(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143286
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20230928BHJP
B60R 22/46 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R22/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050579
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【テーマコード(参考)】
3D018
3D054
【Fターム(参考)】
3D018MA01
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA25
3D054BB30
3D054CC15
3D054CC45
3D054DD13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】プリテンショナー機構の作動時に、バッグ組付体を組み付けたシートベルトを円滑に巻き取り可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】プリテンショナー機構を有した巻き取り装置から繰り出されるシートベルト11が、シートに着座した乗員の肩口付近から延びて、タングを結合させたバックルまでの部位のショルダーベルト部と、バックルから固定端側までのラップベルト部13と、を備えて、ラップベルト部の部位に、作動時に、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグ30を備えたバッグ組付体29が組み付けられて構成される乗員保護装置10。バッグ組付体が、ラップベルト部の組付部位22に対し、ラップベルト部に沿って摺動可能な筒状のバッグ連結部52を備える。バッグ連結部は、プリテンショナー機構の作動時におけるシートベルトの巻き取り時に、ラップベルト部を滑らせ可能に摩擦抵抗を低減させた滑り面部53、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリテンショナー機構を有した巻き取り装置から繰り出されるシートベルトが、シートに着座した乗員の肩口付近から下方に延びて、タングを結合させたバックルまでの部位とした乗員の上半身を拘束可能なショルダーベルト部と、バックルから前記シートベルトの固定端側まで延びる部位とした乗員の腰部を拘束可能なラップベルト部と、を備えるとともに、
前記ラップベルト部の部位に、作動時に、膨張用ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグを備えたバッグ組付体が組み付けられて構成される乗員保護装置であって、
前記バッグ組付体が、前記ラップベルト部の組付部位に対し、前記ラップベルト部に沿って摺動可能に組み付けられる筒状のバッグ連結部を備えて構成されるとともに、
前記バッグ連結部が、前記プリテンショナー機構の作動時における前記シートベルトの巻き取り時に、前記ラップベルト部を滑らせ可能に摩擦抵抗を低減させた滑り面部、を前記ラップベルト部との接触部位に備えて、構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記バッグ連結部が、内周面に、前記滑り面部を構成するフッ素樹脂材を設けて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトのラップベルト部の部位に、作動時に、膨張用ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグを備えたバッグ組付体が組み付けられて構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。シートベルトは、プリテンショナー機構を有した巻き取り装置から繰り出されるように配設されて、シートに着座した乗員の肩口付近から下方に延び、タングを結合させたバックルまでの部位とした乗員の上半身を拘束可能なショルダーベルト部と、バックルからシートベルトの固定端側まで延びる部位とした乗員の腰部を拘束可能なラップベルト部と、を備える構成としていた。バッグ組付体は、折り畳まれたエアバッグと、ラップベルト部の組付部位に対し、ラップベルト部に沿って摺動可能に組み付けられる筒状のバッグ連結部と、を備えて構成されていた。バッグ連結部は、体格に差のある乗員に対してラップベルト部を装着しても、各乗員の正面中央に、バッグ組付体を配置できるように、ラップベルト部に対して、ずれ移動できるような構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置において、シートベルトを装着した状態で、車両の衝突に伴なって、エアバッグが膨張する際、シートベルトの巻き取り装置は、プリテンショナー機構を作動させて、シートベルトを巻き取り、確実に乗員をシートへの着座状態を確保することとなるが、その際、バッグ連結部内を円滑に摺動して、シートベルトの巻き取り量を十分に確保できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、プリテンショナー機構の作動時に、バッグ組付体を組み付けたシートベルトを円滑に巻き取り可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置では、プリテンショナー機構を有した巻き取り装置から繰り出されるシートベルトが、シートに着座した乗員の肩口付近から下方に延びて、タングを結合させたバックルまでの部位とした乗員の上半身を拘束可能なショルダーベルト部と、バックルから前記シートベルトの固定端側まで延びる部位とした乗員の腰部を拘束可能なラップベルト部と、を備えるとともに、
