IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ハンドル 図1
  • 特開-ハンドル 図2
  • 特開-ハンドル 図3
  • 特開-ハンドル 図4
  • 特開-ハンドル 図5
  • 特開-ハンドル 図6
  • 特開-ハンドル 図7
  • 特開-ハンドル 図8
  • 特開-ハンドル 図9
  • 特開-ハンドル 図10
  • 特開-ハンドル 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143288
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050581
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】増森 淳史
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚冬
(72)【発明者】
【氏名】濱口 純吉
(72)【発明者】
【氏名】勝村 俊介
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA26
3D030DA35
3D030DA45
3D030DA55
3D030DA56
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DA69
3D030DB13
3D030DB83
(57)【要約】
【課題】良好なセンサ感度を耐久性よく維持できる把持部を、簡便に形成できる構成のハンドルを提供すること。
【解決手段】ハンドルWの操舵時に把持する環状の把持部Rが、芯材3と、芯材を覆う被覆層10と、把持部の表面側に配設される表皮層21と、被覆層と表皮層との間に配置される把持検知層13と、を備える。把持検知層は、絶縁層16を介在させて、芯材側のシールド層14と表皮層側のセンサ層19とを備える。把持部Rは、表皮層の裏面22b側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して形成されるセンサ層19、を配設させて構成される外皮層24、を備える。外皮層24は、被覆層の表面10a側を覆ったシールド層14を被覆した絶縁層16に巻き付けられて、把持部Rの表面側に配設されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵時に把持する環状の把持部が、芯材と、該芯材を覆う被覆層と、前記把持部の表面側に配設される表皮層と、前記被覆層と前記表皮層との間に配置される把持検知層と、を備えて、
前記把持検知層が、絶縁層を介在させて、前記芯材側のシールド層と前記表皮層側のセンサ層とを備えて構成されるハンドルであって、
前記表皮層の裏面側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して形成される前記センサ層、を配設させて構成される外皮層、を備え、
該外皮層が、前記被覆層の表面側を覆った前記シールド層を被覆した前記絶縁層に巻き付けられて、前記把持部の表面側に配設されていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記表皮層が、皮革から形成され、
前記外皮層が、
前記把持部の周方向に沿って分割された複数の分割材から構成されるとともに、隣接する前記分割材の端縁相互を、導電糸による縫合により、連結して、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記絶縁層が、前記シールド層の表面側に貼着される絶縁テープから形成されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
前記被覆層が、型成形により配設される発泡ウレタンから形成され、
前記シールド層が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成されて、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていることを特徴とする請求項3に記載のハンドル。
【請求項5】
前記シールド層が、前記被覆層の表面側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵時に把持する環状の把持部に、把持を検知可能なセンサ層を設けて構成されるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハンドルでは、操舵時に把持する環状の把持部が、芯材と、芯材を覆う被覆層と、把持部の表面側に配設される表皮層と、被覆層と表皮層との間に配置される把持検知層と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。把持検知層は、絶縁層を介在させて、芯材側のシールド層と表皮層側のセンサ層とを備えて構成されていた。