(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143285
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】飲酒状態検知装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050578
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 理絵
(72)【発明者】
【氏名】広田 逸彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 弘志
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA11
3D030DB17
(57)【要約】
【課題】誤検知を抑制して、的確に運転者の飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置を提供すること。
【解決手段】運転席付近に搭載されて、運転者MDの飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置S。運転者の皮膚から排出される排出ガスに含まれるアルコール成分を、皮膚と非接触の状態で検出可能に構成されて、ガス検知センサ10と、ガス検知センサを内部に収納させるとともに、周縁に手RHを接触させて覆うことにより、内部に排出ガスを貯留可能に構成されるガス貯留用凹部12と、ガス貯留用凹部を塞いだ手の状態を検知した状態で所定時間作動されるとともに、作動時に、ガス貯留用凹部内に貯留している空気若しくは排出ガスを排気可能に、ガス貯留用凹部に隣接される排気用ファン15と、を、有する。ガス検知センサが、排気用ファンの作動停止後にガス貯留用凹部内に貯留される排出ガスを測定可能に、設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における運転席付近に搭載されて、運転者の飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置であって、
ガス検知センサに前記運転者の手を接近させることにより、前記運転者の皮膚から排出される排出ガスに含まれるアルコール成分を、前記皮膚と非接触の状態で検出可能に構成されて、
前記ガス検知センサと、
前記ガス検知センサを内部に収納可能に凹ませて形成されるとともに、周縁に前記手を接触させて覆うことにより、内部に前記排出ガスを貯留可能に構成されるガス貯留用凹部と、
前記ガス貯留用凹部を塞いだ前記手の状態を検知した状態で所定時間作動されるとともに、作動時に、該ガス貯留用凹部内に貯留している空気若しくは前記排出ガスを排気可能に、前記ガス貯留用凹部に隣接される排気用ファンと、
を、有する構成とされ、
前記ガス検知センサが、前記排気用ファンの作動停止後に前記ガス貯留用凹部内に貯留される前記排出ガスを測定可能に、設定されていることを特徴とする飲酒状態検知装置。
【請求項2】
前記ガス検知センサが、前記排出ガス中のアルコール成分の測定を、所定時間内に複数回行うように、作動を制御されていることを特徴とする請求項1に記載の飲酒状態検知装置。
【請求項3】
前記ガス貯留用凹部が、前記運転者の操舵するハンドルにおいて、前記運転者の把持するグリップ部に、配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の飲酒状態検知装置。
【請求項4】
前記排気用ファンにより排気される前記排出ガスを外部に排出可能な排出路部が、前記排気用ファンを間にして前記ガス検知センサと対向する位置に、配設されていることを特徴とする請求項3に記載の飲酒状態検知装置。
【請求項5】
前記運転者の把持の有無を検知する把持検知センサが、前記ガス検知センサによる前記排出ガスの測定時に、前記グリップ部において、前記運転者の手によって同時に覆い可能な領域に、配設されていることを特徴とする請求項3または4に記載の飲酒状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における運転席付近に搭載されて、運転者の飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような飲酒状態検知装置では、運転者の着座する運転席の雰囲気アルコール濃度と、運転者の体温及び心拍数と、を測定することにより、運転者の飲酒状態を検知するものがあった(例えば、特許文献1参照)。また、飲酒状態検知装置としては、人の汗に含まれるアルコール成分の濃度を検出して人の飲酒状態を検知する構成のものもあった(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-91232公報
