量子ドット表面の欠陥をより保護できる観点から、前記した金属のうちZn、Cd、Al及びGaであることが好ましく、Znであることがより好ましい。このような金属ハロゲン化物としては、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
【0065】
シェル層を表面処理する方法としては、例えば、コアシェル型の量子ドットを含む反応液に表面処理剤を加えることで行うことができる。コアシェル型の量子ドットを含む反応液に表面処理剤を加えるときの温度は、粒径制御や量子収率向上の観点から、好ましくは0℃以上350℃以下、更に好ましくは20℃以上300℃以下であり、処理時間は、好ましくは1分以上600分以下、更に好ましくは5分以上240分以下である。また、表面処理剤の添加量は、表面処理剤の種類にもよるが、コアシェル型の量子ドットを含む反応液に対して、0.01g/L以上1000g/L以下が好ましく、0.1g/L以上100g/L以下がより好ましい。
【0066】
前記表面処理剤の添加方法としては、反応液に表面処理剤を直接添加する方法、表面処理剤を溶媒に溶解又は分散した状態で反応液に添加する方法が挙げられる。表面処理剤を溶媒に溶解又は分散した状態で反応液に添加する方法で添加する場合の溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、フェノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1-デセン、1-オクタデセン、トリエチルアミン、オレイルアミン、トリn-オクチルアミン、トリn-オクチルホスフィン及び水等を使用することができる。
以上の工程により、量子ドットを含む分散液が得られる。
【0067】
<洗浄工程>
本発明における洗浄工程は、前記反応工程で得られた量子ドットを含む分散液、或いは市販されている量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を溶解できる有機溶媒を用いて量子ドットを洗浄する工程である。前記分散液には、量子ドットを構成するPやIn、所望により加えられる元素Mといった原料化合物の未反応物や、量子ドット表面の欠陥を保護するために加えられる配位子等の添加剤の余剰物、また、量子ドット合成時の反応により生じる副生物などの不純物が含まれている。これらの不純物は、量子ドットの光安定性に悪影響を及ぼすことの他、該量子ドットを材料として装置を作製した場合に、沈殿物発生、ガス発生、粘度上昇、意図しない化学反応、均一な量子ドット薄膜の形成阻害等の不具合が生じるため、これらの不純物を溶解して除去することのできる有機溶媒と分散液とを混合し、量子ドットを分離することで、前記反応工程で得られた量子ドットを精製する必要がある。
【0068】
本発明の洗浄工程で使用する有機溶媒としては、不純物を溶解しつつ、量子ドットが分解せずに分離することのできるものであれば特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの含窒素系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどの含ハロゲン元素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、或いはこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、容易に不純物を溶解しつつ、量子ドットが分離できる観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトン、2-プロパノール、アセトニトリルであることが特に好ましい。
【0069】
洗浄工程における有機溶媒と分散液との混合方法としては、量子ドットを含む分散液に有機溶媒を添加する方法、有機溶媒に量子ドットを含む分散液を添加する方法、量子ドットを含む分散液と有機溶媒を同量ずつ同時に反応容器中に添加する方法が挙げられる。
【0070】
有機溶媒の混合量は、使用する有機溶媒の種類や分散液中に含まれる不純物及び量子ドットの量にもよるが、分散液1質量部に対して0.1質量部以上100質量部以下、特に0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0071】
量子ドットを含む分散液と有機溶媒とを混合した後、洗浄された量子ドットと不純物を含んだ有機溶媒とを分離する。この分離の方法は、特に制限されるものではなく、遠心分離、デカンテーション、吸引ろ過等の一般的な方法により行うことができる。
以上の工程により、洗浄して不純物を取り除いた量子ドットが得られる。
【0072】
<表面保護工程>
本発明における表面保護工程は、前記洗浄工程で得られた洗浄済みの量子ドット表面を、配位子で保護する工程である。洗浄した量子ドットは、その表面を修飾している配位子が前記洗浄工程により脱離してしまうため、量子ドット表面に欠陥が生じてしまう。この脱離してしまった配位子を補充することにより、量子ドットの品質特性、特に光安定性に係る特性の低下を抑制するものである。
【0073】
本発明の表面保護工程で使用する配位子としては、下記一般式(1)で表されるリン化合物からなる配位子を用いることが好ましい。
【0074】
【化4】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
1、R
2及びR
3は同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。)
【0075】
前記アルキル基としては、炭素原子数が1以上12以下、特に1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、2-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、n-オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、tert-オクチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、n-デシル基、2-デシル基、3-デシル基、4-デシル基、5-デシル基、tert-デシル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3-ジメチルオクチル基、2,4-ジメチルオクチル基、2,5-ジメチルオクチル基、2,6-ジメチルオクチル基、2,7-ジメチルオクチル基等が挙げられる。