センサ層は、運転者の手や指が把持部に接近する際の静電容量の増加を検出するものであり、また、シールド層は、センサ層の芯材との間で発生する容量結合を抑制し、把持検知の精度を阻害するセンサ層に生ずる寄生容量を抑制するために、配設されている。そして、このハンドルでは、芯材の周囲に形成された被覆層の表面に、フィルム状のシールド層を巻き付け、さらに、シート状のセンサ層を貼着させた絶縁層を、シールド層の表面に巻き付け、そして、センサ層の表面側に、皮革等からなる表皮層を巻き付けて、ハンドルの把持部を形成していた。なお、絶縁層を間にしてセンサ層とシールド層とを設けた把持検知層を具備するハンドルの把持部としては、把持検知層の表面側に、センサ層を保護するウレタン塗料等を塗布してなるコート層を設けた表皮材として、被覆層の表面に配設するものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-166858号公報
【特許文献2】特開2019-202446号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の特許文献1に記載のハンドルでは、センサ層を貼着させた絶縁層を、シールド層の表面に巻き付ける際、センサ層が、シールド層と導通しないように、注意しながら、絶縁層自体をシールド層の表面側に巻き付ける状態となって、簡便に、把持部を形成できなかった。また、特許文献2に記載のハンドルでは、シールド層、絶縁層、センサ層、及び、コート層の各層が積層された一枚状の表皮材を、被覆層の表面側に配設する構成としており、簡便に、把持部を形成できる構成であるものの、センサ層の表面には、単に、コート層が塗布されて配設されているだけであり、運転者が把持する把持部では、コート層の摩耗によりセンサ層が露出する虞れがあり、良好なセンサ感度を維持する耐久性に、課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、良好なセンサ感度を耐久性よく維持できる把持部を、簡便に形成できる構成のハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンドルでは、操舵時に把持する環状の把持部が、芯材と、該芯材を覆う被覆層と、前記把持部の表面側に配設される表皮層と、前記被覆層と前記表皮層との間に配置される把持検知層と、を備えて、
前記把持検知層が、絶縁層を介在させて、前記芯材側のシールド層と前記表皮層側のセンサ層とを備えて構成されるハンドルであって、
前記表皮層の裏面側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して形成される前記センサ層、を配設させて構成される外皮層、を備え、
該外皮層が、前記被覆層の表面側を覆った前記シールド層を被覆した前記絶縁層に巻き付けられて、前記把持部の表面側に配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るハンドルでは、把持検知層のセンサ層が、導電性材料を含有した塗料から形成される構成として、表皮層の裏面側に塗布されて、外皮層として、把持部に配設される構成としている。そして、この外皮層は、被覆層の表面側を覆ったシールド層を被覆した絶縁層に対して、巻き付けられる構成であって、絶縁層が、シールド層の表面側を十分に覆うように、配設されていれば、単に、外皮層を、絶縁層に巻き付けるだけで、把持部を形成できる。すなわち、センサ層がシールド層と接触しないように注意しつつ、外皮層を巻き付けなくともよいことから、簡便に、把持部を形成できる。また、センサ層は、表皮層の裏面側に塗布されており、表皮層に保護されることとなり、耐摩耗性を確保できて、耐久性よく、良好なセンサ感度を維持できる。
【0008】
したがって、本発明に係るハンドルは、良好なセンサ感度を耐久性よく維持できる把持部を、簡便に形成できる。
【0009】
そして、前記表皮層が、皮革から形成されて、前記外皮層が、前記把持部の周方向に沿って分割された複数の分割材から構成されるとともに、隣接する前記分割材の端縁相互を、導電糸による縫合により、連結して、形成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、環状の把持部の周方向の全周にわたって、皮革が配設される皮巻きハンドルとなることから、把持部の触感や意匠を向上させたハンドルとすることができる。また、隣接する分割材の端縁相互が、導電糸により、連結されることから、隣接する分割材の裏面側のセンサ層も、相互に、円滑に導通することとなり、把持部の周方向の全周にわたって、把持検知が可能となる。
【0011】
また、本発明に係るハンドルでは、前記絶縁層が、前記シールド層の表面側に貼着される絶縁テープから形成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、シールド層の全域を覆うように、容易に、絶縁層を配設することができる。
【0013】
この場合、前記被覆層が、型成形により配設される発泡ウレタンから形成され、
