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特開2023-143289二酸化炭素分離材、二酸化炭素を分離又は回収する方法、および、二酸化炭素分離材の製造方法
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  • 特開-二酸化炭素分離材、二酸化炭素を分離又は回収する方法、および、二酸化炭素分離材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143289
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離材、二酸化炭素を分離又は回収する方法、および、二酸化炭素分離材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20230928BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 2/28 20060101ALI20230928BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230928BHJP
   C07C 215/14 20060101ALI20230928BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230928BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/34 H
B01J20/34 F
B01J20/34 E
B01J20/32
B01J2/28
B01D53/14 100
C07C215/14
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050582
(22)【出願日】2022-03-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「CCUS研究開発・実証関連事業/CO2分離回収技術の研究開発/先進的二酸化炭素固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」委託事業(事業期間、2020年度から2022年度)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591178012
【氏名又は名称】公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブ ティ クェン
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリ フィロツ アラム
(72)【発明者】
【氏名】余語 克則
(72)【発明者】
【氏名】村岡 利紀
【テーマコード(参考)】
4D020
4G004
4G066
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BC01
4D020BC02
4D020BC10
4D020CA05
4G004NA02
4G066AA04C
4G066AA05C
4G066AA10D
4G066AA14D
4G066AA16C
4G066AA20C
4G066AA20D
4G066AA22C
4G066AA22D
4G066AA23C
4G066AA61C
4G066AA63C
4G066AA63D
4G066AA75C
4G066AB06B
4G066AB10B
4G066AB13B
4G066AC02D
4G066AC15D
4G066AC17C
4G066AC22D
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA12
4G066FA26
4G066GA01
4G066GA06
4G066GA14
4G066GA16
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC18
4G146JC19
4G146JC28
4H006AA03
4H006AB99
4H006BN10
4H006BU32
(57)【要約】
【課題】低コストで、酸化劣化に対する耐性が高く、高性能な二酸化炭素分離材を提供し、高効率で二酸化炭素を分離又は回収する。
【解決手段】ポリアミンを含み、ポリアミンは、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有するプロピルポリアミン成分を含み、少なくとも1つのプロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基であり、ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し、ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合しており、2つ以上のプロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基である、二酸化炭素分離材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンを含み、
前記ポリアミンは、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有するプロピルポリアミン成分を含み、
少なくとも1つの前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基であり、
前記ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し、
前記ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合しており、
2つ以上の前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基である、二酸化炭素分離材。
【請求項2】
前記非置換イソプロピル基は、2級アミンを構成する窒素原子に結合している、請求項1に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項3】
前記プロピルポリアミン成分は、2つ以上のNH基と、窒素原子間に介在する1つ以上のアルキレン基と、を有する、請求項1または2に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項4】
前記プロピルポリアミン成分が、一般式(1):
で表される骨格を有し、
式(1)中のRは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルキルアミノ基を示し、
Aは、炭素数2~6のアルキレン基を示し、
mは、2~50の整数を示し、
複数あるRは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、少なくとも1つのRは水素原子または炭素数1~6のアルキルアミノ基であり、
複数あるAは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項5】
前記プロピルポリアミン成分が一般式(2):
で表され、式(2)中、
は、Rまたは基:-A-NRを示し、
は、Rまたは基:-A-NRを示し、
Aは、炭素数2~6のアルキレン基を示し、
nは、1~5の整数を示し、
pおよびqは、それぞれ独立して0または1を示し、
複数あるAは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、
複数ある場合のRは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、
、R2、R7およびR9は前記非置換イソプロピル基を示し、R3、R4、R6およびR8は水素原子を示し、