【0076】
前記シクロアルキル基としては、炭素原子数が3以上16以下のシクロアルキル基であることが好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。シクロアルキル基には多環アルキル基も含まれる。その例としては、メンチル基、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0077】
前記アリール基としては、炭素原子数が6以上16以下のフェニル基であることが好ましい。具体的には、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0078】
前記ヘテロアリール基としては、五員又は六員の単環の芳香族複素環基や多環の芳香族複素環基が好ましく挙げられる。例えばヘテロアリール基として、1以上3以下の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる芳香族複素環基であることが好ましい。具体的には、ピリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フルフリル基、ピラニル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0079】
前記アラルキル基としては、炭素原子数7以上12以下のアラルキル基であることが好ましい。具体的には、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、2-フェニルプロピル基、3-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、2-フェニルブチル基、3-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、1-フェニルペンチル基、2-フェニルペンチル基、3-フェニルペンチル基、4-フェニルペンチル基、5-フェニルペンチル基、1-フェニルヘキシル基、2-フェニルヘキシル基、3-フェニルヘキシル基、4-フェニルヘキシル基、5-フェニルヘキシル基、6-フェニルヘキシル基等が挙げられる。
【0080】
前記ヘテロアラルキル基としては、炭素原子数6以上16以下のヘテロアラルキル基であることが好ましい。具体的には、2-ピリジルメチル基、4-ピリジルメチル基、イミダゾリルメチル基、チアゾリルエチル基等が挙げられる。
【0081】
前記アルコキシ基としては、上述したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基及びヘテロアラルキル基が酸素を介して結合する基であることが好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フェニルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0082】
前記チオアルコキシ基としては、上述したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基及びヘテロアラルキル基が硫黄を介して結合する基であることが好ましい。例えば、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオブトキシ基、チオペンチルオキシ基、チオヘキシルオキシ基、チオヘプチルオキシ基、チオオクチルオキシ基、チオノニルオキシ基、チオデシルオキシ基、チオドデシルオキシ基、チオフェニルオキシ基、チオベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0083】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基及びチオアルコキシ基は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0084】
一般式(1)中のR1、R2及びR3は、それぞれが同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。本発明においては、表面保護の効果が得られ易く、取り扱いが簡便である観点から、R1、R2及びR3は同一の基であることが好ましい。
【0085】
また、本発明の表面保護工程で使用する配位子としては、下記一般式(2)で表されるリン化合物からなる配位子を用いることが好ましい。
【0086】
【化5】
(式中、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基又はチオアルコキシ基を示す。R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。R
8が複数存在する場合、それらは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。Aは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基又はチオアルコキシレン基を示す。nは0~3の整数を示す。)
【0087】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アルコキシ基及びチオアルコキシ基は、前記一般式(1)におけるこれらの基と同様である。
【0088】
