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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143268
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】車両の電池制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230928BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230928BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230928BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230928BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230928BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230928BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J7/00 H
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H01M10/48 P
H01M10/44 P
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050554
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 康正
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和宏
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CC02
5G503CC07
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA02
5G503EA05
5G503FA06
5G503FA19
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB09
5H125BC13
5H125BC29
5H125EE23
5H125EE27
5H125EE29
(57)【要約】
【課題】電池が劣化する速度を緩和する。
【解決手段】車両が有する電池の充放電を制御する、車両の電池制御装置であって、電池に対して直流電力を供給する充電装置から、第1の電圧値の出力電圧、または、第1の電圧値よりも低い電圧値である第2の電圧値の出力電圧を出力させ、電池における電池容量を取得し、取得した電池容量と電池における目標容量値とを比較して、第1の電圧値と、第2の電圧値との出力比率を変更する。目標容量値は、上限値と下限値とを有する。車両の電池制御装置は、取得した電池容量が、上限値よりも小さく、下限値よりも大きい場合に、第1の電圧値と第2の電圧値とが交互に切り替わる出力電圧を出力させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が有する電池の充放電を制御する、車両の電池制御装置であって、
前記電池に対して直流電力を供給する充電装置から、第1の電圧値の出力電圧、または、前記第1の電圧値よりも低い電圧値である第2の電圧値の前記出力電圧を出力させ、
前記電池における電池容量を取得し、取得した前記電池容量と前記電池における目標容量値とを比較して、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値との出力比率を変更する、
車両の電池制御装置。
【請求項2】
前記目標容量値は、上限値と下限値とを有し、
取得した前記電池容量が、前記上限値よりも小さく、前記下限値よりも大きい場合に、前記第1の電圧値と前記第2の電圧値とが交互に切り替わる前記出力電圧を出力させる
請求項1に記載の車両の電池制御装置。
【請求項3】
前記電池の作動に関する情報に応じて前記電池の劣化を検知し、前記電池の劣化を検知した場合、前記下限値を再設定する、
請求項2に記載の車両の電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、例えば十数V程度の電圧を発生する2次電池である補機用バッテリを備える。補機用バッテリは、鉛蓄電池である。補機用バッテリは、バッテリ容量が目標容量値となるように、モータ駆動用バッテリからDC-DCコンバータにより充電がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-162375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、ECU(Electronic Control Unit)は、補機用バッテリのバッテリ容量を目標容量値に一致させるために、電流センサにより検出された電流量に基づき補機用バッテリのバッテリ容量を推定し、推定したバッテリ容量に基づきDC-DCコンバータから出力させる出力電圧を増減させていた(特許文献1)。しかし、経年劣化等により電流センサの検出値に誤差が生じた場合、推定したバッテリ容量が、実際のバッテリ容量から乖離してしまう。例えば鉛蓄電池等は、放電深度が深くなるほど、劣化が早く進む。このため、電流センサの検出値に誤差が生じることにより、推定したバッテリ容量より実際のバッテリ容量が少ない場合、放電深度が深くなり、バッテリの劣化が予想よりも早く進んでしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電池が劣化する速度を緩和することができる車両の電池制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両の電池制御装置は、車両が有する電池の充放電を制御する、車両の電池制御装置であって、前記電池に対して直流電力を供給する充電装置から、第1の電圧値の出力電圧、または、前記第1の電圧値よりも低い電圧値である第2の電圧値の前記出力電圧を出力させ、前記電池における電池容量を取得し、取得した前記電池容量と前記電池における目標容量値とを比較して、前記第1の電圧値と、前記第2の電圧値との出力比率を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池が劣化する速度を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両におけるバッテリに関する部分の構成を示す図である。