前記ラップベルト部の部位に、作動時に、膨張用ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグを備えたバッグ組付体が組み付けられて構成される乗員保護装置であって、
前記バッグ組付体が、前記ラップベルト部の組付部位に対し、前記ラップベルト部に沿って摺動可能に組み付けられる筒状のバッグ連結部を備えて構成されるとともに、
前記バッグ連結部が、前記プリテンショナー機構の作動時における前記シートベルトの巻き取り時に、前記ラップベルト部を滑らせ可能に摩擦抵抗を低減させた滑り面部、を前記ラップベルト部との接触部位に備えて、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、シートに着座した乗員が、タングをバックルに締結させるように、巻き取り装置から引き出して、シートベルトを装着した後、車両が衝突すると、プリテンショナー機構が作動されるとともに、その作動に遅れて、ラップベルト部の組付部位に組み付けられたバッグ組付体のエアバッグが、膨張ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張する。そして、プリテンショナー機構の作動時には、乗員のシートへの着座姿勢を安定させるように、乗員に装着したシートベルトが巻き取られ、シートベルトのラップベルト部がタング側に引き込まれるとともに、ラップベルト部から連なるショルダーベルト部が、乗員の肩口側に引き込まれる。その際、膨張前のエアバッグを収納したバッグ組付体のバッグ連結部内を、ラップベルト部が摺動するが、バッグ連結部は、ラップベルト部との接触部位に、摩擦抵抗を低減させてラップベルト部を滑らせることができる滑り面部、を備えており、ラップベルト部がバッグ連結部内を円滑に摺動し、乗員の着座姿勢を安定させるように、シートベルトが巻き取り装置に巻き取られ、そしてその後、膨張したエアバッグにより、前方移動する乗員の上半身が受け止められて保護される。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、プリテンショナー機構の作動時に、バッグ組付体を組み付けたシートベルトを円滑に巻き取ることが可能となり、乗員の着座姿勢が安定し、そして、膨張したエアバッグにより、的確に乗員を保護することができる。
【0009】
そして、バッグ連結部は、内周面に、滑り面部を構成するフッ素樹脂材を設けて、構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
【
図2】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの左側面図である。
【
図3】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの正面図であり、シートベルトが乗員に装着された状態を示し、また併せて、エアバッグの膨張時を二点鎖線で示す。
【
図4】実施形態の乗員保護装置のラップベルト部におけるエアバッグの組付部位の概略断面図であり、
図3のIV-IV部位に対応する。
【
図5】実施形態の乗員保護装置におけるエアバッグが膨張した状態を示す概略斜視図である。
【
図6】実施形態の乗員保護装置におけるエアバッグ、ガス供給路部、バッグ連結部、及び、バッグカバー、を構成する構成部材の概略平面図である。
【
図7】実施形態の乗員保護装置におけるラップベルト部を装着した後の巻き取り機構のプリテンショナー機構が作動した状態を示す左側面図である。
【
図8】実施形態の乗員保護装置においてラップベルト部がバッグ連結部内を摺動する状態を説明する概略横断面図である。
【
図9】実施形態の乗員保護装置の作動時におけるエアバッグの膨張完了時を示すシートの概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置10は、
図1~3,7に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト11と、エアバッグ30を具備したバッグ組付体29と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター24と、を備えて構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5とを備えている。
【0012】