前記シールド層が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤から形成されて、前記被覆層の成形時に、前記被覆層の表面側に、配設される構成としていてもよい。
【0014】
このような構成では、被覆層の成形型の型面に、モールドコート剤を塗布し、そして、被覆層を型成形すれば、被覆層の表面側に、モールドコート剤からなるモールドコート層、すなわち、シールド層、を配設させることができることから、シールド層を容易に形成できる。
【0015】
勿論、シールド層は、前記被覆層の表面側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して、形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のハンドルを示す概略平面図である。
図2】実施形態のハンドルにおける把持部の断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】実施形態のハンドルにおける把持部の概略部分断面図であり、図1のIII-III部位に対応する。
図4】実施形態の各分割材を示す平面図である。
図5】実施形態のハンドルにおける芯材に、シールド層を設けた被覆層を成形した状態を示す平面図である。
図6】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
図7】実施形態のハンドルの製造工程を説明する図であり、図6の後の工程を示す。
図8】実施形態の分割材の幅方向の両縁を、シールド層と絶縁層とを設けた被覆層の内周縁側に配設する状態を説明する図である。
図9】他の実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
図10】さらに他の実施形態のハンドルの製造工程を説明する図である。
図11】隣接する分割材の端縁相互を縫合する変形例を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のハンドルWは、図1に示すように、操舵時に把持する略円環状の把持部Rと、把持部Rの中央のボス部Bと、把持部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ハンドルWは、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置60と、ハンドル本体1と、ボス部Bの下部側を覆う図示しないロアカバーと、を備えて構成されている。
【0018】
さらに、ハンドル本体1は、図1,5に示すように、把持部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯材3、を備えて構成されている。芯材3は、把持部Rに配設される把持芯材部4と、ボス部Bに配設されるボス芯材部5と、把持芯材部4とボス芯材部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯材部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯材部5は、車両のステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯材部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯材部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯材部5側で左右に分岐し、そして、把持芯材部4側で結合されるような2本のスポーク芯材部7,7と、から構成されている。
【0019】
把持部Rに配設される把持芯材部4の周囲には、図2に示すように、被覆層10が配設されるとともに、把持部Rの表面側に配設される表皮層21と、被覆層10と表皮層21との間に配置される把持検知層13と、が配設されている。
【0020】
被覆層10は、図1~3,5に示すように、把持芯材部4の周囲と、把持芯材部4近傍のスポーク芯材部6(L,R),7の周囲とに配設されている。被覆層10は、絶縁性を有したウレタン等の合成樹脂材料から形成されて、芯材3の把持芯材部4やスポーク芯材部6,7の周囲に、射出成形等により、形成されている。
【0021】
実施形態の場合、被覆層10は、型形成により成形される発泡ウレタンから形成されている。
【0022】
また、被覆層10には、把持部Rの前後の左右両側の部位に、把持芯材部4の断面周方向に沿う環状の凹溝11(LF,LB,RF,RB)が配設されている(図3,5参照)。これらの凹溝11(LF,LB,RF,RB)は、図3に示すように、隣接する後述の分割材25(F,L,R,B)の端縁30,30相互(連結部33(LF,LB,RF,RB))を収納する木目込み溝となる。
【0023】
表皮層21は、天然皮革や合成皮革等の皮革22から形成されている。実施形態の場合、皮革22は、合成皮革から形成されている。
【0024】