5の少なくとも1つは前記ヒドロキシプロピル基を示し、R5の残りは水素原子を示す、請求項4に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項6】
前記ポリアミンの760mmHgにおける沸点が320℃以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項7】
前記ポリアミンの骨格アミンが、エチレンイミン、プロピレンイミン、2-エチルアジリジン、2-プロピルアジリジンおよび2-ブチルアジリジンのモノポリマー並びにこれらの少なくとも2種のコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項記載に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項8】
前記ポリアミンの骨格アミンが、テトラエチレンペンタミン、スペルミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンおよびトリエチレンテトラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項9】
前記二酸化炭素分離材は、ポリアミン担持体を含み、
前記ポリアミン担持体は、前記ポリアミンと、前記ポリアミンを担持する支持体と、を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項10】
前記支持体が、シリカ、ポリメチルメタクリレート、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、ゼオライト類縁化合物、天然鉱物、廃棄物固体、活性炭およびカーボンモレキュラーシーブからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項11】
前記支持体が、比表面積(BET)が50m/g以上1000m/g以下であり、かつ、細孔容積が0.1cm/g~2.3cm/gである、請求項9または10に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項12】
前記ポリアミン担持体と、前記ポリアミン担持体を造粒するバインダーと、を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項13】
前記バインダーが、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物、フッ素樹脂、セルロース誘導体およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の二酸化炭素分離材。
【請求項14】
処理対象のガスを請求項1~13のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離材に接触させ、二酸化炭素を吸収する第1工程、および
前記第1工程において二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素分離材から二酸化炭素を脱離させる第2工程、
を含む二酸化炭素を分離又は回収する方法であって、
前記第2工程が
(A)前記二酸化炭素分離材を減圧条件下におき、二酸化炭素を脱離させる工程(圧力スィング法)、
(B)前記二酸化炭素分離材に水蒸気および不活性ガスの少なくとも一方を接触させ、二酸化炭素を脱離させる工程、及び
(C)前記二酸化炭素分離材を加熱し、二酸化炭素を脱離させる工程(温度スィング法)
のいずれか一つ以上を含む、二酸化炭素を分離又は回収する方法。
【請求項15】
前記処理対象のガスが温度20~60℃かつ二酸化炭素分圧100kPa以下のガスである請求項14に記載の二酸化炭素を分離又は回収する方法。
【請求項16】
ポリアミンを準備する工程と、
前記ポリアミンを支持体と接触させ、前記ポリアミンと、前記ポリアミンを担持する前記支持体と、を含むポリアミン担持体を得る工程と、
を具備し、
前記ポリアミンは、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有するプロピルポリアミン成分を含み、
少なくとも1つの前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基であり、
前記ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し、
前記ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合しており、
2つ以上の前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基である、二酸化炭素分離材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離材、二酸化炭素を分離又は回収する方法、および、二酸化炭素分離材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、窒素原子上に少なくとも2つイソプロピル基を有するポリアミンを支持体に担持したポリアミン担持体を含有する二酸化炭素分離材及び当該二酸化炭素分離材を用いた二酸化炭素の分離又は回収方法を提案している。
【0003】
特許文献2は、水素および触媒の存在下でのカルボニル系化合物とヒドロキシルアルキルアミンとの反応を含む、アルキルアルカノールアミン類の調製方法を提案している。
【0004】
特許文献3は、アミン化合物が固定化された多孔質支持体をコアとして有し、二酸化硫黄による不活性化に耐性を有するアミン層をシェルとして有し、アミンの酸化分解を抑制し、酸素及び二酸化硫黄に耐性のあるキレート剤を含むコアシェル型アミン系二酸化炭素吸着剤を提案している。
【0005】
特許文献4は、変性ポリアミンおよび固体支持体を含み、空気を含むガス混合物から二酸化炭素を吸着するための再生可能な固体収着剤を提案している。変性ポリアミンは、アミンとエポキシドとの反応生成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/208712号
【特許文献2】特表2012-530771号公報(特許第5678050号)
【特許文献3】米国特許第10654025号明細書
【特許文献4】米国公開特許2019/0168185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように二酸化炭素を吸着するための複数の材料が開発されているが、製造コストの低減と性能の更なる向上が求められている。例えば、支持体にポリアミンを担持した二酸化炭素分離材の酸化劣化に対する耐性を高めるとともに、ポリアミンの揮散による減少を抑制することが望まれている。二酸化炭素分離材は、酸素を含む雰囲気(特に空気)中で、例えば60℃程度の温度での使用が想定されるためである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、ポリアミンを含み、前記ポリアミンは、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有するプロピルポリアミン成分を含み、少なくとも1つの前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基であり、前記ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し、前記ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合しており、2つ以上の前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基である、二酸化炭素分離材に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、処理対象のガスを上記二酸化炭素分離材に接触させ、二酸化炭素を吸収する第1工程、および前記第1工程において二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素分離材から二酸化炭素を脱離させる第2工程、を含む二酸化炭素を分離又は回収する方法であって、前記第2工程が(A)前記二酸化炭素分離材を減圧条件下におき、二酸化炭素を脱離させる工程(圧力スィング法)、(B)前記二酸化炭素分離材に水蒸気および不活性ガスの少なくとも一方(好ましくは二酸化炭素を含まないガス)を接触させ、二酸化炭素を脱離させる工程、及び(C)前記二酸化炭素分離材を加熱し、二酸化炭素を脱離させる工程(温度スィング法)のいずれか一つ以上を含む、二酸化炭素を分離又は回収する方法に関する。