シートベルト11は、シート1に着座した乗員MPを拘束できるように、乗員MPの左側肩口付近において、上端11a側を、背もたれ部2の上端3における左縁3a側の内部に配設された巻き取り装置15から繰り出し可能とし、下端11b側を、座部5の左側部6側に配設されたアンカ部材17に固定される固定端として配設されている。なお、シートベルト11は、滑り性能の良好なポリエステル繊維等を編んだ帯状材から形成されている。
【0013】
シートベルト11の中間部位には、タング20が配設され、タング20は、シート1の左右方向における巻き取り装置15から離れた右方側における座部5の右側部7側に、配設されたバックル19に締結されることとなり、タング20をバックル19に締結させた状態のシートベルト11は、タング20から巻き取り装置15側に延びる部位を、乗員MPの上半身MUの前面側に配置されて、上半身MUを拘束可能なショルダーベルト部12とし、タング20から固定端11b側に延びる部位を、乗員MPの腰部MWの前面側に配置されて、腰部MWを拘束可能なラップベルト部13としている。なお、バックル19には、図示しないリリースボタンが配設されており、締結したタング20を締結解除する際、リリースボタンを押圧操作すれば、タング20をバックル19から取り外すことができる。
【0014】
また、巻き取り装置15は、ベルト11の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したベルト11を巻き取り可能なプリテンショナー機構16を配設させて構成されている。プリテンショナー機構16は、汎用のものであり、内蔵したガスジェネレータを作動させてシートベルト11を巻き付けていた軸を回転させて、シートベルト11を瞬時に巻き取るものである。なお、巻き取り装置15は、車両の衝突時にプリテンショナー機構16を作動させるが、エアバッグ30を膨張させる膨張用ガスを供給するインフレーター24は、プリテンショナー機構16の作動後、約5ms程度、遅れて、作動される。このような遅れは、シート1に着座した乗員MPを、プリテンショナー機構16を作動させて、シートベルト11を巻き取ってシート1への着座状態を安定させた後に、エアバッグ30を膨張させ、そして、膨張したエアバッグ30により、的確に、乗員MPを保護するためである。すなわち、実施形態の乗員保護装置10では、膨張するエアバッグ30の左右方向の中央位置に乗員MPを配置させるように、エアバッグ30の膨張直前に、プリテンショナー機構16を作動させて、前もって、的確な着座位置に乗員MPを配置させることとしている。
【0015】
インフレーター24は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体25と、インフレーター本体25から突出して略L字状に屈曲するパイプ部26と、を備えて、シート1の座部5の後面側に取付固定されている(
図1,2参照)。パイプ部26には、エアバッグ30の後述するガス供給路部45の先端47aが、外装され、さらに、クランプ27で締め付けられて、連結されている。
【0016】
バッグ組付体29は、エアバッグ30と、バッグ連結部52と、バッグカバー59と、を備え、さらに、実施形態の場合、エアバッグ30とインフレーター24とを連結してインフレーター24からの膨張用ガスをエアバッグ30に供給するガス供給路部45、を備えて構成されている。
【0017】
エアバッグ30は、
図5,9に示すように、膨張完了時に、周壁31が、側方から見て略三角柱状に膨張する構成として、底面側の底壁部32、後面側の後壁部33、前面側の前壁部34、及び、左右の側壁部35(L,R)、を備えて構成されている。そして、膨張完了時のエアバッグ30は、底壁部32の下面32a側を、乗員MPの大腿部MFに支持させる支持面37とし、後壁部33の後面33a側を、前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止める乗員拘束面38としている。
【0018】
底壁部32の後縁32b付近には、ガス供給路部45からの膨張用ガスを流入させる複数の流入口40aを開口させた流入口部40が配設されている。また、左右の側壁部35L,35Rの前部側には、エアバッグ30内に流入する膨張用ガスの余剰分を排気するベントホール42が開口されている。
【0019】
エアバッグ30は、ガス供給路部45やバッグ連結部52の後述する本体シート54とともに、ポリエステル繊維を平織り等して形成した織布からなるバッグ用素材に対してガス漏れ防止用のシリコン等のコーティング材を設けたバッグ用基布、から形成されている。そして、エアバッグ30の周壁31は、底壁部32、前壁部34、及び、左右の側壁部35(L,R)の前部側を形成する前側部位31aと、後壁部33、及び、左右の側壁部35(L,R)の後部側を形成する後側部位31bと、の2枚のバッグ用基布から形成されている(
図6参照)。
【0020】
ガス供給路部45は、エアバッグ30に連結されるバッグ側部46と、バッグ側部46からインフレーター24側に延びる筒状のガス流路部47と、を備えて構成されている(