前記アルキレン基としては、炭素原子数が1以上12以下、特に1以上10以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、iso-プロピレン基、n-ブチレン基、2-ブチレン基、iso-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、2-ペンチレン基、tert-ペンチレン基、2-メチルブチレン基、3-メチルブチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、n-ヘキシレン基、2-ヘキシレン基、3-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、2-メチルペンチレン基、3-メチルペンチレン基、4-メチルペンチレン基、n-オクチレン基、2-オクチレン基、3-オクチレン基、4-オクチレン基、tert-オクチレン基、2-メチルヘプチレン基、3-メチルヘプチレン基、4-メチルヘプチレン基、2,2-ジメチルヘキシレン基、2,3-ジメチルヘキシレン基、2,4-ジメチルヘキシレン基、2,5-ジメチルヘキシレン基、n-デシレン基、2-デシレン基、3-デシレン基、4-デシレン基、5-デシレン基、tert-デシレン基、2-メチルノニレン基、3-メチルノニレン基、4-メチルノニレン基、5-メチルノニレン基、2,2-ジメチルオクチレン基、2,3-ジメチルオクチレン基、2,4-ジメチルオクチレン基、2,5-ジメチルオクチレン基、2,6-ジメチルオクチレン基、2,7-ジメチルオクチレン基等が挙げられる。
【0089】
前記シクロアルキレン基としては、炭素原子数が3以上16以下のシクロアルキレン基であることが好ましい。具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基には多環アルキレン基も含まれる。その例としては、メンチレン基、ボルニレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。
【0090】
前記アリーレン基としては、炭素原子数が6以上16以下のフェニレン基であることが好ましい。具体的には、フェニレン基、2-メチルフェニレン基、3-メチルフェニレン基、4-メチルフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0091】
前記アルコキシレン基としては、上述したアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基が酸素を介して結合する基であることが好ましい。例えば、メトキシレン基、エトキシレン基、プロポキシレン基、ブトキシレン基、ペンチルオキシレン基、ヘキシルオキシレン基、ヘプチルオキシレン基、オクチルオキシレン基、ノニルオキシレン基、デシルオキシレン基、ドデシルオキシレン基、フェニルオキシレン基、ベンジルオキシレン基等が挙げられる。
【0092】
前記チオアルコキシレン基としては、上述したアルキルレン基、シクロアルキルレン基及びアリーレン基が硫黄を介して結合する基であることが好ましい。例えば、チオメトキシレン基、チオエトキシレン基、チオプロポキシレン基、チオブトキシレン基、チオペンチルオキシレン基、チオヘキシルオキシレン基、チオヘプチルオキシレン基、チオオクチルオキシレン基、チオノニルオキシレン基、チオデシルオキシレン基、チオドデシルオキシレン基、チオフェニルオキシレン基、チオベンジルオキシレン基等が挙げられる。
【0093】
前記アルキルレン基、シクロアルキルレン基、アリーレン基、アルコキシレン基及びチオアルコキシレン基は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0094】
一般式(1)中のR1及びR2は、それぞれが同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。本発明においては、表面保護の効果が得られ易く、取り扱いが簡便である観点から、R1及びR2は同一の基であることが好ましい。
【0095】
本発明の表面保護工程で使用する配位子としては、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表されるリン化合物からなる配位子のうち、表面保護の効果に優れ、取り扱いが簡便である観点から、前記一般式(1)で表され、R1、R2及びR3が同一のアルキル基又はアルコキシ基である配位子、又は、前記一般式(2)で表され、R4、R5、R6、及びR7が同一のアルキル基又はアルコキシ基であり、Aがアルキレン基であり、nが0である配位子がより好ましい。
R1、R2及びR3が同一のアルキル基である前記一般式(1)で表される配位子としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリデシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリドデシルホスフィン等が挙げられる。R1、R2及びR3が同一のアルコキシ基である前記一般式(1)で表される配位子としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト等が挙げられる。
R4、R5、R6及びR7が同一のアルキル基であり、Aがアルキレン基であり、nが0である前記一般式(2)で表される配位子としては、例えば、トリメチレンビス(ジエチルホスフィン)、トリメチレンビス(ジブチルホスフィン)、トリメチレンビス(ジデシルホスフィン)、トリメチレンビス(ジヘキシルホスフィン)、トリメチレンビス(ジオクチルホスフィン)、トリメチレンビス(ジドデシルホスフィン)等が挙げられる。
R4、R5、R6及びR7が同一のアルコキシ基であり、Aがアルキレン基であり、nが0である前記一般式(2)で表される配位子としては、例えば、トリメチレンビス(ジエチルホスファイト)、トリメチレンビス(ジブチルホスファイト)、トリメチレンビス(ジデシルホスファイト)、トリメチレンビス(ジヘキシルホスファイト)、トリメチレンビス(ジオクチルホスファイト)、トリメチレンビス(ジドデシルホスファイト)等が挙げられる。
【0096】
前記洗浄工程においては、量子ドットを含む分散液に含まれる不純物を洗浄することにより、原料化合物の未反応物、配位子等の添加剤の余剰物、量子ドット合成時の副生物が取り除かれ、装置作製時の不具合等への影響を抑えることができるが、この洗浄により、量子ドット表面に配位している配位子のうち、特にリン系の配位子の脱離が顕著であることが本発明者らの検討により明らかとなった。そして、リン系の配位子のうち、量子ドット表面に配位する元素がリン自体である配位子の脱離が、光安定性に影響を及ぼしていることを本発明者らは知見した。この配位する元素がリン自体である配位子は、S、Se、Te等のカルコゲン元素に配位していると考えられ、本発明の表面保護工程においては、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表されるリン化合物がカルコゲン元素に配位して量子ドット表面を保護することにより、量子ドットの酸化が抑えられるため、優れた光安定性が得られるものであると本発明者らは考えている。