【0010】
本発明の更に別の側面は、ポリアミンを準備する工程と、前記ポリアミンを支持体と接触させ、前記ポリアミンと、前記ポリアミンを担持する前記支持体と、を含むポリアミン担持体を得る工程と、を具備し、前記ポリアミンは、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有するプロピルポリアミン成分を含み、少なくとも1つの前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基であり、前記ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し、前記ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合しており、2つ以上の前記プロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基である、二酸化炭素分離材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るポリアミンは、生成反応における反応物の制御が容易であり、このポリアミンを担持した二酸化炭素分離材は酸化劣化に対する耐性が高く、ポリアミンの揮散による減少が抑制され、かつ二酸化炭素の吸脱着性能に優れている。よって、低コストで高性能な二酸化炭素分離材を提供することができる。また、本開示に係る二酸化炭素分離材を用いることで、高効率で二酸化炭素を分離又は回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例2、4および比較例1、2のフレッシュなポリアミン担持体による二酸化炭素の吸着挙動を示す図である。
図2】実施例2、4および比較例1、2の100℃の空気中で42時間加熱後のポリアミン担持体による二酸化炭素の吸着挙動を示す図である。
図3】実施例2、4および比較例1、2の100℃の空気中で42時間加熱する前後のポリアミン担持体による二酸化炭素の吸着挙動を対比して示す図である。
図4】実施例4のフレッシュなポリアミン担持体による二酸化炭素の吸脱着挙動を示す図である。
図5】実施例4の100℃の空気中で42時間加熱後のポリアミン担持体による二酸化炭素の吸脱着挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る二酸化炭素分離材について説明するが、二酸化炭素分離材は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
二酸化炭素分離材は、ポリアミンを含み、ポリアミンは、少なくともプロピルポリアミン成分を含む。
【0015】
ここで、プロピルポリアミン成分は、窒素原子に結合する水素原子または官能基を有するとともに分子内のそれぞれ別の窒素原子に結合する3つ以上のプロピル基を有する。窒素原子に結合する官能基としては、水酸基(N-OH)、アルキル基(N-R(Rはメチル基、エチル基等のアルキル基))等が例示できる。
【0016】
ただし、少なくとも1つのプロピル基は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシプロピル基である。ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合している。ヒドロキシプロピル基において、ヒドロキシ基は2級炭素原子に結合している。すなわち、ヒドロキシプロピル基は、2-ヒドロキシ-n-プロピル基(-CH2CH(OH)CH3)である。また、2つ以上のプロピル基は、ヒドロキシ基を有さない非置換イソプロピル基(-CH(CH3)CH3)である。非置換イソプロピル基の導入により、NとCO2との化学的結合が緩やかになり、少ないエネルギー(例えば低温)でCO2が脱離できるようになる。以下、このようなプロピルポリアミン成分を、「PO-IP-ポリアミン成分」とも称する。
【0017】
ここで、単に「プロピル基」と称する場合、ヒドロキシ基を有する「ヒドロキシプロピル基」およびヒドロキシ基を有さない「非置換プロピル基(特にイソプロピル基)」の両方の総称として「プロピル基」を用いる。
【0018】
以下、窒素原子に結合するプロピル基を「プロピル基N」とも称する。PO-IP-ポリアミン成分は、分子内に3つ以上の窒素原子を含む。PO-IP-ポリアミン成分において、分子内に有する3つ以上のプロピル基Nのうち、少なくとも1つはヒドロキシプロピル基であり、2つ以上が非置換イソプロピル基である。
【0019】
PO-IP-ポリアミン成分において、3つ以上の窒素原子の2つ以上がそれぞれ水素原子と結合している。複数の窒素原子の1つを除く全てがそれぞれ水素原子と結合していてもよい。
【0020】
水素原子と結合する窒素原子は、1つの水素原子と結合する2級アミノ基を形成していてもよく、2つの水素原子と結合する1級アミノ基を形成していてもよい。
【0021】
プロピルポリアミン成分は、単一のポリアミン成分のみを含んでもよく、複数のポリアミン成分を含んでもよい。すなわち、プロピルポリアミン成分は、複数のポリアミン成分の混合物でもよく、精製された単一のポリアミン成分のみを含んでもよい。プロピルポリアミン成分は、PO-IP-ポリアミン成分だけを含んでもよく、PO-IP-ポリアミン成分以外のポリアミン成分を含んでもよい。プロピルポリアミン成分は、ヒドロキシプロピル基を有さず、非置換イソプロピル基のみを有するポリアミン成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0022】
ヒドロキシプロピル基を有さず、非置換イソプロピル基のみを有するポリアミン成分は、PO-IP-ポリアミン成分のヒドロキシプロピル基を水素原子に置換したポリアミンでもよい。以下、このようなプロピルポリアミン成分を、「IP-ポリアミン成分」とも称する。
【0023】
PO-IP-ポリアミン成分は、直鎖構造でもよく、分岐鎖構造でもよく、窒素原子を含む環構造を有してもよい。中でも直鎖構造のPO-IP-ポリアミン成分はCO吸着サイトが多い点で望ましい。
【0024】
PO-IP-ポリアミン成分とIP-ポリアミン成分とを必須成分として含む混合物としてのプロピルポリアミン成分を担持した二酸化炭素分離材は、特に安定性に優れている。具体的には、酸化劣化に対する耐性が高く、ポリアミンの揮散による減少が抑制され、かつ二酸化炭素の吸脱着性能が高い。
【0025】
プロピルポリアミン成分の中でも、PO-IP-ポリアミン成分は、二酸化炭素分離材の安定性を高める上で大きな役割を果たすと考えられる。PO-IP-ポリアミン成分およびIP-ポリアミン成分を含むポリアミンは、IP-ポリアミン成分のみを含むポリアミンよりも酸化劣化に対する耐性が非常に高く、かつ蒸気圧が低く、揮散が抑制されるためである。このような、二酸化炭素分離材は長期的使用に適する。
【0026】