図5参照)。ガス流路部47は、既述したように、先端47aを、インフレーター24のパイプ部26に、連結させている。バッグ側部46には、エアバッグ30の流入口部40の流入口40aと連通する連通口46aが、配設され、連通口46aの周縁が、流入口40aの周縁に縫合されて、バッグ側部46が、エアバッグ30の下端30aとなる底壁部32の後縁32b側に連結されている。
【0021】
このガス供給路部45は、外形寸法を同じとした下面側の外側材49と、エアバッグ30側のバッグ側材50と、の外周縁相互を縫合して形成されている。なお、外側材49とバッグ側材50との外周縁相互の縫合前には、バッグ側材50の連通口46aの周縁を、エアバッグ30の流入口40aの周縁に縫合させておくこととなる。
【0022】
バッグ連結部52は、折り畳まれたエアバッグ30を、ラップベルト部13に対し、ラップベルト部13に沿って、摺動可能に連結させるものであり、実施形態の場合、ガス供給路部45のバッグ側部46を介在させて、エアバッグ30の下面32a側に連結されている(
図4,5参照)。
【0023】
そして、実施形態のバッグ連結部52は、エアバッグ30の周壁31を形成するバッグ用基布(ポリエステル等のカバー素材にシリコンコート層(コーティング材)を設けたバッグ用基布)と同様のバッグ用基布からなる本体シート54(
図6参照)の端部54a相互を結合させた筒形としている。但し、実施形態のバッグ連結部52は、内周面52aを滑り面部53とするように、フッ素樹脂材(実施形態ではテフロン(登録商標)材を使用)55を貼着させている(
図4,6参照)。フッ素樹脂材55は、粘着剤55bを設けたテフロン(登録商標)フィルム55aから形成されており、本体シート54の内周面54bに貼着させて、端部54a相互を、縫合糸56を使用した縫合により、結合させて、形成されている。
【0024】
なお、バッグ連結部52は、エアバッグ30に直接連結させておらず、ガス供給路部45のバッグ側部46に対して、縫合部52bを設けて(
図6参照)、縫合して連結させており、実施形態では、バッグ連結部52が、ガス供給路部45を介在させて、間接的に、エアバッグ30に連結されている。
【0025】
また、エアバッグ30の周壁31、ガス供給路部45、及び、バッグ連結部52の本体シート54が、ポリエステル等のバッグ用素材にシリコンコート層(コーティング材)を設けたバッグ用基布から形成されている理由は、裁断前の長尺状の状態で、バッグ用基布を形成した後、周壁31、ガス供給路部45、及び、バッグ連結部52の本体シート54を、長尺状バッグ用基布から所定形状に裁断して、形成していることから、同じバッグ用基布から形成されることとなる。
【0026】
バッグカバー59は、折り畳まれたエアバッグ30とラップベルト部13におけるエアバッグ30の組付部位22とを、膨張時のエアバッグ30を突出可能に覆うように、配設される。実施形態の場合、バッグカバー59は、さらに、エアバッグ30に連結されるガス供給路部45のバッグ側部46、及び、バッグ連結部52も、覆っている。このバッグカバー59は、エアバッグ30等の素材と異なり、意匠性を低下させないように、シート1のシート素材に使用されるようなファブリックから形成されている。
【0027】
バッグカバー59は、バッグ組付体29における折り畳まれたエアバッグ30、ガス供給路部45のバッグ側部46、及び、バッグ連結部52からなる組付本体29aと、ラップベルト部13におけるバッグ組付体29の組付部位22とを、膨張時のエアバッグ30を突出可能に覆うように、筒形状として、配設される(
図4,5参照)。バッグカバー59は、エアバッグ30等の素材と異なり、意匠性を低下させないように、シート1のシート素材に使用されるようなファブリックから形成されるカバー素材60からなり(
図6参照)、端部60a相互を、縫合糸61(
図4参照)を使用した縫合により結合させて、筒形状に形成されている。
【0028】
なお、バッグ組付体29をラップベルト部13に組み付ける際には、まず、筒状にする前のバッグ連結部52を連結させたガス供給路部45を、エアバッグ30に連結して、エアバッグ30を折り畳む。ついで、筒状にする前のバッグ連結部52により、ラップベルト部13の組付部位22を包んで、バッグ連結部52を筒状に形成する。そして、折り畳んだエアバッグ30等を、組付部位22のラップベルト部13とともに、包んで、バッグカバー59を筒状に形成すれば、バッグ組付体29(組付本体29a)を、ラップベルト部13の組付部位22に、組み付けて、バッグカバー59で覆うことができる。そして、インフレーター24のパイプ部26に、組付本体29aから延びるガス供給路部45のガス流路部47の先端47aを、クランプ27を利用して、連結させれば、乗員保護装置10を、シート1に搭載することができる
実施形態の乗員保護装置10では、シート1への搭載後、乗員MPが、シート1に着座して、シートベルト11を巻き取り装置15から引き出しつつ、タング20をバックル19に締結させれば、シートベルト11を装着することができる。その際、シートベルト11の装着時には、ラップベルト部13の組付部位22では、ラップベルト部13の乗員側面13a側が、バッグ連結部52とバッグカバー59とを介在させて、乗員MPの腹部MB側に配置され、ラップベルト部13の反乗員側面13b側では、バッグカバー59に覆われたガス供給路部45のバッグ側部46とエアバッグ30とのバッグ組付体29における組付本体29a側が、配設されることとなる(