【0097】
表面保護工程で量子ドットの表面を保護する方法としては、前記洗浄工程で得られた量子ドットを溶媒に分散させた分散液に配位子を加えることで行うことができる。量子ドットを含む分散液に配位子を加えるときの温度は、量子ドットの表面保護を首尾よく進める観点から、好ましくは0℃以上350℃以下、更に好ましくは20℃以上300℃以下であり、処理時間は、好ましくは1分以上600分以下、更に好ましくは5分以上240分以下である。また、配位子の添加量は、配位子の種類にもよるが、量子ドットを含む反応液に対して、0.01g/L以上1000g/L以下が好ましく、0.1g/L以上100g/L以下がより好ましい。
【0098】
洗浄した量子ドットを分散させる溶媒としては、脂肪族炭化水素からなる溶媒が好ましく、脂肪族炭化水素としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン等の飽和炭化水素;1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等の不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。溶媒として用いる脂肪族炭化水素は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
前記配位子の添加方法としては、量子ドットを含む分散液に配位子を直接添加する方法、配位子を溶媒に溶解又は分散した状態で前記分散液に添加する方法が挙げられる。配位子を溶媒に溶解又は分散した状態で反応液に添加する方法で添加する場合の溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、フェノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸フェニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1-デセン、1-オクタデセン、トリエチルアミン、オレイルアミン、トリn-オクチルアミン、トリn-オクチルホスフィン及び水等を使用することができる。
【0100】
以上の方法で得られた量子ドットは、光安定性に優れた高品質なものであり、単電子トランジスタ、セキュリティインク、量子テレポーテーション、レーザー、太陽電池、量子コンピュータ、バイオマーカー、発光ダイオード、ディスプレイ用バックライト、カラーフィルター等に好適に用いることができる。
【実施例0101】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、例中の特性は以下の方法により測定した。
(1)極大蛍光波長
絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、Quantaurus-QY)にて励起波長450nm、測定波長200~1100nmの測定条件で、得られたオクタン分散液を測定した。
(2)光安定性試験
各実施例及び各比較例で得られた量子ドット分散液を、450nmの吸光度が0.3となるようにオクタンで希釈して希釈液を得た後、この希釈液3.0gを6mlガラスバイアル瓶に封入して光安定性試験の試料とした。
次いで、青色LED(Intelligent LED Solutions製 ILH-ON01-DEBL-SC211-WIR200)から発せられる光をレンズによってエネルギー密度150mW/cm2の平行光とした光を、この試料の底面方向から連続照射し、そのときの蛍光強度の変化をフォトダイオード(Thorlabs社製Siフォトダイオード SM05PD1A)で検出することで光安定性の評価を行った。
【0102】
[実施例1]
<反応工程>
ミリスチン酸インジウム1.275gを、1-オクタデセン1.578gに加えて、減圧下、撹拌しながら120℃に加熱して1.5時間脱気した。脱気後、窒素ガスにより大気圧に戻して60℃まで冷却し、ミリスチン酸インジウムの1-オクタデセン溶液を得た。このミリスチン酸インジウムの1-オクタデセン溶液を窒素雰囲気下、60℃の状態で、10質量%のトリス(トリメチルシリル)ホスフィンを含有したトリオクチルホスフィン2.505gを加え、20分間保持した後、20℃まで自然冷却した。これにより、黄色のInP量子ドット前駆体を含む溶液を得た。
これとは別に、1-オクタデセン31.56gを減圧下、撹拌しながら120℃に加熱して1.5時間脱気した後、窒素ガスにより大気圧に戻し、300℃に昇温した状態で、前記InP量子ドット前駆体を含む溶液5.4gを加えた後、270℃とし、2分間保持した。これにより、褐色のInP量子ドットを含む溶液を得た。
次いで、オレイン酸亜鉛7.54g、塩化亜鉛4.08g、トリオクチルホスフィンセレニド4.48g、トリオクチルホスフィン13.28g、オレイルアミン32.52g及びジオクチルアミン31.96gを200mL反応容器で混合し、減圧下、撹拌しながら120℃に加熱して30分間脱気した。脱気後、窒素ガスにより大気圧に戻して窒素雰囲気下で前記InP量子ドットを含む溶液37gを加え、230℃まで昇温して30分間保持した後、更に300℃に昇温して60分間保持することにより、コアにInP、シェルにZnSeを有するInP/ZnSeコアシェル型量子ドットのオレイルアミン/ジオクチルアミン分散液を得た。
更に、得られたオレイルアミン/ジオクチルアミン分散液を240℃に冷却後、ドデカンチオール16.92gを注入し、90分間保持することにより、コアにInP、シェルにZnSe及びZnSが積層されたInP/ZnSe/ZnSマルチシェル型量子ドットのオレイルアミン/ジオクチルアミン分散液を得た。
【0103】
<洗浄工程>
