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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143281
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】液仕切ローラー回転式シール機構
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/132 20060101AFI20230928BHJP
   B05C 3/10 20060101ALI20230928BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20230928BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B05C3/132
B05C3/10
C25D7/06 Q
C25D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050570
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】592141466
【氏名又は名称】丸仲工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079511
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 利明
(72)【発明者】
【氏名】長倉 正次
【テーマコード(参考)】
4F040
4K024
【Fターム(参考)】
4F040AA02
4F040AA22
4F040AB04
4F040AB20
4F040AC02
4F040BA50
4F040CC02
4F040CC16
4F040CC17
4F040CC19
4F040CC20
4K024CB19
4K024GA02
(57)【要約】
【課題】 処理槽の縦長のスリット部から漏出する処理液の漏出量を抑制するシール機構に関し、槽外への漏出量を激減できると共に搬送される薄板状の被処理材を傷つけることなく仕切り部をスムーズに通過できる漏出液抑制シール機構を提供する。
【解決手段】 処理槽1の外側でスリット部3の近くにローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され搬送される被処理材Wの搬送速度とローラー周面の回転速度を一致させて回転駆動される一対の液仕切りローラー5を起立状態に配設し、この液仕切りローラーの処理槽とは反対側のローラー周面部分と滑り接触する表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されたシール板部材10を固定的に配設し、この液仕切りローラーとシール板部材を仕切り部の構成部分として含む仕切り部でスリット部を処理槽の外側から囲む有底のシール室12を設け、このシール室でスリット部から流出した処理液の漏出を抑制する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき処理液などの表面処理液が満たされた処理槽の対向する仕切り壁に縦長の入り口側のスリット部と出口側のスリット部を形成し、搬送手段で垂直姿勢に吊り下げ保持された方形の薄板状の被処理材が該被処理材の板面を搬送方向と平行にした垂直姿勢で横方向に搬送される搬送過程で、前記被処理材が前記処理槽の入り口側の前記スリット部から搬入され、前記処理槽の処理液中を通過し、前記処理槽の出口側の前記スリット部から搬出され、前記処理槽の処理液中を通過する過程で前記被処理材の表面にめっき処理などの表面処理を施すようにした表面処理装置において、
前記処理槽の外側で入り口側と出口側の前記スリット部の近くに前記被処理材の搬送軌道を間にした一対の回転駆動する液仕切りローラーを起立状態に配設し、この一対の液仕切りローラーは、ローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され、搬送される前記被処理材の板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支され、前記被処理材を搬送方向に繰り出し可能な回転方向に回転駆動され、搬送される前記被処理材の搬送速度と回転駆動される液仕切りローラーの周面の回転速度を一致させた回転駆動手段を備え、一対の前記液仕切りローラーの前記処理槽とは反対側のローラー周面部分と該ローラーの長さ範囲に亘ってそれぞれ滑り接触する固定位置に互いの先端部が配置され、少なくとも回転する前記ローラーと滑り接触する接触表面部が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されると共に、搬送される前記被処理材の通過を許容できるように互いに離間して配置された一対のシール板部材を固定的に配設し、一対の前記液仕切りローラーと一対の前記シール板部材を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部を前記処理槽の外側から仕切り部で囲む有底のシール室を設けたことを特徴とする液仕切ローラー回転式シール機構。