プロピルポリアミン成分に占めるPO-IP-ポリアミン成分の含有率は50モル%以下が望ましく、10モル%以上50モル%以下でもよい。プロピルポリアミン成分に占めるIP-ポリアミン成分の含有率は50モル%以上が望ましく、90モル%以下が望ましい。
【0027】
プロピル基Nは、2級アミンを構成する窒素原子または3級アミンを構成する窒素原子に結合し得るが、二酸化炭素の脱離性が高まる点で、非置換イソプロピル基は2級アミンを構成する窒素原子に結合していることが望ましい。一方、ヒドロキシプロピル基は、3級アミンを構成する窒素原子に結合し得る。ヒドロキシプロピル基は、ポリアミン分子の末端以外に存在する3級アミンを構成する窒素原子に結合していることが望ましい。
【0028】
非置換イソプロピル基は、ポリアミン分子の末端に結合していることが望ましい。例えば、直鎖構造のポリアミン分子の場合、2つの末端にイソプロピル基が結合していてもよい。分岐鎖構造のポリアミン分子の場合、全ての分岐鎖の末端にイソプロピル基が結合していてもよい。
【0029】
2級アミンを構成する窒素原子に結合するイソプロピル基は、例えば、イソプロピル基Nの出発原料と、1級アミノ基との反応により形成されてもよい。イソプロピル基の出発原料としては、例えば、アセトンを用い得る。
【0030】
3級アミンを構成する窒素原子に結合するヒドロキシプロピル基は、例えば、ヒドロキシプロピル基の出発原料と、2級アミノ基との反応により形成されてもよい。ヒドロキシプロピル基の出発原料としては、例えば、プロピレンオキシドを用い得る。
【0031】
PO-IPポリアミン成分は、例えば、市販品され、または公知の方法によって得られた1級アミノ基(-NH基)および-NH-基を有するポリアミンの1級アミノ基に2個以上のイソプロピル基を導入後、ポリアミンの2級アミノ基に1個以上のヒドロキシプロピル基を導入することによって製造することが可能である。
【0032】
イソプロピル基を導入する方法としては、-NH基とアセトンなどのイソプロピル基Nの出発原料を反応させる方法が挙げられる。ヒドロキシプロピル基を導入する方法としては、-NH基とプロピレンオキシドなどのヒドロキシプロピル基の出発原料を反応させる方法が挙げられる。このとき、ポリアミンとプロピレンオキシドとのモル比を制御することで、PO-IP-ポリアミン成分とIP-ポリアミンとの混合物を任意の組成で得ることができる。
【0033】
具体的には、フラスコなどの反応容器内に酸化白金触媒と無水エタノールを入れ、反応容器内を水素で置換した後、水素を100kPa~150kPaになるまで入れ、所定時間撹拌し、酸化白金触媒を還元する。次に、1級アミノ基(-NH基)および-NH-基を有するポリアミンと、アセトンと、無水エタノールを、還元された触媒が入った反応容器に入れて、反応容器内を水素で置換した後、水素を約200kPa~350kPaになるまで入れ、その後、圧力の低下が無くなるまで水素を供給しながら撹拌する。このとき、アセトンとNHが反応して水が脱水して形成されたN=C結合が水素化される。溶液を濾過して触媒を除去した後、エタノールを減圧除去し、得られた無色の液体をさらに真空下で乾燥すればIP-ポリアミン成分を得ることができる。アセトンと1級アミノ基との反応(第1反応)では、非置換イソプロピル基が形成される。
【0034】
次に、IP-ポリアミン成分を水に溶解し、酸化プロピレンを滴下して混合し、混合物を室温で12時間攪拌する。その後、混合物を60℃まで加温し、さらに2時間保持する。得られた液体から水を減圧除去し、さらに真空乾燥することにより、PO-IP-ポリアミン成分を得ることができる。プロピレンオキシドと2級アミノ基との反応(第2反応)では、ヒドロキシプロピル基が形成される。
【0035】
アセトンは、1級アミノ基と優先的に反応し、NH基を有する2級アミンを構成する窒素原子を生成する。すなわち、イソプロピル基は2級アミンを構成する窒素原子に優先的に結合する。そのため、第1反応における反応物の制御が容易であり、二酸化炭素を吸脱着するNH基をより多く確保することができる。
【0036】
以下に、骨格アミンであるテトラエチレンペンタミン(TEPA)に、TEPAの1mol当たり2molのイソプロピル基と1molのヒドロキシプロピル基とを結合させて生成させたPO-IP-ポリアミン成分(以下、「PO-IP-TEPA」と称する。)の一例の構造を示す。
【0037】
【化1】
【0038】
PO-IP-TEPAは、例えば、以下のスキームに示すプロセスで得ることができる。まず、テトラエチレンペンタミン(TEPA)に、TEPAの1分子当たり2分子のアセトンを反応させ、2つのイソプロピル基をTEPAに付加させる。このとき得られるイソプロピル化されたTEPAを「IP-TEPA」とも称する。その後、IP-TEPAの1分子当たり1分子以下のプロピレンオキシドを反応させ、ヒドロキシプロピル基を付加させる。例えば、IP-TEPA1mol当たりと反応させるプロピレンオキシドを1mol以下(例えば0.5mol以下)とすることで、PO-IP-TEPAと、ヒドロキシプロピル基を有さず、非置換イソプロピル基のみを有するIP-TEPAとの混合物を得ることができる。
【0039】
【化2】
【0040】
PO-IP-TEPAのように、PO-IP-ポリアミン成分は、それぞれ別の2級アミンを構成する窒素原子に結合する2つのイソプロピル基と3級アミンを構成する窒素原子に結合するヒドロキシプロピル基とを有してよい。ヒドロキシプロピル基においてヒドロキシ基は2級炭素原子に結合している。
【0041】
以下、IP-TEPAの1mol当たり0.25mol(または0.5mol)のプロピレンオキシドを反応させて生成させたポリアミン成分IPを、以下、「0.25PO-IP-TEPA」(「0.50PO-IP-TEPA」)のように称する。
【0042】
なお、60℃でのIP-TEPAの蒸気圧は1.80kPaであるが、0.5PO-IP-TEPAの蒸気圧は1.47kPaにまで低減される。
【0043】
次に、PO-IP-ポリアミン成分の別の例として、骨格アミンであるペンタエチレンヘキサミン(PEHA)に、PEHAの1mol当たり2molのアセトンと1molのプロピレンオキシドを反応させて生成させたポリアミン成分(以下、「PO-IP-PEHA」と称する。)の一例の構造を示す。ここでも、IP-PEPA1mol当たりと反応させるプロピレンオキシドを1mol以下(例えば0.5mol以下)とすることで、PO-IP-PEHAと、ヒドロキシプロピル基を有さず、非置換イソプロピル基のみを有するIP-PEHAとの混合物を得ることができる。
【0044】
【化3】
【0045】
次に、PO-IP-ポリアミン成分の更に別の例として、骨格アミンであるヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)に、HEHAの1mol当たり2molのアセトンと1molのプロピレンオキシドを反応させて生成させたポリアミン成分(以下、「PO-IP-HEHA」と称する。)の一例の構造を示す。ここでも、IP-HEHA1mol当たりと反応させるプロピレンオキシドを1mol以下(例えば0.5mol以下)とすることで、PO-IP-HEHAと、ヒドロキシプロピル基を有さず、非置換イソプロピル基のみを有するIP-HEHAとの混合物を得ることができる。
【0046】
【化4】
【0047】
PO-IPポリアミン成分(ポリアミン分子)の構造としては、2つ以上のNH基と、窒素原子間に介在する1つ以上のアルキレン基とを有する構造が好ましい。ポリアミン1分子内に含まれるNH基の数は、二酸化炭素の吸着能力を高める観点からは多いほど望ましく、ポリアミン1分子に含まれるNH基の数は、2以上50以下が望ましく、3以上30以下がより望ましい。一方、ポリアミン分子の取り扱い性を考慮すると、ポリアミン1分子内に含まれるNH基の数は、3以上20以下が望ましく、4以上10以下がより望ましく、4以上7以下が更に望ましい。
【0048】