把持検知層13は、絶縁層16を介在させて、芯材3の把持芯材部4側のシールド層14と表皮層21側のセンサ層19とを備えて構成されている。シールド層14とセンサ層19とは、把持検知回路50に接続されるリード線51,52を結線させており、把持検知回路50は、把持部Rに接近する運転者の手Hや指Fが接近する際の静電容量の増加をセンサ層19(27)が検出して、把持を検知することとなる。また、実施形態では、絶縁層16は、塩化ビニル等の樹脂製の絶縁テープ17から形成されている。センサ層19とシールド層14とは、共に、導電性材料を含有させたウレタン等の樹脂製の塗料から形成されている。導電性材料としては、銀粒子等の金属粉末やカーボン等の導電性フィラーが例示できる。そして、実施形態の場合、センサ層19は、表皮層21としての皮革22の裏面22b側に、導電性材料を含有した塗料を塗布して、配設されている。
【0025】
また、シールド層14は、被覆層10の表面10a側に配設されており、実施形態の場合、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤45から形成されて(図6参照)、被覆層10の成形時に、成形される被覆層10の表面10aに溶着されるように、配設されている。シールド層14の表面14aには、絶縁テープ17を巻き付けて、絶縁層16が配設されている。シールド層14と絶縁層16とは、被覆層10の凹溝11の内周面11a側にも、配設されている(図3参照)。
【0026】
さらに、実施形態では、表皮層21としての皮革22の裏面22bに、導電性材料を含有してなる塗料を塗布してなるセンサ層19を設けた部材を、外皮層24として、絶縁層16の表面16a側に、接着により配設させて、把持部Rを形成している。
【0027】
また、外皮層24は、把持部Rの周方向に沿って分割された複数(実施形態では4枚)の分割材25(F,L,R,B)を連結させた円環状に形成されている。各分割材25は、実施形態の場合、皮革22を構成する分割材本体としての皮革26と、皮革26の裏面26b側に導電性塗料を塗布されて形成されたセンサ層19を構成するセンサ層27と、から形成されている。
【0028】
分割材25は、図1,4に示すように、被覆層10の前側の左右の凹溝11LF,11RF間に配設される分割材25F、被覆層10の左側の前後の凹溝11LF,11LB間に配設される分割材25L、被覆層10の右側の前後の凹溝11RF,11RB間に配設される分割材25R、及び、被覆層10の後側の左右の凹溝11LB,11RB間に配設される分割材25B、の4枚から構成されている。
【0029】
分割材25Fは、平らに展開した状態で、略長方形形状として、他の分割材25L,25R,25Bは、略十字形形状としている。また、分割材25Fは、図4に図示される状態の左右の端縁30,30が、それぞれ、隣接する左右の分割材25L,25Rの上端側の端縁30,30と連結される。分割材25Bは、図4に図示される状態の左右の端縁30,30が、それぞれ、隣接する左右の分割材25L,25Rの下端側の端縁30,30と連結される。
【0030】
各分割材25(F,L,R,B)の端縁30を除く外周側の側縁28と内周側の側縁29とは、各分割材25(F,L,R,B)が、接着剤を利用しつつ、対応する被覆層10(詳しくは、絶縁層16)の表面16aを覆うように配設される際、相互に密着するように接近して配設され(図8参照)、皮巻きハンドルWの把持部Rとして、構成されることとなる。なお、図例では、接着剤だけを利用した場合を例示したが、側縁28,29相互を縫合してもよい。また、左右と後の分割材25L,25R,25Bの各側縁28,29では、中間付近のボス側縁28a,26aは、相互に密着せずに、被覆層10のスポーク部SL,SR,SB側の端面に、接着されることとなる。
【0031】
そして、隣接する分割材25(F,L,R,B)の端縁30,30相互の連結部33は、それぞれ、芯材3の把持芯材部4側、すなわち、各分割材25のセンサ層27側に曲げられて、曲げられた折曲部31とした端縁30,30相互を、厚さ方向で貫通する導電糸36による縫合により、連結されている(図3参照)。
【0032】
なお、導電糸36は、ポリエステル等の繊維に導電性を有した金属やカーボンを入れる等して、形成されている。
【0033】
また、導電糸36の縫合によって形成した縫合部34を補強するように、導電糸36より引張強度のある縫合糸により、隣接する分割材25の端縁30,30相互を縫合してもよい。
【0034】
なお、導電糸36の縫合は、実施形態の場合、並み縫いとしているが、かがり縫い等の他の縫い方でもよい。
【0035】
実施形態のハンドル本体1の製造について説明する。実施形態のハンドル本体1の製造工程は、モールドコート剤塗布工程、被覆層成形工程、絶縁層配設工程、及び、皮巻き工程、を具備する。
【0036】
モールドコート剤塗布工程では、図6のA,Bに示すように、被覆層10を成形する成形型40を使用する。そして、まず、成形型40の割型41,42の型面41a,42aに、シールド層14を形成するための導電性材料を含有した塗料からなるモールドコート剤45を、塗布装置としてのスプレーガン44により、塗布する。なお、モールドコート剤45を塗布する前には、型面41a,42aに離型剤を塗布しておく。