【請求項2】
めっき処理液などの表面処理液が満たされた処理槽の対向する仕切り壁に縦長の入り口側のスリット部と出口側のスリット部を形成し、搬送手段で薄い長尺帯状の被処理材が帯幅方向を上下にした垂直姿勢で横方向に搬送される搬送過程で、前記被処理材が前記処理槽の入り口側の前記スリット部から搬入され、前記処理槽の処理液中を通過し、前記処理槽の出口側の前記スリット部から搬出され、前記処理槽の処理液中を通過する過程で前記被処理材の表面にめっき処理などの表面処理を施すようにした表面処理装置において、
前記処理槽の外側で入り口側と出口側の前記スリット部の近くに前記被処理材の搬送軌道を間にした一対の回転駆動する液仕切りローラーを起立状態に配設し、この一対の液仕切りローラーは、ローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され、搬送される前記被処理材の板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支され、前記被処理材を搬送方向に繰り出し可能な回転方向に回転駆動され、搬送される前記被処理材の搬送速度と回転駆動される液仕切りローラーの周面の回転速度を一致させた回転駆動手段を備え、一対の前記液仕切りローラーの前記処理槽とは反対側のローラー周面部分と該ローラーの長さ範囲に亘ってそれぞれ滑り接触する固定位置に互いの先端部が配置され、少なくとも回転する前記ローラーと滑り接触する接触表面部が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されると共に、搬送される前記被処理材の通過を許容できるように互いに離間して配置された一対のシール板部材を固定的に配設し、一対の前記液仕切りローラーと一対の前記シール板部材を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部を前記処理槽の外側から仕切り部で囲む有底のシール室を設けたことを特徴とする液仕切ローラー回転式シール機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液仕切ローラー回転式シール機構であって、前記液仕切りローラーのローラー面を表面摩擦抵抗が小さいフッ素樹脂で形成した液仕切ローラー回転式シール機構。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の液仕切ローラー回転式シール機構であって、前記シール板部材の前記接触表面部を表面摩擦抵抗が小さいフッ素樹脂又は超高分子量ポリエチレン樹脂のいずれかで形成した液仕切ローラー回転式シール機構。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の液仕切ローラー回転式シール機構であって、一対の前記液仕切りローラーの軸心を、該ローラーの上方部が搬送方向の上流側に、該ローラーの下方部が搬送方向の下流側になるように垂直な起立状態から2~7度傾斜させて配設した液仕切ローラー回転式シール機構。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の液仕切ローラー回転式シール機構であって、一対の前記液仕切りローラーの軸心を、該ローラーの上方部が搬送方向の上流側に、該ローラーの下方部が搬送方向の下流側になるように垂直な起立状態から2~7度傾斜させて配設すると共に、前記スリット部を、該スリット部の上方部が搬送方向の上流側に、該スリット部の下方部が搬送方向の下流側になるように垂直方向から2~7度傾斜させて形成した液仕切ローラー回転式シール機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき処理液などの表面処理液を満たした処理槽の縦長のスリット部から漏出する処理液の漏出量を抑制するシール機構に関し、特に槽外への漏出量を激減できると共に搬送される被処理材を傷つけることなく仕切り部をスムーズに通過できるようにした漏出液抑制シール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき処理液を満たしためっき処理槽(めっき工程)や脱脂処理液を満たした脱脂処理槽(前処理工程の一工程としての脱脂処理)の対向する仕切り壁に入り口側と出口側の縦長のスリット部を形成し、長尺帯状の被処理材を処理槽の入り口側のスリット部から搬入し、処理槽内の処理液中を通過させ、処理槽の出口側のスリット部から搬出し、処理槽内の処理液中を通過する過程で長尺帯状の被処理材の表面を連続的にめっき処理(めっき工程)、又は脱脂処理(前処理工程の一工程としての脱脂処理)するようにした表面処理装置(めっき処理装置)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、処理槽のスリット部の外側に一対のワークガイドローラを設け、このガイドローラの回転速度をワーク(長尺ワーク)の搬送速度に対応させたものである。