【特許文献2】特開2009-73422公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の飲酒状態検知装置では、運転者の体温や心拍数を測定する構成であるものの、アルコール成分は、運転席の雰囲気アルコール濃度の測定によって検出する構成であることから、運転者から排出されるものではないもの、例えば、アルコール除菌スプレーや芳香剤等に起因するアルコール成分、あるいは、助手席搭乗者の呼気に含まれるアルコール成分も検出される場合があって、運転者の飲酒状態と誤検知してしまう虞れがあった。また、上記特許文献2に記載の飲酒状態検知装置では、ハンドルを把持した人の汗に含まれるアルコール成分の濃度を検出して人の飲酒状態を検知する構成であり、運転者から排出されるアルコール成分を検出できる構成であるものの、発汗促進手段により運転者を発汗させて汗の中のアルコール成分濃度を検出させる構成であることから、アルコール成分を迅速に検出できるものではなかった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、誤検知を抑制して、的確に運転者の飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る飲酒状態検知装置は、車両における運転席付近に搭載されて、運転者の飲酒状態を検知可能な飲酒状態検知装置であって、
ガス検知センサに運転者の手を接近させることにより、運転者の皮膚から排出される排出ガスに含まれるアルコール成分を、皮膚と非接触の状態で検出可能に構成されて、
ガス検知センサと、
ガス検知センサを内部に収納可能に凹ませて形成されるとともに、周縁に手を接触させて覆うことにより、内部に排出ガスを貯留可能に構成されるガス貯留用凹部と、
ガス貯留用凹部を塞いだ手の状態を検知した状態で所定時間作動されるとともに、作動時に、ガス貯留用凹部内に貯留している空気若しく排出ガスを排気可能に、ガス貯留用凹部に隣接される排気用ファンと、
を、有する構成とされ、
ガス検知センサが、排気用ファンの作動停止後にガス貯留用凹部内に貯留される排出ガスを測定可能に、設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の飲酒状態検知装置では、ガス検知センサを内部に収納させたガス貯留用凹部内に、運転者の手から排出される排出ガスを貯留させ、この排出ガスからアルコール成分を検出する構成であるが、排気用ファンを有し、手によってガス貯留用凹部の開口エリアを塞いだ状態で排気用ファンを作動させて、ガス貯留用凹部内に貯留している空気若しくは排出ガスを排気させた後に、ガス検知センサによって、運転者の手から排出されてガス貯留用凹部内に貯留される排出ガスを測定する構成である。そのため、例えば、運転者の手を接触させる前の状態でガス貯留用凹部内に貯留している空気や、測定後一定時間経過した後でのガス貯留用凹部内に残留している排出ガスを、排気(除去)した状態で、運転者の手から排出される排出ガスを計測できることから、運転者以外に起因するアルコール成分等を検出することを抑制できて、運転者から排出されるアルコール成分を、的確に検出することができる。
【0008】
したがって、本発明の飲酒状態検知装置では、誤検知を抑制して、的確に運転者の飲酒状態を検知することができる。
【0009】
また、本発明の飲酒状態検知装置において、ガス検知センサを、排出ガス中のアルコール成分の測定を所定時間内に複数回行うように、作動を制御させる構成とすれば、運転者の飲酒状態を、異常検知を排除して、一層精度よく安定して検出することが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の飲酒状態検知装置において、ガス貯留用凹部を、運転者の操舵するハンドルにおいて、運転者の把持するグリップ部に配設させる構成とすれば、操舵前等のグリップ部を把持する運転者の手によって、ガス貯留用凹部を安定して閉塞させることができ、また、排出ガスを、迅速に、ガス貯留用凹部に貯留させることが可能となることから、測定時間を短縮させることも可能となって、短時間に、安定して、運転者から排出されるアルコール成分の有無を検出することができて、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の飲酒状態検知装置において、排気用ファンにより排気される排出ガスを外部に排出可能な排出路部を、排気用ファンを間にしてガス検知センサと対向する位置に、配設させる構成とすれば、ガス貯留用凹部内に貯留されている空気若