図2図2は、DC-DCコンバータから発生させる電圧の波形の一例を示す図である。
図3図3は、バッテリ容量に対する出力比率の関係の一例を示す図である。
図4図4は、コントローラの処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、上限比率MAPの一例を示す図である。
図6図6は、下限比率MAPの一例を示す図である。
図7図7は、バッテリ容量の変化および出力電圧の変化の一例を示す波形図である。
図8図8は、コントローラによる下限値の再設定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る車両10におけるバッテリに関する部分の構成を示す図である。車両10は、メインバッテリ22と、補機バッテリ24と、DC-DCコンバータ26と、コントローラ30とを備える。
【0011】
メインバッテリ22は、例えばリチウムイオン電池であり、電気自動車用の充電スタンド等から電力が供給される。メインバッテリ22は、例えば数百V程度の直流電圧を発生する。メインバッテリ22は、モータ等に電力を供給する。
【0012】
補機バッテリ24は、鉛蓄電池等の充電可能な電池(二次電池)である。補機バッテリ24は、メインバッテリ22の電力が転送されて充電される。補機バッテリ24は、例えば十数V程度の直流電圧を発生する。補機バッテリ24は、例えば、車載コンピュータ、パワーウィンドウ、ヘッドライトおよびエアーコンディショナ等の、車両10における電装系装置に電力を供給する。
【0013】
DC-DCコンバータ26は、メインバッテリ22の直流電力を受け取り、補機バッテリ24へと直流電力を供給する充電装置として機能する。DC-DCコンバータ26は、メインバッテリ22から発生された直流電圧を、指示電圧値に応じた直流電圧に降圧して、補機バッテリ24へと供給する。
【0014】
コントローラ30は、ECUにおけるバッテリ制御用モジュールに関する機能により実現される。コントローラ30は、補機バッテリ24のバッテリ容量(電池容量)であるSOC(Stare of charge)を取得する。SOCは、補機バッテリ24の充電状態を表し、0%以上、100%以下の値で表される。0%は、電力が充電されていない状態を表し、100%は満充電の状態を表す。
【0015】
コントローラ30は、取得したバッテリ容量に基づき、指示電圧値をDC-DCコンバータ26に与える。これにより、コントローラ30は、DC-DCコンバータ26から、指示電圧値に応じた出力電圧を出力させ、DC-DCコンバータ26から補機バッテリ24に指示電圧値に応じた出力電圧の直流電力を供給させる。
【0016】
図2は、DC-DCコンバータ26から発生させる電圧の波形の一例を示す図である。
【0017】
コントローラ30は、DC-DCコンバータ26に対して、指示電圧値として、第1の電圧値または第2の電圧値を与える。すなわち、コントローラ30は、DC-DCコンバータ26から、第1の電圧値の出力電圧または第2の電圧値の出力電圧を出力させる。
【0018】
第1の電圧値は、補機バッテリ24から車両10における電装系装置に電力を供給している状態であっても、補機バッテリ24が充電される電圧値である。一例として、第1の電圧値は、13.5Vである。
【0019】
第2の電圧値は、第1の電圧値より低い電圧値であって、補機バッテリ24から車両10における電装系装置に最小の電力を供給している状態であっても、補機バッテリ24が放電される電圧値である。一例として、第1の電圧値は、12.5Vである。第1の電圧値および第2の電圧値は、コントローラ30に予め設定されている。
【0020】
従って、補機バッテリ24は、DC-DCコンバータ26から第1の電圧値の出力電圧が出力されている期間において、電力を充電し、バッテリ容量を増加させる。また、補機バッテリ24は、DC-DCコンバータ26から第2の電圧値の出力電圧が出力されている期間において、電力を放電し、バッテリ容量を減少させる。
【0021】
そして、コントローラ30は、補機バッテリ24におけるバッテリ容量と、補機バッテリ24における目標容量値とを比較して、第1の電圧値と、第2の電圧値との出力比率を変更する。コントローラ30は、例えば一定期間T毎に、第1の電圧値と第2の電圧値との出力比率を変更する。
【0022】
補機バッテリ24は、一定期間Tにおける、第1の電圧値の比率が第2の電圧値の比率より小さい場合(0%以上、50%未満の場合)、一定期間Tの全体として電力を放電する。従って、この場合、補機バッテリ24は、この一定期間Tの全体として、バッテリ容量を減少させる。
【0023】
また、補機バッテリ24は、一定期間Tにおける、第1の電圧値の比率が第2の電圧値の比率より大きい場合(50%より大きく、100%以下の場合)、一定期間Tの全体として電力を充電する。従って、この場合、補機バッテリ24は、この一定期間Tの全体としてバッテリ容量を増加させる。
【0024】
なお、コントローラ30は、一定期間T毎に出力比率を変更するのではなく、連続的に出力比率を変更してもよい。
【0025】
図3は、バッテリ容量に対する出力比率の関係の一例を示す図である。
【0026】