これによって、ガイドローラによるワーク(長尺ワーク)への傷の発生を防止し、さらに、スリット部からの液漏れ量を抑制しようとするものである。しかし、ワークガイドローラのみの構成からなる特許文献1では、スリット部からの液漏れ量を抑制できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-143174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、めっき処理液などの表面処理液を満たした処理槽の縦長のスリット部から漏出する処理液の漏出量を抑制するシール機構に関し、特に槽外への漏出量を激減できると共に搬送される被処理材(方形薄板状の被処理材、長尺帯状の被処理材)を傷つけることなく仕切り部をスムーズに通過できるようにする漏出液抑制シール機構を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明(請求項1の発明)は、めっき処理液などの表面処理液が満たされた処理槽の対向する仕切り壁に縦長の入り口側のスリット部と出口側のスリット部を形成し、搬送手段で垂直姿勢に吊り下げ保持された方形の薄板状の被処理材が該被処理材の板面を搬送方向と平行にした垂直姿勢で横方向に搬送される搬送過程で、前記被処理材が前記処理槽の入り口側の前記スリット部から搬入され、前記処理槽の処理液中を通過し、前記処理槽の出口側の前記スリット部から搬出され、前記処理槽の処理液中を通過する過程で前記被処理材の表面にめっき処理などの表面処理を施すようにした表面処理装置において、前記処理槽の外側で入り口側と出口側の前記スリット部の近くに前記被処理材の搬送軌道を間にした一対の回転駆動する液仕切りローラーを起立状態に配設し、この一対の液仕切りローラーは、ローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され、搬送される前記被処理材の板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支され、前記被処理材を搬送方向に繰り出し可能な回転方向に回転駆動され、搬送される前記被処理材の搬送速度と回転駆動される液仕切りローラーの周面の回転速度を一致させた回転駆動手段を備え、一対の前記液仕切りローラーの前記処理槽とは反対側のローラー周面部分と該ローラーの長さ範囲に亘ってそれぞれ滑り接触する固定位置に互いの先端部が配置され、少なくとも回転する前記ローラーと滑り接触する接触表面部が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されると共に、搬送される前記被処理材の通過を許容できるように互いに離間して配置された一対のシール板部材を固定的に配設し、一対の前記液仕切りローラーと一対の前記シール板部材を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部を前記処理槽の外側から仕切り部で囲む有底のシール室を設けたことを特徴とする液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【0007】
本発明(請求項1の発明)によれば、前記シール室でスリット部から流出した処理液の漏出を遮断し、抑制できる。しかも、一対の液仕切りローラーの間を搬送通過される被処理材(方形薄板状の被処理材)を傷つけることなく、仕切り部をスムーズに通過させることができる。
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明(請求項2の発明)は、めっき処理液などの表面処理液が満たされた処理槽の対向する仕切り壁に縦長の入り口側のスリット部と出口側のスリット部を形成し、搬送手段で薄い長尺帯状の被処理材が帯幅方向を上下にした垂直姿勢で横方向に搬送される搬送過程で、前記被処理材が前記処理槽の入り口側の前記スリット部から搬入され、前記処理槽の処理液中を通過し、前記処理槽の出口側の前記スリット部から搬出され、前記処理槽の処理液中を通過する過程で前記被処理材の表面にめっき処理などの表面処理を施すようにした表面処理装置において、前記処理槽の外側で入り口側と出口側の前記スリット部の近くに前記被処理材の搬送軌道を間にした一対の回転駆動する液仕切りローラーを起立状態に配設し、この一対の液仕切りローラーは、ローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され、搬送される前記被処理材の板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支され、前記被処理材を搬送方向に繰り出し可能な回転方向に回転駆動され、搬送される前記被処理材の搬送速度と回転駆動される液仕切りローラーの周面の回転速度を一致させた回転駆動手段を備え、一対の前記液仕切りローラーの前記処理槽とは反対側のローラー周面部分と該ローラーの長さ範囲に亘ってそれぞれ滑り接触する固定位置に互いの先端部が配置され、少なくとも回転する前記ローラーと滑り接触する接触表面部が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されると共に、搬送される前記被処理材の通過を許容できるように互いに離間して配置された一対のシール板部材を固定的に配設し、一対の前記液仕切りローラーと一対の前記シール板部材を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部を前記処理槽の外側から仕切り部で囲む有底のシール室を設けたことを特徴とする液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【0009】
本発明(請求項2の発明)によれば、前記シール室でスリット部から流出した処理液の漏出を遮断し、抑制できる。しかも、一対の液仕切りローラーの間を搬送通過される被処理材(長尺帯状の被処理材)を傷つけることなく、仕切り部をスムーズに通過させることができる。
【0010】
また、前記した課題を解決するため、本発明(請求項3の発明)は、前記液仕切りローラーのローラー面を表面摩擦抵抗が小さいフッ素樹脂(フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性にも優れている。)で形成した液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【0011】
また、前記した課題を解決するため、本発明(請求項4の発明)は、前記シール板部材の前記接触表面部を表面摩擦抵抗が小さいフッ素樹脂又は超高分子量ポリエチレン樹脂(超高分子量ポリエチレン樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、自己潤滑性を持つ。)のいずれかで形成した液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【0012】
本発明(請求項3、4の発明)によれば、前記液仕切りローラーのローラー面と前記シール板部材の接触表面部との接触抵抗を極めて小さくでき、一対の液仕切りローラーを更にスムーズに回転させることができ、液漏れ量を最小限に減少できる。
【0013】
また、前記した課題を解決するため、本発明(請求項5の発明)は、一対の前記液仕切りローラーの軸心を、該ローラーの上方部が搬送方向の上流側に、該ローラーの下方部が搬送方向の下流側になるように垂直な起立状態から2~7度(好ましくは3~5度)傾斜させて配設した液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【0014】
本発明(請求項5の発明)によれば、前記液仕切りローラーを上記のように傾斜させて配設したことによって、垂直姿勢で横方向に搬送される方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材の先端部は、先に上部側のローラー間を通過し、遅れて下部側のローラー間を通過することになる。これによって、特に、搬送手段のクランプ治具で上端部を保持して搬送される方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材は、搬送手段のクランプ治具で保持されていて搬送軌道が安定している被処理材の上端部が先にローラー間を通過し、フリーで搬送軌道が安定しにくい下端部が後にローラー間を通過するようになり、前記被処理材がローラー間を更にスムーズに通過できるようになる。
【0015】