しくは排出ガスを、効率よく迅速に、排出路部を経て、外部に排出させることが可能となって、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成の飲酒状態検知装置において、運転者の把持の有無を検知する把持検知センサを、ガス検知センサによる排出ガスの測定時に、グリップ部において、運転者の手によって同時に覆い可能な領域に、配設させる構成とすれば、排出ガスの測定時に、同時に、把持検知センサにより運転者によるグリップ部の把持状態(把持の有無等)も検知することができることから、運転者の飲酒状態を、より的確に検知することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である飲酒状態検知装置を搭載させるハンドルを示す概略平面図である。
【
図2】
図1のハンドルにおいて、飲酒状態検知装置の搭載部位付近を示す部分拡大平面図である。
【
図3】
図2のIII-III部位の概略断面図である。
【
図4】実施形態の飲酒状態検知装置におけるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の飲酒状態検知装置Sは、
図1に示すように、車両において、運転者MDが操舵するハンドル1に、搭載されている。
【0015】
ハンドル1は、
図1に示すように、図示しない回転軸に連結されるボス部3と、ボス部3の周囲に配置されて操舵時に把持するグリップ部としての略円環状のリング部4と、ボス部3とリング部4とを連結する複数(実施形態の場合、3本)のスポーク部5と、を備えている。
【0016】
飲酒状態検知装置Sは、ガス検知センサ10と、ガス検知センサ10を収納させるとともに運転者MDの皮膚から排出される排出ガスを貯留させるためのガス貯留用凹部12と、ガス貯留用凹部12を塞いだ手の状態を検知(確認)する配置確認センサとしてのタッチセンサ14と、排気用ファン15と、排出路部16と、運転者MDの把持の有無を検知する把持検知センサ20と、ガス検知センサ10及び排気用ファン15の作動を制御する制御装置25と、を備えている。実施形態の場合、飲酒状態検知装置Sは、
図1に示すように、リング部4における右側に配置されるスポーク部5Rと交差している領域(運転者MDの右手RHが接触する領域)の一箇所に、配設されている。詳細には、この領域は、運転者MDによるリング部4の把持時に、右手RHの拇指球RTを接触させる領域である。そして、具体的には、飲酒状態検知装置Sは、ハンドル1を上方側から見た状態で、ガス検知センサ10を、スポーク部5Rの幅方向の中央の右側に位置させ、排気用ファン15と排出路部16とを、ガス検知センサ10の下方に直列的に位置させるように、配置されている(
図1,2参照)。
【0017】
ガス検知センサ10は、リング部4を把持している運転者MDの右手RHの掌(皮膚)から排出される排出ガスに含まれるアルコール(エタノール)成分を、右手RHと非接触の状態で検出可能とされるもので、実施形態の場合、半導体式の市販品を使用している。具体的には、ガス検知センサ10は、外径寸法dを7mm程度とした略円板状とされている(
図2参照)。実施形態では、ガス検知センサ10として、半導体式のものを使用しているが、燃料電池式や非拡散赤外線吸収式のものも使用可能である。実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、ガス検知センサ10は、排気用ファン15の作動停止後における所定時間経過後(具体的には、5s程度経過後)に、ガス貯留用凹部12内に貯留される排出ガスを測定するように、制御装置25により作動を制御されている。
【0018】
ガス貯留用凹部12は、
図3に示すように、リング部4(具体的には、リング部4の表面4b側を構成している被覆層4a)を表面4bから部分的に凹ませるように、形成されている。すなわち、ガス貯留用凹部12は、リング部4の表面4b側に開口12bを有するように、構成されている。このガス貯留用凹部12は、底面12a側(凹みの先端側)に、ガス検知センサ10を配設させるもので、凹み量を、底面12a側に配置させたガス検知センサ10と、開口12bの周縁12cに接触される(ガス貯留用凹部12の開口12bを閉塞している)運転者MDの右手RH(詳細には、掌における拇指球RT)と、を非接触とするように、設定されている。詳細には、ガス貯留用凹部12は、直進操舵時のハンドル1を上方側から見た状態での外形形状を、
図2に示すように、上下方向に略沿うような略溝状として、上端側を略半円弧状とし、上端側の底面側に、ガス検知センサ10を配置させるように、構成されている。具体的には、ガス貯留用凹部12は、開口幅寸法D(