バッテリ容量の目標容量値は、上限値と下限値とを有する。コントローラ30は、上限値および下限値が予め設定されている。下限値は、上限値よりも低い値である。例えば、コントローラ30は、目標容量値が設定され、目標容量値より所定パーセント大きい値を上限値とし、目標容量値より所定パーセント小さい値を下限値としてもよい。
【0027】
コントローラ30は、取得したバッテリ容量が下限値以下である場合、DC-DCコンバータ26から第1の電圧値の出力電圧を出力させ続ける。すなわち、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が下限値以下である場合、第1の電圧値の出力電圧の出力比率を100%、第2の電圧値の出力比率を0%に設定する。これにより、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が下限値以下である場合、補機バッテリ24を充電して、バッテリ容量を増加させることができる。
【0028】
また、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が上限値以上である場合、DC-DCコンバータ26から第2の電圧値の出力電圧を出力させ続ける。すなわち、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が上限値以上である場合、第1の電圧値の出力電圧の出力比率を0%、第2の電圧値の出力比率を100%に設定する。これにより、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が上限値以上である場合、補機バッテリ24を放電して、バッテリ容量を減少させることができる。
【0029】
そして、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が、上限値よりも小さく、下限値よりも大きい場合に、第1の電圧値と第2の電圧値とが交互に切り替わる出力電圧を出力させる。これにより、コントローラ30は、補機バッテリ24が充電と放電とを交互に繰り返すように、コントローラ30から出力電圧を出力させることができる。従って、コントローラ30は、取得したバッテリ容量が上限値よりも小さく下限値よりも大きい場合、バッテリ容量が緩やかに変化するように、補機バッテリ24を充電または放電させることができる。
【0030】
さらに、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となった後、バッテリ容量が上限値以上となるまで、第1の電圧値の出力比率を第2の電圧値の出力比率より大きくする。すなわち、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となったに後、バッテリ容量が上限値以上となるまで、第1の電圧値の出力比率を50%より大きく100%以下に設定する。
【0031】
これにより、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となった場合、バッテリ容量が上限値以上となるまで、補機バッテリ24のバッテリ容量を充電方向に緩やかに変化させることができる。従って、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値近傍の場合において、補機バッテリ24に対して急激に放電させるような制御を無くすことができる。
【0032】
また、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となった後、バッテリ容量が下限値以下となるまで、第2の電圧値の出力比率を第1の電圧値の出力比率より大きくする。すなわち、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となった後、バッテリ容量が下限値以下となるまで、第1の電圧値の出力比率を50%より小さく0%以上に設定する。
【0033】
これにより、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となった場合、バッテリ容量が下限値以下となるまで、補機バッテリ24のバッテリ容量を放電方向に緩やかに変化させることができる。従って、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値近傍の場合において、補機バッテリ24に対して急激に充電させるような制御を無くすことができる。
【0034】
また、例えば、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となったことにより第1の電圧値の出力比率を第2の電圧値の出力比率より大きくする場合、バッテリ容量が上限値に近くなるに従って、第1の電圧値の出力比率を小さく、すなわち、第2の電圧値の出力比率を大きくしてもよい。これにより、コントローラ30は、補機バッテリ24のバッテリ容量を充電方向に変化させる場合に、バッテリ容量が上限値に近くなるに従って、充電速度をより緩やかにすることができる。
【0035】
また、例えば、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となったことにより第2の電圧値の出力比率を第1の電圧値の出力比率より大きくする場合、バッテリ容量が下限値に近くなるに従って、第2の電圧値の出力比率を小さく、すなわち、第1の電圧値の出力比率を大きくしてもよい。これにより、コントローラ30は、補機バッテリ24のバッテリ容量を放電方向に変化させる場合に、バッテリ容量が下限値に近くなるに従って、放電速度をより緩やかにすることができる。
【0036】
図4は、コントローラ30の処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、例えば図4に示す流れで、DC-DCコンバータ26の出力電圧を制御する。
【0037】