また、前記した課題を解決するため、本発明(請求項6の発明)は、一対の前記液仕切りローラーの軸心を、該ローラーの上方部が搬送方向の上流側に、該ローラーの下方部が搬送方向の下流側になるように垂直な起立状態から2~7度(好ましくは3~5度)傾斜させて配設すると共に、前記スリット部を、該スリット部の上方部が搬送方向の上流側に、該スリット部の下方部が搬送方向の下流側になるように垂直方向から2~7度(好ましくは3~5度)傾斜させて形成した液仕切ローラー回転式シール機構を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、めっき処理液などの表面処理液を満たした処理槽の縦長のスリット部から漏出する処理液の漏出量を抑制するシール機構に関し、前記液仕切りローラーと前記シール板部材を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部を前記処理槽の外側から仕切り部で囲む有底のシール室を設けたことによって、特に槽外への漏出量を激減できると共に搬送される被処理材(方形薄板状の被処理材、長尺帯状の被処理材)を傷つけることなく仕切り部をスムーズに通過できるようにした漏出液抑制シール機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の概略平面図である。
図2】本発明の要部の平面図である。
図3】本発明の要部の他の実施例を示した平面図である。
図4】本発明の要部の正面図である。
図5】本発明の要部の側面図である。
図6】本発明の他の実施例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1図5は本発明の実施形態を示し、図6は液仕切りローラーを傾斜させた本発明の他の実施形態を示している。
【0019】
図1は、めっき処理液などの表面処理液(めっき処理液、脱脂処理薬液、水洗液など)が満たされた処理槽1(めっき処理槽、脱脂処理槽など)の対向する仕切り壁2に縦長の入り口側のスリット部3と出口側のスリット部3を形成し、搬送手段(図示せず)で被処理材W(方形薄板状の被処理材、長尺帯状の被処理材)が垂直姿勢で横方向に搬送される搬送過程で、被処理材Wが処理槽1の入り口側のスリット部3から搬入され、処理槽1の処理液中を通過し、処理槽1の出口側のスリット部3から搬出され、処理槽1内の処理液中を通過する過程で前記被処理材Wの表面をめっき処理、又は脱脂処理するようにした装置の全体を概略的に示している。図1において、符号5,5は一対の液仕切りローラー、符号10,10は一対のシール板部材、符号12はシール室を示している。
【0020】
前記処理槽1の外側で入り口側と出口側の前記スリット部3の近くに前記被処理材Wの搬送軌道を間にした一対の回転駆動する液仕切りローラー5,5を起立状態(図4、5の実施形態では、垂直方向の起立状態としてある。)に配設し、この一対の液仕切りローラー5,5は、ローラー面が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成され、搬送される前記被処理材Wの板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支され、前記被処理材Wを搬送方向に繰り出し可能な回転方向に回転駆動され、搬送される前記被処理材Wの搬送速度と回転駆動される液仕切りローラー5,5の周面の回転速度を一致させた回転駆動手段を備えている。
【0021】
液仕切りローラー5のローラー面は、テフロン(登録商標)等の耐熱性、耐薬品性に優れ、表面摩擦抵抗が小さいフッ素樹脂で形成してある。
【0022】
液仕切りローラー5のローラー軸の直径より該ローラー軸を上下で支えるブッシュ(軸受)の穴の直径を約0.5mm大きく形成し、搬送される前記被処理材の板厚の変化に対処できるように一対のローラー間に遊び幅を設けて軸支されている。一対の液仕切りローラー5はスリット部3から流出した液の水圧で互いのローラー間方向に圧接される。なお、一対の液仕切りローラー5,5は後述する一対のシール板部材10,10によって処理槽1とは反対方向への移動を規制されている。
【0023】
液仕切りローラー5の回転駆動手段は、図5に示したように、回転駆動モータ6の回転駆動軸7の下端部に回転駆動歯車8を設け、一対の液仕切りローラー5,5のローラー軸の下端部に互いに逆回転するように歯合された回転歯車9,9を設けてある。そして、回転駆動モータ6の回転駆動軸7に設けた回転駆動歯車8と一対の液仕切りローラー5,5のローラー軸に設けた回転歯車9,9の一方の回転歯車9とを歯合させることによって、一対の液仕切りローラー5,5が互いに逆回転方向に回転駆動されるようにしてある。
【0024】
一対の前記液仕切りローラー5,5の前記処理槽1とは反対側のローラー周面部分と該ローラーの長さ範囲に亘ってそれぞれ滑り接触する固定位置に互いの先端部が配置され、少なくとも回転する前記ローラー5と滑り接触する接触表面部が表面摩擦抵抗の小さな樹脂で形成されると共に、搬送される前記被処理材Wの通過を許容できるように互いに離間して配置された一対のシール板部材10,10(一対のシール板部材は識別を容易にするため便宜的に斜線を引いて表してある。)を固定的に配設してある。
【0025】
一対の前記液仕切りローラー5,5と一対の前記シール板部材10,10を仕切り部の構成部分として含む、前記スリット部3を前記処理槽1の外側から仕切り部で囲む有底のシール室12を設けている。
【0026】