PO-IP-ポリアミン成分において、窒素原子間に介在するアルキレン基としては、炭素数1~6のアルキレン基が望ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが好ましい。ポリアミン1分子内に含まれるアルキレン基の数は、ポリアミン1分子内に含まれるNH基の数に応じて選択すればよい。ポリアミン1分子内に1種のみのアルキレン基が含まれてもよく、2種以上のアルキレン基が含まれて入れもよい。
【0049】
具体的には、PO-IP-ポリアミン成分は、一般式(1):
【0050】
【化5】
【0051】
で表される骨格を有してもよい。ただし、式(1)中のRは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルキルアミノ基を示し、Aは、炭素数2~6のアルキレン基を示し、mは、2~50の整数を示し、複数あるRは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、少なくとも1つのRは水素原子または炭素数1~6のアルキルアミノ基であり、複数あるAは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0052】
PO-IP-ポリアミン成分は、例えば、一般式(2):
【0053】
【化6】
【0054】
で表すことができる。
【0055】
式(2)中、Rは、Rまたは基:-A-NRを示し、Rは、Rまたは基:-A-NRを示し、Aは、炭素数2~6のアルキレン基を示し、nは、1~5(例えば2以上)の整数を示し、pおよびqは、それぞれ独立して0または1を示す。
【0056】
複数あるAは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、複数ある場合のRは、同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0057】
、R2、R7およびR9は非置換イソプロピル基を示し、R3、R4、R6およびR8は水素原子を示し、R5の少なくとも1つ(好ましくは2つ以下で、より好ましくは1つ)は前記ヒドロキシプロピル基を示し、R5の残りは水素原子を示す。
【0058】
ポリアミンの骨格アミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、2-エチルアジリジン、2-プロピルアジリジンおよび2-ブチルアジリジンのモノポリマー並びにこれらの少なくとも2種のコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ここでは、モノポリマーおよびコポリマーには、重合分子数が10以下(例えば7以下)のオリゴマーが含まれる。例えば、テトラエチレンペンタミン、スペルミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンおよびトリエチレンテトラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ポリアミンの骨格アミンとは、2級アミンを構成する窒素原子に結合するイソプロピル基を生成させる際に、イソプロピル基の出発原料と反応させる1級アミノ基を有するポリアミンをいう。
【0059】
PO-IP-ポリアミン成分の原料となるIP-ポリアミン成分の具体例としては、ジイソプロピル化テトラエチレンペンタミン、ジイソプロピル化スペルミン、ジイソプロピル化ペンタエチレンヘキサミン、ジイソプロピル化ヘキサエチレンヘプタミン、ジイソプロピル化トリエチレンテトラミン等のジイソプロピル化ポリアミン;テトライソプロピル化N,N,N’,N’-テトラキス(3-アミノプロピル)-1,4-ブタンジアミン等のテトライソプロピル化ポリアミンを挙げることができ、さらに具体的には、1,11-ビス(イソプロピルアミノ)-3,6,9-トリアザウンデカン、N,N’-ビス(3-(イソプロピルアミノ)プロピル)-1,4-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-(イソプロピルアミノ)プロピル)-1,4-ブタンジアミン、1,14-ビス(イソプロピルアミノ)-3,6,9,12-テトラアザテトラデカン、1,17-ビス(イソプロピルアミノ)-3,6,9,12,15-ペンタアザヘプタデカン、1,8-ビス(イソプロピルアミノ)-3,6,-ジアザオクタン等を挙げることができる。
【0060】
ここでは、ジイソプロピル化ポリアミンとは、ポリアミンが有する2以上の窒素原子上に計2個のイソプロピル基が置換したポリアミンであり、テトライソプロピル化ポリアミンとは、ポリアミンが有する2以上の窒素原子上に計4個のイソプロピル基が置換したポリアミンである。このようなIP-ポリアミン成分に、例えばプロピレンオキシドを反応させることで、上記IP-ポリアミン成分の3級アミンを構成する窒素原子にヒドロキシプロピル基が結合したPO-IP-ポリアミン成分が得られる。
【0061】
ポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)の760mmHgにおける沸点は320℃以上である。この場合、ポリアミンを含む二酸化炭素分離材を高い温度(例えば、60℃程度)でも安定して使用できる。760mmHgで320℃以上の沸点を有していれば、減圧(例えば、0.2Pa程度)によって沸点が低下しても、ポリアミンが支持体に担持された状態を維持することができる。そのため、これらのポリアミンを用いることにより、使用温度を常温よりも高い温度とし、効率的に二酸化炭素の脱離を行うことができる。
【0062】
<支持体>
支持体は、ポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)を担持することができ、二酸化炭素の分離回収の条件に耐え得る材料であればよい。例えば、セラミックス、多孔質材料、炭素材料、樹脂材料などを用い得る。具体的には、シリカ、ポリメチルメタクリレート、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、ゼオライト類縁化合物、天然鉱物、廃棄物固体、活性炭、カーボンモレキュラーシーブ等が挙げられる。支持体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
支持体は、市販品をそのまま用いてもよいし、公知の方法によって合成した支持体を用いてもよい。市販品としては、シグマアルドリッチ社製のメソ構造シリカMSU-F、エボニック社製のSIPERNAT(登録商標)50S、富士シリシア化学株式会社製のCARiACT(登録商標)Q10、Q30、Q50等が挙げられる。
【0064】
支持体は、ポリアミンを多く担持するために、多孔質で比表面積と細孔容積が大きな材料が好ましい。比表面積(BET)は50m/g以上2000m/g以下が望ましく、100m/g以上1000m/g以下がより望ましい。細孔容積は0.1cm/g以上2.3cm/g以下が望ましく、0.7cm/g以上2.3cm/g以下がより望ましい。
【0065】
比表面積及び細孔容積は、例えば、定容法を用いて比表面積・細孔径分布測定装置(ASAP2420:株式会社島津製作所製)によって測定することができる。より具体的な比表面積・細孔径分布測定装置を用いたガス吸着測定方法としては、例えば、加熱真空排気により、試料の前処理を行い、サンプル管に測定試料をおよそ0.1g量り取る。その後、40℃まで加熱し、真空排気を6時間行った後、室温まで冷却し、サンプル質量を計量する。測定では液体窒素温度を設定し、圧力範囲を指定する。比表面積、細孔容積及び細孔径は、得られた窒素吸着等温線を解析して算出することができる。
【0066】
<ポリアミン担持体>
ポリアミン担持体は、ポリアミンを支持体に担持させたものである。ポリアミン担持体は、ポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)とこれを担持する支持体とを含む。