まず、S11において、コントローラ30は、始動処理をする。
【0038】
続いて、S12において、コントローラ30は、満充電判定フラグがONであるか否かを判断する。満充電判定フラグは、補機バッテリ24のバッテリ容量が満充電、すなわち、100%の場合にOFFとなり、バッテリ容量が満充電ではない場合、すなわち、100未満の場合にONとなる。コントローラ30は、満充電判定フラグがONでない場合、すなわち、バッテリ容量が満充電の場合(S12のNo)、S12で処理を待機する。コントローラ30は、満充電判定フラグがONである場合、すなわち、バッテリ容量が満充電ではない場合(S12のYes)、処理をS13に進める。
【0039】
S13において、コントローラ30は、上限フラグをONに設定する。上限フラグは、補機バッテリ24のバッテリ容量が上限値以上の場合、または、バッテリ容量が上限値以上となった後にまだ下限値以下となっていない場合、ONに設定される。また、上限フラグは、補機バッテリ24のバッテリ容量が下限値以下の場合、または、バッテリ容量が下限値以下となった後にまだ上限値以上となっていない場合、OFFに設定される。
【0040】
続いて、S14において、コントローラ30は、上限フラグがONであるか否かを判断する。上限フラグがONである場合(S14のYes)、コントローラ30は、処理をS15に進める。上限フラグがOFFである場合(S14のNo)、コントローラ30は、処理をS18に進める。
【0041】
S15において、コントローラ30は、上限比率MAPに基づき、第1の出力電圧および第2の出力電圧の出力比率を設定する。上限比率MAPに基づく出力比率の設定方法については、図5を参照して後述する。
【0042】
続いて、S16において、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下であるか否かを判断する。コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下ではない場合(S16のNo)、コントローラ30は、処理をS15に戻し、バッテリ容量が下限値以下となるまで、S15およびS16の処理を繰り返す。コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となった場合(S16のYes)、処理をS17に進める。
【0043】
S17において、コントローラ30は、上限フラグをOFFに設定する。コントローラ30は、S17を終えると、処理をS14に戻す。
【0044】
一方、S18において、コントローラ30は、下限比率MAPに基づき、第1の出力電圧および第2の出力電圧の出力比率を設定する。下限比率MAPに基づく出力比率の設定方法については、図6を参照して後述する。
【0045】
続いて、S19において、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上であるか否かを判断する。コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上ではない場合(S19のNo)、コントローラ30は、処理をS18に戻し、バッテリ容量が上限値以上となるまで、S18およびS19の処理を繰り返す。コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となった場合(S19のYes)、処理をS20に進める。
【0046】
S20において、コントローラ30は、上限フラグをONに設定する。コントローラ30は、S20を終えると、処理をS14に戻す。コントローラ30は、以上の処理を車両10の動作が終了するまで実行する。
【0047】
図5は、上限比率MAPの一例を示す図である。上限比率MAPは、目標容量値からバッテリ容量(SOC)を減じた差分値に対する、第1の電圧値および第2の電圧値の出力比率を示す表である。上限比率MAPは、コントローラ30に予め設定されている。
【0048】
本例において、目標容量値は、上限値と下限値との中間値である。本例においては、下限値は、目標容量値の-1.0%である。また、上限値は、目標容量値の+1.0%である。
【0049】
コントローラ30は、図4のS15において、図5に示す上限比率MAPを参照して出力比率を決定する。
【0050】
例えば、コントローラ30は、差分値が-1.0%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を0%、第2の電圧値の出力比率を100%に設定する。コントローラ30は、差分値が-1.0%より大きく、-0.8%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を5%、第2の電圧値の出力比率を95%に設定する。コントローラ30は、差分値が-0.8%より大きく、-0.5%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を10%、第2の電圧値の出力比率を90%に設定する。コントローラ30は、差分値が-0.5%より大きく、0%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を20%、第2の電圧値の出力比率を80%に設定する。コントローラ30は、差分値が0%より大きく、0.5%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を30%、第2の電圧値の出力比率を70%に設定する。コントローラ30は、差分値が0.5%より大きく、0.8%以下である場合、第1の電圧値の出力比率を40%、第2の電圧値の出力比率を60%に設定する。コントローラ30は、差分値が0.8%より大きく、1.0%未満である場合、第1の電圧値の出力比率を45%、第2の電圧値の出力比率を55%に設定する。
【0051】