シール板部材10の全体又は少なくとも接触表面部は、ウルモラー(登録商標)等の耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、自己潤滑性を持つ表面摩擦抵抗が小さい超高分子量ポリエチレン樹脂で形成してある。
【0027】
液仕切りローラー5のローラー面をテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で形成し、シール板部材10の全体又は少なくとも接触表面部をウルモラー(登録商標)等の超高分子量ポリエチレン樹脂で形成したことによって、液仕切りローラー5のローラー面とシール板部材10の接触表面部との接触抵抗を極めて小さくでき、一対の液仕切りローラー5,5を更にスムーズに回転させることができ、液漏れ量を最小限に減少できる。
【0028】
図2図3は、一対のシール板部材01,10の取付け態様を示している。なお、シール板部材10,10の取付け態様は図示した態様に限定されるものではない。
【0029】
方形薄板状の被処理材Wの搬送手段としては、例えば、図6に示したような、レール15に横移動自在に保持されたクランプ治具(搬送治具)16で方形薄板状の被処理材Wを吊下げ保持し、このクランプ治具(搬送治具)16を適宜移動手段でレール15に沿って横方向に移動する方式を採用できる。
【0030】
薄い長尺帯状の被処理材Wの搬送手段としては、例えば、図示してないが、送り出しリールに巻かれた長尺帯状のフープ材などの被処理材を巻き取りリールで引き出しながら、前処理工程やめっき工程を連続的に通過させ、再び巻き取りリールに巻き取るようにした、いわゆるリールツーリール方式を採用できる。
【0031】
図1図4、及び図6に示したように、前記シール室12に連続させた、前記処理槽1の反対側に貯留槽20を設けてある。この貯留槽20の槽壁にも搬送される被処理材Wを通過させるスリット部21が形成されている。シール室12から漏出された少量の処理液は、この貯留槽20の底部に設けたドレン穴22に連通するドレン管(図示せず)を通して下方に設けた回収槽(図示せず)に回収されるようにしてある。
【0032】
図6は、本発明の他の実施例を示した正面図であり、この実施例では、一対の前記液仕切りローラー5の軸心を、該ローラー5の上方部が搬送方向の上流側に、該ローラー5の下方部が搬送方向の下流側になるように垂直な起立状態から2~7度(好ましくは3~5度)傾斜させて配設してある。
【0033】
液仕切りローラー5を上記のように傾斜させて配設したことによって、垂直姿勢で横方向に搬送される方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材Wの先端部は、先に上部側のローラー5,5間を通過し、遅れて下部側のローラー5,5間を通過することになる。これによって、特に、搬送手段のクランプ治具(搬送治具)16で上端部を保持して搬送される方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材Wは、搬送手段のクランプ治具(搬送治具)16で保持されていて搬送軌道が安定している被処理材Wの上端部が先にローラー5,5間を通過し、フリーで搬送軌道が安定しにくい下端部が後にローラー5,5間を通過するようになり、前記被処理材Wがローラー5,5間を更にスムーズに通過できるようになる。
【0034】
また、液仕切りローラー5を上記のように傾斜させて配設したことによって、垂直姿勢で横方向に搬送される薄い長尺帯状の前記被処理材Wも、帯幅方向の上端部が先に上部側のローラー5,5間を通過し、帯幅方向の下端部が遅れて下部側のローラー5,5間を通過することになる。
【0035】
さらに、図6の実施例では、前記スリット部3を、該スリット部3の上方部が搬送方向の上流側に、該スリット部3の下方部が搬送方向の下流側になるように垂直方向から2~7度(好ましくは3~5度)傾斜させて形成してある。スリット部3の溝幅をより狭く形成した場合、このスリット部3を通過する方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材Wは、傾斜させた液仕切りローラー5,5間を方形(長方形や正方形)の薄板状の前記被処理材Wが通過するのと同様なことが言え、前記被処理材Wが溝幅の狭いスリット部3をスムーズに通過できるようになる。
【0036】
なお、図4図6において、符号Sは処理槽1内の液面を示している。
【符号の説明】
【0037】
1 処理槽
2 仕切り壁
3 スリット部
W 被処理材(方形薄板状の被処理材、長尺帯状の被処理材)
5,5 液仕切りローラー
6 回転駆動モータ
7 回転駆動軸
8 回転駆動歯車
9,9 回転歯車
10,10 シール板部材
12 シール室
20 貯留槽
21 スリット部
22 ドレン穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6