図2参照)を、ガス検知センサ10の外径寸法dと略同一に設定されるとともに、底面12a側に配置されるガス検知センサ10の表面10aとリング部4の表面4bとの離隔距離h(
図3参照)を、2mm程度に設定されている。また、ガス貯留用凹部12は、長さ寸法L(
図2参照)を、ガス検知センサ10の外径寸法dより僅かに大きく設定されるように、構成されている。そして、このガス貯留用凹部12内には、開口12bの周縁12cへの右手RH(拇指球RT)の接触開始(タッチセンサ14による接触検知)から5s程度で、運転者MDの右手RHから排出される排出ガスが充満されることとなる。
【0019】
タッチセンサ14は、ガス貯留用凹部12を塞いだ手の状態を検知(確認)する配置確認センサを構成しているもので、実施形態の場合、ガス貯留用凹部12における開口12bの周縁12cの領域に配置されて、開口12bの周縁12cへの右手RH(拇指球RT)の接触状態を検知可能な構成とされている。タッチセンサ14としては、静電容量センサ、電気インピーダンス式センサ、抵抗膜式センサを使用することができ、実施形態では、静電容量センサを使用している。
【0020】
排気用ファン15は、ガス貯留用凹部12に隣接されるもので、実施形態の場合、ハンドル1を上方側から見た状態において、ガス貯留用凹部12の下端側に隣接して配設されている。この排気用ファン15は、ガス貯留用凹部12の周縁12cへの右手RH(拇指球RT)の接触状態を維持した状態で作動するように設定されるもので、作動時に、ガス貯留用凹部12内に充満している空気や排出ガスGを引き込んで、排気用ファン15を間に挟むようにしてガス貯留用凹部12と対向して配置される排出路部16側に排出させるように、構成されている。排気用ファン15は、実施形態の場合、DCシロッコファン等の市販品を使用している。なお、排気用ファン15は、非作動の状態においても、ガス貯留用凹部12と排出路部16との間を閉塞するように区画するものではなく、ガス貯留用凹部12と排出路部16との間は、非作動状態の排気用ファン15を介して空気の移動は可能な構成とされている。しかしながら、ガス貯留用凹部12と排出路部16との間の実際の空気の移動は微細なものであり、逆に言えば、排気用ファン15を作動させない状態では、ガス貯留用凹部12に貯留している空気等を外部に排出させることはできない。実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、排気用ファン15は、タッチセンサ14によるガス貯留用凹部12の周縁12cへの右手RH(拇指球RT)の接触状態を検知した状態で、ガス検知センサ10による排出ガス中のアルコール成分の測定前と測定後とに、それぞれ、所定時間(具体的には、10s程度)作動するように、制御装置25により作動を制御されている。
【0021】
排出路部16は、排気用ファン15を介して、ガス貯留用凹部12と連通して構成されるもので、排気用ファン15を間にしてガス検知センサ10と対向する位置に、配設されている。具体的には、実施形態の場合、排出路部16は、
図1,2に示すように、排気用ファン15から後方(ハンドル1を上方側から見た状態での下方)に延びつつ、先端側を左方に向けるように屈曲されて、被覆層4aの端縁まで貫通するように、被覆層4a内を管状に貫通するように形成されている。すなわち、排出路部16は、被覆層4aの表面4b側を開口させておらず、詳細な図示を省略するが、排気用ファン15から離隔した先端側を、開口させる構成とされており、排気用ファン15を経て排気される排出ガスGを、この開口16aから、スポーク部5Rにおける被覆層4aとスイッチ配設部(図符号省略)との境界部位を経て外部に排出可能とされている(
図2の二点鎖線参照)。
【0022】
把持検知センサ20は、運転者MDによるリング部4の把持の有無を検知するためのもので、運転者MDによるリング部4の把持時に、運転者MDの右手RHによって、ガス検知センサ10と同時に覆い可能な領域に、配設されている。具体的には、把持検知センサ20は、
図1に示すように、直進操舵時のハンドル1において、それぞれ、左側と右側とのスポーク部5L,5Rとリング部4との交差部位(コーナ部)の内縁側から、スポーク部5L,5Rの前縁側と、リング部4の内縁側と、にかけて、延びるように、連続的に形成されている。
図1に示すように、運転者MDが、右手RHの拇指球RTによってガス検知センサ10を覆う(ガス貯留用凹部12の開口12bの周縁12cに拇指球RTを接触させる)ようにしてリング部4を把持している状態では、通常、右手RHの親指が、スポーク部5Rとリング部4とのコーナ部に引っ掛けられるようにして、把持検知センサ20と接触することとなる。把持検知センサ20としては、静電容量タイプの市販のタッチセンサが使用されている。