図3,4参照)。なお、シートベルト11の非装着状態として巻き取り装置15で巻き取られた状態では、ラップベルト部13の反乗員側面13b側が、背もたれ部2の前面2a側と対向して、バッグ組付体29の組付本体29a側を前面2a側に接触させる状態となる。
【0029】
そして、シートベルト11を装着後、バッグ組付体29の組付本体29aが、乗員MPの上半身MUの左右方向の中央に配置されていなければ、ラップベルト部13の組付部位22に対し、ラップベルト部13に沿わせてバッグ連結部52を左右にずらして、バッグ組付体29の組付本体29aを、乗員MPの上半身MUの左右方向の中央に配置させればよい。
【0030】
その後、車両が衝突すると、巻き取り装置15のプリテンショナー機構16が作動されるとともに、その作動に遅れて、インフレーター24が作動される。すると、ラップベルト部13の組付部位22に組み付けられたバッグ組付体29のエアバッグ30が、インフレーター本体25からの膨張ガスを流入させて、乗員MPの上半身MUを拘束可能に膨張する(
図9参照)。そして、プリテンショナー機構16の作動時には、
図7,8に示すように、乗員MPのシート1への着座姿勢を安定させるように、乗員MPに装着したシートベルト11が巻き取られ、シートベルト11のラップベルト部13がタング20側に引き込まれるとともに、ラップベルト部13から連なるショルダーベルト部12が、乗員MPの肩口側に引き込まれる。その際、膨張前のエアバッグ30を収納したバッグ組付体29のバッグ連結部52内を、ラップベルト部13が摺動するが、バッグ連結部52は、ラップベルト部13との接触部位となる内周面52a側に、摩擦抵抗を低減させてラップベルト部13を滑らせることができる滑り面部53、を備えており、ラップベルト部13がバッグ連結部52内を円滑に摺動し、乗員MPの着座姿勢を安定させるように、シートベルト11が巻き取り装置15に巻き取られ、そしてその後、膨張したエアバッグ30により、前方移動する乗員MPの上半身MUが受け止められて保護される。
【0031】
したがって、実施形態の乗員保護装置10では、プリテンショナー機構16の作動時に、バッグ組付体29を組み付けたシートベルト11を円滑に巻き取ることが可能となり、乗員MPの着座姿勢が安定し、そして、膨張したエアバッグ30により、的確に乗員MPを保護することができる。
【0032】
そして、実施形態のバッグ組付体29のバッグ連結部52は、内周面52aに、滑り面部53を構成するフッ素樹脂材55を設けて、構成されている。
【0033】
詳しくは、エアバッグ30の周壁31等を形成するバッグ用基布と同様な本体シート54の内周面54bに、フッ素樹脂材材(テフロン(登録商標)テープ)55を貼着させて、形成されている。そのため、従来構成のバッグ用基布からなるバッグ連結部52の本体シート54の内周面54bに、単に、フッ素樹脂材(テフロン(登録商標)テープ)55を配設するだけで、簡単に、ラップベルト部13を滑らせ可能に摩擦抵抗を低減させた滑り面部53を設けたバッグ連結部52、を得ることができる。
【0034】
なお、実施形態の乗員保護装置10では、シートベルト11を乗員MPに装着させてプリテンショナー機構16を作動させた場合、滑り面部53を設けたバッグ連結部52を使用した際には、約70mm程度、シートベルト11を巻き取ることができた。ちなみに、バッグ連結部として、従来構成のバッグ用基布からなる本体シート54だけで構成した場合には、約60mm程度しか、シートベルト11を巻き取ることができなかった。
【0035】
なお、バッグ連結部としては、ラップベルト部との接触部位、すなわち、筒状のバッグ連結部では内周面側に、プリテンショナー機構の作動時におけるシートベルトの巻き取り時に、ラップベルト部を滑らせ可能に摩擦抵抗を低減させた滑り面部、を配設させていればよく、実施形態のようにフッ素樹脂材55を配設したり、コーティング材を設けない連結部用素材57から、形成する場合に限定されず、シートベルト11に対する動摩擦係数が、フッ素樹脂材55と同等以下程度の素材から、滑り面部を形成してもよい。
【0036】
ちなみに、JISK7125に則った摩擦係数試験方法(荷重1000g、移動速度10mm/sとして、試験片(幅60mm、長さ250mm)上に、シートベルト(幅37mm、長さ70mm)を載せて、荷重をかけた状態のシートベルトを、シートベルトの長手方向に引っ張る測定)では、実施形態のバッグ連結部52を試験片として測定した場合、動摩擦係数μkは、約0.08であった。
【符号の説明】
【0037】
1…シート、10…乗員保護装置、11…シートベルト、11a…上端、11b…(固定端)下端、12…ショルダーベルト部、13…ラップベルト部、15…巻き取り装置、16…プリテンショナー機構、19…バックル、20…タング、22…組付部位、29…バッグ組付体、29a…組付本体、30…エアバッグ、52…バッグ連結部、52a…内周面、53…滑り面部、55…フッ素樹脂材、
MP…乗員、MW…腰部、MU…上半身。