【0067】
ポリアミン担持体は、ポリアミンを準備する工程と、ポリアミン担持体を得る工程とを有する製造方法で製造できる。ポリアミン担持体を得る工程では、ポリアミンを支持体と接触させて、ポリアミンを担持する支持体を生成させればよい。
【0068】
ポリアミン担持体は、例えば、ポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)の溶液に、支持体を混合し、例えば室温で撹拌後、溶媒(例えば水、アルコール)を留去することにより製造することができる。溶媒を留去する方法としては、例えば、エバポレーター等で加熱しながら減圧する方法が挙げられる。
【0069】
ポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)を支持体に担持させることにより、水溶液の二酸化炭素分離材では適用できない圧力スィング法および温度スィング法に適用することが可能である。圧力スィング法は、二酸化炭素分離材を減圧条件下に置き、二酸化炭素を脱離させる工程を含む。温度スィング法は、二酸化炭素分離材を加熱し、二酸化炭素を脱離させる工程を含む。
【0070】
<二酸化炭素分離材>
二酸化炭素分離材は、例えば、ポリアミン担持体と、ポリアミン担持体を造粒するバインダーとを含む。すなわち、二酸化炭素分離材は、バインダーを用いた造粒物としてのポリアミン担持体を含んでもよい。バインダーを用いてポリアミン担持体を造粒することにより、耐振性や耐摩耗性を付与することができ、さらに水中での安定性を向上させることが可能である。
【0071】
バインダーとしては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物、フッ素樹脂、セルロース誘導体およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いてもよい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチル化澱粉等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられ、エポキシ樹脂の硬化剤(変性ポリアミド樹脂等)との混合物として用いてもよい。その他の高分子(ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等)等を使用してもよい。これらの化合物は市販品として入手可能であるか、公知の方法によって容易に製造することが可能である。バインダーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
バインダーとしては、市販品として、日産化学株式会社製のスノーテック30およびAS-200、ダイキン工業株式会社製のポリフロンPTFE D-210C、三晶株式会社製のNEOVISCO MC RM4000、東レ株式会社製のAQナイロン P-70、ナガセケムテックス株式会社製のデナコール EX-421等を用いることができる。
【0073】
バインダーの二酸化炭素分離材における含有量は、造粒が可能な量であれば、特に限定されないが、ポリアミンの含有量の低下を防ぐ点で少量であることが好ましい。
【0074】
バインダーを用いて、造粒する場合の造粒物の平均粒径は、ガスを吸着材充填層に供給した時の圧力損失を低減する観点から、0.1mm~2.0mmが好ましい。
【0075】
二酸化炭素分離材に含まれるポリアミン(特にプロピルポリアミン成分)の含有率は、特に限定されないが、効率的に二酸化炭素を分離回収する観点から、ポリアミンの含有率は、例えば、15質量%以上が好ましく、20質量%以上が特に好ましい。ポリアミンの含有率は、例えば、70質量%以下でもよい。
【0076】
<二酸化炭素の分離又は回収する方法>
二酸化炭素分離(回収)方法の処理対象は、二酸化炭素を含むガスである。二酸化炭素を含むガスは、例えば、石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力発電所、コークスで酸化鉄を還元する製鐵所の高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鐵所の転炉、各種製造所におけるボイラー、セメント工場におけるキルン等、さらには、ガソリン、重油、軽油等を燃料とする自動車、船舶、航空機等の輸送機器から排出される排ガスであってもよい。二酸化炭素を含むガスは、潜水調査船、宇宙ステーション、ビル、オフィス等の室内空間等の密閉空間において、人の呼吸や機器のエネルギー変換等で排出される二酸化炭素等を含むガスであってもよい。また、大気中の二酸化炭素であっても良い。
【0077】
本開示に係る二酸化炭素の分離又は回収方法では、二酸化炭素分離材を用いることを特徴とする。
【0078】
二酸化炭素分離(回収)方法は、処理対象のガスを二酸化炭素分離材に接触させ、二酸化炭素を吸収する第1工程、および、第1工程において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素分離材から二酸化炭素を脱離させる第2工程、を含む。
【0079】
第1工程における処理対象のガス中の二酸化炭素含有量及び温度は、二酸化炭素分離材が耐え得る条件であれば、特に限定されない。例えば、二酸化炭素分圧は100kPa以下でもよく、温度は10℃~60℃であってもよい。具体的には、火力発電所等で想定される使用条件(二酸化炭素分圧:7~100kPa、温度:40~60℃)や、宇宙ステーション等で想定される使用条件(二酸化炭素分圧:0~1kPa、温度:20~25℃)等が挙げられる。処理対象のガスは、大気圧であっても、加圧されていてもよい。
【0080】
第1工程の処理対象のガスは、水蒸気を含んでいてもよい。二酸化炭素分離材は水蒸気を含んでいる処理対象ガスであっても、二酸化炭素の吸着性に優れるため、除湿操作を省略することができる。
【0081】
第2工程における二酸化炭素を脱離させる方法としては、(A)二酸化炭素分離材を減圧条件下におき、二酸化炭素を脱離させる工程(圧力スィング法)、(B)二酸化炭素分離材に水蒸気および不活性ガスの少なくとも一方(好ましくは二酸化炭素を含まないガス(もしくは二酸化炭素含有量の低いガス))を接触させ、二酸化炭素を脱離させる工程、及び(C)二酸化炭素分離材を加熱し、二酸化炭素を脱離させる工程(温度スィング法)などを含む方法が挙げられる。
【0082】
工程(A)を含む方法では、二酸化炭素の脱離量及び二酸化炭素分離材の安定性の点で、0.2Pa程度まで圧力を下げることが好ましい。減圧時に二酸化炭素分離材又はこれを含む容器を加熱してもよい。加熱する場合の温度は60℃程度までが望ましく、この場合、0.5Pa程度まで圧力を下げることが好ましい。工程(A)を含む方法は、処理対象のガスが温度20~60℃かつ二酸化炭素分圧100kPa以下である場合に好適である。
【0083】
工程(B)を含む方法では、例えば、不活性ガス、水蒸気、二酸化炭素を含まないガスなどを二酸化炭素分離材に接触させることにより、二酸化炭素分圧を下げ、二酸化炭素を脱離させることができる。二酸化炭素分離材に接触させるガスとしては、二酸化炭素分離材がそのガス中で安定であればよく、アルゴンなどの不活性ガスや窒素、水蒸気等が好ましく、減圧された水蒸気がより好ましい。
【0084】
工程(C)を含む方法では、二酸化炭素吸収時よりも温度を上昇させることにより、二酸化炭素を脱離させることができる。この場合における、二酸化炭素吸収時の温度は、例えば、10~40℃であってもよく、二酸化炭素脱離時の温度は、例えば60℃程度であってもよい。
【0085】
[実施例]
次に、本開示について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、ポリアミンの担持量(質量%)は、二酸化炭素を除いた二酸化炭素分離材(ポリアミン担持体)の質量に対するポリアミンの質量を百分率で表したものである(ここではポリアミンと支持体との合計に対するポリアミンの割合)。