このように設定することにより、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となった場合、バッテリ容量が下限値以下となるまで、第2の電圧値の出力比率を第1の電圧値の出力比率より大きくすることができる。さらに、このように設定することにより、コントローラ30は、バッテリ容量が上限値以上となったため、第2の電圧値の出力比率を第1の電圧値の出力比率より大きくする場合、バッテリ容量が下限値に近くなるに従って、第2の電圧値の出力比率を小さく、すなわち、第1の電圧値の出力比率を大きくすることができる。なお、コントローラ30は、図5に示すような表に限らず、例えば予め設定された関数等により、第1の電圧値および第2の電圧値の出力比率を算出してもよい。
【0052】
図6は、下限比率MAPの一例を示す図である。下限比率MAPは、バッテリ容量(SOC)から目標容量値を減じた差分値に対する、第1の電圧値および第2の電圧値の出力比率を示す表である。下限比率MAPは、コントローラ30に予め設定されている。
【0053】
コントローラ30は、図4のS18において、図6に示す下限比率MAPを参照して出力比率を決定する。下限比率MAPの具体的な数値は、図5の上限比率MAPにおける第1の電圧値と第2の電圧値と入れ替えた表と同一である。
【0054】
このように設定することにより、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となった場合、バッテリ容量が上限値以上となるまで、第1の電圧値の出力比率を第2の電圧値の出力比率より大きくすることができる。さらに、このように設定することにより、コントローラ30は、バッテリ容量が下限値以下となったため、第1の電圧値の出力比率を第2の電圧値の出力比率より大きくする場合、バッテリ容量が上限値に近くなるに従って、第1の電圧値の出力比率を小さく、すなわち、第2の電圧値の出力比率を大きくすることができる。なお、コントローラ30は、図6に示すような表に限らず、例えば予め設定された関数等により、第1の電圧値および第2の電圧値の出力比率を算出してもよい。
【0055】
図7は、バッテリ容量の変化および出力電圧の変化の一例を示す波形図である。コントローラ30は、満充電判定フラグがONの場合に、DC-DCコンバータ26の電圧制御を行う。
【0056】
上限フラグがONの期間は、バッテリ容量が上限値以上の期間、または、バッテリ容量が上限値以上となった後でバッテリ容量が下限値以下となるまでの期間である。上限フラグがONの期間であって、バッテリ容量が上限値よりも小さく下限値よりも大きい場合には、コントローラ30は、第1の電圧値と第2の電圧値とが交互に切り替わり、且つ、第2の電圧値の出力比率を第1の電圧値の出力比率より大きくする。従って、コントローラ30は、この期間において、微小量の放電および充電を交互に繰り返しながら、補機バッテリ24のバッテリ容量を緩やかに減少させることができる。
【0057】
また、上限フラグがOFFの期間は、バッテリ容量が下限値以下の期間、または、バッテリ容量が下限値以下となった後でバッテリ容量が上限値以上となるまでの期間である。上限フラグがOFFの期間であって、バッテリ容量が上限値よりも小さく下限値よりも大きい場合には、コントローラ30は、第1の電圧値と第2の電圧値とが交互に切り替わり、且つ、第1の電圧値の出力比率を第2の電圧値の出力比率より大きくする。従って、コントローラ30は、この期間において、微小量の放電および充電を交互に繰り返しながら、補機バッテリ24のバッテリ容量を緩やかに増加させることができる。
【0058】
以上のように、コントローラ30は、補機バッテリ24に対して、バッテリ容量を上限値から下限値まで緩やかに減少させ、続いて、バッテリ容量を下限値から上限値まで緩やかに減少させるような制御を繰り返すことにより、急峻な放電または充電を無くすことができる。これにより、コントローラ30は、補機バッテリ24に対して放電深度が深くなるような放電をさせないようにして、補機バッテリ24の劣化する速度を緩和することができる。
【0059】
図8は、コントローラ30による下限値の再設定処理の流れを示すフローチャートである。例えば、コントローラ30は、例えば図8に示す流れで、下限値を再設定してもよい。
【0060】
まず、S31において、コントローラ30は、補機バッテリ24の作動に関する情報に応じて補機バッテリ24の劣化を検知したか否かを判断する。例えば、コントローラ30は、補機バッテリ24の劣化度の指標となる値を取得し、劣化度の指標となる値と、予め設定された閾値とを比較する。そして、コントローラ30は、劣化度の指標となる値が閾値を超えた場合に、補機バッテリ24が劣化したと検知してもよい。また、コントローラ30は、別の装置から補機バッテリ24が劣化したことを示す情報を取得してもよい。
【0061】
コントローラ30は、補機バッテリ24の劣化を検知していない場合(S31のNo)、S31で処理を待機する。コントローラ30は、補機バッテリ24の劣化を検知した阿合(S31のYes)、処理をS32に進める。
【0062】
S32において、コントローラ30は、下限値に対して所定量(α)を加算して、所定量(α)を加算した下限値を新たな下限値として再設定する。S32の処理を終えると、コントローラ30は、本フローを終了する。
【0063】
このようなコントローラ30は、補機バッテリ24が劣化した場合、バッテリ容量の下限値を補機バッテリ24が劣化していない場合より高くする。これにより、コントローラ30は、補機バッテリ24が劣化した場合に、バッテリ容量の推定値の誤差により放電深度が深くなることを回避することができる。このように、コントローラ30は、補機バッテリ24の劣化状態に応じて適切な充放電制御をすることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両、22 メインバッテリ、24 補機バッテリ、26 DC-DCコンバータ、30 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8