【0037】
ついで、被覆層成形工程として、図6のC,Dに示すように、割型41,42からなる成形型40を型締めし、キャビティ40a内に、被覆層10を成形するウレタン材料を注入する。その後、注入したウレタン材料を硬化させれば、表面10aに、モールドコート剤45からなるモールドコート層15としてのシールド層14が配設されつつ、被覆層10を成形できて、被覆層10を成形した第1ハンドル体47を製造できる。そして、製造した第1ハンドル体47を、成形型40を型開きして、取り出す。
【0038】
その後、絶縁層配設工程では、図7のA,Bに示すように、第1ハンドル体47のシールド層14の表面14aに、絶縁テープ17を巻き付けて、絶縁層16を配設して、第2ハンドル体48を形成する。
【0039】
そして、皮巻き工程では、4枚の分割材25(F,L,R,B)を相互に連結させた円環状の外皮層24を形成し、各連結部33(LF,LB,RF,RB)を、それぞれ、第2ハンドル体48における被覆層10の対応する凹溝11(LF,LB,RF,RB)の部位に収納させつつ、接着剤を利用して、外皮層24を絶縁層16の表面16aに被せる。その後、各分割材25(F,L,R,B)の端縁30を除く外周側の側縁28側と内周側の側縁29側とを、相互に接近させて(図8参照)、外皮層24を絶縁層16に接着させれば、図7のCに示すように、皮巻きハンドルWの把持部Rを形成することができ、ハンドル本体1を形成することができる。
【0040】
その後、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを組み付け、車両のステアリングシャフトに、ボス芯材部5を嵌めてナット止めして、ハンドル本体1を車両に取り付けるとともに、エアバッグ装置60をボス部Bの上部側に取り付ければ、ハンドルWを形成することができるとともに、車両に、ハンドルWを搭載することができる。
【0041】
なお、エアバッグ装置60を取り付ける際には、センサ層19(27)やシールド層14から延びるリード線51,52を、把持検知回路50に接続させておく(図1参照)。
【0042】
車両に搭載されたハンドルWでは、図2に示すように、運転者の手Hの指Fが、把持部Rを把持するように、センサ層19(27)に接近すれば、静電容量が上昇したことを所定の把持検知回路50が検知することから、運転者の把持を検知することができる。
【0043】
そして、実施形態のハンドルWでは、把持検知層13のセンサ層19が、導電性材料を含有した塗料から形成される構成として、表皮層21の裏面22b側に塗布されて、外皮層24として、把持部Rに配設される構成としている。そして、この外皮層24は、被覆層10の表面10a側を覆ったシールド層14を被覆した絶縁層16に対して、巻き付けられる構成であって、絶縁層16が、シールド層14の表面14a側を十分に覆うように、配設されていれば、単に、外皮層24を、絶縁層16に巻き付けるだけで、把持部Rを形成できる。すなわち、センサ層19がシールド層14と接触(導通)しないように注意しつつ、外皮層24を巻き付けなくともよいことから、簡便に、把持部Rを形成できる。また、センサ層19は、表皮層21の裏面22b側に塗布されており、表皮層21に保護されることとなり、耐摩耗性を確保できて、耐久性よく、良好なセンサ感度を維持できる。
【0044】
したがって、実施形態のハンドルWは、良好なセンサ感度を耐久性よく維持できる把持部Rを、簡便に形成できる。
【0045】
そして、実施形態では、表皮層21が、皮革22から形成されて、外皮層24が、把持部Rの周方向に沿って分割された複数の分割材25(F,L,R,B)から構成されるとともに、隣接する分割材25,25の端縁30,30相互を、導電糸36による縫合により、連結して、形成されている。
【0046】
そのため、実施形態のハンドルWでは、円環状の把持部Rの周方向の全周にわたって、皮革22が配設される皮巻きハンドルWとなることから、把持部Rの触感や意匠を向上させたハンドルWとすることができる。また、隣接する分割材25,25の端縁30,30相互が、導電糸36により、連結されることから、隣接する分割材25,25の裏面26b側のセンサ層27(19)も、相互に、円滑に導通することとなり、把持部Rの周方向の全周にわたって、把持検知が可能となる。
【0047】
また、実施形態のハンドルWでは、絶縁層16が、シールド層14の表面14a側に貼着される絶縁テープ17から形成されている。
【0048】
そのため、実施形態では、シールド層14の全域を覆うように、容易に、絶縁層16を配設することができる。
【0049】
さらに、実施形態では、被覆層10が、型成形により配設される発泡ウレタンから形成され、シールド層14が、導電性材料を含有したウレタン系塗料からなるモールドコート剤45から形成されて、被覆層10の成形時に、被覆層10の表面10a側に、配設される構成としている。
【0050】