【0086】
合成したポリアミンの理化学的性質の測定には以下の機器を用いた。
液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS):日本ウォーターズ株式会社製のAllaiance LC/MSシステム
【0087】
以下において、「xPO-IP-TEPA」等の「xPO」等の記載は、骨格アミン(この例ではTEPA)1mol当たりと反応させたプロピレンオキシドのモル数がxmolであることを示す。例えば「0.25PO-IP-TEPA」等の「0.25PO」等の記載は、骨格アミン1mol当たりと反応させたプロピレンオキシドのモル数が0.25molであることを示す。
【0088】
また、「0.25PO-IP-TEPA」等の「IP」は、骨格アミンの2つの1級アミノ基がイソプロピル化されてジイソプロピルアミンを形成していること(換言すれば、1分子当たりと反応させたアセトンのモル数が2molであること)を示す。
【0089】
また、例えば「0.25PO-IP-TEPA(29)/Q30」等の記載の「(29)/Q30」は、ポリアミン担持体に含まれるポリアミン成分の含有率が29質量%であり、かつ支持体がQ30であることを示す。
【0090】
《実施例1》
<IP-ポリアミン成分の合成>
ジイソプロピル化テトラエチレンペンタミン(別名:1,11-ジイソプロピルアミノ-3,6,9-トリアザウンデカン)(IP-TEPA)の合成
【0091】
内容量1Lのフラスコに酸化白金触媒2gと市販の無水エタノール100mlを入れ、フラスコ内を水素で置換した後、水素を150kPaになるまで入れ、500rpmで15~20分間撹拌し、酸化白金触媒を還元した。
【0092】
次に、テトラエチレンペンタミン(TEPA)189.31g(1.0モル)、アセトン(CH-CO-CH3)121.97g(2.1モル)、無水エタノール150mlを還元された触媒が入ったフラスコに入れた。
【0093】
フラスコ内を水素で置換した後、水素を約200kPaになるまで入れ、水素の理論量(2mol)が吸収されて圧力が下がり、その後10時間吸収が無いことが確認されるまで溶液を攪拌した。
【0094】
溶液を濾過して触媒を除去した後、エタノールを40℃で減圧除去し、得られた無色の液体をさらに真空下(10-1mmHg)、50°Cで一晩乾燥して、IP-TEPAを得た(収率95%)。
【0095】
<PO-IP-ポリアミン成分の合成>
IP-TEPAの1モルあたり0.5モルのプロピレンオキシドを滴下して混合し、混合物を室温で12時間攪拌し、その後、60℃まで加温してさらに2時間保持した。得られた液体から水を減圧除去し、さらに真空乾燥させて、0.5PO-IP-TEPAを得た。
【0096】
<二酸化炭素分離材(ポリアミン担持体)の調製>
所定量の0.5PO-IP-TEPAを秤量し、これを容量300cm3のナスフラスコに量りとったメタノール(和光純薬工業社製;特級)20gに溶解させた。
【0097】
その後、別途秤量した所定量の支持体Q30(富士シリシア化学株式会社製のCARiACT Q30;比表面積100m/g、平均細孔径30nm、細孔容積0.9mL/g)をナスフラスコに入れ、室温で2時間攪拌した後、これをロータリーエバポレーター(EYELA社製;N-1000)で40℃に加熱しながら、系内の圧力が0.03MPaになるまで減圧することで、メタノール溶媒を除去し、0.5PO-IP-TEPAを25質量%含むポリアミン担持体(0.5PO-IP-TEPA(25)/Q30)を得た。
【0098】
メタノール溶媒の除去は、フラスコと試薬類の合計の重さを予め量り取り、メタノール溶媒に相当する20gの質量減少が確認できた時点で完了とした。調製したポリアミン担持体は評価試験に供するまでナスフラスコに栓をしてデシケータ内で保管した。
【0099】
《実施例2》
0.5PO-IP-TEPAの含有率を29質量%に変更したこと以外、実施例1と同様に、ポリアミン担持体(0.5PO-IP-TEPA(29)/Q30)を得た。
【0100】
《実施例3》
<PO-IP-ポリアミン成分の合成>
IP-TEPAの1モル当たりと反応させるプロピレンオキシドを0.25molに変更したこと以外、実施例1と同様に、0.25PO-IP-TEPAを得た(収率95%)。また、実施例1と同様に、0.25PO-IP-TEPAを25質量%含むポリアミン担持体(0.25PO-IP-TEPA(25)/Q30)を得た。
【0101】
《実施例4》
0.25PO-IP-TEPAの含有率を29質量%に変更したこと以外、実施例3と同様に、ポリアミン担持体(0.25PO-IP-TEPA(29)/Q30)を得た。
【0102】
《実施例5》
<IP-ポリアミンの合成>
1,10-ジイソプロピルアミノ-4,7-ジアザデカン(IP-DEDP)の合成
【0103】
還元された触媒が入ったフラスコに、骨格アミンとして1,10-アミノ-4,7-ジアザデカン(DEDP)174.29g(1.0モル)を入れ、イソプロピル基の出発原料としてアセトン121.97g(2.1モル)を入れたこと以外、実施例1と同様に、IP-DEDPを得た(収率95%)。
【0104】
<PO-IP-ポリアミン成分の合成>
IP-DEDPの1モルあたり0.25モルのプロピレンオキシドと反応させたこと以外、実施例1と同様に、0.25PO-IP-DEDPを得た(収率95%)。また、実施例1と同様に、0.25PO-IP-DEDPを29質量%含むポリアミン担持体(0.25PO-IP-DEDP(29)/Q30)を得た。
【0105】
《実施例6》
<IP-ポリアミンの合成>
還元された触媒が入ったフラスコに、骨格アミンとしてペンタエチレンヘキサミン(PEHA)1.0モルを入れ、イソプロピル基の出発原料としてアセトン2.1モルを入れたこと以外、実施例1と同様に、IP-PEHAを得た(収率95%)。
【0106】
<PO-IP-ポリアミン成分の合成>
IP-PEHAの1モルあたり0.25モルのプロピレンオキシドと反応させたこと以外、実施例1と同様に、0.25PO-IP-PEHAを得た(収率95%)。また、実施例1と同様に、0.25PO-IP-PEHAを29質量%含むポリアミン担持体(0.25PO-IP-PEHA(29)/Q30)を得た。
【0107】
《実施例7》
<IP-ポリアミンの合成>
還元された触媒が入ったフラスコに、骨格アミンとしてヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)1.0モルを入れ、イソプロピル基の出発原料としてアセトン2.1モルを入れたこと以外、実施例1と同様に、IP-HEHAを得た(収率95%)。
【0108】
<PO-IP-ポリアミン成分の合成>
IP-HEHAの1モルあたり0.25モルのプロピレンオキシドと反応させたこと以外、実施例1と同様に、0.25PO-IP-HEHAを得た(収率95%)。また、実施例1と同様に、0.25PO-IP-HEHAを29質量%含むポリアミン担持体(0.25PO-IP-HEHA(29)/Q30)を得た。
【0109】
《比較例1》
TEPA(骨格アミン)をそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(TEPA(29)/Q30)を得た。
【0110】
《比較例2》
IP-TEPAをそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(IP-TEPA(29)/Q30)を得た。
【0111】
《比較例3》
DEDP(骨格アミン)をそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(DEDP(29)/Q30)を得た。
【0112】
《比較例4》
IP-DEDPをそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(DEDP(29)/Q30)を得た。