得られた分散液を室温まで冷却後、アセトン600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットを、トルエン34.64gに懸濁してInP/ZnSe/ZnS量子ドットのトルエン分散液を得た。この分散液に更にアセトン600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットをオクタン28gに懸濁して、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
【0104】
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、トリオクチルホスフィンを0.035g入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのトリオクチルホスフィン混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長は578nmだった。また、得られた分散液の光安定性試験の測定結果を
図1に示す。また、24時間以上の長時間にわたる光安定性試験の測定結果を
図2に示す。
【0105】
[実施例2]
<反応工程>
実施例1と同じ操作を行い、InP/ZnSe/ZnSマルチシェル型量子ドットのオレイルアミン/ジオクチルアミン分散液を得た。
【0106】
<洗浄工程>
得られた分散液を室温まで冷却後、エタノール600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットを、トルエン34.64gに懸濁してInP/ZnSe/ZnS量子ドットのトルエン分散液を得た。この分散液に更にエタノール600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットをオクタン28gに懸濁して、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
【0107】
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、表1に示す種類及び量の配位子を入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットの配位子混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長の測定結果を表1に、光安定性試験の測定結果を
図3に示す。
【0108】
[実施例3]
<反応工程>
実施例1と同じ操作を行い、InP/ZnSe/ZnSマルチシェル型量子ドットのオレイルアミン/ジオクチルアミン分散液を得た。
【0109】
<洗浄工程>
得られた分散液を室温まで冷却後、2-プロパノール600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットを、トルエン34.64gに懸濁してInP/ZnSe/ZnS量子ドットのトルエン分散液を得た。この分散液に更に2-プロパノール600gを加えて撹拌し、遠心分離によりInP/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿物として回収した。回収したInP/ZnSe/ZnS量子ドットをオクタン28gに懸濁して、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
【0110】
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、表1に示す種類及び量の配位子を入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットの配位子混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長の測定結果を表1に、光安定性試験の測定結果を
図4に示す。
【0111】
[実施例4]
実施例1において、洗浄工程まで同じ操作を行い、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、表1に示す種類及び量の配位子を入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットの配位子混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長の測定結果を表1に、光安定性試験の測定結果を
図5に示す。
【0112】
[実施例5]
実施例1において、洗浄工程まで同じ操作を行い、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、表1に示す種類及び量の配位子を入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットの配位子混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長の測定結果を表1に、光安定性試験の測定結果を
図6に示す。
【0113】
[比較例1]
実施例1において、洗浄工程まで同じ操作を行い、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長は578nmであった。また、得られた分散液の光安定性試験の測定結果を
図7に示す。
【0114】
[比較例2~4]
実施例1において、洗浄工程まで同じ操作を行い、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットのオクタン分散液を得た。
<表面保護工程>
得られたオクタン分散液に対して、表1に示す種類及び量の配位子を入れ、精製InP/ZnSe/ZnS量子ドットの配位子混合オクタン分散液を得た。得られた分散液の極大蛍光波長の測定結果を表1に、光安定性試験の測定結果を
図8~10に示す。
【0115】
【0116】
図1~10に示した結果から、表1に示した配位子を使用した量子ドットの分散液において、各実施例では発光強度の低下が認められず、光安定性に優れていることが判る。一方で、各比較例においては発光強度の低下が認められていることが判る。