そのため、実施形態では、被覆層10の成形型40の型面41a,42aに、モールドコート剤45を塗布し、そして、被覆層10を型成形すれば、被覆層10の表面10a側に、モールドコート剤45からなるモールドコート層15、すなわち、シールド層14、を配設させることができることから、シールド層14を容易に形成できる。
【0051】
なお、シールド層は、導電性材料を含有した塗料を塗布したり、印刷する等にして配設してもよい。すなわち、例えば、図9に示すように、被覆層成形工程、シールド層配設工程、絶縁層配設工程、及び、皮巻き工程、から、ハンドルWAのハンドル本体1Aを形成してもよい。被覆層成形工程では、図9のAに示すように、芯材3の把持芯材部4の周囲に、発泡ウレンタン等からなる被覆層10Aを、型成形により、形成する。ついで、シールド層配設工程では、図9のA,Bに示すように、被覆層10Aの表面10aに、導電性材料を含有した塗料を塗布して、シールド層14Aを形成する。その後、絶縁層配設工程では、図9のB,Cに示すように、シールド層14Aの表面14aに、絶縁テープ17を巻き付けて、絶縁層16Aを形成する。そして、皮巻き工程では、図9のC,Dに示すように、実施形態と同様に、円環状に形成した外皮層24を絶縁層16Aの表面16aに巻き付ければ、ハンドルWAのハンドル本体1Aにおける把持部RAを形成することができる。
【0052】
なお、絶縁層16は、絶縁テープ17を利用せずに、シート状の絶縁材をシールド層に巻き付けたり、絶縁性を有した塗料や接着剤等を、シールド層の表面に塗布して、配設してもよい。
【0053】
また、シールド層を導電性材料を含有した塗料を塗布して形成する場合、図10に示すように、被覆層成形工程、ヒータ配設工程、シールド層配設工程、絶縁層配設工程、及び、皮巻き工程、から、ヒータ付きの把持部RBを有したハンドルWBのハンドル本体1Bを形成してもよい。すなわち、まず、図10のAに示すように、芯材3の把持芯材部4の周囲に、発泡ウレンタン等からなる被覆層10Bを、型成形により、形成する。ついで、ヒータ配設工程では、図10のBに示すように、成形した被覆層10Bの所定の表面10a側に、シート状のヒータエレメント54を貼着させる。シールド層配設工程では、図10のB,Cに示すように、配設したヒータエレメント54の表面54aやヒータエレメント54を配設していない被覆層10Bの表面10aに、導電性材料を含有した塗料を塗布して、シールド層14Bを形成する。その後、絶縁層配設工程では、図10のC,Dに示すように、シールド層14Bの表面14aに、絶縁テープ17を巻き付けて、絶縁層16Bを形成する。そして、皮巻き工程では、図10のD,Eに示すように、実施形態と同様に、円環状に形成した外皮層24を絶縁層16Bの表面16aに巻き付ければ、ヒータ付きの把持部RBを有したハンドルWBのハンドル本体1Bを形成することができる。
【0054】
また、実施形態のハンドルWでは、分割材25(F,L,R,B)相互の連結部33(LF,LB,RF,RB)が、被覆層10の凹溝11(LF,LB,RF,RB)に収納されても、隣接する分割材25(F,L,R,B)の折曲された端縁30,30相互が、厚さ方向で貫通する導電糸36による縫合により、連結されている(図3参照)。すなわち、導電糸36が、表皮層21としての皮革22の表面22a側に接近して、連結部33近傍の分割材25の一般部38のセンサ層27(19)自体の配置位置に接近させることとなる。そして、導電糸36自体もセンサ部位として機能することから、分割材25,25相互の連結部33とその近傍の一般部38とで、センサ感度の差を抑制することができて、連結部33に、折曲部31,31間の断面三角状の空間SPが配設されていても、連結部33でのセンサ感度を良好にすることができる。
【0055】
なお、見栄えと触感を考慮しなれば、図11に示すように、隣接する分割材25,25の端縁30,30の端面32,32を突き合わせて、端縁30,30相互を、導電糸36により、縫合し、ハンドルWCのハンドル本体1Cにおける把持部RCを形成してもよい。
【0056】
また、実施形態のハンドルWでは、略円環状の把持部Rを例示したが、複数の分割材を連結させた環状の外皮層24を、絶縁層16の表面16a側に嵌めることができれば、把持部Rは、円環形状に限定されるものではなく、四角環状や、楕円環状等の種々の形状としていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
3…芯材、4…把持芯材部、10,10A,10B…被覆層、10a…表面、13…把持検知層、14,14A,14B…シールド層、14a…表面、15…モールドコート層、16,16A,16B…絶縁層、16a…表面、17…絶縁テープ、19,27…センサ層、21…表皮層、22…皮革、22a…表面、22b…裏面、24…外皮層、25(F,L,R,B)…分割材、30…端縁、36…導電糸、40…成形型、41a,42a…型面、45…モールドコート剤、
R,RA,RB,RC…把持部、W,WA,WB,WC…ハンドル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11