【0113】
《比較例5》
PEHA(骨格アミン)をそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(PEHA(29)/Q30)を得た。
【0114】
《比較例6》
IP-PEHAをそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(PEHA(29)/Q30)を得た。
【0115】
《比較例7》
HEHA(骨格アミン)をそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(HEHA(29)/Q30)を得た。
【0116】
《比較例8》
IP-HEHAをそのままQ30に含有率29質量%で担持させてポリアミン担持体(HEHA(29)/Q30)を得た。
【0117】
表1に各実施例および比較例のポリアミン担持体の組成をまとめる。
【0118】
【表1】
【0119】
<評価試験1>
実施例および比較例のポリアミン担持体について、所定の温度で二酸化炭素の各圧力における吸収量を破過曲線測定装置(ジーエルサイエンス(株)製)を用いて測定した。
【0120】
サンプル管に測定試料を約1g量り取り、80℃で6時間アルゴンを流して試料の前処理を行った後、60℃に試料温度を保持した。サンプル管に分圧13kPaで二酸化炭素を流し、出口ガス組成をガスクロマトグラフで測定した。吸収量は、CO吸収開始から飽和に至るまでの時間と出口ガス濃度の積算から求めた。
【0121】
二酸化炭素の脱離(回収)量は、流すガスをアルゴンに切り替えてから出口ガスに二酸化炭素が検出されなくなるまでの時間と出口ガス濃度の積算から求めた。
【0122】
実施例4および比較例1、2で得られたポリアミン担持体の二酸化炭素の吸収量および減圧による脱離(回収)量を測定した。表2に結果を示す。
【0123】
以下、表中の二酸化炭素の吸収量の単位はポリアミン担持体1kg当たりの吸収量(mol)である。また、(A)に示す吸収量(mol/kg)は、フレッシュなサンプルの60℃、13kPaにおける吸収量を示し、(B)に示す脱離(回収)量は、アルゴンガスを流して脱離させた60℃での脱離(回収)量である。
【0124】
【表2】
【0125】
<評価試験2>
実施例および比較例のポリアミン担持体について、所定の温度で二酸化炭素の各圧力における平衡吸収量を定容法によって測定した。測定装置には、マイクロメリティックス社製のChemiSorb HTPを用いた。評価試験2~4における測定方法は、特に記載のない限り、以下の通りである。サンプル管に測定試料を約0.1g量り取り、80℃で6時間ヘリウムを流して試料の前処理を行った後、40℃に試料温度を保持した。サンプル管に二酸化炭素を少しずつ導入し、100kPaまでの圧力範囲を指定して、各測定温度における二酸化炭素の分圧と吸収量との関係を得た。得られた等温線から13kPaでの平衡吸収量を読み取った。
【0126】
ポリアミン担持体の酸化劣化は、充填層反応器を用いて行った。ポリアミン担持体1.0gを石英管に詰め、100℃で3時間窒素を流して前処理を行った後、100℃で42時間模擬空気(21%O-Nバランス)を流して劣化処理した。その後、上記と同様の方法によって、40℃で、二酸化炭素を導入し、等温線を得た。二酸化炭素の吸収量は、13kPaでの平衡吸収量を読み取った。
【0127】
実施例1~7および比較例1~8で得られたフレッシュなポリアミン担持体および劣化処理後のポリアミン担持体の二酸化炭素の吸収量、並びに、劣化後のポリアミン担持体のフレッシュなポリアミン担持体に対する吸収量維持率(Retention)を測定した。表3に結果を示す。
【0128】
【表3】
【0129】
また、図1~3に実施例2、4および比較例1、2のフレッシュな試料と劣化処理後の試料の結果を示す。図1、2において、横軸(Absolute pressure)はCOの絶対圧もしくは分圧に相当し、縦軸(CO adsorbed)はCOの吸収量を示す。図3は、図1、2の結果をまとめて示す棒グラフである。
【0130】
<評価試験3>
評価試験2と同様の方法で得られた等温線から100kPaでの吸収量を読み取り、二酸化炭素の吸収量とした。
【0131】
評価試験2と同様の方法で劣化させたポリアミン担持体の等温線を評価試験2と同様の方法で得た。二酸化炭素の吸収量は、100kPaでの吸収量を読み取った。
【0132】
実施例1~7および比較例1~8で得られたフレッシュなポリアミン担持体および劣化処理後のポリアミン担持体の二酸化炭素の吸収量、並びに、劣化後のポリアミン担持体のフレッシュなポリアミン担持体に対する吸収量維持率(Retention)を測定した。表4に結果を示す。
【0133】
【表4】
【0134】
<評価試験4>
評価試験2の後、実施例4のフレッシュなポリアミン担持体および劣化処理後のポリアミン担持体の試料を20分間減圧排気した後、評価試験2と同様の方法によって、40℃で、二酸化炭素を導入し、等温線を測定した。二酸化炭素の吸収量は、100kPaでの吸収量を読み取った。
【0135】
また、図4図5にフレッシュな試料と劣化処理後の試料の結果を示す。各図において、横軸(Absolute pressure)はCOの絶対圧もしくは分圧に相当し、縦軸(CO adsorbed)はCOの吸収量を示す。表5に結果を示す。
【0136】
【表5】
【0137】
<評価試験5:水蒸気の影響検討>
ポリアミン担持体は、二酸化炭素以外に水蒸気を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する条件でも使用されるため、水蒸気の影響を検討した。加湿条件下における二酸化炭素の吸収量を破過曲線測定装置(ジーエルサイエンス(株)製)を用いて測定した。
【0138】
実施例4および実施例7のフレッシュなポリアミン担持体の約1gをサンプル管に量り取り、80℃で6時間アルゴンを流して乾燥脱気の前処理を行った後、60℃に試料温度を保持した。次にHO/Ar混合ガスを流してポリアミン担持体に水を吸収させた。
【0139】
水の吸収が飽和に達した後、分圧13kPaで二酸化炭素を流し、同時に出口ガス組成をガスクロマトグラフで測定し、破過曲線を得た。
【0140】
二酸化炭素の吸収量が飽和に達した後、アルゴン流し、出口ガス組成をガスクロマトグラフにより測定した。本測定では真空ポンプによる減圧に代えてアルゴンガスを流すことにより、系内の二酸化炭素分圧を下げて二酸化炭素を脱離させた。
【0141】
吸収量は、吸収開始時から飽和に達するまでの時間と出口濃度の積算から求めた。脱離量は、アルゴンガスに切り替えた時間から出口ガスに二酸化炭素が検出されなくなるまでの時間と出口濃度の積算から求めた。表6に結果を示す。乾燥条件での評価は、60℃、13kPaの条件で二酸化炭素の吸収量を測定し、60℃で脱離量を測定した。
【0142】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示に係る二酸化炭素分離材は、二酸化炭素の吸収量が増加すると共に、短時間の減圧で多くの二酸化炭素を分離回収できるため、効率的かつ実用的であり、再利用に適している。また、本開示に係る二酸化炭素分離材は、二酸化炭素吸収及び脱離工程において、圧力スィング法、温度スィング法のいずれの方法でも二酸化炭素の分離回収を行うことが可能であり、様々な使用環境に適した二酸化炭素吸収及び脱離工程を選択することが可能である。加えて、本開示に係る二酸化炭素分離材は、酸化劣化に対する耐性が高く、ポリアミンの揮散による減少が生じにくい。さらに、水蒸気が共存する場合においても、吸収、脱離及び再吸収の性能が低下せず、除湿工程を必要としないため、省エネルギーのシステム構築及び装置の小型化によるコスト削減が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5