【0023】
制御装置25は、
図4に示すように、ガス検知センサ10、配置確認センサとしてのタッチセンサ14、排気用ファン15、及び、把持検知センサ20と、電気的に接続されている。また、制御装置25には、排気用ファン15の作動時間や、排気用ファン15の作動停止からガス検知センサ10の計測開始までの時間等、時間経過を計測するタイマー22も、電気的に接続されている。実施形態の場合、ガス検知センサ10による排出ガス中のアルコール成分の検出は、3回計測を行う設定とされており、ガス検知センサ10による計測の前後には、前述したごとく、ガス貯留用凹部12の周縁12cへの右手RHの接触を検知した状態で、所定時間、排気用ファン15を作動させるように設定されている。そして、制御装置25は、ガス検知センサ10による3回の計測値と、把持検知センサ20による運転者MDによるリング部4の把持の有無の検知と、により、運転者MDの飲酒状態を判定するように、設定されている。
【0024】
そして、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、ガス検知センサ10を内部に収納させたガス貯留用凹部12内に、運転者MDの右手RHから排出される排出ガスを貯留させ、この排出ガスからアルコール成分を検出する構成であるが、排気用ファン15を有し、右手RHによってガス貯留用凹部12の開口エリアを塞いだ状態で排気用ファン15を作動させて、ガス貯留用凹部12内に貯留している空気若しくは排出ガスを排気させた後に、ガス検知センサ10によって、運転者MDの右手RHから排出されてガス貯留用凹部12内に貯留される排出ガスを測定する構成である。そのため、例えば、運転者MDの右手RHを接触させる前の状態でガス貯留用凹部12内に貯留している空気や、測定後一定時間経過した後でのガス貯留用凹部12内に残留している排出ガスを、排気(除去)した状態で、運転者MDの右手RHから排出される排出ガスを計測できることから、運転者以外に起因するアルコール成分等を検出することを抑制できて、運転者MDから排出されるアルコール成分を、的確に検出することができる。
【0025】
したがって、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、誤検知を抑制して、的確に運転者MDの飲酒状態を検知することができる。
【0026】
また、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、ガス検知センサ10が、排出ガス中のアルコール成分の測定を所定時間内に複数回(実施形態の場合、3回)行うように、作動を制御される構成である。そのため、測定を一回のみ行う場合と比較して、運転者MDの飲酒状態を、異常検知を排除して、一層精度よく安定して検出することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、ガス検知センサ10による測定を一回のみ行って、飲酒状態を判定するように設定してもよい、
さらに、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、ガス貯留用凹部12が、運転者MDの操舵するハンドル1において、運転者MDの把持するグリップ部(リング部4)に配設される構成である。そのため、操舵前等のリング部4を把持する運転者MDの手RHによって、ガス貯留用凹部12を安定して閉塞させることができ、また、排出ガスを、迅速に、ガス貯留用凹部12に貯留させることが可能となる。その結果、測定時間を短縮させることも可能となって、短時間に、安定して、運転者MDから排出されるアルコール成分の有無を検出することができる。特に、実施形態の飲酒状態検知装置Sは、リング部4において、直進操舵時に通常把持する領域である右側のスポーク部5Rと交差している領域に、配設されている。この配置領域には、運転者MDによるリング部4の通常把持時に、右手RHの拇指球RTが接触することとなり、すなわち、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、この右手RHの拇指球RTが、周縁12cに接触されるようにして、ガス貯留用凹部12を閉塞することとなる。拇指球RTは、平坦な面が広く、リング部4を握り込む際に、リング部4の表面4bに、安定して広い面で接触させることができ、かつ、また、リング部4の表面4bとの接触状態も維持し易いことから、ガス貯留用凹部12を一定時間安定して閉塞させることができる。そのため、拇指球RTを、ガス貯留用凹部12の周縁12cに接触させることが、好ましい。なお、飲酒状態検知装置の配置位置は、リング部において、後側のスポーク部との交差領域付近に、配置させる構成としてもよい。また、運転者の手におけるガス貯留用凹部周縁への接触部位も、拇指球に限定されるものではなく、指先等を接触させてもよい。なお、ガス貯留用凹部12は、手(右手RH)によって完全に塞がなくともよい。
【0027】
さらにまた、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、排気用ファン15により排気される排出ガスを外部に排出可能な排出路部16が、排気用ファン15を間にしてガス検知センサ10と対向する位置に、配設されている。そのため、ガス貯留用凹部12内に貯留されている空気若しくは排出ガスを、効率よく迅速に、排出路部16を経て、外部に排出させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、排出路部は、排気用ファンを間に挟まず、ガス検知センサ(ガス貯留用凹部)に隣接するようにして、配置させる構成としてもよい。また、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、排出路部16は、リング部4の表面4b側を閉塞されて被覆層4a内を管状に貫通するように形成されているが、排出路部の外形形状は、実施形態に限定されるものではなく、ガス貯留用凹部と同様に、リング部の表面側から凹ませるようにして、形成してもよい。
【0028】
さらにまた、実施形態の飲酒状態検知装置Sでは、運転者MDの把持の有無を検知する把持検知センサ20が、ガス検知センサ10による排出ガスの測定時に、リング部4において、運転者MDの右手RHによって同時に覆い可能な領域に、配設される構成である。そのため、排出ガスの測定時に、同時に、把持検知センサ20によって、運転者MDによるリング部4の把持状態(把持の有無等)も検知することができることから、運転者の飲酒状態を、より的確に検知することができる。
【0029】
実施形態の飲酒状態検知装置Sによる運転者MDの飲酒状態検知の一例を示せば、例えば、運転開始前のエンジンスタート時に、運転者MDによるリング部4の把持状態(ガス貯留用凹部12の周縁12cへの右手RHの接触状態)を確認しつつ(タッチセンサ14の検知による)、排気用ファン15を所定時間作動させた後、ガス検知センサ10によるアルコール成分の検出を、間に排気用ファン15の作動によるガス貯留用凹部12内からの排出ガスの排出を挟みつつ、3回行い、運転者MDの飲酒状態を判別することが例示できる。なお、車両に、別途、運転者を撮像可能なカメラや運転者の体温を検知可能なサーモカメラ等を搭載し、車両走行中における運転者の状態変化を検出可能な構成とする場合には、車両走行中に作動させて、運転者の飲酒状態を検知するように設定することも可能である。
【0030】
なお、実施形態では、ハンドル1におけるリング部4に、飲酒状態検知装置Sを配置させているが、飲酒状態検知装置の配置位置は、ハンドルのリング部(グリップ部)に限定されるものではなく、例えば、シフトレバーのノブや、コンソールボックス付近、あるいは、ハンドルにおいても、スポーク部に設けられるベゼル付近等に配置させることもできる。また、運転席周囲の、例えば、コラム付近等に、指等を置くスペースを別途設けるようにして、別途配置させることもできる。さらに、実施形態では、ガス貯留用凹部12を塞いだ手の状態を検知(確認)する配置確認センサとして、開口12bの周縁12cへの右手RH(拇指球RT)の接触状態を検知可能なタッチセンサ14が、使用されているが、手の状態を確認する配置確認センサは、タッチセンサに限定されるものではなく、例えば、上述したごとく指等を置くスペースを別途設けるようにして別途配置させるような構成とする場合には、配置確認センサを、運転者が指を置いた後に、自ら押すスイッチ等から、構成してもよい。
【0031】
さらに、実施形態では、円環状のリング部を有するハンドルに、飲酒状態検知装置を搭載させているが、このようなハンドルは一例にすぎず、例えば、四角環状のリング部を備えるものや、リング部ではなく、ボス部から部分的に突出する棒状のグリップ部を備えるタイプのハンドルにも、本発明の飲酒状態検知装置は搭載可能である。
【0032】
運転者の飲酒状態の判定後には、車両の走行開始前の状態であったら、エンジンを停止させる措置を取ること等が例示でき、車両の走行中であったら、自動運転モードに切り替えて走行した後に車両停止等の措置を取ること等が例示できる。
【符号の説明】
【0033】
1…ハンドル、4…リング部(グリップ部)、4b…表面、10…ガス検知センサ、12…ガス貯留用凹部、12c…周縁、14…タッチセンサ、15…排気用ファン、16…排出路部、20…把持検知センサ、RH…右手、運転者…MD、S…飲酒状態検知装置。